本部

レイズ!!

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/05/30 15:45

掲示板

オープニング

● それは賭博場

 とある地方の首都に賭博場があるという。
 そこでは捕らえたリンカーたちを日夜戦わせるという見世物が行われていた。
 霊力を使った大迫力のバトル。
 それに伴って一対一の戦いで誰が勝利するかを賭ける簡単なもの。
 ただこれは確実に違法。逃れようのない反社会行為。
 ただ、H.O.P.E.が調査してもバックはつかめず、警察が調査するとヴィランズと思われる部隊に一掃される。
 捜査はうまくいってなかった。
 これを解決するために警察側では許されていない、おとり捜査をH.O.P.E.側で行うことにした。
 指令官アンドレイは語る。
「これはH.O.P.E.独断の作戦ということになり、さらに秘匿情報だ。詳細を外部に漏らすのは厳禁。社会的混乱を招くことになる」
 社会的悪を行うわけではないが、おとり捜査自体には問題がある。
 ただ、それを言っていられる悠長な場面ではないのだ。
「H.O.P.E.に課せられた使命は三つ。賭博の証拠をつかむための顧客名簿探し。ボディーガードと思われるヴィランズの撃破。そして黒幕、もしくは幹部クラスの人間を引きずり出して捕らえること」
 告げるとアンドレイは地下闘技場の画像を画面に表示する。
「これから作戦を説明する」


● 要は八百長
 今回戦闘目標が二つ。
・『紅蓮』と呼ばれるグラディエーターの撃破
・『ボディーガード』と呼ばれる黒幕を守護するヴィランの撃破

 確保目標も二つである。
・黒幕もしくは、幹部候補の身柄の確保
・顧客リストの確保

 今回はまず、グラディエーターと呼ばれる闘技場で戦うことを専門とした戦士と戦闘をしていただきます。
 ただ、この戦闘は一対一なのでリンカーを一人選出してください。
 対象の『紅蓮』については特徴を後述します。
 その際に他の客として潜入した皆さんは多額のベットをしてください。
 H.O.P.E.側リンカーが勝てば軽く賭博場が干上がりそうなほどの額です。
 そのお金はH.O.P.E.から貸し出されているので。皆さんの懐から出るものではありません。
 また、この時得られた配当金の額によって、皆さんに対応するボディーガードの数と、出てくる黒幕の階級が変わります。
 つまり配当金を高くするなら、『紅蓮』と戦うリンカーは自身を弱そうに見せなければなりません。
 そうして高い倍率になればより多くの配当金をもらうことができるので、闘技場運営側はより多くのボディーガードを派遣して皆さんをボコボコにし、その配当金をうやむやにしようともくろむのです。
 この時点でヴィランズ側にH.O.P.E.の潜入はばれています。
 なので残りの幹部連中は逃げようとするでしょう。
 逃げようとする幹部たちを捕えることができればよいのですが。
 難しい場合は、『ボディーガード』指揮のために出てきた幹部を捕まえることと。
 幹部たちが詰めていた執務室から資料を盗んできてください。
 それが今回のシナリオの流れです。
 

● 位置関係について。

 闘技場はよくある、ドーム型の会場に似ています。急な角度に並べられた椅子。闘技場を見下ろすことができる作り、その中で。一番見えやすい、天上に近い位置にはVIP席。
 闘技場自体は半径35SQの円状。
 ここはガラス張りで厳重な警備が敷かれています。
 そのVIP席に隣接する形で執務室が存在し。
 平常時ではこのあたりをボディーガード最低三名がうろついています。

● PL情報
 闘技場内に存在する『ボディーガード』の数は15です。
 配当金が高ければ高いほど、闘技場に出てきてリンカーたちと戦います。
 最低でも半分は闘技場に出てくるでしょう。
 この時指揮を行うために幹部の誰かは出てきます。
 闘技場に出てしまえば、皆さんなら捕えられると思うのですが。
 他の幹部(人数は不明)が執務室でふんぞり返っています。
 ここから逃げる幹部を捕まえても、持ちだそうとした資料を確保できると思いますが、ボディーガードの人数によっては逃げられることもあるでしょう。

**************************ここまでPL情報

解説

目標  
・黒幕もしくは、幹部候補の身柄の確保
・顧客リストの確保

『紅蓮』
 二十一歳くらいの青年。日本人っぽい。
 ぼろぼろの髪、傷ついた頬。精神的に不安定なのだろうか、視線が泳いでいる。
 おそらくこの闘技場で飼い殺しにされているリンカーだと思われる。
 契約している英雄のクラスはドレッドノート。
 紅蓮自体は命中適性。
 武装は攻撃力と言ったステータスは劣るが。射程だけはある大きな柱。
 なんと近接武器なのにもかかわらず射程は15SQ。
 電柱柱のような物を想像してほしい。 
 使用するスキルは一対一戦闘に特化しているスキルばかり。
 闘技場では割と名前の通った戦士である。本名は不明。
 


『ボディーガード』
・カオティックブレイド型
 広範囲を守ることに特化した性能。
 主武装は小型盾と小型銃で小回りが利くようになっている。
 防御能力は充実しているが武装は物理低火力の拳銃のみ。
 仲間のボディーガードを守ることに特化している。

・ブレイブナイト型
 単体を守ることに特化した性能。
 主武装は長剣と盾。
 白兵戦を重視している。
 カバーリング系技能が充実しているので邪魔になりやすい。
 幹部を守ることに特化している。

リプレイ

プロローグ
 その暗がりの向こうからでも熱気は伝わってくる。
 違法賭博場の明りが下水の通路、その先からもれ、チラチラと陰るのは通行人の影か、今日も大繁盛らしい。
 その様子と熱狂を見て『アリア・シュタイン(aa4581)』は苦々しげに唇をかみしめた。
「どこの組織の連中か知らんが、従魔や愚神が跋扈しているときに違法賭博とは…………ある意味我々リンカーが負けないと信じているのだな」
 そんなアリアをなだめるのは『ソフィスト レヴィアタン(aa4581hero001)』。
――お、落ち着くのじゃぞ! 初依頼とはいえ、わらわがいれば成功間違いなしなのじゃ!
「…………お前が落ち着け」
 対して暗がりの中でフードを目深にかぶり、震えているのは『無明 威月(aa3532)』である。
 そのか弱い姿を隠すために共鳴。『青槻 火伏静(aa3532hero001)』の姿ではあるが、最初の勇姿はどこへやらである。
――おう、威月帰るか?
 そんな火伏静の言葉を威月は首を振って否定した。
 怖い。のだが。
 『捕えたリンカーを戦わせる』と言う事は自分のような境遇の者も居るという事だと強く考え。見過ごせないと思った。
 己としても、暁としても、今回の事件、解決して見せると誓った。
「この先だね」
 そんなリンカーたちを先導するのは『御童 紗希(aa0339)』。彼女はライトをかざして地図を見る。
 下調べでできる限りの内部構造は把握していた。
 このルートから客に紛れれば捕まることはないだろう。
 そう紗希は『カイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)』と共鳴し突入の準備を整える。
 イメージプロジェクターで変装。
 左目に眼帯。そして場に不釣り合いなほどの豪奢なゴスロリ衣装。
 一行はそんな会場に紛れると各々の待機地点に向かった。
 そしてスタジアムに入ったならすでに試合が始まっている。それはお目当ての試合ではなかったのだが。ないだけに悪趣味感だけが伝わってくる。
 その様子、剣闘士たちもだが、客の様子にも『ジェネッサ・ルディス(aa1531hero001)』は苦言を呈する。
「人の生き死にを見世物にする、か。あまり感心はしないね」
 『無月(aa1531)』はそれに頷いた。
「命を弄ぶ行為を見過ごす訳にはいかない」
 愚行は今日で終わらせる。そう潜ませた刃に誓う。
「ボクは人間はできる限り殺すなって覚えているけどー」
 『イリス・レイバルド(aa0124)』が告げる。
 『アイリス(aa0124hero001)』がその言葉に答えた。
――ああ、H.O.P.E.の方針だね。
「これって人によって結構違うよね」
――殺しには緩い割に拷問には厳しかったりね。
「微妙な依頼だし、できるだけ人死には出さないようにお願いね」
――イリスの頼みだ。ならば私は力を貸すだけさ。
 初期配置に全員が付いたことを確認次第紗希はトイレにこもりモスケールを機動。
 ヴィランズの配置を確認して全員に状況を説明した。
「アークェイドさん達大丈夫かな……?」
――問題ねえだろ。
 しかしカイは別の心配をしている。
 作戦に赴く前の彼女らのひとみの輝き、あれは…………。
 カイは眉をひそめる。そのお目当ての試合が今始まろうとしていた。

第一章 剣闘士

 本日の第二試合が終わりを告げた。戦場の真ん中には血の華が咲き。勝った剣闘士もぼろぼろだ。
 それを見つめて『伊邪那美(aa0127hero001)』は声のトーンを低くする。
――ひどい。
 『御神 恭也(aa0127)』が答えた。
「現在のコロッセオか…………悪趣味だな」
――人の生死を賭け事にするなんて、おかしいよ。
 運ばれていく剣闘士と呼ばれるリンカーたち次いでその檻の中に投入されたのは紅蓮と呼ばれる青年。その武器である大きな柱がコロッセオに投げ入れられる。
 そして対戦者として対岸に放り込まれたのは『Iria Hunter(aa1024hero001)』である。
「きたか」
 恭也の視線がIriaへとむく。
 その姿は口に運ばれる前のネズミと言った様子だった。
 黒のコートは真新しく体に不釣り合いなほどに大きい。入場後、観衆の完成の前で怯え。コートに包まったまま震えて縮こまっていた。
「おい、おまえ」
 紅蓮が歩み寄る。
「やる気あんのか」
 そう紅蓮がコートを引っ張り始めるとたまらずIriaはコートにしがみつき、泣きはじめた。
 大衆はそれを嘲笑いながら眺め、そして賭けていく。
「おいおいおいおい! なんだその糞行動はよ! もっと楽しませてくれよ」
 そう一際高く強い声が会場に木霊した。
 威月が視線を走らせてみるとそこには『火蛾魅 塵(aa5095)』がふんぞり返っている。
 片手にドリンク、『人造天使壱拾壱号(aa5095hero001)』がちょこんと小脇にすわり。
 慣れた様子で賭けていた。
 自分の所持金も賭けに追加するほどである。
「あなたは…………また」
 何か言いたげな威月は詰め寄るように塵へと歩みをよせた。
 ただそんな冷静さを欠いた威月を静止する姿がある『風深 禅(aa2310)』がゆったりとした動作で威月の目の前にモナカを差し出した。
「いかがですか? モナカ」
 『虚空(aa2310hero001)』とはすでに共鳴済み。だがこんな場所でも飄々とした態度は崩さない。
「あ、はい、ありがとうございます」
 暁の先輩である風深の言葉に逆らえず、モナカをぱくりと口にする威月。
 そして塵に差し出されたモナカは人造天使壱拾壱号が受け取り食べていた。
「ふぅん、あんたがねぇ」
 告げる塵と警戒心をあらわにする威月、二人に風深が言葉をかける。
「リンカー同士の剣闘…………良い趣味してますねー」
――全くだ。さぞ崇高な理念の下に作られたんだろうな?
 虚空がそう答えた。
――それも気にするべきことではあるんだがなぁ。
 そう悩ましい声を出す火伏静。
 だが彼女は思っているのだ真に警戒すべきはいったい誰だと。
 “彼女たち”の悪評は聞いている。
(殺害行為は何としてでも止める…………)
 そう威月は塵を振り返る。ここは要注意人物が多すぎた。
 その時塵がはじかれたように雑誌を投げ捨て、前のめりになって叫んだ。
「ハッハ、いいねェ!」
 見れば紅蓮がIriaを蹴り飛ばした瞬間だった。
「その調子でガンガン殺してくれヨォ?」
 それに対してIriaはさびきった剣をでたらめに振り回すだけ、あまりに無力なその姿に紅蓮は興ざめにも似た表情を浮かべる。
 そんな紅蓮に威嚇を繰り返すIria。
 次の瞬間には紅蓮はその獲物である柱をぶんぶん振り回していた。
「しまいにするぞ」
 ぼろぼろのコートをを纏い力なく地面に転がるiria。だが塵は知っている。その瞳がまだ死んでいないことを。
 叩きつけられた柱。その先にすでに彼女はいなかった。
 跳ね上げられるコート、その陰には無形の影刃。
 斬撃を走らせるようにカウンター。紅蓮の腕が切り刻まれ血を拭いた。
「てめ」
 観客たちは何が起こったか分からずに茫然とその光景を見つめる。
 反撃する紅蓮。
 地面すれすれに柱を振るうがiriaはギリギリまで近づいてしゃがみ。これを回避。
 その柱の影に紛れる形で無形の影刃を振るい、走る斬撃は紅蓮の太ももを切り裂いた。
「ぐああああああああ!」
 次の攻撃は観衆にも何があったか分かったのか大歓声があがる。
 だが紅蓮も剣闘士としては名前が通っている方だ。
 肉ではなく骨で踏ん張るように体制を立て直すと、足から流血するのも構わずに渾身の力で柱を振るった。横薙ぎ、縦に。そして刺突。
 それをことごとくIriaは避けていく。
 だが徐々に砂埃が舞いうっすらと敵の姿がぼやけていく。
 次の瞬間紅蓮は微笑むと地面を叩いた。舞い散る土砂。
 その茶色い闇の奥から大柱による刺突が撃ち込まれ。
 それをIriaは間一髪のところでよける。
 刃に火花を散らしながら攻撃をそらし一歩踏み込むと、紅蓮が接近し蹴りを炸裂させた。
 だがIriaは吹き飛びながら笑っている。
「この真英雄が震え、呼吸を荒げていた理由」
 そう突如口を開いたIria。違う、話しているのは彼女ではない。中にいるもっと禍々しい何か。
「戦闘に恐怖し、それが長期化したための疲弊? ――違う」
 『Arcard Flawless(aa1024)』が言葉を紡ぐ。Iriaが走る。
「こいつは今まで、自らの『斬りたい』『鏖にしたい』という欲を抑えるのに必死だったのさ」
 振るわれた柱。そんな大ぶりの攻撃、懐に入ってしまえば関係ない、そうIriaは脇をすり抜け背後にまわり。
 天険を抜く。その輝きは極限までため込まれており、闇に覆われていたはずの地下闘技場を眩く照らした。
 その時やっと運営側は異変に気が付く。
「この装備。H.O.P.E.か!?」
「まずいな、対応が早い」 
 そう身を乗り出したのは恭也。逃走経路の確保はすんだ。
「早く終わらせろ」
 そうIriaとクロスリンクしながらあたりを見渡す。
 観客たちの顔だ。
――嫌な笑みをしているね…………。
「人の生き死にを楽しんでいる連中だ。碌なのは居ないだろう」
 そう眉をひそめる恭也。


第二章
「暴力というものに惹かれるのはどこも同じですか」
 そうつぶやきVIPルームを見あげたのは『構築の魔女(aa0281hero001)』。その双眸には下卑た笑みを浮かべる幹部たちが闘技場を見下ろしている風景が映っていた。
 構築の魔女はすでに『辺是 落児(aa0281)』と共鳴済み。
 すでに突入できる体制は整えてある。
 懐に忍ばせた銃をそっと撫でた。同時に観客、特にVIPたちの顔は覚えるように努めた。
「乱闘になった際には他の観客を巻き込まないようにしないといけないですよね
 そう語りかけるも隣で戦闘を見守るアリアはその行く末を見つめはらはらとしている。
「大穴狙いが賭け事のロマンだな」
――借りた金とはいえ、さすがにこれだけの金…………緊張するな。
 そして二人はボディーガードが集まってくる気配を察するとすぐに通路へと移動した。
 アリアは迷彩マントを被りVIP席の扉の前に立つ、目の前には屈強な男性二人が立つ。彼らは何があってもそこを動かないようだ。
 ただ廊下の向こうを何人かのボディーガード達が走っていく。
「10…………」
 紗希は小さくつぶやくとこの騒ぎの中、まだ戦闘をやめようとしないIriaを見やる。
 その時、斬り飛ばされた紅蓮の柱の一部が客席に飛来し轟音と土煙を上げる。
 悲鳴も上がった。間抜けな愚者が一転、狩られる側に変わった悲鳴である。
「おい!」
 突入支援のために控え場所を変えようとしていた恭也が思わず叫んだ。
 しかしすぐに理解する。聞いてはいないことに。彼女らは戦闘に夢中だった。
 天剣の輝きにてリンクバーストしたIriaの動きは先ほどの比ではない、それにぴったりと動きを合わせる紅蓮。
 ドーピングでもしているのだろうか。クロスリンクによって精度を上げるIriaの斬撃を柱で何とか防ぐ。
「がああああああ!」
 斜めに切り飛ばされた柱をまるで竹やりのように使い刺突の雨をお見舞いするとIriaは〈ライヴスシールド〉でその攻撃をねじ伏せる。リーチもかなり短くなったものだ。そのまま剣を滑らせるように肉薄すると頭突きをお見舞い。
「てめぇ!!」
 直後柱を翻そうとした紅蓮、しかしiriaのスピードには勝てない。
 Iriaは咄嗟に紅蓮の顔面に掌底。いや、猫パンチを連打。
 頭蓋が割れるほどの連撃を受けた紅蓮は地面に叩きつけられる、その目と鼻の先を銃弾が通過した。
 それはIriaの肩に突き刺さりその体が軽く吹き飛んだ。
「てめぇ、H.O.P.E.。お前らが飛んで火にいる夏の虫だってことを思い知らせてやるよ」
 ボディーガード軍団がiriaの周辺を固める。
「殺すなよ? これは仕事だ」
 Arcardが告げると不服そうに唸るiria。
 次いで眼前に登場したのは無数の銃。
 そのトリガーが一斉に引かれるとiriaめがけて銃弾が雨のように降り注ぎ。そして。
 それを見届けることなく、他のリンカーたちは本丸に突入した。
――あの対戦相手の人、何か様子が変な気が…………?
「目が泳いでるな。良心の呵責に襲われているのか、薬物によるものか…………いずれにせよ真面な判断は出来そうないな、それより」
 恭也は放たれた銃弾を刃ではじくとその腹をたてに狭い通路を疾走する。
 姿を現したアリアと挟撃VIPルーム前の敵二人を抑えにかかった。
 紗希は本丸の扉を蹴破ると、目の前のボディーガードらしき男に問答無用でヘルハウンドを振り上げた。防御する暇も与えない一撃にボディーガードの内一人は血をふいて倒れることになる。
「この部屋にいるのはあと二人…………」
 盾を構え用心を守ろうとするボディーガード達。
 だが、この人数では無力だろう。
「やー、失礼しまーす、H.O.P.E.でーす! 投降お願いしまーす」
 風深が突入すると、気配を殺して潜伏していた無月が浮上する。
 イメージプロジェクターを解いた後の動きは素早かった。慣れた動きで男の腕をとって背中に回し喉元に刃を突きつける。
(失礼だとは微塵も思っていない台詞だな。まあこの場合には的確かね。さて風深、暴きにいこう)
 そう虚空が思っている間に無月は捕縛を済ませた。
 風深はもう一人のボディーガードの動きを見ながらテーブルの上に広げたままになっている今日の顧客名簿にゆっくり近づいていく。
「大人しく投降しろ、手荒な真似はしたくない」
 無月が告げて幹部たちを見下ろす。彼らは命を奪われる恐怖からか地面をはっている。
 当然だろう、唯一の出入り口はH.O.P.E.に抑えられており、戦闘できるのはたった一人。
 これはスキルを使う必要もない。そう判断し無月は回答を待つ。
 突入班が順調に仕事を片付けているあいだに、コロッセオ側では変化があった。
 あがる土煙、ハチの巣にされたとおもわしきiria、しかしその死体がさらされることはなかった。
 イリスと威月が防御に動いていたから。
「や、僕らだけでもやれるけどね」
 告げるArcard。iriaはまだ戦闘の余力を残しているようだ。
「助けてやるから、そこで寝てろよ」
 Arcardが告げると紅蓮は唖然と首を振るのみ。
 そしてボディーガード達の背後から銃弾が浴びせられることになる、構築の魔女は椅子に足をかけ両手の銃を天井に向けたまま告げた。
「リストや幹部もですが警察や最悪H.O.P.E.と繋がっている相手もいそうなのですよね」
 こちらも戦いが始まりそうだ。

第三章 本当の戦い。

 二戦目が開幕するとまず最初に動いたのはやはりiria。
 地面を走るようにして三本の剣を操った。
 ボディーガードの脚部串刺し、地面に縫いとめ。二本目で腕を切り落としにかかる。
 そしてiriaは残忍に笑った。
「塵さま……!お願い……止めて……下さい! 彼女……殺す気です! ……っだめ……!」
 そう威月がボディーガード一人を抑えながら首だけ向けて告げた。
「……ハァ? バカかテメー、ブッ殺した方が処理も楽で良いだろ?」
 告げる塵はその周囲に霊力の塊を浮遊させながらボディーガード達を背後から狙い撃っていく。
 反撃で銃弾が浴びせられてもお構いなしである。
「つかソイツがバテたらよ、反逆者ってコトで纏めてブッ殺して金稼ごうぜ」
 腹を突き、深く刺したまま首まで斬り上げる予定で刃を振るうiria。
「……そんな! 殺そうだなんて……敵は悪人ですし、彼女もやり過ぎです……でも! 命をそんな物みたいに……!」
「……あのな。ココじゃ命っつーのぁ《商品》なの。ワカル?」
 塵は指折り数える。
「人ブッ殺して金稼ぐ奴」

「人ブッ殺させて金稼ぐ奴」

「人ブッ殺してるトコ見てぇ奴」

「とにかくブッ殺してぇ奴」

「みィんな、命なんざこの程度にしか考えてねぇンだぜ?」
 そう札をばらまいて高笑いを響かせる塵。
「大体、アイツ等も女子供すら手にかけてんだぜ。殺した方が世の為だろうがヨ」
「それは……法が決める事です。彼らの罰を決めるのは、私たちじゃありません」
 それに対して威月は強く反論する、観客席の塵を見すえて。
「何より……どんな人でも、死んだら終わり……です……。死んでしまったら、未来も何も無いの……!」
 そう拳を握りしめ涙を浮かべて訴える威月。
「……闇が、夜が……人を惑わせる……のだと思います」
 その表情に何を見たのか、塵は目を見開いた。
「だから!私は、私達【暁】は……闇を照らします……! 誰も無闇に殺させは……しません!」
 告げると塵はそんな理想を掲げた少女を嘲笑う。
「……プッ……ハハハ!さーすがあのクソガキの仲間だなぁ箱入りィ! ……楽しみだぜ。テメーら甘ちゃんがやり遂げた後の世の中がヨォ?」
 告げると塵はiriaに視線を注いだ。
「これが戦争を謳う真英雄の姿。……さあ、何人目まで正気でいられる?」
 高らかに告げるArcardだがその動きは叶わない。
――あ! クロスリンクしたままだった。
「あまりおいたがすぎるようなら、支援は止めよう」
 直後続々と切られていくクロスリンク。急激に力が抜けた反動でiriaの体は傾いでその場に転倒した。
「ちぇ~」
 そんなiriaをカバーしつつアイリスは盾を振るってボディーガードの銃弾を受け止める。
「どうにも、他人を護る事に特化しているようだね」
 流石はボディーガード、と軽口をたたいて見せる。
 カオティックブレイドの能力で無数に展開される盾。だがそのお粗末さも見えている。
「はははっ では一枚ずつ剥がしていこうか」
 告げるとアイリスは身長の倍以上あるレディケイオスをチャージし突貫。
 守るべき誓いでターゲットを集めつつ、コロッセオの出入り口に向かわせないように行く手を遮る。ただ。
「状況は複雑なようだね」
 告げるとアイリスは体を滑らせるように前へ。
 その背中に隠すように先ほどIriaに痛めつけられたボディーガードをかばい、そして盾はiriaに向けられた。
 起き上がりざまの剣戟、iriaはまだやるつもりである。
 しかしその背中を射抜く塵。
「テェェメエそいつ等ブッ殺すと俺の報酬が減んじゃぁねぇええーーーーか!!」
「おま…………。先にイっとく?」
 イラッと声を一瞬荒げるArcard。
「ハッハァ! 来いよドラ猫、遊ぼうぜぇ……ッ!」
 告げると突撃してくるiria。それもろともボディーガードを薙ぎ払うべく、塵はその手の前に黒蠅を終結させた。それが魔方陣を描き、そして。
「……楽っしィねぇ! 《魔蠅槍》ッ!」
 一直線に放たれる腐蝕のオーラ。
 それが地面に激突するとコロッセオを再び砂埃が満たした。
「全く、仕方がない人たちですね」
 そんな中構築の魔女は砂埃の向こうの敵にも容赦なく弾丸を見舞っていく。
 コロッセオのふちを走りながら。
 そして銃撃をくわえられたなら一回転しながらコロッセオの中に降り立つ。カチューシャをばらまきながら。
 それに対応するために盾を展開するボディーガード達。
「ふむ」
 なにを思ったのか構築の魔女は走り出す。
「……指揮している人間の挙動をよく見なければですね」
 攻撃は盾ではじかれているだけではない。直前で切り伏せられてもいる。心眼持ちがいるのだろう。
 ならば。そう構築の魔女は銃の底を使って振り返りざまにボディーガードの首元を強打。そのまま銃口を押し当てて肩を射抜いて距離をとる。
「相手が別の手法をとれるなら悪手となりえますよ?」
 次いで上空にフラッシュバンを投げて自分は地面に転がった。 
 その光で呻くボディーガードの間を縫って進み、距離をとると射撃を繰り返す。
 その戦場の中心で光の翼が大きく広がった。
 羽、花びら、粒子による三重奏。響かせながらアイリスの動きは加速する。
「というか、あの二人が自由すぎるせいで抑えるのが大変なんだがね」
 盾で足を払い、転んだ男を足で踏みつけ、銃弾を弾きながら屈伸。その貯めた力を使って突撃して敵を吹き飛ばす。
 そのまま盾を地面に突き刺すと、銃を向けるボディーガードの銃口から逃げつつ小刻みにステップ。踊るように背後をとると、膝を蹴り飛ばし姿勢を低くさせて首根っこをつかまえて投げた。
 盾を手に取り、空中に存在するボディーガードめがけて飛ぶ。
「レディケイオス、CODE:000」
 盾を叩きつけるようにボディーガードになげ、自分は足を突き出した。
 そのまま翼で加速度を得る。
「レイフォースデストラクション」
 十字盾に追いついたアイリスはそのまま上空から敵を蹴りぬいた。
 地面をバウンドして停止するボディーガード、その背後で。
「しまった…………」
 iriaと塵が争っている音が聞こえる。
「三人逃げた…………」
 ただコロッセオの戦いもひと段落ついている。
 傷が深いものから威月が捕縛し、その傷を癒していく。全員をH.O.P.E.に連行する様子だった。
 
第四章 暗黒時代。
「こっちに増援が来る」
 インカム越しに紗希が告げた。
 それを受けてボディーガードを抑えていた恭也は一人をVIPルームに叩き込むと告げた。
「俺が行こうと思う」
 その言葉にアリアは頷く。
「敵も必死か……! かならず確保する!」
――まかせたのじゃ!
 アリアはボディーガード一人の足をうって動きを止める。そしてVIPルームから現れたボディーガード合わせて二人を相手取る。
「そいつ、おそらく一番強いぞ」
 そう言葉を残して恭也は走った。
 目指すはコロッセオから一番執務室に近い通路、すると案の定眼前に三人のボディーガードが見えた。
 恭也はその突進力を生かして突っ込み。壁が壊れるのも気にせず大剣を振るった。
 巻き上げられるボディーガード達、その背後からイリスが負ってきているのが見える。
「こちらは大丈夫か」
――あとは、執務室のみんながどうなってるかだよね。
 告げる伊邪那美。
 その執務室でも最後の抵抗が行われていた。
 ボディーガード捨て身の特攻。
 それを抑えるのは紗希。
 そして地面に転がっている幹部へ風深が視線を走らせる。
――中々無いな。奴ら腹の中にでも隠しているんじゃないか?
 虚空の言葉に頷く風深。
「あっはは、だったらリスト真っ黒で回収しても読めないですねー」
 そう、本日の顧客名簿を幻想蝶の中にしまい込み風深は振り返る。
「あんまり刃傷沙汰は好きじゃなくて」
 そして幹部に告げた。
「顧客のリストを貰えれば帰れるんですけど、どこにありますー? 教えてくれたらモナカあげますよー」
 幹部は恐怖からか口をパクパクさせるだけだったがその視線を受けて探す場所を変える。
――おいおい、これでボディーガード名乗ってんのか? つぶれるのも時間の問題だったな。
 そう若干の戸惑いを含んだカイの声。
 見れば衣服を裂かれた様子の見える紗希に対して、ボディガードは全身を血まみれにされていた。
 本気を出すまでもないが、さすがは防御職。護りに関してはうまい。
 であれば。
 紗希は部屋の外に出るとへパイトスに換装。そして幹部に狙いを定めてその引き金を引いた。
 当然護りに動くボディーガード。
 その動きに合わせ無月は幹部をお姫様抱っこで攫うとその部屋から逃走した。
 風深も続く。
「逃がさん!! 逃がさんぞ!」
 何事かを呻くボディーガード、しかし防御の手を緩めればその弾丸はやすやすと体を食い破るだろう。
 チェックメイトである。
 無月に拘束されていたボディーガードは武装を放棄。
 拘束を願い出た。
「ひぃ! 助けてくれ!」
 そうもがく幹部、その横っ面を無月はひっぱたく。
「逃げられると思うか。貴方達の醜悪なビジネスも今日で終わりだ……!」
 闘技場に出て行った幹部はあちらで捕獲されているそうだ。
 であればこちらの幹部についてはこちらで確保したと報告する。
「暴力はやめてくれ」
 その言葉をジュネッサが嘲笑う。
「暴力? あんな事をやってきた君達にだけは言われたくないな」
「いえいえ、彼が言ってることもないがしろにしてはいけませんよ」
 そう告げると風深がしゃがみこみ幹部のひとみを覗き込んだ。
「捜査に協力すれば減刑されるかもしれません。どうします?」
「組織に消される」
「大丈夫、あなたはしばらくH.O.P.E.の庇護下です。牢獄ですが。身の安全は保障しますよ」
 その甘言に耳を貸した幹部はやすやすとその口を割った。
 というのが、出てきた帳簿や組織図を見てわかったのだが、この組織は氷山の一角だった。
 資料からの特定が待たれるが、日本からヴィランを一掃するにはまだ時間がかかるだろう。

   *   *
 こうして以来終了とインカムの向こうで誰かが告げると、ぼろぼろになったアリアはその場にうずくまる。
「状況終了、初依頼だったが……成功してよかった」
 告げるとソフィストが共鳴解除、高らかに笑い声をあげる。
「ナーハッハッハ! わらわがいれば当然じゃのう!」
「……ふふ、調子のいい奴だ」
 そんな笑い声を背景に塵は施設を後にした。
「あーあ勿体ねぇ。『日陰』がまたイッコ消えちまった。こんなん氷山の一角なのにな」
 告げると苦々しげな表情を浮かべて立ち止まった。
「さぁーてココの楽しみを失った連中がヨ……。次ぁ表通りの連中、狙わなきゃいいねぇ……ククク……」

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
  • 神鳥射落す《狂気》
    Arcard Flawlessaa1024
  • 悪性敵性者
    火蛾魅 塵aa5095

重体一覧

参加者

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 神鳥射落す《狂気》
    Arcard Flawlessaa1024
    機械|22才|女性|防御
  • 赤い瞳のハンター
    Iria Hunteraa1024hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 夜を切り裂く月光
    無月aa1531
    人間|22才|女性|回避
  • 反抗する音色
    ジェネッサ・ルディスaa1531hero001
    英雄|25才|女性|シャド
  • エージェント
    風深 禅aa2310
    人間|17才|男性|回避
  • エージェント
    虚空aa2310hero001
    英雄|13才|女性|シャド
  • 暁に染まる墓標へ、誓う
    無明 威月aa3532
    人間|18才|女性|防御
  • 暗黒に挑む"暁"
    青槻 火伏静aa3532hero001
    英雄|22才|女性|バト
  • エージェント
    アリア・シュタインaa4581
    人間|21才|女性|命中
  • エージェント
    ソフィスト レヴィアタンaa4581hero001
    英雄|12才|女性|ジャ
  • 悪性敵性者
    火蛾魅 塵aa5095
    人間|22才|男性|命中
  • 怨嗟連ねる失楽天使
    人造天使壱拾壱号aa5095hero001
    英雄|11才|?|ソフィ
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