本部

広告塔の少女~あなたと歌を謳いたい~

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
12人 / 4~12人
英雄
10人 / 0~12人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2018/04/29 18:36

掲示板

オープニング

● 私、歌が歌いたい

 それはガデンツァ討伐戦からすぐの事。
 救出された英雄ルネは遙華と契約を結ぶためにH.O.P.E.を訪れていた。
 適切な手順、バックアップを頼りにパスをかわした二人は微笑みあう。
「あなたが返ってきてくれて嬉しいわ、ルネ」
 告げるとルネは笑みを返す。
「私も、もう一度こうして歌を歌えるなんて、すごくうれしい」
 ルネは遙華に抱き着くとそう涙を目に湛えて告げた。
「みんなと一緒にいられるんだってことがすごくうれしいよ」
「そうね、そうね、ルネ。みんなあなたの帰りを待っていたのよ」
「じゃあ、みんなにもちゃんとお礼を言わないと」
 告げるルネは遙華から離れると、どうした方がいいかなぁと頭を悩ませる。
「ただ会いに行くだけでもみんな時間を作ってくれると思うけど」
「うん、そうだね、お茶会でも開いて……」
「でもそんなに何か機会を作ってほしいというのなら一つ提案があるわ」
 遙華はルネの手をがしっと握って輝く瞳で告げる。
「え……、べ、別に普通にあってお話し」
「ディスペアって最近たて無しができたアイドルグループがあってね」
「あ……アイドル?」
「その子たちと世界を回ってみない? 今後あなたの素性をはっきりさせてないといろいろ厄介なことになりそうだし」
「え? 厄介ってどういうこと」
「それは……」
 遙華は順を追って話す。ガデンツァという存在がなにをしたか、ディスペアの中に瑠音というメンバーがいたこと。
 結果愚神に加担した組織として一時期ひどいバッシングにさらされたこと。
「今回は名誉が回復しての初ツアー、これが成功したら、ディスペアも本格復帰と呼べるわ」
「それに、私ついて行っちゃダメじゃない?」
「そうでもないわ。今は善性愚神や悪性愚神ってこれまでの概念からしたら考えられない存在が登場してる。その中であなたが愚神だと思われないためにアピールする場所が必要なのよ」
「う、うん、それで?」
 ルネはやな予感を押し殺して告げる。
「準備はもう整ってる。一週間で三つのステージを回って。私達が幸せを運ぶ存在だってアピールしましょう」

 
● ライブツアー
 今回は皆さんに三つの地域を回りつつ、リンカー、およびルネの存在をアピールしていただきます。
 ただ、今回準備に時間がなかったので、ライブステージなどは抑えられませんでした。
 ではどこで謳うのか。
 それは戦場です。
 あとは傷ついた人たちのための慰安ライブでしょうか。
 その性質上、スピーカーなどの機材を持ち寄った野外ライブになります。
 今回同行するディスペアにくわえ、皆さんは歌を歌いながら。あるいは、歌を歌っているリンカーを全力でサポートする形で戦闘していただきます。
 ちなみにそれぞれの戦場で意識して演出していただきたいポイントがあり、字数が足りないと思った場合、戦場を二つや一つに絞っていただいて構いません。

 今回ディスペアというアイドルグループが同行しておりますが、彼女たちは戦場には出てこない予定です。戦闘が終わる前、始まる前にパフォーマンスをする予定だからです。

・ 南アメリカ、ドロップゾーン周辺
 ドロップゾーン内部に、早々手が出せないクラスの愚神がいます。
 そのドロップゾーンの性質は軍団の生成、ドロップゾーンからは日夜大量の従魔兵士があふれ、それをリンカー兵団が押しとどめています。
 ここに慰安として訪れてほしいのです。

 ここで意識していただきたいのはぼろぼろの兵士たちを勇気づけることです。
 兵士たちは連続する戦闘で疲弊しきっています。
 仲間は傷つき死んでいき、次は自分かもしれない、そんな極限状態の中で、どんな言葉が、どんな思いが、どんな歌が響くでしょうか。
 どんな行いで皆さんは心が弱り切った兵士たちを鼓舞するのでしょうか。

・ とある戦争犯罪
 とある紛争地域で、国際条約に反するテロが行使されました。それは毒ガスによる大量殺戮です。
 A国に対する攻撃としてテロリスト集団が女子供を人質にとって立てこもっています。
 本来人間同士の争いにリンカーが登場するのはタブーですが、ペインキャンセラーという麻薬(一般人を一時的に能力者にするクスリ)の痕跡が発見されたためにリンカーに出動要請が来ました。
 皆さんにはこの砦に潜入、女子供、総勢50人の人質を救出し。150人のテロリストを無効化してください。
 装備は、四方を石の壁で閉ざされた軍事拠点。地下水道など繋がっており、食料は残りわずか。
 城壁の上には等間隔に配置された砲塔が14門と、周辺を警戒する戦車八台です。

 このミッションのポイントは見ている人間も、攻撃されるテロリストも一般市民であること。
 リンカーとして力を見せつけすぎてしまうと畏れられるでしょう。ただその力も見せ方次第です。
 一般人に怯えられずかつ、あこがれられるような鮮やかな戦闘を期待します。
 また、責められたと知るとテロリストたちは人質を殺してしまうかもしれません。
 陽動と、潜入が必要となってくるのですが。陽動作戦にこそ歌はピッタリではないでしょうか。


・追い詰められたリンカー達

 日本とある場所で、悪性愚神とリンカー十五名が戦闘を行っていますが。
 これに加勢していただきます。
(もともと25人は必要な戦闘でしたが、少なく戦力を見積もられてしまったことには、まぁお察しを……)
 リンカーたちはスキルもほぼ使い切り、重体者も数名でそうな勢いですが、皆さんが戦闘を後退すればなんてことはないでしょう。
 回復スキルを持つリンカーがこの十五人のリンカーを回復させると戦いに復帰してくれることでしょう。
 今回の敵、愚神はアスモデウスと言います。
 暗黒を操る愚神で技量に長けた、スキルを十も使う愚神でしたが、今は弱っているために暗黒魔法しか使いません。
 暗黒魔法は命中した対象の特殊抵抗次第で命中力50%減の効果を与えます。クリアレイで回復可能です。
 さらにこの効果をレジスト。防いだとしても命中力が50下がるので注意。
 射程は1~25SQ前後で、二体まで対象を選択できます。


 今回の愚神は、最初の十五名との戦闘で生命力が25%から15%程度まで減っていますが。それでも最終決戦であることには変わりません。
 なので、とりあえず盛り上がる演出をお願いします。
 具体的には、みんなで手を取り合って、お互いを鼓舞しあって立ち上がり、戦うような、アニメの最終回の様な展開を期待します。

解説


目標 

 今回は戦いながら歌を歌いながら味方を鼓舞するというパフォーマンスをします。
 

● プロンプターの存在
 戦場では多くの曲やリンカーが入り乱れることでしょう。
 ここで戦場の管理役を募集したいと思います。
 プロンプターは複数いてもいいです。
 プロンプターができることは機材の発注(違法物、薬物でない限りグロリア社が用意してくれる。人も)
 その機材の運用と、全員への指揮権限です。
 戦場の全体図を見ることもでき天翔機(空を飛べるAGW)も貸し出されるので、今回の任務のリーダーとして頑張っていただく反面。
 表に出てこられるほど文字数が割けないかもしれないので、兵士たちからの覚えは地味になるかもしれません。 
 

● ルネの歌

 呼輝の音~REBORN~
 ルネがほろびのうたを自分で改造して作り出した歌。
 民族調の音楽と、叩きつけるような異国のフレーズが耳に残る戦闘曲。
 民たちに戦女神が、汝の敵を撃て。敵を滅ぼせと鼓舞する曲で。この歌をルネは謳いたいそうです。
 どの戦場で謳うかはプロンプターにまかせます。

● ルネからの……

 皆さんが作戦の前に集められると、壇上に立ったルネがこう言いました。
「私を救ってくれてありがとう、本題を切り出す前に、私はみんなに言わないといけないことがある」
 そう透き通った透明な声で告げると、ルネは謳うように言葉を継いだ。
「私は、完全にルネではないの、個人の正面が記憶にあるなら、私はルネが残したルネの記憶のバックアップ、それをガデンツァの体にインストールした存在。データは同じでもハードが違うまがい物。偽物」
 その言葉を発した後、ルネはわずかに迷い視線を伏せる、しかし次の瞬間には顔をあげて皆を見た。
「それでもみんなは私を仲間だと思ってくれますか?」

リプレイ

第一章 歌

 一行はまず空港に設けられた会議室の様な場所に集められた、なんでもVIP用の控室らしい。
 その一室を見渡して『エスト レミプリク(aa5116)』は苦笑いを浮かべた。
(予想はしてたけど凄い女性率だ……)
 その視線はディスペアに注がれている。
「いっぱい歌が聞けるといいわねぇ♪」
 そう歌が好きな『シーエ テルミドール(aa5116hero001)』はルンルンと語尾を上げていた。
 そこで『小詩 いのり(aa1420)』は椅子にもたれかかって小雪や梓とお話ししていた。
 『セバス=チャン(aa1420hero001)』は全員分の紅茶を淹れる。
「ルネさん復帰の依頼でもあるけど、同時にディスペアの本格復帰ツアー依頼でもあるんだよね」
「私たちは危ないから後方支援だけどね」
 そう梓が苦笑いを浮かべる。
「やることが多いけど頑張るよ。でも、紛争の中で歌が使われることには、ちょっと忌避感もあるかも」
「そうだなぁ、それはあたしもかなぁ」
 告げたクルシェは言う。
「歌って、聞きたい奴が聞くもんだし、きかせに行くもんじゃないと思うんだよなぁ」
 そんな個室で今日は大人しい『アル(aa1730)』はセバスからココアを受け取ると、ひとつを『白江(aa1730hero002)』に回した。
 今回任務に参加したのは白江の願いであったらしい。
「何か気になる事でも?」
 そうセバスがしらえに問いかけると、ココアを一口飲んで。セバスを見あげて告げる。
「出来得ることを、しに来ました」
「できること」
 それはルネ関連の事だろうか。そう言葉をかける前に等の本人が現れた。
 遙華と共に出発時刻ギリギリの到着である。
「ごめんなさい、遅れてしまって」
 その登場にアルは立ち上がった。そして笑顔で歩み寄る。
「うんうん、可愛いコが来たねぇ。初めまして、ボクはアル。よろしくね」
 そう柔らかく微笑むといのりたちの方へ歩いていく。
「話さなくていいの?」
 小雪に問いかけられたアルは。小さく首を振った。
(まだ、確かめたいことがあるからね)
「ル、ルネさん!」
 そんなアルの小さな背中を特大の緊張声が揺さぶった。
 犯人は『煤原 燃衣(aa2271)。』
「フ、フ、フフ……このドルヲタP……本気を出す時が来ましたね……」
 ノリノリの燃衣。
「着替えは済ませました?歌詞の暗記は?家の隅々までガタガタ震わす爆音出す準備はOK?」
「……宜しい、ならば戦争(ライヴ)……どうした?」 
 ノリに乗っているのは『ネイ=カースド(aa2271hero001)』も同じらしい。
 その勢いをきっかけに『鈴宮 夕燈(aa1480)』がルネに抱き着いた。
「ルネちゃん! 初めまして、会いたかったんよぉ」
 告げるとその手を取ってぶんぶん振った。
「あ、ありがとう?」
 次いで吹っ飛んでいた夕燈の腕を回収しにはしる『楪 アルト(aa4349)』。
「……ったぁーっくよぉ……なんでここんところまともっぽそーなアイドル依頼がねーんだよ……くそ、あーったよ、やりゃあいいんだろやりゃあな!」
 そうぶつくさつぶやいて夕燈の腕をはめてやる。
「うう、ごめんなぁ、うちちょっと緊張して」
 それに小さく微笑んだルネ。
「ううん、楽しいね、夕燈さん」
 それにつられてアルトの手を出そうとしたが、何かに引っ張られるようにその手を引っ込めた。
 そして小さくよろしくとだけ告げる。
「うん、よろしくね、アルトさん」
 告げるルネ。そのルネに遙華はメンバー全員が揃ったことを告げる。
 するとルネの顔が引き締まり、皆に響くような水晶ガラスの声で話を切り出した。
「肝心の話が、ギリギリになってしまってごめんなさい、私はまず皆さんに、聞いておかないといけないことがあります」
 『依雅 志錬(aa4364)』と『S(aa4364hero002)』が視線を向ける。ルネはその後、一人一人の顔を見て言った。
「私は、完全にルネではないの、個人の正面が記憶にあるなら、私はルネが残したルネの記憶のバックアップ。それをガデンツァの体にインストールした存在。データは同じでもハードが違うまがい物。偽物」
 その言葉を発した後、ルネはわずかに迷い視線を伏せる。しかし次の瞬間には顔をあげて皆を見た。
「それでもみんなは私を仲間だと思ってくれますか?」
 あたりが一瞬静まり返る。
 しかしそんな中でも迷わず口を開く者がいた。
 ルネは思う、そうだ、彼女だ。彼女はいつだって、自分の思うことを口に出すことをためらわない。
 『蔵李 澄香(aa0010)』がルネの手を気遣うようにとる。
「君はまがい物じゃないよ。それに、仲間に決まってるじゃないか」
 そんな澄香の肩に手をかけていのりが言葉を継いだ。
「例えルネさんその人じゃないにしても、心は完全にルネさんなんだから、それでいいんじゃないかな。
「……なぁ。純粋な疑問なんだが。仮にお前が『偽物』だとする」
 ネイが口を開く。燃衣と顔を見合わせて言葉を続ける。
「それはお前が何かを成すにあたって何か問題なのか?」
「……ルネさん。仲間として敵として……ボクが放った言葉で特に印象深いセリフは?」
「…………殺す?」
「…………うん、ちょっとショックですけど確かに出会いたての僕はそんなキャラクターでして、でもやっぱり貴方はルネさんだ」
 なんでそうなるのかわからない。そんな会話のコテコテ感が面白くてルネは笑ってしまう。
 それを燃衣は優しげに見つめた。
「じゃあ例えばボクの体がフッ飛んで、自分の意識や記憶を機械に移したとしましょう」
 そう燃衣は自分の胸に手を当てる。
「きっと、それは煤原だと認めない人も居るだろう。でも。ルネさんに見た【暁】の意志がある限り。ボクはボクだ」
 殺意も、仲間への想いも全部自分を構成する要素だ。
「……大事なのはハコじゃない。《何をするのか》じゃないかな」
「うん、それは私もそう思う」
「お前もお前の意志に従えばいい。何なら新しい名前でも付けろ」
 ネイの言葉に顔をあげるルネ。
「……《ルネ・ピアチェーレ》なんてどうだ。《意志》《自由な表現で》という意味だ」
「いい名前だね。うん」
「僕達も、あまり気にしませんよ?」
 告げたのは『イリス・レイバルド(aa0124)』そして『アイリス(aa0124hero001)』。
「ガデンツァも体の乗換えくらい平然としてたしねぇ。それを考えればルネという種族はハードよりもデータの方が重要な種族というだけだろうさ」
 アイリスの言葉に頷くイリス。
「前と今が違うとして、積極的に前のルネさんの……評判とか下げたいとか思いますか?」
「思わないのならそれでいいだろう。私だって人に似ているが人外だよ。人とは共有できない法則で動いている部分だってあるものさ」
「もっとも、ルネさんをよく知らない人たちには、説明して理解を求める必要があるとは思うけど」
 いのりが言葉をつけたした。
「俺も自分が偽物だという情報を持っている」
 そう切り出したのは『アリュー(aa0783hero001)』。
「そして俺の造形は理夢琉の前世での姿でもあるらしい」
 そうアリューは『斉加 理夢琉(aa0783)』を見る。
「そんな奴を『私の英雄』と言ってくれる理夢琉にその不安は必要ない。ディスペアの瑠音も転生したルネという『個』として接していたしな」
「瑠音さんやアカネさんはそうかも」
 理夢琉が言葉を継いだ。
「でも貴女は[想い]という絆で[帰って来てくれたルネさん]だから……」
 告げると理夢琉はルネに歩み寄って、そして手を差し出して頭を下げた。
 それはあの時伝えたかった言葉。
「えと、ルネ…………私と友達になってください!」
「こんな私を受け入れてくれるの?」
 その頭を下げたまま理夢琉は首を縦に振った、髪がこぼれて地面につきそうにながれる。
「うん、ありがとう理夢琉、そしてみんなも私を受け入れてくれてありがとう」
 理夢琉はパッと顔を輝かせた。
 そして遙華を見る。
「よかったわね、理夢琉」
「うん、ありがとう遙華」
 告げると一瞬驚いた顔をしたものの、遙華は柔らかく微笑むと、理夢琉とだけ名前を呼ぶ。
「これにて一件落着かな」
 告げたのは『ナラカ(aa0098hero001)』。彼女は事の顛末を見守っていたのだ。『八朔 カゲリ(aa0098)』にわざわざ口を出さないように告げて。
「まぁ、本来であれば我等が如何思うかではない。ならば我等が否と答えれば敵にでも回るつもりか?」
「それはないよ」
 そのルネのあわてて手を振る姿を見て。ナラカは満足そうに頷いた。
「そうだろう? であれば。我等がではない。汝の意志が重要なのだよ」
 ナラカはすべてを肯定する、その痛みも迷いも抱えてそれこそ自分だと肯定する。
「己が抱く不安を呑み込み前を向くが良い。でなくば汝を救う為に尽力した者達に不義理であろうが。
 懊悩するなら、我等に仲間だと信じさせる気概を示すべきと思うが如何かね」
「うん、そうだね、私がんばります、今回のミッションを通じて、ルネだって、信じてもらえるように頑張る」
「それなら、ねぇルネさん」
 そう、澄香が手をあげた。
「呼輝の音って歌詞を変えた方がいいんじゃないかな」
 それはアルも思っていた。過激だと。後々彼女が苦しくなりそうな気がしたのだ。
「ルネさんの戦う気持ち、立派だよ」
「うん」
 ルネは澄香の話を冷静に聞いている。
「でも、此処まで押せ押せの歌詞だと印象操作に悪用されるかもね」
 メッセージの性質上味方の立て直しが済んで勝機が確実に見えたら歌うのがいいんじゃないかな?
 そうアルは考えた。けれどルネには言わない。
「敵を撃て、滅ぼせではなく、友を守れ、家族を守れ、な歌に歌詞を変えたらいいと思う」
「そうかな、私はこのまま謳いたい」
 アルはその返しに釈然としない思いを抱き、ルネを注視する。
「私の伝えたい思い、これだから、今回はこの歌でいきたいの」
 その言葉に静まり返った場を、『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』が切りした。
「では、ルネさんのアーティスト魂を信じましょう。さ、こちらをどうぞ。いつでもお待ちしております」
 

第二章 歌を届ける
 

 澄香は上空からその戦場の様子を見守っていた。
 乗り込んでいるのはスピーカーや照明、プロジェクター搭載型のヘリ。実は試験運用段階のものを先んじて持ってきた。遙華曰く今度試験運用につきあってもらうことが条件らしい。
 そこから先んじてミサイルを放つ。
 それは先行する弾頭は広域攻撃のAGW。しかし二番手で到着するのはリンカーを送り届けるためのポッドだった。 
 それを追う形で澄香は背中の翼を羽ばたかせる。
「ライブの開幕だよ!」
 みかんキャノンを従魔たちにべちゃべちゃ当てながら澄香は音楽を振りまいていく。
 そのドロップゾーンは世界に生まれた癌だった。疲れを知らない殺戮マシーンの様な従魔が日夜流出しており、今は中心にいる愚神を討伐できる戦力が無い。
 そのドロップゾーンの影響を抑えるために大量のリンカー兵士が投入されていた。
 その野営地にて、ディスペアに混じってねぎらいの歌を謳う少女がいる。
 たき火を囲って、夜の明りは星のみで、楽譜を開いてギターを奏でる。
「聞いたことあるでしょう?」
 アルが告げると、皆が口ずさみ始めた。切ない旋律だった。
 対して最前線では予期しない応援に兵士たちが沸き立っていた。飛行機から投下される戦力、いのりとイリスが土を削りながら着地。従魔兵を蹴散らして防衛線を構築する。
「これ以上先にはいかせないよ」
 後ろでは仲間たちが謳っている。
 それを思えば踏ん張れた。
――ははは、私とも踊ってもらおうか。
 告げるとイリスの翼が震えた。
 響く旋律は戦場で疲弊して忘れかけていた最初の戦意を思い出して貰う歌。『暁光ノスタルジア』。
 イリスは襲いくる敵の剣を盾で受けて剣で反撃。足を踏み抜いてバランスを崩し、盾で押しのけて後続の足並みを乱した。
 円を描くように切り上げ、敵を巻き上げて。
 従魔を一騎当千の様相で薙ぎ払っていく。
「大丈夫?」
 そういのりはイリスが押し上げた戦線に隠れて負傷した兵士たちを治療していく。
「うたが、歌が聞える」
 告げる兵士たちは背後を振り返りいのりに訴える。聞こえるはずのないベースキャンプからの歌だろうか。いのりは兵士を励ました。
「すぐにもどれるよ、肩を貸すからあるこう」
 その背後に迫った従魔の刃をイリスはティタンではじいた。
 そのまま回転運動で刃を滑らせ懐へ。
 盾で手をうち、刃をおとさせ。そのまま切り上げ従魔を絶命させるとあたりを見渡した。
「死にたい奴からかかってこい!!」
 高らかな歌で翼がふるえ、アイリスの歌声が重なるとイリスは刃を引き絞る。
「煌翼刃・螺旋槍」
 放たれる刃は槍のように従魔をねじ切って吹き飛ばした。
「澄香、次はどこに?」
 いのりは撤退をしながら澄香の指示をまつ。
「理夢琉ちゃんの方面にバックアップをお願い」
 その指示に頷くといのりは戦場へととんぼ返りした。
 そちらではトワイライトツヴァイ。つまり夕燈とアルトが歌を口ずさみながら戦場をかけていた。
 あたりにカチューシャで爆炎のリズムを刻む。
 多数対一はアルトのもっとも得意とするところである。
「てめぇら! あたし等が…………いや、あたしが来たんだ! さっさと根性絞りだせぇ!!」
「や~、トワイライトツヴァイやんなぁ、お姉ちゃんガンバろなぁ」
 その背後で、エフェクトとして理夢琉が光を放っている。
「アイドルってすごいなぁ」
――理夢琉も歌えばよかったんじゃないか?
「夕燈、大丈夫か?」
 そう従魔の攻撃でけつまずいた夕燈、それに迫る従魔を蹴り飛ばしアルトは手を差し伸べた。
「本当は怖いんじゃないか?」
 アルトがとった手は震えていた。
 夕燈は戦場という空気が苦手なのだ。
「大丈夫……大丈夫。あ、お姉ちゃんも居る」
 そう夕燈はアルトの背に隠れた。
 見れば従魔兵がずらっとアルトの前に並んでいる。
「お前ら! あたしの妹にてぇ出したら、ただじゃおかねぇぞ!!」
 その戦いは朝日が昇るまで続けられた。煤まみれのアイドルアルトは朝日を背に夕燈を振り返る。
 あまりに敵を倒しすぎて、いったん敵の波がやんだのだ、静まり返った戦場で。
 夕燈は歌を謳う。
 その歌に合わせ戦場の真ん中を白い童子が闊歩する。白江は小さな花を戦場に捧げ石を積み上げた。
 ここで消えていった命のために、白江は目を閉じ祈り続ける。
 その背を見てアルは思っていた。きっと白江が祈るのは人のためばかりではないのだろうと。
 ふと白江が視線をアルに向けた。その口は何も語らない。
 命はすぐに掌から零れ落ちてしまう。それはどうしても止められない。
 だからと白江は思うのだ。
 また来ます、全てのいくさを終えてから。と。

*    *

 戦場は変わって紛争地帯、ディスペアメンバーは戦場から離れた市街地で一般人たちを集めていた。
 その異国の文化に圧倒されるばかりの地元民。唖然とした表情を見送ってエストはフードをかぶって下水に降り立った。
 作戦開始三十分前、このまま先行し、戦いが始まったころに内部から奇襲をかける。
 そう、腕の中の刃をぎらつかせるエストである。
「自分で選んだとはいえ、この剣の初陣がアイドルのサポートになるとは……」
――性能的にはあってると思うけどぉ?
 なんだか嬉しそうなシーエである。
「影殺剣は伊達じゃない……か、次行くよ」
 プロンプター澄香の指示はこうだ。
 敵の装備の脅威度の高さからバックの存在を警戒。
 敵地に潜入しての拘束での無力化、電撃作戦。
 さらに澄香側では交渉も行う。クラリス主導での証拠隠滅防止に、無力化後の引き渡し先をH.O.P.E.にする為、グロリア社経由でH.O.P.E.上層部に作戦として立案。
 A国の顔を立てつつ話を付け、人質の受け入れ先もH.O.P.E.管轄の病院を手配。
「現地の戦力との衝突・摩擦を避ける為、事前連絡を徹底して下さい。こちらの根回しはすんでいます。トラブルには100%対応して見せます」
 冷静に告げる澄香の声。
 作戦が始まる。
 真っ先に動いたのは『魅霊(aa1456)』。
 彼女も先行して潜入していたのだが、町の内部を見て回れば回るほど不自然だと感じた。
「施設・兵器の点では合点がいきますが、行動が消極的に過ぎるような」
 そう『R.I.P.(aa1456hero001)』に問いかける魅霊。
「姉さんは『存在が知れてるテロリストは氷山の一角)という可能性を指摘しましたが、或いは本来テロに発展する程の攻撃性を持たない一般市民であった可能性も」
 ペインキャンセラーが登場したのも不自然だと魅霊は感じていた。
 直後外で爆撃音。
 それに乗じて外壁の外に意識をとられたテロリストを路地の闇に案内した。
「聞きたいことがあります」
 そう喉元に刃を突き立て魅霊は知っているすべてを話すように要求する。
「おら! そんな防備でアタシをとめられると思うんじゃねぇぞ」
 ガトリングを両手で装備したアルトは弾丸を的確にテロリストたちへ叩き込んでいく。
 硬く閉じた護りの上で、銃を乱射するテロリストたちが次々と倒れていった。
 その背後では夕燈が震えてる。
「大丈夫だ。あたしが守ってやる、謳うぞ!!」
 夕燈はその言葉にマイクを握った。
「歌うのも、頑張る。だけど」
 告げる言葉は優しく思いやりにあふれている。その歌もまた。
「きっと。戦って欲しくない、とか。お家帰って温かいお布団で寝て欲しいような、当たり前な幸せさんに戻って欲しいなぁって気持ちで歌うの、それがいっぱいになったら、きっともう怖くあらへんよ」
 そう戦場に似つかわしくない表情で柔らかく歩み寄る夕燈。正門を固める塹壕や鉄板の盾、その防備が無力であると言わんばかりにセーフティーガスで全てを眠らせた。
「おやすみさん」
 それでもなおあふれ出てくる戦闘員に対してはアルトが対応した。
「……お姉ちゃんはうちと違って戦うのすごいさんやから……じゃ、邪魔にならへんように……」
 ブラックテールにて支援をする。
「あ、あ、うちも黒尾さんでていていするよ。する」
 そうアルトに走り寄る戦闘員は足を引っ掛けて転ばせた。
「足引っ掛けて転んでもろーたら、頭かみぞおちさんをていていする。ってあぐやんから教わるさん」
 その突入に際してエストが人質解放のために動いた。
 魅霊の情報ですでにどこに人質が収容されているかは共有されている。
 エストならばその施設にいくだけで奪還できるだろう。
 素早く正面を守っていた敵に歩み寄り、腕を抑えて銃口を下げさせる、肩を掴んで盾にしつつ、迫る敵を回し蹴りで吹き飛ばす。拘束した兵士を投げるように解放すると逆サイドに走って剣で銃を解体し、そのまま窓を割って内部に突撃すると魅霊と合流して、人質の安全確保を優先した。
 扉を開けるエスト、人質の少女と目が合う。
 その少女にたいして、しーっと人差し指をたてて合図すると少女は頷いた。
――イッケメーン♪
 小声のシーエ。
「もう……茶化さないでよ」
 そう、背後から迫る敵に肘鉄を食らわせ気絶させる。振り返ると、廊下を押し合いながらこちらに向かってくる敵軍団がいた。
 そのまま施設の位置をプロンプターに伝える。
「わかった、いのりの指示に従って」
「はいはーい、二人とも一回の調理室あたりに降りてきてもらっていいかな」
 いのりは見取り図を回しながら見ていた、口でライトを噛み薄暗さの中控える。
「建物の破壊許可は下りてるよ」
「最短距離で行くんだね」
 次いでいのりは下水の天井部分を吹き飛ばし、穴をあける。
 そこからであれば一直線に危険域を抜けられるのだ。
「監視カメラはクラリスがマスキングしてる」
「施設周りの敵は全員無力化してるから大丈夫」
 その言葉にエストが言った。これでしばらくばれる心配はない。
「下水道の先には現地軍が待っているはずです。なので軍に一般人を預けて戦場に戻ってください」
 そう誘導されてきた一般人にグロリア社製のマスクを手渡す。
 下水道からしみ出したセーフティーガスは数々の施設に控えた後方支援のテロリストたちを眠らせたのだがまだガスが充満しているのだ。それをシャットアウトする必要がある。
「こっちだよ」
 いのりの先導に二人は従った。
 戦いは第二局面を迎える。
 ここで最大戦力を投入することを澄香は選んだ。
 アイリスと、カゲリである。
 二人は単騎で南北から強行突破、事態の収拾にあたる。
「もう人質は解放されている、無駄な抵抗だ」
 カゲリはそう戦闘員の腕をひねると、痛みに呻く戦闘員を無造作に投げた。
 インカム越しに聞こえるルネの声にカゲリは思うところはない。
 進むと決めた、だから征く――成すべき事があるなら、何処に歩みを躊躇う理由があろうかと、カゲリはそう言う人間だからだ。
 人質をつれたリンカーたちは下水道で地元兵と合流する、その中にアルもいた。
 アルは小さな少女の手を引いて下水を脱出するとディスペアのライブ、その輪の中へと向かわせるため少女の背を叩く。
「一緒に歌おう?」
 そうアルが曲を口ずさむと少女はアルに抱き着いた。
「歌は、こわいの」
「どうして?」
「なんだか、怖いの?」
 大丈夫だよっと暢気に笑って少女を慰めるアル。
 ただ、その言葉の真意を測れるようになったのはさらに、さらに後の事である。

第三章 残響
 夜空に閃光が瞬いた、絶望に支配された戦場に降り立ったのは、魔法少女クラリスミカ。
 上空から颯爽と登場した。
「お待たせしました!」
 告げるとエンジェルスビットから響いてくるのはアルと志錬の歌。
「皆さんの戦い、絶対無駄にはしません!」
 サンダーランスをもう一度アスモデウスに叩き込むと、他のリンカーが一斉に動いた。
「ルネさんのアイドルでびぅは……このボクが!全力で!援護しますッ!」
 今回プロンプターを務めるのは燃衣。
 燃衣は趣味でルネに似合う白基調の服を用意、その服にルネはご満悦だった。
 その号令にてアルトはミサイルをぶち込みアスモデウスをいったん退ける。
「てめぇら、あとちょっとじゃねーか! 明日の分の限界を絞りきりやがれぇ!!」
 カゲリが戦場の中央を切った、真っ向からアスモデウスと切り結ぶカゲリ。
 たった一人で強大な敵に立ち向かうその姿は倒れ伏したリンカーに希望を与えた。
 その手の刃。天剱の輝きが増す。
 素早く十字に斬りつけるカゲリ。
 その痛みをこらえて反撃しようとしたアスモデウスの攻撃をアルが受ける。
「バトンタッチだよ!」
 アルの動きに試練が合わせた。
 行動の先を潰すようにアルはアスモデウスの攻撃を受け、志錬がその半歩後ろから四肢を重点的に狙うことで攻撃を潰していく。


――傍で聞こえる叫び声 戦士たちの蜂起
 もう迷ってる意味はない 立ち向かうのが決意
 機械仕掛けのこの街で 僕ら出会った
 支えたいと思う理由は それだけで十分だろう

――命がけの戦いに足は震えて それでも
 僕は人間でありたい 優しき心、胸に抱いて

 二人が声重ねるその歌の名は『The Symphony』。
 リズムを刻むような志錬の発砲音にアルの動きは加速する。
「今のうちにみんな逃げて!」
 いのりと燃衣が撤退を支援する中。イリスも参戦、アルとイリスで敵の動きを制限していく。
 直後アスモデウスが距離をとった。
 その手には闇。
「集まってください」
 イリスの声が響くが、アルと志錬の歌は止まらない。

――僕は希望を求む者 未来を掴むための腕
歌声が身を誘うのなら 暗闇拓く歩を刻もう

――僕は嵐に向う者 前を見据える双眸
 歌声が身を誘うのなら 暗闇拓く歩を刻もう

 放たれた暗黒魔法から二人を守る。
 志錬は視界が暗く閉ざされていく中目を凝らして敵を見すえる。
 蛇の眼、精確には感覚器官に対して闇は無意味である。
 放たれた弾丸が肩を砕いた。
 アスモデウスの悲鳴がこだまする。

――I will sing forever.(僕は寄り添い続けるよ)
 The Symphony makes we brave. (貴方といれば、ともに勇敢でいられる)

 その曲の終わりと共に背後に回ったナラカ。
 その剣はアスモデウスが発する闇を容易く切り裂く。
「続くよ! 『騎士の歌』」
 膝をつくアスモデウス、あと一押し、そうアルは歌に思いを込める。
――命がけの戦いに足は震えて
 それでも僕は英雄になりたい
 気高き心、胸に宿して

 その歌に込められた意味。それを強く強く押し出す謳い方。

――僕は貴方を守る盾
 哀しみ払うための剣
 僕は嵐に挑む櫂
 前を見据える羅針盤
 暗闇に身を囚われたなら貴方を導く歌になろう

 その歌にアスモデウスは頭を押さえ、苦しむように揺らめいた。
「今がチャンスです」
 燃衣が告げると理夢琉がルネと手を繋いで突撃する。
「あなたからメインでいって、理夢琉」
「わかったよ、ルネ!」
 
――君の思いは近く遠く 守る希望になる
 君がふるう勇気の光は 失った絆の瞳 流す涙消せる武器になるんだ
 君に響け届け歌声のエール! 背中を押すよ 立ち上がれ!
 
 理夢琉の歌にルネのハーモニーが重なる。
 アスモデウスの暗黒の力が明らかに弱まっていく。 
 それにネイのシンセサイザーが重なり、さらに攻撃的に鋭くとがった音色となる。
――本気を出す。俺の音に負けるなよ、アイドル
「私好きだよ、そう言う尖った音色大好きだ!」
 理夢琉とルネはアスモデウスの前に立つと二人で霊力の奔流を叩きつける。 
 そのアスモデウスの巨体に隠れてカゲリが立っていた。
――私も歌っていいかな。
 ナラカが告げるとカゲリの手から放たれる五度の斬撃。
 アスモデウスが膝をついた。
 その間愚神の耳に届くのは、ナラカの鼓舞し讃える歌。

――恐怖も疲弊も理解しよう、だがそこで俯いて何になる
 仲間が傷付き斃れても、成すべき事があればこそ逃げずに此処にいるのであろうが
 ならば仲間の想いを背負い頭を上げるが良い
 諦めるな、前を向け。その先には必ずや光ある故に――
 
 それは全てのものへのメッセージ

――暗黒、焔を以て浄滅して祓うのみである

 ナラカの言葉を合図に燃衣が魔力の渦を切り裂き飛び込んできた。
――……アエーシュマ。
 そこにいたのは燃衣。
――スラオシャのご登場だ。お前も音を『聴いて』いけ。
 放たれた拳は貫通連拳。
 そのあまりの突破能力に容易くアスモデウスの体は砕け散った。
 燃衣が拳の熱を握りしめて立ち上がった時、その場に音楽があふれていた。

   *   *

 全ての任務が終了すると、休憩室として設けられたホテルの一室で全員が顔を和せていた。
「あー、その、なんだ……てめぇの歌も、嫌いじゃねーぜ。わりぃな、態度が悪いのはもとからだから、気にすんな」
 そうアルトが握手を求めるとルネは笑顔で応じる。
 外ではリンカーたちをねぎらうためのライブが行われていた。
 少しでも明るく前に向いていけるような歌をそう歌う傍らでエストが護衛を務めていた。
「あれが、あの人の愛した曲……か」
 そのエストへ梓が手を振るとなんとなく視線をそらしてしまうエスト。
――一気にファンになっちゃったかしらぁ?
「それは歌を聞いた時点でそうだよ、人も歌も素敵だった」
――なら、次はエストも歌いましょうねぇ♪
 告げるシーエに慌てふためくエスト。
「え、いやそれは……」
 それを眺めながらルネは告げる。
「春香も来てくれればよかったのにな」
 そのルネにイリスが問いかけウr。
「春香さんとなにかあったんですか?」
「なにもないよ、だから不安なんだよ」
 いのりが迷うように告げる。
「春香、ガデンツァの任務で少し様子がおかしかったんだ」
「うん」
「一度、春香やerisuちゃんも交えて、今までのことやこれからのことについて、よく話し合った方がいいんじゃないかな」
「うん」
 そう沈むルネに理夢琉が声をかける。
「ルネさ……ルネが帰ってきて嬉しいけど否定されたらって不安なのかも」
 理夢琉は思う、病院に出現したルネに会いに行けなかった時の自分と、今の春香。それは同じ気持ちなのではないかと。怖かったのだ。
「ちゃんと話す機会があれば新しい絆を結べるよ、手伝わせて」
「うん、ありがとう、頼りにさせてもらうね」
 そんな一室から少し離れた個室にて、澄香とクラリス、そしてロクト。魅霊が顔を合わせていた。
「ねぇ、澄香さん。ルネの歌、どう思う?」
 そうロクトに問いかけられた澄香、代わりにクラリスが答えた。
「私たちはおかしいと感じました」
 だがその言葉に魅霊は首を振る。
「ルネさんについては、皆が希望する歌の内容に首を傾げてましたが。私は妙に納得しています」
「というと?」
「”当時”のルネさんにとって、希望への道は[殲滅]以外になかった。それ以外の手を探り取るには間に合わなかった。
 姉さんが聴いた『ほろびのうた』は、言わば苦肉の策。
 そして、”現在”まで存在すら許されなかったルネさんの時間・心情は、未だその時のまま……」
 その言葉に誰も口は挟まない。
「私たちはルネさんが希望と共に遺した歌で、未来を繋いだ。
 ただその過程で、詞は間違いなく変質を遂げた。
 [脅威を滅ぼすことで希望を得る]形から、[希望を共有することで脅威に打ち克つ]形へ」
 あの冬、一度譜を託された私ならそれが理解る。そう魅霊は胸に手を当てる。
「魅霊さん、あのことを思ってくれてありとう、でも違う、違うのよ。あなたなら私の言葉を解ってくれると信じてる。だからお願い。どうか真実に気が付いて」
 ロクトはそれだけを告げると大部屋に戻って行った。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • トップアイドル!
    小詩 いのりaa1420
    機械|20才|女性|攻撃
  • モノプロ代表取締役
    セバス=チャンaa1420hero001
    英雄|55才|男性|バト
  • 託された楽譜
    魅霊aa1456
    人間|16才|女性|攻撃
  • エージェント
    R.I.P.aa1456hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • ~トワイライトツヴァイ~
    鈴宮 夕燈aa1480
    機械|18才|女性|生命



  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • 見つめ続ける童子
    白江aa1730hero002
    英雄|8才|?|ブレ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中



  • もっきゅ、もっきゅ
    依雅 志錬aa4364
    獣人|13才|女性|命中
  • 先生LOVE!
    aa4364hero002
    英雄|11才|女性|ジャ
  • 決意を胸に
    エスト レミプリクaa5116
    人間|14才|男性|回避
  • 『星』を追う者
    シーエ テルミドールaa5116hero001
    英雄|15才|女性|カオ
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