本部

It's raining

花梨 七菜

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~6人
英雄
4人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/06/05 22:11

掲示板

オープニング

●梅雨の季節
 連日、雨の日が続いていた。
 空だけでなく、人の心までどんよりしてしまうようなそんな季節。

 小学校の授業が終わり、校門から傘の群れが飛び出していった。最初は多かった傘の数が、学校から離れるにつれて一つ二つと減っていった。
 あと数分で家に着くというところで、小学一年生のミカは、立ち止まった。目の前には、道幅いっぱいに広がった大きな水たまり。
「どうしたのー?」
 サアヤは、ミカに声をかけた。サアヤは小学三年生。年下の子が困っていたら、助けてあげるのが務めだと心得ている。
「水たまり……」
「大丈夫だよ。長靴履いているんだし。ゆっくり歩けば、水は跳ねないよ」
 サアヤは、お手本としてゆっくり水たまりに足を踏み入れた。
 ぐにゃあ。
 長靴ごしに、水ではない感触が足の裏に伝わってきた。
 サアヤは後ずさりしようとしたが、足が動かない。
「え? 何これ」
「見て!」
 ミカが、サアヤの長靴を指差した。サアヤのピンク色の長靴から、シュワシュワと泡が出ていた。
「助けて!」
 サアヤは傘を放り出して、ミカに手を伸ばした。ミカも傘から手を放して、サアヤの手をつかんで思いっきり引っ張った。
 サアヤの長靴がぬげて、サアヤとミカは雨に濡れた道路に倒れた。
 サアヤとミカは起き上がって、水たまりを見つめた。
 水たまりに残されたピンク色の長靴は、泡立ちながら溶けていった。

●スライム退治
 H.O.P.E.敷地内のブリーフィングルームで、職員が説明を始めた。
「住宅街の道路にスライムが出現しました。ミーレス級従魔だと思われます。小学生の女の子が襲われましたが、幸いなことに怪我はしていません。発見時の大きさは、2m×3mで、無色透明です。一見したところでは、水たまりに見えるそうです。現在、現場の道路は通行止めになっており、警察官が従魔を監視していますが、従魔が近隣の住宅に逃げ込む恐れがあります。従魔の討伐、よろしくお願いします。雨に濡れてしまうと思いますが、風邪をひかないように気をつけてくださいね」

解説

●目標
 従魔の討伐

●登場
 ミーレス級従魔 × 1体。
 スライム。
 不定形。発見時の大きさは2m×3m。
 スライムにしては動きが速く、偽足を出して相手を捕まえて、溶かして食べる。
 攻撃時、BS【減退(1) 】付与。

●状況
 雨天。午後三時頃。
 ミカとサアヤは、近所の家に逃げ込み、H.O.P.E.に通報後、遠回りして自分の家に帰っている。
 従魔が発見された道路は通行止めになっている。
 警察官が従魔を監視している。
 従魔は自由に形を変えられるので、隙間から住宅等に入り込む恐れがある。

リプレイ

●H.O.P.E.本部にて
 エージェント達はブリーフィングルームを出ると、戦闘の準備を始めた。
「怪我はなかったようだが、ガキ共に手を出した以上……」
『……ん、オシオキ確定……覚悟して、ね?』
 麻生 遊夜(aa0452)の言葉に続けて、英雄のユフォアリーヤ(aa0452hero001)は言い放ち、尻尾をゆらゆらさせた。遊夜は、孤児院を経営する青年である。ユフォアリーヤは、腰元近くまである長い黒髪と気だるげな瞳、ピンと立った狼耳とふさふさな尻尾が特徴的な半人半獣の少女である。息の合った二人は夫婦であり、ユフォアリーヤのお腹の中には二人の愛の結晶が宿っている。
「今は本当に大事な時期だからな」
 遊夜は、ユフォアリーヤに雨合羽を着せ、ピンと立った狼耳にフードをかぶせて言った。タオルと着替えも準備しており、雨の対策は万全である。
『……ん、準備は万端……大丈夫、大丈夫』
 ユフォアリーヤは、大きくなったお腹を撫でながらクスクスと笑った。

「従魔に小学生が狙われるなんて……由々しき事態ですね」
 月鏡 由利菜(aa0873)は眉をひそめて言った。由利菜の隣に立つのは、英雄のリーヴスラシル(aa0873hero001)である。二人は、姫君と女騎士の間柄であり、深い愛情で結ばれていた。
『不定形は狭い隙間へも潜り込んでくる。……その界隈のほぼどこにでも行けると言うことだ』
 リーヴスラシルの言う通り、一般人が家の中にいても従魔に襲われる危険性がある。早急な対応が必要であった。
「話によれば、従魔は水たまりのように見えるとのことですが……」
『この雨では、本物の水溜りの中へ混入されると見分けが困難だ。マスクの感知能力を使う』
 リーヴスラシルは、従魔感知力を上げるために神経接合マスクを準備した。
「排水溝の中へ潜伏している可能性もありますよね……」
『気をつけなければならないな』
 武器としては、イリヤ・メックを装備して、減退のバッドステータスを防ぐことにした。
「恐らく、一般的なスライムの攻撃は物理属性のはずですが……」
『……汎用性が高い仮面は、マスクと装備部位が被る。同時には使えん』
 リーヴスラシルはよく考えて、最適な装備を整えた。

「水溜りに擬態か。お約束だとゴムは溶かせないよね」
 餅 望月(aa0843)が呟くと、英雄の百薬(aa0843hero001)は言った。
『長靴が溶けてなくなったみたいだよ』
「さっそく論破。いや実戦前に気が付いてよかったよ」
 望月は、元気な普通の女の子である。百薬は、自称天使の少女である。羽根はあるが、羽ばたいてもすぐ落ちる。
『従魔は何でも溶かしちゃうんだね。誰かさんのお腹みたい』
「うん。誰のだろう」
 望月は百薬に言い返しつつ、H.O.P.E.職員から油性インクをもらった。
「色つけちゃえば水溜りでも見えるでしょ」
『溶ける前に倒しちゃえばいいしね』
「そういうこと」
 幸い大怪我をした人はいないようなので、被害が出る前に従魔を倒してしまおうと望月は決意した。

『雨、止まなかったわねぇ。濡れるの嫌なんだけど』
 英雄の蒲牢(aa0290hero001)は、窓越しに降り続く雨を見つめて言った。蒲牢は、美しい「おネエ」という印象を周りに与える人物である。
「視界が確保出来れば問題ない」
 鯨間 睦(aa0290)は、冷静に言った。睦は、常に厳めしい顔をしている無口な青年である。
 睦は、従魔のマーキングのために強盗対策用のカラーボールを準備した。コンビニエンスストア等に置いてある物で、蛍光オレンジ色がよく目立つ。
『では、参りましょうか』
 蒲牢は、妖艶に微笑んだ。

●現場到着
 エージェント達は、現場に到着した。
 レインコート姿の警察官が敬礼して、状況説明をした。
「水たまりに特に怪しい動きはありませんでした。雨のせいで、当初よりも水たまりが大きくなっています」
 エージェント達は、礼を告げてから警察官に退避してもらった。
 エージェント達の目の前には、道幅いっぱいに水たまりが広がっており、どれが従魔でどれが単なる雨水なのか、見た目では判断できなかった。

 遊夜は、ユフォアリーヤと共鳴した。狼耳とふさふさの尻尾が生えて、20代前半まで若返った遊夜の姿となり、義眼が紅く輝いた。
 望月は、百薬と共鳴した。望月の背中に大きな羽がついた。羽があるものの、百薬同様飛べるわけではない。

 望月は、ライヴスゴーグルを使用した。もやもやとしたライヴスの流れが、水たまりの上に浮かび上がった。
「一度見つけてしまえばこっちのものです」
 望月は、そう言って、仲間に従魔の位置を知らせた。
 一方、遊夜は、レーダーユニット「モスケール」を起動した。ゴーグルに従魔の位置が表示された。遊夜は、望月と位置情報を補完し合いながら、情報を仲間と共有した。
「逃がさないように、四方から近づいて囲むのがよさそうだな」
 遊夜はそう提案した。
「そうですね。分裂して逃がしたりしないように、取り囲んで包囲しましょう」
 望月は頷いた。
「俺は、向かって右側の家の屋根から従魔を狙う」
 ジャックポットは基本的に遠距離からの攻撃を得意としているので、遊夜は少し離れた場所から従魔を攻撃することにした。
『あたし達は、左側から行きましょう』
 蒲牢がそう言って、睦は左側の家から従魔を狙うことにした。
『回り込みか……承知した』
 リーヴスラシルは言った。由利菜とリーヴスラシルは、従魔の向こうに回り込むために遠回りにはなるが他の道を選んで走っていった。
 それぞれ所定の位置についた。由利菜は水たまりを挟んで望月と向かい合う場所。遊夜と睦は、住民の了解を取って道の両側の家の屋根と塀に陣取った。
 由利菜は、リーヴスラシルと共鳴した。リーヴスラシルのライヴスが、主君の由利菜を守る美しい光の鎧と姫冠を紡ぎ、幻想蝶は通常時のミヤマカラスアゲハ風の髪飾りから、胸部の赤い宝石『ノーブル・ルビー』へ変化した。
 由利菜は、リンクコントロールを使用してリンクレートを上げた。
「向こうから寄ってくれば探す手間が省けるのですけれど……」
(住人が狙われるのも避けたい。守るべき誓いを立てよ、ユリナ)
 リーヴスラシルの言葉に頷くと、由利菜は、守るべき誓いを発動した。
「敵は推定ミーレス級が1体、無色透明なのが厄介だが……」
 遊夜が呟くと、ユフォアリーヤは、こくりと頷いた。
(……ん、各々の……最大火力による殲滅が、最も効率的)
 遊夜は、ガトリング砲を構えた。一撃で従魔を仕留めてやろうと遊夜は気合いを入れた。

●透明な従魔
「では、行きますよ」
 望月は、ライヴス通信機で仲間に告げてから、油性インクを従魔に投げつけた。黒いインクがバシャッと広がった。
 望月とタイミングを合わせて、睦はカラーボールを投擲した。カラーボールは従魔にぶつかると、バウンドしてコロコロ転がった。破裂しない……。失敗かと一瞬思われたものの、従魔は偽足を出してカラーボールを自らの内部に取り込み押しつぶした。オレンジ色の染料が、従魔の内部に広がった。
 黒色とオレンジ色の斑模様は、スルスルと滑るように動き、普通の水たまりとの違いが明確になった。

●戦闘開始
「住宅地で火や雷を起こせば、物的損害が出そうですから……」
 由利菜は、戦闘による被害を心配してそう言った。
(私達にとっては、密着して呪符を放つ方が止める確実性は高い。踏み込むぞ)
 リーヴスラシルの言葉に、由利菜は「はい」と頷くと、従魔に近づいて呪符「白冷」を使用した。無数の小さな冷気の弾丸が呪符から放たれ、従魔をひるませた。由利菜は、剣に持ち替え、一気に攻撃を加えた。由利菜が剣を振るう度に、純白の浄化の光が剣からあふれた。
「今出来る最大の一撃だ、受け取りな!」
 遊夜は、シャープポジショニングを使用してから、ブルズアイを発動した。高精度の射撃により、弾丸が雨あられと従魔に降りそそいだ。従魔の体が飛び散った。
(……ん、いっぱいお食べ)
 ユフォアリーヤはクスクスと笑った。
 睦が最も警戒しているのは、従魔が近隣の住居へ侵入することであった。睦は、塀の上から従魔の逃げ道を塞ぐように従魔の側面に射撃を行うことにした。
 睦は、蒲牢と共鳴した。睦の髪の色が蒲牢に近い薄い青に変化した。
 周囲の住居へ被害が出ないように、睦は精神統一して集中力を高め、射手の矜持を使用して慎重に狙いを定めた。
(カラーボールでもうどろどろなんだから細かいこと気にしないでいいんじゃなぁい?)
 蒲牢が軽い調子で言った言葉に、睦は無言で応えた。
「……」
(はいはい、分かったわよ。安全第一。むっちゃんは気配り出来るいい子だものねぇ)
 睦は、蒲牢のからかいには反応せずに、冷静に集中して銃弾を放った。銃弾が、従魔の体をえぐった。
「従魔が巨大化しないか気になりますが、火力で押し切りましょう」
 望月はそう言って、白銀の槍で従魔を攻撃した。
 エージェント達による一斉攻撃に、従魔はいったん動きを止めたが、怒りの矛先を一番近くにいた人物に向けて襲いかかった。由利菜である。従魔のねばつく偽足が、由利菜の足に絡みついた。由利菜は、若干のダメージを受けたものの、イリヤ・メックによって減退のバッドステータスは免れた。
 由利菜は、従魔の攻撃に臆することなく、ライヴスリッパーを使用して従魔の動きを止めた。
 睦は、従魔を射撃して、由利菜の支援を行った。
「大丈夫ですか?」
 望月は、由利菜に声をかけてケアレイを放った。
「大丈夫です。ありがとうございます、望月さん」
 由利菜は、微笑んで言った。

●雨の中の戦闘
 そぼ降る雨の中で、戦闘は続いた。
 従魔につけられた黒色とオレンジ色が、次第に薄くなってきた。神経接合マスクで視覚を強化している由利菜が、いちはやくそのことに気づいた。
「従魔の色が落ち始めています。みなさん気をつけてください」
 由利菜は、ライヴス通信機で仲間に注意を促した。
 睦は、従魔が塀の隙間から住宅に入り込もうとしているのを発見した。睦は、従魔の逃げ道を潰すために、ファストショットで敵の進行方向へ先制攻撃を行った。なおも逃亡の動きを見せる従魔に対して、睦は手持ちのブラッディランスで地面ごと突き刺し、少しでも動きが止められないか試した。従魔にダメージを与えることはできたが、動きを止めるまでには至らず、従魔は槍を避けて流れ出した。
(こういうの最近どっかで見たのよねぇ……あぁ、あれね。水みたいにプルプルのお餅……なんていうのだったかしら?)
 蒲牢が、従魔の動きを見てのんきにそんな感想をもらす。
(従魔って美味しいのかしらねぇ?)
「……食べるのはやめておけ」
 睦は素っ気なく言って、従魔の動きに目を凝らした。何か核のようなものが従魔の体の中に見えないかどうか調べたが、特に核らしきものは見つからなかったので、従魔の体の中で住居に近い方を集中的に攻撃して、従魔が住居に侵入しないように努めた。
 従魔は、由利菜に襲いかかったり、壁や塀を這い上ろうとしたり、激しい動きを見せた。
 遊夜は、従魔の物理防御力が高いことを危惧して用意してあった魔導双銃「シルバーブレッド」を取り出し、ファストショットを使用した。白銀色の聖なる輝きを纏った弾丸が、従魔に命中した。
 従魔は、ペチャっと地面に広がり、水たまりの中に消えた。息絶えたかのように見えたが、そうではなかった。よく見ると、透明な液体がするすると望月の横の地面の上を動いて逃げようとしている。
「往生際が悪いですよ」
 望月は、槍で従魔に攻撃を加えた。
 遊夜は、住宅の屋根から飛び降りると、塀にのぼった。
「ラジカセか、アスピスか、クレヨンか……」
 むむむ、と遊夜は何を従魔に投げ込むか迷った。従魔につけた色が落ちてしまったので、何かを従魔に投げて視認性を高めようと考えたのである。
(……ん、重量物……金属、色物……どれが長持ち、かな?)
 ユフォアリーヤは、首をかくりとさせて呟いた。
「個人的には金属が一番溶けにくそうだが……」
 遊夜が逡巡していると、従魔は塀をのぼって遊夜に近づいてきた。遊夜は足で従魔を蹴散らした。一瞬触れただけだが、靴の爪先が少し泡立った。
「これ、偽足に捕まえられたら服とかやばそうだな。身体の方も大惨事だろうが、素早く助けてもそれはそれで問題になりそうな予感……! って、そんなことを考えている場合ではなくて」
 遊夜は、ごくりと唾を飲み込むと、「えーい、全部のせだ!」とラジカセ、アスピス、12色クレヨンを従魔の体の上にばらまいた。
 従魔が動くたびに、ラジカセ等が一緒に動くので、従魔の動きがわかりやすくなった。
(もっと近づいて攻撃だ)
「わかりました」
 リーヴスラシルの言葉に応えると、由利菜は従魔に接近して、剣で斬りつけた。姫騎士の華麗な剣技に、従魔は後退した。
 従魔は、塀によじ登って睦に接近した。睦はいったん引いて、銃の間合いを潰されないようにしながら、従魔に銃弾を放った。
 従魔は、道路の中央へと戻っていった。
「これでもくらえ!」
(……ん、魔法の弾丸は、お好き?)
 ユフォアリーヤはかくりと首をかしげた。遊夜は、塀の上から魔導双銃で従魔を銃撃した。
「そろそろおしまいですね」
 望月は、ライヴスゴーグルで従魔が小さくなったことを確認すると、パニッシュメントを使用した。天使のような姿の望月の手から、鋭いライヴスの光が放たれ、従魔を撃った。
 水たまりの表面は静まりかえった。
 従魔が今度こそ本当に息絶えたことを確認すると、エージェント達は共鳴を解いた。
「終わったか? ……やれやれ、結構な難敵だったな」
 遊夜は肩の力を抜いて呟いた。
『……ん、地の利……天候は、あちらにあった……疲れたー』
 尻尾しんなりになったユフォアリーヤは呟いた。
「お疲れ様。大丈夫か? 具合は悪くないか?」
 遊夜はそう言って、ユフォアリーヤの身体をタオルでくるんだ。

●風邪をひかないように
 雨はようやく止んだが、分厚い雲が空を覆い、いつまた降り出すかわからない空模様だった。
 蒲牢は、雨に濡れてしまったのに全く気にしていない睦の頭にタオルを被せた。
『風邪をひくって言われたでしょう? まったくむっちゃんは手のかかる子よねぇ』
 蒲牢は、睦の髪をタオルドライしながら言った。
「問題ない」
 睦は、表情を変えずに言った。
『問題大ありよぅ。だって、むっちゃんが元気じゃないと……従魔や愚神をたくさん殺せないじゃなぁい?』
 蒲牢は、艶やかに微笑みながら言った。
「……」
 それが本心か、とあきれつつ、睦は、黙って立ったまま、蒲牢が髪を拭き終わるのを待った。

『濡れたから温泉いきたーい』
 百薬は、行きたい行きたいと望月の服を引っ張った。百薬ご自慢の羽根も、雨で濡れてしまっていた。
「移動してる間に風邪ひいちゃうよ。でもスーパー銭湯くらいなら近くにあるよねきっと」
 望月はそう言って、スマートフォンでスーパー銭湯の場所を探し始めた。

 遊夜は、水たまりにつかっているラジカセとアスピスを拾ってタオルで拭いた。この二つは、溶けることなく無事であった。12色クレヨンのほうは、全部溶けてしまった。
「クレヨン買っておかないとな」
『……ん、子供達……絵を描くの、好きだから』
 ユフォアリーヤは、孤児院で待っている子供達の顔を思い浮かべて微笑んだ。

 由利菜は、従魔に襲われた子供達の様子を見に行くことにした。
 由利菜は、まずミカの家を訪れ、ミカに話しかけた。
「従魔は退治しましたから、もう安心してください」
「……うん、ありがとう。でも、大丈夫かなぁ。明日、ちゃんと学校行けるかなぁ……」
 ミカは、不安そうな顔で言った。
『従魔に襲われた時に、サアヤ殿の手を引いて助けたのだろう? その勇気があれば、大丈夫だ』
 リーヴスラシルが励ますと、ミカは恥ずかしそうに微笑んで「うん」と頷いた。
 由利菜は、次にサアヤの家を訪ねて、サアヤに従魔を討伐したことを伝えてから言った。
「すぐに逃げてH.O.P.E.に通報してくれたのは、良い判断でした。さすがお姉さんですね」
『これからもミカ殿と仲良く、な』
 リーヴスラシルの言葉に、サアヤは「はーい」と嬉しそうに応えた。
 子供達の心にそれほどダメージが残っていないことを知って、由利菜はほっと胸をなでおろした。

「あ、由利菜ちゃん」
 由利菜がサアヤの家を出ると、遠くで他の仲間と何やら話している様子だった望月が、由利菜に向かって手を振った。
「今、皆と話していたんだけど、近くにスーパー銭湯があるんだ。これから一緒に行かない?」
「いいですね。行きます」
 由利菜は、微笑んで言った。
「遊夜さん達も行くんですね。ユフォアリーヤさんは大丈夫ですか」
 由利菜は、少し疲れているように見えるユフォアリーヤに気遣わしげな顔を向けて言った。
「本人が行きたいって言ってるからな。心配してくれてありがとう」
『……ん、行く……あったまりたい……お風呂で暴れたり……しないから』
「暴れられたら困るな」
 遊夜とユフォアリーヤは視線をかわして微笑んだ。
『もちろん、あたし達も行くわよぅ。いいわよね、むっちゃん』
 蒲牢は、睦に向かって微笑みかけた。
「……」
 睦は無言だったが、結局皆でスーパー銭湯へ行くことになった。
 雨で濡れた身体を銭湯でしっかりと温め、エージェント達はほかほかになって、帰路についたのだった。
 幸いなことに、エージェント達が家に着くまで雨が降り出すことはなかった。

 後日談。
 エージェント達は、誰も風邪をひかなかった。
 ミカとサアヤは、元気に学校に通っている。
 これにて、任務完了。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • エージェント
    鯨間 睦aa0290
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873

重体一覧

参加者

  • エージェント
    鯨間 睦aa0290
    人間|20才|男性|命中
  • エージェント
    蒲牢aa0290hero001
    英雄|26才|?|ジャ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
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