本部
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 6人 / 4~6人
- 英雄
- 6人 / 0~6人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/05/26 22:00
- 完成予定
- 2016/06/04 22:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/05/23 07:25:29 -
相談卓
最終発言2016/05/26 00:56:23
オープニング
●追悼の刻
H.O.P.E.香港支部の中庭には、去る大規模戦闘において亡くなったすべての職員、古龍幇構成員、一般市民の名を刻んだ石碑が建造された。碑の覆いは今朝がた取り払われ、今は人々が献花した数多の白百合がビル風に揺られている。
「追悼式典で、こちらのイザベルさんに挨拶をして貰うんだって。皆には彼女の警護をお願いしたいそうよ」
「イザベル・ミスラと申します。こちらは娘のジャクリーン」
支部の一室で、デウスエクス・マキナ(az0001)はエージェント達を前にそう言った。
紹介されたのは見知らぬ女性、その傍らに不思議そうに佇む少女には、父親の聡明な面影が感じられる。
「ねぇアリス、この式典って有名人がいっぱい来るんでしょ?」
「そうそう、これはセーシキな妥結発表に先んじて行われる、言わば古龍幇との親睦の初歩ってやつらしいよ。何より犠牲者の碑の御前だからね、万が一があったら困るって事で、うちらの出番ってワケ。ええと、この人はね……」
イザベルと名乗った女はキャンディ・アリス(az0001hero001)に促され、静かに自己紹介を続けた。
「はい。私は、香港九龍支部作戦一課長ナレイン・ミスラの妻でございました」
それはかつて、香港支部の実働指揮を担った指揮官の名である。しかし此度の事変以前にミスラ課長は愚神に付け入られており、香港市街戦中に討伐された事は誰もの知る所。
「夫が皆様にお掛けしたご迷惑を思うと、私に何かできる事は無かったかと悔やんでも悔やみ切れません。今日は皆様にお詫びをする為に、イギリスからやって参りました」
「イザベルさん……またそんな事を。ミスラ課長に非はありませんよ? 悪いのは愚神ですから」
「……ママ、大丈夫?」
フォローを入れるマキナにも、イザベルはどこか虚ろな目で苦しげに微笑むだけ。母親と手を繋げたジャクリーンは、その様子を見て心配そうに声をあげた。アリスが小声で、エージェント達に呟く。
「なにか思い詰めてるみたいで、イザベルさんが心配だなぁ……」
「……そうね。でも、もうすぐ開会式が始まってしまうわ。皆、とりあえず会場へ行きましょう?」
マキナに促され、面々は中庭へ――白百合の碑の前へ進む。
●式典の最中
「ママ、おはなしばっかりで、ジャッキーつまんないよ」
「ジャクリーン……お願いだから、じっとしていて頂戴。困ったわ……」
式が進む中で、喪服のジャクリーンが母親に相手をせがむ。しかしイザベルはメッシュの影、眼の下に濃い隈を浮かべて取り合う様子を見せない。そこで、マキナが名乗りをあげた。
「あ、じゃあ私が遊んであげるわ、ジャッキーちゃん」
「わぁ、本当? マキナお姉ちゃん」
「ああ、ありがとうございます。助かりますわ、マキナさん」
「マキナ、それはいいけど……二人はいちおー警護対象だからね?」
「分かってるわよ、アリス。席に座ったままならいいでしょう? 私、トランプなら持ってるわよ」
「……ええと、うちは飴ちゃん、ペロキャン、チョコレート……」
ポケットを引っ繰り返すアリスの傍で、ジャクリーンがイザベルの方を見て小さく言う。
「……ママ、今日も泣きそうな顔してる……またひどいこと言われたのかな、パパのせいで……」
ジャクリーンがマキナ達と遊び始めたので、イザベルの近くは静かになった。彼女は鞄から作文用紙を取り出すと、周囲のエージェント達に控えめに切り出す。
「あの、香港事変ではお疲れ様でございました。
……よろしかったら、当事者の皆様に挨拶文の添削をお願いしたいのですが」
何度も書き直されてしわくちゃの原稿を、そう言って差し出すイザベル。
「私は所詮、部外者ですから……
何か、相応しくない事を言おうとしているやも知れません。
私には、皆様や夫の様に、特別な力がある訳でもないので。何も……何もできないのです」
だからせめて、償いたい。挨拶文にはその思いが、しかし簡素に纏められていた。
『悲しみは大きいです。怒りも、同じくらい大きいです。
それは、この世から夫を奪った愚神へ対する怒りです。こんな悲劇は、二度と繰り返したくありません。
だからこそ、愚神を憎むのと同じくらい、自分が憎いです。私は、夫の変化に気付けなかったのですから。
ただ守られるばかりで、皆様の力になれなかった事、これからも力になれない事が本当に悔しいです。
でも、私は亡き夫が守ろうとした香港が、二度と戦場にならぬ様に祈りたい。その為には、H.O.P.E.と古龍幇が協力し合う事が大切だと思います。
ですから、私は自分にできる事を考え、それはお詫びをする事だと思い至って、今日此処へ参じました。
私に対する糾弾はご尤もです。二つの組織を隔てる壁は、我が夫によって少なからず厚みを増してきた物なのですから。
どうか、私達を許して下さい。この礎の上に、皆様が手を取り合う未来を築いて下さい』
梯(かけはし)の行く末は、未だ寂光に霞む。ならばこそ。
「この挨拶文は、二度と悲劇を繰り返したくないという願いを込めて、式典の最後に読むものです。
夫にも娘にも、私は本当に申し訳ない事をしてしまいました。
でも、それはもう取り返しのつかない過去ですから……夫に会った時、せめて『よくやったな』と言って貰えるような事をしたいんです。
――何か、この挨拶文に助言する部分はありませんか?」
イザベルは血色の悪い唇に薄く微笑みを浮かべ、鞄の中にあるナイフを握り締めた。
解説
概要
追悼式典でイザベルとジャクリーンの身辺警護を務める事になりました。皆さんはイザベルに『A:挨拶文の添削』と『B:ジャクリーンの遊び相手』を頼まれています。無事なにごとも無く、式典終了を迎えられれば成功となります。
行動選択肢
A:挨拶文の添削
挨拶全文については、OP本文●式典の最中章に『』で括ってある部分をご確認ください。
PCの皆さんがこの挨拶文を見せられたら、どう感じるでしょうか。
何かより良い挨拶にする為のアドバイスがあったら、イザベルに伝えてあげて下さい。
B:ジャクリーンの遊び相手
7歳にしては我慢強かったですが、さしもの彼女も長い式典に飽きてしまったようです。
余程の事が無い限り喚いたりはしませんが、遊んであげるとイザベルが安心するでしょう。
NPC情報
・イザベル
ナレイン・ミスラの妻。
彼女が書いた挨拶文は、自身の無力への呪いと懺悔が綴られている。
・ジャクリーン
ナレインとイザベルの一人娘。
周囲の言葉と母親の滅入りようから、父親は悪者だと思っている。
PL情報
・イザベルの秘密
実はイザベルは、挨拶中にある事を企てています。
彼女は一般人ですから、事が起こってから対処しても最悪の結果は避けられるでしょう。
でも一番良いのは、それより早くイザベルが生きる希望を見付ける事だと思います。
計画が実行されたが最後、ジャクリーンはもう二度と父親を許さないでしょうから。
・ジャクリーンの秘密
実は能力者としての素質が有ります。この事は彼女自身を含め、誰も知りません。
状況
中庭にて、喪服をお召し頂いて追悼式の最中です。
皆さんは舞台袖の関係者卓に居て、ステージでは焼香や挨拶等が行われています。子供の遊び相手になる事については周囲から一定の理解が得られると思いますので、楽しませてあげて下さい。
尚、皆さんが共鳴を要するような事態は起こりませんので、ご安心を。
マスターより
今晩は、ナレイン・ミスラ追悼シナリオです。
謎需要のうえに辛気臭さマックスですが、僕しかやる人も居まいと思いまして。
人間だった頃の課長は、役職に相応しい人だったと思います。
ミスを公にしようにもそこに関わった部下を慮って言い出せず……
かと言って秘密を抱えたまま生きていく事もできず……
彼がどんな経緯で愚神へ擦り替わったか知る術はもうありませんが、
課長が守りたかったものを一つ、彼に代わって救って頂ければ幸いです。
※能力者と英雄で別々の行動選択肢を選ぶ事は勿論可能ですが、字数が分散すればそれだけ描写が薄くなってしまう可能性はあります。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2016/05/31 17:13
参加者
掲示板
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/05/23 07:25:29 -
相談卓
最終発言2016/05/26 00:56:23