本部
愚神を名乗る者からの依頼とすれ違う誓約
- 形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/27 12:00
- 完成予定
- 2016/01/05 12:00
掲示板
-
犠牲を出さない為の相談
最終発言2015/12/27 03:57:18 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/12/25 17:05:57
オープニング
●
目の前に現れた存在達を前に、その女性は自分の負傷も顧みず訴えた。
「この子を助けて!」
山を切り裂いて作られた人気のない道路を2人が車に乗って走っていたところ、たまたま山からの落石による崩落事故に巻き込まれたようだ。
後ろには2人が乗っていたと思われる車が巨大な岩に潰され無残な残骸となっており、そこから血とみられる赤く太い線が伸びていた。
女性の腕には、一目見て手遅れと思われるほどの負傷を負った少年が抱えられていた。大きく裂かれた傷口からおびただしい量の血が溢れ出し、少年はぴくりとも動かない。力なく垂れ下がっている腕は、女性の動きにあわせて揺れるだけだ。
「救急車を呼んだ方がいいのではないでしょうか」
「それじゃ手遅れなの! 貴方達ならできるでしょう!?」
その存在の提案に女性は首を横に振った。
何の前触れもなく目の前に現れたこの存在と背後に佇む巨漢は、常人ではない何かだ。
ならば常人にない命を救える可能性を目の前の存在達が持っている可能性に、女性は縋りつこうとする。
「その少年の命を救う事が貴方の願いならば確かに叶えられますが、私達は愚神です。代償を払うことになりますよ」
「私が差し出せるものなら何だって出すわ。だからお願い! この子を助けて!」
周囲に人の姿はない。女性には目の前の存在が愚神であったとしても、腕の中で今その命の火が消えようとする自分の弟を助けるという願いを叶えてくれるという愚神の言葉に賭けるしかなかった。
しかし愚神を名乗る者は意外な事を口にした。
「いいえ、代償を払うのは貴方ではありません。今死にかけているその少年です」
『愚神』の言葉と共に、新たな人影が現れた。
「ば、化け物……」
女性が次に現れた『それ』を見て、怯えた表情を見せる。
「その表現は『彼女』に失礼だと思いますよ。『彼女』がその少年を助けるのですから」
『愚神』と名乗った者の言うとおり、『それ』は外見上の姿形のラインを見れば、確かに人間の女性らしさを示していた。ただし顔を含め全身を艶のある白い鎧のようなもので覆っている。
「『彼女』とその少年は『共鳴』が出来ます。つまりその少年は能力者の資質があります。『共鳴化』を果たせば、その少年の命は助かるでしょう。ただ、貴方の言う『化物』がくっつく事になります。それが私の言う『代償』です」
女性は内心少年に詫びて、その条件を呑んだ。
「では『誓約』をかわすお手伝いをしましょうか。内容は……そうですね。『お互いが大切に思える存在を守る』。そして『制約』もつけましょう。『彼女はこの少年からライヴスを奪ったり傷つけてはならない』。これなら貴方が恐れている事態も防げるでしょう?」
愚神は人のライヴスを喰らう存在だ。実際は憑依して少年のライヴスを喰らうのではと内心思っていた女性は、その言葉を信じる以外になかった。
そして意識のない少年と『彼女』は愚神の提示した『誓約』のもと『共鳴』する。
その後少年は蘇生し、長いリハビリ生活を無事に乗り越え、怪我を克服し、女性の願いは叶えられた。
誓約の後、少年の手元に現れた幻想蝶と共に。
●『彼女』の願い
『愚神』が言った通り、共鳴を果たした後の少年には『代償』と呼べる出来事が待ち構えていた。
少年の傍にいる『化物』に、見た人達は怯え、少年は『化物』として嫌悪され、人の輪の中に入りづらくなった。
それを知った『彼女』はできる限り人の目を避けるよう姿を隠し続けた。
それでも、見える人には見えてしまう。結果、少年はイジメられ、隠しきれなくなるたびに街から街へと引っ越しを繰り返す事になる。
表向き少年は明るく振る舞っていたが、内心では深く傷ついていることが、繋がっている『彼女』にはわかっていた。
なんで。どうして。僕は悪いこと、何もしていないのに。
伝わってくる少年の心の声に、『彼女』は自分がいるからだと、自分を責め続けるうちに気付く。
少年と長く心を接しているうちに、その少年が自分にとって大切な存在となっている事に。
そして『ある兆候』を自覚した時『彼女』はある決意を固め、少年が寝静まるのを待ってから動き出した。
恐らくずっと見守っていたのであろう。すぐ近くに自分が最初に出会った『愚神』はいた。
『彼女』は『愚神』に自分の『願い』を話すと、『愚神』は呟いた。
「それが『貴方の願い』ですか」
このままでは自分は存在を維持する為、大切だと思う少年のライヴスを奪いかねない。そんな兆候に気付いた『彼女』は、『愚神』へ自分を退治する依頼を出してくれるよう願った。
『大切だと思える存在を守る』ために。
●少年の願い
「『彼女』が僕のライヴスを喰うのを止めさせるため、自分を倒す依頼を出したなら、僕からもお願いします。『彼女を殺さず、僕がライヴスを差しだすのを見守る』依頼を出して下さい」
不意に少年の目の前に現れた『愚神』を名乗る者が『彼女』の願いを少年に話したところ、少年はそのように『愚神』に願った。
「彼女は『化物』なんかじゃありません。美しい人です」
姿を隠しているが、繋がっている心から感じ取れる『彼女』は美しかった。誰が何と言おうがその想いは変わらない。
「誓約の内容も伺っています。『大切だと思える存在を守る』ことでしょう? だから僕もその誓約を守りたいんです。『彼女』が僕を喰う事で存在を保てるのなら、全部差し上げます」
長いリハビリ生活に耐えられたのは、姿こそ見せなかったが、『彼女』の言葉や、時々誰かに支えられている、何かが優しく自分を包んでいるという感覚があったからだ。そして少年にとって、いつしか『彼女』は大切な存在になっていた。
だからこそ少年は『愚神』に『大切だと思える存在を守る』ため願った。
話を聞いた愚神は少年に、幻想蝶を用意しておくことを指示した。
「多分必要になるでしょう。叶えられる日時や場所が決まったら私がご案内します」
●疑念
それまで『愚神』に怯え、口を挟めなかった少年の姉が勇気を振りしぼると、立ち去ろうとする『愚神』へ声をかけた。
「貴方は愚神と名乗っているけど、本当に愚神なの? そしてあの『化物』だけど、ひょっとしたら英雄なの?」
今にして思えばこの者も、そしてあの『化物』も愚神にしては不自然な部分が多すぎる。
あの事故以後に自分が集めた情報では、愚神とは誓約できないし、幻想蝶など顕現しないとされている。しかし現実に誓約はなされて弟は助かり、幻想蝶が現れた。
そして自分が見る限り、この『愚神』の行動は人間を害するどころか善人風でありすぎる。
やや間を開けた後、『愚神』はこう答えた。
「『他の愚神』は本物ですが、貴方の仰る通り、私は人間で『彼女』は英雄です。私が愚神を名乗り愚神達と組む理由は、今は『条件』が揃っていませんので秘密です」
解説
●目標
誰も犠牲にならない結末を目指す
登場
少年
以前崩落事故に巻き込まれ、瀕死の重傷を負ったが、『彼女』との『共鳴』により命を長らえた。
周囲の人達は『彼女』を化物と思っているが、彼は美しい人だと思っており、大切な存在という想いがある。
彼の願いは「彼女を生かす為、自分のライヴスや命を差しだすことを認めさせてほしい」。
なお少年は幻想蝶を持参して、この後『愚神』の車に乗って、現場に現れる予定。
『彼女』
顔を含む全身を白い鎧で包んだ姿の存在。たまたま近くに愚神を名乗る存在がいたので、同類とみなされている。
『共鳴』を果たした後、自分の姿が原因で少年がひどい目にあう事に心を痛め、何とか救いたいと思ううちに少年が大切な存在となった。自分の存在を保つためライヴスを得たいという衝動に耐えきれず、『誓約』を果たす為、できるだけ自分が討たれるにふさわしい化物として振る舞い、犠牲になる事で少年の未来を少しでも明るくしようと考えている。
一応槍と盾を装備しているが、共鳴状態の数値から能力者の数値を差し引いた分程度の強さしかない。
ただ『愚神』からの話では『彼女は今の姿こそ異形ですが、中身は貴方達の基準では美人ですよ。そして彼女は英雄です。制約も課して、人からライヴスを奪わないようにさせています』との事。信じるか否かは自由。
『愚神』
『願いを叶える愚神』を名乗る存在だが、正体は人間らしい。真偽不明。理由経緯は不明ながら複数の愚神達と手を組んでいる。
●状況
人里離れた場所に存在する、かつて違法業者が違法な宅地を造成する為、山林の中を無理やり切り拓いて作った縦横40mに広がる平地の空き地。障害物になるものはない。何が起こっても周囲は山林に囲まれており、人の姿もない無人地帯なので、人々には気づかれない。不測の事態に備えH.O.P.E.別働隊が周囲で待機中。申請すれば無線機の借用可。
マスターより
岩岡志摩です。
この世界に来た時、偶然近くに愚神を名乗る者がいて、人間に化物と言われたので自分も愚神と思い込んでいる英雄と、犠牲になろうとする人間をどうにかする、というのがこの話になります。
人のライヴスを少しでも喰った時点で愚神が英雄になることはありません。
しかし今回の場合は『愚神』の制約もあり、この英雄は人のライヴスを摂取していませんので英雄として留まることができます。
互いに想いあうがゆえのすれ違いを、皆様ならばどう解決するでしょうか?
なお今回少年を案内する『愚神』の周囲を本物の愚神達が密かに守っているので、『愚神』を攻撃した場合、格段に難易度が上がります。
よろしくお願いします。
リプレイ公開中 納品日時 2016/01/04 13:23
参加者
掲示板
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犠牲を出さない為の相談
最終発言2015/12/27 03:57:18 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/12/25 17:05:57