本部

サツマイモと園児とモグラ

アトリエL

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~15人
英雄
4人 / 0~15人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/11/26 18:48

掲示板

オープニング

●サツマイモ堀の怪
「さあ、みんなでサツマイモを掘り出そうね」
 とある小さな幼稚園。そこのイベントでサツマイモ掘りが行われていた。
「ねえ、サツマイモって土の中にいるんだよね?」
「そうだよー。土の中でおっきくなって成長して、皆に美味しい美味しいって食べてもらいたがってるんだよー」
「せんせー。サツマイモって逃げたりするの?」
「皆に食べてもらいたいから逃げたり……なんて……?」
 園児達の声に振り返った先生が見たものはサツマイモによく似た何か。
 何かとしか言えないのはそれを先生も見たことがなかったからだ。
「せんせー。あれなーに?」
「えーっと……モグラさんかな?」
 かろうじて搾り出した答えがそれだった。見た目はサツマイモに手足の生えたモグラっぽい何か。それが園児達が掘り出す傍からあちらこちらから涌いて出ると、そのまま一目散にどこかへと走り去った。

●殺埋土竜を探せ
「と言う事件が起きているようです」
 通信士によると同様の案件が複数寄せられているらしい。
 通信士から送られてきたデータによると、その事件が起きているのは特定の範囲に限られている。推測に過ぎないが、サツマイモのモグラは皆一目散に同一の方向に向かって走り去っていることから、その方向に原因となる何かがいると言うのがHOPEの見解だ。
「とりあえず地図には逃げたと思われる方向を矢印で書き足してあります」
 あちこちで発生しているらしく、矢印の本数は多い。……というか、多すぎてすでに場所の特定が終わってるレベルである。
「問題は大きく分けて二つです。一つは当然ながら原因と思われる従魔の討伐……」
 当然ながら討伐できなければ事件は解決しない。
「もう一つは、園児達がお腹を空かせて待っているという問題です」
 それは予想外な問題だった。
「サツマイモを別ルートで仕入れて運びこんでも同様の反応が見られるため、園児達はサツマイモが食べられません。なので、討伐後、速やかにサツマイモを使った料理を準備しなければならないのです」
 どこに向かうのかわからないHOPEのアフターケア。ちなみに材料に園児達を不憫に思った近隣農家からの善意で準備されている。従魔が関わったサツマイモは使えないのでそちらはリンカー達が自由に食べていいらしい。
「従魔の討伐と園児が喜びそうなサツマイモ料理の準備、これが今回の任務です」

解説

 元凶の従魔は付近のサツマイモを配下のモグラに変える能力を持っています。
 配下のモグラは元凶の従魔殺埋土竜の武器や壁として使用されますが、リンカー達の攻撃を受けるとただのサツマイモに戻ります。ある程度纏めて対処出来る方法があれば優位に事を進められるでしょう。
 調理用のサツマイモは園児達の分くらいしかありません。
 調理実験などが必要な場合は従魔討伐の際に拾ったサツマイモで自分もしくは相棒の身体を使って実験してください。
 サツマイモは掘り出さない限りは従魔に支配されることはないようです。なので、被害箇所は多いですが、総量はあまり多くありません。

リプレイ

●目的はな~に?
「お腹をすかせて待っているといわれてもな……サツマイモ以外を食べるわけにはいかんのか?」
「本来ならそれでいいんだろうけど、自分たちで収穫したものを食べるというお勉強をかねてるからダメだろうね」
「なるほど。従魔退治はもちろんだが、子供たちのためになることをしないといけないと」
「先生たちには戻ったらすぐに調理に取り掛かれるように準備を頼んできたわ」
 緋褪(aa0646hero001)の疑問に來燈澄 真赭(aa0646)はそう答える。文明・流通の進化は、遂には切り身で泳ぐ魚の絵を描く子供の出現など宜しくない現象を出現させた。自分達の食べる物がどんなものかも知らない子供は意外と多い。そうした背景もあり、昨今は食育という教育が重視されつつある。もちろん虐待と言われないためにも何も食べさせずに待っているわけではないだろうが、美味しいサツマイモが待っていると言われては子供なりにお腹を空かせて待っているというのは間違いない。少なくとも準備の頼みにいった際に見た園児達の目は眩しいほどに期待に満ち溢れていた。
「おなかを空かせてる可愛いお子さんたちのためにも早くお芋を料理しなきゃ!」
「その前に従魔退治だ」
 料理に情熱を燃やす北条 ゆら(aa0651)にシド (aa0651hero001)は冷静な突込みを入れる。
「と言っても今回は場所も大体わかってるから楽勝だと思うんだけど……ここだよね?」
「そこだな」
 引っこ抜いたサツマイモがモグラ化して移動した方向と地図を照らし合わせ、場所を絞り込んだ大宮 朝霞(aa0476)にニクノイーサ(aa0476hero001)は頷いた。場所を探ること事態はそう難しいことではない。今回の従魔の特性がある程度わかっている以上、それを逆手にとって利用すればいいだけだからだ。ほぼ一直線に駆け出すモグラの進む方向は地図上の一点で交わっている。
「それは亮馬や他の皆さんにお任せするとして……私は料理に精出すのだ!」
「……好きにしろ……」
 ゆらの料理への情熱は止められない。それを理解したシドは溜息を吐きながらもそれに従う。これもある意味では仲間に対する信頼のなせる業であろうか。
「ほら!! 早くお芋を集めて!! 戻ったら調理に取り掛かるわよ!!」
「……本当に作ることしか考えないんだな」
 言質を取ったとばかりにゆらは採取した端からモグラ化するサツマイモ……それを即座にサツマイモに戻しては改めて採取する。複雑な心境のシドだが、単純に従魔の居場所を探るよりもこうしてサツマイモ化を解除すれば、それだけ従魔の戦力強化を阻止しているわけで、全く役に立っていないわけではない。
「モグラから芋に戻るのはいいんだけどさ、芋に戻したのがまたモグラになったりしないよね?」
「さすがにそれはないと思いたいが、これだけ芋が転がってると多少減ってもわからんな……」
 來燈澄 真赭(aa0646)の問いに緋褪(aa0646hero001)は自信なさそうに答えた。芋づる式に現れるモグラはどこかで見落としていてもわからない。
「アレの後を追えば、従魔のいるトコロまでいけるわ」
 実験用食材の確保を兼ねた目的地を探るための作業が一段楽したところで、朝霞は残された一匹のモグラを指し示し、目的の地点に向かうのだった。

●燃え上がる建前
「よし! 目標を発見!! 直ちに任務に取り掛かる!! それはもう光の早さで!!」
「……どうした? 今回は気合の入り方がずいぶん違うようだが?」
 いつも以上に気合の入った加賀谷 亮馬(aa0026)にEbony Knight(aa0026hero001)は首を傾げた。
「お腹を空かせて待っている子供たちのため!! そう、正義のために俺は燃えているのだ!!」
「なるほど……そういうことなれば本気で行こう」
 建前を本気で語る亮馬にEbonyも本気で応じる。
「あそこに密集している奴がいる。あそこを狙うのだ」
「一気に片付けさせてもらうぜ!!」
「おぉ……凄まじい威力。亮馬よ。正義に燃えているな……」
 Ebonyが感嘆の声を上げるほどに今日の亮馬は燃えていた。怒涛乱舞でどこからか集まったサツマイモだったモグラの群れを蹴散らせば、サツマイモの山とその中心に居座る大きなサツマイモ……のようなモグラが姿を現す。
「アイツが元凶ね。いくわよ、ニック!」
「了解」
 朝霞に応じるニクノイーサ。しかし、すぐにはリンクしない。
「もうちょっと恥ずかしくないポーズに変えてくれるとうれしいんだがな」
「いいかげん慣れなさいね。さぁ、一緒に!」
 そう呟くニクノイーサの目に映る朝霞の姿は変身ポーズを取ったまま静止している。これは付き合わなければ絶対に引き下がりそうにない。
「変身! ミラクル☆トランスフォーム! 聖霊紫帝闘士ウラワンダー参上! 悪い従魔は私がやっつけてやるんだから!」
「モグラを攻撃してもキリがないぜ。朝霞、親玉の従魔を狙え」
 ニクノイーサの助言を受け、朝霞は中心の従魔に狙いを定めた。
「ちゃちゃっと片付けちゃいましょ」
「了解。……つっても。既にほとんど終わってるわけなんだが」
「なんだか妙に気合が入ってる人がいるからね。私たちは取り逃しのないようにしましょ」
 真赭の気楽な言葉に頷きながら緋褪は未だにどこから涌いてくるのか増え続けるモグラ達を亮馬と共に各個撃破していく。
「最近、命中にはちょっと自信があるんだから! くらえ、ウラワンダー☆メガ☆ストリーム☆エクセレントォー……」
「……いいから、早く射ろ」
「アロー!! ……よっし、命中!!」
 日曜朝の放送よろしく、必殺技の『タメ』を作る朝霞にニクノイーサが突っ込みを入れると、漸く矢が放たれた。フェイルノートから放たれた矢が突き刺さると従魔殺埋土竜は壁として使っていたモグラ達を攻撃に転用する。
 穴に隠れては攻撃の際に顔を出すその行動パターンはまるでもぐら叩き。だが、何度もそれを繰り返せばパターンも見破られるというもの。遠くに顔を出せばウラワンダーに狙い撃たれる。そして、近くに顔を出せば……。
「サツマイモは―――食べるもんだよ! 潜るもんじゃない!」
 亮馬の一撃が従魔をサツマイモに戻し、一刀両断。こうして、従魔殺埋土竜は予想以上にあっさりと撃破された。

●実験開始
「くそっ……俺に全部荷物もたせやがって……お、重い……」
「ありがとう、シド。後で貴方にもご馳走してあげるからね。……さて、さっそく調理に取り掛かるわよ!!」
 身長を超えているのではないかと思えるほど大量の荷物を背負ったシドにゆらはそれだけ言うと調理道具一式を取り出す。
「……で、何を作るんだ?」
「料理といっても、私はふかしイモだけどね」
 シドの問いに朝霞はそう答えた。
「料理と言えるかはわからんがな。まぁ誰でもできるのはいいことだ」
「これなら手間もかからないし、おいしいし! バターを付けるのもオススメよ」
 ニクノイーサが言うように料理と呼べるか微妙なラインではある。朝霞の料理は他の料理の下ごしらえの段階とも言えるからだ。
 とりあえず安全かどうかを確かめるためにも、他の料理の準備を兼ねてサツマイモを蒸かすと、独特の甘い香りが辺りに広がっていく。
「というかこれ、食べても大丈夫なんだろうな」
「不安といえば不安なんだけど。ちょっと食べてみてくれないかしら?」
「やっぱり俺の役目か……美味い。問題はないと思うぞ。たぶん」
 シドの不安を払拭するためにゆらは当人の口に蒸かしただけのサツマイモを放り込んだ。味は普通のサツマイモと変わらない。むしろ蒸かしたてな分だけ美味しいとさえ感じられた。
「気にしててもしょうがないか。それじゃあ始めるわよ!! みんなでお芋をすりつぶして!!」
「任せろ!! うおぉぉぉぉぉぉ!! ……こんなもんでいいか?」
 問題ないと判断した真赭の合図に従い、緋褪は全力でサツマイモをすりつぶし始める。
「ちょ!? ちょっと!? 汚れちゃったじゃないの!? みんなもそんなに力入れないで……きゃっ!?」
「おっ!? やったなこいつ!! お返しだ!! ……うわっ!?」
 真赭が止める暇もあればこそ。あちこちで飛び散るサツマイモの欠片に緋褪も張り合って更に力を込めてすりつぶし始めた。
 そんなドタバタはあったものの、料理は着実に進んでいく。
「ジャガイモをさつまいもに変えただけだけど結構いけるもんだよ」
 真赭が作ったのは潰したサツマイモをジャガイモの代わりに使用したサツマイモコロッケ。メインのおかずとしても使えるし、それなりに保存も出来る便利な一品だ。
 そんな実験を終えた頃、本番用のサツマイモが調理場に届けられた。

●本番の空気
「みんな、おまたせー。あついから気を付けてね。あつかったら、お姉さんが皮をむいてあげるから、言ってね」
 園児達を待たせないため、朝霞の蒸かしいもが園児達に提供された。空腹に耐えかねて殺到する園児達が火傷をしないように見守りながらの微笑ましい時間が始まる。
「餃子包みたい子はこっちに集合」
「自分で包んだやつが食べたいのはわかるが油で揚げてるそばは危ないから鍋から離れてな」
 その一方で真赭が園児達を集め、サツマイモ餃子の実演。その隣で緋褪は園児達が鍋に近づき過ぎないように見張っている。普段はおままごとでしか出来ない自分で作って食べるという体験を本物の料理で出来るとあって、園児達の人気も中々に高い。
「あ、あまり暴れないでくれ……怪我をするぞ……!! むむ……亮馬、我にこの役目は荷が重いのでは……」
「まあまあ、大丈夫大丈夫。エボちゃん、こういうのも経験だぜ? 男の子はカッコいいの好きだもんな」
「か、かっこいい!? ひ、必殺技を見せてくれだと!? い、いや、そう言われても……」
 元気の有り余っている男の子達に囲まれて戸惑うEbonyを亮馬は見守っている。助け舟を出さないのは信頼故にである。断じて他にやることがあるからないがしろにしているわけではない。
「お……いい香りがしてきたな。大丈夫? 手、切ったりしてないか?」
「りょ、亮馬!? う、うん!! 大丈夫よ!! 今出来たところ。は、はい、あ~ん……」
「こ、こら!! 腕を引っ張らないでくれ!! ロケットパンチなどは装備されていない!! こ、この園児……つ、強い……」
 亮馬とゆらがラブラブフィールドを展開する後ろでEbonyのライフが削れて行く。
「……美味い!! うん、やっぱりゆらの料理は最高だな!! あ、危ないと思ったら助けるから、そっちは任せた」
「ま、待ってくれ!!」
 二人の世界に没頭することに忙しい亮馬はEbonyの遠ざかる悲痛な声を背中で聞き、正面では甘々な声を包み込んでいた。
「ど……どう? 美味しく……ないかな?」
「……うん。美味い!! よければ今度うちにきてご馳走してくれよ」
 様々なサツマイモのお菓子を作るゆらに亮馬は素直な感想を返す。
「そっちに行くと危ないぞ!? ……何!? 悪さをされて困っている? どこだ!?」
 その一方でEbonyは喧嘩の仲裁に奔走していた。
「……うん。このパンケーキ、美味いぞ。真赭も食べてみろよ」
「あ、ホントに美味しい」
「当たり前だ!! ゆらの料理がまずいわけないだろう!!」
「ほ、ほんと!? よかった……まだあるからいっぱい食べてね!!」
「……よければ作り方、教えてもらえます?」
「……あ、よければ俺も作り方……」
「えっと、これの作り方はですね……」
 緋褪に進められた真赭もゆらの料理に魅了される。亮馬がそう言い切るのも無理はないと思えるほどの料理となれば、当然知りたくなるのは作り方。
「こら!! 何故仲良くできないんだ!! 喧嘩の原因はなんだ!? 我に話してみろ!!」
 互いの言い分を聞き、妥協点を模索し、双方の悪い点を認めさせ、互いに謝らせる。そんなことをあちこちで繰り返すEbonyを見守る影が一つ。
「え? 今度も先生として来て欲しい!? そ、そう言われてもだな……」
 それは保母さん達である。園児達の人気者で更に世話もきちんとしてくれるとあればスカウトせざるを得ない。
「何か向こうが騒がしいようだが……楽しそうだから放っておこう」
 シドはそう呟いて、関わらないようにした。巻き込まれたら厄介なことになるのは間違いない。
「それにしてもおかずばっかり作っちゃったなぁ。今度はお菓子でも作ろうかな」
 真赭がそう思うくらいに大量のお菓子がそこにはあった。小さく数を作ったお菓子は数が多い。
「ところで。この余ったお菓子はどうするんだ? とても食べきれないぞ……」
「それは持って帰れるようにラッピングするわよ。よければ皆さん、手伝ってくれる?」
「しかし随分と盛り上がっているな。……ラッピング? よし、少し手伝うとするか」
 シドに聞かれたゆらはそう答えると同時にラッピングに必要な道具一式を取り出した。ニクノイーサも園児達と一緒に手伝って、あっという間に大量のおみやげができあがる。
「……食べて遊んで満足してくれたかなあ。はい、おみやげだよー」
 園児達には普通のサツマイモ。リンカー達には従魔だったサツマイモを使ったお菓子をラッピングして、ゆらはおみやげに手渡した。
 そうして自覚なく餌付けに成功したゆらは園児達からおいも博士として認知されたらしい。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • きみのとなり
    加賀谷 亮馬aa0026
    機械|24才|男性|命中
  • 守護の決意
    Ebony Knightaa0026hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • もふもふの求道者
    來燈澄 真赭aa0646
    人間|16才|女性|攻撃
  • 罪深きモフモフ
    緋褪aa0646hero001
    英雄|24才|男性|シャド
  • 乱狼
    加賀谷 ゆらaa0651
    人間|24才|女性|命中
  • 切れ者
    シド aa0651hero001
    英雄|25才|男性|ソフィ
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