本部

【ドミネーター】選別と死

玲瓏

形態
シリーズEX(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,800
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/07/24 19:15

掲示板

オープニング


 二十段の、段差の小さい階段にはノボル以外誰も人がいなかった。留置所に用がある人間は非常に少ないのだ。誰も彼も今という時間が忙しい時に、わざわざ罪を犯した人間に会いに行くのは有効な使い方ではないのだろう。ただノボルは、時間使い方として最善だと思う一つの階段を降りることにしたのだ。
 狭い空間に閉じ込められていたテスは、不恰好な服を着せられて背筋を丸めていた。
「少年、ヌケヌケとなんの障壁もなく私と向かい合うとは勇気があるな」
 ノボルは管理人から、直接部屋の中に入る事を許された。快い表情ではなかったが。
「貴方の顔を見て、直接お話がしたかったんです」
「随分と大人びた考えだな」
「よく言われます」
 ドミネーターと関わり、飛行機の自爆テロまでも引き起こそうとしていた危険人物は、今や面影が薄れていた。体の中で燃え盛っていた炎が、蝋燭の火のように大人しくなってしまった。
 真っ白い部屋の中にノボルは椅子を見つけて深く腰を落ち着かせた。テスはベッドの上に座って、顔だけをノボルに向けていた。
「バグダン・ハウスを襲うよう計画したのは貴方です。しかし、なぜドミネーターと協力関係になったのでしょう」
「私が嘘をつかないという保証は」
 声には脈がなかった。雑草しかない平坦な道をゆっくり歩くような声だった。
「嘘をつくメリットがあるとすれば、自分の自尊心を傷つけないことくらいです。それくらいの嘘だったら、軽く調べればわかることです」
「そうだろうな。私は死ぬまで、ここにいる事になる」
 だがテスは、ここが自分の家だとは全く思っていなかった。
「私はドミネーターというテロ組織を操るつもりでいた。支配者を支配し、最終的にはフランメスを私の目下の存在に仕立てあげる予定だった。なるべく私がバグダン・ハウス事件の首謀者だと知られないように部下に手を回しながら武器売買や、金銭的扶助をしてきた。正体を隠しながら、更に彼らを支配下に置く準備はしてきた。私が贈っていた物には人間の脳に直接影響を与える物質が含まれていた。フランメスや、彼らのストレス値を活性化させる化学物質を仕込み、嗅覚や聴覚、味覚を使って支配していた。具体的にいえば、松果体と呼ばれる脳の一部を正常に機能させないよう少しずつ仕向けてきたんだ」
「詳しいのですね、やけに」
「こう見えて市長だ。市民をどう操るかを勉強するのは初歩的な事なんだよ。知るために人間の脳を理解する必要があった。人間はストレスに強く影響を受ける。そのストレスが、人間支配の根本といっても過言じゃない」
 薬物や、調教といった目に見える洗脳ではない。長い年月をかけて行われるものは洗脳ではなく、支配だ。テスは市民や、ドミネーター達を支配する計画だったのだ。強力なテロリストがバックについていれば、マフィアに目を付けられることはない。命の心配は杞憂となるのだ。
「残念なことに、フランメスもまた私と同じ考えだった。市長を支配下に置くことで、街を自由自在にコントロールするつもりでいたらしい。もしくは、私が首謀者だとどこからか情報が漏れた可能性もあるんだろうな」
「そうなんですか」
「フランメスの提示した協定条件の一つに、私の養子を預からせてもらうとあった」
 平坦だった雑草の道に、白い綿毛がふわりと浮いていた。誰かが息を吹きかけて飛ばしたのだ。
「条件を飲まなかった場合、私との協定は成立しない。半ば強制的な物だったが同意せざるを得なかった。ドミネーターは町の中でも上位なテロ組織だったからだ。私が支配下に置きたいと思っている、とはフランメスも分かっていた。そこまでは――いい。だが、私の養子とはバグダン・ハウスで生き残った一人の少女だったのだ。私は奇跡の子として自宅で育てていた。それを、預かりたいと申し出てきたのだよ。私は最初意味が分からなかったが、後に人質だと分かった。」
 以前奴隷船の制圧で、少女が目撃されていた。ノボルは真っ先にその報告書が思い浮かんだ。
「以上が、私から話せる全てだ。嘘も何もない、調べてくれればすぐに分かる」
 この空間に自尊心も何もない。テスは虚ろの目を見せた後、目の前の壁を真っすぐ見つめて、顔を両手で覆った。肘を膝の上に乗せ、背筋が更に丸まった。
「後悔してますか、彼らと手を組んだことを」
 ノボルがそう訊くと、彼は姿勢を変えずにただ呟いた。
「あの時、市民にもっとリンカーという存在の無害さを知らしめるために、あの事件を起こさなければ。私の後悔は十字架を背負った時からずっと始まっていた」
 終わらない道。償いの道はどこまでも暗く、広い。

解説

●目的
 制圧。

●ジェシー
 人間に対する失望感から来る怒りは、彼女の戦闘能力を狂わせる結果となる。痛覚を麻痺させ、防御力と俊敏性を高める。今までは華麗な戦い方をしていたジェシーは、今回はレイピアで残虐とも呼べる手法で戦う。美しい物には更なる優美さを。醜い物には、悪夢を。
 彼女の真なる目的は自分に相応しい、美しい人間を決めることであった。契約や殺戮といった物には興味がなく、若干支配欲はあるもののパートナーなる人間を見つけ、我が物にするといった野望。
 真なる愛を汚染させることは、ジェシーの美学ではない。彼女は正真正銘の愚神だが、目的は他の愚神と大きく異なっているだけであった。

●シュレイン
 彼はバグダン・ハウスの事件で婚約者を失っていた。それからアヴァダと呼ばれる愚神と誓約し、毎晩従魔や愚神の頭部を捧げることで婚約者と夢で会わせる約束を交わしている。夢と現実の区別は曖昧。夢を現実だと思えない限り、婚約者は死んだままだからだ。だから強引に夢と現実の線引きを曖昧にすることによって、自分の生きる気力を保っている。
 もし、シュレインが瀕死に追い込まれたらアヴァダが姿を現すだろう。アヴァダは長い鎌を持ち、黒い羽の生えた悪魔。3mもある体でエージェント達を襲う。

●隠れ家
 未だに謎は明かされていない存在だが、前回のシナリオで辿り着いた者がいた。今回の行動で調査をすることも可能。

リプレイ


 堕ちた両腕が黒く溶け地面に染み込む。倒れこんだジェシーは息を切らし氷鏡 六花(aa4969)を睨んでいた。
「……ん。まだ生きてるの……? ……しぶとい」
 無秩序たる針のような氷柱が血まみれの彼女の真上に無数に顕現し、雨を降らせる。絶叫が森中を闊歩し、次第に高笑いへと変わる。
「氷鏡さん、ちょっと待って!」
 橘 由香里(aa1855)は日輪舞扇、その炎の刃で氷柱を焼きジェシーの前でしゃがんだ。炎で氷柱を全て溶かすと、彼女は両手を前へ掲げてライヴスの光をかけた。神々しい光はジェシーの溶けた両腕を元に戻し傷口を塞ぎ始めた。
「なあに、それ。私を殺すんじゃなかったのかよ」
 小さな怒声が橘に向けられる。ジェシーの眼は未だに据えていた。
「貴女と約束したはずよ。裏切る訳にはいかないわ」
「はん、流石お友達は違うねェ――」
 声が突然にも止まったのは、痛みによるものではない。
 ジェシーの服に返り血がかかった。彼女は眼を丸くして、橘の肩に刺さった氷柱を見つめた。
「……何してるの?」
 橘は呻き、氷柱を無理やり引き抜いて氷鏡を見上げた。黒金 蛍丸(aa2951)は走って彼女の隣に並び、武器を構えた。
「約束したのよ。フランメスを倒すまでは共闘するって」
「愚神と取引するのは、香港協定違反……なんでしょ? 約束? ……笑わせないで。愚神と約束を交してることが、どういう意味か分かってる?」
「分かってるわ。分かっててしてるのよ」
「そいつの為に、他の人間を危険に晒す覚悟も、ヴィランに身を堕とす覚悟も、あるなら……ぜんぶ解っててやってるなら……いいよ。六花が……どっちも退治、してあげるから」
 氷鏡の周囲を冷気が纏い、巨大な氷の輪を形成した。氷の輪は分裂し、より細く鋭利になるのだ。
 黒金は両手を広げ大きく叫んだ。
「待ってください! 身内内で争っている場合じゃありません! 双方で争っても、何も得なんてないんです!」
 浮遊していた輪が悍ましい速度で投擲された。向かう先は黒金であり、その速さは避ける隙すら与えなかった。
 ――もしもシエロ レミプリク(aa0575)が寸前で壁として立たなければ彼の首には傷が出来ていたことだろう。
「ふう、間に合った。何があったのかウチに説明する暇はあるかね」
「シ、シエロさん……! 助かりました、ありがとうございます」
 氷鏡は眉を寄せた。そしてもう一度、今度は全ての輪を一斉に放った。
 橘はジェシーの前に立つ。輪が彼女の腹を切り裂く前に溶けることとなった。
「なァ由香里。そこを退けよ。ジェシーはお怒りだ。お前以外の人間を潰してやらなきゃ気が済まない」
「……それも駄目。氷鏡さんも私の大事な仲間」
「フザけんなッ! お前はどっちの味方ってんだ」
「そんなの知らないわよ……! 氷鏡さんは私が止める。だから貴女は大人しくしてて!」
「出来ねェ相談だ。手始めに、薄汚いガキから殺してやる」
 ジェシーは一目散に氷鏡へと駆け出し、その間合いに立ちレイピアを突き出した。切っ先は氷壁が弾き、途端に爆裂した。衝撃で吹き飛んだジェシーは地面に擦られるが、血走った眼は決して氷鏡から離れることはなかった。中腰で立ち上がった彼女はレイピアを投擲し、そのレイピアに搭乗すると踏み出しにして高く跳び、頭上で氷鏡の髪を掴んで上に持ち上げた。
 ふわり、両足が地面と離れた氷鏡の表情は痛みで細かく揺れた。
 同じ高さに跳躍したシエロは鳳凰を前に突き出し、空中で前進した。鳳凰の幻影がジェシーに噛みつき、木に叩きつけた。
「レディの髪を掴むんじゃねえ!」
「うるせェな……うるせえなァッ!」
 ジェシーは標的を氷鏡からシエロへと変え、駆けだした途中でレイピアを拾い、生えていた草を刈り威嚇しながら突進した。接近距離へと迫ると寸前で腰を低く下げ、下から上へ、シエロの顎に切っ先を伸ばした。シエロは顔をレイピアの動きに合わせて上に上げ一歩下がると、グリップでジェシーの背中を叩き手前へよろめかせ胴体を鳳凰で貫き、空へと掲げた。
 血反吐が武器を濡らす。ジェシーはしかし、自ら刃を抜いて脱出するとシエロの胸を切り裂き、頭を蹴り遠くへ距離を取った。
 ――主様、それは薙刀……ですか?
 ジスプ トゥルーパー(aa0575hero002)は疑問符を口に出した。シエロが薙刀を使うのは珍しく、敵を倒すだけならばいつもの武器で問題ないだろうからだ。
「秘密兵器ってやつさ、美人を叩き潰すのは気がひけるからね」
 ジェシーが地面に足を着けた時、足元には氷が形成されていた。ジェシーの脚は氷漬けにされ、身動きが取れなくなったかと思えば、前方には氷山を傾けたような大きな塊が存在していた。
「死んで……ね?」
 足掻き、足掻くも氷漬けにされた足は動かない。
 氷山の一角が胸に痛みを覚えさせた。その時に足を覆っていた氷が溶け、気付けばジェシーは仰向けに倒れていた。隣には同じように倒れる橘が横たわっていて、再びジェシーの傷口を癒し始めた。
「愚神は皆殺しにして、平和な世界を六花は作るの。だから……ねぇ、邪魔をしないで。邪魔をするなら……望み通りに、貴女も一緒に殺してあげる。護りたい愚神を護って死ねるなら、幸せ……でしょ?」
 氷柱がいくつも投擲された。その数は無限にも思え、機関銃のようだった。二人の前には黒金が立ちはだかり、鬼若子御槍と陰陽玉を同時に操り氷柱の吹雪を弾いた。全ての氷柱を撃ちつくした後、黒金の手足からは血が滴っていた。
「蛍丸君、ウチの仕事を取っちゃあちょいとマズいんじゃないかい」
「大丈夫です。それに、僕だってカッコいいとこ見せないと……。サマに、ならないですから……!」
「まったくなぁ。こっちにおいで、治療するから――それと、六花ちゃん。ちょっとタンマだ。どうやら訳アリみたいだからな。少しお話をしたら再開でもいいんじゃないのかい」
「ん……」
 氷鏡は頷きもせず、首を横にも振らなかった。瞳はただジェシーと橘の二人を捉えていて、氷のように澄んでいた。


 薄暗い地下室では、赤城 龍哉(aa0090)の拳とシュレインの掌底が撃ち響く。互いに譲らず、カウンターの隙を作らずに膠着していた。どちらの拳も決定打にならず、互いに距離を取って息を整えていた。
 先手に走る赤城は腰を下げて距離を詰め、正拳で真っ向から突く。シュレインは両手で払い、勢いを殺さず前へ乗り出して腕を下げると、真上へ拳を伸ばす。赤城は片手で拳を掴み軽く下へ押し戻すと体を横に捻らせ相手の股下へ足を伸ばし大きく手前に引く。態勢を崩したシュレインの胴体に再び正拳を入れるが、地面に落ちる寸前で彼は赤城の袖を掴み手を捻らせた。シュレインは背中から落ちる衝撃を失う前に咄嗟に起き上がり、半歩下がる。既に赤城は態勢を整えていたが、慎重に間合いを計っていた。
「お前自身に宿る理念ってのは本当に、何もないのか」
「ああ。無いな」
 眼を閉じた赤城は、微笑を浮かべてこう続けた。
「いいや、嘘だね」
 シュレインは表情を変えず、彼の言葉に耳を傾けていた。
「本当に何もない奴ってのは、そもそも何もしないし出来ない。少なくともこうは戦えねぇ。あんたは口で言う程空っぽじゃない。その心には戦う理由、拠り所がある」
 何も語らなかった。空洞音のような音を鳴らし、不気味な風が餅 望月(aa0843)の長い髪を揺らしていた。彼女は先ほどから、二人の接戦した戦いに見入っている。
 勿論、援助もしている。
「もっとも……理由がある割に情熱の欠片も見せないあんたの様子は偉く不自然だがな」
「言っただろう、理由等ないと」
「どんなにクールな奴でも何かに掛ける想いがあるなら何らか熱を持つものさ」
 戦いの最中、彼には確かに熱があった。ここまで生き残るのはそもそも"死にたくない"という強い意志を宿しているからだ。忠誠心だけでここまで戦えない。
 全て推測に過ぎない。しかし赤城は、彼に全てをぶつけることにした。
「あんたはバクダン・ハウスの一件で何を奪われたんだ?」
 些細な違いだった。シュレインの眼がほんの一瞬だけ動いたのだ。今まで視線の中には赤城と望月しかいなかった彼の眼が、僅かに揺れた。
 推測はおおよそ、当たっていた。彼もまたバグダン・ハウスの被害者だったのだろう。
「奪われてはいない。彼女はまだ、私の中で生きているのだから」
 淡々とした声がやけに曇った。
 次に動いたのはシュレインだ。突進の前触れを見せ、腰を下げて勢いよく間合いを詰めだした。豪快な動きで接近すると、細かく素早い動きで腕が伸びた。牽制を腕で受け止めた赤城は片方の手で彼の腕を掴み手前に引いて胸版を頭突いた。頭突きを耐え忍んだシュレインは赤城の額に拳を当て、衝撃で返ってきた腕の痛みを気にせずに、瞬時に背後に回り込むと同じ手で頸椎に手刀を入れた。
 体の麻痺する感覚が赤城を襲うが、気合を込めた声を腹から出し、シュレインの腕を掴んで前方に倒した。倒れた彼の、次は脚を掴んで肘で関節を強打すると撤退し、望月の隣に並んだ。
「大丈夫? 結構痛そうだったけど」
「心配すんな。それより気付いたかよ。あいつの動き、さっきよりも細やかさが無くなった。多分、そろそろ勝負を決めるつもりだぜ」
「う、うん気付いてたよモチロン」
 望月は細目で頷き、赤城を回復した。今までの戦いは本番のための準備だったに過ぎない。彼女自身も気合を入れるため、両手でガッツポーズを作って後ろに引いた。
 ジャンヌの聖旗を地面に突き立て、周囲に輝くフィールドを形成する。薄暗かった地下室が瞬時に色を変え、その様相にシュレインは回りを見渡した。聡明な彼はおそらく、自分の状況を察知しただろう。
 元々、二対一という圧倒的に不利な状態から彼は決して引こうとしなかった。フランメスに対する忠誠心がありながら、別の理由もある。その理由は、一体なんだ。
「おっし、そろそろ本番といこうぜシュレイン。漢と漢の決着、つけようじゃねえか。望月は手出し不要だぜ」
「りょーかいですたいちょー。まあモチロンですよね。後の戦いも控えてるからねー」
 ――本当はカッコイイから見ていたいんでしょ。
「頬っぺた抓るよ~あとで」
 共鳴していた百薬(aa0843hero001)はなんとなく自分の口を両手で塞いだ。
 赤城は右腕に全てのライヴスを注ぎこみ、態勢を整えた。シュレインも全く同時に禍々しいライヴスを左腕に注ぎ、光り輝く世界の中で彼の左腕は黒く染まっていた。
「この一撃に、全てを賭けてやるぜッ!」
「行くぞッ」
 赤城が走り出し、続いてシュレインが走り互いの距離は即座に縮まった。
 赤く光る鬼神の腕と、暗黒に染まる腕が衝突し激しく風を巻き起こした。互いに脚を引かず、二つの声音が重なる。
 軋む音が聞こえた。それはどっちからなのか、望月には分からない。赤と黒のオーロラに似た雷光が二人を取り囲んでいる。
 時が交差したその瞬間に雷光は破裂し周囲を閃光で照らした。
 長い時間、二人は拳を打ち付けあっていただろうか。やがて黒炎は聖なる赤に囲まれ消滅した。目に焼き付く光が消える時に立っていたのは赤城であった。シュレインは膝を付き、彼を見上げていた。突き出した左腕には割れ目が走っていて、血が地面に滴る。
「私の負けだ、赤城。強いな」
「当たり前だろ。お前がフランメスを守るように、俺だって守らなくちゃならないもんは多い。だがお前も強かったぜ」
 川せせらぎのような笑いがシュレインの口から漏れると、赤城は手を指し伸ばした。彼もまた腕を伸ばし、赤城の手を取ろうとした。
 ――認めヌ。
 シュレインの腕が止まった。赤城、望月は唸り声に似た低い声を耳にした。
 ――認めヌッ!
 二度目を言った時、彼の背中から黒い煙が噴き出し、小さな竜巻のように一か所に集った。集った煙は徐々に何かを形成し人間では無き生命体をそこに創り上げた。


 目の前の男はフランメスと名乗っていたが、今では相応しさを失っている。口ぶりや仕草はまるで違い、異様にも冷静であった。死んでしまったかのように、全てが冷たかった。
「今すぐ私達の前から逃げないと命が枯れるよ」
「退け、とはこちらの言葉ですね。貴方が何者かは知りませんが、ドミネーターは既に壊滅。HOPEからは増援も送られるでしょう。退くべきは貴方ではないでしょうか」
 淑やかな笑い声がフランメスの口から鳴った。
「愚かなシルヴァーニ。カワイソウに。でも大丈夫」
 九字原 昂(aa0919)は雪村を構え、全ての暇を作る猶予を与えず詰めた。刀は直線の軌道を描き突かれる。
 刃には何も応えず、敵は数歩後ろに下がっていた。反撃を即座に拒むため雪村は素早く引かれ、九字原は前へ進み刃を下へ振り下ろした。弾丸が刃を押し戻し、もう一つの銃声が九字原の腕を射抜いた。
 二つのハングドマンが投擲され、二つの短剣が彼の両肩に刺される。次に九字原は鋼線を引き、抵抗力を失った彼の身体はうつ伏せに倒された。
「へえ」
 晴海 嘉久也(aa0780)は伏せた彼に魔導銃を向けたが、奇妙な現実がトリガーを押す指を止めた。床から植物が生え、蔦が晴海の脚に絡みついたのだ。九字原は根本から植物を刈り、彼から距離を取った。
 ――今までに無かった能力だな、コイツは一体……。
 地面から生えた植物はすぐに朽ちて散った。ベルフ(aa0919hero001)の声が脳内に響く。九字原も晴海もこの男が、声の主が何者なのか想像すらできなかった。
「神は私達に名前を与えなかった」
 彼の声は二重に魚って聞こえた。口を閉じ、肩の剣を抜いてから立ち上がると言葉を続けた。
「だから悪魔から力を奪った。でも代償が必要だった」
「代償のためにシルヴァーニを利用した、ともとれる言葉ですね」
「これ以上は語れない。シルヴァーニから今までの全てを聞くのが一番。ただし、聞ければになるけどね」
 彼は黙り、両手を横に広げた。すると、呼応した花々が床から咲き始め、人と同じ大きさになってみせた。青く、ひまわりのように丸く美しい。しかし地球上にはない花だった。
 花びらが一枚千切れて、彼の手のひらに乗った。
「綺麗でしょう。花言葉は報いの叫び、または死神の愛。安心して、君達が死ぬときは一瞬だから。死神が鎌で命を刈る時のように」
 花は天井まで伸びると葉が刃の姿に変わった。鋸のように鋭利で、美しい花は人を殺す凶器へと変貌してしまった。
 花は回転を始めた。鋸で二人を切り刻むためだ。そして室内を歩き始めた。晴海は銃を撃ったが、鋸は単調な音を響かせて弾いた。
 旋風が吹き荒れる。
「駄目だね! 君達の命に咲きはない。大人しく散り、私達の養分になるんだよ」
 回転する花から蔦が伸び、晴海の首に絡みついた。九字原は雪村を構え縦に一を描くように斬ったが、銃弾が刃の軌道を遮った。
 彼は笑みの下で銃を握っていた。
「死の何が怖いんだろうね。もう気付いていると思う。人間界が一番残酷だとね。煉獄よりも、地獄よりも。生きていた方がよほど辛いよね? 安心して、死は怖いものじゃない」
 晴海は片手でNAGATOを取り出したが、別の蔦が腕に巻き付き締めあげた。
 鋸の葉。花の淑やかな香りに鉄の匂いが混ざって鼻をくすぐる。
 九字原の行く手に花が立つ。
「まずは一人」
 一人ずつ確実に殺していく。彼らの浮かべていた笑みは花が晴海に近づくにつれ深まっていく。
 ――このままじゃ……! 絶対に危険です!
 エスティア ヘレスティス(aa0780hero001)の忠告は最もだが、逃れる術がない。蔦の力はあまりに強く晴海を締め付けている。
 握っていた刀が地面に落ちた。全てを覚悟した晴海は、ゆっくりと目を閉じた。
 それでいいんだ、彼の声が聞こえる。
「これ以上仲間を傷付けないで!」
 彼は目を瞠った。一人の勇敢な――茶色の髪をした少女が晴海の前に立ったのだ。盾を持ち、鋸の攻撃を防いだのだ。少女は花を押し返すと輝く剣で蔦を切断し、晴海を死から遠ざけた。


 大木の扉は開かれた。最初、中は暗がりだけが覆っていた。眼を凝らしても何も見えないのだ。ただ何処からかリンゴの香りがした。
 若葉色のワンピースに身を包む少女は小ぶりな動きで敷居を跨ぎ、壁に手を伸ばした。
 暗がりは消え、仄かな光が空間に降り注がれた。風代 美津香(aa5145)は、アルティラ レイデン(aa5145hero001)もまた小さく息を鳴らした。
 大木の中に部屋一つがすっぽりと納まっている。ベッド、キッチンに箪笥。外から見て、中に部屋があると誰が想像できるだろう。玄関ドアの前にはマットもあり、部屋は片付いている。周りを見渡していると後ろでドアが閉まった。少女が閉めたのだ。
 部屋はどこか幼く、子供部屋のようだ。壁は水玉模様の水色に、ぬいぐるみの座る枕。古いベビーチェアが壁際に置かれている。窓は無く、光源は天井についている幾つかの電球だけだ。
 薄緑色のソファに風代の探していた男の子が座っていた。
「よかった! 迷子じゃなかったんだね」
「うん。あの女の子にこっちだよって手招きされてさ」
 少女はベッドに腰掛けていた。顔は風代に向けられている。
「男の子を守ってくれたの?」
 一度だけ頷いた。
 机の上には植木鉢が置かれていて、果物が咲いていた。赤く熟したリンゴだ。傍のバスケットの中には美味しそうなリンゴが幾つも重なっている。ようやく、部屋の香りはリンゴだと風代は合点がいった。
 植木鉢に咲いているリンゴをよく見てみると、ペンで顔が描かれていた。バスケットの中のリンゴもそうだ。全て笑っている。喜びで満たされている表情だ。
「そのリンゴ、すっごい美味しかったよ」
 男の子が言った。
「へえ、私も食べていいかな」
 少女はまた頷いた。風代は「ありがとう」と告げるとバスケットの中に入ったリンゴに手を伸ばし、机の上に乗っていた包丁を使って半分に切ると片方をアルティラに渡した。
「本当に食べていいのでしょうか。よからぬ物が入っているかも……」
「私はそうは見えないな。もし入っていたとしても平気だよ。怖いなら私から食べようか」
「別に怖いわけじゃないですけど」
 風代は笑いながらリンゴを口にした。
 男の子の言っていた事は的を射ているのだった。美味しく熟したリンゴの味はサッパリしていて、甘味も丁度良い。皮も絶妙に味を引き立てるのだ。歯応えも抜群で、まるで部屋に満たされたリンゴの良い香りをそのまま食べているかのようだった。
「本当だ、すごく美味しいねこれ」
 すると、三回扉が小気味よくノックされて開き、白髪の生えた女性が落ち着いた様子で二人を目に入れ、会釈した。
「HOPEのリンカーさん、ですね」
 風代は居住まいを正して会釈を返し、言葉を返した。
「そうよ。あなたは?」
「私は、あの子を子守りしている使用人でございます」
 手に持っているトートバッグからペットボトルが顔を出している。
「リンカーさんがいらっしゃったということは、シルヴァーニも潮時となりましたか」
 女性はバッグを床に置き、少女の隣に座った。バッグの中から水の入った水筒を取り出すと彼女の口に当て、彼女は女性の仕草に逆らわず中に入っていた水を飲み始めた。途中、水が口から零れたからと女性はハンカチを取り出し、少女の口元を拭う。
「この子は、あの家で非常に特別ない身をもって産まれました。その事を少しだけ、お話したいと思います」
 少女は俯いていた。


「お話だァ? ふざけんな。ジェシーはそんな事をする気分じゃねえんだよ。てめェも腹立つな。もういい分かった。由香里以外全員殺してやる。ジェシーの友達になりたい奴だけ殺さないでいてやる。分かったらとっとと武器捨てろ」
 武器を捨てるリンカーは何処にもいない。
「だよなァ。私は愚神なんだからなあ!」
 ジェシーはシエロを眼中に収め、両足を素早く動作させた。至近距離に攻め込み彼女の腹を片手で掴み指を食い込ませた。細長い爪が突き刺さり、レイピアは脳天を見ていた。シエロは薙刀でレイピアを弾き飛ばし、ジェシーの首を片手で掴み、喉元を締めた。嗚咽が漏れ、ジェシーは片手でシエロの腕を殴打して脱出を狙う。
「落ち着きなよ。せっかくの美人が台無しだ」
「調子乗んじゃねェぞ……ッ」
 深く食い込んだ爪を引き抜き、血に濡れた拳がシエロの腹に強打を食らわせ、怯んだ。ジェシーは体の自由を感じ、落ちたレイピアを拾うと標的を変えた。瞳に映っていたのは氷鏡である。
「次はあんたの番だ」
 走るジェシーに氷柱が幾つも襲いかかるが、レイピアで撥ね退けその断片が腕に突き刺さるがジェシーは動きを止めなかった。そして互いの手が届く範囲まで接敵した時、レイピアが氷の壁を貫いて氷鏡の胴体に突き刺さった。
 ざまあみろよ。氷鏡の耳に不浄の声が囁きかけた。
「ここでは殺さない。ジェシーの家に持ち帰って、散々地獄を見せた挙句に逝かせてやる。その方が長く楽しめていいでしょう」
「ん……そうなのかな。六花には分からない。だから、試してみようかな」
「やれるもんなら、やってみろよ」
 レイピアは深く突き刺さっていく。
 黒金は鬼若子御槍を構え、ジェシーの背後を取った。ジェシーはやむなくレイピアを引き抜き刃を交差させた。
「邪魔すんじゃねえッ!」
「由香里さんはお前に渡さない……ッ! お前の物になったら、不幸になってしまうから!」
 ジェシーは素早く回転し、槍を握る黒金の手に踵を落とした。黒金は狼狽を抑え、次に来る攻撃に備えたが、次はジェシー自身が武器となって体ごと黒金と激突した。地面に受け身を取るべく片手を構えたが、その手を刃が捉えた。地面に伏した黒金の上に跨るジェシーは、両手で彼の頬を包んだ。
「ジェシーの物だよ。よく聞いとけよボク。由香里は私の物なんだよッ! あんな人間他にはいない。美しいのは顔だけじゃない、その正義感と心は本物の綺麗さ。ジェシーのパートナーに相応しい。それに、ジェシーは一度追いかけた奴は、余程気に入らないことがない限り永遠に這いより続ける」
「もう一度言う……! お前には渡さない。絶対に!」
「はッ、これだから男は。分かったぞ、惚れてんだろ? なァ。それならさあッ! 人間の男の所に行くより、ジェシーの所に来た方がよっぽどいいんだよ。ボクはジェシーの所に来ると不幸になるって言ったよな。でも周りを見てみろよ。人間の男に懐いて、幸せになった女の数を数えてみろよ」
 ジェシーは黒金の額に、自分の額を合わせた。優しく頬を包んでいた両手は、彼の顔を逃がすまいと強く頭を押さえている。
「ンな奴一握りって事分かるよなァ! 結局男の欲でしかねえんだよ。自分のギャラリーの一つでしかねェんだよ」
「愚神に愛される人間も、誰一人として幸せにはなれないに決まってる……! お前らは人のライヴスを吸い尽くして生きているんだから!」
「なああァァんにも分かっちゃいねえ。じゃあ言ってやるよ。男はな、女の幸せを吸い尽くして生きてんだよ。知らなかっただろ? 知る訳ねえよなあッ! お前、どうせ由香里に惚れてんだろ? ジェシーの眼は誤魔化せないんだよ」
 氷鏡は腕を伸ばし、氷柱をジェシーに放った。ジェシーは腕で氷柱を受け、黒金の顔に薄黒い血が滴り落ちた。
「お前、イケてる顔してるもんなあ。おまけに正義に生き、人のために命を惜しまない。男として立派なもんだよなァ。でもさ――そんな奴の欲を見たら、さぞかし女は絶望するだろうよ。二度とお前は信頼されず、生きていく事になるんだよなァ」
 言葉を聞いた時、黒金は薄く笑った。
 そして彼女の言葉に向けてこう言った。
「お前こそ、何もわかっちゃいないじゃないか」
 ジェシーは口角を上に吊り上げ、両手でレイピアを握った。切っ先は黒金の心臓を向いている。
「まずはお前からだよ。安心しろよあの世ならいくらでも女はいるぜェ。三途の川の婆さんに会ったら、後二人は来るって伝えとけよッ!」
 両手で握られたレイピアが、素早く振り下ろされた。
 肌を貫通する手応え。血の音。ジェシーの服は返り血に濡れた。
 黒金の心臓は動いていた。
「由香里、お前ッ」
 レイピアは橘の腕を突き刺していた。
「予定とちょっと違ったけど……。これもこれでアリね――ジェシー、ちょっと落ち着いて。人を殺す必要はないでしょう」
「なんで無茶したの? そんな……痛いでしょうに」
「こうでもしないと、貴女は止まらないでしょうよ」
 ジェシーは地面に座り、項垂れた。血に濡れた手を服で拭い、レイピアを地面に捨てるとシエロと氷鏡に振り向いた。
「漸く落ち着いたわ。さっきはごめんなさいね、二人とも。別にジェシーを許す必要はないわ。だけれど私はフランメスの手伝いはもうしない。その代わり、一時停戦なんてどう? あなた達の目的はフランメスの制圧よね。なら、私は止めないから今すぐ奴の所に行きなさいな――」
 途端、ジェシーを中心地とした地面が氷に包まれた。冷気が周囲を覆う。
 彼女の脚はすぐに凍った。
 橘はヘイルブレイズを構え、気付けば走り出していた。氷鏡は氷柱を橘に放ち、それを炎が水蒸気に変える。そして剣が氷鏡に届く……その前に、薙刀が制した。
「こんなのおかしいわ! ジェシーの言っていることは正しいじゃない。今すぐフランメスを止めにいくべきよ。氷鏡さん、貴女も正気に戻って!」
「正気じゃないのはどっち?」
 橘はシエロに顔を向けた。
「お願い、そこを退いて……!」
「――悪い。仲間が傷つくのを黙ってみてるワケにはいかないんだ」
 橘は剣を引き、薙刀に強く打ち付けた。その衝撃は自身の握っていた剣すら弾くほどで、橘は構わず体ごと突進した。シエロは橘を止めるため、彼女も武器を捨てた。
「お願い退いて!」
 しかし、全てが遅いと気付く必要があった。飯綱比売命(aa1855hero001)は柔らかい声音で言った。
 ――もうよすのじゃ、由香里。
 助けてくれた恩はしっかりある。橘はその恩をしっかり返したいと思っていた。ジェシーとは友達になってもいいと考えていた。彼女は愚神だが、誠意は持ち合わせていた。人を無用に殺める愚神ではなかった。
 千本あるだろうか。氷柱が顕現した時、橘は初めて後ろを向いた。
 ジェシーは地面から拘束具のような氷に両腕と両足を固定されていた。橘は武器を拾い、彼女の前に立ち塞がる。
 ――良いのか。友人をも貫くことになる。
 オールギン・マルケス(aa4969hero002)は忠告するような声で言うが、氷鏡は頷くだけで終わった。ならば、止める事はない。
 放たれる弾丸のような氷柱が二人に降り注ぐ。シエロは氷鏡に止めるよう告げたが、ジェシーの断末魔がシエロの声を掻き消すようだった。
 橘はシエロと黒金が救った。氷柱の嵐の中、橘は抵抗したがやがて救い出された。
 血塗れの氷柱が溶け出し、血だまりを作る。既に断末魔は止んでいて、氷鏡の眼はただ冷淡だけが宿っている。
 橘は残骸に近づいた。治療を施そうとしても、もう無理だとは分かっていた。
「友達が欲しいなら……愚神なんてやってないで、英雄として私と契約すれば良かったのよ。そうすれば、いくらでも……友達をやってあげたのに」
 もう何も言わない亡骸。氷鏡は何も言わず本を閉じた。橘は氷鏡に視線を向けた。
「これで満足……?」
「……うん。だって、あの人が愛してた愚神を……HOPEは殺したの。だから……愚神はぜんぶ殺すの。辛い思いをしたのは、貴女だけじゃないんだよ。黒金さんの言っていたように……愚神と一緒に生きていていい事なんて、何もない……もの」
「憎悪で目が眩んでるのは両方じゃない。愚神を笑えない……。力は復讐ではなく誰かを守る為に使いなさいよ……!」
 氷鏡は再び本を開き、氷柱を顕現させた。
「私に……ッ、そんな事を言わないでッ」
 ――もう十分だろう六花。本を閉じなさい。ナタリアの悲劇を終わらせなければならないだろう。
 まだ仕事が残っていた。愚神を殺す以外に。氷柱は溶けて消え、水滴が地面に落ちた。
 

 シュレインの身体から出てきた生命体は、言うなれば悪魔だった。鎌を持ち、黒い翼を左右につけて赤城と望月を睨んでいる。全身が黒く、頭は山羊のように縦に長い。額から伸びた一角の先端には輪が飾られていた。二メートルはあるだろうか、その躯体は筋肉が剥き出しになっている様だ。
 ――嫌な予感はしていましたが、愚神が出てきましたわ。
 ヴァルトラウテ(aa0090hero001)は愚神を見据えた。
 シュレインは地面に伏し、愚神を見ている。
「アヴァダ、どうして出てきたんだ」
「フン、久々に闘争の血が騒いだに過ぎぬ。それに貴様の敗北を、我は許さぬ」
 アヴァダと呼ばれた愚神は鎌を大きく振るい、地面に突き刺した。地面には大きな爪痕が残り、そこから邪気が噴き出して周囲のライヴスフィールドを汚した。
 ――なんか強そう。
 簡易的とはいえ、百薬(aa0843hero001)の感想は最もだ。
「ここからが本番ってやつかもしれないね」
 赤城の隣に並んだ望月は旗を下げ、エヴァンジェリンに持ち替えて回転させた。彼女なりのポージングだ。
 不浄の気が地下室を包む。
 赤城は早々たる決着を見込み、片脚を前に出すと瞬時に距離を詰めた。伸びた鬼手を鎌が引き受ける。赤城は牽制の腕を引き、片足を前に突き出してアヴァダの腕を狙った。足は腕に命中したが、鋼鉄のように硬い肉体が痛みを跳ね除けた。
「良い応えだニンゲン。シュレインを破っただけの力はあるみたいだが、はたして我はどうだろうな」
「その威勢、さすが愚神ってとこだな。いいぜ、望月と俺のコンビネーションを見せてやるよ!」
 赤城は身を屈め、再び鬼手を突き出した。今度はストレートだ。アヴァダは手を前に突き出し、掌で衝撃を受けた。望月は側面から回り込み、槍をアヴァダに振るった。
 アヴァダは赤城の手を止めている掌から衝撃波を発生させ、腰を下げて鎌と槍とを交わせた。すぐに鎌を手前に引き望月の体制を崩させると、鎌を乱暴に振り回して二人の胴体を刻んだ。
「攻め方を心得てはいる。しかし足りぬ……。我を倒すにはまだ届かぬぞ」
「ふふん、まだ私のターンは終わってないよ」
 望月は頬に出来た傷を腕で拭い、槍を持ち直すと正面から突く――とはフェイントだ。正面に伸ばした槍は寸前で横向きになり、上に振り上げられた。狙いは腕だ。
 鋭い切っ先がアヴァダの腕を裂き、黒い気体が空気砲のように一瞬だけ噴いた。
「良い痛みだ。この痛みを何年待っていたか分からぬな!」
「まさか喜ぶとは思ってもなかったけど……! じゃあこんなのはどうかな」
 槍を引いた彼女はアヴァダの腕にぶら下がり、地面を蹴って背後に回るとうなじに槍を伸ばした。寸前で鎌が盾となり、望月は壁で受け身を取ってアヴァダと距離を離した。
 攻撃はまだ終わらず、次に距離を詰めたのは赤城だ。赤城は腰を引き、鬼手を地面に擦りながら駆けて、火花を散らしたその手を上へと振り上げた。振り上げられた手は鎌の芯に命中し、アヴァダの腕から武器を奪った。
「もう一つだッ!」
 左腕で武器を奪った赤城は、右腕を力強く突き出した。アヴァダは頭を突き出し、額から生えた一角で手を刺した。赤城は貫く痛みに耐え、手は引かない。
「望月、頼んだぜ!」
「勿論っ。いくよー!」
 望月の腕から光のライヴスが、赤城の手に向けて届く。邪気を打ち払う光が集中し、赤城の鬼手を強くする。
「この力は……ッ!」
「俺と、望月の力だ! 思いっきり味わえよ!」
 全ての力が手に注がれた瞬間、一角が折れてアヴァダの額に拳が打ち付けられた。
 前のめりになり、アヴァダは地面に倒れた。
「見事だ……。我を倒す猛者が、いるとは……」
「今回は分が悪かったな」
「フン……、だが本望だ。我より強い奴に還されるのはな。戦だけに生きる愚神の、お似合いの散り方……ぞ」
 全ての言葉を言い終え、アヴァダは足から順番に気化した。黒い煙はしばらく空気中を漂っていたが、やがて消えた。
「ふう……一仕事終えたー」
 溜息をついた望月はしかし、途中で息を止めた。シュレインは鎌を自分の首に押しつけていた。望月は助走をつけて吹き飛び、頭からシュレインに激突した。
「何をしてるだー!」
 腰に罅が入ったような音が響いたが構わず、望月はうつ伏せに倒れたシュレインを仰向けにさせて、鎌を手から奪い取り遠くへ放り投げた。
「おいおい、死んだ相手に失礼じゃねぇのか、それは」
 赤城はそう言って彼の隣にしゃがんだ。シュレインは頭だけ赤城に向けて、小さな声で言った。
「忠義を護れず、拠り所も失った。もう俺に生きる価値はない」
「バカな事言ってんじゃねえよ。生きる価値なんて生きてりゃその内見つかる。お前、大事な奴が死んだんだろ。考えてみろ、その大事な奴は雲の上でお前を見てて、死のうとするのを快く見れるかよ」
 彼は黙って、赤城の眼ではなく天井を見た。天井の先にある雲を見つめ、更にその先にいる彼女を夢想した。
 目を閉じ、やがて彼は首を横に振った。
「シュレインさん、本当にフランメスに忠義を示すなら、今からでも贖罪に生きるべきではないですか」
 黙りこくっていた彼は、彼女の言葉に「そうだな」とだけ呟いた。
 それは小さな声ながら、しっかりと心に届いたものだ。
「よっしゃ、後はシルヴァーニだな。あいつを何とかしないと俺たちは帰れねえ。シュレイン、奴を止める方法はなんかないのか」
 ――聞き方ってものがありますでしょうに……。
 赤城のフレンドリーな聞き方にヴァルトラウテは呆れた。シュレインは側近であろう男だ。簡単に口は割らないだろう。
 案の定、彼は首を横に振った。しかしそれは、赤城の質問に拒否した訳ではない。
「もうシルヴァーニは止められない。彼の心に宿る復讐心は、私が思いつく如何なる方法を使っても止められなかった」
「あれ、止めようとはしてくれてたの?」
 望月は腕を後ろに縛りながら尋ねた。
「俺なりに……。友人がテロリストになって、止めない友人はいない。お前達だって、親友がテロリストになったら必死に止めるだろう。俺は……彼を止めるために仲間に入った。だが、次第に自分の無力さを知ってしまった。流れるように、自分もテロリストになっていた」
 壁に項垂れるシュレインの肩に、赤城の手が乗った。
「安心しろ。なら俺達が止めてきてやるからよ。ここで待ってろ。行くぜ望月、最後の仕事だ!」
「あいあいさー!」
 ――あいあいさー!
 と、百薬もまた言うが、それは望月の脳内にしか響いていないのである。


 使用人は自らをシェノと名乗ってから言葉を続けた。
「私は、フランメス様に口止めされているので、この子が誰の子供だとかは言えません。でもこの子は確かに、あの家の中核を為していたのです」
「今は何歳なの?」
「八歳になりました」
「じゃあ、バグダン・ハウス……だよね。家にいた頃はまだ赤ちゃんだったのかな」
「はい。この子は人間です。ペーチャは、この子を使ってリンカーと人間との軋轢を解消しようとしました。この子は純粋無垢で、綺麗な心だったからです。今くらいの年齢になればしっかりお話も出来るようになって、人間とリンカーにとって良い存在になると思っていました」
 事件が起きてからペーチャの計画は壊れてしまった。
「どうしてこの子は生存していたのでしょうか」
 アルティラが訊くと、シェノはこう応えた。
「私にも分かりません。私は、ペーチャの親だったのですが――はい、お考えの通り私はあの家を最初期から見守っていましたから、当時のことはよく覚えております。だからこそ言えるのですが、この子が生き残ったのは奇跡でしょう」
「女の子の名前は?」
「モーニャと言います。ですが、この子は自分の名前を知りません。あの事件でこの子は脳にダメージを受けて、一人では生きていけない体になってしまいました。こうして使用人がいないと食事もできず、喋れないのもそのせいです。感情表現も出来なくなりました。フランメス様は、この子を絶対に死なせてなるものかと、この隠れ家に住まわせることにしたのです」
 モーニャは欠伸をして、ベッドに横になった。虚ろだった目は閉じられて、代わりに小さな口が開いた。
「たまに船に乗せて、この子を冒険に連れていくこともしてましたね」
「フランメスはモーニャの事を守ってるんだね。でも、なんでそんなことを?」
「きっと――そういう言い方になってしまいますが、きっと彼にとって唯一心の許せる人間なのでしょう。自分という存在の意味を分からせてくれるのでしょうね」
 隠れ家の中に危険な物はないのだろう。話が終わり、風代は部屋を出ようと扉を開いた。
「リンカーさん、お願いがあるんです」
 風代の背中に、シェノが声をかけた。
「出来れば、フランメス様の命を頂く時は、苦痛なく終わらしてくれると私が嬉しいです。突然現れた女のことを信じろっていうのも無理な話ですが。なので、出来ればで」
「お姉さんに任せといて。そもそも、フランメスの命は落とさせないよ。生きて罪を償ってもらわないと。たくさんの人を殺めてきたんだから」
「ええ。私も、そう思います。リンカーさんがお優しい方で良かった」
 風代は少し照れ気味に笑った。
「じゃあ行ってくるね。朗報を期待してて!」
 外に出た途端、森の風が吹き抜けた。
 うん、大丈夫。嫌な予感はしない。


 数分前――。
 藤咲 仁菜(aa3237)が島に降り立った時、真っ先に目標地点に走り出した。目標地点とはフランメスのいる屋敷の事であり、走っている最中にリオン クロフォード(aa3237hero001)は彼女に言った。
「蛍丸さんが心配で来たのにそっちに行かなくていいの?」
 ドミネーターに関する報告書に目を通していた藤咲には、彼らが戦っている愚神の強さを知っていた。藤咲は自信に満ちた表情をリオンに向けながらこう言った。
「いいの! 蛍丸さん達なら大丈夫って信じてるもの」
 ――蛍丸さんは憧れの先輩で。
 私が辛いときはすぐに気づいて手を伸ばしてくれるのに自分が辛いときはこちらに背を向けて決して涙を見せてくれなかった
 だから今回彼がこちらを振り返って手を伸ばしてくれた時、私は凄く嬉しかったんだよ。
「蛍丸さんは自分の手が届くところは絶対守るよ。だから私は彼の手が届かないところをカバーしに行くの」
「なるほど。言えてるかもしれないな。じゃあ俺たちは俺たちが出来る事をするか!」
「うん! フランメスは自分の為なら何でもするような男、私が皆を守るんだから……!」
 絶対に仲間を傷つけさせない。

 藤咲はコルレオニスを掲げ、彼と対峙した。
 今まで仲間たちを散々な目に遭わせてくれた。今だって。仲間だけじゃない、たくさんの人を殺してきた彼の罪はあまりにも重すぎる。藤咲は彼としっかり目を合わせ、鋭い眉を中央に寄せた。
「初めまして。私は藤咲 仁菜。英雄はリオンです。貴方達のお名前を聞いてもいいですか?」
 花の動きが止まり床に引きずりこまれていく。花はたちまち部屋から姿を消した。
「名前、名前。そうだね、私達に名前は無いんだが、言うなれば、支配者……ドミネーターだ」
「ドミネーター……それは組織の名前だったはずです」
「今やドミネーターは壊滅している。なら、私達がドミネーターと名乗った所でなんの問題がある? それに事実なんだ。なぜなら、もう私達は君達を支配しているから」
 部屋の中にある窓と壁に植物のカーテンが完成した。蔓が部屋を覆いつくしてしまった。
 晴海は藤咲に感謝を告げると、立ち上がり彼女の横に並んだ。九字原もまた武器を構え、三人で彼の前に立ち塞がった。
「間に合ってよかったです……! 二人とも、お怪我は大丈夫ですか」
「ええ、問題ありません。本当に助かりました――藤咲さん、でしたよね。彼は今、視力を失っています。その分聴覚が研ぎ澄まされているので、音には十分に注意してください」
「了解しましたっ」
 けたたましく銃声が鳴り響いた。彼が乱雑に銃を撃ったのだ。
「銃はもう必要ないから、もう捨てよう。後は私達の力だけで十分だ。さて、じゃあ私達は君達に素敵な死をプレゼントしてあげようかな。安心して、苦痛は与えない。私達は恨んでいる訳じゃないから、フランメスと違って」
 藤咲は首を少しだけ傾げた。
「フランメスは、今どこにいるのですか」
 床から突如、蔦が伸びてきた。藤咲は反応に遅れたが、晴海は銃で蔦を弾いた。
「言ったろう? 私達はドミネーターだと。分かり切った答えを求められるのは好きじゃない」
 晴海は銃をドミネーターに向け、弾丸を放った。銃弾がドミネーターの顔面に着弾する前に蔦が伸び、先端の輪で銃弾を締め付け粉々にした。
 無暗に突撃すれば、返り討ちにあうだろう。今の一撃が三人に全てを教えた。
「じゃあ聞きます。ドミネーターさん、あなたの目的はなんなんですか。私の仲間を傷つけて、何がしたいんですか……!」
「私達は宿命づけられた。人間を破滅させることだと。いいかい、君達が思っているほど社会というのは正義じゃない。表には必ず裏の存在がいる。一見平和に見える物は、作られたものであり自然ではない。人間も動物だ。私達は様々な人間に寄生し、人間を破滅ではなく正しい道へと歩ませるよう努力してきた」
 ドミネーターは手を前に掲げ拳を作ってみせ、手を開けるとそこからは黒い花びらが舞い落ちた。
「私達はそこで、裏の存在を知った。この裏がいる限り、世界に秩序が訪れることはない。しかし表がある限り、裏がいる。私達はその矛盾に苦しみ、嘆いた。私達が一番嘆いたのはバグダン・ハウスでの事件だ。藤咲ちゃん、君はその事件についてどれくらい知っている?」
「組織であるドミネーターの事件は追ってきました。なので、相応には頭に入れています……」
「晴海君と、九字原君も知っているはずだね。あの事件を切っ掛けに、私達はシルヴァーニに寄生した。シルヴァーニは強い野心と、復讐心に燃える男だった。私達は彼と誓約を交わし、永遠の復讐を世界に誓った。ただ私達は人間を侮っていたらしい」
 ドミネーターは口を閉じ、黙った。言葉を選んでいるように、人差し指を額に当てている。額から指が離れて、彼は再び言葉を紡いだ。
「私達を倒そうとする正義の心に厭いはない。だから私達は君達に殺されたとしても、それが宿命だったと諦める。だけどね……、だからといって、私達は自分の宿命を全うするつもりで行くよ。絶対に負けるものか」
 自分達の宿命のために人を殺し、仲間を傷つけた。藤咲は憤りを心に宿していた。
 コルレオニスが輝き、藤咲に勇敢を与える。
 彼女は恐怖と不安を押し殺し、駆け出した。勢い付いた彼女は咲いた花を斬り、何度も斬り、ドミネーターと距離を縮めた。晴海と九字原も同時に動き、彼を左右から詰めた。
 伸びる蔦を晴海は避け、九字原は斬る。ドミネーターの攻撃手段は既に把握した。
 コルレオニスはドミネーターの腹部を突いた。その時、彼の身体から落ちてきたのは血ではなく、紅葉だった。真っ赤に染まった紅葉は地面に落ちて行く。貫いた剣は深々と刺さるが、ドミネーターはその不敵たる微笑みを壊さなかった。
 堕ちた紅葉が緑色に染まり、藤咲の脚に突き刺さったのだ。
 左右から伸びた刃は彼の腕から生えた木に食い込み、破裂した木が二人を遠ざけた。コルレオニスが突き刺さった彼は、痛みに吐息を漏らした藤咲の頬に手を添えた。
 足に蔦が巻き付いていて、動けない。
「可愛いお嬢さん。私達の養分になるには、つり合いの取れたお嬢さん」
 ドミネーターの片手が剣へと変貌した。切っ先を藤咲の首に合わせている。その腕はしかしハングドマンが拘束し、晴海が腕を切り落とした。
 堕ちた腕は葉となり、ドミネーターは再び腕を生やした。
「藤咲ちゃんに、とっておきの殺し方を教えてあげよう。私達は、キスという神聖な行為を疎かにはしない。それは愛情を表現するには打ってつけの行為だ――例えば、私達が今、ここにいる人間とキスをしたとする。その数秒後、その人間の体内には花が咲き、息絶えるだろう」
 負けじと藤咲も、強気の表情を覆さない。ドミネーターの顔が近づいてくる前に蔦を剣で斬り、遠ざけた。
 三人とも並び、彼と対峙する。
「たった今連絡が入りました。ジェシーが撃破されたと。フランメス――いえ、ドミネーター。貴方の終焉が近づいていることを教えなければならないでしょうね」
 ドミネーターは強かに笑みをこぼし、両手を広げた。
「さあどうぞ。私達の終焉を見届けてください。出来るものならば」
 藤咲は九字原と晴海の傷を癒し、最後に足の傷を癒した。絶対に負けない。


 ジェシーの亡骸に黙祷していた橘に、黒金が近づいた。肩に手をかけようと伸ばしたが、すぐに引っ込めなければならなかった。
 ――蛍丸様……。
 詩乃(aa2951hero001)の不安気な声は黒金に届いていたが、彼は答えられなかった。
「由香里さん、少しだけ……いいですか」
 黙祷を終え、橘は彼に顔を向けた。その表情は、瞳は曇っていた。
「どうしても言わなければならない事があります。本当は今言うつもりだったのですが、フランメスを倒したら……にします」
 今すぐ言いたいことがあった。リンゴを食べて、黒金は全てに気付いたのだ。
 でもきっと、橘は今言われたいと思わないだろう。だから黒金はちょっとだけタイミングをずらすことにした。
 全てが終わったら言おう。
「ええ、分かったわ」
 氷鏡達は屋敷に向かって歩き始めていた。黒金も、彼女たちの後ろを追うように歩き始めた。
 この長い、長い物語を終わらせなければならない。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
    機械|17才|女性|生命
  • 解放の日
    ジスプ トゥルーパーaa0575hero002
    英雄|13才|男性|バト
  • リベレーター
    晴海 嘉久也aa0780
    機械|25才|男性|命中
  • リベレーター
    エスティア ヘレスティスaa0780hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • 南氷洋の白鯨王
    オールギン・マルケスaa4969hero002
    英雄|72才|男性|バト
  • 鋼の心
    風代 美津香aa5145
    人間|21才|女性|命中
  • リベレーター
    アルティラ レイデンaa5145hero001
    英雄|18才|女性|ブレ
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