本部
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/23 22:00
- 完成予定
- 2017/07/05 22:00
このシナリオは3日間納期が延長されています。
掲示板
-
質問卓
最終発言2017/06/22 09:03:36 -
作戦卓
最終発言2017/06/23 12:59:09 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/06/20 22:54:49
オープニング
●夜景の公園
「この公園は桜の季節がいいのにね。もう少し早く来たかったわ」
飯塚詩織は、夫と手を繋いで夜の公園の階段を下りながら、すっかり青々と葉を茂らせた桜の木を見上げた。
ここは徳島市にあるS公園。桜の名所としても知られる。
だがそれ以上に、夜景が美しい場所として有名だ。
徳島市を望む眉山の中腹にあり、山頂まで足を伸ばさずとも徳島市北部の夜景を充分に楽しめる。
人気のデートスポットでもあるが、二人のほかに人影はなかった。
「去年も桜を見に来たわ。憶えてる?」
「ああ、よく憶えている」
そこで詩織は異変に気づいた。ポケットから化粧用のコンパクトを取り出して鏡で確認する。
【隠夜叉】による変身が解けて、腐敗した皮膚に戻っていた。眼球の変色も見える。
大好きな夫である飯塚の前で、こんな姿を晒してしまうなんて。
「もう、やんなっちゃうわ。30分って短いんだもの。移動中に使わないわけにもいかないし」
その手を引いて、灯りを避けるように暗がりに潜む。
夜の闇は優しい。すべてを覆い隠してくれる。
「私、いっぱい働いたのよ。変身できるお面を使わせてもらって、貴方を迎えにいけるように」
詩織はかつて、疾風丸という朱天王の飼い犬によって感染させられた。
疾風丸は痛みを与えず傷を作り、対象者を感染させることができる。
この犬もまたとっくに死亡しているが、朱天王により特別な力と、【隠夜叉】に相当する変身アイテムを使う権限が与えられ、普通の犬のように動いているのだ。
皮膚は一部腐敗しているがふわふわの毛皮に守られて見えにくく、撫でても分かりにくい。変身すればなおのことである。
だから誰もが安心して、力なきトイプードルの甘噛みを許してしまう。
朱天王に繋がる枷を嵌められたのだと、気づく間もなく。
「でも、貴方のいた病院は警備が厳しくて、準備に時間がかかってしまったわね。だから、これはお詫び」
詩織は上着のポケットから何かを取り出した。
皮製の鞘を引き抜くと、微かな灯りを受けて輝く、鋭利なナイフが顔を出す。
「もっと早くに迎えに行けてたら、とっくに『こちら側』に来ていたのにね。あのくだらない延命装置のせいでまだ生きているなんて、可哀想」
詩織はナイフを構えたまま、上体を思い切り夫に預けた。
ナイフは感染体である夫の胸をやすやすと抉り、詩織の手を血で濡らす。
「しお……り……」
飯塚はわずかに呻いた。
彼は厳しい訓練を潜り抜けた自衛隊員だが、動くことはできない。
感染は詩織から飯塚への順に起こっていて、上位感染者の命令権は下位感染者に優越する。
すなわち、詩織は短時間なら飯塚を支配できる。
「貴方の血はまだ温かいのね。その血を流しつくして、早く私と同じところまで堕ちて来て頂戴? 夫婦は一蓮托生ですものね?」
ふふっ、と詩織は楽しげな笑みを漏らす。
ようやく、夫が自分の元に帰ってきた。
これから、また共に歩む日々が始まる。
●脱走した患者達
「徳島市内の感染者収容施設から30名規模の感染者の脱走が発覚した。警察の協力を得て捜査が始まり、いくかの目撃証言が上がっている。感染者は同市内の眉山に向かったらしい」
同じく徳島市の眉山にあるS公園で、皮膚の変色がある感染者の集団を見かけて慌てて逃げた、という市民もいた。幸い、何事もなく逃げ切れたそうだ。
脱走した患者は香川県側の鳴門市や東かがわ市などで感染被害に遭い、徳島の病院へと避難してきた人々である。決して土地勘があるわけではない。
しかし脱走後の目撃証言では、目的地を知っているかの如くに迷わずどこかへ向かっていたそうだ。
患者による引っ掻きや噛みつきなどで市民が傷を負わされたという報告は、まだない。
時刻は8時を少し回った頃。警察により付近には避難勧告が出されている。
「感染者が統率の取れた動きを取るとき、そこには敵の統率者が存在する場合が多い。今回の脱走の意図はまだ掴めていない。充分に注意してくれ」
●貴方と愛の逃避行を
徳島市のS公園は、旧陸軍の軍人墓地だった場所を改修した公園である。
改修時に遺骨はすべて別の場所へと移されたが、街を見下ろす丘の上の立地は、死者を弔う墓地にも適していただろう。
緑に覆われた高低差のある敷地が、墓地であった頃の面影を残している。
詩織はその公園に、みずからの手で感染させた患者たちを集めた。
朱天王から譲り受けた【隠夜叉】の効果時間は短く、人目につかず二人きりの時間を作るためには誰かの手を借りるしかなかった。そして詩織は、自らの支配の及ぶ感染者を使った。
彼らはこの場から人を遠ざけるためだけに、周辺を徘徊し続けている。
「少し目立ってしまったけれど、仕方ないわよね? でも私、怖くなんてないわ。貴方が守ってくれるんだもの」
そっと寄り添うようにして、夫の胸からナイフを引き抜く。
心臓にまで達した傷の、血はすでに止まっていた。
生命活動を停止した飯塚の体は変化し、皮膚は崩れて腐敗の様相を呈する。
「これから二人で逃避行なんて、ちょっとロマンチックかも。そういうの、ドキドキするわね」
夫の血に濡れたナイフをしばらく愛しげに眺め、鞘に仕舞った。
「もちろん穂篠君のことも忘れてはいないわよ? ちゃんと連れて行くわ。貴方の部下だもの」
飯塚二尉と共に病院から抜け出した穂篠軍曹もまた、このS公園の周辺を警戒し続けている。
いつ現われるか分からないエージェント達に、対応するために。
詩織は暗闇で腐った皮膚を隠しながら、明るく言う。
「きっとうまく行くわ。私の言うことを聞いてくれる人たちはどこにでもいるの。だって私、本当によく働いたのよ?」
鳴門市から東かがわ市の山中で、暗闇の中ふいに襲われて軽傷を負い、感染した患者はおよそ5万にも上る。
ある人は犬のようなものに咬まれたと言い、ある人は刃物で切りつけられたと証言した。
詩織自身の戦闘力はないに等しいが、同じく無力な人間を暗闇で襲うのなら容易い。
しかも、感染させるには、ごく軽傷で構わないのだ。
「心配なんて、しなくていいの。私達はずっと一緒よ」
解説
●成功条件
飯塚詩織、飯塚二尉両名を撃破し、S公園周辺にいる感染者を捕獲する。穂篠軍曹は感染者だが、生死問わず。
●現場状況
・徳島市眉山中腹、北向き斜面にあるS公園。50sq×200sq程度の広さで階段状に造成された徳島市の夜景スポット。詩織と飯塚はこの公園のどこかで夜景を眺めている。
・夜間照明があり、ほどほどの明るさ。花の散った桜の樹が葉を茂らせ、繁みもある。
・収容施設から脱走した感染者が公園の周りを徘徊し、穂篠軍曹が警戒中。彼らの見聞きした情報は詩織を通して全員に共有される。
・周辺には民家はほとんどなく、避難勧告が出されている。
●捕獲道具
感染者捕獲用の捕獲網。グロリア社製。カプセルに折りたたまれた網が入っており、ライヴスを込めて投擲すると飛び出した網が対象に絡みつき、拘束し動きを止める。必要なだけ配布して貰える(プレイングに書いてください)。
●登場
飯塚詩織
・使用武器:ナイフ、小銃
飯塚二尉
・使用武器:ナイフ、小銃、ライフル
穂篠軍曹
・使用武器:ナイフ、小銃、サブマシンガン
感染者30名
・使用武器:ナイフ
●PL情報
・詩織にとって生(=感染状態)と死(=死体ゾンビ状態)は連続したものであり、命を奪うことに躊躇はない。
・PCが到着した時点で二人は隠夜叉を使用し、生前の姿に見せている。
・詩織は飯塚二尉、穂篠軍曹、感染者30名に対して命令権を持つ。
・飯塚二尉は火器の扱いに長けており、高い命中率を誇る。
・徒歩圏内の詩織による感染者はいま集まっている30名のみ。
・詩織ペアの30sq以内に立ち入るとライフルによる狙撃を受ける可能性がある。
マスターより
飯塚詩織は朱天王陣営の中では異色キャラです。
強さを見込まれたわけではなく、シナリオ「これは演習ではない」にて自衛隊員である飯塚二尉の中継感染者として不本意な死を遂げました。「白昼の切り裂き魔」ではその捻じ曲がった未練から健康な女性ばかりを感染させ、更に芽衣沙の洗脳で弱っている被害者を選んで『意地悪』をしました。
そのとき言っていた『夫へのお見舞い』が叶った今、望むことは、『思い出のデート』。
ノベル「天と地、表と裏から攻めよ」で裏方として働いた朱天王配下も、これでひととおり出し終わりです。
当シナリオが成功すれば、事態は急速に収束へ向かうでしょう。
よろしくお願いします。
リプレイ公開中 納品日時 2017/07/06 01:34
参加者
掲示板
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質問卓
最終発言2017/06/22 09:03:36 -
作戦卓
最終発言2017/06/23 12:59:09 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/06/20 22:54:49