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極北の地を取り戻す為【相談板】
最終発言2018/11/22 19:04:53 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/11/22 18:37:09
オープニング
●戦線を前へ、前へ
H.O.P.E.のエージェント、ミーナは姉のヤーナと共に北極地点の中心に来ていた。ここに来てからというもの、眩暈が酷い。それだけでなく、体力の減りも早い。
ヤーナはモスケールを起動させて、敵の動向を伺う。
「どうだ、姉貴?」
「……多すぎるわ。階位は……この反応を見ると、ほとんどがケントゥリオ級ね」
はぁ、とヤーナは溜息をついた。深呼吸をして、しっかりと自分の足で立つ。
「でもそれをどうにかするのが、あたしたち――H.O.P.E.のエージェントの役目だ!」
己の拳を己の掌に合わせ、ミーナは笑う。そうね、とヤーナは同意した。
全ては、王をこの世界から切り離すために――。
●氷は嗤う、混乱を齎す為に
マガツヒ構成員――いや、もしかしたら”元”がついてしまうのかもしれない――のハガルは、ヤーナ達とは別の場所から愚神の群れを見ていた。
あれから、たくさんの事がありすぎた。
ありすぎて、何をしたらいいのかすら分からなくなった。
だが一つだけ、明確なものがあった。
楽しくやっていたのだ。H.O.P.E.が出しゃばってくるまでは。
……だから、最後になってもいい。
H.O.P.E.に一撃を――。
「――利用させてもらうよ」
解説
北極地点の中心で、出現した愚神を全て討伐することが今回の目的です。
以下の情報に注意して、目的を達成して下さい。
◆戦場について
空は白く、昼夜はなく、リンカーや愚神・従魔を除く生命体は黒い結晶の柱と化しています。
(この辺りには黒い結晶の柱は見当たりません)
◆愚神について
数は不明です。空を飛んでいるもの、地面を潜るもの、巨大なものなど、様々な形態の愚神がいることが確認されています。
階位はOPにもありますが、ほとんどがケントゥリオ級です。
◆同行NPCについて
二人のリンカーが任務に同行しています。
ヤーナ・ヤーリッチ・ヤーブシュカ 英雄:ゼムリャー(バトルメディック)
ミーナ・ヤーリッチ・ヤーブシュカ 英雄:セマルグル(ドレッドノート)
「~して欲しい」と提案すれば、二人は応じてくれます。
二人とも、ケントゥリオ級を相手に出来る実力です。
◆その他
何か分からないことがあれば、西原 純(az0122)が答えます。
※以下、PL情報
今回のフィールドには以下の制約があります。
・BS減退が付与。ラウンド毎にHPが15~30減少。アイテム/スキルで回復不可
・攻撃時(物理/魔法両方)、命中判定にマイナス修正(-6~-36)が発生します。
・スキル使用時、威力が二倍になるor威力が二分の一になるor通常威力のまま、の判定が発生します。
この判定に使用される能力値は「特殊抵抗」です。高ければ高いほど、威力が二分の一になる確率が下がります。
ハガルは、氷を操る能力者です。
苦戦しているところに現れて、奇襲をしかけようとしています。
リプレイ
●Grip the victory!
百薬(aa0843hero001)と共鳴した餅 望月(aa0843)は馬のような姿をした愚神の群れに飛び込んだ。聖槍エヴァンジェリンを振るう。切っ先が相手の胴体を切り裂く。濁った、醜い悲鳴。
――ケントゥリオ級のバーゲンセールだよ。
(だからどこでそんな表現覚えてくるのよ)
百薬に突っ込みつつ、望月は一体を串刺しにした。手応えあり。けれど勝利の余韻に浸っている暇はない。次、上から。鳥のような敵。
(……しかし言い得て妙ってトコだね。全部倒さないとお日様拝めないかもね)
荒木 拓海(aa1049)はメリッサ インガルズ(aa1049hero001)と共鳴し、ゴーレムのような姿をした愚神に狙いを定めた。相手は動きが遅い。SVl-16で狙い撃つ。次から次へと現れる愚神を息つく暇もなく、攻撃する。不意に地面が揺れるのを感じて、拓海は武器を大剣へと換装した。拓海が飛び上がったその瞬間、敵が顔を出す。巨大なムカデ――と表現すればよいだろうか。
――シベリア鉄道に引き続き、また虫ね。
(関連性があるのかは……気にしてられないな!)
大きく口を開くムカデに拓海は大剣を突き立てる。相手は絶命しなかった。しゅーしゅーと息を吐いている。拓海は仲間達の様子を確認した。
大丈夫。
――拓海、新手よ。今度は……スライム?
不定形の、ぐにゃりとした塊が複数、拓海に向かっている。拓海は少しだけ後退した。武器を換装する。フリーガーファウストG3に。もちろんムカデにも注意を払う。
根競べの始まりだ。
「こりゃあロシア以上の寒さだな……」
百目木 亮(aa1195)は呟いた。防寒はしてきたが寒さは変わらない。彼と共鳴済みのブラックウィンド 黎焔(aa1195hero001)がライヴスの中で囁く。
――敵は強く、劣悪な環境じゃ。心してかかろうぞ。
「ああ」
亮は真っすぐ前見た。おぉぉぉんと遠吠えが聞こえる。狼の愚神か。
「迎え撃つ」
フリーガーファウストG3を亮は構える。狙いを定める。たったそれだけで、体力が奪われていく。
「さっさと片付けるか!」
時鳥 蛍(aa1371)は自分からグラナータ(aa1371hero001)の手を取った。何度もしている共鳴。しかし今回は――否、以前のよりも心地いい。まるで心と心がぴたりと重なったような。
蛍は息を吸って、吐いた。
「まずはここに現れた敵たちを」
――残さずノックダウンッス!
仲間の輪から出すぎず、蛍は剣を構える。向かってくるのは、骸骨の群れ。少しばかり引き付けてから群れの中に飛び込む。
疾風怒濤。
くらり、視界がゆがむ。
全てを巻き込むことは出来なかった。それでも確実に、何体かは屠り、何体かには致命的なダメージを与えることは出来た。
――これが完全に愚神の手に落ちた世界……。
ライヴス内でマイヤ サーア(aa1445hero001)が言う。
「……まさに”漂白された世界だな”」
迫間 央(aa1445)は通信機が使えるかどうかを確認した。大丈夫。通じる。振り返り、そこに立つヤーナに声をかけた。
「後衛として、全体を見てくれ」
「分かったわ」
彼女の頷きを見届け、央は敵に向かう。相手は植物の姿をしていた。本来であればこのようなところに咲く筈のない、鮮やかな花。眩暈と厳しい寒さを感じ、央はぐ、と地面を踏みしめる。
「愚神勢力圏の装備対策はしてきたつもりだが……」
――この環境、私達のようなタイプにはかなり厳しいわね……。
「被弾せず、倒し切るしかあるまい!」
天叢雲剣を央は構える。ジェミニストライクを発動させ、相手の行動の抑止を狙った。
リオン クロフォード(aa3237hero001)は後方で弓を構えていた。狙うは、妖精のような姿をした愚神。彼女達の周りに炎が見える。相手の射程をリオンは警戒した。
『ほとんどケントゥリオ級ってさらっと言われたけど、ケントゥリオ級ってだいぶ強いからな……!』
――ヴァルヴァラもアルノルディイもケントゥリオ級だったもんね……。
ライヴスの中、藤咲 仁菜(aa3237)が呟く。
――あの2人はケントゥリオ級でも強い方だと思うけど。
『ここにいる奴等があのレベルじゃないといいなー……まぁどんなに強くても、負けるつもりはない!
――うん!
リオンは矢を放った。
――流石に数が多いね。
「でも、詩乃や皆さんが居れば必ず勝てます」
氷室 詩乃(aa3403hero001)と共鳴し、柳生 楓(aa3403)は赤の右目と青の左目で前を見つめていた。その視界に映るは魚の姿をした愚神。異様に発達した前びれと尾ひれを使って、こちらに向かってくる。楓は守るべき誓いを発動させた。敵の視線がこちらに向くのが分かる。周りに居る味方に聞こえるよう、楓は叫んだ。
「皆さんは私が守りますから……絶対に、勝ちましょう!」
――これくらいの量の愚神もちょっとは見慣れてきたっすね……。
『駄目だ、耿太郎』
君島 耿太郎(aa4682)に対し、アークトゥルス(aa4682hero001)は語気を強めて言った。二人は既に共鳴済みだ。
『慣れは油断に直結するものだ。愚神の波を侮るなよ』
――そうっすね。
耿太郎が気合を入れたのが、アークトゥルスに伝わる。アークトゥルスは小さく笑った。立っているだけで体力が奪われる。時間勝負だ。
『行くぞ』
●Glory in our hands!
「あたしの剣からは逃げられないよ!」
皆の後ろで、ミーナが大剣を振るい、悪魔のような姿をした愚神を切り裂く。楓に集まってきた敵の集団にアークトゥルスはライヴスショットを放つ。周囲に気を付けながら、蛍は敵を攻撃する。ブレイジングランスに武器を持ち替え、亮も応戦した。《白鷺》/《烏羽》、一対の槍を持つ望月が迫りくる敵に一撃を与えた。戦力は拮抗。しかしこの場所が、この空間が皆の体力を奪っていく。央が銀色の腕で敵の足元を薙ぎ払う。そして叫ぶ。ここで敵を倒す……拓海、お前が決めろ! 任せろ、央! 拓海は大剣を振るう。眩暈に耐えて、相手を屠った。後方からリオンが妖精を撃ち落とす。ヤーナが叫ぶ。皆さん、炎が降ってきます! 皆は防御体勢を取った。降り注ぐ炎と、目の前の敵。二つの攻撃に耐える。消耗が激しい央と蛍に対して、リオンはケアレインを発動させた。治癒の力を帯びたライヴスが降り注ぐ。その煌めきはいつもより強いようにリオンは感じた。央と蛍の体力が全快する。二人はまた前線に戻っていった。敵の断末魔。誰かが膝をつく音。血の赤に染まる白の大地。破滅を渇望する咆哮と、希望を求める叫びがぶつかり合う。攻撃、防御、回復、攻撃、攻撃、回避、回避、防御、攻撃。スキルもアイテムも消費速度が速い。
「数で来たね。効率よく行こう!」
望月が地上を駆け巡る。背中の大きな羽がはためく。飛べる訳ではない。しかしてその姿はまるで”飛んでいる”ようだった。蛍は剣を振るう。魚を屠り、こちらを狙い急降下してきた鳥を切る。はぁ、と息が零れた。妙な空間ッス、とグラナータが言う。なんかこう、気分がよくないというか。グラナータの言葉に、蛍が返す。長いは無用ということですね。アークトゥルスが亮に声をかける。あの植物が弱っている! 目の前に居た魚を槍で貫通してから、亮は返事をした。アークトゥルスの攻撃に重ねるように、槍で植物の茎の部分を割いた。ち、と亮は舌打ちする。本当は花の中央を貫くつもりだったのに。さっきから攻撃が思ったように当たらない。ここは体力もそうだが、敵を狙う、といった集中力も削いでしまう空間なのか。ムカデ型の愚神が地中へと潜る。ゴーレムと交戦中だった拓海は、は、と顔を上げた。地響きが向かう方角、リオンのところだ。リオン! と警告する。リオンの初動が遅れた。ムカデがリオンを突き上げる。空中に跳んだ彼女を鳥が狙う。まずい、とリオンは防御体勢を取った。衝撃。地面に落ちる。大丈夫か! 大丈夫ですか! と方々から声が行きかう。金属と金属がぶつかる音。肉を断ち切る音。攻撃が当たらない。消耗が激しい央に対してヤーナがケアレイを発動させる。央の生命力が回復した。皆の呼吸が激しくなっていく。手から力が抜けそうになって、望月は《白鷺》/《烏羽》を握り直した。なるべく敵がまとまっている所を狙い、楓がライヴスショットを放つ。何体かの愚神が吹き飛んだ。アークトゥルスはもライヴスブローで攻撃を行った。いつもよりも効いた。
「……っ、数は減ってきた、が」
――やはり、厳しいのう。
亮は額の汗を拭った。あと何体だ。その亮の言葉を拾ったのか、ヤーナが答える。まだ来ますっ……! 上等! と答えたのはミーナだ。妖精型愚神が風を紡ぐ。その鋭き風は央を狙った。避けようとして、失敗する。リオンが居る場所まで吹き飛ばされた。リオンは戦況を見渡す。接敵して戦っている仲間たちの顔に疲労の色が見える。リオン自身も、眩暈が一層ひどくなったのを感じていた。自身を奮い立たせるためにもリオンは言う。負けるつもりはない!
「皆、こっちへ! ……ケアレイン!」
先程のように力強い治癒での発動をリオンは期待する。だが、結果はいつも通りだった。少しがっかりするリオンに央が声をかける。
「頼り切りの俺が言えたことではないが……無理するな。仁菜、リオン。お前達が要だ」
――はい、追間さんっ。
戦いが激しさを更に増していく。なるべく弱っている敵を狙って、アークトゥルスは剣を振るった。
『前後左右に上下も注意とは。まったく、やりにくい』
――本当っす。
「っ!」
「時鳥さんっ!」
魚型愚神の攻撃から、楓が蛍をカバーリングする。リオンは間に合わないと思ったのか、ケアレイを発動させた。強い輝きを放つ光。楓の生命力が全快する。ほぉ、と黎焔がライヴスの中で感嘆の声を出した。
スキルと道具と――今までの経験、そして肩を並べる仲間達への信念。
持てる限りの力で十人は愚神に立ち向かっていく。
望月が、拓海が、亮が何体目かのムカデを倒した。
央が女郎蜘蛛を発動させる。いつもより、多くの敵を絡み取った。そこへ蛍とアークトゥルスとミーナが突撃する。白い大地が愚神の残骸で汚れていった。リオンはヤーナと協力して、皆の怪我の状況に応じて、回復を務めた。
最大限の力。
希望が――広がっていく。
「皆さん……もう少し……あと四体ほど、ですっ!」
ヤーナがそう叫んだ。
刹那。
――亮っ、上じゃ!
黎焔の声に、亮は愚神を攻撃するのをやめて、後ろに跳んだ。今の今まで亮が居た場所に巨大な氷が落ちる。それに巻き込まれる形で、亮が今まで相手していた愚神が倒れた。
「気づくなんて――H.O.P.E.にしてはやるじゃないか」
アイスグリーンの瞳の男。その左腕は機械化されている――。
「誰だあんた」
「名乗る必要はないね」
男の言葉には棘があった。亮は男の正体を察知する。……ヴィランか。
「……俺らが言うのもなんだが、こんなくっそ寒いところまでご苦労さん」
亮は武器を構えた。新手の出現に気づいた拓海とアークトゥルスが駆け付ける。男を見て、拓海は口を開いた。
「また会ったな。相変わらず何かの影で動くのが好きなようだな……今度は愚神の影か?」
「知ってんのか?」
「はい。あいつはハガル。……マガツヒです」
拓海の言葉に男――ハガルが眉根を寄せる。アークトゥルスが剣を握り直した。
『このようなところで何をしている』
「そんなの決まっている……お前らを殺すためだ!」
ハガルの両手に氷が集まる。させるかと、アークトゥルスは彼の懐に飛び込んだ。剣を振り下ろす。避けられた。
――やりすぎちゃダメよ。
メリッサの言葉に頷き、拓海は一気呵成を発動した。ハガルに向かって、大剣を振るう。バランスを崩せば――と思ったが、ハガルに避けられてしまう。ハガルはにやりと笑って、氷の雨を作り出した。三人は防御体勢を取る。受けた傷を亮がケアレインで治療する。強い光。削られた体力が回復する。
亮は皆の状況を伺った。タイミングよく、視界に央をカバーリングする楓の姿が入る。これはハガル相手に時間をかけている余裕はなさそうだ。
ハガルが目の前に氷の壁を作り出す。それが何を為すものなのか、アークトゥルスは良く知っていた。壊す、と一声漏らして、アークトゥルスはハガルへと向かう。氷の壁へと攻撃を仕掛けた。それを見た蛍とミーナも壁へと突き進む。
「そんなもので壊せるかっ!」
ハガルが再び氷の雨を作り出す。
一方、残った愚神――獣の顔と人の体を持つ巨人、もやもやとした雲、首長亀――を見据え、楓は大きくジャンヌを振った。自分の移動力は落ちる。けれども、これで皆へのダメージは減る……!
「皆さん、勝ちましょう!」
――ボクたちはまだまだやれるからね!
リオンは央へケアレイを使用した。スキルの残り使用回数が心もとなくなってくる。しかしまだ出来ることはある。
「諦めない!」
――そうだよ、リオン!
央がぎゅ、と天叢雲剣を握り直す。その姿を見て、マイヤは歯がゆさを感じていた。
――この環境から央を守れる能力がないなんて。でも、それでも私は私にできる方法で。
マイヤは祈りを捧げる。神剣の加護を祈った。
――私の力で素戔嗚尊に勝利を……奇稲田姫の名にかけて!
巨人を見据え、央は敵に向かった。央に気づいた巨人がその腕を振り下ろす。ぎりぎりのところで何とか避けて、央はその腕に飛び乗った。刀身を突き立てる。獣の声。攻撃の手を緩めるつもりはもちろんない。
――終わりが見えたね。
「じゃあ、一息に片付けようか!」
望月が首長亀へと攻撃をしかける。白と黒、一対の双槍で首を狙う。流石に払われたが、受け身をとってダメージを軽減させた。
戦場に氷の雨が降る。リオンは央をカバーリングした。傷ついた皆にヤーナがケアレインを発動させる。
不意に、音が響いた。
アークトゥルスが氷の壁を破壊したのだ。蛍がハガルに切りかかる。
「邪魔はさせません……ので」
「黙れ!」
機械化した左腕でハガルは氷の塊を生み出す。蛍はメーレーブロウを発動した。これから大きくなろうとしていた氷の塊が砕け、ハガルがバランスを崩した。そこを拓海が狙う。ハガルの腹部を強打した。アークトゥルスも攻撃を重ねた。眩暈。……耐える!
がく、とハガルが膝をついた。
しかしアイスグリーンの瞳にはまだ敵意が宿っている。
「やめときな。もう戦えないだろ」
肩で息をしながらミーナがハガルに問う。ハガルは首を振り、無言で両手を空へ向けた。その掌に再び氷が集まる。あれが、放たれたら……落ちてきたら。
「……滅んでしまえ、全部!」
氷の塊が宙に浮き、誰を狙うこともなく落下する。リオンが、楓が、残り体力の少ない央と蛍のカバーリングを行う。残りの者は防御態勢をとった。戦場に居た愚神も例外なく、その攻撃を受ける。愚神の断末魔が響き渡った。その後に静寂が訪れる。
ハガルが狂ったように笑った。
「は、はは……勝った……俺は、勝った……H.O.P.E.に!」
「……何、言ってるのかな」
傷だらけになった望月が。
「ここで……消える訳にはいかない……っ」
大剣を杖替わりに、拓海が。
「俺達を舐めるな」
ケアレインを発動させ、亮が。
「私たちは……世界の終焉を乗り越えるっ……」
剣を握り直し、蛍が。
「……マイヤが見てるんでな、俺達に負けてる暇などない!」
ふらつきながら、央が。
「負けない。何があったって」
盾を手に、リオンが。
「貴方などに……負ける道理はありません……!」
ジャンヌを支えに、楓が。
「一人で戦っているお前には……な!」
口元に笑みを浮かべながら、アークトゥルスが。
――”希望”が立ち上がる。
「何を……半死のくせに……黙れぇぇぇぇっ!」
ハガルが再び氷を作り出す。しかしその攻撃は皆の攻撃に阻まれ。
「ち……ちく、しょう……」
ハガルは戦闘不能になった。
●In order not to end
H.O.P.E.サンクトペテルブルク支部。
拓海とメリッサはハガルが監禁されている部屋を訪れた。彼は両手を拘束され、鉄格子の向こうに居る。ハガルはちらりと二人を見て、そしてすぐに視線を外した。
「なあ、なんであんなことをしたんだ?」
『差し支えなければ、聞かせてもらえるかしら』
問いかけにハガルは沈黙を続ける。暫く拓海とメリッサは待った――が、どうもハガルは口を開きそうにない。当たり前と言えば、当たり前の反応だ。今日はここまでにしましょうと、メリッサが拓海を促す。拓海は頷いて、ドアノブに手をかけ――顔だけハガルに向けて、告げる。
「もし話す気になったら何時でも呼んでくれ」
「……お人好しだな、あんた。さすがH.O.P.E.……あんたみたいな真っすぐでキラキラした奴しかいないんだろうな……闇の中に一度も入ったことのないような奴が……」
「いや。……そうでもない。意外とあぶれ者の集まりみたいなものだ」
「ふん……そうか」
ハガルが完全に壁の方を向く。
拓海は部屋の外に出た。
そこには、耿太郎とアークトゥルス、仁菜とリオンが居た。
「どうでしたか?」
仁菜の問いかけに拓海は首を振る。
『助けられる、と思うんだけど』
「同感っす。どうにかならないっすか、王さん」
『……あいつが心開かなければ、無理だろうな』
アークトゥルスは一つ息を零した。メリッサが閉じられた扉へ視線を送る。ハガルは何を考えているのだろう……。
『もし、理由を話してくれたなら』
その時は、”希望”へと導こう。
H.O.P.E.サンクトペテルブルク支部。食堂。
『いやあ、疲れたね』
んー、と百薬は伸びをする。そんな彼女にミーナがそうだねと同意する。
「ヤーナさんとミーナさんはこれからも北の方で活動するの?」
望月の問いに二人は大きく頷いた。まだまだやることはあるからね! そう言って胸を叩くミーナ。彼女とは対照的にヤーナは微笑む。
「じゃあ、また会ったらよろしくね」
「ああ!」
「こちらこそ」
『皆、おやつにしましょう』
ヤーナの英雄、ゼムリャーが何かを持ってくる。
『ゼムリャーお手製”鳥のミルク”だぜ』
そう言ったのは、ミーナの英雄のセマルグルだ。テーブルの上にケーキが置かれる。厚いスフレの層を薄いケーキの層が多い、その上にチョコレートがかかったケーキ。おお、と百薬は目を輝かせた。
「いただきます!」
『どうぞ、召し上がれ』
ケーキを食べ、百薬は心底幸せな笑顔を浮かべる。
『世界中のプリンを食べてめぐる旅にいける日ももうすぐだね』
「……それ初耳なんだけど」
『あれ、言ってなかった? 平和になったらって』
「聞いてない」
二人のやりとりが、周りに笑いを齎す。また戦いが始まるのだろう。それまでは休息を――。
別のテーブルでは、 楓と詩乃、亮と黎焔が一息ついていた。
「お疲れ様です!」
「お疲れさん」
『どうにかなったのう。あの空間の特殊な力が働いたお陰じゃろうか?』
『……確かに、治癒の力凄かったよね』
詩乃が亮を見る。あー、と亮は同意した。
「運が良かった。……もし、逆だったら」
「私たちはここに居なかった……かもしれません」
『不吉なことは考えない!』
『詩乃の言う通りじゃて』
「……だな」
「はい」
央とマイヤ、蛍とグラナータは、戦場となった北極地周辺に残っていた。愚神が居なくなったせいなのか、戦いの時よりもこの場所の力は弱まっている気がするし、それにこのような場所が再び戦場になるとは限らない――が。
「……王との決戦までに、この地形をなんとか克服する必要があるな」
『私達、個々人の戦力強化は勿論だけれど……戦略で負けていては勝ち目が無いわ』
「私たちは……負けていられません。もっと……もっと強く」
《蛍と自分なら可能ッス!》
来たる決戦の為に。