本部

【異界逼迫】連動シナリオ

【界逼】デルポイの神託

一 一

形態
ショートEX
難易度
難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/07/30 19:59

掲示板

オープニング

●神託が下る地
 マガツヒによるテロの頻発で、遺跡の警備についていたエージェントの通信機が突如として起動した。
『緊急事態です! 国内のエージェントを対象にした無作為の通信ですが、聞いてください!』
 ギリシャの支部から飛ばされた女性職員の切迫した声に、緊張感が高まる。
『つい先ほど、セラエノから緊急の連絡として『デルフィの考古遺跡』が襲撃されると知らされました!』
 そこはかつて古代ギリシャ世界では『世界のへそ(中心)』と信じられていた、都市国家・デルポイの面影を残す遺跡だ。パルナッソス山のふもとに位置し、山の斜面に沿って残る遺跡から見える景色も素晴らしい観光地でもある。
『彼らの予知によると、テロ発生予定時刻は今から数時間後! 現場の警備担当だったエージェントへ連絡を入れましたが、応答がありません! すでにマガツヒの攻撃を受けた可能性が高く、生死も不明です!』
 つまり、警備エージェントたちの全滅は確定で、最悪もう殺されている。
 後手に回るだけならまだしも、あまりにも悪い状況に多くのエージェントが歯噛みする。
『付近の遺跡博物館に連絡を入れ、観光客の避難や入場規制などの助力を依頼していますが、効果はあまり期待できません! あまり大々的に行ってしまうと、被害拡大のおそれがあるためです!』
 下手を打てば観光客に紛れているだろうマガツヒ構成員が暴走し、一般人に武器を向けるリスクがあった。警備エージェントがいれば少しは違っただろうが、戦力的に無防備なまま敵を刺激するのは悪手になりかねず、人的被害を考えれば慎重に行動するしかない。
『とにかく、時間がありません! 距離が近いエージェントの中で、現場へ迎えそうな方は直ちに向かってください! 遺跡の近くには駐車場がありますので、エージェント権限を使って警察車両を借りるなどしてもらって構いません! フォローはこちらが行います!』
 通信機から頼もしい声が複数聞こえ、急遽決まったマガツヒ撃退メンバーへ女性職員がさらに告げた。
『なお、マガツヒの数は20人で、かなり攻撃的なクラス編成のようです! くれぐれも注意してください!』
 女性職員の通信が切れてから、エージェントたちは通信機を介して現場へ向かうメンバーと連絡を繋げ、移動中に作戦を確認していった。



●『海の星』は笑う、少女のように
 同時刻。
『なお、マガツヒの数は20人で、かなり攻撃的なクラス編成のようです! くれぐれも注意してください!』
「――なるほど。過去の残骸を破壊しようとしていたあの方々は、『マガツヒ』と呼ばれているのですか。そして、『希望』を掲げる方々に協力している、『セラエノ』と呼ばれる方々もいるのですね」
 同じ女性職員の声を耳に当てた通信機から聞いていたステラ・マリス(az0123)は、普段と同じ笑みを浮かべながらしばらく空を眺めていた。奇妙な点はステラの両手もまた普段通りに胸元に組まれており、通信機を顔に寄せているのが頭からかぶるヴェールの右端――まるで指のように裂けた濃紺の『手』であること。
「……あら? 声が聞こえなくなってしまいましたね」
 しかし、通信が切れるとステラは眉尻を下げて笑みを苦笑に変え、眼前に通信機を掲げてヴェールの左端が変化した『手』を動かして操作を試みる。
「あら? ……あらあら?」
 が、淡青緑(シアン)色の髪の毛が左右へさらりと流れる度に通信機に穴が開き、気づけばステラの『手』にあった通信機はただの残骸になっていた。
「…………人が扱う道具とは、とても脆いものなのですね」
 声音を沈ませて落ち込むステラは己の不器用さを棚に上げ、壊れた通信機に責任をかぶせて投げ捨てた。
「やはり、私(わたくし)が直接見聞きする方が深く正しく知ることができそうです」
 再び空を見上げたステラは、小さく点滅する光を見つけて柔らかく微笑んだ。
「『無知』な私は、より広い見識を身につけねばなりません。それも『海の星の聖母』の務めですから」
 そうしてステラは指が消えたヴェールをたなびかせ、素足に砂利を食い込ませつつ歩みを進めた。
 ――捨てられた通信機の残骸を受け止めた、エージェントたちの亡骸をその場に残して。


解説

●目標
 マガツヒ(&ステラ)の撃退
 観光客・遺跡保護

●登場
 マガツヒ構成員×20…遺跡破壊を目的として観光客に紛れ、4人1組(ドレッドノート・ソフィスビショップ・バトルメディック・カオティックブレイド各1人)の小隊単位で行動。

 ステラ・マリス…地中海沿岸の国へ攻撃を仕掛ける少女の姿をした高位愚神。

 スディレ×2…ミーレス級従魔。岩のような表皮を持つ1mほどのヒトデ。黄白色の肉体はライヴスで発光し、ステラの指示を伝達する指揮能力を保有。海中行動の他、飛行能力も持つ。

 能力…防御↑↑、回避・移動↑、攻撃↓↓

 スキル
・クディジデ…カバーリング、移動+2、表皮を硬くし味方をガード、被ダメージ1D10減少

●場所
 ギリシャのパルナッソス山のふもとにあるデルフィの考古遺跡
 アポロン神殿を中心とする神域と都市遺構からなり、渓谷の急斜面に残留
 参道にカスタリアの泉やアテナ・ブロナイアの神域、複数の宝庫跡があり神殿のすぐ北側には古代劇場
 ギリシア神話にも登場するデルポイの神託は有名で、ソクラテスの『無知の知』など数多くの逸話がある
 天気は晴れ、気温は高いが空気は乾燥

●状況
 支部からマガツヒの遺跡破壊テロの報告を受け、付近の地域を巡回中だったPCが現場急行
 道中で合流・作戦相談を行い、PC到着直後に戦闘開始
 セラエノからの情報かつ事件直前の予知により、観光客への避難勧告は間に合わない
 戦闘開始は昼過ぎ、主戦場はアポロン神殿を中心とする考古遺跡の範囲

(PL情報)
 スディレ2体は遺跡から75sq上空にて戦闘を俯瞰し、基本的に介入しない
 ステラは観光客の中に紛れてマガツヒを援護(隠密行動優先で遺跡・観光客に手は出さない)
 ただし、マガツヒはステラの存在を知らない
 マガツヒの全滅orスディレの討伐orステラの撃退→ステラ撤退

リプレイ

●集う者たち
「またマガツヒか。いい加減、目的をはっきりしてほしいな」
「そうですね――次の道は右折です」
 月影 飛翔(aa0224)は借りた車を運転し、助手席で遺跡への最短ルートを指示するルビナス フローリア(aa0224hero001)に従ってハンドルを切る。
「厳密には、あたしが向こう側でもギリシャ出身かは怪しいけど……でも、あたしにとってはこの世界のギリシャも大切な場所。あんな連中に絶対に負けるわけにはいかない!!」
「リディス……あなたの気持ちは分かりますが、冷静に。焦りで隙を見せれば敵の思う壺ですよ」
 後部座席には『パラスケヴィ』の記憶が刺激されたウィリディス(aa0873hero002)と、余分な力を抜くよう注意を促す月鏡 由利菜(aa0873)が同乗。
「状況からして、今回は遺跡から引き離すのは無理そうだな」
「なるべく広い場所での短期勝負が望ましいですが……」
 ミラー越しに2人の様子をうかがった飛翔の言葉に、ルビナスは遺跡の地図から全体的に道幅や空間がやや手狭な場所と見て表情が曇る。
「あとは、ステラ・マリスの存在もある……」
「最悪を想定して行動しましょう。月鏡様、遺跡博物館や警察が避難誘導に割ける人員の確認をお願いします」
「わかりました」
 飛翔の懸念をルビナスも否定せず、連絡の指示を受けた由利菜はスマートフォンを操作した。

『敵の作戦目標は何だ……?』
「なんらかの儀式的な要地か、セラエノへの当てつけか、はたまた私たちへの目晦ましか……」
 別のルートでは幻想蝶から聞こえるリタ(aa2526hero001)の声に耳を傾けつつ、鬼灯 佐千子(aa2526)が愛車の大型二輪を走らせていた。
「ひとまず、現時点での注意点はある?」
『派遣された警備担当者が既に無力化、あるいは殺害されたして、通信機を奪われた可能性が高い。情報漏洩を避けるため、観光の見所など主要地点に識別用暗号を設定し周知すべきだ』
「他には?」
『予知の情報から、不審人物の特徴はある程度割れる。英雄を含む4人以上で行動し、明らかに観光をしていない様子なら『臭い』。マガツヒが愚神との繋がりもある以上、人間の常識から多少なりとも逸脱した風貌の人物も警戒すべきだろう』
 佐千子は軍人視点からリタのアドバイスに耳を傾けつつ、さらにバイクの速度を上げた。

「単純な人数だけでも、前の倍はいる……今回は従魔のお手伝いを頼めないのに」
「加えて観光客も居るから、巻込まないようにしないと」
 少し前にリビアで遭遇したマガツヒとの戦闘に触れたメリッサ インガルズ(aa1049hero001)に、警察から借りたパトカーを運転中の荒木 拓海(aa1049)は渋い表情。ちなみに、彼らの服装もまた避難時の効果を狙い警官の制服を着ている。
「……なぜ、テロの前に警護を排除したのでしょうか?」
「ロロ……?」
 すると、後部座席にいた構築の魔女(aa0281hero001)と辺是 落児(aa0281)が疑問を口にした。
「人間のテロがプリセンサーでは予知しにくいかは別として、警備へ手を出せばH.O.P.E.に隠密行動が露見するリスクが生じます。……『別々の場所』にいた警備を『同時』に襲撃した周到さとは裏腹に、テロ活動全体から見れば場当たり的で迂闊な行動に思えてなりません」
 先ほど警備メンバーの反応喪失時刻や場所をH.O.P.E.へ確認した構築の魔女が覚えた矛盾点。
 新たな予知もないため確証はないが、妙な違和感が拭えない。
「魔女さんの疑問も共有するよ。無視したら怖そうだ」
「了解です。現地での行動方針は拓海さんに合わせましょう」
 通信機と繋げたインカムへ声を乗せた拓海に微笑み、構築の魔女は話し合いで共有した注意点をまとめた。

「まったく、テロリストと言うものは民間人と区別がつかないという意味では非常に厄介であるな」
 別の車では、後部座席に座る幼女の軍人・ソーニャ・デグチャレフ(aa4829)が不服そうにつぶやいた。なお、英雄のラストシルバーバタリオン(aa4829hero002)は幻想蝶に控えている。
(率直に言えば、H.O.P.E.当局からの依頼は小官の祖国奪還に向けた戦費の確保が目的ではある。が、祖国奪還後を見据えれば必然、テロ対策は手を抜いていいものではない。小官の働きや経験がいずれ祖国の防備にも左右しかねない本作戦、決しておろそかにはできないのである)
 強い愛国心と実直さをあふれさせ、ソーニャは黙々と調達した資料へ目を通していく。
「修行の成果……見せてやる!」
「ええ、まとめて蹴散らしちゃいましょう♪」
 ソーニャの前にはエスト レミプリク(aa5116)とシーエ テルミドール(aa5116hero001)が気炎を上げる。特にエストは、つい最近参加したリンカー同士のトーナメントで身につけた自信が見えた。
「すまぬが、作戦行動について貴公らの意向を聞きたいのであるが――」
「ああ、わたしたちは避難を優先させるわぁ。戦い方はねぇ――」
「ちょっ、シーエ!? 前見て、前!!」
 が、ソーニャから話を振られて『運転中』のシーエが背後を振り返ったところで、エストの余裕は吹っ飛んだ。余談だが、シーエの完全なわき見運転は蛇行しながらも事故らなかった。

「……まだ結構な人数がいるな」
『観光地だもの』
 現場近くの駐車場に到着し、運転席から降りた久兼 征人(aa1690)はすでに共鳴したミーシャ(aa1690hero001)の声を聞きつつ、同乗者を振り返る。
「バスの手配はすませた。これで車以外の観光客も避難できるだろう――比佐理、共鳴を」
「はい、一刀斎様」
 視線が合った獅堂 一刀斎(aa5698)はスマートフォンの通話を切って軽く頷く。次いで、通話中も手を繋いでいた比佐理(aa5698hero001)に視線を落とし、一刀斎も共鳴を果たす。
「大地のへそ――世界の中心かぁ。傲慢だねえ。かつては権勢を誇っていたってことかな。せっかくだし、ゆっくり観光でもしたいところだね」
「まずは仕事を済ませてからだ。その後は勝手にしろ」
 最後に、楽しげかつ皮肉げな笑みを浮かべる紫苑(aa4199hero001)の緊張感がない態度をたしなめ、バルタサール・デル・レイ(aa4199)は真顔の裏でため息を飲み込み共鳴した。
「それじゃ、他の皆さんと合流しましょうか」
 そうして征人はイメージプロジェクターで警備員の服装となって、遺跡の入り口へと走っていった。

●デルフィの考古遺跡
『野犬の群れが徘徊してるとの情報が有ります! 現在確認中のため、駐車場へ避難して下さい!』
 共鳴した拓海と構築の魔女は、警備員数名を伴って『アテナ・ブロナイアの神域』へ向かった。
 拡声器を使う拓海は移動中も広く注意喚起をしつつ、到着後も観光客へ呼びかける。
「警備員の誘導に従い、落ち着いて移動をお願いします!」
 一方、構築の魔女は拓海の拡声器から離れた位置の人々へ声をかけていた。
(リンカーなら『鷹の目』等で上空から此方を見ている可能性もありますが……)
 同時に、別働隊・支援部隊・第三者などこちらの動きを観察するような動きがないか、上空を含めて周囲への警戒を広げていく。

 かつて参拝者の喉を潤したとされる『カスタリアの泉』では、ソーニャとエストも『野犬の出現』を口実に避難を促していた。
「スマホへの通知が間に合わないならまだしも、放送機器がないとは不用心であるな」
「小さな石組みの遺構ですから、仕方ないのかもしれません」
 マガツヒを刺激しないよう英雄を幻想蝶に待機させ、さほど広くない場所のため直接声をかけながら、不審な人物がいないか目視で確認していく。



 同時刻。
「近くの駐車場で火災が発生しました! 念のため避難してください!」
 イメージプロジェクターで警備員に扮した飛翔が、警備員や警察を伴って遺跡の入り口に現れた。
 直接的な影響がないことを強調しつつ、観光客へ避難を呼びかける。
『監視カメラも非常用スピーカーもないのは、少々歯がゆいですね』
 その際、共鳴したルビナスから遺跡の防犯設備に対する苦言がこぼれた。
『彼らは――避難に紛れて移動するようです』
(見つからないよう、追跡する)
 途中、ルビナスが誘導に逆らう動きを見せた人物を発見。
 通信機で仲間へ報告した後、飛翔は単独で複数の背を追った。

「近くの駐車場は大丈夫なので、そこまで移動をお願いします!」
「走る必要はないが、足は止めずに進め」
 次々と仲間が遺跡を上っていく中、佐千子とリタは入り口の『市場跡』前で誘導を続ける。
 見た目は数本の柱が残る程度と小さいが、『市場跡』も遺跡の一部であり見張りと防衛は必要だ。
(っ? ……今のは)
 誘導中、佐千子はジャックポットの狙撃やシャドウルーカーの『鷹の目』、ドローンなどを警戒し上空にも目を向けると、一瞬だけ目に違和感を覚えた。
(点滅する、光? 不安要素は早めに潰しておきたいけど……ここからじゃ届きそうにないわね)
 よくよく凝視すると、遺跡の中腹あたりの上空で何かがチカチカと明滅している。
 何らかの仕掛けを疑い排除を考える佐千子だが、現在地からでは所持する武器の有効射程に届かない。人の流れが多いこの場から離れるわけにもいかず、ひとまず仲間に通信機で『光』の存在を伝えた。

「危ないっすから、一旦避難してくださーい!」
「付近では野犬も出たとも聞いたが、慌てず走らず、ゆっくり進め」
 少し進んだ先の『宝庫』前では、征人と一刀斎が避難誘導。
 目立つ建物が少ない中、当時の姿を復元した『宝庫』は目を引くため2人の警戒も色濃い。
『(この4つのライヴス反応は――ひとまず出方をうかがいましょう)』
『(心得た)』
 案の定、征人のライヴスゴーグルや一刀斎のモスケールがライヴス反応をいくつか捉え、征人は避難の優先を小声の通信で一刀斎へ伝えた。
(……あいつがいたりしないだろうな?)
『スディレの事? そういえば、ギリシャも地中海と接してるよね』
 また征人は、最近遺跡とセットで遭遇するヒトデ従魔を気にして、たまに空を見上げていた。ミーシャも一緒に目を凝らすが、今のところそれらしい姿はない。
(何処だ、何処に居る……?)
『一刀斎様……? 何かお探しですか?』
(……比佐理は覚えているか? ステラ・マリスと名乗った愚神を)
 一方、比佐理はライヴスゴーグルで人混みを警戒し続ける一刀斎の返答に、声音を悲しそうに沈ませる。
『……比佐理は、とても、心配しました』
(う、む……す、すまん)
 チュニジアの遺跡で『重体』となった姿を思い出した比佐理の純粋な言葉に、一刀斎は居たたまれない。
 2人にとって苦い経験だが、そこで邂逅したのがステラだった。
(あの娘は地中海沿岸の国を襲う傍ら、どうやら遺跡にも目を付け暗躍しているようだ。これは俺の勘に過ぎぬが――あの娘はきっと近くに居る)
 今回のメンバーは一刀斎を含めステラと接触した者は多く、状況的に愚神の出現は強く意識してしまう。
(厄介なのはやはり、あの牛を強化したステラの力……もしあれが従魔だけでなく能力者――マガツヒも強化し得るとしたら捨ておけん)
 デクリオ級の牛型従魔をケントゥリオ級の脅威に引き上げた力の、人間への流用。
 一刀斎が特に警戒しているのはそれだ。
(俺の杞憂ならばそれでいいが、あの力をこれだけの人の中で使われるわけにはいかない)
『……そう、ですね』
 一刀斎が凝視する視界を借り、比佐理は目に映る人々が傷つく光景を想像して声に憂いを混ぜた。

 時間を少しさかのぼり、遺跡のほぼ中心・『アポロン神殿』にて。
 名前は立派だが現在は6本の柱と土台部分がかつての名残を浮かばせるのみで、かつての威容や華やかさは流れた時代とともに風化している。
(――ちっ、思ったより身を隠せる遮蔽物が少ない)
 他の仲間が避難誘導に力を入れることを知り、バルタサールは『全力移動』で一足先に『神殿』に到着。今は全体を見渡せて比較的背の高い壁の裏側に潜み、ドラグノフ・アゾフを手に愚痴をこぼしていた。
『名所ならもう少し近くで見たいなぁ』
(少しは集中しろ)
 そのまま避難誘導のメンバーが来るまで、バルタサールは壁の端から手がかりを求め観察する。主に観光客の挙動に注目し、暢気な紫苑に釘を刺しつつ容疑者に当たりをつけていく。
「警備員の誘導に従ってください!」
 しばらくして、由利菜が数名の警備員を連れて『神殿』の観光客へ避難を呼びかけた。
(神経接合マスクでライヴス反応を見て、一般人かマガツヒ構成員かを見分けてみます……!)
『マガツヒだったら一般人に強いライヴスを持つ品を押しつけたりするかもしれないから、ちゃんと直接確認もしてよ、ユリナ!』
 そして由利菜もバルタサール同様、マガツヒの判別にも意識を傾ける。共鳴したウィリディスからの忠告に頷き、1人1人声をかけつつ遺跡から離れるよう促した。

●暗躍する影
 最初に動きがあったのは『泉』。
「――そこ! 何をしている!」
「チッ! うるせぇガキ!」
 人の流れに逆らう数名を発見したソーニャが鋭い声を上げて近づいた瞬間、1人の男が舌打ちとともに手にした銃を発砲したのだ。
「っ! ラスト!」
 ソーニャは寸前で呼びだした英雄の胸郭(きょうかく)部へ乗り込み、共鳴した装甲で銃弾を防ぐ。
(武力行使に躊躇がない……我々のあぶり出しに焦り、予定を繰り上げてきたか)
 遅れて上がった周囲の悲鳴にソーニャは無言のまま、遺構をかばおうと人型戦車の歩を進める。一般人への対処はエストに任せ、破壊工作を阻止せんとマガツヒへ『守るべき誓い』の威圧をぶつけた。
「シーエ、僕たちも!」
『行きましょうかぁ♪』
 その隙に避難を終えたエストがシーエと共鳴。
「テメェも仲間か!」
「邪魔なのよ!」
 影殺剣を手にソーニャへ攻撃を集中させようとするマガツヒに肉薄したエストは男ドレッドノート(以下『DN』)が振るう大剣と、女ソフィスビショップ(以下『SB』)の魔導書攻撃を躱す。
 そこで、ソーニャの脇をすり抜けた女バトルメディック(以下『BM』)が手にする爆弾に気づいた。
「っ、待て!」
「このまま壊して逃げれば――っ!?」
 エストの制止を無視する女BMだったが、突如足下が吹き飛び急停止。振り返れば、ソーニャの肩に担がれたリボルバー式改造AGC『パッヘルベル・カノン』、その3つの砲身と目があった。
「こ、このっ!」
(させぬぞ!)
 牽制砲撃に焦った女BMはとっさに爆弾を遺構へ投げるも、ソーニャが『ハイカバーリング』の壁となり防御――爆風から無傷の装甲が顔を出した。
「このデカブツ!」
 激昂したのは銃を持っていた男カオティックブレイド(以下『CB』)。
『ウェポンディプロイ』で直剣を握ると、ソーニャを睨みつけ『ウェポンズレイン』を発動した。
「く、っ!」
『ぐあっ!?』
 ソーニャがAGC付属の盾で弾く一方、巻き添えを食う形でエスト・男DN・女BMが刃の雨にさらされた。
「あの野郎!」
『敵味方お構いなしねぇ。でも、あっちを見ている暇、あるかしらぁ?』
「良くも悪くも、人数差はカオティックブレイドにとって巻き込む相手が増えただけだ!」
 沸点が低い男DNが男CBへ振り返ると、今度はシーエの楽しそうな声とエストの力強い声を合図に、影殺剣による『ウェポンズレイン』がマガツヒ全員に襲いかかる。
「落ち着いて! まだ立て直せる!」
 ダメージが蓄積される中、今度は女BMの『ケアレイン』がマガツヒに注がれた。
(衛生兵により冷静さを取り戻したか……やはり、先に回復手段を断つのが常道であるな――っ!?)
 その間に遺構を背にする位置に陣取ったソーニャが、マガツヒの顔色を冷静に分析した直後。
 やや遠くにある避難者たちの背中をすり抜け、こちらへ進み出る『黒い少女』に瞠目する。
『エスト殿!』
 新たな脅威を伝えようとしたソーニャだが、肌を打つ膨大なライヴスが先手を許したことを悟った――

「危険ですから、避難してください」
 一方、尾行した不審な集団が行き止まりの『古代劇場』で止まった時、飛翔は声をかけた。
「うるせぇ! ――っ!?」
 瞬間、1人が振り向きざまに大剣を構え『電光石火』で突撃してきた。
 有無をいわさぬ奇襲はしかし、飛翔の反射的な防御で止まる。
「でないと……力づくで排除する!」
『自爆をさせる前に、しっかりと意識を刈り取りましょう』
 驚愕に揺れる切っ先をダーインスレイヴで振り払い、飛翔はルビナスの助言から事前の『トップギア』を解放し『怒濤乱舞』で逆襲。マガツヒ4人に迫る大剣を回避できたのは男DNのみ、残る3人は強く重い攻撃にたまらず悲鳴を上げる。
「騙し討ちとは、やってくれたなぁ!?」
 顎を殴られ『戦闘不能』の仲間2人を見限り、何とか意識を保った男BMが自身へ『ケアレイ』を施す中、男DNが怒りに声を震わせ飛翔へ斬りかかる。
 そのまま異常を察した観光客が逃げる時間を稼ぐため、飛翔はDNと刃を交えた。
 ――くすくす
 慌てて逃げる観光客に紛れた誰かの笑い声が、剣戟の音でかき消える。

(それにしても、妙だな)
『おや、何がかな?』
『神殿』から遺跡を下っていく人々を見送るバルタサールは、心中を読みとった紫苑の疑問に無言で返す。
(俺たちが動くまで、観光客が異変に気づいている様子はなかった……ということは、警備は目立たぬよう密かに倒されたと見るのが自然だ)
『ふぅん? 確か予知じゃ、あちらは攻撃的な編成だったよねえ? 勝手に血の気が多そうな輩をイメージしてたんだけどなぁ?』
(俺と似た理性で人を殺せるタイプも厄介だが、もう1つ面倒な可能性がある)
 淡々と会話をしながら空を注視しだしたバルタサールに、得心した紫苑は屈託なく笑う。
『ああ、なるほど。警備担当を殺したのが別の存在なら、面倒だねえ』
(まだ生死は不明だぞ――)
「うるせぇ! 知るか!」
 紫苑の言い回しに肩をすくめるバルタサールは、反発する態度の男が現れたことで思考を切り替えた。
『(撃つか?)』
『(まだ確信がありません)』
 バルタサールが素早く『射手の矜持』から狙撃銃を構えるも、小声の通信で由利菜に制止される。
「面倒だ――殺しゃいいだろ!」
 が、すぐに男の後ろにいた女DNが『烈風波』を放ち、観光客が悲鳴を上げる。
「はぁっ!」
『――マガツヒ!』
「避難を急がせてください!」
 衝撃波は由利菜が幻想蝶から出したトリアイナにより消滅。こちらの背後にも観光客がいるのを承知で遠距離攻撃をしかけた女DNにウィリディスが憤慨し、由利菜が警備員に指示を出すと別の3人も動き出す。
『ライヴスで変換した水流じゃ、爆弾をダメにはできないだろうけど……』
「起爆の牽制と妨害にはなります!」
 それに反応したウィリディスの声で槍に水が纏われ、由利菜の刺突が女DNを吹き飛ばした。
「あの女、エージェントだ!」
 女DNの水流によるダメージを『ケアレイ』で治癒する男BMが叫ぶと、女SBと男CBがライヴスを高めた。
『お前達は、従魔や愚神と何が違うの? H.O.P.E.のエージェントだから、お前達を殺せないと思ってる?』
 放たれた『サンダーランス』が回避した先で『神殿』の柱を貫く光景に歯噛みし、ウィリディスの嫌悪が膨れ上がる。かつてギリシャのような場所で、愚神と絶望的な戦いをした『パラスケヴィ』の魂が異界の記憶を脳裏に呼び起こし、余計に感情がかき乱された。
「リディス! 殺意に身を任せてはなりません! 拓海さん達の想いや努力を、無駄にしない為にも――っ!」
 しかし、『ウェポンズレイン』を水流で受け流した由利菜が、再び迫る女DNへ水槍を叩きつけたことでウィリディスは我に返る。
『う~ん、これも流れ弾かなぁ?』
(……速攻で潰す!)
 一方、紫苑がギリギリ武器の雨の範囲にいたため負傷したバルタサールに首を傾げたところで、色々な鬱憤を銃弾に込めた『トリオ』が吐き出された。
『ぐ、ぁっ!?』
「なっ!? もう1人いたのか!?」
 女DNは膝、女SBは股関節、男CBは太股をそれぞれ破壊され、そのまま動けなくなる。
 自分以外を『戦闘不能』にされた男BMは、一転の窮地に目を白黒させた。
『……ったく、みんなもユリナも甘いよ。――なら、死なない程度に徹底的に叩きのめして器の違いを見せつけてやるとしますか!!』
 急所を外したバルタサールの銃撃にも気づき、ウィリディスはようやくいつもの調子を取り戻した。
 ――くすくす
 その時。
『古代劇場』から降りてきた避難民の中から、小さな笑い声が響いた。

『征人』
(ああ、わかってる)
『宝庫』では、避難する人々の中にとある4人組が一向に進まない様子をミーシャが征人に伝えていた。ハンドサインで一刀斎にも伝えると、小さな頷きを受けて怪しいグループを注視する。
「ああ、もうウゼェ!」
 すると、焦れた1人が人々を押し退け接近。征人を目がけて『電光石火』で突っ込んだ。
「うおっ!? ――ぐはっ!?」
『零距離回避』で男DNを避けたのもつかの間、征人は女SBによる後続の魔法攻撃は避けられない。
 薙刀『焔』で防御したものの、貫く衝撃は重い。
「邪魔よ、おっさん!」
「く、っ!」
 さらに女CBの直剣が一刀斎を狙い、とっさにディバイド・ゼロで防御。
「ここから離れろ! 走れ!」
「アンタも逃げたらどうだ!?」
 突然の戦闘に驚き固まる一般人へ一刀斎が叫ぶ中、男BMの槍が眼前に迫る。
「断る!」
「っ? ――がっ!?」
 しかし、一刀斎は大剣の腹で受け流し威力を殺すと、体勢を崩した男BMへ逆に一撃を叩き込んだ。
「面倒だ、一気にやるぞ!」
 避難者の安全を重視した守りの戦いに業を煮やし、男DNが征人へ再度突撃。
「捨て身、かよっ!?」
 征人は冷や汗を流して防御を捨てた『オーガドライブ』に構え、吹き飛ばされる。
「っづ!? この、馬鹿力が!」
『征人、回復を急いで! また魔法がくるよ!』
 何度も地面を転がって立ち上がった征人は、すぐにミーシャの警告で『エマージェンシーケア』で己をごまかし女SBへ視線を移す。
「コイツはおまけだ!」
「……ひ、ぁっ!」
「な――てめぇ!」
 瞬間、男DNから一般人を投げ寄越された征人はとっさに受け止め、女SBの『ブルームフレア』に飲み込まれた。
『征人!』
「だ……いじょうぶ、か?」
 ミーシャの声で飛びかけた意識を取り戻し、征人はかばった一般人の安否を問う。すると、おびえながら何度も首を縦に振る様子に、背中の火傷(『減退』)のせいでゆがむ不格好な笑みを浮かべた。
「早く、逃げろ!」
 征人は一般人と一刀斎を含む範囲で『ケアレイン』を発動させると、一般人の背を強引に押した。そして自分は、また一般人が狙われないようマガツヒに攻勢を仕掛ける。
「はぁ! ――っ!?」
 しばらく攻防が続き、一刀斎が女CBの剣を弾いたその時。
 一瞬だけ映った忘れもしない『黒い少女』と、この場に似つかわしい『磯の香り』に急いで首を動かした。
「久兼殿!!」
「何とか耐えます!」
 一言で意志疎通を行い、一刀斎は征人に離脱をわびる視線を向けて大きく跳躍。
「やはり現れたか――ステラ!」
 未だ残るまばらな人の中、一刀斎はヴェールを被る少女へ『ジェミニストライク』で斬りかかった。

 それらの戦闘は『市場跡』からも確認できた。
「まだ避難途中なのに、マガツヒの連中……っ」
『奴らの頭に公序良俗など存在しない。私たちは残存戦力の速やかな発見と鎮圧に動くぞ』
 予知が正しければマガツヒはまだ4人いると、はやる気持ちを抑える佐千子は共鳴したリタと人々をなだめていた。
『――サチコ! 3時の方向!』
「っ!」
 が、リタの警告でレアメタルシールドを構えた瞬間、佐千子の体に重い衝撃がのしかかる。
「――やれぇ!!」
 遅れて視線を向ければ、『電光石火』を防がれた男DNが後退。
 さらに攻撃へ加わった男SBと女CBにより、一般人のパニックが加速する。
『現在の状況下で銃は危険だぞ』
「ならこれで!」
 マガツヒの攻勢を盾で防ぎつつ、いまだ一般人がいる状況を危惧したリタの忠告に佐千子は大型ナイフモデルの『刹那』を構え、接近しつつ単分子構造の刃を男DNと男SBへ振るった。
「私が防いでいる間に、逃げ――っ!?」
 そのまま佐千子が一般人の壁となるようマガツヒの注意を引き、一般人へ避難と叫ぼうとした時。
 背後で急速に膨らんだライヴスの圧力に思わず振り返る。
 ――くすくす
 人々の中に紛れた『黒い少女』が、笑みを残して溶け消えた。

(隠れて行動……やはり、警備を排除したのはマガツヒではない?)
 他方、一般人の誘導以外に動きがない『神域』にいる構築の魔女は、通信機から集まる情報に違和感が増大していく。
『今のところ、不審な動きの人はいない。駐車場でモスケールを使った時もそれらしい反応はなかったから、ここには誰もいないのかな?』
 拓海からの通信でも順調な避難状況が伝えられ、構築の魔女も同様だと返事をした後に思案する。
「すでに確認されたマガツヒと予知の人数も合致しますし、ここは元々観光客の数も少ないようです。後は警備員に避難を任せ、他の援護へ向かった方が……っ!?」
 警戒の継続と仲間の援護を天秤にかけ、構築の魔女がこの場からの移動を提案しかけた、その時。
 視界の端に映り込んだ『黒』に気づき、息を呑む。
『魔女さん?』
「――不測の事態が発生しました」
 雰囲気の変化に身構える拓海へ、構築の魔女が返せたのは硬質な声。
「……ステラ・マリスです」
 幻想蝶から『愚者』の双銃を取り出す構築の魔女が見つめる先。
 深紅のドレスに濃紺のヴェール、一見すると『黒』に包まれた少女が3本の柱を眺めていた。

●凶つ星
「――以前、お見かけした方ですね」
 銃口とともに向いた敵意に気づいたのか、ステラはゆっくりと構築の魔女へ顔を向けた。
「顔合わせはチュニジア以来ですね。今日は遠路ギリシャまで観光ですか?」
 笑みから軽口をこぼした構築の魔女は双銃で牽制を続け、ステラの背後に回った拓海の姿を確認する。
「いえ、私(わたくし)は学びにきたのです。人が執着する過去の遺物、異なる思想をぶつける人という存在、貴女様が属する『希望』を掲げた組織――そして、『マガツヒ』と呼ばれる方々を」
 朗々と話すステラだが、1つの固有名詞を聞いた瞬間に構築の魔女の表情から笑みが消える。
「なるほど……警備担当のエージェントを襲撃したのは貴女でしたか。通信機を奪って盗み聞きとは感心しませんね」
 非難を込めた構築の魔女の台詞に、ステラはただ微笑むだけ。どこか浮き世離れした言動通り、世情に疎いだろう愚神の口から『マガツヒ』が出たことで違和感が確信に変わった。
「傍にいた従魔――スディレだっけ? それも連れずに、1人で来たのかな?」
 ウコンバサラを構える拓海も会話に加わる。
 視線はステラへ固定せず、しきりに周囲や空に向けられスディレを探すが、確認できない。
「ああ、貴方様も覚えております。2度目での対面で『直接』言葉を交わす非礼、どうかお許しを」
『……『直接』、ね。じゃあ、この前お話ししたあなたは『誰』だったのかしら?』
 ゆっくり拓海へ視線を向けたステラのどこか的外れな返事に、メリッサが警戒度を上げて尋ねる。
「私であって私ではない存在……言うなれば、『分身』、でしょうか?」
「『分身』……っ!?」
 独特な言い回しをしたステラの答えを、前の戦闘で幻影を見せる能力があると予想していた拓海が意味をかみ砕くより先に、通信機からステラらしき人物を見たという報告が『ほぼ同時』に届いた。
 その中に『戦闘中』だとする一刀斎の通信から、拓海も言葉通りの意味だと理解する。
「私のライヴスから分裂した偽りの『私』はとても脆弱で、1度の『祈り』やわずかな『損傷』でも崩壊してしまいます。しかし、同時に『5つまで』なら個体の維持が可能なため、スディレと同様に足の遅い私の代理とすることも多く――」
「拓海さん! 彼女はここで倒すべきです!」
 直後、ステラが話す間に装備の一部をより攻撃的な効果のある物に換装した構築の魔女は、地面を跳ねる『ダンシングバレット』で急襲。拓海に攻めに出るよう叫んだ。
「――お話を遮るのも、人の間では咎められる行為では?」
「ご、ふっ!?」
 が、跳ねた銃弾はヴェールの『右手』に阻まれ、ステラが伸ばした『左手』が構築の魔女の腹を捉える。
「魔女さん! くそ!」
 初めて見せた攻撃手段を警戒しつつ、ステラへ肉薄した拓海は『疾風怒濤』を叩きつけた。
「っ、とても重い刃ですね」
「堅っ!?」
 鈍い衝突音とともに反応は二分。
 ステラは『右手』で三連撃を受け止めわずかに怯み、拓海は柄から伝わる感触と痺れに驚く。
「支援強化や遠隔指揮を『同時多発的』に行える上に耐久型……ますます野放しにはできません!」
「――っ!?」
 顔をしかめつつ、構築の魔女は再度発砲。途中で消えた『テレポートショット』はステラの死角に現れ、予想外の衝撃に『翻弄』される。
「うおおっ!!」
 攻め筋を逃さず拓海がさらに突貫――勢いを乗せた『疾風怒濤』を再びステラへ浴びせた。
「……残念ですが、ここは退かせていただきましょう」
 するとステラは笑みを崩さず両目を閉じ、胸元で組む両手ごとヴェールで体を縛り付けた。
 そして、両端の『手』で地面を踏み砕いた衝撃を『全力移動』に利用し崖の下へ消えていった。
「――っ、待て!」
「残念ですが、今は取り急ぎ別の場所の援護に向かいましょう」
 反射的に追おうとした拓海を制止し、構築の魔女は武器をしまうと車の方へ駆けだした。
「――ステラの『分身』が、各場所でマガツヒを強化したようです」

『泉』でステラ分身がライヴスを解放した直後。
 ビクリと痙攣した4人のマガツヒが正気を失い『暴走』しだした。
「ひひゃあっ!」
(ぐ、ぬぅ!?)
 目は血走って人語さえ失い、全身から出血(『減退』)する男DNの『オーガドライブ』を『クロスガード』で受け止めたソーニャは、明らかに重くなった攻撃に喉を低く鳴らす。
「きひゃひゃぁ!」
(――なんと!?)
 さらに大剣の向こうに見えた女SBが奇声を上げた途端、彼女自身を中心にした無差別の『ブルームフレア』が男DNごとソーニャへ襲いかかった。
「ソーニャさん! くそ! ステラもこの件に一枚噛んでるのか!?」
『大変なことになっちゃったわねぇ?』
 眼前へ迫る炎を『零距離回避』で躱し、先の警告でステラを目撃したエストはマガツヒの異様な変化を愚神仕業と気づく。シーエが観察するように目を細めると、再び女SBが魔法の爆炎に包まれた。
(二度も自軍諸共……気でも狂ったであるか!?)
 炎が散った後、2度目も回避に成功したエスト以外は酷い有様であった。
 ソーニャはかろうじて耐えきったが、下手人のSBは元よりDNとCBも倒れて動かない。
「を゛あ゛ぁ、っ!?」
「今です、ソーニャさん!」
『派手にやっちゃってー♪』
 残る女BMも回復さえ忘れ、突撃してきた槍の穂先が届く寸前、側面からエストが『レプリケイショット』を発動。影殺剣の刃が女BMへ5度突き立てられ、シーエの声でソーニャの砲身が動く。
『潔く、散れ!』
 連続で吐き出された砲弾は全弾直撃。女BMは悲鳴もなく地面へ崩れ落ちた。
「っ! これは……」
『そうねぇ――全員、手遅れだわぁ』
 その後、エストが捕縛のためマガツヒに触れた瞬間、シーエが死体だと認めて言葉を失う。
『エスト殿、作戦行動は継続中である。至急、友軍の援護へ向かうぞ』
 だが、殺害も覚悟していたソーニャの軍人らしい後押しでエストは立ち上がり、駐車場へと駆けていった。

 時間を少し戻し、『古代劇場』の戦いにて。
「ぉ? ごう゛ぉえ゛!?」
「この感覚――ステラ!?」
 数十合と刃が交えた男DNの様子が急変。一度後退した飛翔は覚えのあるライヴスの波動に周囲を見渡し――肉体が溶解しかけた笑顔を見つける。
「ど、どうした! おい!?」
「う゛、ぼあ゛ぁっ!!」
 男BMの声は届かず、目や口などから血を噴出(『減退』)した男DNは膨張した腕で大剣を振り下ろす。
「ぐ、っ!? 従魔だけでなく人も強化できるのか!」
『この力――おそらく、牛型従魔に使用した単体強化です!』
 飛翔はとっさに防御してルビナスの注意から刃を滑らせ威力を受け流すと、もはや狂戦士と化した男DNに自分から間合いを詰めて加速。
「お゛っ! げっ! ごあ゛っ!?」
『暴走』で理性を失った男DNは防御も回避もしないまま、飛翔の『疾風怒濤』にだみ声を漏らして倒れた。
「ひ、ひいぃ――ぎゃっ!」
 1人残され恐怖が飽和した男BMも、すぐに接近した飛翔に頭を殴られあっさり失神する。
「通信機も持たないとは、連携する気があるのかないのか……」
『即席の寄せ集めでしょう。彼らの動きは連携と言うには稚拙でした』
 それから飛翔はマガツヒを捕縛・無力化し、ルビナスの酷評に肩をすくめて男DNの死体を見下ろした。
『あの形とはいえ能力者も強化可能なら、愚神も強化できるとみるべきですね』
「……冗談でも笑えないな。行くぞ」
 冷静なルビナスの分析に顔をしかめ、飛翔はきた道を逆走する。

『神殿』でもまた、乱入者に気づいた者が。
『おや? あの子は確か――』
「他の面子が話してた愚神の特徴に似てるな」
 紫苑のぽかんとした声に頷き、バルタサールは壁から姿を見せた。観光に不相応なドレス、崩れない笑顔、そして逃げる素振りもない少女はステラ・マリスで間違いない。
「マガツヒさんよ。その愚神、あんたらの行動を監視して、なにやら企んでいるようだぜ。情報が何処かから漏れてるんじゃないか?」
「愚神だと!?」
 ひとまず、バルタサールは銃でステラを示し男BMにカマをかけてみると明らかに警戒を顔に出した。
「企むなど、とんでもないことでございます」
 対するステラは、無実を訴えるようにゆっくり首を横に振り――
「ここにいる『私』はただ――人に『祈り』を捧げた結果を見届けに来ただけです」
 ――実験動物を見るような無機質な笑みを、男BMへ向ける。
「は……ごぇぅ!?」
 直後、ステラのライヴスが流入した男BMは能力の向上とともに血管が破裂、わずかな理性で自身に『ケアレイ』をかけたが変化を止めるには至らず……『暴走』。
「うぉぼお゛っ!」
「え――ぎゃあぁっ!?」
 その時、男BMはたまたま消滅するステラの近くにいた避難者に目を付け襲いかかった。
「――ちっ!」
「間に、合わないっ!」
 バルタサールは避難者が射線上に重なり発砲できず、由利菜はカバーリングまでわずかに距離が届かない。
 避難者は狂った槍の柄で胴を殴られ、数mを転がった。
『~っ、ユリナ!!』
「あああああっ!!」
 悲惨な光景に叫んだウィリディスに呼応し、由利菜は【超過駆動】を発動。強化された肉体を限界までしならせ、幻想蝶から抜いたグングニルを投擲した。
「ぐ、ぎぃっ!?」
「逃がすか」
 反射的に逃走姿勢を取った男BMだが、精密なバルタサールの射撃が足を撃ち抜き縫い止める。
『あたしの槍は弾丸ほど飛ばないけど――火力はあるんだー!!』
「ぉごっ、ぼぇ!?」
 そして、ウィリディスの気迫が宿った穂先が腹に突き刺さり、男BMは数歩後退して背中から倒れた。
「大丈夫ですか!?」
 由利菜は結果を見る前に走り出し、被害者へ『ケアレイ』を施し治療に入る。
「――従魔で覗き見か、いい趣味だな」
 さらに、頭上を見上げながら歩を進めたバルタサールが空へ『ロングショット』を放った。
『確かに、外出しないで観光できるのはいいよねえ』
「……意味が違う。確か、もう1体いるみたいな通信もあったな」
『ノイズキャンセラー』の精確な一射は、男BMの末路を見届けたスディレの中心を貫通。
 紫苑のズレた感想に若干声を低くしたバルタサールは首をわずかに傾け、不愉快そうに細めた視線の先にあるもう1つの『光』を見据える。
「行きましょう」
 それから気絶したマガツヒを捕縛し、負傷者を治療し終えた由利菜は道を下っていった。
 ……腹部に穴が開いた1人の遺体を残して。

「連絡のつかぬエージェント達を殺したのはお前か、ステラ!」
『宝庫』では、一刀斎がステラの頭上から『ジェミニストライク』で両断。
『――貴方様方は、同じことをお尋ねになられるのですね?』
「な、っ!?」
 しかし、着地した一刀斎は断面から肉体がずるりと生えて2人に増えたステラに目を剥いた。
「な、何だアイツ!?」
「……お前もマガツヒの一員なのかと思っていたが、そうではないようだな」
 ただ、マガツヒも同じ反応を示したため、一刀斎は動揺を押し殺して片方へ肉薄する。
「ステラ。その頭のヴェール、腕として使えるのか?」
『私の手は常に『祈り』とともにあり、代わりの『腕』が必要でしたから』
「……ああ。機能美と呼ぶに相応しい、良い代物だ。それもお前の能力の一つという訳か」
 4本の『手』に挟撃される一刀斎は大剣を上手く盾にし、情報を得るためステラとの会話を続けた。
「ふん! ……何故靴を履かん。何か拘りでもあるのか?」
「私は『導く者』……残された足跡が履き物では、私の示した『道』だとわからないでしょう?」
 堅いヴェールの腕を強引に断ち、『毒刃』で片方のステラを切り捨ててなお一刀斎は攻撃へ傾く。
「なあステラ。お前の目的は……何だ?」
 交差した『腕』に衝突した大剣が火花を散らすと、一刀斎の紫黒の瞳が笑みを映した。
「あえて言葉とするならば、肉の器に宿りしライヴスの解放――でしょうか?」
「っ! ステラ!」
 ステラの表情にドロリ、と粘つく狂気を感じ、一刀斎は再び『ジェミニストライク』で強撃。
 固まった笑顔は地面へ落ち、今度こそ消滅した。
「隙だらけだぜ!」
「ぬぐっ!?」
 直後、背後から男DNの『電光石火』により、一刀斎はいつの間にか接近したマガツヒに『狼狽』する。
「大丈夫っすか!?」
「……助かる」
 そこへ間に入った征人の『ケアレイン』が傷を塞いでいく。その上、一刀斎はヒールアンプルを自分に打ち込み何とか立ち上がった。
『戦場で誰も死なせない』
「マガツヒは敵なんだが……いや、それよりかなり厳しいぞ」
 ミーシャの決意に満ちた言葉に苦笑する征人だが、こちらの消耗は激しい。マガツヒ4人は健在であり、もはや他の援護がくるまで戦えるかもわからなかった。
「チャンス!」
 その時、女CBが『ウェポンディプロイ』で直剣から銃へ持ち換えて『宝庫』へ何かを投擲。
「っ! まずい!」
 それが爆弾だと気づいた瞬間、凶行を阻止しようと征人が地を蹴った。
「おっと、ここは――」
「――通行止めだ!」
「ぐ、がはっ!」
 しかし、征人の直進は男DNと男BMの攻撃を受け、押し返されてしまう。
「ボッカァ~ン!」
 そして、無情にも女CBが嘲笑と放った銃弾は爆弾を貫き――強烈な閃光の後『宝庫』を吹き飛ばした。
「ち、くしょう!」
「不覚!」
 征人は奥歯をかみしめ悪態をつき、マガツヒ前衛を相手取っていた一刀斎の表情も苦くゆがむ。
「ついでにアンタらも寝ていきな!」
 さらに、遺跡の破壊に意識をとられ硬直している隙を女SBが狙い、『ゴーストウィンド』が吹き荒れた。
「――ごほっ!」
「ぐお、ぉっ!」
 すでに体力が尽きかけた状態からのダメ押しで征人は意識を失い『戦闘不能』、一刀斎は防御を突破された勢いそのまま地面へ倒れ『重体』相応の傷を負う。
「よし、さっさとずらかるぞ!」
 マガツヒは2人が起きあがらないことを確認し、逃走するため入り口へと駆けていった。

 残る『市場跡』では。
「ひぃやあっ!」
「ぐ――くっ!」
 消えゆくステラに何かする暇もなく、『暴走』した男DNの『オーガドライブ』が佐千子へ襲いかかる。何とか盾の防御が間に合ったが、凄まじい衝撃に佐千子から苦悶の声が漏れた。
「きへへへ!」
 間髪入れず、男SBが『ブルームフレア』を発動。やはり無差別な爆発が遺跡をも巻き込み荒れ狂う。
 防御を固めた佐千子は耐えられたが、避難者が1人負傷した。
「ひゃあはぁ!」
「この、また!?」
 佐千子が自爆した男SBと同時にこちらへ倒れてくる男DNを盾で押し戻すと、今度は魔法の範囲から逃れた女CBの『ウェポンズレイン』が飛来。背にかばう負傷者や他の避難者を意識し盾で防御した後、『暴走』する敵2人をにらみつける。
「待て!」
 しばらく敵の攻撃に耐えていた佐千子は、『宝庫』側から飛翔の声が聞こえた。
「嘘、速っ!?」
『宝庫』から逃走したマガツヒに追いつき、飛翔は女CBの銃撃を弾くと3人を相手に魔剣で立ち回る。
「今のうちに――」
「待ちなさい! もう遠慮なんてしないわよ!」
 1人だけ飛翔から逃げようとした男DNは佐千子に見つかり、防戦の間に位置取りを調整(『シャープポジショニング』)していた佐千子のドラグノフが吐き出した『トリオ』に捕まった。
『ぐっ!?』
「っく、逃げるが勝ちだ!」
 残る弾丸はステラの強化が切れた女CBと女BMの『暴走』を解くが、男DNの足は止まらない。
「加勢します、鬼灯さん!」
「しゃらくせぇ!」
 そこへ立ちふさがったのが『泉』から駆けつけたエスト。強引に通ろうとした男DNの斬撃を躱し、影殺剣を大量に複製する。
「一気に倒す!」
 瞬時に肉薄したエストは『レプリケイショット』の6連撃で男DNを下すと、正気に戻って混乱気味な女CBと女BMへ『ストームエッジ』を放った。
『待たせたであるな、重友!』
「援護します!」
『標的・バトルメディック――撃ち方始め!』
 少し遅れてソーニャと構築の魔女も参戦。ソーニャの号令で砲撃と銃撃が続けざまに発射され、女BMは回避も防御も回復も悲鳴も間に合わずに土煙へ沈んだ。
「さあ、あなたも覚悟しなさい!」
「ど、どうなってんのよ!?」
 形勢が優位に傾き、佐千子は女CBを『ファストショット』で追撃。
 身に覚えのない傷や敵の増援に戸惑いながら、女CBは逃走を図った。
「逃がさないよ!」
 だが、ソーニャたちの背後から現れた拓海に逃げ道を塞がれ、女CBもまた斧の一撃で力つきる。
「後はお前たちだけだな」
『くそぉっ!』
 同時に飛翔が『宝庫』側の女CBを倒し、残り2人のマガツヒは悪態をついた。
「投降の意思があるなら、聞き入れてもいいけど?」
「ぅ、あああっ!!」
 言葉とは裏腹な冷たい眼差しの佐千子に、女SBが『ブルームフレア』で拒絶する。
 が、最後の悪足掻きも佐千子の盾で容易く防がれ、その背後から飛び出した3人が武器を構えた。
「皆さん、下がって!」
『これにて終局である!』
「お2人とも、一応は手加減してくださいね?」
 エストの『ストームエッジ』を先陣にソーニャの集中砲火が続き、構築の魔女が『ダンシングバレット』で逃げ道を奪う。複製の嵐刃と射撃の雨あられは対処のしようがなく、先に男BMが粉塵の中に沈む。
「――はぁっ!」
 そのまま前進したエストが女SBに肉薄し、影殺剣を振り抜いた。
「く、そぉ……」
 それがとどめとなり、気力ごと切断された女SBの意識は闇へ溶けていった。

●『海の星』は笑う、悪女のように
「これで全員捕縛完了だ……けど」
「結果は警備担当全員と実行犯の10人が死亡。一般人の負傷者は数名だけど、遺跡の損傷は小さくないわね」
 戦闘後、マガツヒを拘束し駐車場へ移動させた拓海は、淡々と告げるメリッサの言葉にため息をもらした。
 死亡者はいずれもステラが手を下した者たち。後に見つかった警備エージェントは心臓をえぐられほぼ即死状態、強制的に能力を強化されたマガツヒの能力者は全身のおよそ9割の体細胞が壊死、英雄はライヴスを使い果たして消滅していた。
「ステラは今回、形だけならマガツヒを支援していた。ますます今後の動きがわからなくなったな」
「反目しあってくれれば助かりますが、それでもマガツヒならば歓迎しそうだから質が悪いですね」
 1つの解決から生じた新たな問題を前に、飛翔とルビナスの憂慮は強い。
「……目的の為に無関係の命を奪う事を厭わぬ輩を倒す事は、仕方ない。雪娘を取逃して多くの命が失われた事で、同じ轍は踏まないと誓った。理解してる……けど、ステラは今後マガツヒ――『人』を従魔のような手駒として使う気だろうか?」
「……あの口振りからすれば、可能性は高いわね」
 本部へ連行するための連絡を終え、拓海は消耗品のように死んだマガツヒを見下ろす。意思のある従魔を手に掛けた記憶の再燃でこぼれた疑問は、不愉快そうなメリッサに肯定された。
「手伝っていただき、ありがとうございました」
「気にするな……さて、愚神にどれだけ情報を持って行かれたか、だな」
 その近くで、由利菜はバルタサールと運んだ征人と一刀斎、それと負傷者へ回復スキルを施していた。
『神殿』での戦闘後、由利菜は『宝庫』前で2人を見つけて介抱に残り、バルタサールは見つけたもう1体のスディレを『ロングショット』で始末した後、ここまで運搬を手伝った形だ。
 ちなみに、紫苑は被害状況の確認という名目の観光に行ったきり戻ってこない。
「ふう、一段落ついたかな」
「でも、肝心な所はまだまだわからないわぁ」
「……すぐにしっぽを掴んでみせるさ。いい加減、後手に回るのも嫌だしね」
 最悪の事態は避けられたが、エストの表情に安堵はない。シーエの言葉に前を見据え、次はもっと上手く立ち回ると意気込みを見せた。

「……これは」
 他方、再び『神域』へ訪れていた構築の魔女は、ステラが見ていた柱を調べて『それ』を発見する。
「おそらくは、文字、ですね」
『アテナ・ブロナイアの神域』は建造の年代や目的、用途さえ不明とされる遺構である。
 そんな場所で、構築の魔女が指でなぞった部分に刻まれた、どの言語にも当てはまらない碑文らしきもの。
「ステラは『学びにきた』と言っていましたが……何と書かれているのでしょうか?」
 何かの手がかりになるかもしれないと、構築の魔女は碑文の調査もH.O.P.E.に依頼する。
 しかし専門家でも解読は難航し、明らかになるまで時間がかかると推測された。



「――とても有意義な時間でした。『マガツヒ』と呼ばれる方々の思想、『希望』を掲げる方々の思想、より多くのライヴスを解放する戦いの術(すべ)、そして遺物に刻まれた興味深い記述……」
 遺跡から遠く離れた場所。
 地に足を着けて歩いていたステラは、とても愉快そうに笑いながらライヴスを切り離し『分裂』した。

「『汝、自身を知れ』」

「『過剰の中の無』」

「『誓約と破滅は紙一重』」

「神託――いえ、心構えと呼ぶべきですね」

「使命を成すため、役割を果たすため」

「私は学び、蓄え、歩みましょう」

   くす
 くす  くす

 くす  くす
   くす

 本体と分身、6人のステラは別の方角の空を見上げて進む。
『人』に宿ったライヴスをすべて『解放』するために。


結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
  • Trifolium
    バルタサール・デル・レイaa4199
  • 黒ネコ
    獅堂 一刀斎aa5698

重体一覧

  • 黒ネコ・
    獅堂 一刀斎aa5698

参加者

  • 『星』を追う者
    月影 飛翔aa0224
    人間|20才|男性|攻撃
  • 『星』を追う者
    ルビナス フローリアaa0224hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 花の守護者
    ウィリディスaa0873hero002
    英雄|18才|女性|バト
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 難局を覆す者
    久兼 征人aa1690
    人間|25才|男性|回避
  • 癒すための手
    ミーシャaa1690hero001
    英雄|19才|女性|バト
  • 対ヴィラン兵器
    鬼灯 佐千子aa2526
    機械|21才|女性|防御
  • 危険物取扱責任者
    リタaa2526hero001
    英雄|22才|女性|ジャ
  • Trifolium
    バルタサール・デル・レイaa4199
    人間|48才|男性|攻撃
  • Aster
    紫苑aa4199hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 我らが守るべき誓い
    ソーニャ・デグチャレフaa4829
    獣人|13才|女性|攻撃
  • 我らが守るべき誓い
    ラストシルバーバタリオンaa4829hero002
    英雄|27才|?|ブレ
  • 決意を胸に
    エスト レミプリクaa5116
    人間|14才|男性|回避
  • 『星』を追う者
    シーエ テルミドールaa5116hero001
    英雄|15才|女性|カオ
  • 黒ネコ
    獅堂 一刀斎aa5698
    獣人|38才|男性|攻撃
  • おねえちゃん
    比佐理aa5698hero001
    英雄|12才|女性|シャド
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