本部

希望を齎す者 ALPHA

影絵 企我

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/01/31 09:22

掲示板

オープニング

●駆けつける仲間と……
 突如、都市の奥底から激しいノイズが響き渡る。先行した仲間達は、慌てたように周囲を見渡した。次の瞬間には巨大な二つの黒い物体が這い上がり、竜のような姿と、獅子のような姿にその形を変える。澪河 青藍(az0063)は、顔を顰めて刀を抜く。
「休ませる暇なんか与えない、って……?」

 しかし、次の瞬間には激しい火力の一撃が真横から竜と獅子を襲った。顔面を抉られ、彼らは甲高い悲鳴を上げる。その隙に、君達は高速道路を駆け抜け仲間達と合流した。サイドカーに霊石を乗せ、ウサギのワイルドブラッド――住吉もまた君達の下へと駆けつける。白い輝きを放つ霊石は、タナトスの世界にあからさまに反抗していた。
[……皆さん、皆さん!]
 エージェントの通信機に、オペレーターからの通信が飛び込んでくる。
[良かった、繋がりましたね! その霊石は周囲のライヴス活性度を安定化させる能力があるようです……]
「って事で、協力させて貰いに来たんだ。微力かもしれないけれど、よろしく」
 住吉は力強く笑ってみせた。エージェント達は次々に現れる敵を見渡し、彼の霊石を囲むように武器を構えた。
[現在、ドロップゾーンの探査も進んでいます。……地下から膨大なライヴス反応が検知されました。恐らくその場にタナトスがいるものと思われます。また、塔の最上階と地下を巡るように、ライヴスの循環が行われています。頂上に、彼の能力を司る何らかのシステムがある可能性が高いので、可能ならそのシステムも破壊してください]
 となれば、手分けしなければならない。地下へとタナトスを追い詰める者達と、ここで敵を食い止めつつ、システムの破壊を目指す者達に。傷が深ければ、この時点での離脱も考えなければならない。武器を振るって敵と戦いながら、エージェント達は素早くそれを決めた。タナトス戦への参加を決めた青藍は、居残りを決めた君達に向かって頭を下げる。
「……では、行ってきま――」
「暫し待て」
 刹那、空から光が放たれる。そこから飛び込んできたのは、白い狐の仮面を被った一人の獣人。全身を白と金に彩られた和装に身を包んだそれは、広げた扇子を振るって夜の真砂のように輝くライヴスを降らせた。そのライヴスは、見る見るうちに先行隊の傷と疲れを癒していく。
「……さあ、行け」
「あ、ありがとうございます!」
 頭を下げると、青藍は中へと飛び込む。仲間達も続々と塔へと飛び込んでいく。それを追いかけようとした雑魚を纏めて跳ね返し、君達は武器を構える。その隣に獣人は降り立ち、大太刀を抜き放って八相に構えた。
「案ずるな。私はただの、フリーのリンカーだよ」
 嘘を付け。君達の中にはそうも言いたくなる者もいるだろう。しかしその言葉に込められた心そのものに、嘘偽りは無い。

 さあ、やろう。

 誰からともなく叫びが上がる。君達は得物を構え、異形の群れを迎え撃った。

メイン 従魔の全滅
サブ セントラルを10分以内に停止させ、一般人を守れ

BOSS(PL情報)
ケントゥリオ級従魔ガーディアン
 タナトスの作るドロップゾーンの機能不全により、ドロップゾーンに滞留したまま出現できない状態にあった従魔。竜型と獣型の機械が一体ずつ現れた。
①ドラゴン
・ステータス
 魔攻・生命A、命中・回避B、その他C~D。飛行。
・スキル
 カノン
 口蓋から放たれる直線ビーム。
 [頭部。魔法、直線10]
 ウィング
 翼から放たれる拡散ビーム。
 [翼。飛行可能。魔法、範囲5]
②ビースト
・ステータス
 物攻・物防A、魔防・命中B、その他C~D。
・スキル
 スクラッチクロー
 ライヴスで磨き上げられた鋭い爪。
 [近接物理。1D3回連続で攻撃する]
 ヒートテール
 熱を放つ尻尾の一撃。
 [物理、範囲3。命中時減退(1)付与]

一般敵
デクリオ級従魔デバイス
①ライダー×3
②レギオン×3
③ファントム×3

解説

フィールド
・高速道路。幅30sq。全長700sq。 
・タワー
 タナトスが構築した、ドロップゾーンに捕らえた人々の肉体をライヴスに分解する装置。100%起動する前にシステムを破壊しなければならない。
[タワー内部にはデバイスが10数体いる。機能を停止する場合、プレイングとステータス、スキル、目標時間を勘案した難易度判定を行う。構造は吹き抜けのある螺旋階段→制御室。10分経過で人が消滅し始める。]
・敵配置
 塔の前に立つエージェントを半径15sqの円で取り囲むように存在。

ゾーンルール
 死の舞踏
  最大生命力1割減
  回復アイテム効果半減
  全従魔の攻撃、防御及び生命+50

NPC
仮面のリンカー?
 いきなりやってきた、仮面をつけたフリーを名乗るリンカー。その正体はもちろん――。
・ステータス
 防御ドレ?
・スキル
 スロートスラスト リーサルダーク? ケアレイン?
 頑健な肉体 零距離回避?

住吉
 タナトスと縁のある兎のワイルドブラッド。H.O.P.E.本部に仲間達を預け、タナトスのDZに対抗しうる隠れ里の守護石と共に参陣した。恭佳の作った試作型のバイクを操作し、回復エリアと通信エリアを確保する。
・移動力
 最大50。
・守護石の効果
 半径10sq以内では外部との通信を行うことが出来る。毎EPに生命力が5%回復する。
・守護石のステータス
 物防500、魔防500、生命200。破損すると上の効果は失われる。

Tips
・仮面の人はお互いの体面のため正体を隠している。
・仮面の人のケアレイン?は一度しか使用できないが、体力と共にスキルの使用回数を全回復出来る。上手く使おう。
・住吉は移動に専念する。戦いには参加しない。上手くゾーンを配置しよう。
・前回参加者が英雄や武器、消耗品などの入れ替えを行う場合、仮面のリンカー?が不思議な力で外部直通の出入口を構築してくれる。お前正体隠す気あるの?

リプレイ

●仲間のために
『……ここは任せて先に行け、というやつね』
 四方に飛び回って敵のレーザー攻撃を躱しながら、迫間 央(aa1445)はマイヤ サーア(aa1445hero001)の呟きに頷く。その想いは、地下へと向かった若き好敵手へと向けられる。
「俺達が背中を預かる以上、後ろが気になって勝てませんでした、とは言わせんからな。勝ってこい」
 指先から放つ紅蓮の炎で寄り来る従魔を牽制し、世良 杏奈(aa3447)はちらりと後ろを振り返る。彼女の夫もまた、地下へと降りて最後の決戦に臨んでいるはずだった。
『アタシ達は上に行くでしょ? ドロップゾーンに閉じ込められた人達を助けなきゃ!』
「もちろん。世良家が集結したからには、怖いものなし!」
 ルナ(aa3447hero001)が問いかけると、杏奈は不敵に笑う。黒幕の企みをこの手で叩き潰せると思うと、腕が鳴る。
「お母さん、ここはよろしく!」
 杏奈は杏子(aa4344)に手を振ると、真っ先に建物の中へと飛び込んでいった。仮面の狐はちらりと杏子を一瞥する。
「そういえば、母娘だったか」
『その通り。私自身はまだ婿探しの途中だがな!』
 二枚の盾を飛び巡らしながら、カナメ(aa4344hero002)はそう言って胸を張った。狐は肩を竦めると、大太刀の切っ先を奇怪な獣へと向ける。
「それはご苦労。……なら、何としても勝たなければならないな」
『もちろん。お前だって死なせやしないからな』
 二人のやり取りが途切れたところへ、泉 杏樹(aa0045)がすたすたと駆け寄る。両手で薙刀を握り、彼女は長身の狐を見上げた。
「リンカー、さん。守護石の護衛をよろしくお願い、なの」
「委細承知」
 カナメと共に真正面から獣の爪を受け止めつつ、狐はさらりと応える。榊 守(aa0045hero001)は彼の横顔を見届け、そっと杏樹へ声をかける。
『(参りましょう)』
 杏樹は踵を返すと、央と並んで昏い塔の中へと足を踏み入れた。螺旋階段に向かって走りながら、杏樹は央と目配せする。
「大切な友達のみんなが、ずっと追い続けた敵。心置きなく戦えるように、杏樹も、援護するの」
「頼りにしてるぞ」
 言うなり、央は杏樹から逸れ、塔に潜む闇の中へと紛れていく。入れ替わるように鈍いノイズが響き渡り、塔の壁に張り付いていたどろどろの黒い粘液がねばねばと剥がれ落ち、三体の兵士となった。それは次々に高熱の刃を抜き放ち、先行していた杏奈の前に立ちはだかった。
「邪魔は……させません!」
 全速力で駆け抜けた黒金 蛍丸(aa2951)は、深紅の左目を閃かせる。兵士と杏奈の間に身体を差し込むと、“鬼哭”を振るってブレードを受け止め、反動を利用して兵士の肩口を斬りつける。
『(蛍丸様、左です!)』
 詩乃(aa2951hero001)が蛍丸の内で叫ぶ。二体の兵士が一斉に蛍丸へ向かって刃を振り上げる。蛍丸は槍を振るい、切っ先を一体へと向けた。
 杏樹がそこへ駆けつける。蛍丸と杏樹は共に長柄を振るい、兵士の攻撃を撥ね退けた。息の合った横薙ぎを喰らい、兵士達は思わずよろめく。その隙に蛍丸は杏奈に一瞥を送った。
「今です、世良さん」
「ええ、ヨロシク♪」
 杏奈はぱちりと指を鳴らすと、一輪の薔薇を模した箒を取り出し、それに跨り飛んでいった。それを見送ると、二人は改めて兵士と対峙しようとする。
 次々と轟く銃声。肩口やどてっ腹に大穴を空けられた兵士は仰け反りよろめく。咄嗟に振り向くと、対物ライフルやら大砲やら構えて、黛 香月(aa0790)と志賀谷 京子(aa0150)が兵士に狙いを定めていた。
「塔の上は任せたよ!」
『後背は追わせませんから、安心してください』
 京子とアリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)は声を張り、香月は黙って手を払うような仕草をする。杏樹達は体勢の整わない兵士達を撥ね退けると、杏奈の後を追って階段を昇り始めた。
「蛍丸さん、一緒に戦えて、嬉しいの」
「ええ。今日はよろしくお願いします。……無茶はし過ぎないようにしてくださいね」
 親友二人、無茶しいの二人は微笑み合う。詩乃は、そんな相方にチクリと釘を刺した。
『(杏樹様もですけど、蛍丸様もですからね! 皆さんの事、悲しませたらダメですよ!)』
「(わかってますよ。……今こそ修行の成果、見せる時です)」

「さて、と……来い」
 フィアナ(aa4210)は黄金の剣に巻き付けた五色の布を振るう。その動きに合わせて振り撒かれた清浄なライヴス。フィアナは剣を脇に構え、竜を見据える。竜もまたフィアナを見て、その口蓋を開く。
 歪な光が口蓋の中へ溜め込まれる。少女は懼れずに刃を天から地へと振り下ろし、ライヴスの塊を竜の頭に叩きつけた。
『太陽が世界の遍くを照らすために闇夜を引き連れるように、生と死は不可分な物。彼が愚神の矩を越えて、本当の死神になったというなら、彼の下す裁きもまた、運命なのかもしれない……』
 ルー(aa4210hero001)はそっとフィアナに謡いかける。敵の存在を肯定も否定もせず、曖昧に構えている。しかしだからこそ、フィアナの意志が誓いの通りの“光”を放つのだ。
「今、この場この時においては! 生は自分達の手で掴み取る!」

「初めてかな? その仮面の下って、イケメンさん?」
 砲台を取り回して浮遊体を次々に撃ち抜きながら、京子は悪戯っぽく笑いながら狐に尋ねる。狐は獣と対峙したまま肩を竦めた。
「どうだろうな。美形に生まれたつもりだが、君達にしてみればどいつも同じだろう」
『というより、どういった風の吹き回しなのです?』
 真っ直ぐで直感も鋭いアリッサ。彼については噂で聞きかじったくらいだが、それでもその正体には感付いていた。
『貴方は――』
「アリッサ!」
 構える兵士の前腕を吹っ飛ばしながら、京子はアリッサの言葉を遮る。軽妙洒脱に、映画の中にいるかのように、彼女は軽口を叩きながら戦う。
「そういうのはあと。こういうイレギュラーもたまには面白いでしょ?」
 月影 飛翔(aa0224)は京子達の言葉を横で聞き、自分はロケット砲を構えた。次の瞬間には、走り回るバイク達が爆炎に包まれる。
「フリーのリンカーね。本人がそう言うならそうなんだろう」
『本人は本気のようですしね。……私がバトルメディックなら、丁重にパニッシュメントを当てて差し上げたいところですが』
 ルビナス フローリア(aa0224hero001)が小さく毒を付け足す。周囲の仲間の反応で、正体には見当がついていた。ブレイブザンバーを抜くと、飛翔は自ら煙の中へと飛び込んだ。
「ガーディアンを抑えてくれているから善しとしよう。その間に、厄介な移動砲台を潰す」
『解りました。射線に注意してください』
 バイクは煙の中を抜け、車輪を鳴かせて素早く反転、エージェント達へ狙いを定める。
「そうはいかせない……!」
 煙の中から飛翔が飛び出す。振り抜かれた一撃はバイクの前輪を穿ち、騎手を地面へと転がした。
 竜はその有様を見下ろし、飛翔を狙ってその口蓋を開いた。レーザーの砲門が内部から迫り出し、どす黒い熱を溜め込んでいく。香月は巨大なライフルを片手で構え、迷いなく引き金を引く。
「タナトスの配下なら、この場で殺処分して差し上げよう」
 放たれた一撃は、竜の右頬に突き刺さり、レーザーの狙いを逸らす。直撃した高速道路の外壁は、飴のように溶けて奈落へと落ちた。
 竜は低周波混じりの唸り声をあげ、首を揺らして香月の方へと振り返る。アウグストゥス(aa0790hero001)は香月へ進言する。
『(威力は高いですが、多少の予備動作があります。懼れず踏み込むのがよろしいかと)』
「言われずともわかっている」
 香月は大剣を手に取ると、竜が翼を広げた隙に懐へと潜り込む。足を踏み込んだ勢いに任せて大剣を振り抜き、衝撃波で竜の翼を穿つ。
 獣と切り結んでいた狐が、香月の傍まで押し込まれる。香月は振り向き、獣の顔面に衝撃波を叩きつけた。
「精々足掻けよ。お前もまた私の手にかかるべき存在だ。この場でくたばるほど弱いのなら、敵が手を下す前に、私がその背を撃ち抜く」
「おっと……これには督戦隊もびっくりだ」

 片翼を撃ち抜かれながらも、竜は構わず大量のレーザーを戦場一帯にばら撒く。一発はエージェント達の間を摺り抜け、後背に構える住吉の方へと飛んでいく。アイギス(aa3982hero001)は素早く割り込むと、盾を構えて一撃を受け止めた。鈍い音が一帯に響く。内でその音を耳にした東宮エリ(aa3982)は思わず震えあがる。
「ひっ」
『これくらいどうという事も無いだろう? 大丈夫かね、住吉さん』
 アイギスは白いセミロングを流し、ちらりと後ろに振り返る。住吉はぺこりと頭を下げた。
『死神の主ね……何だかな』
 目の前で暴れるどす黒い敵を前に、アイギスは意識を巡らせる。援軍へ入る前にちらりと調べを通した限り、彼の言う“死神”はアイギスの知る死神とは無関係だった。むしろ、己自身で無関係性を主張していた。
『(そもそも、この世界にはちゃんと死神は居てくれてんの?)』
 誰が答える訳でもない問いを、彼女はドロップゾーンの虚空へと投げかけるのだった。

●天辺の取り合い
「央? ひさしぃ! どこ行ったの!?」
 杏奈は乱れ飛ぶ銃弾にレーザーを躱しながら叫ぶ。六体の従魔が螺旋階段を守る鉄柵の外から武器を構え、次々に乱れ撃っているのだ。箒の機動力でどうにか躱しているが、思うように上へと昇れない。
 そのくせ、央はいつの間にかどこかに行ってしまった。杏奈もルナも――それから私も――彼の姿を捉えられない。その御蔭で火力が杏奈に集中していた。
「くぅ……こういう場はシャドウルーカーがやっぱり有利みたいね……!」
『だって、隠密行動のプロだから……』
 螺旋階段の中に乗り込んで来た兵士が、小銃を箒へ跨る杏奈へ向ける。流石に無視は出来ない。杏奈が苦い顔をして身構えると、目の前で兵士達は横ざまに薙ぎ倒される。
「すみません。遅れました」
 槍の石突で兵士を階段に縫い付け、蛍丸は宙に浮かぶ杏奈を見上げる。杏樹もその隣に駆けつけると、薙刀を脇にし拳銃を懐から引き抜く。
『(細かい狙いはわたくしにお任せを)』
 杏樹は素早く銃口を天へと向ける。浮遊体が三人に狙いを定めていた。杏樹は力一杯に引き金を引く。しかし、守の素早い補助でその弾丸は浮遊体の中心に深々と突き刺さった。
「抵抗しなければ、僕達が貴方達を全滅させますよ」
 槍を振るって足元の兵士の首を切り裂きながら、蛍丸は大仰な動きで威嚇する。身の危機を感じた従魔は、銃口を蛍丸達へと向けた。ここぞとばかり、再び杏奈は箒を駆って空へと向かう。
「間に合え……間に合えええ!」


 血のように染まった黒い爪を振り上げ、獣はカナメに襲い掛かる。飛盾を浮かべて身構える彼女だったが、一瞬のうちにその爪から紅が失われた事に気付いた。
『ん……?』
 一、二、三度振り下ろされる一撃。勢いこそは変わらず派手だが、明らかに鋭さが失われていた。盾の縁を獣の横っ面に叩きつけて姿勢を崩すと、彼女は神妙な顔をする。
『下に行った仲間達もまさに今戦ってる、ってわけか』
「私達も気張らないとね」
 獣は全身の装甲を逆立てて唸ると、赤熱した尻尾を振り回す。アイギスは素早く飛び込んでその一撃を受け止めた。盾を通じた熱が左腕を僅かに焼くが、彼女は構わない。冷静に周囲を見渡し、エリに尋ねる。
『エリ。今回の愚神の事はどう思う』
「……変わった愚神と聞きました。異世界からの来訪者といっても、完全に画一化されていないな、と」
 あまりにも美しく、不気味の谷に片足を突っ込んだその声色。命じられたから応えた。アイギスはそんな壁をうっすら感じてしまう。
『されてたらそもそも俺いないしな。じゃあ従魔は』
「ケントゥリオ級が二体、それも物魔一体ずつですから厄介です。残りもデクリオ級ですし」
 人間味の無い会話。二人の想いはちぐはぐで、どこか噛み合わない。
『そうそう。いつも通りの、耐久戦だ』
 アイギスはただ頷き、武器を構え直した。

 竜は全身の装甲を擦り合わせて叫び、翼の隙からレーザーを周囲に放つ。どうにか直撃だけは避けながら、飛翔は顔を顰める。
「ケントゥリオ級二体を六人で凌ぐのも、中々ハードだな」
『位置取りを正確にしましょう。相手の戦いやすいように戦われるのは拙いです』
 ルビナスの助言に合わせ、飛翔は並び立つ兵士達に向かって三連発でロケット砲を撃ち込む。爆風に巻き込まれた従魔は、上半身を吹き飛ばされながらもその場に耐え忍び、じわじわとその形を蘇らせていく。普段なら直接切り込みもしようが、ここは耐える。
『今は無理せず、少しずつ削っていきましょう』
「押し込むのは上が戻ってから、だな」
 戦場を右へ左へ飛び回っていた浮遊体は、蛇の口蓋のように全身を展開し、エージェント達のライヴスを吸い寄せ始める。黄金の剣を脇に構え、フィアナはそこへ果敢に突っ込んだ。
「好きにはさせない!」
 彼女の戦意は刃に日輪の輝きを与え、浮遊体を上下に切り裂く。バラバラになって地面に墜落したタール状の塊は、うねうねと動いて再び一つになろうとしていた。フィアナはそれを踏みつけにしながら、刃を構える。
「央達ならもうすぐ戻ってくるはず……それまで耐えるくらい、どうってことない!」


「オラオラオラァッ! 跡形も無くぶっ壊してやらぁァァ!」
 蛍丸達の助けも借り、従魔達の追撃を振り切ってどうにか塔を登り切った杏奈。肩で息をしながら、彼女は眼を爛々と輝かせて制御室の扉を両手で強引にこじ開けた。

『気付いた時には全て終わった後……それが私達の仕事』
「……ジャスト5分。お楽しみには数秒遅かったな、杏奈」

 滅多切りにした装置にわざとらしくもたれ掛かり、央は杏奈に向かってニヤリと笑う。杏樹と別れて潜伏した央は、杏奈が敵に絡まれている脇を地不知で駆け抜け、杏奈が辿りつくよりも数十秒は早く制御室に辿り着いていたのである。
 その隠れぶりたるや、文字通り全てを置き去りにするほどだった。
「お、おのれぇ……っ! これが、潜伏力の差……」
 先を越されてしまった杏奈は、目を三角にして拳を握りしめる。悔しさに打ち震える彼女を、ルナは宥めるように呟く。
『でも、これで一番大事な仕事は片付いたわね』
「憶えておきなさいよ央! 今度何かあったら私が勝つ!」

●反撃の嚆矢
[破…は完……た。下……流してくれ]
「わかりました……の」
 ノイズ交じりの通信。照明代わりにもなる光を放っていた塔が、俄かに輝きを失っていく。杏樹と蛍丸は頷き合うと、螺旋階段を出て目の前の窓を目指す。
「ハァッ!」
 二人は窓に向かって一斉に槍と薙刀を突き出す。穂先が固いガラスの壁を突き破り、彼らはそのままの勢いで地上へ向けて飛び降りる。
「後少し、頑張るの」
 爆音が鳴り渡る高速道路の上に降り立つと、杏樹は銃を幻想蝶に納める。代わりに藤紋の刺繍が輝く錦の御旗を取り出した彼女は、天高く突き上げた。
「勝利は、我らにあり!」
 蛍丸もまた地面に降り立つと、槍を頭上で振るって癒しの雨を戦場に降らせる。
「破壊は完了しました! ここからは僕達も戦いに加勢します!」

『他者の生を願う想い……だったわね』
「そう。さっき奴等が示した通りだ」
 壁を蹴って降りながら、央は駆ける。
『央が望んでくれたから、私は、今を生きている。……そしていつか朽ち果てる時まで、貴方と共に閃光のように……』
 マイヤの想いが融け込んでいく。全身に天空のように澄んだ蒼を纏い、央は天叢雲剣を抜き放った。刃が高鳴り、白雲がその身を取り巻く。
「ああ。生き延びるんじゃない、生き抜くんだ。俺達は!」
 央の存在に気付きかけた竜が、首をもたげる。刹那、央は擦れ違うように刃を振り抜く。
「この剣で以て、俺達の意志を知れ!」
 余りに鋭すぎる一撃。ドラゴンは斬られた事にも気づかず、首を傾げた。
 刹那、タールのようにべとついた何かが大量に溢れだし、首が捩じ切れた。ドラゴンはすぐさま首を蘇らせるが、反応は遅れる。その隙に央は守護石の傍に駆け寄り、通信機を手に取った。
「終わったぞ! そっちは頼んだからな!」

「ふざけんなああああっ! もうちょっと丈夫な機械作っとけやああああっ!」
 一方、ドレスを靡かせて真っ逆さま、杏奈はドロップゾーン一帯に響く勢いで叫ぶ。それはもう派手にぶっ壊したかったというのに、全部央に持っていかれてしまった。この怒りどう晴らしてくれようか。丁度目の前に巨大な黒い獣がいる。フレームに666の文字が刻まれた獣がいる。母と狐が対峙している。
「ふふふふ……」
『あ。杏奈がマズい』
 ルナが察する間もなく、杏奈は変な笑いを上げながら黒い雷の槍を生み出す。バリスタを構えるように杏奈は獣へ狙いを定めると、石突を蹴りつけ突撃した。
「ライトニング……オーバードラァァイブ!」
 本物の雷にも劣らぬ一撃は、獣の腹を一発で貫き、高速道路の路面にも巨大な穴を穿つ。獣は水風船のように弾け、タールのようなべとべとになって地面に張り付いた。
「お、おう……派手にやってくれるね、杏奈」
「威勢の宜しい淑女がいたものだな」
 狐は仮面を押さえてため息をついた。杏奈は構わず彼らの傍に並び立つと、魔導書を開いて目の前の黒い塊に眼を向ける。べとべとはぬらぬらと蠢き、再び獣の形を取り戻す。
「さあッ! 一気に決めるわよ!」
 カナメは狐の方を見る。次々と癒しの雨が降る中、彼女も降らせて狐へ叫ぶ。
『今だ。さっきのヤツを使え!』
 狐は懐から扇子を取り出すと、ライヴスを纏わせ素早く振り回した。
「さあ、もう少し頑張ってもらおう」
 透明な輝きを持ったライヴスが放たれ、エージェント達に活力を与えていく。
「さて……」
 京子は目の前に突っ込んできた浮遊体に零距離射撃を叩き込むと、そのまま砲身をパージする。
「じゃあここからは、反撃の時間だ」
『ただの砲台と思われても癪です。わたしたちの本領を見せるとしましょう』
 両腰のホルスターに差した拳銃を引き抜くと、京子は身を低くして飛び出した。竜の放つレーザーを躱して高く跳び上がると、全身を捻りながら竜の眼、獣の爪、兵士の腕を次々に撃ち抜いていく。
「わたしの弾丸から、逃れられると思わないでね」
 竜の真横に降り立つと、京子は両の銃から銃弾を放つ。竜は鎌首をもたげて避けようとしたが、異次元を越えて飛ぶ彼女の弾は、寸分狂わず竜の側頭を撃ち抜く。
 思わず竜がよろめいたのを見逃さず、香月は竜の喉元へと飛び込む。
『(一気に畳みかけましょう、香月様)』
 アウグストゥスは言うなり、香月の意識へと融け込む。その瞬間、香月の姿は変貌した。大剣を片腕で軽々と振り回し、彼女はずいと竜の間合いへ踏み込む。
「都市のど真ん中にこんな迷惑なデカブツを築き上げるとはな。自ら殺してくれと懇願しているようなものだぞ?」
 遠心力に任せ、衝撃波を荒々しく竜に叩きつける。その度に、翼が捩れ、腹に穴が開いていった。竜の全身から、澱んだライヴスが溢れていく。
「貴様らが狼藉を続ける限り、仲間が次々と消える。それでも為すべき使命があるなら、精々足掻くがいい」
 諸手に持ち替え高々に刃を掲げると、天から地へと大剣を振り下ろした。轟音と共に衝撃波が飛び、竜の頭を再び叩き潰した。
「私が全てで以て捻じ伏せてやろう」
 破竹の勢いを見せるエージェント達。その戦意に影響されたか、従魔達も全身から煩い駆動音を鳴らして蠢く。長期戦でボロボロにされながら、兵士はそれでも銃を撃ち続ける。アイギスは変わらず入り口で盾を構え、守護石を狙う銃弾を弾き落としていた。
『良いところだけれど、抑えるところは抑えておかないとな』
 その眼はちらりと狐を捉える。又聞きで彼の噂は知っていた。彼女から言う事など何もありはしなかったが。
『(全く、便利なもんだねぇ……)』

 獣は吠えて、大きく伸び上がりながらその爪を叩きつけてくる。狐は身構えたが、すかさずカナメが盾を投げつけ爪を受け止める。
「庇いだてなど無用だというのに」
『何を言う。お前も大事な戦力だろうが』
「戦力か……確かにその通りだな」
 狐は大太刀を振るうと、獣の爪を弾き返す。生まれた隙を突いて、フィアナが獣の側頭部へと回り込む。諸手で長剣を握りしめ、大きく一歩を踏み込む。
「光として、希望として!」
 ライヴスを纏わせ振り下ろした一撃は、獣の爪を打ち砕いた。獣は怯み、その場に思わず縮こまる。ぎらぎらと蠢く眼が、彼女を捉えた。フィアナは眼を見開き、その純真な想いで獣を更に委縮させた。
「巨大な四足獣対応の基本は、腹下の死角と足を潰す事だ」
『爪は前のみ。然らば側面を突けばよしです』
 その隙に、飛翔はライヴスを溜め込んだ大剣を脇に構えて間合いを詰める。獣が振り返った瞬間を狙い、目にも止まらぬ三連撃を見舞った。
「――!」
 獣の首は軽々と宙に飛ぶ。その瞬間、首も胴体も纏めて弾け、澱んだライヴスの霧となって消えていった。飛翔は正眼に構えて残心を取り、獣の末路を見届ける。
「これで一角を崩せたな」
『残るは……』
 刹那、従魔達が雷に打たれたように固まった。全身に深紅の電流が走り、仰け反って激しいノイズを上げる。
『(さっき力が弱まったのとは、また様子が違う……?)』
 苦しむその様を見つめていた詩乃は、細やかな観察力で“それ”に気が付いた。地下で放たれた全身全霊の一撃が、黒幕の振るう刃を完全に打ち砕いた事に。
『(蛍丸様、地下に向かわれた方達も今まさに力を尽くされているようです)』
「……離れていても、僕達は共に戦っているんですね」
 槍を手に取ると、ヒートブレードを手に取った兵士に振り返り、その顔面に渾身の一撃を叩き込む。戦いの中で疲弊しきった従魔は、為す術無くその場に倒れ込んで消滅する。
「こんなところで深手を負っていたら、あの人にも、下で戦っている皆さんにも顔向け出来ませんね」
『(全くその通りですよ、蛍丸様)』

「このまま一気に押し切れそうだな……!」
 バイクが放ったレーザー攻撃を、央は周囲にばら撒いた経巻の光で受け止める。その瞬間、フラッシュのように光が弾けた。次の瞬間には、央の姿が戦場から再び消える。
「――!」
 頭を失った竜は、翼を広げて高く飛び上がる。その全身が輝きを放ち、仲間が巻き込まれるのも構わずビームをまき散らす。浮遊体と相対していた杏樹は、身を挺して京子を庇った。扇も巫女服もうっすらと焦がしながらも、彼女は微笑む。
「大丈夫……です?」
 京子は杏樹の肩越しに身を乗り出し、雑魚従魔に銃弾を叩き込む。腰を撃ち抜かれて崩れ落ち、従魔は消え去った。
「あなたこそ平気?」
 杏樹は深々と頷いた。
「皆を、応援して、守りたい。杏樹の願い、です」
「そっか。じゃあ攻め手の私も頑張らないとね!」
 京子は素早く銃を構え、今度は竜に向かって銃を撃ち込んだ。反撃とばかりに、竜は剥き出しのレーザー砲を京子へと向ける。
 央はそれを見逃さない。
「そろそろ……終わりにする!」
 塔の外壁を地不知で駆け登った央は、壁を力強く蹴って宙を舞う。身を翻し、背中の叢雲を引き抜く。竜の背中に降り立ちながら、央は左翼の付け根に刃を深々と突き立てた。
「――!」
 黒いライヴスが溢れ、周囲に滴る。杏奈は狐と共に並んで拳を構える。
「行くわよ、“あの時”みたいに!」
「わかったわかった。それも一興だねえ」
 正体隠す気を失くしてきた狐は、杏奈と共にその身に蒼い焔を纏う。央の一撃でバランスを崩した竜が、真っ逆さまに降ってくる。二人は息を合わせ、一気に跳びあがった。
「ブルーバーニング……オーバードライブ!」

 二人が振り抜いた一撃は、竜を跡形も無く粉砕した。

●勝利を待つ
「とりあえず、こんなところでしょうか……」
 蛍丸は杏樹の手当てを済ませる。皆の盾となって戦うもの同士、仲間よりも生傷が目立つ。杏樹はほっと息を吐き、蛍丸に向かってぺこりと頭を下げる。
「ありがと……です」
「いえいえ。……少し会わない間に、杏樹さんも、随分と強くなったんですね。驚きました」
「はい。アイドルとしても、皆の力としても、癒しになれるように、頑張った、の」
 杏樹は立ち上がると、手当てを受けている仲間の下へと歩き出す。
「皆の事も、治療、しないと……」
『幸い力は潤沢に余っています。応急手当には十分過ぎる程でしょう』
 扇を開くと、杏樹は皆の中心に立って舞を踊る。どこからともなく、曇り空の切れ目から光の雨が降り注ぐ。その様を遠くで見つめて、蛍丸はぽつりと呟いた。
「同業として、僕も負けてはいられませんね」
『(どんどん愚神は強くなっていますしね……でも、蛍丸様は戦うのですよね)』
「ええ。……それが皆を心配させない事に……何より、あの人を守る事にも繋がりますしね」
 親友の舞を見つめて、蛍丸は密かに修行への熱意と、脅威へ立ち向かう意思を新たにするのだった。

「増援も来る気配はないな。こっちの方面は片が付いたというところか」
 飛翔は壁に開いた穴から奈落をちらりと覗き込む。底の見えない闇は、ぞっとするほど静まり返っていた。この闇のどこかで、今も仲間は戦っているはずだった。
「後は、下次第だな」
『歴戦の方々です。信じましょう』
 ルビナスの言葉に頷き、彼は兎耳の青年へと眼を向ける。
「住吉も、大丈夫だったか」
 兎はサイドカーに積んだ守護石の様子を確かめ、小さく微笑んだ。
「ええ。皆さんのお陰で問題ありません。多少は傷つきましたけど……これなら一日もあれば修復されます」

『さて、この詩にはどんな結末が待っているかな。人の為にと絶望を齎そうとした者が勝つか、人の為にと希望を齎そうとした者が勝つか……』
 ルーは達観した調子で、賽を転がして愉しむ大人のような口調で独り言を繰る。念のために獅子の剣に手を掛けたまま、フィアナは無限に続く深い曇天を見上げた。
「みんなが勝つよ。こうして戦いながら、何となく伝わって来たから。下で戦っている皆が、どんな想いで戦っているのか。……今も、ね」
 隣でパージしたメルカバのメンテナンスをしていた京子は、作業の手を止めてちらりとフィアナを見る。
「塔を止めてからしばらく経つし、そろそろ佳境じゃないかな?」
『今から助太刀というのも、野暮でしょうね』
 アリッサの呟きに、京子は深く頷く。
「大丈夫。やると言ったらやれる人達だから。四騎士追いかけながら、何度も見てきたし」
 壁にもたれて腕組みし、央は静かに目を閉じる。周囲の気配に感覚を研ぎ澄ませると、不思議と仲間の息遣いが聴こえてくるような気がした。絶望を打ち払おうとする、気迫の籠った息遣いが。
「やるといったらやる、か。確かに……だからこうして後を託せる」
『(私達も……皆に負けない光を放っていたいものね)』
「あいつの成長ぶりは凄まじい。簡単には追い抜かれないように、俺達も戦いに技巧を凝らしていかないとな」

「それにしても、随分と悪趣味な街を創り上げたものだ。眺めているだけで腹が立つ」
 煙を吐きながら、香月は塔を見上げてただ悪態をつく。何となくその隣に立っていたアイギスも、適当に相槌を打った。
『確かに、死神の主を名乗っていた割には、随分とらしくない世界だな』
『この街こそ、あの死神のアイデンティティといったところでしょうか』
「なら好都合だ。これで奴は十全に粉砕されるというわけだ」
 アウグストゥスの言葉に、香月は仄暗い笑みを浮かべる。それを横目に、アイギスはふむと考え始めた。
『(あくまでこのドロップゾーンを作ったのはレアタイプな愚神でしかないわけで……エリの言う通り、画一化されていないが故のイレギュラー)』
 ふと、アイギスは目の前の白い装いの狐へと眼を向ける。
『(……そこにいるのもイレギュラーの一人か)』
 大太刀を背中の鞘に納めた狐は、今のところ逆らう気配も見せず、世良家の二人に良いように扱われている。近頃明らかになった情報からすれば、全く奇妙な光景だった。
『(死神は主従契約を結ばないが、愚神は主従契約を結ぶらしい。……その頂点の望みは、一体何なのやら)』

「何をしているんだい? ……重たいのだけれど」
『お前は女に重いというのか?』
 あくまで背中に伸し掛かるカナメ。狐は面が落ちないように手で押さえながら、肩を竦める。
「それは失礼。というより、そういう問題ではないんじゃないか?」
『何を言うか。お前は“フリーのリンカー”なのだし、別に良いだろう?』
 カナメは背中越しに頬を寄せ、悪戯っぽく笑みを浮かべる。いたく狐が気に入ったらしい。杏子もまた耳元で囁く。
「君が敵に立ち向かう姿はとても頼もしかったよ。あれのどこが“狡猾な臆病者”だい?」
「いや……臆病者だよ。私は、それ以外の存在じゃない」
 そう言って、狐はカナメを引っぺがそうとする。しかしその手を杏奈が止めた。
「そういえば貴方、白も結構似合うわねー♪」
 当たり障りのない事を言いつつ、彼女もそっと耳打ちする。
「私達は諦めないわ。貴方との共存」
 ルナもそっと付け足した。
『杏奈の諦めの悪さ、アンタならわかるでしょ?』
『そうだ。諦めたらそこで全て終了だからな』
 カナメの言葉に狐は何か言いかけたが、結局黙り込む。

 ――そうか。我々が存在する意味は、もしかすると――

「まあ、今は待とう。……じきに帰ってくるはずだ」
 狐はべたべたしてくる二人組の肩を掴んで引き離し、神妙な顔をする。

「これからの話は、それからだ」


 勝利の報告が訪れたのは、それからまもなくの事だった。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445

重体一覧

参加者

  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • Black coat
    榊 守aa0045hero001
    英雄|38才|男性|バト
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 『星』を追う者
    月影 飛翔aa0224
    人間|20才|男性|攻撃
  • 『星』を追う者
    ルビナス フローリアaa0224hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 絶望へ運ぶ一撃
    黛 香月aa0790
    機械|25才|女性|攻撃
  • 偽りの救済を阻む者
    アウグストゥスaa0790hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • エージェント
    東宮エリaa3982
    人間|17才|女性|防御
  • エージェント
    アイギスaa3982hero001
    英雄|24才|女性|バト
  • 光旗を掲げて
    フィアナaa4210
    人間|19才|女性|命中
  • 翡翠
    ルーaa4210hero001
    英雄|20才|男性|ブレ
  • Be the Hope
    杏子aa4344
    人間|64才|女性|生命
  • Be the Hope
    カナメaa4344hero002
    英雄|15才|女性|バト
前に戻る
ページトップへ戻る