本部
- 形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/05/20 19:00
- 完成予定
- 2016/05/29 19:00
掲示板
-
質問スレッド
最終発言2016/05/19 00:54:03 -
相談スレッド
最終発言2016/05/20 18:15:56 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/05/16 02:11:01
オープニング
●九十九年前の悲劇
その年、厳冬で真っ白だったロシアが、赤く燃え上がった。
革命軍に追われた帝政の残党やその信奉者、およそ百二十五万人――彼らはシベリアで再起を図ろうと、東へ逃れた。
しかし、多くは道半ばで力尽き、イルクーツクに辿り着く頃には二十五万人にまで減っていた。
そして、その二十五万人もまた、雪と氷に閉ざされた極寒のバイカル湖上を徒歩で渡る最中に全員が倒れ、二度と立ち上がる事はなかった。
捨て置かれた彼らの遺体は、春に氷が解けるに任せて湖底へと沈み、歴史から忘れ去られた――。
●九十九年目の惨劇
「その時、五百トンの金塊も一緒に沈んじゃったっていうけれど」
本当かなあ――売り物の金貨をもてあそびながら、その少年は小首を傾げる。
「馬鹿馬鹿しい。いいかね、坊や? 金塊――実際は大半が金貨だったというそれは一応実在したらしいが、経過を辿ると敗走した白軍の手を早々に離れて、各地を転々としながら失われた事が判っている。だから、湖の底に眠っているなんていうのは、どこかのロマンチストが脚色した作り話なんだよ」
「なーんだ、つまんないの」
彼が親指で弾き飛ばした金貨を、私はすかさず掴み取った。
「……?」
氷のように冷たい。彼がずっと触っていたというのに。
そういえば、先ほどから店の中が妙に冷え込む。
暖房はどうした。
この子は寒くないのか。
「でもさあ、こうは思わない? 本当はもっと“いいモノ”が沈んでいて、金塊の噂はそれを隠す為の嘘だった――って」
その途端、少年の身を、無数の真っ白い蝶が、包み込む。
次いで店内のそこらじゅうでびきり、ばしっと凍結する音が鳴り響く。
だが、私は彼――否、彼女に釘付けとなり、それどころではなかった。
「ひっ――」
そう、彼女だ。
散りゆく凍て蝶の中からやがて顕れたのは、戯曲に描かれるスネグーラチカさながらの、寒々しくも愛らしい娘。
恐ろしい。
逃げたいが、足が全く動かない。
当然だ、いつの間にやら下半身が氷で床に固定されているのだから。
「アッ、あ……うが、ハア、ハア!」
「ねえ、おじさん。……本当は知ってるんでしょ?」
歯の音が忙しなく呂律の回らない私に、少女は蟲惑的な声で囁きかける。
「な、うなな、な、なんの事、を」
「“マルクトの短剣”、ずっとその事をお勉強してたのよね? ――ね、知ってるんでしょ?」
「あっひっ、知ら」
「じゃあ死ねば?」
「知らないぅえぎゃああああああああ!」
両腕の肘から先が粉々に砕けた。
だがそれらはほぼ氷と化していて、血飛沫が跳ねる事はなかった。
激痛と寒さと恐怖が蝕む。
頬を伝う涙さえ凍てつくというのに震えだけが止まない。
「うっ……うっ……、たたた棚に、地図、うっ、が……」
少女はすぐにそれを見つけて広げるなり、のん気に質問を寄越す。
「このバッテン印がそうなの? バイカル湖の」
「そそそそう、だ」
「どんな場所?」
「このっ場所に、はっ……隣国との戦争が始まった日に、列、車……が、し、ずんだ」
「ふうん」
少女は地図を片手に踵を返す。
「あっ、待っ――――」
同時に、心臓の凍てつく音が耳膜に突き刺さった。
無論、自分のだ。
●九十九分後の予知
無造作に転がったり、縦に刺さっていたり。
そんな列車の林でできたお城と、千切れたレールでできた柵と。
沢山の人が骨になっても跪く水底の王国を、少女と狼は往く。
真っ暗なのも気に留めず、気ままに上機嫌に、花でも摘みに行くように。
周りの車両を凍らせて、過ぎる頃には粉々で。
林が少しずつ減っていく、骨が冷たい塵になる。
そのうち玉虫色の目は、ふわりと浮いたこがね色をみとめて。
大喜びで手に取って。
「おつかい完了。帰ろ、ルドルフ」
それを狼に食べさせて。
まるで過去(こっち)が見えるみたいに、急にこっちを振り向いて。
「だあれ?」
●九十九分前の現在
「黄金の短剣の情報を握っている」
本部に打診があったのは、まさにH.O.P.E.が例の短剣を探し始めた矢先の事。
イルクーツク市内で骨董品屋を営むその男は、自身の研究成果をH.O.P.E.に売り込もうとしていたらしい。
だが、呼び出しに応じてエージェント達が訪ねると、彼は既に息絶えていた。
両腕を失い、立ったまま氷漬けにされて。
店の中はそこかしこに氷と霜と雪とが積もって、真っ白だ。
先を越された――と思う間もなく端末の呼び出し音が鳴る。
本部に詰めるオペレーター鬼丸 鞘花(az0047)からの緊急連絡だった。
≪先ほどプリセンサーから「急がなければ愚神に短剣を奪われる」と予言がありまして……。そちらの状況は、いかがでしょうか≫
エージェントがありのままを伝えると鞘花は「残念です」とだけ応え、それから犯人とみられる愚神についての説明を始めた。
≪今回実動しているのは識別名“雪娘”。以前同地域で“ノーリ”――失礼、“ミロン”という名の少年に宿り、逃亡したものと同じ個体とみられます。詳しい能力は不明ですが……その一端は、既に目の当たりにされたようですね≫
氷獄と化した店内が、惨たらしい店主の遺体が、その力と性を雄弁に物語っているから。
どうあれ、急いで後を追わねばならないだろう。
だが、一体どこへ?
≪何か、遺留品はありませんか?≫
鞘花の声を受け店内を見渡せば、すぐに卓上の“マルクト”と銘打たれたレポートが目につく。
それには、かつてロシアの覇権争いはマルクト(王国)を象徴する黄金の短剣を奪い合う歴史だったとする記述の他、現在それはバイカル湖の湖底に眠っている事、ほぼ同じ場所に列車が沈んでいる事などがしたためられていた。
だが、正確な位置については言及されていない。
闇雲に探し回るにはバイカル湖は広すぎるというのに。
とにかく現地へ急行するべきか、考える為に今少し手を割くか――どうする。
≪……判断は皆さんにお任せします。移動手段はこちらで手配しておきますので、どうかご心配なく≫
解説
【目的】
マルクトの短剣回収
【主な舞台】
ロシア南東部、バイカル湖。
五月にしてなお湖面は分厚い氷に閉ざされている。
深く暗い湖底には二十五万の無念と、なぜか多くの列車が沈む。
【現在地】
イルクーツク市内の骨董品屋。
短剣の正確な所在はレポート(=OP本文相当の情報)が叩き台。
判断材料を増やす方法の目安は以下の通り。
A:店内を調べる
B:聞き込みや調査
C:鞘花に情報照会を要請
いずれも情報と媒体or人の目星が時間経過に影響。
なお、今回はCに限り質問スレッドで行う事も可能(この場合のみ所要時間は最小限として判定)
【移動手段】
・骨董品屋~バイカル湖:H.O.P.E.車両(約四十分)
・湖岸~湖底:砕氷船→潜水艇(最短三十分、目標地点により変動)
・湖底到着後:艇外活動
【探索】
地道な探索行となる。
人数分+予備の照明と金属探知機、酸素ボンベは潜水艇に搭載済。他泳具等貸与可。
無呼吸での活動限界は約一時間(共鳴時のみ)、酸素ボンベ併用でプラス三十分程度。
【愚神】
デクリオ級上位、少女型。
現時点での識別名は『雪娘』。初出はシナリオ『無色の庭にて』。
ノーリ改めミロン少年の肉体を触媒にして活動中。
高水圧、低温が予想される湖底での撃破はミロン少年の死に直結。
ルドルフという名の狼型従魔(デクリオ級)と共に行動。
※以下PL情報※
冷気を用いた能力、及びソフィスビショップと似たスキルを駆使。
早期遭遇時、短剣発見までの一時的な協力を持ちかけてくる可能性あり。
【その他】
・スレッドでの質問・要請はプレイング締切四十八時間前までの受付
・PL情報に関する質問不可
・重体の可能性あり
マスターより
藤たくみです。
雪娘再登場となりますが、過去の関わりは問いません。
この点ではどなた様もお気軽にご参加いただければと思います。
ただし、マルクトの短剣を回収する為には、いかに正確な位置を特定し、迅速かつ適切な移動と探索を行うかが重要となってくるでしょう。
もちろん雪娘もただ手をこまねいて見ているわけではない為、状況の複雑化が予想されます。
いずれにせよ、後手に回るほど失敗となる確率が高まりますので、ご留意ください。
それでは、バイカル湖の底でお待ちいたしております。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2016/05/31 17:22
参加者
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最終発言2016/05/19 00:54:03 -
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最終発言2016/05/20 18:15:56 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/05/16 02:11:01