本部

ハロウィンお菓子巡り!

アトリエL

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
15人 / 4~15人
英雄
13人 / 0~15人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2015/11/09 13:59

掲示板

オープニング

●遅い取材?
 商店街はハロウィンシーズンである。
「ん~……これも美味しいよ!」
 文屋七生 (az0012)は取材中である。明らかにお菓子を食べ歩いているだけにしか見えないが、取材中である。
「それは良かったです」
 その後ろをついて回るミカエル(az0012hero001)は彼女と契約した英雄だ。溜息をつく回数が増える日常を送りながらもその取材には律儀について回っている。
「あ、それ写真いいですか?」
 撮影し、味見をし、こだわりを聞く。それらを七生は要点は纏め、わかりにくい部分は言葉を変えてメモを取っていた。
 はっきりと言えばこの時期にお菓子の記事を書いたところで発行される頃にはハロウィンも終わっている。こうした行為は記者としては無駄な行動とも取られがちだが、七生の行動を止める者はいない。正確に言うならば、止められる者も止める者もいなかった。シスコンである兄は率先して応援し、同僚の記者達は止めるだけ無駄だということをよく知っている。
「ですが、これが記事になるころはハロウィンとやらも過ぎた時期ですよね」
「そんなこと気にしてたの?」
 ミカエルの問いかけに七生は不思議そうな顔で目をぱちくりとさせた。
「ハロウィン前に取材しても現場の臨場感は伝えられないんだよ」
「……それはハロウィン後に伝えてもいいものなんでしょうか……」
 七生は当然といった感じでそう答え、ミカエルはそれを聞いて溜息を吐きながらそう呟く。何を言っても無駄だと言うことは知っているし、七生が一度決めたことを曲げないこともよく知っていた。それでも口を挟むのは七生の書く記事に影響を受けて聖書がゴシップ雑誌に変わったミカエル自身の好奇心のなせる業である。要はこの二人はどこか同類なのだ。

●スパイス愚神
「ふむ。お菓子ですか……」
 奇妙な姿のコックさんは商店街の賑わいを見守っていた。
「でしたらこちらが良さそうですね」
 そう言いながら取り出したのは小さな小瓶。それがその手から零れ落ちれば地面につく前にその形が変化する。
「さあ、行きなさい。そして、香辛料を広めるのです!」
 その変化を満足した様子で見守った後、コックさんは商店街の方を指差し、宣言した。

●従魔バニラ
「お、あんたもハロウィンの仮装かい?」
 店員のそんな声が聞こえているのかいないのか。店先に現れたその鎧武者は無言でその腰の銃を引き抜くとお菓子目掛けて発砲した。
「お、おい?! 悪戯にしてもほどがあるだろ?!」
 だが、そんな抗議の声に耳を傾けることも無く、鎧武者は次の店へ向かう。そして、同様に銃を発砲した。
「この野郎!」
 力尽くで止めようとした店員の背後からの一撃を受けても何の変化も無く……鎧武者は淡々とその作業を繰り返す。
 後には呆然と立ちすくむ店員の姿。そこにはバニラの香りが漂っていた。

解説

 というわけでハロウィンです。
 お菓子の取材中に商店街に従魔が現れます。
 悪戯のつもりなのか従魔は銃でお菓子を撃ったりしているだけで、人的被害は出ていません。
 従魔は愚神が見ている間は攻撃されない限りは暴れませんが、現場はハロウィンで賑わう商店街。避難誘導も出来ていないので、現状のままで暴れられたら人的被害は確実でしょう。
 従魔バニラは鎧武者の姿をしており、防御性能が高い従魔です。
 攻撃方法は遠距離から古めかしい銃でバニラビーンズを撃ってきます。
 籠められているのは散弾で威力そのものは高くありませんが命中率が高めになっています。
 また自身に向けて撃つことで回復する能力もあるようです。

リプレイ

●平和な日々
「今日の夕飯は……シチューだな」
 牛乳とポテトサラダ、かぼちゃを手に取り真壁 久朗(aa0032)は言う。
「その後にまたパンケーキ作りませんか? 前に作って頂いたのが本当においしくて」
 セラフィナ(aa0032hero001)は潤んだ瞳で久朗を見上げた。
 本当に女の子って、食いしん坊さん揃いだから、美味しい物には目が無いのだ。
「なら、材料と付け合せの果物でも買うか。荷物、重くなるぞ」
 久朗は空き籠を取ってセラフィナに渡すと店先の果物を見繕い始めた。
「平気ですよ。あ、でもできれば手伝ってくださいね」
「しょうがないな……」
 仲の良い二人。その片割れが、ほのぼのとした表情から一瞬にして戦う者の顔になる。
「ん? 店内が騒がしいな……。何かあったのか?」
「クロさん…… あれってもしかして従魔じゃ……」
 二人は買い物籠を床に置いた。

●ハロウィンの一時
 少し目つきの悪い男の子。優しくつれそう大人の女性。
 一見して姉と弟のようにも見えるが、耳のある者は聞きなさい。
「この服可愛いなー! ななさんの持ってる小物も素敵! ハロウィンだし仮装道具買ってこー♪」
「買うの服だけって言ってなかったかなぁ……? 君の相方なんだからなんか言ってよメグルくん……」
 はしゃぐ御代 つくし(aa0657)にうさ耳パーカーの謂名 真枝(aa1144)が割って入る。
「どうしてあぁも元気なんでしょうね? いえいえ、悪い意味ではないのですよ」
「ほんと、お互い苦労しますね……。うふふ……」
 惚気を思わせるメグル(aa0657hero001)の言葉に謂名 なな(aa1144hero001)は微笑んだ。
「ってかキミら二人一つ屋根の下で暮らしてるのってどーなの? 最早付き合ってんの?」
「わ、わたし達は別にそういう関係では……」
 真枝の言葉にななは顔を赤くしながらそう答える。わかりやすいほどに動揺していた。
「あ、マント! メグルが着てるマントいいよね! お会計お願いします~♪」
 そんな彼女に話題を変えて助け舟を出すつくし。
「そちらにそのままそっくりお返ししますよ?」
「最高のパートナーだよ」
 メグルの切り返しに、真枝は色々な含みを持たせた言葉で応じる。
「あ、荷物、持ちましょうか?」
「うん、じゃあこれとこれおねが……きゃっ!? 何……今の音!?」
 往なされたメグルはこれ幸いと話を打ち切ったその時、突然の発砲音につくしは目を丸くする。
「確かに。何か様子が変ですね」
「銃声…… 近くのようです!? 事件でしょうか……」
 ななの赤面も収まり真顔となり、メグルは戦士の顔になった。
「えぇ…… また事件?ボクは関わりたくないから……」
「主様!!そんなこと言わないで。ほら、行きますよ!!」
 そして、めんどくさそうに言う真枝の尻をななは叩いた。

●テラスにて
 大半はカップルで、女同士はあっても男だけの席はない。
「ラシル、お待たせ! ここのパイ、すごく美味しいわよ!!」
 そんな洒落た雰囲気のテラスで月鏡 由利菜(aa0873)はリーヴスラシル(aa0873hero001)と一緒にパイを味わっていた。
 唯のパイではない。パイ生地の発酵に必要な最低限を除き、完璧な砂糖無添加。
 かぼちゃの甘さを引き出すために熟成させ、水分を飛ばし濃縮したペースト。それをパイ生地と重ね合わせ、日本刀を打つが如く伸ばして塗って折り返し。最後にパンプキンペーストを包んだ逸品。
 おしゃれな女の子にも、甘い物が苦手の殿方の口にも適う上品な甘さだ。
「ありがとう。あ、あまりくっつかれると恥ずかしい。皆が見てる」
 照れるリーヴスラシル。甘いのは寧ろスイーツよりも二人の仲だろう。
「他にもデートしてる人いるから気にしないの。はい、あ~ん♪」
「あ……あ~……」
 由利菜はリーヴスラシルの口元にパイを添えた。そんな二人を見てリア充爆発しろと誰かが願ったわけではないが……。
「なんだ!? 銃声!?」
「だ、大丈夫ですか!? 急いで手当を……。あれ?」
「なんだこれは? ……銃弾……ではないな?」
 由利菜とリーヴスラシルの見たのは銃を発砲する従魔バニラの姿だった。

●取材
「僕も見習いですが教会でお勤めをしておりました」
「そうですか。折角ですからお話しましょう」
――――
 人間とは何でしょうか? このことについて、色々な人々が答えました。
(中略)
 ですからヘブル人への手紙2章6節の所は、神が人類を顧みるために行動されたことを
 意味しているのです。
――――

「おいおいあんた! それを見ながらまともなお説教ができるんかい!」
 そんな敬虔な信者であるセラフィナにミカエルは手元のゴシップ雑誌を開きながら、実に聖職者らしいお説教をやっていた。
 その為か、辻説教には珍しく、人気のある政治家の街頭演説程度には人垣を作っていた。
「……そう言えば最近は聖書を持ち歩く機会も減ってました……」
 そう言うとミカエルは自身の信仰について、思案し始めた。
「……あれ? あそこにいるのって文屋さんじゃないかな? 一緒に取材、できないかな!?」
「いいのか? 今は別件の取材に来てるはずじゃ……」
「大丈夫、うちの部あそこの新聞取ってないし、ミニコミ誌なんて誰も読まないし! 御園ちゃんと計算出来る子だもん」
「御園が大丈夫というなら任せよう」
 明らかに好奇心が勝っている穂村 御園(aa1362)にST-00342(aa1362hero001)は釘を刺すが、問題ないと言われればあっさりと引き下がる。
「きゃ~~~、文屋さんですか? 初めまして! わたしミニコミ誌の記者やってる穂村って言いますけど良いネタあるんですよ??」
「何やら向こうのほうが騒がしいみたいだが……。いいのだろうか……」
 これではTV局の突撃リポーターだと思いながら、エスティの耳は別の場所で起こっている喧騒を聞いていた。

●イベント誘導?
「この金米糖、かわった味がするな……何を混ぜているんだろうか……?」
 鶏冠井 玉子(aa0798)は目を閉じ、味覚に全神経を集中させる。
「なるほど。ハロウィンにあわせてかぼちゃを……悪くはない」
 その金平糖には少量だが、かぼちゃを使っていた。隠し味を見抜いた玉子にパティシエが声をかける。
「ではこちらとそちらのお菓子、お願い出来るかしら?」
 そんな店舗の中で紅鬼 姫乃(aa1678)は会計に並んでいた。
「あ、はい。お待たせしし……」
「お会計を……どうしたの? そんな怯えた顔をして?」
 別の店員が対応するためにレジについたが、動きが止まる。
「……あれは仮装か? にしては場にそぐわない。……従魔か?」
「従魔!? ……あらあら、お菓子が貰えなくて暴れているのかしら」
 玉子の言葉に驚いて振り向いた姫乃が見たのはハロウィンの仮装にしては雰囲気が和風過ぎる鎧姿の従魔。ガシャガシャと歩いてる姿はコスプレと勘違いしてもおかしくはないが、銃の発砲音は本物のそれと変わらない。……尤も、撃ち出しているのがバニラビーンズであるのでコスプレだと言われても納得する人は多いかもしれないが。
「幸い近くにリンカーも大勢いる。俺たちはまずみんなの避難を優先しよう」
「わかりました!! みなさん!! あそこに従魔が……モゴッ!!」
「これだけ大勢人がいるんだ。出来るだけ騒ぎにしたくない。イベント誘導の振りをするんだ」
「わ、わかりました!! ……わー! 向こうに人が集まってるぞー!! 何かイベントかなー?」
 久朗がセラフィナの口を塞ぎ、耳打ちすればその意図を察して、従魔とは反対の方向を指差した。人混みが多すぎて集まっているかどうかはわからないが、好奇心旺盛な人達は自分の目でそれを確かめるために我先にと移動し、それに釣られて他の人達も移動を始める。
「そこの警備員さん、ちょっといいか?……もうすぐここは戦闘区域になる。が、わかるな? 人の多い商店街だ。慌てず騒がず、避難してくれ」
 その隙に久朗は警備員を捕まえ、この辺りに人が戻ってこられないように対処する。
「おさない! かけない! しゃべらない! おかしの三つですね!」
「ちょっと違うような気がしないでもないが……まあ、そういうことだ。さて、俺たちも前線に加わろう」
 微妙に間違っているセルフィナの言葉を流し、久朗は従魔バニラの方へと駆け出した。
「え、何!? 何が起きてるの!? 何かのパレード!?」
「今連絡が入った。どうやら従魔が暴れているらしい」
「ありゃりゃ、ってことは何かした方がいいかな」
「……征四郎が従魔の方に向かってるらしい、数もそれなりにいるようだし」
 驚きの混ざった困惑状態の木霊・C・リュカ(aa0068)にオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)が告げる。
 状況はよくわからないが、人通りの多い時間帯に出現した従魔の対処は一刻を争う懸案事項だ。混乱する中でリンカー達はあちこちで各々対応を始めていた。
「ご協力ありがとうございま~す!! さて、次は……あっちのほうが賑やかかな?」
 取材中の春香はその好奇心から原因と思われる存在のいそうなほうへ向かう。
「あれってひょっとして従魔? やれやれハロウィンの取材に来てみれば、副業が入るとはね」
 春香はそう言いながら、商売道具を副業用のものと入れ替えた。
「良い絵を撮るのを邪魔されちゃ困る。ここはお引き取り願おうか」
 その最たる理由は本業のためであったが。
「はいはーい!! 今向こうでイベント開催中だから行ってみてね~!! あ、ごめん。そっちは今工事中なの~」
「どこから持ってきたんですか、この柵は……ひとまず設置は終わりましたよ」
 咲山 沙和(aa0196)が誘導する中、シュビレイは柵を設置して戻ってくる。柵自体はイベント用にあちこちに点在していたものを無断で取ってきていた。緊急事態なので問題はない。ちゃんと警備員の人達には後で説明したので全く問題はない。
「皆様、ここは慌てず避難を!! ……あら? それほど慌てた様子じゃありませんわね……」
 避難誘導する姫乃が不思議に思うのも当然だが、慌てていないのはこれがイベントのための準備だと勘違いしているからでもある。だって、イベント用の柵にイベント開催中のためこの先立ち入り禁止と書かれていたから。
 駆けつけた夢鍵 アリス(aa1095)は、騒ぎの元凶を見る。
「なんだか騒がしいと思ってきてみたら……。変わった愚神もいるのねー」
「なんにせよ放っておくわけにはいかないよ!! こういう時こそアイドルの出番ね!!」
 レティン(aa1095hero001)はまったりとしているアリスにそう言った。
「とは言っても慌てて出てきたもんだから持ち合わせが……おっ、あそこに良さそうな子はっけ~ん♪」
 やる気になるアリス。そしてアイドルには人を動かす力がある。レティンは最後の一押しをした。
「アリス! 今こそアイドルとして輝く時だよっ!! お客さん集めてぱーって歌って踊るの! どう?」
「ハロウィンの突発イベントってことでそれもいいかも?やりましょ!」
「それじゃあありがたく衣装、借りちゃうね!!急いで準備に取り掛かりましょ!!」
「暴れんのは勝手だけどボクにかんけーないとこでやってもらえないかなぁ?」
「さっき買ってきたものって……。お菓子と……衣装と……」
 かったるそうな真枝を尻目にななはHOPEや知り合いからの要請で大忙し。
「なんかめんどくさそうなことになってるなぁ……。ボクはパスね」
「それじゃあ私たちは避難誘導と従魔退治に参戦しますね。そちらはよろしくお願いします」
 真枝は戦線放棄を漏らしたがななはそれを支援行動志願と受け取った。
「……ちょっと!! 何勝手に決めてるのさ!! ……あーもう!! わかったよ!! やればいいんだろ!!」
 真枝は喚くがわざわざ膝を着き、期待に満ちた瞳で『見上げる』ななの視線に折れざるを得なかった。
「これも世のため人のため。では主様、行きますよ」
 そして二人は動き出す。
「トリック・オア・トリート、お菓子が欲しけりゃこちらへおいで!」
 風見 春香(aa1191)は祭りのイベントとしてごまかすのに大忙しだった。
「なるほど。イベントの1つに見立てて人々と安全を。ではあれが従魔ということは伏せておくべきですわね」
 姫乃は傍らを見る。
「なるほどなるほど。イベントを開催してそちらに人を避難させると。……それじゃあ俺たちは上手いこと誘導してみせるぜ!!」
 虎噛 千颯(aa0123)は来いと白虎丸(aa0123hero001)を呼ぶ。
「な、なんかすでに嫌な予感が満々なんだが……。あ、違う!! 俺のこれは仮装ではない!! ……でござる!! あれもテレビの撮影では無いでござる! ささ、避難されるでござる」
 彼は却って立ち止まる群集相手に四苦八苦。
「言う事聞いて避難してくれた人には白虎ちゃんをモフる権利をあげちゃうぜ! 何気にテレビ出演までしてしまうこの高性能毛並み+尻尾を心ゆくまでモフれるのだぜ……それがただ避難するだけで出来るのだ…こんな破格な条件そうそう無いがそれでも避難しないか!」
「Σ!!? ま! 待て! 何だそれは! 俺の人権は! 前から思っていたが俺には拒否権は無いのか!」
「何を贅沢な。権利はあるが実行出来るとは思うな! 見ろ……この眩い人々の視線を!! お前はこの方々の期待を裏切るというのか!?」
「お前は鬼か! その天使のような悪魔の笑顔はやめろっ!!」
 高らかに宣言した千颯を前に白虎丸の声は、風に乗って虚しく消えて行く。
「皆様。あちらでライブを開催いたします!! 是非ご来場くださいませ!!」
 それを囮に姫乃は誘導を始めた。
「近くのお店の許可もおっけー!! ……あ、今日はカメラ持ってきてなかった……がっくし……」
 落ち込むアリスにレティンは、
「あ、それもお店の人に頼んできたよ。でももう人も集まってきてるし……。なんとかなるんじゃないかな?」
 恐るべき行動力を以って突発企画を遂行する。
「みんな私のライブに協力してくれてるみたい……。このチャンス、絶対逃さないわ!!」
 アリスはやはりアイドルであった。
「七生さんに救援のお願いをしたけど……。既にHOPEの皆が動いてるみたいね」
 由利菜は現状を把握する。
「従魔の情報も確認しておいた。香辛料を広めるためだかに攻撃をしていると。致命傷にはならないが祭りは大荒れだな」
 リーヴスラシルの声に由利菜は自らに渇を入れる。
「祝祭の邪魔なんて無粋です! 早く退治しちゃいましょう!!」
「穏やかな日常を大切に過ごしたい思いが、私達の活動の原動力だ」
 戦いの火蓋が今切られようとしていた。

●ゲリラアイドル
「従魔が……わかりました。みんなを安全な場所に誘導します」
「せっかくお買い物楽しんでたのにっ!」
 役所仕事的な対応を終えたメグルにつくしは憤慨していた。
「……購入した大量の荷物、何かに使えるのでは?」
「……そうだ! みんなでハロウィンパーティしよっ!! ほら、さっき買ってきた衣装でさ!!」
「イベントで人の気を引こうというわけですか。悪くないかもしれませんね」
 メグルはつくしの提案を受け入れると、さっそく準備を始める。人手を集め、会場の設営……一人では限界がある間を持たせるための前座やユニットを組んでくれる他のメンバーの確保などを終えたころにはすでに宣伝効果からか、それとも偶然集まっていたのか人だかりが出来ていた。
「……ほら、これで立派な魔女っ娘だよ♪ レティンさん達も早く着替えて!!」
「あちらのほうは安全そうです。あちらに誘導をお願いします!!」
「さぁみんな!! ハロウィンライブの始まりだよー!! こっちこっちー!!」
 つくしとメグルが駆け回り、準備されたステージ上には御神 恭也(aa0127)と伊邪那美(aa0127hero001)の姿があった。
 前座として披露されるのはナイフ投げ。
「……こんな物が、芸として認められるのか? 確かに注目にはなっているが」
「大丈夫だよ。てれびの中でも同じ事をしていた人が受けていたからね」
 大したことはしていないとばかりに恭也が投げたナイフが伊邪那美の頭の上の果物を射抜く。
「……それよりも恭也、間違ってもボクに当てないでよ」
「安心しろ、99%外さないからな」
「なるほど、それなら……って残り1%は?」
「動くな……1%に当たるぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよ……いま、掠ったよね! ボクの髪が少し切れたよね?」
「鍛錬は欠かしていないから安心しろ。それに何故かわからんが周りの反応もいいみたいだぞ」
「ちがっ……これってそういう演出じゃないから!! あぁ!! 何か勘違いされてるぅ!?」
 伊邪那美が不安と共に声を荒げる中、恭也は淡々とナイフを投げ続けるのだった。
「みんな~!!今日は集まってくれて、ありがとうございま~す♪」
「よろしくお願いしまーす!楽しんでいこっ」
「準備おっけーっ。さぁ!即興ライブの始まりだよっ!」
 前座のナイフ投げが終わるとつくしとレティン、アリスのトリプルユニットによる即興ゲリラライブの開幕である。
「あ、でもセンターは譲らないわよっ!! それじゃあ1曲目、聞いてください!!」
「あ、ずるいわよレティン!! 次はあたしがセンターだからねっ!!」
「はいはい!! でもそう簡単に譲らないわよっ!!」
 センターすら決めていない状態から生じたそんな会話も盛り上げるためのトークの一部と勘違いされたのか、会場は響く爆音を物ともしないほどの歓声に包まれていた。

●撃ち放たれたもの
「人手は充分ってことかな? それじゃあ避難誘導と……ちょっと早目に片付けちゃおうか」
「……融合しても、いいか?」
「うん、このままだと動きづらいでしょ? 周りに人も多いしね」
「よし、それじゃあ一気にいくぞ」
 リュカとオリヴィエはリンクすると従魔バニラに攻撃を仕掛ける。接近しても反応はなかったが、攻撃をすれば流石に動きを見せた。その手に持った銃がお菓子からリュカへと向く。
「危ない!! 伏せろっ!!」
「こちらが攻撃を加えない限りは反応しないようだな」
 オリヴィエの声に反応して、リンカー達は退避行動を取る。攻撃範囲は意外に広い。だが、ガルーが見たところ、鎧武者の従魔はお菓子以外に攻撃を加える様子はない。
「……なんだこれは? 甘い香りがするぞ……」
「は、クロさんこの良い香りはなんでしょう!」
 オリヴィエとセラフィナは発砲された後に漂う香りに首を傾げた。
「しかしこの香り……バニラビーンズか」
「このバニラビーンズ…… 食べれるのかしら?いい香りはするけれど……」
「ん? バニラビーンズ、か? 菓子作りに使われる香辛料だな」
 ガルーや姫乃に続いて、久朗もその匂いを嗅いで、すぐに答えを出す。お菓子に良く使われているため、それがバニラの香りであるということを知らないものも多いほどの有名すぎる香辛料だ。
「バニラの香りは精神安定の効果もあるし、薬学的にも優秀なスパイスだ。何よりこの風味によって小麦粉とバターは洋菓子にまで昇華される。使いすぎは問題だが……奴らの行いは理にかなってはいる」
「い、いきなりどうしたんですか? なにがかなってるんですか……」
「でもこんな乱発したらよ、流石に飽きちまうだろ。皆。良さを広めるだけなら別のやり方だってあるだろ。てめぇの目的はなんだ?」
 語り始めるガルー・A・A(aa0076hero001)に紫 征四郎(aa0076)は戸惑う。語りかけても返事はない。元より従魔とはそういうものだ。
「……なるほどバニラビーンズを射出するというのであれば、ギリセーフ、か。惜しむらくはその姿。鎧武者というのは頂けない。銃のフォルムとは微妙にマッチしてはいるものの、やはり西洋系のスタイルで攻めて欲しかった。悲しいかな討伐せねばなるまい。料理でも仮装でも、調和が取れぬものは排除される運命にあるのだ」
 玉子にも何かが通じたらしい。尤も、通じても許せないものは許せないし、本当に通じてるのかはわからない。
「バニラビーンズね。このまま食べても美味しくないから食べちゃだめだよー。バニラエッセンスって良い香りでしょ? でもね、単体だと凄い不味いんだって」
「……甘いわ、ね?!!からっっ!なにこれ辛いっ!」
 そんな話をしているリュカとオリヴィエの後ろで姫乃が試しに口に含んで洗礼を受けていた。
「調理してこそ、か」
「そうそう。香辛料単体じゃあね」
 納得した様子のオリヴィエにリュカも頷く。
「これは今晩のホットケーキにぜひ使うべきでは!?」
「だ、弾丸だったものだが……だいじょうぶなのか?」
 セラフィナは久朗の不安を無視して、散らばっているバニラビーンズをかき集める。従魔はというとそれを止めるような動きは全く見せていない。
 リンカー達に攻撃されれば対応するために攻撃していたが、それも距離を取れば収まる。
「まったく……愚神ってのは食べ物粗末にしたらいけないって事もわかんないわけ?」
「すでに対応は始まっています。様子を見つつ協力しましょう」
 真枝とななも合流し、従魔バニラの様子を伺う。まだ避難が完了していないことから攻撃をするリンカーはほとんどいない。しかし、付近を見回せばあちらこちらで攻撃の準備を整えている。
 避難が終わったその時が決戦の始まりなのだ。

●スパイス愚神
「なるほど、この被害にあったケーキとそうで無いケーキを比べると……」
 石井 菊次郎(aa0866)はケーキをばらし、蒸留水に溶い薄め、砂糖やフレーバーに隠された繊細な味を判別する。それはケーキを楽しむ人のそれとは明らかに目的が違う。
「これは……この粒は……。隠し味は胡桃と干し柿か。この微かな刺激は……胡椒? いや、山椒だ」
 目を瞑り、口に含み或いは嗅ぎ、自分の世界に入り込む菊次郎を引き戻すことは出来ない。
「なあ、主よ。クローブを得てノリノリなのは分かるが、依頼はそれでは無いぞ……いや多分」
「恐ろしいほどに風味が増しています……ぐちゃぐちゃですが。やはりかの存在が絡んでいると」
 テミス(aa0866hero001)の24回目の呼びかけでかろうじて現世に菊次郎が帰って来た。
「……一応、調査になっておるのか? それはそうと、従魔の出所と思わしき場所がわかったぞ」
「では向かいましょうか。従魔捕獲のために、主の元へ!!」
「……なぁ、主よ。今回の目的、本当に理解しておるのかえ?」
 不安を隠さないテミスの問いに菊次郎は答えない。
「とは言っても。どうやって話を聞き出すんじゃ? よもやストレートに聞く訳ではあるまい?」
 沈黙が回答とも言えるが、不安なテミスは引き下がらない。
 それに答えるように菊次郎は足を止め、振り返る。
「失礼、お久しぶりです。早速ですが、一般にバニラが香りを現すには長期の熟成を必要としています。あのバニラ程の香りを引き出すのにはどれだけの時間を?」
「……主よ。主人と顔見知りなのか? いや、知り合いでもおかしくないと思うが」
 そんな菊次郎の対応に疑問を抱いたテミスが振り返ればそこにはコックさんがいた。
「残念ながらデセルとは繊細なもの。一つの風味が突出しては少なくとも菓子としては失敗でしょう」
「ええ、私はスパイスの可能性を確かめたいだけです」
「そこで提案なのですが複数のスパイスを……はい、大人の味です。どちらかと言えば大人も大人、人生諦めた方向けです」
(……何やらよくわからんがここは主に任せておこう)
 菊次郎とコックの会話を聞き流しながら、テミスは様子を伺う。一見するとハロウィンのコスプレのような風貌だが、それはキグルミとは明らかに違う何かだ。
「所で愚神を素材とする案は検討して頂けましたか? 御身の作り出すスパイスを味わい確信しました。これなら行けます!」
「今探している最中でして……もう少しで見つかるかもしれません」
「……後は素材です。この瞳の愚神を探し出し最高の素材を手に入れるべきです! ……ん? まさか既に?」
「……どうした主よ? 物凄い形相をして?」
「急ぎましょう!! 早くしないと先を越されてしまう!!」
「え? ええ!? 何が! 何が起きたんだ!?」
 テミスは豹変した菊次郎を訝しむ間もなく、腕を掴まれ連行された。
「尤も、今日は別の趣向を試しにきただけなのですが……ね」
 そう呟いたコックさんの背後に別の影。
「お久しぶりです!! 奇遇ですね~~やっぱり運命ですよね~~!? ふふふ……スパイス従魔の現れる所にスパイスシェフ現る! なぜかな??」
「ええ、奇遇ですね」
 御園にコックはそう言って微笑む。キグルミ同然のその表情が変わったことからするとやはりキグルミではない本物なのだろう。
「急に割り込んですいません。あ、そちらの話はもう終わったのですか。ではちょうどよかった」
「それはシェフのスパイスに対する執念ですね! やっぱり凄い! 御園感動です!! やっぱり、スパイスを広める為にはそれだけでは駄目ですよ! お料理とのマリア―ジュです。お食事会……」
 謝罪するエスティを後ろに追いやり、御園は前へ前へとぐいぐいと突っ込んでいく。
「ふむ、そろそろ頃合のようです。料理は時間も大切ですから」
「御園。1度に話すのはよくない。混乱しておられるぞ」
 そんなコックの独り言をエスティは混乱と受け取った。
「食事会に関してはいつか機会があればご招待差し上げましょう。今日のところは次の仕込みもありますのでこれで失礼させていただきます」
「あ~~、残念、また行っちゃった……絶対今度ですよ!」
 そんなコックの背に御園は大きな声をかけて見送ると、銃声が聞こえてきた。
「御園、従魔の活動が活発化したようだ。ST-00342は直ちに増援に向かう事を提案する」
「へ!? あ。うん!! 忘れてたわけじゃないよ!! それじゃあすぐに向かおっか!!」
「やれやれ……」
 溜息混じりのエスティを連れ、御園は現場へと向かう。
 その先ではすでに交戦が始まりつつあった。

●従魔バニラ
「こちらも付近の住民の避難を確認しました。従魔への攻撃を開始します!!」
「他のエージェントに続く。奴へ重い一撃を叩き込む!」
 由利菜に応じてリーヴスラシルは従魔バニラへと向かう。
「住民の避難は完了したようだな。続けて奴の排除に移る」
 玉子も前に出るが、それらの動きを牽制するように従魔バニラが発砲した。
 先ほどまでは誰が近付こうとも危害を加える様子などなかったと言うのにだ。
「うっし。後は従魔退治ね!!」
 避難完了の連絡を受け、沙和はスナイパーライフルを構える。
「鎧っつっても隙間はあんでしょ? じゃーそこねらってくっきゃないでしょー常識!」
「……目が良いのだけが取り柄なんですから、せいぜいよく見て狙うんですよ。外したら貴方はただの能無しです沙和」
「超しつれーね!! 私が外すわけないでしょ!! ……あ、でも万一の時はフォローお願いね」
「はいはい。せいぜい頑張ってくださいね。念の為備えておきますよ」
 気楽な沙和にシュビレイはそう言うとリンク状態の意識を沙和に預ける。
「ここからの狙撃なら気がつかれまい。後はタイミングをあわせて……」
 それと全く同時刻……別の建物の上から玉子も狙っていた。
「……うっし、命中!! やっぱ私ってすごくね?」
「はいはい、褒めてあげますよ。狙撃は貴方のもう一つの取り柄でしたね。忘れていましたよ」
 鎧の一部が弾け飛んだのを見て、沙和は喜びながら再度狙いを定める。
「よし!! 命中……が、他にも同時攻撃した者がいるようだな。本当に射止めたのは誰なのか」
 弾けた鎧を見て、玉子は笑みを溢した。鎧は砕け易い素材だったのか粉砕されている。それは一撃目が鎧を弾き飛ばし、二撃目が反対側から衝撃を加えたことで生じた現象だ。
「さて、では私もお相手いたしますわよ!! 覚悟しなさい!!」
 鎧が爆ぜると同時に姫乃が飛び出す。他のリンカー達も同様だ。
 それに対して従魔バニラは銃弾をばら撒いて応戦する。
「当たっても致命傷にはならないけど…… 周りの店が壊されちゃう……」
「せっかくの祭典に水を指して…… この代償、高くつくぞ!!」
 お菓子に撃っていた時よりも威力があるとはいえ、リンカー達にとってはそれほど痛くはない。
 しかし、その威力は周囲の店を壊すには十分なもの。由利菜とリーヴスラシルの怒りを誘発するのにも十分な破壊力であった。
「でもこんな乱発したらよ、流石に飽きちまうだろ。皆。良さを広めるだけなら別のやり方だってあるだろ。てめぇの目的はなんだ」
「と、ともかく!! 目的が如何であれ、それが人を傷つけるものなら倒さねばなりません!」
 ガルーの叫びはともかくとして、征四郎の言葉にリンカー達は頷くと一斉に仕掛ける。その銃口が従魔自身の傷を癒す効果があるようではあったが、多勢に無勢の状況は最後まで変わることなく……鎧や鞘が砕かれるたびにバニラの香りを放ちながら従魔バニラはその生涯を閉じた。
「……どうやら従魔は退治された後のようじゃな。しかし……この有様はなんだ?」
「お……遅かった。……いや、まだだ! これで二つ目! ……ようやく私も道を歩み始める事が出来ました」
 漂うバニラ臭にテミスが顔をしかめ、菊次郎は従魔バニラがいたと思われる場所へと駆け寄ると一つのビンを探し出す。
「もしかして……それが目的だったのか? 気味が悪いので余り触りたくないのだが」
「鎧が剥げた……確か鞘にも香味が……使えるのか!」
「……そちらの道には進んで欲しく無いのだがな、主よ」
 テミスは残骸を集めて回る菊次郎にそう溢すのであった。
「あっちでも何か大きなイベントをやってるみたいだね。後で取材させてもらおっと」
 そして、春香は取材に戻っていった。

●握手会開催中
「お疲れ様でした。従魔も無事、退治できたそうですよ」
「あ~、楽しかった!!よければまた今度やろうね♪」
 メグルとつくしが安心したのもつかの間……イベントはまだまだ続く。
「みんな~! 今日はありがとー! それじゃあ握手会にうつりまーす!!」
「あ、それはそうと。従魔は退治できたみたいだよ」
「……あ。すっかり忘れてた。でも無事に済んだならよかったかな」
 アリスとレティンは営業スマイルを浮かべたままでそんな会話をしていた。そんな姿を撮影するのは駆けつけてきた春香だ。
「写真、頂けますか?」
「ん? 写真……いいよ。あ、いろいろあったから上手く撮れてる保証はないけど。それでよければ」
「ありがとうございます!! ……うん。ちゃんと動画ももらえたし。帰ったらこれをアップするだけだね」
「うふふ……これでまた大物アイドルへ一歩近づいたわ……全世界にあたしの名前が知れ渡る日も近い……」
「な、なんか顔が怖いよ……ほらほら!! まだお客さんいるんだからさ!! 笑顔笑顔!!」
 レティンは春香から色々と受け取り、そうまだまだアリス達にとってアイドルの星は遠い。

●事後処理中
「うえぇ……まだまだ終わりそうにないよ……」
「街中いい香りがするな……どれだけばらまいたんだ、あの従魔……」
「お礼はもらえることになってるみたいだけどさぁ……いい加減帰って寝たい……」
 リュカとオリヴィエの不満も当然。町中の後始末はHOPEからの依頼である。
「これはまだ使えそうだな、頂いていこう……ふふ」
 玉子達のような例外を除けばこんな作業は頼まれてもしたくはないくらいだ。
「さて、後は残ったお菓子をどうするかですが……」
「さすがに捨てるのは勿体ないし…… とりあえず食べてみていいかな?」
「先ほどの従魔のせいで味がめちゃくちゃになってるみたいですわね……」
「そのまま食べるのはやめておきなさい、はしたない。せっかくのハロウィンですから、何か作りましょう。パーティーはまだ終わりませんよ」
 メグルやつくしに姫乃も山積みになったお菓子を前に悩んでいた。
「こちらもまだ大丈夫だ。再調理しようと思うのだが、いかがかな?」
 玉子の言葉に先ほど見抜かれたパティシエが厨房の使用許可を出す。
「えぇ。調理はお任せしますわ」
 姫乃はそれらを運ぶのを手伝えば、それが終わることには最初のお菓子が別物になって出てくる。
「……さて、完成だ。みんなお疲れ。改めてパーティー開始と行こうじゃないか!!」
 玉子の声に歓声が答えた。
「へぇ、こういう対処法もあるんだな。勉強になるぜ」
「おいしいおかし、いっぱい食べれて得でしたね」
「後片付けはまだ残っているがな。それとあっちのバカ騒ぎ……」
「……まぁ。本人も楽しそうですから。ほおっておいてもいいんじゃないですかね?」
「俺はやだぞ。俺も疲れたからな」
「そのうちゆるキャラとしてデビューできるかもしれないですねぇ……」
「いやー凄いなーモフリスト達の情熱って。もういっそこのままデビューしちゃう?」
「み……見てないっで助けろ! 尻尾はトリミングしないでいいでござる!」
「じゃ、俺ちゃん買い出しの続きしてくるから~あとはよろしく~♪」
「ち……千颯ぁぁぁ! せ……征四郎殿! オリヴィエ殿! 助けて欲しいでござる!」
「ん~ 駄菓子屋やってるより儲かるかもなぁ……ちょっと考えてみる?」
「誰でもいい!! 誰でもいいから助け……ぐえっ……」
 片付けたお礼にと被害にあったお菓子を受け取ったガルーと征四郎の目の前では千颯が笑いながら困っている白虎丸をからかっていた。
「あぁ。あのイベントまだ終わってないのか。……征四郎、助けてやってくれ」
 オリヴィエに言われて助けようとする征四郎が助け出せたのはそれから数十分後のことだった。
「あ、今回のお礼で。店の方からいっぱいお菓子貰えましたよ。これだけあるなら……パンケーキはまた今度でしょうかね?」
「いつでも作るさ。お前が作れるようになるまでな」
「うっ、もう爆発パンケーキは作りませんので……」
「それまでこれはお前が保管しておいてくれ」
 呻くセラフィナに久朗はそう言って集めたバニラビーンズを預けた。
「あっちの虎さん、可愛かったなぁ……御園も触りたかった……」
「何やら助けを求めていた気もするが……気のせいか?」
「助けを求めているといえばあのナイフ投げもすごかったよねぇ!! あの子、なんか本当に助けを求めてるみたいだったもん!!」
「あれは本気だった気もするが……」
「あ、あっちでアンコールライブ開催中だってさ!!見に行ってみようよ!!」
「御園、人ごみのなか走ると危ない。怪我するぞ」
 御園とエスティはまだ続くハロウィンを楽しむ。終わらないように思える祭りもいつかは終わる。だからこそ今この時を精一杯に楽しむのだ。
「なんとか無事に終わってよかったな。何か知らんがお捻りと粗品をもらえたぞ。後手紙もあるが」
「……手紙のほうはあんまり見たくない」
 恭也の差し出した手紙から目を逸らし、伊邪那美は不貞腐れていた。
「すでにバニラの香りがついている以上は、香料は使わない方が賢明だな……」
「ねえ、前に料理は出来るけど自慢出来る物じゃないって言ってなかったけ? 普通はハサミ一つで飴を動物とかの形にしたり、果物を使った洋菓子って焼き上げれないと思うんだけど」
 恭也はそんな伊邪那美の前でハサミを取り出すとバニラビーンズの混ざった飴を加工して、差し出す。味はともかく形は立派な動物さん。ビーンズ部分を目や鼻に見立てた立派な細工だ。
「これも鍛錬の賜物だ。その気になれば豆腐だってできる」
「……それって嘘だよね? 絶対嘘だよね!?」
 真顔で言う恭也を前に伊邪那美はいつも通りの明るさを取り戻していた。
「お祭りはヒーロー達の努力によって大成功!! と言ったところかな?」
 春香は取材の最後をそう締めくくって、メモを閉じた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
  • 花咲く想い
    御代 つくしaa0657
  • いたずらなアイドル
    夢鍵 アリスaa1095

重体一覧

参加者

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 告解の聴罪者
    セラフィナaa0032hero001
    英雄|14才|?|バト
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 黒白月陽
    咲山 沙和aa0196
    人間|19才|女性|攻撃
  • 黒白月陽
    シュビレイ・ノイナーaa0196hero001
    英雄|23才|男性|ジャ
  • 花咲く想い
    御代 つくしaa0657
    人間|18才|女性|防御
  • 共に在る『誓い』を抱いて
    メグルaa0657hero001
    英雄|24才|?|ソフィ
  • 炎の料理人
    鶏冠井 玉子aa0798
    人間|20才|女性|攻撃
  • 食の守護神
    オーロックスaa0798hero001
    英雄|36才|男性|ドレ
  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
    人間|25才|男性|命中
  • パスファインダー
    テミスaa0866hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • いたずらなアイドル
    夢鍵 アリスaa1095
    人間|17才|女性|生命
  • エージェント
    レティンaa1095hero001
    英雄|16才|女性|バト
  • 名探偵
    謂名 真枝aa1144
    人間|17才|男性|回避
  • スパルタティーチャー
    謂名 ななaa1144hero001
    英雄|19才|女性|シャド
  • エージェント
    風見 春香aa1191
    人間|20才|女性|命中



  • 真実を見抜く者
    穂村 御園aa1362
    機械|23才|女性|命中
  • スナイパー
    ST-00342aa1362hero001
    英雄|18才|?|ジャ
  • エージェント
    紅鬼 姫乃aa1678
    機械|20才|女性|回避



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