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【質問卓】
最終発言2018/09/22 09:51:20 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/09/21 20:51:32 -
【相談卓】ドロップゾーンの破壊
最終発言2018/09/23 02:43:58
オープニング
●Farthest sky
アイスランド、ヘイマエイ島。
三か月ほど前この島は愚神に襲われた。エージェント達の活躍によって、その愚神は討伐された。けれど、何処から現れたのかは判明しなかった。愚神の出現元特定及び新たなる被害を防ぐ為、H.O.P.E.はこの島を定期的に見回っていた。後者の目的は達成できている。だがどうしても前者の――出現元が特定できない。
島の人々の心には不安が積もっていた。
あの愚神は、いったい何処からやってくるのか――。
そしてその不安は二度目の世界蝕が起きたことで、更に膨らんでいく。少しずつ色を失っていく空。北方のグリーンランドから聞こえてくる悲鳴――。
ここは一体、どうなってしまうのだろう――。
●Bitter fruit fell down
自分が編んだショールを身に着け、アニタは羊のハルドルを連れ町から少し離れた場所にある草原に居た。どうも最近ハルドルの餌の喰いつきが悪くて、自然の草なら食べるかとここに連れてきたが、その予想は大当たりだった。草を食むハルドルを見て、アニタは微笑む。流れる風はとても穏やかだ。ふと空を見れば、太陽が傾き始めている。もうそろそろ帰らないと、親に叱られる。不意に、アニタは妙な形の雲を見つけた。縦に伸びる楕円形の雲。周りには黒い小さな何かが集まっている。そんな形の雲を見たことがなくて、アニタは視線を逸らせなかった。
刹那、雲の下の方から何か物体が落ちてきた。
アニタは嫌な予感がした。急いでハルドルの首輪に繋がっている紐を引っ張る。早く家に帰らなければ。
二時間後。
ヘイマエイ島の上空に大規模なドロップゾーンがあると言う調査結果がH.O.P.E.にもたらされた。
●Those who control the four major elements
H.O.P.E.サンクトペテルブルク支部。
集まったエージェント達に対して、西原 純(az0122)は説明を開始した。
「アイスランド、ヘイマエイ島の上空にドロップゾーンが確認された。その破壊が今回の任務だ」
純は調査報告書に書かれていることを読み上げる。
雲に擬態したドロップゾーン。中はドーム状になっている。
周りを飛ぶ無数の鳥型従魔。
雷の発生も確認されている。
「ゾーンルーラーの姿及び居場所は調査済みだ。少々特殊な場所のようだから、用心してくれ。……説明は以上。後は任せた」
解説
ヘイマエイ島の上空に現れたドロップゾーンの破壊が今回の目的です。
以下の情報に注意しながら、目的を達成して下さい。
・ドロップゾーンへはヘリコプターからスカイダイビングする形で突入します。
・ゾーン内は大まかに四つのエリア(炎・水・風・土と区別)に分かれています。
炎エリア……エリア全体が溶岩の海です。
水エリア……エリア全体が一つの湖です。
土エリア……エリア全体が山脈です。
風エリア……エリア全体が草原です。
エリアの位置関係は以下の通りです。また各エリアの行き来は自由です。
炎水
風土
・ゾーンルーラー(ケントゥリオ級)
全長二十メートルほどの巨人です。炎エリアに居ます。
・その他
分からないことがあれば、可能な限り純が答えます。
※以下PL情報
各エリア毎にPC及びゾーンルーラー(以下ZR)には以下の事象が発生します。アイテム・スキルなどで回復はできません。
炎エリア
PC…回避能力値&防御能力値20%ダウン
ZR…攻撃能力値&命中能力値20%アップ
水エリア
PC…BS減退が付与。ラウンド毎にHPが5~20減少
ZR…ラウンド毎にHPが10~100の間で回復
風エリア
PC…攻撃能力値&命中能力値20%アップ
ZR…回避能力値&防御能力値20%アップ
土エリア
PC…全能力値20%アップ
ZR…全能力値20%ダウン
ZRと異なるエリアから攻撃することはできません。見えない壁のようなもので阻まれます。
各エリアとエリアの堺には、宝玉が配置されています(デクリオ級愚神が守っています)
宝玉を破壊すると、「破壊したPCが居たエリア」が拡大します。
例:炎エリアと水エリアの間の宝玉を水エリア側で破壊→水エリアが拡大し、炎エリアが消滅
水水
風土 となる。
リプレイ
●突入前、それぞれの心境
アイスランド、ヘイマエイ島、上空。
白と青がまじりあったような色の空を背景に、任務を負ったエージェント達を乗せたヘリコプターは静かに飛んでいた。その機体の先端はドロップゾーンへと向かっている。雷の音。鳥型従魔の声。全てが戦いへの緊張を高めつつあった。
真壁 久朗(aa0032)は一つ、息を吐きだした。それを見ていたセラフィナ(aa0032hero001)は口を開く。
『色々なものが目まぐるしく変化して、争いも絶えないけれど。僕達の世界を守る為に出来る事があるならやりたい。ですよね』
セラフィナの、まるで天の川を流し込んだような美しい緑眼に見つめられ、久朗は頷いた。
「ああ。……行こう」
「すごいドロップゾーン、だな……」
木陰 黎夜(aa0061)は窓の外を見ながら呟いた。雲の向こうにうっすらと、溶岩や湖が見える。アーテル・V・ノクス(aa0061hero001)は黎夜との距離をほんの少しだけ詰めた。
『あの溶岩と、黎夜は湖にもあまり近付きたくはないな?』
黎夜は眉根を寄せた。
「……うん、いざって時は、がんばるけど……」
『安心しろ、俺が共に居る』
「うん」
「まさに神と人との戦い、って感じだねぇ」
ヘリコプターの座席に身を沈め、木霊・C・リュカ(aa0068)は言った。ドロップゾーンの側に居るせいか、空気が何だかいつもと違う。見えなくても分かる。何処か、ひりひりする。
『……角笛の音でも聞こえたか』
オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)の問いに、まさか、とリュカは首を振った。もしかしたら秘宝が眠っている可能性もあるけど、ほら、あのアニメみたいに。軽口を叩くリュカ。こういう時、彼が苦々しい気持ちを抱えているということをオリヴィエは知っている。
「疑問はたくさんあるけど……答えは全部雲の中。さ、行こうかオリヴィエ」
『ああ』
紫 征四郎(aa0076)は双眼鏡を使ってドロップゾーンの全体を眺めた。そうしてからある一角を――溶岩の場所を一心に見つめている。腕と足に残された火傷後が疼いた。
炎は得意ではない。でも、と征四郎は隣に立つガルー・A・A(aa0076hero001)を見上げた。
「この縁は、炎が繋いだもの」
小さな声で言ったがガルーには聞こえたようだ。視線がぶつかる。
『だったら尚更、別に今日お前が前を行く必要は』
案じてくれることに礼を言ってから、征四郎はいいえ、と力強くガルーに告げた。
「……、行きます。だって征四郎の立つべきは、後ろじゃなくて隣でしょう」
『……分かった』
時鳥 蛍(aa1371)は焦りに似た感情を抱えていた。ヘリに乗り込む前、皆で立てた作戦。それ通りに動かなければと頭では分かっている。でも。
「征四郎は、一番危険な、炎エリアへ……わたしも」
《蛍……冷静さを失うのは……》
蛍の反応を探るようにグラナータ(aa1371hero001)が言う。予想通り、蛍はこちらを見ない。
こうして、彼女が自分を見なくなってから、どのくらい経った?
「わかってますよそんなこと」
蛍は冷たく答えた。そんな自分の反応にちくりと胸が痛む。負のスパイラル。和解が、遠ざかる。
(……グラさん)
藤咲 仁菜(aa3237)はこれから始まるであろう戦いに、緊張していた。普段かかないような汗をかいているのが自分が居る。
「大丈夫!」
聞こえてきた声に仁菜は顔を上げた。目の前でリオン クロフォード(aa3237hero001)が笑っている。大丈夫! もう一度言われ、仁菜は肩の力が抜けるのが分かった。今一度、彼との間に結んだ、誓約を口にする。
「どんな状況でも守ることを諦めない!」
レイルース(aa3951hero001)は、ドロップゾーンを睨みつけていた。あそこから愚神が多く落ちてきたらヘイマエイ島だけでなく、アイスランド本島も……いや世界中が混乱する。
『……笑えない』
レイルースの言葉にマオ・キムリック(aa3951)はこくりと頷いた。
ヘリコプターが飛び立つ前、ヘイマエイ島を少し見て回った。美しい草原を始めとした、あの美しい島が戦場になってしまうのは、耐えられない。
「うん……早くなんとかしよう」
不知火あけび(aa4519hero001)は双眼鏡を使い、ドロップゾーンをじっくりと観察していた。
『四つのエリアに分かれてるみたいだね』
あけびから双眼鏡を受け取り、日暮仙寿(aa4519)も様子を伺う。
「……境界に何かいるようだな。あれは……宝玉? 各エリアに一つずつ」
『何か意味があるのかな』
「ない、と考える方が不自然だ」
『だよね』
同意しながら、あけびは静かに仙寿の手を握った。その手を仙寿は握り返す。
勝つ。
そう、強く思った。
「まるで竜の巣であるな」
はるか昔、両親とともに見にいったアニメの映画を思い出しながら、ソーニャ・デグチャレフ(aa4829)は言った。その両親も今はなく、祖国は愚神に呑まれたままだ。されど反抗の狼煙はすでに上がっており、いまも祖国奪還のための反旗は翻り続けている。
戦争を続けるためには、金が必要だ。
これは、実入りのいい依頼をえり好みした結果だ。
しかし、どうであれ、こんなところで足踏みしている時間は無いのであった。
「今回の戦い、初期配置が戦争の成否を左右すると見る。――露払いは小官が努めよう」
そう呟くソーニャに対し、サーラ・アートネット(aa4973)は告げる。
「では自分は上官殿の活動を展開しやすいように迅速を尽くします。どうかご武運を……」
「同志も。戦いに栄光あらんことを」
ヘリコプターの操縦士の声が響く。
【そろそろ、ドロップゾーン、真上です! 皆さま、戦闘準備を――共鳴を!】
●突入!
ソーニャは幻想蝶から出現したラストシルバーバタリオン(aa4829hero002)と共鳴した。先頭を切って、ドロップゾーンへ向かい、降下を始める。鳥型従魔が一斉に襲いかかってきた。
「蹴散らすのみ!」
フリーガーファウストで広範囲に向けて発砲する。そのすぐ後ろでサーラは同じく、幻想蝶から出現したオブイエクト266試作型機(aa4973hero002)に乗り込んだ。鋼鉄の薄暗い空間。零れる吐息。上官の、援護を。
ソーニャとサーラの攻撃に鳥型従魔が、醜い声を上げて落ちていく。しかし全てを殲滅することは出来なかった。サーラは風エリアへと落ちた。
久朗はキリングワイヤーを構え、従魔を切り飛ばす。それでも数は減らない。何て数だ、と思う。これはもしかしたら後続に影響が出てしまうかもしれない。
炎エリアに落ち行く二人の脇を通り過ぎ、従魔は仙寿とマオを狙う。
《くっ》
「わっ……!」
従魔の攻撃を二人はさばききれない。大けが、とはいかないけれど傷を負った。マオはドロップゾーンの詳細を目にする。
「草原と山と湖と……溶岩っ!」
――地形が違うだけか、それとも。
当初の予定通り、仙寿は風エリアへ。マオは土エリアへと降りることが出来た。。
従魔は更に、エージェント達に襲いかかる。リオンはヴァンピールによる範囲攻撃を放った。リオンと、ちょうど彼の側に居た蛍の視界が広がる。二人は従魔と接触することなく――だが、リオンは突然の雷に打たれ、炎エリアへと落ちた。
――蛍、余所見しちゃ駄目ッス!
「っ、分かってます!」
リオンの身を案じつつ、蛍は風エリアへ。
大剣を携えた、毅然とした騎士姿となった征四郎――自分が”男”であったなら、そして成長したのなら――その想像から生まれた”もしも”の姿。
――怖くはないか、征四郎。
ライヴスの中で自分を案じるガルーに、征四郎は強く返事をする。
「行けます。無謀じゃなくて、皆信じられる人達だから、怖くはない」
それに、と一拍置いて、征四郎は続けた。
「わたしの願いは全部を救うこと。あなたの願いはより多くを救うこと。 ……だから、先鋒はわたしが。諦めの悪いわたしがいきます。ガルーはその冷静さで、支えてくれると嬉しい、です。……どうかわたしを信じてほしい。わたしも、あなたを、信じる」
――当然だろ。
ガルーの答えに、征四郎は少し笑った。しかしすぐに剣の柄に手をかけ、真剣な表情で従魔を睨む。 剣を抜いた。迫る従魔を迎え撃つ。
「っ!」
何発か攻撃をくらい、征四郎は炎エリアへと落ちた。
――せーちゃん!
『征四郎なら、大丈夫だ』
オリヴィエは銃を構えた。少なくなったものの、まだ油断は出来ない数。攻撃を全て躱し、カウンターの如く、相手を撃ち抜いて。オリヴィエの死角から従魔が攻撃を仕掛ける。が、それにオリヴィエは反応できなかった。ダメージは受けなかったものの、当初の予定とは違う水エリアへと落ちていく。
黎夜はアーデルと同じ色――くすんだ黒色の左目で従魔達を見据えた。
「木陰黎夜。アーテル・ウェスペル・ノクスと共に、お前を討ち落とす」
黒の猟兵を使い、黎夜は黒い霧を操る。無数の猛獣を作り出し、従魔達を襲わせた。一体、また一体と、数が減っていく。だが――。
――黎夜!
従魔の動きが、黎夜の動きを上回る。想定以上の攻撃を受け、黎夜は水エリアへと落ちた。
●水エリア
――予定外の所に落ちちゃったねえ。
『ああ』
オリヴィエは体にじんわりとした痛みを感じた。それは同じく、水エリアに落ちてしまった黎夜も同じだったらしい。眉根を寄せ、苦しそう。
「ここを脱出しよう、オリヴィエ」
『ああ。はやく、土エリアに。……!』
は、とオリヴィエは顔を上げる。
巨大な蛇が二人を見下ろしていた。その周りには、同じような姿をした従魔が多数。
――このエリアの支配者、ヨルムンガルド、と言ったところかな。もしかして、他のところにもこういうのが。
『だとしたら、皆、危険、だな』
ライヴス通信機で、オリヴィエは手短に皆に連絡をした。黎夜は敵との距離を測り、その数jをもう一度数えた。何時もなら、何とか出来る数だ。だが、今はじっとしているだけで体力を奪われていく。
「明らかに劣勢」
『こういう時は――逃げるに、限る』
●炎エリア
溶岩の海に浮かぶ小さな岩場に、久朗は降り立った。周りを確認する。同じような足場が点在している。高さのある足場はなさそうだ。
――も、ものすごい暑さですね……。
「なかなか堪えるな」
不意に久朗の耳に轟音が響く。音がした方向を見れば、すでにソーニャが戦闘を開始しているようだった。ゾーンルーラーである巨人を久朗も確認する。腕の数は二本。武器は持っていない。それ以外、気になることは――。
――あの胸に埋まっているものは何でしょうか?
巨人の左胸、人間で言えば心臓がある真上辺りに、丸く、黒いものが、二つ、埋め込まれている。
「検討がつかないな。……まずは、相手を知ろう」
――そうですね。
足場を渡り、久朗は巨人へと近づく。
征四郎が落ちた先は、巨人のすぐ近くだった。溶岩の足場にジャングルライナーを射出する。ソーニャの位置を確認し、彼女の攻撃とは別方向から攻撃をする。征四郎に気づいた巨人がその拳を振り下ろした。征四郎はそれを受けた。近くの足場に降りる。
体が重い。息がすぐ上がる。けれど。
呼吸を整え、征四郎は近くに居るリオンに声をかけた。
「ここは征四郎達に任せて下さい。予定通り、土エリアへ」
『ありがとう』
リオンは土エリアへと向かった。それを見た巨人が邪魔しようと、拳を振るう。その腕をソーニャは狙撃した。砲撃が巨人の腕を掠る。ち、とソーニャは舌打ちをした。征四郎は巨人をなるべくこの場に押しとどめようと、再び剣を振るった。
巨人がその大きな拳を溶岩に叩きつける。
飛び散る溶岩はそのまま範囲攻撃となって、ソーニャ、征四郎、九朗に襲い掛かる。
「っ!」
――クロさん!
「……いつもなら避けれたな」
――このエリアはこちらの回避能力を下げるみたいですね。
「慎重に行くか」
●土エリア
――体が軽い?
パラシュートを使い、土エリアに降り立ったマオは一度、二度と跳ねてみた。いつもより高く飛べている気がする。感覚が研ぎ澄まされているような感じががあった。今ならどんな攻撃も避けられて、どう仕掛けても攻撃は当たるような気がする。
「もしかしたら、他のエリアも……?」
マオは他のエリアに降り立った仲間と連絡を取った。
【真壁だ。回避能力が下がるみたいだ】
【こちら木陰。何もしなくても、体力が奪われてく】
【時鳥、です。え、と……体が、軽くなった……感じがします】
「エリアで効果が違うんだ」
――ここと草原はいいけど……他は戦いづらそう。
マオは一つ頷き、風エリアとの境界へと向かう。ジャングルライナーで木々の間を渡り、出来る限りでスピードで。そんな彼女の前に突如、大きな獣――狼が立ちはだかる。先程、オリヴィエから連絡があった愚神――風エリアの支配者だろう。
マオは翠嵐を構えた。狼は吠えて、マオに対して鋭い爪を振り下ろす。その攻撃を難なく避けて、マオは狼に急接近した。右前足のあたりを切り上げる。狼は呻き声を上げたが、その殺気は衰えることがなかった。
「時間、かけてられないからっ……!」
マオは再び、狼に切っ先を向けた。
●風エリア
サーラはすぐに宝玉の位置を確認した。サーラが現れたことに気づいた愚神――人型で雷を纏っている――や、馬の姿をした従魔がこちらへ向かってくる。回避も防御もサーラの選択肢にはない。
「……破壊こそがこの作戦の重要な要。内側で堪えている上官殿方の為に……一刻も早く、ぶっ壊れろってんだぁ!!」
ブルズアイを発動させ、サーラはメルカパを乱射する。弾の着地点から、煙が上がる。それが上手く煙幕となり、蛍と仙寿の姿を隠した。二人は上空から確認した宝玉へと近づく。その側に重々しい鎧姿の愚神が居る。サーラの砲撃から、宝玉を守っているかのような動き。
――各エリアに配置されていて、しかも愚神が守ってるなんて怪しいよね。
《ドロップゾーンのルールに関わるものだろうな》
「悠長にしてられません。あの宝玉ごと攻撃します!」
蛍は怒涛乱舞を放った。命中。愚神の鎧の一部がへこむ。攻撃を受けた愚神が彼女に戦斧を振り下ろす。その攻撃を仙寿はターゲットドロウでカバーした。サーラの砲撃が轟く。宝玉に罅が入った。
「……今!」
蛍は宝玉にコールブランドを振り下ろした。
宝玉が砕け散る。それを守る愚神も消滅した。
溶岩を草原が支配していく。爽やかな風が吹き抜けた気がした。蛍は他のメンバーに報告しつつ、真っ先にゾーンルーラーの――否、親友の元へと向かった。その後ろ姿を横目で見送ってから仙寿は雷纏う愚神へと視線を向ける。サーラが仙寿の隣に立った。
《あいつを残しておくのは面倒だ》
「同感であります。……撃てぇ!」
先程と同じように、サーラは愚神に向けて発砲する。その弾を相手は雷を用いて破壊した。敵の意識がサーラに向いている隙をついて、小烏丸を構えた仙寿が相手の懐に潜り込む。
一閃。
それでもまだ、相手は倒れない。
●土エリア
リオンは黎夜とオリヴィエと合流した。二人の消耗が激しいことに気づいて、ケアレインを発動させる。
「助かった」
『ああ。……これで、ようやく、スタートライン、だ』
あの蛇がこない内に――と、オリヴィエは銃を構える。先程の蛍からの連絡で、この宝玉が何を意味するのかは分かっている。三人に向かい、鎧姿の愚神は戦斧を振り上げた。黎夜を狙ったその攻撃をリオンはカバーリングする。
『盾を無視して攻撃出来ると思ってる? まずは俺を倒して貰おうか』
リオンは笑った。愚神がオリヴィエに体を向ける。ぎぎぎ、と嫌な音がした。
『言葉、は……』
――通じないっぽいね。
オリヴィエは敵の後ろにある宝玉を狙った。普段ならきわどい角度。しかしこのエリアに入ってからというもの、力がみなぎっている。――外す気がしない。
オリヴィエが放った銃弾に愚神が反応する。宝玉をかばうように、立ちはだかった。弾が愚神の鎧にめり込む。一瞬生まれた隙。黎夜は見逃さない。すかさず、サンダーランスを発動させる。雷の槍が、愚神を貫き、宝玉を砕いた。山がその裾のを広げ、湖を呑み込んでいく。
『よし!』
「炎側で壊されると面倒だ」
『ああ、壊しに行こう』
『今なら、蛇、も……相手、出来る』
――リベンジだね!
小さく笑みを漏らして、オリヴィエは手に力を込めた。
狼と戦闘中だったマオはオリヴィエから連絡を受け、一旦敵との距離を取った。ドロップゾーンの中は既に風と土のエリアだけになっている。風と土の間にある宝玉を壊す必要はなさそうだ。その証拠に、鎧姿の愚神がこちらに向かってきている。もう、守らなくていいのだろう。狼には大分ダメージを与えることができた。マオはまだ余裕がある。
「ゾーンルーラーに皆が集中できる、ように」
赤の目を光らせ、金色の尻尾を揺らし、マオは叫ぶ。
「あなたは――あなた達はここで倒します!」
●VS巨人
「向こうはやってくれたみたいだな」
足元が岩肌に変わり、ところどころが盛り上がっていく様に、久朗は笑みを浮かべた。通信機から聞こえる宝玉破壊の報告。ドロップゾーンの中は完全に土一色となった。
――暑いのもなくなりましたね! これなら……!
久朗は巨人に乗り移れそうな足場を探した。全てが土エリアと化したことが影響したのか、巨人が咆哮を上げる。近くに居た征四郎と蛍はその圧でダメージを負った。
「大丈夫ですか、ホタル」
「はい、征四郎」
肩を並べ、二人は頷き合う。そこへ雷纏う愚神を討伐した仙寿とサーラが駆け付けた。
《皆、無事で何より》
「上官殿!」
巨人が足元の岩盤をはがし、二人に投げつけた。ソーニャが岩盤を砲撃で破壊する。ダメージはゼロ。
逆方向から、リオン、黎夜、オリヴィエがやってくる。
「よし、フルボッコの時間であるな」
ソーニャは笑った。
巨人がまた吠える。その場に居る皆の心に衝動が走った。まるで、これで世界は終わってしまうような感覚が皆を襲う。
――まだな、ラグナロクにはさせねぇよ。そうだろ、征四郎!
征四郎のライヴスの中で、ガルーが言う。その言葉に征四郎は支えられた。
――仙寿様!
同じように、あけびが仙寿を。
――クロさん! 頑張って下さい!
言われなくても、と九朗は唇の端を上げる。
――蛍っ、耐えるッス!
グラナータの呼びかけに、蛍は答えなかった。けれど、手には力がこもる。
――リオン!
響く仁菜の声に、リオンはしっかりとアイギスの盾を構える。
――黎夜、平気か?
アーデルが居るから、と黎夜は心の中、明確な意志を表示する。
――オリヴィエ、こんなところで負けないよね!
当然だろ、とオリヴィエはリュカに答える。
サーラはしっかりとオブイエクトの操縦管を握った。
ソーニャは。
「っ!」
耐えられなかった。
強い眩暈を感じ、ソーニャは思わず、はぁ、と息を漏らした。通信機でその音を拾ったのか、上官殿! と、サーラの声。心配無用とソーニャは答えた。情けない。あのような攻撃で。小官はやられる訳にはいかない。祖国を奪還するまでは!
「膝をつかせてやるのである!」
ソーニャはメルカパを向けた。それを見たオリヴィエもアハトアハトの準備を行う。黎夜もブルームフレアを放つ用意をした。声を出した合わせた訳ではない。けれど確かに、三人は同時に攻撃を放った。巨人がバランスを崩す。そこを狙って久朗は巨人に飛び乗った。うなじあたりをフラメアで突き刺す。濁った、醜い悲鳴。痛さに呻く巨人の腕が仙寿に当たりそうになる。リオンのカバーリングでそれは事なきを得た。彼の背後から仙寿は巨人に攻撃を仕掛ける。手首を、切り裂いた。
《友が堅牢な盾で在るならば、俺は犀利な刃で在ろう》
巨人が手を左胸に当てる。埋め込まれていたものを取り出した。それは、巨大な一対の、炎を纏った剣だった。ここに居るのはまずいと久朗は一旦、巨人から離れる。そこにマオが合流した。
「あれ、は」
《当てさせるものか……!》
仙寿は繚乱を発動した。薔薇の花弁が巨人の持つ剣にまとわりつく。片方の剣を巨人は落とした。しかしもう片方で、黎夜を狙った。リオンは素早く、二人の間に割って入る。このエリアの効果のせいだろうか、余裕で間に合った。すぐさま、ライヴスミラーを発動した。剣がミラーに当たる。剣が纏う炎が巨人に跳ね返る。
『強力すぎる攻撃は自分自身を破滅に追い込むって知ってるか?』
――おやすみなさい。世界を滅ぼす巨人さん。私たちの世界は滅ぼさせないよ。
がくり、と巨人が膝をつく。
敵が次の行動を起こす前に、皆、持てる力を全て放った。
十人の”希望”の力を受け、巨人は絶命した。その体が霧のように飛び散る。同時にドロップゾーンが縮小を始めた。
このままでは落ちる。いや、落ちても共鳴状態なら大丈夫だろう。でも。
刹那。
エージェント達の下に、二体のヘリコプターが現れる。二体のヘリコプターの間には、衝撃を吸収する特殊な布が張られていた。
【皆さま、お迎えに上がりました! ドロップゾーンの撃破、お疲れ様です! さぁ、こちらに飛び降りてください!】
●戦い終わって
「ふむ、此度の作戦も成功である」
得た報酬を見ながら、ソーニャは笑った。また、このような依頼があれば率先して受けよう。
「上官殿!」
「同志。負傷はないか」
「は。……上官殿」
「む?」
「また何かありましたら、自分をお連れ下さい!」
背筋を正すサーラに、ソーニャは笑みを深くする。
「むろん。そのつもりである」
一刻も早く、祖国を取り戻す為に。
自然あふれるヘイマエイ島を隅から隅まで巡り、従魔や愚神の姿が何処にもないことを確認してから、マオは町外れにある草原に寝転がった。真上に広がる空は、この時間帯であれば濃紺でそこには星々が煌めいているはずなのに、白が混じっていて、煌めきは少ない。二度目の世界蝕の影響だ。
「これからどうなるのかな……」
マオの傍らにレイルースは腰を降ろす。
『分からない、けど。……最後まで諦めない』
「うん」
「良かった……この島に何も被害がなくて」
ほ、と仁菜は胸を撫で下ろした。
『これから、こうした戦いが多くなるのかもな』
頬に風を受けながら、リオンが呟く。その感触はとても穏やかだ。けれど、この風がいつか暴風になるような気がして。
「……もし、そうなったとしても」
仁菜は真っすぐ、リオンを見つめた。
「そこで死ぬつもりなんてないし、リオンと別れるつもりもないよ」
浮かべる表情は笑顔。しかしそこに宿るのは強い意志。
リオンもまた、彼女と同じ表情となって。
『でも引くつもりもないだろ? 全く我儘なお姫様だな!』
グラナータは一人、町中を歩いていた。共鳴を解くなり、蛍はさっさと何処かへ行ってしまった。勝手に帰る、ということはないと思いつつも、やはり不安になる。と、土産物の店の前でふと足を止めた。そこに並んで居るのはロパペィサ……この島伝統の様々な色が使われたセーター。この前の事件で訪れたラトビアで見たミトンと同じように、このニットにも何か意味があるのだろうか。例えば、親愛を表すような。
《……蛍》
どうすればまた、視線を交わすことができるのだろう――。
そんなグラナータを少し離れた場所で黎夜とアーデルは見ていた。辛そうなグラナータの表情に黎夜は何か力になれないかと思う。しかし同時に、下手に深入りするのは、と躊躇した。
『黎夜』
アーデルの声に黎夜は振り向く。
『求められたら、応じればいい』
「……うん、そうだな」
「やあ、アニタちゃん。元気だった?」
リュカと征四郎はアニタの家を訪れていた。三か月ぶりの再会にアニタも嬉しそうだった。羊のハルドルも二人を歓迎している。お茶していきませんか? と言うアニタに二人はもちろん応じた。
『一緒に、行かない、のか』
『それはお互い様だ、リーヴィ』
あまり大人数で押しかけてもな、とガルーは肩を竦める。
『喫茶店にでも行くか』
『……あんたが行きたい、のなら』
『愚神の動きが活発になってるね』
沈みゆく夕日を見ながら、あけびが言った。
『同感です。あのようなドロップゾーンが二度と生まれないといいのですが』
不安そうにセラフィナが呟く。
「……生まれたとしても、また潰せばいい。」
「久朗と同意見だ」
仙寿は拳を握る。きっとこれから起こることには”王”が深く関わっているに違いない。だが。
「どんな存在であれ――負けるつもりはない」
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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