本部

乱離骨灰になった日

岩岡志摩

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/07/28 12:26

掲示板

オープニング

●意味
 乱離骨灰(らりこっぱい):ばらばらに離れ散ること。めちゃめちゃになった様子。さんざん。

●記録から削除されました
 H.O.P.E.ギアナ支部には『何でもアリな支部』の異名がある。
 たとえ太陽光がやたら眩しい●●●が動き回っていたり、気付いたら資料室や研究室でひどい目に遭ったりとか理不尽なことがあってもギアナ支部なら不思議でない。
 紅い血しぶきのように見えるようなものは、きっと赤いペンキか何かだ。問題ない。
 大丈夫。これから起こる事、起きてしまった事は記録には残らない。というより今この支部にある記憶媒体自体が乱離骨灰な状態だから、残っても黒歴史程度で済む。
 そしてこの日。ギアナ支部でイケニ……もとい犠牲となったのは主に男性陣だった。
 彼らの視界に突如丸太のように太くガッシリした腕を持ち、脛毛と腕毛と胸毛がフッサフサなガチムチゴリマッチョなミニスカ生足魔法少女風衣装を纏ったインコ頭オッサンM・Aがあらわれた! 
 ギアナ支部の各所から『視界の暴力がぁぁぁぁ!』『目が! 目がぁぁ!』という悲鳴が聞こえてくる。
「誰か俺の記憶を消してくれエェ!」
「俺のパンチラが……」
「なんてえげつないことをしやがる!」
「漢の夢と希望と浪漫、パンチラを護れ!」
「あれはパンチラへの冒涜だ!」
「そうだ、俺たちの、皆のパンチラを護るんだ!」
「絶対に捕獲しろ!」
 ギアナ支部に残る男達は無駄に熱く語り合い、駆けだしていく。
「悩める子羊を救済するゾ♪ 魔法少女M・A見・参!」
 可憐にポーズを決めちゃった、職員達の視界に絶大なる破壊力を示したオッサン(M・A)。
 これは生きた有害物質である。
 服装は可愛らしいスカートのたけが異様に短いフリフリのドレス。
 着てるのが女性なら嬉しい衣装を! だが今回着てるのは立派な筋骨をもった眩しい笑顔のオッサン(M・A)。生足へそだしすね毛アリ。ぐふぅ。
 おい、M・A。尻尾(?)は振るな。見える! 見えてはならんもんが見える!
 何があった。ご乱心というレベルを果てしなく越えている。そして解りたくないが、アレが恐らくパンチラという漢の夢と希望と浪漫を打ち砕いた元凶だろう。
 呆然とするポルタ クエント(az0060)の横で、イサナ シータス(az0060hero001)が爽やかに微笑んだ。
「ちょっと(拳で)語り合ってきます」
「暴力ストップ! 殴り合う必要はありません!」
「大丈夫です。ただの(物理的な)話し合いですよ」
「()内がわかりますからね!? 拳で語らないでください!」
 などと揉みあっているポルタとイサナの頭上で何か光る粉のようなものが煌めくと、その次の瞬間には腰にミニスカートを纏った細マッチョな素晴らしい肉体美の頭に白い花を生やした残念なイケメンことイサナが、視界に追加された。

●救援(イケニエ)求む 
 画面の向こうにいるポルタが頭痛を抱えた表情で救援を求めてきた。
『うちの男衆の一部が魔法少女()になってしまいましたので、捨て置く事も出来ず依頼させて頂きました』
 主な犠牲者はM・Aやポルタの英雄であるイサナ達男性陣らしい。
『これは個人的な予想ですが、男性を強制的にミニスカ魔法少女に変えているのは従魔かと。共鳴・非共鳴状態に関わらず男性のみ「被害」に遭っていますので、ご用心下さい』
 そしてポルタは『これはできればですが』と前置きして追加の懸案を説明する。
『実を申しますと、この騒動でギアナ支部では食事どころではなかったので、恐らく騒動が終わればほぼ全員空腹で倒れるかと存じます』
 そのためできれば料理のできる人も来て作ってほしい、とのことだった。
 ポルタの説明では、何故か米の飯や様々な料理に使えそうな野菜類はあるが、レトルト系は補充を急がせている状態で、肉といえるものは研究職員も兼ねた支部のリンカーが撃破して入手した元従魔だったものしかないらしい。
 職員曰く今支部にある元従魔食材は、ドラゴン肉(牛肉っぽい)、アリカント肉(鶏肉っぽい)、ディエヴァエ肉(マス肉っぽい)、キャノンボア肉(豚肉っぽい)の4種だ。
『一応は食べられる、と倒した職員は言っていましたので、料理に使うのは大丈夫だと思いますが使われるかのご判断はお任せします』
 できる限り迅速な解決が望まれるため、報酬は相場よりやや多めをポルタは提示し、ちょっと黒歴史になりそうな依頼がギアナ支部より斡旋された。

解説

●目標
 ギアナ支部で起こっている騒動を鎮圧する
 副目標:支部にいる職員達に食事をとらせる

 登場
 従魔×6
 推定でミーレス級。全長20cm。外見上は蝶の羽を生やした人型。なぜか頭部はこの従魔を見ている能力者、体は英雄の姿に見える(例:能力者が男性、英雄が女性の場合、顔は男性で体は女性の姿に見える)。略称『蝶』。光の粉のようなものを撒いて、主に男性をほぼ強制的に魔法少女の格好にさせる状態異常を引き起こす。精神的な効果は不明。飛行能力はあるが高くは飛べず速くもない。攻撃力もほぼ皆無で非常に脆い。

 M・Aとイサナ・シータス
 現状では主に魔法少女。おかげでポルタは共鳴できない。
 
 支部職員達
 無駄に熱い方角で頑張っている。しかし今のところ現状を打破できない。

 状況
 ギアナ支部のとある研究ラボの一画。『蝶』が動き回るとミニスカ姿が増える→職員達の動きが鈍る→『蝶』が動き回るという悪循環が形成されつつある。縦横およそ各20sqのジャングルを模した空間で、判定上この区画から従魔は出ない。調理場は別区画にあり、肉以外の食材や調味料、調理用具は一通りそろっている。支部職員達やポルタに指示して作らせても可。
 使用可能な肉はドラゴン肉(牛肉っぽい)、アリカント肉(鶏肉っぽい)、ディエヴァエ肉(マス肉っぽい)、キャノンボア肉(豚肉っぽい)の4種。

リプレイ

●現場はカオス
 救援要請を受けギアナ支部に到着したエージェント達を待ち受けていたのは、ジャングルを模した空間内に、ミニスカ魔法少女な姿の『男性』が蠢くカオスな空間だった。
「これは……ヒドイ。くっ」
 麻生 遊夜(aa0452)は現場(特に男性職員)の惨状に目頭をおさえる。
 魔法少女()もそうだが従魔の方もあかんやろ……。
『……聞いてはいたけど、これは……うわぁ』
 ユフォアリーヤ(aa0452hero001)の耳がペタリと垂れる。
 魔法少女()と化した男性職員達のすね毛が目に痛い。
 中でも弥刀 一二三(aa1048)が目撃してしまった『ソレ』は破壊力十分だった。
「え、M・Aはああん!?」
 爽やかに笑うゴリマッチョなミニスカ魔法少女のオッサン、M・Aがいた。インコ頭は変わらない。
 一二三にとってM・Aはジャスティン会長とは違う形で尊敬している為、その分ダメージ(?)は大きい。
 ――見えたらアカンもんが、バッチリ見えてまいました。イチゴぱんつどした。
 そんな事を考えている場合ではないのは一二三も理解している。だが精神的ダメージが計り知れない!
『個性的とは思ったが、そういう趣味もあったのだな』
 キリル ブラックモア(aa1048hero001)は破壊力十分なM・Aを見ても、『そういうもの』だとクールに分析する。
「冷静に分析せんどくれやす!」
 そんなキリルに一二三はツッコミを入れるが、いまだ衝撃から立ち直っていない。
「M・Aさん……何て姿に」
 荒木 拓海(aa1049)もまた衝撃を受け涙目になる。
(あの人は一見ネタなのに中身はまさに漢! なのが良いんだ。それが……)
『あれは……心から楽しんでるわよね?』
 ――ええ、きっとそうよね。
 一方メリッサ インガルズ(aa1049hero001)は優しい笑顔で今のM・Aを肯定する。
『……んー、んー……すごい、撃ちたい』
 尻尾をゆらゆらさせるユフォアリーヤを慌てて遊夜が制止する。
「駄目だ、やめるんだ! あれは味方……味方だぞ!?」
 そう言いながらも遊夜は魔法少女()なM・Aや男性職員達から目を逸らし、視線を合わせようとはしない。
(撃ち抜きたくなるのはわかる……わかるけど、抑えるんだ!)
 そう心のうちで叫びながらも遊夜はユフォアリーヤと共鳴し、今回は主導権をユフォアリーヤに譲る。
(……すまぬ……すまぬ……!)
 詫びながらも、遊夜は全てが終わるまで表に出ない決意をする。
『……んー、……ううん、やっぱりダメ……あれはダメ』
 主導権を得たユフォアリーヤが、もう一度男性職員達を見るが、遊夜と同様に目をそらす。
「何か大変な事になってるって聞いて来たけど……こういうことだったんだ。もう何でこの依頼を受けたかわかった気がする」
 狼谷・優牙(aa0131)は現場の惨状を目の当たりにして、何故小野寺・愛(aa0131hero002)が強く参加を推したのか理解した。
「あ、あんな格好はしたくないよっ。愛さん、すぐに共鳴して倒……愛……さん……」
 共鳴しようと愛の方を向くも、そこには自分に向けスマートフォンのカメラを向けている愛の姿があった。
 そこへ蝶の羽を持つ従魔(以下蝶と略)が光の粉を優牙に撒き、優牙はミニスカ魔法少女姿に変化した。
 涙目で絶望する優牙。
『あはは~、優牙くん、頑張ってくださいね~♪』
「どうしてまたこんな目に!? ちょ、下から撮ったら駄目だよ!? 色々と危険な事になっちゃうから!」
『優牙くんは可愛いから下から撮ってもきっとわからないですよ~』
 あらゆる角度(ローアングル含む)から、涙目で抗議する優牙をスルーして愛はとてもいい笑顔で撮影を続ける。
『お~、予想通り可愛いですよ~♪ これでまた私のコレクションが増えますよ~♪ ああ、その潤んだ目も可愛いですよ~♪』
 愛は優牙にサムズアップ。魔法少女と化し涙目になる姿を撮影しまくり、堪能したところで優牙と共鳴する。
『何となく首を突っ込んでみたけど……相変わらずカオスだね、ここは……』
 ウィリディス(aa0873hero002)はギアナ支部の予想以上のカオスっぷりに呆れたような顔をする。
「リディス……今回の依頼の詳細、私さっきジョセフさんから通信で聞いたばっかりなんですが!?」
 ウィリディスに巻き込まれる形で、依頼に参加した月鏡 由利菜(aa0873)は、直前まで詳細を言わなかったウィリディスに抗議した。
 とはいえ既に現地まで来てしまった以上、由利菜も現状を解決する以外に道はない事は承知している。
 そんな2人の頭上から突如光の粉が撒かれ、由利菜とウィリディスは魔法少女の姿になるが、構わず由利菜とウィリディスは共鳴し、ウィリディスの容姿でセーラー服をアレンジした姿に変じた。
『セーラー服●少女戦士、パナギア・アネモス! 風に乗っておしおきだ~!』
 ウィリディスは魔法少女化を楽しむことにしたようだ。
「それは魔法少女では……いえ、何でもありません……」
 ウィリディスの口上にツッコミを入れながらも、由利菜はそのままジャングルを模した空間を駆け抜け、『蝶』を追う。
『なんて言うか……最低でもムダ毛の処理くらいはしないと』
 伊邪那美(aa0127hero001)は眼前のカオスな状況に方向違いのNGを出す。
「この支部ごと爆破した方が良いんじゃないか?」
 御神 恭也(aa0127)は無表情ながら物騒なことを呟く。
 爆破してもギアナ職員達なら大丈夫だろう、多分。
 恭也は目の前で魔法少女()が追加される光景を前にしても動じることはない。というのも。
「……女装され慣れた自分が嫌だ」
 過去にこの手の被害を受けてきた模様だ。
『安心してね恭也。魔法少女姿にされたらボクが綺麗に仕上げてあげるから』
「それの何処に安心する要素があるんだ?」
 などと言い交しながらも恭也と伊邪那美は共鳴する。
 その一方で一二三と拓海は、いつしか無駄に熱い議論を戦わせていた。
「……あれは見えないからこそ良いんだ…そうだろう、ヒフミ?! ニーソとのコラボ絶対領域……絶妙なラインっ! そこっ! 見せないっ! まして男!」
「せや! おなごが恥じろうて頬染め、絶対領域恥ずかしそに手で隠そしとるんがええんや! けど忘れて動いてもて、ちょい見えするパンチラ! このチラリズムが大事なんや! モロ見せと野郎は論外じゃ!」
 議論をぶつけ合いながらも、拓海と一二三は魔法少女()な男性職員達を酷評する。
『男と結婚しても女の子が良いのね』
 メリッサは真顔で拓海の議論(?)に感心し、一二三を見つめるキリルの視線は、某チ●ットス●ギツネのように乾いていた。
『……人格崩壊するほどか?』
 キリルは一二三と拓海が現実逃避する形で議論していたことを見抜いていた。
「女には理解出来ひん漢の浪漫どす! ……万一ありますよってしょうがおへん、今回はフミリルで……」
 一二三とキリルの共鳴時の姿はキリルのやる気に応じて性別も変化し、現状ではやる気がない状態の『フミリル』形態(外見性別:女性)が一番マシなのだが……。
 そこへ突如光の粉がまかれ、優牙以外のエージェント達も(強制的に)魔法少女化する。
『よし、目に余る筋肉を倒すぞ、フミ!』
「あああっ! 今日に限ってキリルがやる気になってもうとる!」 
 残念ながらキリルはやる気に満ちており、共鳴後ミニスカ魔法青年姿の一二三が現れた。
「こう言う時は堂々とすれば良い、なまじ動揺するか……ら? Ohhh!」
 自分の姿を見て絶叫する拓海の目からハイライトが消え、どんよりとした空気を醸し出す。
『……堂々とするんじゃなかったの?』
 しっかり闇落ちした拓海に、メリッサは鋭くツッコミを入れながらも『……騒ぎを静めるわよ』と拓海に騒動の鎮静化を促し共鳴する。
 そんな悲喜こもごもな状態で、従魔退治が始まる。

●サクっと退治
 まず恭也は被害拡大を防ぐため、魔法少女姿の男性職員達をウレタン噴射器より噴射したウレタンで壁や木々に固定していく。
「よし、これで悍ましいものを見ないで済むな」
『……これはこれで、不気味な景色になった気がする』
 飛び散ったウレタンの固まりから複数の生足(すね毛あり)が突き出た異様な光景を見て、伊邪那美はそう評する。
 そんな光景を背に、一二三と拓海は声を合わせてポーズを取る。
「燃え上がる炎のシックスパック! キワ☆ファイヤー!」
「包容力溢れる愛のシックスパック! キワ☆アムール!」
 そして一二三と拓海はシンクロする。
「「俺達、マッチョ☆キワ! 見参!」」
 綺麗にポーズが決まる。一二三と拓海は輝いている!
『2人とも目が死んでるぞ』
 キリルの指摘が耳に痛い。
『堂々としてるよね?』
(……やべーっ)
 メリッサの指摘に拓海の微かに残る理性が泣いたが『ほな行こか、拓海』と、キワ☆ファイヤーもとい一二三に声をかけられ、拓海は空元気を奮い起こし、ジャングルランナーを駆使して一二三と共にジャングル内へと突入する。
 この時フォレストホッパーで最適なルートを『跳躍』するユフォアリーヤは、いち早く『蝶』の群れを捕捉する。
(敵はあっちの……うわぁ……)
 遊夜の顔をした、ユフォアリーヤの体の『蝶』の姿を見てしまい、遊夜はユフォアリーヤの内で顔を覆う。
『……ん、ふふ、ふふふふ』
 一方ユフォアリーヤはぷるぷる震えながらも、何かが心の琴線を刺激したのか愉しそうだ。
(……早く、早く倒そう! 俺の心が死んでしまう!)
 ――この従魔作った奴は頭がおかしい。
 遊夜、真顔で断言する。
 大混乱だしね! 嫌がらせには最適だ! くそぁ!
『……んー、ある意味天才かも?』
 ユフォアリーヤはクスクスと笑みをこぼす。
(うむ、跡形もなくヤるべき)
『……えー……んー、そうだね……仕方ないかぁ』
 なんでちょっと残念そうなのかな!?
 遊夜はユフォアリーヤに戦慄を覚えたが、対応策を捻りだす。
(普通に狙ったら『アレ』を視界に入れてしまう……そうだ、ショットガンにしよう)
『……ん。跡形もなく滅する』
 遊夜の策に同意し、ユフォアリーヤはショットガン「ブレイズアトレイルCP11」を構え、アハトアハトを発動する。
 銃口より放たれたユフォアリーヤの散弾状ライヴスが散弾の嵐と化し『蝶』に叩きつけられる。
 直後ユフォアリーヤのアハトアハトが炸裂して爆発を起こし、爆風で全身を削り取られた『蝶』達はまとめて塵と化す。
 次に『蝶』を捉えたのは愛だった。
 愛の視界にいる『蝶』は頭が狼牙で体は愛の姿だが、愛は動じることなくスマートフォンで撮影後、倒しにかかる。
『ふふふ、やっぱり本物の優牙くんのほうが何倍も可愛いですね~』
(あ、あんな姿の記録は残さないでよ、愛さん……)
 優牙の抗議をよそに愛は楽しそうに呟くと、《白鷺》/《烏羽》の槍光を煌めかせる。
 二対一組の双槍が『蝶』に繰り出され、撃ちこまれた穂先に胸を突き通された『蝶』は、胸から塵を撒いて消える。
『目的は達成しましたし、もう従魔に用はないのですよ~♪』
 愛はそう言い残すと次の『蝶』を探しに向かう。
 その内に由利菜も『蝶』を探し当てたが、こちらも愛と同じく特に動揺はなかった。
『あたしもユリナも女の子だから、あのコピー従魔の外観インパクトはあんまりないかなぁ』
 ウィリディスの言葉通り、由利菜もウィリディスも共に魔法少女と化しても違和感はあまりない。
『むしろ可愛いかも?』
「……リディス。変なこと言ってないで、さっさと倒しましょう」
 由利菜の顔で体はウィリディスに見える『蝶』をウィリディスはそう評す中、由利菜は聖槍「エヴァンジェリン」を『蝶』へとサクッと打ちこんだ。
 神々しい輝きを帯びた由利菜の聖槍「エヴァンジェリン」の一撃のもとに『蝶』は貫かれ、『蝶』は穿たれた体から塵を噴いて消えた。
「……それにしても、やたら短いスカートですね……。リディス、スカートの中を見られることに羞恥心はないのですか?」
『え~、あたしは動きやすさ重視だから気にしてないけど?』
 サクッと『蝶』を倒した由利菜とウィリディスは、自分達の姿についてそんなことを話していた。
 そしてジャングルランナーを駆使してジャングルのある空間内を『飛翔して』いた拓海は、頭は拓海で体はメリッサの姿をした『蝶』に向け巻物「降雹ノ書」で攻撃する。
「ミラクル☆キラメキ☆キワフローズ(はあと)」
『技名を叫ぶのも状態異常なの?』
 メリッサのツッコミを拓海はスルーし決めポーズ。
 放たれた拓海の氷弾状ライヴスは『蝶』の体を撃ちぬき、体に穴を開けた『蝶』は塵を撒いて消えていく。
「頂きよ(はあと)」
 そして拓海と組んでジャングル空間を疾駆する一二三は、ライヴスゴーグルを介して『蝶』を捉える。
 決して顔は一二三、体はキリルな姿の『蝶』を直視したくないからではない……はず。
「キワ☆ファイヤー☆メテオライトー!」
 掛け声とともに一二三の放ったライヴスショットは『蝶』に着弾し、ライヴスの爆発が『蝶』を身を砕き、塵に変えた。
「筋肉傷付けたら許さないゾ☆」
 ポーズをつけウインクする一二三。
『今の自分の姿に疑問はないのか、フミ?』
「……それを言わへんでおくれやす」
 キリルからの指摘に一二三は辛うじてそう応える。
 そして恭也も最後に残った『蝶』を発見すると、距離を置いてアンチマテリアルライフルを構え、顔は恭也で体が伊邪那美な『蝶』を狙う。
『気色悪いと言ったら気色悪いんだけど……』
「年齢の差のせいか、顔と体のバランスがとれてないな」
 伊邪那美と恭也は従魔を見ても動じず、冷静に分析する。
『仰け反ったら、顔の重さでひっくり返りそうだね』
「やってみるか」
 伊邪那美の指摘に恭也はそう応じ、アンチマテリアルライフルの引き金を引く。
 重く響いた銃声と共に、恭也より放たれた弾丸状ライヴスが『蝶』の胴を射抜き、貫かれた『蝶』はのけぞって落下し、塵を噴き消えていく。
「殲滅完了だ。あとは酷い目に遭わされた職員達を解放しよう」
『酷い目にあわせたのは主に恭也なんじゃ……』
 伊邪那美の指摘を恭也は聞き流し、ウレタンで固めた職員達の解放に向かった。

●従魔肉料理
 『蝶』が全て撃破され、元に戻った男性職員達が部屋の隅で真っ白に燃え尽きた姿を横目に、エージェント達はもう一つの任務にとりかかる。
『邪魔~やる気が無いならせめてテーブルを拭いて』
 職員達と同じく白くなって体育座りをする拓海をメリッサは調理場へと叩き出す。
「手伝うから……嫁に秘密で……あまりに情け無い」
 なんとかそれだけを懇願すると、拓海はメリッサの指示に従い、のろのろと動き出す。
「……うちは、旨くも不味くもないもんしか……出来ひんのんどすわ……」
 元に戻った一二三は虚ろな口調でそう呟き、キリルに料理の手伝いを頼むと自身は工具を借り、周囲に黒い靄のようなものを漂わせ、電気系統や建物の修繕へと力なく動く。
 訂正。エージェント達も一部無事ではなかったが、料理作りが始まる。
 ここで元の姿に戻ったものの、遠い目をしていた優牙が、料理をしそうになった愛の姿を見て我に返り、全力で止める。
「愛さんは料理はしちゃダメだよ!? 皆にこれ以上ダメージを与えるわけにはっ」
「む~、お肉を焼くくらいなら私でも出来ると思うのですけど~?」  
 優牙いわく愛の料理は理屈は不明ながらも壊滅的らしく、優牙の懇願で愛も調理器具や食材の運搬、できた料理の配膳などの部分で手伝うことにし、優牙も協力する。
「ええと……ドラゴン肉を調理して、アルゼンチン料理のマタンブレを作ります。あとは、温帯フルーツと生クリームやチョコなどを用いてフルーツパフェを……」
『あたしは調理の腕がダメダメだから、みんなの食材や食器を運ぶよ~』
 由利菜とウィリディスはそう宣言すると、ウィリディスは愛や優牙と協力して動き回り、由利菜はマタンブレやフルーツパフェの調理にとりかかる。
 マタンブレは牛肉代わりのドラゴン肉を広げて重ねてカットした野菜やゆで卵を並べ肉を重ね巻きし、電子レンジで火が通るまで加熱。粗熱をとってから切り分け、現地でよく使われる調味料をかけて完成させる。
『スイーツを作るのか。協力しよう』
 ここでキリルが由利菜の調理に協力し、肉を使い始める。
「……スイーツなのに肉、ですか?」
 由利菜はキリルに礼を言いながらもキリルの扱う食材に若干不安を覚えたものの、一緒に調理を続ける。
『一緒に作りましょう♪』
 ここでメリッサが恭也や伊邪那美、遊夜とユフォアリーヤに声をかけ、復活した拓海と連携し、共に多くの料理を作り出す。
「さて気を取り直して従魔料理だ! 従魔料理先駆者としての意地を見せてやろう!」
 ……仲間や職員達の惨状は見ない、見ないぞ!
 遊夜は現実から目をそらし、従魔だった肉を捌いていく。
「空腹で倒れてたんだから最初は胃に優しい物が良いか」
『……ん、せっかくお肉もある……肉粥?』
 首を傾げてユフォアリーヤは腹に優しそうな料理を提示する。
「そうだな。キャノンボア肉を使うとしよう」
 ということで、遊夜とユフォアリーヤは最初にキャノンボア肉入りの粥を作って提供すると、職員達は飲み干す勢いで平らげる。
「牛丼とかが良いな! 米も食いたいしドラゴン丼をメインに添えるか」
『……ん、家の味……被っても、大丈夫』
 ムフーッとユフォアリーヤも鼻息荒く、遊夜と共にドラゴン丼を作っていく。
 その間に恭也と伊邪那美も調理に力を入れる。
「……しかし、この食材は使えるのか?」
『多少不味くっても、飢えてゾンビみたいになってる職員さん達なら食べつくしてくれるんじゃないの?』
「彼らが人を襲う前に手早く作るとするか」
 伊邪那美の言い分ももっともなので、恭也は次々と料理を作り出す。
 まずはドラゴン肉ステーキ。ステーキ状に切ったドラゴン肉を牛肉ステーキを作る要領で焼いていき、牛肉を焼いたようないい匂いが、職員達の食欲を刺激する。
『この肉、本当に大丈夫なの?』
「大丈夫だよ。食べるのは職員達だから」
 メリッサの疑問に拓海は大丈夫と請け負う。
 拓海はメリッサと協力して柑橘類の汁に漬け込むことで肉を柔らかくする工夫をドラゴン肉に施し、南米の牛肉料理カルネアサダを作る。
 そして南米風に調理した野菜と共に完成させ、優牙や愛、ウィリディス達が忙しなく動き、由利菜のマタンブレ、恭也のステーキ、遊夜のドラゴン丼と合わせて職員達に提供されていく。
「アリカント肉、これはから揚げかね?」
『……ん、下味は……やっぱり、ニンニク醤油……かな?』
 遊夜とユフォアリーヤが互いに頷くと、恭也と伊邪那美と協力してから揚げを次々と揚げていき、拓海とメリッサはそれぞれピリ辛味の棒々鳥とカレー風味の油淋鶏を作り、提供していく。
 ディエヴァエ肉は拓海や恭也が協力して調理し、フライパンで蒸し焼きにされたホイル焼きが職員達に提供され、キャノンボア肉は恭也と伊邪那美が冷やししゃぶしゃぶ、拓海とメリッサが卵と根菜類を入れた煮豚風を作って提供し、職員達の胃袋に収まっていく。
『へぇ~、あまり変わった物に仕上げてないんだね』
「ドラゴン肉は臭みが強そうから香辛料で誤魔化した。アリカント肉は堅そうなんでショウガで柔らかくなると信じてみた。ディエヴァエ肉とキャノンボア肉は完全に見た目からだな」
 料理内容に伊邪那美が感心し、恭也は肉がそれほど信用できなかったので定番のものにしたと説明する。
 そして職員達に由利菜の作成したフルーツパフェが配られていくが……。
『出来たぞ』
 キリルも『何か』を完成させた。
「おお! お……お?」
 ようやく作業を終え戻ってきた一二三がそれを見て言葉に詰まる。
「肉を使った筈が、どれも極上スイーツに! せ、折角の肉がああ!」
 肉の味が微塵もない、全く別種のスイーツだった。
『この方が美味いであろうが』
「旨ないわ!」
「あれ、意外と美味しいですね」
 キリルと一二三の喧騒を横に、試食した由利菜はキリルの『料理』の出来栄えに感心する。
『黙って出せば、きっとわからないですよ~』
 そこへ給仕を終えた愛たちが戻ってきてキリルの『料理』を口にし、愛がそう提案する。
「ええと……美味しいなら、出しても大丈夫……なのかな?」
 優牙も控えめに賛意を示し、キリルの『料理』は提供されるが、ギアナ支部職員達は疑うことなく全て完食した。
 結局キリルの『料理』がどんなものだったかや、この後一二三が『探さないで下さい』と書置きを残し一時姿を消した後の詳細は差し控えさせて頂く。

●この記録は旅に出ました
 こうしてギアナ支部で勃発した騒動はエージェント達の献身(?)もあり無事解決した。
 ギアナ支部の男性職員達に心に傷跡を残したかもしれないが、あのへんた……もとい熱い職員達のことだから、いずれ復活するだろう。
 ただギアナ支部にあった各機器は一二三が修繕したにも関わらず、なぜかカオスな時間帯だけ記録がなく、皆様の魔法少女姿はひと夏の悪夢として消えた(メリッサは支部を清掃したついでに何か記録をとったようだが)。
「……この味以外忘れような、ヒフミ……」
 残った肉を燻製にしてギアナ支部に提供した拓海は、一二三にやつれた笑顔(はあと)を向ける。
「……拓海こそ、平気か?」(きらり)
 ――えっ!?
 互いの笑顔にマッチョ☆キワが垣間見えた拓海と一二三は一瞬絶句する。
『……影響残ってるの?』
 メリッサは拓海や一二三の笑顔の異変に首を傾げ、キリルは『まあ大丈夫だろう』と無責任に受け流す。
 そしてウィリディスはまじかおてぃっく★ぶれいにゃ『光の魔法戦士ソウェイル・アルジス編』を出してギアナ支部に提案した。
『日本国内だと、これの続編って話聞かないんだよね。いっそこの支部で続編作ってくれないかな? あ、まじめでぃっく☆りでぃすとか、まじぶれいぶ☆ゆりにゃでも大歓迎だよ?』
「エージェントの地位を濫用するんじゃありません、リディス」
 結局由利菜にたしなめられ、ウィリディスの話は立ち消えとなり、エージェント達は全員帰還した。
 そして元に戻ったM・A主導のもと、今日もギアナ支部は無駄に暑苦しく活動している。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • ショタっぱい
    狼谷・優牙aa0131
    人間|10才|男性|攻撃
  • この称号は旅に出ました
    小野寺・愛aa0131hero002
    英雄|20才|女性|カオ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 花の守護者
    ウィリディスaa0873hero002
    英雄|18才|女性|バト
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
    機械|23才|男性|攻撃
  • この称号は旅に出ました
    キリル ブラックモアaa1048hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
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