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コズミックソーサラー
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隕石迎撃作戦
最終発言2018/02/08 12:50:31 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/02/07 23:54:21
オープニング
● バーサクソーサラー
それは突如現れた。宵闇を見に纏ったような外套は広く、数キロ先にまでつづいている。
ただし本体は華奢。どう見ても身長160センチ程度のいかにも魔法少女という風貌の人物が中心にあり。
その女性は一つ、妖艶な笑みを浮かべると。脂汗をうかべながら呻き始めた。
すると、するとだ。
その広がったマントの中に、百万の星のきらめきが見えたかと思うと。
薄い膜をひきちぎるように丸い何かがマントの中からいくつも、ぼこり、ぼこりと生まれた。
それは鉄分を多分に含んだ巨大な石で、小柄な少女と比べることができないほどに巨大だった。
それを少女は地球に向けて射出する。
外宇宙から地球への侵略が始まったのだった。
その自体について司令官アンドレイはこう分析する。
「地球上の大気、大気圏で今のところ隕石は燃え尽きており、地球に影響は出ないだろうが、対処をお願いしたい」
地球を滅ぼす程度の隕石は射出できない程度の力らしいが、万が一という事もある。
「それに、これを見てほしい」
そうモニターに映し出されたのは愚神の少女。
その少女は額に汗を浮かべながらも、歯をむき出しにして狂ったように笑っていた。
「いや、見てほしいのは少女ではない」
画面を拡大するアンドレイ。その視線の先には宇宙の闇とも違う、蠢く何かが存在していた。
「あれは、愚神ではないだろうか」
アンドレイは告げる。
「この隕石、攻撃かと思われたがそうではない、あの愚神を引き寄せるための副産物なのではないだろうか。以前にも宇宙で愚神と遭遇したケースがある。つまり宇宙にはすでに愚神の根城があり、あの愚神はその愚神の根城ごと、こちらにワープさせようとしているのではないか」
矢継ぎ早にアンドレイは告げると、言葉をこう締めくくる。
「現時点より、あの愚神をケントゥリオ級愚神ソーサラーと呼称。グロリア社協力のもと、宇宙へ上がりあの愚神を撃破する」
そうアンドレイは宣言すると、画像を切り替え今回必要な装備について説明を始めた。
● リーンコスチューム
宇宙空間では足場が無いので、ジェット噴射などで移動力を確保する必要があります。
以前は翼を使っていたのですが。今回は新開発、リーンコスチュームというアイテムを皆さんに実験運用していただくことになります。
これは背中に翼上の噴出機なのですが。装着すると皆さんの服装や外見、装備のフォルムも変わります。
・スチームフォーム
茶色鈍色を基調としたスチームパンク風の衣装。装備に切り替わります。
翼から蒸気の様な物が噴出します。
イニシアチブが3上昇し、回避力が+200されます。
さらにシナリオに一回、煙を噴出することで相手の命中を半減させた状態で回避を行えます。
・サイバーフォーム
光沢のある衣装に代わり、翼からライトエフェクトが出るようになります。
電子技術の恩恵を受けやすく。
武器射程が+1され。さらに命中が+200されます
また、翼からの火力支援により、同時に二体の攻撃を攻撃できますが。一度使うと5ラウンドのクールタイムが必要です。
・マテリアルフォーム
魔法少女と呼ぶにふさわしい、可愛らしいコスチュームにかわります。
これは問答無用で魔法少女に変わるので、男性は注意です。
魔法攻撃力が10%上昇し、シナリオ中に一度だけスキルの使用回数を一回回復させます。
・バーサクフォーム
全身がどぎつい色に変色し、霊力の影を纏います。
爪や角と言った偉業を模した姿になるかもしれません。
このフォームは本来想定されていないもので、バグのようなものですが。能力は有用です。
その能力は常時攻撃範囲が+1されるというものです。過剰につぎ込まれた霊力が周囲を粉砕します。
また、両防御力が-400される代わりに両攻撃力を+800する、バーサクモードが使えます。
これは防御力が片方でも400を越えなければ使えません。
・セイントフォーム
光を纏った聖なる衣装に変わりますが、なぜか素材が薄くボディーラインが強調されます、セイントとはいったい……。
このモードではラウンド終了時、自分の生命力が最大生命力の5%回復します。
さらにこの不可効果を拒否する代わりにそのラウンドの終了時、周囲40SQの任意の対象が、この効果使用者の最大生命力の8%回復します。
● 戦場について
今回は地球から80KM離れた地点で戦います。周囲は隕石が浮遊するのみです。
地球の大気圏までは60KMほど距離があると思ってください。
皆さんが大気圏に突入したばあい、重力を吹っ切れないのでそのまま脱落の可能性があります。
●隕石について。
隕石については大きさが数種類存在します。
大きさで変わるので見極めが必要です。
隕石については無数に存在し、ソーサラーにたどり着けないように密集しています。
ただ、1000メートル級の隕石に関しては、シナリオスタート時ソーサラーの周囲に一つあるので、対処が必要です。
1~10メートル級
ソーサラーによって霊力が込められているので、防御力がかなり高いです。
他の隕石とは違い、一撃では破壊できないでしょうが。なぜか大気で燃え尽きるので見逃してしまっても構いません。
11~100メートル級
もっとも数が多く、大抵のリンカーは一撃で粉砕できます。
100~999メートル級
かなり巨大な隕石ですがリンカーにとっては簡単に処理できる隕石です。
ただ、攻撃の仕方によっては割れ、対処しづらくなるので注意です。
1000メートル級
敵の本命だと思われます。
この隕石は大気圏で燃え尽きないので対処が必要です。
せめて200メートル程度の破片に砕く必要がありますが。巨大すぎるのでむやみに攻撃しても表面を削るだけでしょう。
解説
目標 愚神ソーサラーの撃破
●愚神ソーサラーについて
今回ソーサラーと呼称される愚神は隕石召喚に集中しているので近づかない限りあまりリンカーを気にしません。
今回は地球には影響を与えない程度の隕石をリンカーに飛ばしてきます。
彼女の攻撃範囲。周囲20SQに入ると、攻撃を仕掛けてきます。
・五連魔法弾
シンプルに五人に魔法攻撃を仕掛けます。
・マグネット
隕石と隕石に干渉してそれで押しつぶそうとします。
任意の隕石二つを消費して、リンカー一人に高命中、高物理ダメージを与えます。
・発狂腕
意識が乱れる毒を手刀で体内に送り込みます、
射程が短い代わりに命中が高くかわすのが困難です。
特殊抵抗に失敗した場合。リンカーは二つのBSのうち片方を選べます。
1 リンクレートの減少。
レートが2下がります。また、現在のレートが8を超えているリンカーはレート減少後にレートが1下がります。
2 発狂状態の付与
能力者か、英雄、どちらかが発狂します。仲間と意思疎通できなくなります、かろうじて共鳴相手とは意思疎通をかわせるようです。
この状態になると、黒い悪夢を見るというのですが。
詳細は攻撃を受けてみてからわかる事でしょう。
リプレイ
プロローグ
大気が薄くなる。そんなアナウンスを聞いて、リンカーたちは共鳴を開始した。
この先もし何か事故がありシャトル内の空気が抜けてしまえば、生身の人間は死んでしまいかねない。
そんな死で溢れるシャトルの外を眺めて、宇宙ベテラン組は余裕の構えだった。
「隕石召喚とはまた厄介だな」
『赤城 龍哉(aa0090)』は告げた。
――この宇宙でどこからエネルギーを得ているのか、そろそろ探るべきかもしれませんわね。
『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』はそう以前の戦闘を思い返す。
月から飛来したとされる謎のタコ型従魔。奴らも宇宙にただ沸いたにしては強力な奴だった。
「宇宙ですか懐かしい……というのもすごいですね」
『構築の魔女(aa0281hero001)』は『辺是 落児(aa0281)』と共鳴、主導権を握り姿を変えた。
その体はすでに配給されたリーンコスチュームを身に纏っている。
緋色の無駄を削ぎ落としたパワードスーツと言った趣だ。
そんな臨戦態勢のリンカーたちはまだいいが、中には自分がなぜここにいるのかわかっていないものもいる様子。
「第3回魔法少女選手権と聞いて……え? 違う? 帰っていいですか?」
そうハッチをあけようとする『橘 由香里(aa1855)』の首根っこを『飯綱比売命(aa1855hero001)』が捕まえる。
「やめてよ、フリルが破れるでしょ」
そう由香里は僅かばかりの抵抗の意思をみせるとスカートを翻して飯綱比売命に抗議した。
コスチュームはセイントとギリギリまで迷っていたが、やっぱりこっちよりセイントの方がよかったと発射してから気が付き。
テンションがダダ下がりしていたのだ。
だがそれも、同じような見た目の『イリス・レイバルド(aa0124)』を見れば、暗い雰囲気は吹きとんだ。
なにせ、彼女は魔法少女であることに堂々としていたのだから。
「魔法少女推進委員会です。広めよう、魔法少女の輪」
そう背中の翼をぱたぱたさせ、いつもよりフリフリな衣装を見回してみるイリス。
「魔法少女は空を跳ぶもの。でも今度の魔法少女は宇宙を飛びます」
――アイドルは否定するが、魔法少女は否定しない不思議だよ。
『アイリス(aa0124hero001)』が告げた。
「魔法少女 ルミナス イリス はじまります」
そのイリスの言葉に由香里はぼそりと口ずさむ。
「…………わ、私も頑張る」
(こやつ最初あれだけ文句言っておったのに、随分と魔法少女ネタに染まりおったな……)
そう飯綱比売命は溜息をついた。
「まあ、よいではないか、いつものレオタードベースコスにフリフリが増えてパワーアップしてるように見えなくはない」
「蛍丸、すきかなぁ」
「…………すきじゃろ! たぶん」
そう飯綱比売命はなんとか由香里をなだめることに成功した。
「普段と違う感覚はなかなか慣れないわね」
そう由香里と同じようにコスチュームを気にするのは『水瀬 雨月(aa0801)』。
彼女はつるっとした表面のサイバーフォームを選択していた。ボディーラインが強く出るのでなんだか恥ずかしいのだ。
そんな雨月だったがシャトルに衝撃が加わってよろめいた。
「小さな隕石のようですね」
小石大の隕石がぶつかったようで、窓から外を眺めていた構築の魔女は呻いた。
その視線の先には小型だが、人よりは大きい隕石。そしてもっと巨大な隕石とずらずら続いている。戦場に到着したのだ。
「小隕石が気になります。皆さん警戒を」
そう構築の魔女が告げると、出撃用のハッチが開く。
「隕石自体が故意に大気圏で燃え尽きるように作られている可能性もありますね。状況変化には気を使いましょう」
そう構築の魔女が告げるとリーンコスチュームの出力を全開にし、宇宙へ飛び出した。
「地球の大気中に何かを散布している可能性もありますか」
その視界の先には報告通り、ソーサラーが君臨している。
それを見て『晴海 嘉久也(aa0780)』は思う。
「ええっと……どこの世界から来たんでしょうかね……」
『エスティア ヘレスティス(aa0780hero001)』ががどこかで見た様な妙な表情で見ているようだが、確証が持てない話につきあっている時間は今はなかった。
「とにかく、この先兵を叩くのが今回の仕事ですね……久しぶりの高高度ですが……それも、推力を得にくい過酷な領域で、想定している地上800kmで考えますと、慣性と距離感が敵ですね……」
第一章
「また、宇宙へ出撃するのですね……」
――つぐつぐこの世界の技術力というのは恐ろしいな……。
『月鏡 由利菜(aa0873)』と『リーヴスラシル(aa0873hero001)』は真っ先に空へと飛び出した。
ウィリディスと共鳴した時の衣装『天衣アンゲルス・ストラ』が、ラシルとの共鳴で再現される。
「こ、これは……アンゲルス・ストラ!?」
驚きの声を上げる由利菜。それにリーヴスラシルが解説を挟む。
――ユリナがリディスと共鳴していた時の記憶から再現されたのか……?
「しかもこれは、ただの再現ではない……。癒しの力が備わっているようです」
「さて、と……それじゃあ、やろうかAlice」
――そうだねアリス。
宇宙に一つの流星となって射出された『アリス(aa1651)』もしくは『Alice(aa1651hero001)』。彼女らはバーサクフォームの輝きを纏い目の前の隕石たちを撃ち砕いていく。
(すごい色だな……)
その視界の先には大きく口を開くさらに別の宇宙。
その中心に大きく黒く広がるのは危険性を匂わせる例の愚神だろうか。
(宇宙に愚神、そういえば確かに前にもいたな……)
とアリスは何時ぞや参加した依頼を思い出す。
それとは逆回りで隕石の群に飛び込んだのは『世良 杏奈(aa3447)』。と言っても今回は『ルナ(aa3447hero001)』が主体のようではあるが。
「ルナティックローズ・セイント参上!」
――その衣装も素敵よー♪
親ばかの声を聴きながらルナは前方に魔力を集中。そして迫りくる隕石を焼き切った。
そして赤と金色のエフェクトを弾かせて砕けた破片を蹴ることで方向を転換。
その手に赤いバラを閉じ込めた、ピンク色のハート形の結晶を掲げ、そこから放たれた薔薇の花びらが隕石たちを切り裂いていく。
「いっけええええ!」
リーンコスチューム・セイントフォームの輝きによって、ルナのいつもの魔法少女衣装に金色のパーツが取り付けられている。
さながら、劇場版の魔法少女と言った趣である。
そんな魔法少女たちの活躍によって注意をひきつけられる愚神。
その背後に素早く回り込む影があった。
『榊原・沙耶(aa1188)』である。いや今日は『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)』が主体のようだ。
セイントフォーム特有の神々しい輝きで、誰も得しないボディーラインを覆い。
「ちょっと!! 誰も得しないボディラインって言ったの誰だ!」
…………。あえてソーサラーの作ったゲートの向こうに赴こうとしている。
それはアンドレイ司令官が懸念していた蠢く何かを観察するため。
「あれ。私と同族の香りがすんだけど?」
沙羅はあふれる冷や汗をぬぐって告げる。
愚神へは背後から適宜対応しつつ。沙羅は『宇宙に蠢く何か』への対策を全面的に担当した。
「とっとと片付けるぞ」
そして敵陣中央を突破するのは龍哉。
その背中からなびく黒いマントは無機質だが、悪魔を思わせる翻り方をみせる。
――ビームが撃てないのが残念ですわ。
「いっそ全身発光して体当たりでも構わんぜ」
告げてその刃で、自分の何倍も大きい隕石を撃ち砕くと。
フリーガーに武装を持ち替え周囲に爆撃を見舞った。
バーサーカーフォームの力を受けた霊力弾頭は破壊の嵐を生み、隕石をことごとく撃ち砕いていく。
「愚神のマントを!!」
そう告げる龍哉を、ソーサラーは冷たい視線で見下ろしていた。
* *
無数に連なる隕石の群は容易にソーサラーへとリンカーたちを近づけてくれない。
それはシャトルにも襲い掛かり、ぶつかれば致命傷となるだろう。
その戦場の中心で雨月は進行の邪魔になるものと大気の摩擦で燃え尽きないものを選別。
魔術で撃ち砕いていく。
魔力をリフレクトミラーで拡散。
砕かれた隕石は熱を帯びながら塵となっていく。
その砂塵を巻き上げながら翼でさらに戦場の奥深くに突っ込んでいき。
終焉之書絶零断章によって隕石を凍結させていく。
「なかなか、管理すべき情報が膨大ね」
隕石たちはお互いにぶつかったり、離れたりして変則的に動きを変える。
それに対応するのはなかなかに難しかった。
しかも迫りくる1000メートル級の隕石。
押しつぶそうと迫るその隕石を見ると、雨月は終焉之書絶零断章の前方に構えた。
「出し惜しみはしないわ」
それにアリスも動きを合わせた。
二人のサンダーランスが轟音と共に隕石を押しとどめ穿っていく。
「くっ……」
それでも隕石の推力は弱まらない。
「あと少し」
なんとか接近組の道を作りたい。
だから。射程ギリギリの巨大隕石にアルスマギカからの攻撃をありったけ、浴びせていく。
だが広がっていくのは穴ばかり。
「どうする?」
アリスは自分に問いかけた。その結果が突入だ。
内部に進むアリス。
その突入を見送って、雨月は周辺の邪魔な隕石を破壊することに専念した。
愚神は先ほどから隕石を操り巨大隕石にぶつけ、その推進力にしている気配もある。
さらには。
「甘いわ!」
リンカーたちを挟もうと放たれた隕石を雨月は目と鼻の先で粉砕する。
その雨月の背を押すように熱風が駆け抜けた背後で無数の隕石が爆発する。
カチューシャによる爆撃だ。晴海が小型隕石を爆破してそしてできた突破口を颯爽と駆けて行った。
バーサクフォームの装甲の薄さは異常である。一撃でも攻撃をくわえられようものなら飛行不可能になるレベル。
だがそれでも晴海は畏れはしない。
「まあ……いつもと姿が変わらない気が……」
200M級の隕石を捌きながら、愚神へと徐々に近づいていく。
16式60mm携行型速射砲の側面で迫る隕石を弾いた晴海は巨大隕石へと攻撃を加えていく。
重力に引張られ過ぎない様に、かつソーサラーに近づき過ぎないよう注意しつつ、隕石を減速させるように弾丸を撃ちこんだ。
だがそれでも1000M級の隕石にはヒビも入らない。
一応、砕けて徐々に小さくはなっているのだが。
「もー、数が多すぎるわよ! 邪魔でしかないわ!」
その破片を処理するルナが喚く。
「けどやっぱり……」
そんな隕石処理をしていたルナは気が付くことになる。小さい隕石が妙に壊れにくい事に。
やがてルナは小さい隕石は何か特別な役目があるのではないかと推測し近寄ることになる。
そしてルナは中身を見てしまった。ぎょろりと覗く瞳。
ルナは叫んだ。
「きゃああああああ! なにこれ!」
しかし杏奈は強かった。
――ルナ! サンプル回収急いで!
ルナは泣きながらその隕石を一つ、シャトルにつむ作業に専念することになった。
第二章 魔笛
沙羅は宇宙に瞬く仲間たちの光を眺めながら、隕石を殴っていた。
「ああ! 重たい!」
沙羅の役目は宇宙空間の隕石を愚神方面に殴り、愚神の処理能力をオーバーさせること。
そして隕石に紛れて接近する事。
仲間たちの手が愚神に届くのも近い。
それまでに合流しなければ、そう沙羅が焦りの表情を浮かべた時。
小型隕石から、無数の視線が沙羅を見ているのがわかった。
「笑っているの?」
あまりの不気味さに沙羅は鎌を振るうと、それは一撃で砕け散った。
胸にもやもやとした危険意識だけが残る。
対して隕石を担当している者達は。
順調に小型、中型とさばききり、大型隕石のみとなった。これを迂回していては大幅なタイムロスであり、また攻撃に転用された場合の被害が計り知れない。
「ふむ、小型隕石でも、私なら一撃ですか」
壊すのに慣れてくれば脆い部分も分かるようになってくる。構築の魔女の技術があれば崩壊の一点をつくことなど造作もないのだろう。
「無重力下ならば外部からの衝撃で軌道が変わるはずですよね」
構築の魔女は弾丸で軌道を操作。一か所に隕石をまとめることで纏めて処理をする。
「地球へ向けて軌道が修正されたならば隕石自体が従魔の可能性もありそうです」
だが問題は大型の隕石だ。
その砕かれた破片を処理するのも大変だが、砕くのも一苦労で、それは他のリンカーにまかせるしかない。
見れば晴海が飛びかかった。
その隕石の表面に入ったひびにNAGATOを突き立てると気合一発。そのまま高速で駆けバリバリと隕石表面を削っていく。
大きくひび割れた巨大隕石。さらに深いひびが隕石表面に走った。
そのひびから吹き荒れるのは風。
アリスが隕石内部から霊力を伴った風を噴出させている。
その暴力的なまでの爆風は内部から風船を膨らませるような圧をくわえていく。
それに構築の魔女も加勢した。
「ふむ、その場に留めて障害物として利用できないでしょうか?」
そう壁としてなれべていた隕石に巨大隕石が衝突すると衝撃でいくつものパーツに砕け散り、砕けたパーツも銃弾で粉砕していく。
「これなら……」
そしてアリスが放ったブルームフレアにて、巨大隕石は内側から粉砕。
ダメ押しに由香里がパイルバンカーを抱えて突進した。
「隕石っていっても石だもの。物理を上げて殴れば割れるのよ」
――魔法少女って何かのう……。
飯綱比売命は溜息をついて由香里を見送る。
周囲にバラバラに散ることになる。その濛々とたちこめる煙の中に、由香里はいた。
撃針を戻しつつ巨大薬莢を排出。すぐさま加速しパイルを再び構え直す由香里。
ここに突破口が開けた。
「フリフリし過ぎて動きにくい。というかやっぱり似合ってない気がする……。いつもの奴の方が良くない?」
その開けた道をゆうゆうと飛び去る由香里。
――ああ、うん。そうじゃな。なんか疲れたので突っ込まぬが。恰好より仕事をちゃんとしようかの?
「だいたい魔法少女だったら遥華呼んでくるべきだと思うのよね。こういうの遥華の方が似合うでしょ」
――次があったらロクト殿にそういう要望出しておくとよいぞ。……多分じきにくるじゃろそういう依頼。
遙華がこの時くしゃみをしたのはここだけの内緒の話。
「さて、残るは隕石の処理と、愚神だけ」
そう構築の魔女は戦域を見あげる。
彼女はまだ観察を怠っていなかった。
隕石と隕石を繋ぐ霊力の流れや繋がりの有無。
隕石群での魔法陣の形成や霊力の異常な収束等の特異な事象の有無。
「他の愚神を呼び寄せる何かの可能性もあるのですよね?」
まだ状況が読み切れない、その不安が構築の魔女を狩りたてる。
「……あのマントは厄介かな」
アリスが構築の魔女に聞こえるようにそう告げた。
「そう幾つも隕石を出されても面倒なんだけど。……手間が増える」
「そもそも、あのマント。あの愚神のものなのでしょうか」
構築の魔女は告げると迫る隕石に弾丸を浴びせて粉砕した。
* *
そしてついに、愚神とまみえることになった二人。先鋒を務めるのは最上位リンカーの一角である、由利菜と龍哉だ。
「私がディフェンスを」
「俺がオフェンスだな!」
先ず加速した由利菜はアイギスを装備し、その輝きでもって愚神の気を引く。
そして由利菜へ発射された隕石の影から躍り出た龍哉は小刻みに加速と原則を繰り返し翻弄。
先ずは一撃。ソーサラーに斬撃を見舞った。
「あああああああ!」
殺気と狂気にまみれたこれが耳をつく。
「ずいぶんと剣呑だな。差し詰め魔法少女ならぬ魔砲少女ってとこか」
ただ、エージェント名鑑でそんなリンカーを見た気もするが……という雑念を振り払って龍哉は頭を中心に回転。由利菜の突撃のスペースをあける。
由利菜は盾で愚神を殴り飛ばすと、振り上げられたその盾を足場に龍哉はさらに飛んだ。
「ともあれ、これ以上の隕石の不法投棄はノーサンキューだ」
羅號を構え直す龍哉。
「とっておきの大津波だ。喰らいやがれ!!」
「バーサクフォームの防御低下は著しいです。絶対に無理はしないでください!」
由利菜の声によって一行は、最終戦闘が始まったことを予感した。
第三章 外なる神
そこからのソーサラーは苛烈だった。
というより目の前の羽虫が敵対勢力で有ることに今気が付いたのだろう。
龍哉や由利菜以外のリンカーへもまとめて攻撃を仕掛けてくるようになった。
ソーサラーから放たれる無数の魔力弾。
それを避けながらの隕石処理は端的に言って面倒くさかった。
だが一度懐に入ってしまえば魔法など怖くない。
「魔法騎士C・ウィリデ参上」
――…………よいぞ~、もっとやれ~。
接近する勢いそのままにペイルブレイズを突き立てる由香里。その刃を体にうけつつ、掲げた手のひらから由香里に魔術を当てようとするが。
由香里は瞬時に退避。かわりにスイッチとして入ってきた由利菜が盾で魔法を弾き。背後から接近した龍哉が斬撃を浴びせた。
そんなリンカーたちへ左右から飛来する隕石。
それを由香里とイリスが受け止める。
どころか由香里はバーストナックルにて爪を食いこませ、その隕石をソーサラーに投げてぶつける。
放たれる魔術弾。
それをイリスはエイジスにて受け止めた隕石で相殺。その破片を足場に加速。
振り上げた刃でソーサラーを袈裟切りにした。
しかし、気になるのは。
――痛覚が無いのかな?
常にソーサラーが笑っていることである。
その時ソーサラーの手が伸ばされた。イリスはそれに生理的嫌悪感を感じて間一髪で回避。
背後から迫る隕石は由香里がパイルバンカーで受け止め粉砕した。
気が付けば檻のように隕石が配置されている。
だがそれはアイリスにとって計算の範疇。
「全部受け止めてやる!!」
その挑発に乗るようにソーサラーは隕石を一直線に配置。まるで城門を破る丸太のように連ねてイリスに叩きつけた。
「はああああああ!」
それにイリスはリーンフォーム、そして三重結界を全開にして耐える。
「煌翼刃・螺旋槍!!」
そして螺旋の一撃にて隕石の全てを粉砕した。
その背後から迫るソーサラー。それを。
「あぶない!」
由利菜が庇った。直後流れ込んでくるのは、言い知れぬ不安と、得体のしれない叡智。
その時愚神が初めて言葉を使った気がした。
『シッテイルカ』
――ユリナ、正気を保て。
『コノヤミノフカク』
――私が受け持つ。だから……。
『ワタシタチハ、いる』
直後、由利菜はその手を盾ではじいて距離をとった。
「くっ……誓約術への干渉……? ラシルと同調している精神がかき乱される……!」
――……安心しろ、ユリナ。この程度で私は邪英になどならん。
「ええ。私も、PTSDの発作再発なんてごめんですからね……!」
「背中ががら空きね!」
その時、隕石に紛れて接近していた沙羅がついに愚神と接触を果たした。
ネクロノミコンから放たれる冒涜的な魔術にて、放たれた触手がソーサラーのマントをひきちぎりその体から分離する。
「毒を以て毒を制す、よ」
振り返るソーサラー。ソーサラーは隕石に乗りその隕石の機動力をもってして沙羅へと接近。腕を伸ばすも沙羅はそれを盾ではじいた。
「発狂だか何だか知らないけど、私をパートナーとして行動しているのに発狂しない変態を舐めんじゃないわよ!」
返す刃で沙羅は盾でソーサラーの顔面を殴りつけた。
だがソーサラーはその間にも伏線を張っていた。由香里の背後から迫る隕石。その隕石は由香里と衝突するとソーサラーを巻き込んで別の隕石と衝突した。
苦悶の声が由香里の口から洩れる。
しかし何より、ソーサラーが気持ち悪い。
髪はぼさぼさでやつれている。目がらんらんと輝いている。あと息が臭い。
「魔法少女失格ね!」
そう隕石ごと吹き飛ばそうとした瞬間。
その手が由香里の腹部に触れた。
「く……」
由香里の胸に湧きあがるのは、暗い感情。
(何でわたし、こんな格好でここにいるのかしら)
そんな由香里を眺めて由利菜は思う。
――どうした、ユリナ?
「……宇宙と狂気、ですか……。まるでクトゥルフ神話のようです」
――クトゥルフ神話か……私は専門外だな。
「私もあまり詳しくはないですけれど……。隕石の中に輝くトラペゾへドロンでも混じっていたりしないかとか、そう考えたりはしますね……」
その由香里を助けようと迫るイリスだったが、逆にその腕に囚われてしまう。
その耳は、心は外界を受け付けることができないように狂気に浸される。
しかし、それに何の意味があるだろうか。
「お姉ちゃんはここにいる! 絶対にいる。だから、何も心配することなんてない!」
次いでイリスはそのソーサラーの腕を切り飛ばす。
ここで初めてソーサラーは痛みと戸惑いを表情に出した。
「あああああああああああああ!」
黒い悪夢など意にも介さないイリス。その体が狂気に囚われようと輝きを失わないのは、その体に愚神を殺すという作業が染みついているためである。
――まぁ、普段から発狂しているようなものだからねぇ。
少女のあり方として間違いなく間違っているがイリスは全く気にしない。アイリスも何も言わない。
そしてその混乱に乗じてルナとアリスが接近した。
反撃とばかりに飛んだ隕石も、ルナは撃ち砕き。
幻影蝶を放つ。
それと同時に構築の魔女が撃った。
信じられない長距離を針の穴を通すように。
「ここでしかできないことですが……模造とはいえかの愚神すら灼いた一撃ですよ……?」
そして愚神のもう片方の腕が吹き飛んで宇宙を漂うことになる。
次いで由利菜が背後を、イリスが前方をとった。
二人の霊力が増大していく。
「煌翼刃・天翔華」
黄金四翼を光刃に変えた連携攻撃。それに由利菜は。
――今回は回復と防御を優先している為、普段と比べると威力は落ちるだろうが……。
「だめ押しとしては十分です! エンジェル・キャリバー!!」
渾身の連撃を放つ。
「からの!」
刃を引き絞るように構えるイリス。
「煌翼刃・迎芽吹」
それはパイルバンカーのように絶大な威力を持ってうち放たれる。
ソーサラーの体が小石のように吹き飛んだ。
その背後を盗ったのは龍哉。
「バーサクの攻撃上昇はけっこうえげつないな」
――防御力皆無なところは正にバーサーカーですわね。
すでにそのうちに力を秘めている龍哉は羅號を渾身の力で振りぬき。
そして返す刃で縦に切りつけた。
「煌翼刃・鏖華繚乱!」
追いすがるイリス。その連撃を叩き込むと龍哉とイリスは素早く離れる。
薔薇が封印された結晶が強い輝きを放ち。
そこから黄金色のイカヅチが放たれた。
ルナのサンダーランスである。
その浄化の極光を前にソーサラーは滅するしかなく。
あとには塵と。
問題が残った。
エピローグ
雨月は隕石処理を一通り終えると『アムブロシア(aa0801hero001)』の指示でそちらを見る。
それは異質な光景。見ただけでも正気が削られそうな光景だった。
大きな顔がぽっかり空いた空間に引っかかっている。
そう、顔だ。しわしわで、ゴム質で、真っ黒に見えるが、あれは人の顔をしている。
ゲートを閉じる直前でその黒い塊がつっかえとなって閉じられないのだ。
その顔は口から多数のインベーダーを発射した。
消耗状態では分が悪い。
そうリンカーたちは判断し一時撤退を余儀なくされる。
結果
シナリオ成功度 | 普通 |
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