本部

ペガサス迎撃作戦

アトリエL

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
9人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/11/02 20:07

掲示板

オープニング

「ありゃなんだ?」
 それは空を駆けていた。見上げた人々の掲げた明かりがその影を照らせばそこにあるのは幻想的ともいえる光景。
「空飛ぶ馬?」
 御伽噺か何かであれば、それは幻獣としてもてはやされたであろうそれは現実においては別の存在でしかない。
「セルウスだよ、ありゃ?! こりゃいかん!!」
 セルウス……つまりは従魔である。人に害成す存在であるそれは即座にHOPEへと発見報告を届けられた。

「従魔ペガサスの目撃情報が届きました」
 HOPEのオペレーターの通信は各種データと共に付近のリンカーへと届けられた。
「目撃証言から見るとこの従魔は森の上空を移動し、街へと向かっているようです」
 森の上を飛行している姿は
「敵従魔の数は二体でうち一体は目撃者に対して攻撃を仕掛けたため移動が遅れているようです」
 幸いなことに目撃者は何とか逃げ出し、負傷こそしたものの一命を取り留め、病院で治療中らしい。
「各個撃破できるうちに何とか誘導してこれを双方共に撃破してください」

解説

 従魔ペガサスは空を飛ぶことが可能な従魔です。
 移動時は基本的に空を飛んでいるので殆どの攻撃が届きません。
 目標地点の街の近くまでくると高度を下げるので、その直前で迎撃することになります。
 このペガサスは光や光を反射する物に対して優先的に攻撃を仕掛けてくるようです。
 森の中に点在する材木用途で伐採された区画へ誘導して戦闘するか、被害覚悟で街中で戦闘を行う必要があります。
 誘導に失敗した場合は街中での戦闘となりますが、街中であれば高いビルなどを利用して相手の飛行能力をある程度無視して攻撃することも可能です。
 ペガサスは弱ると空を飛んでどこかに逃げ出してしまいます。
 逃げ出してしまえば失敗となるので逃げ出さないように何らかの対応をお願いします。

リプレイ

●従魔ペガサス?
「ペガサスはギリシア神話ではゼウスの雷霆を運ぶ役割を持っていた様ですが、テミスさんはどう思いますか?」
「そんな高級なものではない筈だぞ? 確か毒酒に狂った男の前に現れ、空の上まで運んで振り落す……そんな妖獣だと思ったが……」
 石井 菊次郎(aa0866)の問いにテミス(aa0866hero001)はそう答える。複数の伝承に登場したとしてもそこに現れる存在が同一である保証はない。
 そして、今回現れた従魔も当然伝承にある存在とは異なる存在だ。
「……アル中がどこかで死んだらペガサスのせいという訳ですね? よほどあの連中に似合った話です」
「……さて、そんな害悪を放置しておくわけにはいかぬ。早々に退治せねばな」
 菊次郎もテミスもそれを理解した上で時間潰しの話題を語り合っているだけに過ぎない。
「月世、どうかしたのか? 顔色が悪い様だが……」
「そんな事無いわ……翼に角、従魔……イメージがどうしても固まら無くて」
「どうやら二つの伝承が融合している様だな。だがそれは伝説の世界ではよく有る事、こうして新たな伝説が生まれるのだろう」
「融合? ……!」
 その一方でアイザック メイフィールド(aa1384hero001)に心配されている蝶埜 月世(aa1384)のように考えすぎてしまうものもいる。こうした困惑を誘うのも、もしかしたら従魔の高度な作戦なのかもしれない……まずないとは思うが。
「ペガ挿すなナンてロマンチッ区だね? スケジロー」
「よう見ると角まで生えとる……ごっちゃで碌なもんに見えへんで」
「湯にコーン? それも捨てキだね。スゴい亀齢ナノに八つ毛なきゃ成らナい南て……」
「そやで……人生は甘う無いんや。よう勉強しとき?」
「ん? なんかみんなの視線が冷たいん屋けど? どないしたん?」
「わしには皆目見当つかへんわ。会話が高度すぎてついてこれんのちゃうかな?」
 シャンタル レスキュール(aa1493)とスケジロー(aa1493hero001)の会話は深いのか浅いのかよくわからない。それ以前にイントネーションの違いで会話自体が判りづらいのもあるかも知れないが。
「この素体は何なのですかね? 少し興味が有ります」
「光物に反応するなんて……黒いしカラス属性もか……悩ましいわ」
「ペガサスとは言うが見た目だけの話。元の習性を隠すことはできない……か」
 菊次郎の振った話題に月世が応じ、アイザックは得心したとばかりに頷く。
「オレ、カラスは苦手なんだ」
「なんと、カラスは骸忍術の象徴……苦手とは聞き捨てなりませんな」
「子供の頃、ゴミ出しに行くと必ずいたんだよな。ちょっと油断すると目を狙って来るし……大人と子供見分けて必ず弱い方襲うんだぜ?」
「麟殿……それが忍びの術の諦観。彼等は身を以てそれを麟殿に教えたでござる」
「がーん! それじゃ、一度反撃して棒で叩いたら翌日から集団で付け狙うのもか?」
「無論……それも知恵でござる。っと、無駄話はこれまででござる。会議が始まるようでござるよ」
 それを聞いて骸 麟(aa1166)は過剰に反応し、宍影(aa1166hero001)に諭されている間に他のリンカー達は作戦会議の準備を整えていた。

●作戦会議
「ん……? 皆が混乱しているようだ。今は作戦会議に集中しよう」
 アイザックが会議をしている方へと視線を向けるとそこには広げた周辺の詳細な地図と無線機と懐中電灯が置かれていた。HOPEが準備してくれたものだろう。人数分には足りていないのはHOPEにも色々事情があるからに違いない。要請された物を片っ端から用意できるほど裕福なわけではないのだ。
「闇雲に攻撃しても逃げられてしまいます。そこでチーム分けを考えたのですが……」
「近接攻撃と遠距離攻撃、後は誘導班ね。私たちは近接攻撃を担当しようかと」
 会議の中心にいるのはエステル バルヴィノヴァ(aa1165)と泥眼(aa1165hero001)だった。
「え? えぇ……そうね。それじゃあ私たちも地上班を担当するわ」
 月世がそう言うと、他のリンカー達も各々の担当を宣言していく。
「この伐採ポイントから誘導をお願いします。成功しだい無線で連絡を……」
 それらを確認した上で、エステルは地図上のポイントを指定し……途中で動きが止まった。
「連絡は随時できるように……あれ? どうしたの?」
 そのフォローで指示を出していた泥眼に不安そうな顔で見つめられる。
「作戦は完璧な筈です……そうでないなら現実の方が間違っているのです。下らない現実など崩壊してしまえ……あ、ディタ?! そうじゃないです。私は大丈夫! 本当です」
「あ、よかった……大丈夫そう。すいません! エステルはいつもこうで……」
 エステルの様子がおかしくなると泥眼は無線機の『非常用』と書かれたボタンに指をかけ……それを押す直前でエステルが元に戻った。因みに押すとHOPE研究所から効果不明の精神安定剤が送りつけられる可能性がある危険なボタンである。
「うわあ……今回も山の中だよ。街で迎撃で良いよね? エスティ」
「ST-00342はその作戦は推奨出来ない。人的被害が大きくなり過ぎる。今回の作戦の方が問題が少ない」
 作戦領域を確認した穂村 御園(aa1362)の言葉にST-00342(aa1362hero001)は否定を返した。わかってはいてもあんまり汚れたくはないのが女の子というものである。
「そうじゃな……逃げられると厄介じゃの。街に入る前になんとかしないと……」
「閃きました……投網です」
 しかし、それでも逃げられてしまえば街に入られることは間違いない。タイタニア(aa1364hero001)が思案し始め、いいアイディアを思いつきそうになったその時、都呂々 俊介(aa1364)は真面目な顔でそう言った。
「ん? 今何と……今一話が通らんのじゃが」
「だから投網で一網打尽なんです。大漁です」
「俊介……魚とは訳が違うんじゃぞ? それで成功すると……」
「では早速準備に取り掛かります!! 申請を……」
 タイタニアが首を傾げている間に俊介の中で何かが決まったらしい。間にあうかどうかわからないが全速力で投網の確保を始めた。
「わかっているとは思いますが、皆様。街中の戦闘は避けるべきです」
「はいはいはい……わかってますよ。言ってみただけですよーだ……ふーんだ……」
「うむ。狂った獣相手に一切の被害を出さずに戦うのはまず無理と考えるべきぞ」
 それを華麗にスルーしながら菊次郎は警告を促す。御園が一応の理解を示したことでテミスは頷き、最悪の想定を怠ることなく各々の準備が始まった。

●誘導部隊
「今回も裏方か? つくづく表通りの似合わぬ男だな?」
「今回は全員森の中で泥遊びだよ。表も裏も無いだろう」
「何を言う? まともな男の仕事とは剣で敵を屠る事、それだけだろう? 違うか」
「文明国の王子様は言う事が違いますねぇ。野蛮な世界の野蛮な労働者は黙って裏通りで働くんですよ? それが身分ってもんですかね」
「少々言い方が気になるが貴様も大分分かってきた様だな」
「へいへい。とにかく俺達は誘導班として待機だ」
 マリオン(aa1168hero001)は誘導班に任命された雁間 恭一(aa1168)に対し、自身の基準で物事を語った。そんなマリオンとの付き合いに慣れてきた恭一は軽く流しながらも準備を進める。
「我々は迎撃班として参加します。まずは誘導をお願いします」
 エスティからの通信が入った。そろそろ事前情報から想定される従魔との接触時間である。
 誘導班の天野 雅洋(aa1519)とリュドミラ ロレンツィーニ(aa1519hero001)は緊張していた。
「誘導か……かなり重要なポジションじゃね? ヤバいかも……」
(森の中でアマノと二人っきり……良いです)
 その方向性は両者で全く違うものであったが。
「街には逃げられないようにしないとな……成功したらすぐに連絡を……ん? どうした?」
「ええ!? な、なんでもありません!! 従魔の誘導ですね!! わかってます!!」
「……なんか熱っぽいな。無理しないで今回は休んどく?」
「大丈夫!! 大丈夫ですから!! ささ!! すぐに準備に取り掛かりましょう!!」
 雅洋に心配され、嬉しさ半分ながらもリュドミラはその申し出を断る。自分だけ休憩したら折角の二人の時間が短くなるという思いから、必死に断っていた。
「従魔が現れたぞ。誘導を開始するんだ」
「言われなくてもわかっていますよ、っと」
 従魔ペガサスの姿を確認したマリオンの言を受け、恭一は即座に動く。明かりで適度に誘導しつつ、孤立した状態で襲われない程度の間合いを維持した状態で明かりを消すの繰り返し。
「……よし。上手くいったな。天野に連絡を……」
「相変わらず地味な作業だ。貴殿にはよく似合っている」
 その恭一の単純作業をマリオンは褒めたつもりでそう言った。
「……よし、この辺りでいいかな。目標が来るまで待機。無線の準備を」
(周りに誰もいない…… ホントに2人きり……)
「こちら天野。目標を確認した。誘導を開始するぞ」
「え!? あ……はい!! 確かあちらの方角にみんなが……」
「お、おい!! そっちじゃないって!! こっちこっち!! ……ホントに大丈夫か? なんか顔が赤いぞ」
「す、すいません!! あの……手……当たってる……」
 雅洋は何故かパニックになっているリュドミラの手をとりながらも何とか従魔の向かう方向を修正する。若干予定と違うルートになったが、その直後に別の明かりに誘導されたのを見る限り、作戦としては問題ない範囲に落ち着いていたらしい。
 リュドミラの心音の方は未だにバクバクと脈打っていたが。

●迎撃開始
「中々良い場所が無いね? ……はあ、もう疲れた」
「少し剪定すれば問題無い」
 御園とエスティは迎撃のため最終的な誘導のための場所をギリギリまで探し回っていた。
 地図上では伐採された区画であっても、周囲の木々が生い茂っているため、思ったよりも視界はよくはない。それは逆に考えれば、逃げ出そうとした際に木々の上に登って対処することも出来るかもしれないという利点でもあるが。
「えーと、パタパタさんライン抜けまして……あ、宙返り! 可愛い!」
「では攻撃を開始。間違っても近接班には当てないように……」
「……どうしたの、エスティ?」
「誰かを物陰から狙う……こう言う行為をしようとすると何故か胸部の送油管が狭窄する様な誤認識をしてしまうのだ。済まない御園」
「エスティ良いよ……狙うのは人じゃ無いから。みんなの命を守る為だよ」
「……問題無い。理解している」
「日曜に行ったオワフェス楽しかったね? みんな笑ってた……また行こうよ」
 漸く見つけた場所で御園はエスティを落ち着かせることを優先し、それからリンクした。
「了解です……一体目が此方へ向かったそうです。作戦を開始します」
「目標を補足! こちらに向かってくるでござる!!」
 エステルが無線の連絡を受けた直後、宍影が従魔ペガサスの姿を視界に捉えた。
「世界ノヘ岩を守るタメ、ブレイドムスク我ただい……」
「あー、今回は光るのは禁止や。そこの物陰でリンクしよな」
「肢ー?」
 シャンタルはスケジローに引き摺られ、物陰でリンク完了。光に集まる虫のような習性があるらしいのでこの扱いは仕方がないが、戻ってきたその顔には明らかな不満の色が見えていた。
「うまくことが運んでいるようだな。……こちらに向かってきたぞ」
「では誘導を開始します。こちらに来るように光を当ててください」
 テミスがペガサスを視界に捉えると菊次郎は指示を飛ばす。
「骸止水針! 今だ! 足止めを喰らわせるんだ!」
「さて、そろそろ頃合ね……迎え撃つわよ! ふふ……籠の鳥、いいえペガサスになって貰うわね……」
 麟と月世が飛び出し、地上に降りたタイミングで攻撃を仕掛けた。
「かかりおったな!! 主は袋小路に迷い込んだ鼠のようなものぞ!!」
「翼を重点的に狙ってください!! 空に逃げられると厄介です!!」
 テミスとリンクすると菊次郎は即座にゴーストウィンドを放つ。防御を下げ、速攻で討伐するための準備を整える算段だ。
「遠距離攻撃班も攻撃お願い!! 空に逃げられそうになったら迎撃してね!!」
 泥眼が指示を飛ばし、連携を途切れさせないように自身も動く。
「射程距離内……攻撃を開始する。しかし光り物が好きなんてどんな性悪女なんだか」
「光り物が好きな性悪女は大好きだな。羽根があって何処にも居付か無いのも良い。存外……」
「止めとけ。怪我するぞ」
 恭一はマリオンとリンクして、飛び上がろうとするペガサスの行動を阻害する。
「誘導班は攻撃は絶対に避けて。そこで逃げられたら打つ手が有りません……くそったれ? ええ、その通りです。でも現実もそうなんです」
 エステルも逃げられなくなるように翼を狙おうとするのだが、ペガサスの翼には中々攻撃が届かない。従魔の方もこれだけ攻撃を受けたためか、抵抗も激しくなってきた。
「翼を重点的に狙うでござる!! 空が飛べなくなれば爪をもがれた土竜同然!!」
「そのたとえはどうかと思うが……両翼抑えてるな……ふふ、オレの骸飛燕斬受けて見るか?」
 脳裏に直接聞こえる宍影の声に麟は応じ、翼を切り落とす。
「おぉ!! 相変わらず凄まじい技の数々!! 見事でござる!!」
「ふふ……まぁそんなに褒めないでよ。……もっと褒めて」
 宍影に褒められた麟がそう言って油断した刹那。ペガサスはその強靭な後ろ足で蹴りつけ、周囲のリンカー達が怯んだ隙に間合いを取った。
「美しい姿とはうらはらになんと凶悪な性格……簡単にはいかないか……!!」
「手加減できないわね……いよいよ、本気出して行きますか? こいつら記憶からも抹消しないと落ち着かないわ」
「あぁ。影も形もこの世から消し去ってやろう……」
 アイザックと月世は側面から仕掛ける。真後ろは蹴りが、正面は角がくるが、側面に攻撃手段はない。すでに逃げるのに必要な翼をもがれたペガサスが出来ることといえば、最後まで暴れることくらいだった。

●二体目のペガサス
 ユニコーン状態の一体目のペガサスを完全に仕留めきる前に無線からの連絡が届いた。
「油断しないで!! もう1体も来るわよ!!」
 泥眼が叫ぶが、割り振れる戦力には限りがある。
「とにかく只管タタクヨ!! 空にはイかせない世!!」
「他のみんなが上手いことフォローしてくれるさかい、攻撃がしやすいわ!! もっとかましたり!!」
「了解ネ!! ペガサス! 注ぎはチャンと生まれテ包んダヨ」
 シャンタルとスケジローが合流した誘導部隊と連携して二体目を押さえ込む。しかし、二体同時を相手に完全に押さえ込むには至っていない。
「翼を!! 翼を狙って……まさか……逃げられる?? やはり私なんて……」
 エステルの悲痛な声が響き渡る。
「いかん!! このままでは逃げられてしまうぞっ!!」
「こう言う時じいちゃんなら……そう、決め台詞だ! ……僕に不可能はないんだ!!」
 そこに現れたのはタイタニアと俊介だった。
「ええぃ!! 破れかぶれじゃ!! 引っかかってくれぃ!!」
「よし!! 捕まえたぞ!! このまま一気に……うわっ!!」
 その手には投網。よほど入手に苦労したのかギリギリの帰還であったが……ペガサスの羽ばたきを完全に押さえ込むには役不足だったようだ。あっという間にズタズタになる。AGWでもないただの投網にしては頑張った方かもしれない。
「……おっと! 逃がしはせぬぞ!!」
「……大丈夫!! 捕まえてくれたみたい!! 今のうちに一気に!!」
 だが、それでもほんの少しの時間は稼げた。テミスはローゼンクイーンでその背の翼を絡めとる。泥眼はそれを確認すると優先順位を切り替えて指示を出した。
「……他の者がフォローしてくれたようじゃ。一瞬でも足止めにはなったようじゃの」
「ふふ……どうやら僕の思惑通りに事が運んでくれたようです。ぬかりはありませんよ!!」
 タイタニアに言われ、俊介は胸を張る。戦力的な意味では投網を探しに行かない方がよかった気もするが、可能性の話をしても仕方がない。結果オーライである。
「ふふふ……動けまい? これで漸く羽根を一本一本毟れるわ」
 そのままペガサスの背に跨るとテミスは邪悪な笑みを浮かべた。
 その前に立つエステルの表情は……従魔ペガサスが最後に見たその表情を知るものは誰もいない。

●戦い終えて
「投網では力不足でした。次はゴルフ場のネット……あ、まだアイデアの段階ですが」
「そこはアイデアで止めて置いた方が賢明かの」
「天才に失敗はつきものです。今日の失敗は明日の糧へとつながるでしょう」
「あ、失敗ということは認めておるんじゃな。次があれば多少は期待しておるぞ」
 俊介とタイタニアはそのまま地面に倒れこむ。森から漁村まで全速力。そんな無茶をしたのだからある意味当然の結果だが。
「街中での戦闘と言う最悪の事態は避けられました。ペガサスは悪い夢を見せるのに失敗した様です」
「まぁ、全く被害がなかったというわけではないが……な」
 菊次郎の言葉にテミスは周囲の惨状を見て息を吐く。無数の倒木は翼をもがれたペガサスが暴れた結果だ。尤も、街への被害と比べれば圧倒的に少ないし、無線でHOPEに連絡を取れば、事後処理の手伝いと引き換えに被害は問わないという返答が返っていた。
「……対象の沈黙を確認。任務完了しました」
「結局、葉っぱが髪に絡まって最悪だった……御園宣言します。今日は絶対にここの街のデパートに寄ってメゾンのチョコ買います。エスティも付き合うんだよ?」
「……了解。……いえ、お付き合いしますね。友達として」
 エスティと御園は従魔ペガサスだったカラスの死骸を埋葬し、微笑みあう。
「今回は街は守られた。しかし、人類が反省しない限り第二、第三のペガサスが生まれるだろう!」
「スケジロー、恋トバ図解が違う!」
「ん? こーいうのはお約束なんやで? そのうちペガサス戦隊とか出てくるわい」
「ホント!? それじゃあ巨大ろぼっ斗も出てくるか!?」
 スケジローとシャンタルは相変わらずである。そんなものが出てきたらHOPE本部もかなり対応に頭を悩ませることになるとは思うが、多分ないので問題はないだろう。
「退治は成功したみたいだな。……さて。それじゃあそろそろ戻ろっか」
「アマノ……ちょっとこのまま一緒に居よ?」
「え? 今日中の納品がまだ三件残ってるんだけど」
「……いいじゃない。少しぐらい遅れたってさ」
 雅洋のいつも通り過ぎる態度にリュドミラは少しばかり不機嫌になりつつも、付き従う。
「天網恢々疎にして漏らさずだっけ?」
「微妙に失礼なのでござるが、まあ良いでござる」
「でもまぁ…… ちょっと派手にやりすぎちゃったかな?てへっ」
「後片付けが残っているでござるな…… 先が思いやられるでござるよ」
 麟と宍影の前には倒木……圧し折れたのではなく切り倒されたように見えるのは決して気のせいではない。つい調子にのって技を使いすぎた結果である。
「もう、蹄に蹴り回される仕事はうんざりだぜ」
「貴様の引き運からすると次は爪に引っ掻き回される仕事だな」
「爪? ってことは猫とかか。もう散々引っかき回されてる気もするな」
「何か聞こえた気がするが聞こえなかったことにしておくぞ。後始末は任せるぞ」
 恭一の皮肉を聞き流し、マリオンはちょうどいい切り株に座って作業を見守る姿勢だ。下々の働きを見守るのも上に立つ者の仕事なのである。
「ちょっと彼等の存在を許せる様になったわ。二体使えば良いんだ……そう言う事よね」
「あぁ……綺麗な空だ」
「……え? 作業? ……もうちょっと余韻に浸らせてくれても……」
「まぁそう言うな。さすがに仕事を放置するわけにはいかないだろう」
 カラスの墓標に手を合わせ、月世はアイザックと共に空を見上げ……すぐに地面の倒木を見る羽目になった。
「……で、リフレッシュになったのかしら?」
「……なった様に見えますか?」
「……そうね。余計に疲れが増しただけの気がするわ」
「それにまだ……やることが残ってるみたいですからね。……はぁ」
 泥眼にそう答えるとエステル達は後始末を開始するのであった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
  • 真仮のリンカー
    都呂々 俊介aa1364

重体一覧

参加者

  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
    人間|25才|男性|命中
  • パスファインダー
    テミスaa0866hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 悠久を探究する会相談役
    エステル バルヴィノヴァaa1165
    機械|17才|女性|防御
  • 鉄壁のブロッカー
    泥眼aa1165hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 捕獲せし者
    骸 麟aa1166
    人間|19才|女性|回避
  • 迷名マスター
    宍影aa1166hero001
    英雄|40才|男性|シャド
  • ヴィランズ・チェイサー
    雁間 恭一aa1168
    機械|32才|男性|生命
  • 桜の花弁に触れし者
    マリオンaa1168hero001
    英雄|12才|男性|ブレ
  • 真実を見抜く者
    穂村 御園aa1362
    機械|23才|女性|命中
  • スナイパー
    ST-00342aa1362hero001
    英雄|18才|?|ジャ
  • 真仮のリンカー
    都呂々 俊介aa1364
    人間|16才|男性|攻撃
  • 蜘蛛ハンター
    タイタニアaa1364hero001
    英雄|25才|女性|バト
  • 正体不明の仮面ダンサー
    蝶埜 月世aa1384
    人間|28才|女性|攻撃
  • 王の導を追いし者
    アイザック メイフィールドaa1384hero001
    英雄|34才|男性|ドレ
  • 悲劇のヒロイン
    シャンタル レスキュールaa1493
    人間|16才|女性|防御
  • 八面六臂
    スケジローaa1493hero001
    英雄|59才|?|ブレ
  • エージェント
    天野 雅洋aa1519
    機械|29才|男性|攻撃
  • エージェント
    リュドミラ ロレンツィーニaa1519hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
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