本部

お願い事は何?

橘樹玲

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2018/01/22 19:31

掲示板

オープニング


 むきむき……もぐもぐ……

 ある男性オペレータの家では数人がぬくぬくと炬燵で蜜柑を頬張っていた。
 正月限定の番組が流れ、テレビから観客の笑い声が聞こえてくるのだった。
「お蕎麦でよいかの? アレルギーがあったらうどんをつくるぞ」
 家に招いた友人に、そばを食べるか彼が聞く。
「あ、茹でる間にわしの蜜柑もむいとくれ~」
 そんな会話を台所と茶の間で交わしつつ。

 ワハハハハ――

 テレビから観客の笑い声が聞こえてくる。
 段々と炬燵にいる者たちがうつらうつらと船を漕ぐ。

「眠かったら寝ても良いぞ! 予定時間前に起こすからの」
 お蕎麦を運んでくる彼は、楽しそうにニカッと笑った。


 時は戻り、数日前。知人である彼から連絡が入る。
「暇なものがいたらわしの家に集合じゃ! 初詣に行こうじゃないか。前日からお泊りで、人生ゲームとトランプと楽しい時間を過ごそうぞ!」
 一年が始まり、まだバタバタしている者も忙しいだろう――誘いに乗ってくれるものは果たしているのだろうか。

解説

●目的
初詣に行く

●詳細
・前日から夜7時ぐらいから、オペレーター(剣太)の家に集まる。また、当日の朝7時駅にて集合。
・初詣先は日光東照宮
・東照宮では、いくつかの屋台が出ており、オペレーターのおすすめは「揚げ餅」と「甘酒オレ」らしい。他にも、お好み焼き、唐揚げ、綿あめなど、数店舗はでている。

●揚げ餅
油で揚げたお餅に、きなこ、あんこ、砂糖醤油、醤油と海苔、塩の5種類の味を選べる。

●甘酒オレ
甘酒に牛乳をまぜた、苦手な人にも飲みやすいものになっている。

リプレイ

■オペレーター宅
 午前五時頃、忙しなく動く犬耳の男がいた。キッチンで軽い朝食――夜更かしにも優しい朝粥とお味噌汁を作って、友人が起きてくるのを待つ。
 起こさないように彼女たちが寝ている部屋の前を通ろうとすると、ギィッとゆっくり扉が開く。
「……寒いね」
 毛布を被り、アリス(aa1651)がのっそり部屋から出てくる。
「おお、おはようさん。すまぬ、起こしてしまったか……ゆっくり眠れたかの? 炬燵は温まっとるからの。顔を洗って入っておくといいぞ」
 彼女は「起こしてしまった」ということに対し、静かに首を振る。
『……朝早いね』
 同じくのっそりとAlice(aa1651hero001)が部屋から出てくる。
「Aliceもおはようさん。アリスと一緒に顔を洗っておくと良いぞ。行く準備さえしてしまえば、あとは炬燵でゆっくりしておくと良い」
 二人が起きてきたということで、2階に行こうとしていた剣太はすぐにキッチンに引き返し、彼女たちの朝食を用意する。
 茶の間に戻ると、彼女たちはぬくぬくと炬燵でぼうっとしていた。
「ほれ、お二人さん。軽めの朝食はどうかの? 量は少なめ、味はあっさりの朝粥じゃ。お味噌汁は温まるぞ」
 三人で朝食を囲む。
「……朝粥」
 こういった朝食は初めてなのか、それとも苦手なのか、彼女はぽそっと呟く。
『温まるね……アリス』
 一口食べてマズくはなかったらしい、少し食べてほうっと一息つく。
「わしの家……実家じゃと、正月明けはよく食べてたんじゃが。他の家じゃと食べないもんなのかの?」
 お酒好きの剣太によると、胃にやさしく朝に良いとのことだ。アリスとAliceの二人には、二日酔いなど無縁の話だろうが。
 食べ終わると剣太は食器を持ってキッチンに行き、そのまま別の部屋へと消えてしまう。
「……炬燵は病みつきになっちゃうね」
 軽くお腹が膨れたとこで、うとうとしながらアリスが言う。
『……冬の間はずっと入っていたいね』
 同じくアリスもうとうとしている。
 待ち合わせまであと1時間半。彼女たちはギリギリまで炬燵に入っているだろう。

■貸衣装屋にて
 午前六時半前。一足先に待ち合わせ先に着いた四人は駅近くの貸衣装屋さんに来ていた。
 衣装のなかった一人を除き三人がせっせと着物を着つける。
「うんうん、良いじゃない。そこら辺の男の子なら一発――冗談よ」
 友人の着物姿を見て、にっこり笑う雁屋 和(aa0035)。自分の着付けにも満足の様子。
「ノドカも、とてもきれい、です」
 和の着物姿を見て、キラキラと瞳を輝かす紫 征四郎(aa0076)。自分の姿も鏡で確認し、気に入ったのか満足げに笑みをこぼした。
 カーテン越しに彼女たちの会話を聞き、用意の終わっている二人は会話しつつ彼女たちを待つ。
『デラー殿は残念であったな。ガタイの良い方が和服は様になるが……』
 『折角来たのにな』とユエリャン・李(aa0076hero002)が言う。
『ガタイがかなりあるから貸衣装にもなかったんだよな』
 『次来る機会があったら用意するか』と呟くのは、ヴァン=デラー(aa0035hero001)であった。
 もう少し準備に余裕があれば、もしかしたら用意もできていたかもしれないが。
『それにしても李さんはこう、どうにも……風情? があるな?』
 紺色を基調にした落ち着いた雰囲気の女性物の着物に髪はまとめてアップのユエリャン。
 着物を着るとまた一層雰囲気が違って見える。
『なかなかわかっておるではないか』
 ヴァンに褒められ、謙遜するわけでもなく、当たり前だとでもいう様にユエリャンは胸を張った。
「そうだ! 折角だから写真送っちゃおうかしら」
 「折角綺麗なんだもの」とすかさずパシャリと自分と征四郎を携帯のカメラで撮る。
「え、と、誰に送るの、です!?」
 いきなりの事に慌てる彼女に、「えー……もちろん彼よ」と楽しそうに言った。
「今、目、瞑ってしまったかも、です!」
「もう送っちゃった!」
 見えないながらも楽しそうに話す二人に、ヴァンとユエリャンも笑みを浮かべる。
『いろいろと楽しみだな』
 ユエリャンはこの先にちょっとした困難を待ってるのも知らずに。
『そうだな』
 ヴァンも力強く頷くのであった。




■駅集合
 午前七時十分前。待ち合わせ場所である駅内の待合室にて、男女六人が他のメンバーを待っていた。
 風が来ない分、外より暖かいが気持ち程度。若干の暖房は効いているもののやはり寒いものは寒い。
『おい……お前だけなんでこたつむり着てんだよ?』
 寒そうに体が小さく震えるカイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)。普段よりもテンションが低いような気がする。
「だってこれひとつしかないんだもん。それにお正月に大量ゲットしたもこもこ毛糸パンツはカイが全部グロリア社に持って行ったじゃない! 毛糸パンツなんか何に使ったのよ!?」
 うぅ~と寒そうにする御童 紗希(aa0339)。「毛糸パンツ」さえあればもっと温かかったのにと小さく漏らす。
『花も恥じらう乙女が「毛糸パンツ」とか恥ずかしげも無く大衆の面前で連呼するなよ』
 カイの鋭いツッコミに、紗希は小さく口を尖らせた。

『まだ眠い……。テレビで夜更かししすぎた……赤と白の唄合戦とか見てて……』
 うとうとと眠そうにしているのは、都呂々 鴇(aa4954hero001)である。
「ちょっと、しゃんとして鴇ちゃん。今年は私達、微妙に干支なのよ」
 このままでは寝てしまうんじゃないかと思われる彼の方を揺さぶる新城 霰(aa4954)。
『びみょー……。東照宮といえば、眠り猫じゃないの? 一緒にまるまって寝たい……。すぴー……』
 干支と自分としゃんとすることは関係ないとそのまま体がだらんとする鴇。
「もう……」
 諦めて外の人通りを眺める。ちらほらと通る人が多くなってきていた。
『大丈夫だよー……起きてはいるから……。すぴー……』
 起きているとはいえど、目は瞑って半分寝ているような状況じゃ説得力もない。
 ちらりと鴇を見て、彼女は小さく息を吐いた。

『お、もうそろそろ合流するみたいだな』
 携帯電話に届いたメールをオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)が確認する。
「うんうん、時間ピッタリだね!」
 にこにこと彼にそう返すのは木霊・C・リュカ(aa0068)だ。
 『おっ』と小さく呟き、リュカに携帯の画面を見せるオリヴィエ。そこには、濃茶に梅の新年を寿ぐような袷の小紋の振袖を着た和、金と白を基本にした振袖を着た征四郎が写っている。
「うんうん。良く似合ってるね、お二人さん!」
 写真を見てにっこり笑うリュカ。
『……それは直接本人たちに言ってやったほうが良いだろ』
 オリヴィエの鋭いツッコミに「そうだねぇ。うん、改めて合流したら言おうかな」と彼は頷いた。

 それぞれがそんな会話をしているうちに、時計の針は午前七時を指す。
 着付け組はほぼ同時に、オペレーター宅組は2、3分過ぎた頃に合流することができた。
 そして一行は、日光東照宮を目指し歩き出すのである。

■道中にて
 駅から東照宮までは、約2、3キロメートル。流石に着物組を歩かせるわけにはいかないとバスを乗ろうとしたのだが、込み合っていたこともあり徒歩で行くことにした。
 まあ、普段から従魔と戦っているエージェントたちだ。このぐらいの距離なら造作もない事だろう。長い緩やかな坂道を歩いていき、「日光東照宮」という看板が見えてくる。
 途中石畳の階段がありそこを皆で登っていく――途中、運動の苦手な一名が苦手なものがぎゃあぎゃあと騒ぐ。
『階段があると何で教えてくれなかった!!』
 着物の上、ヒールを履いてきてしまったユエリャン。そういいつつもしっかり皆についていく。
『て、手を貸そうか?』
 ひーひー言っているユエリャンにヴァンは苦笑を浮かべる。
『征四郎、そこの段差は気をつけろ』
 オリヴィエはリュカと征四郎が転ばないよう注意して足元を見ている。
「だ、大丈夫です。日々のタンレンがあれば、このくらいの階段、へっちゃらなのです」
 確かに普段なら問題がなさそうな階段ではあるが、着物で歩くのは慣れていない。転びはしないが時折よろけそうになったりする。
「木霊さんは征四郎をちゃんとエスコートしてあげなさいね」
 征四郎に聞こえないよう、和が小さくリュカに囁く。
「さっきから和ちゃんの言動にどこか凄みを感じるんだけどお兄さんの気のせいかな……」
 リュカの返しに彼女は「何のことかわからないわ」と軽く流した。

「あたし日光初めて」
 初めての日光に新鮮なのだろう、紗希は辺りをキョロキョロと見渡す。
『だな~。年末年始は毎年マリの地元に帰ってたもんな。栃木に行くこと自体初めてかもな。……確かご当地ビールあったよな』
 通り道にあった酒屋が目に留まったのだろう。そんなことを漏らす。
「あるけど寒いのにビール飲むの? っていうか栃木に来てまで飲むの?」
 若干呆れた様子の紗希であった。

「……やっぱり寒いね、Alice」
 コートにマフラーに手袋と耳当て、完全防寒のアリス達だが寒いものは寒いのだ。
『……炬燵が恋しいね、アリス』
 今朝までぬくぬくと入っていた炬燵が恋しいと呟くAlice。
「そっか、三人は一緒に来たんだったよね」
 アリス達の会話が耳に入ってか、霰が剣太に話を振る。
「おう、そうじゃよ。本当はわしの相棒も来る予定じゃったんだが、寒いのと眠いので朝に断られてのじゃ」
 遠い目をする彼に『わかる気がする~』と鴇が返す。
『我慢はできるけど、苦手な人は苦手だよね……ボクも眠いもん……』
 うとうとする彼に剣太は苦笑いを浮かべた。

■神様にご挨拶
 混み合う境内を流れに沿って歩く。賽銭箱の近くの看板には「二拝二拍手一拝」と書いてあり、皆その通りにお辞儀をお参りをしていた。
「さて、新年に何を誓おうかしら」
 自分たちの順番が来るまで間、話すのはお参りについて。
『まじめな目標はエージェント活動をがんばる! 成功活躍! あと必ず無事に帰還すること』
 境内の屋台から香るいい匂いに目を覚ました鴇はにこにこと話をする。
「そうね。必ず二人で戻れるように」
『個人的なことは家事をもっと上手にこなせるようにする。手先を鍛えたり、判断力を磨いたり……』
「鴇ちゃんが働いてくれると助かるわ。私は趣味没頭、かしらね。良い作品を作れるように努力するわ」
 何とも二人らしいお願い事だ。

 自分たちの番になり皆でお参りをする。
 パンパンッと手を叩きそれぞれが神様にお願い事や、決意を胸に刻む。
『……JK妻……女子高生妻は流石になんか響きがもう犯罪臭しかしないので、妻までとはいかなくていいです……せめてもうちょいマリとの距離が縮めばいいです……手繋ぎデートくらいは是非ともしたいです……』
 何やら熱心にお願い事をしているかと思えば、全部駄々洩れのカイ。
「……カイ?」
 恥ずかしいやらなんやらで、何とも言えない表情のまま彼に口に出てると伝える紗希。
『あ? 何だよ?』
 彼はどうやら気づいていないようだ。
「……なんかお願い事全部声で漏れちゃってるんだけど……」
 彼女の言葉にカイが慌てたのは言うまでもない。

 百十五円を投げ入れ、静かに願う和。
(良いご縁がありますように)
『考えなくてもいいご縁が昨年はあったがなぁ』
「気分の問題」
 ヴァンには思うところもあるようだが、一言で片づけられてしまった。
 四十五円を投げ入れ、熱心に願うオリヴィエ。
「凄く熱心にお願いするねぇ」
 ふふふと笑うリュカ。
『……よ、欲張り、じゃない。……神頼みでも、しなきゃ』
 彼の言葉にごにょごにょとオリヴィエは言い訳をするのだった。
 和と同じ金額を入れ、小さく願う征四郎とユエリャン。
「誰も大怪我をしませんように」
 優しき彼女は皆を思う。
『良き出会いに恵まれますように』
 これから先、出会うであろう人を思って。

「お主らは何を願った……って聞くのは野暮じゃな」
 隣にいたアリスたちに願い事の内容を聞いてしまう。
「大して面白い願い事はしてないよ。普通」
『そういう剣太さんは何をお願いしたの?』
「わしは……彼女ができますようにじゃな」
 本当は楽しい日々が続くように、皆と一緒に強くなれるようになんだがそれは胸に秘めておく。
「なんか、楽しそう」
『面白いことあった?』
 ふふんと笑う剣太にアリスたちは不思議そうに尋ねる。
「またこうして来れると思っておらんかったからの……ありがとな」
 改めてお礼を言う彼に、「おかしなことを言うんだね」と二人して返すのであった。

■今年の運勢とお守り効果
 お参りを済ませた一行は、色々と文化財を楽しみつつお守りやおみくじを引くのであった。
 お守りだけでも、家内安全、交通安全、金運上昇、恋愛成就、厄除け、いろんな種類いろんなデザインがある。どれにしようか目移りしそうだ。
『俺もなんか買っておくか……』
 いそいそとヴァンもお守りを選びに行く。
「征四郎。―『好きなもの』を買いなさい」
 家内安全、戦勝祈願を買った和は征四郎にもお守りを進める。
「………! そう、ですね。今、わたしが一番欲しいのを」
 和に背を押され、こそこそ恋愛成就を購入。
『厄除けも1つは必要であろう、いろいろあるであるからな』
 ユエリャンは購入した厄除開運のお守りをオリヴィエに渡す。
『そうか、……よく、効きそうだ』
 受け取ったお守りを大事そうに鞄にしまうのであった。
「あ、これ可愛いね……せーちゃんどうかな? 御利益もあって、鳴ればお兄さんもせーちゃんの場所がわかる、一石二鳥!」
 リュカが自分で買ったピンクの叶鈴守りを征四郎に贈る。自分には瓶子お守りだ。
「え、あの、これ良いのですか……!」
 嬉しそうに受け取った彼女は、お礼を言った後に少し離れたところにいた和に駆け寄った。
「ノドカ! さっきのお守り、もう効果があったみたい、です!」
 にこにこと笑う征四郎。
「効果あったの、良かったじゃない。――今でもこうなんだから今年はすごく御利益がありそうね」
 そう返す和も彼女が喜んでみるのを見てにっこりと笑みを浮かべた。

「さーて……わしはおみくじ引くかの。アリス達も引かないかの?」
「……引く理由もないけど、そう言われたなら」
 誘われれば断る理由もないと。
『……アリスが引くなら、わたしも引くよ』
 Aliceもアリスが引くならと。
 二人の結果は小吉。内容はそこまで悪いことは書いてもない可もなく不可もなくという感じだ。
 剣太に結果を聞こうとしたら彼は真顔で紐におみくじを括り付けていた。どうやら、あまりよくなかったのだろう。
「……結果は一緒だったね」
 お互いのおみくじを見比べて。
『……今年はいいことあるといいね』
 そっとポケットにしまうのだった。

「さて、おみくじは……」
 霰と鴇も一緒におみくじを引く。
『何が出ても結果オーライ』
「だけど、楽しみなのよねー。深く考えないで見てみましょう」
 カラカラっと筒を振り棒に書いてある番号の引き出しから一枚取り出す。
 結果は、霰が小吉、鴇が中吉だった。
「……ん、こんなものかな」
『悪いことは書いてないね』
 こちらの二人も可もなく不可もなくのようである。

「よーし、大吉狙おうかな」
 狙うものじゃないけど、どうせだったら良い結果がいい。
 紗希とカイもおみくじを引く。
 結果は紗希は吉、カイは……
『うおおお!! きたー!』
 嬉しそうに叫ぶ彼。内心驚き彼を見る。
「ど、どうしたの……?」
 反応からするに大吉がでたのだろうか。
『え! いやまぁ……そうね……』
 彼は笑みを隠せない様子。
「いいことが書いてあったならいいけどね」
 ここら辺でやることはすべて終え、後は屋台を巡るのもいいだろう。
 一通り買い物を済ませた十一人は、この場を後にするのであった。

■シメの屋台
『屋台。ほぉー……なるほど』
 普段はやってない屋台が出ているのを見て、『正月はこういうのがあるもんなんだな』とヴァンが呟く。
 今回誘ってくれた剣太のおすすめを個々に買いに行く。
「せーちゃん、甘酒はどう? 大丈夫大丈夫、心配ないよソフトドリンクだよ。安心安全、ほら呑んで呑んで」
 リュカが甘酒オレを征四郎に勧める。
「わ、甘酒! 助かりました!」
 一口飲んでホッと一息つく。
「甘くて呑みやすいでしょ? ほら、体もあったまってきたね……しょうがが入ってるからだよ?」
 にこにこと話すリュカに、和は突っ込まずにはいられない。
「……なんか言い方がいかがわしい」
 しらっとした目で彼を見る
「いかがわしい? 気のせい気のせい」
 彼は全く気にしてないよう。

 オリヴィエはきなこ、和とユエリャンは砂糖醤油、ヴァンは海苔をそれぞれ頬張る。
『……餅でも、美人は、絵になるもの、だな』
 もぐもぐしつつ和の食べる姿にさらりと言うオリヴィエ。
「……あら、ありがとう」
 素直に礼をする彼女。褒められるのは悪いものではない。
『揚げ餅とやらはなかなかに美味であるな』
 初めて上げた餅を食べたのか、ユエリャンはそんなことを言う。
『確かに……焼いた餅はもちろんうまいが、揚げた餅も美味いものだな』
 ヴァンも美味しそうに持ちを頬張るのであった。

「うーん……何味がいいかな」
 紗希とカイは揚げ餅屋の前でじっとしていた。
『……俺は醤油一択だな』
 甘いものが苦手なカイはすでに決まっているようだ。
「甘いのを食べたいけど、きなこもいいし、あんこもいいし、甘じょっぱい砂糖醤油も捨てがたい……」
 うーんと悩む紗希。
『二つ買えば?』
「そんなに食べられない!」
 まだまだ買うまでに時間がかかりそうである。そんな横でお餅を頬張る他のメンバーから香ってくるいい香りに、ますます決められなさそうだ。
『醤油と海苔がいいな♪ いっただきまーす!』
 口に含むと香ばしいノリの味と程よい醤油の味が口に広がる。
「鴇ちゃんは甘いもの好きなくせに、案外餅はしょっぱい系で食べるのね。私はあんこ派だわ。寒い中で熱々の甘い物ってたまらないわね」
 霰も美味しそうに持ちを頬張る。
『せっかくだから剣太のオススメ味も食べてみたいなー。ボクはしょうゆ味系を選びがち……もちは主食! って感じで食べちゃうから』
 一緒に横で食べる剣太にチラリと視線を向ける。
「お? したらわしの食べてる砂糖醤油を一個食べるかの? 甘じょっぱい味がたまらんのじゃ」
 ほれと渡されたお餅を『ありがとう』と受けとった。
『うん……確かに美味しいね! これもこれで悪くはない!』
 お気に召したようで、砂糖醤油もぺろりと食べてしまう。

「甘酒……」
『……オレ……?』
 甘酒はみんな知っているだろうが、「オレ」は初めて聞いただろう。
「……初めて聞いたね」
『じゃあ、それにしようか、寒いし……』
 寒いのが苦手なアリス達は甘酒オレを買って、手の中でその温かさを楽しむ。
 少ししてから、ふーふーと冷まし味を確かめるように一口飲む。
 苦手な人は苦手な酒粕の味が牛乳によって緩和され、甘くまろやかな味が口いっぱいに広がる。
「……うん、悪くはないかな」
『……甘くて、温かいね』
 どうやらお気に召したのだろうか、ふたりは少しずつ甘酒オレを飲み干すのであった。

 それぞれが食べたいもの、飲みたいものを楽しんでこの日の参拝は終了した。
 お土産にとお守りなどを買ったものもいれば、日光で有名な羊羹、湯葉などを買ったものもいたかもしれない。
 おみくじの結果に落ち込む者もいれば喜ぶものもいた。
 皆が本当に何を願ったのかは本人にしかわからないが、それが叶えばいいと彼は密かに思うのであった。
 叶うかどうかは本人にも誰にもわからない。ただその過程を楽しむのもまた一興なのではないだろうか。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 【晶砕樹】
    雁屋 和aa0035
    人間|21才|女性|攻撃
  • お天道様が見守って
    ヴァン=デラーaa0035hero001
    英雄|47才|男性|ドレ
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 全てを最期まで見つめる銀
    ユエリャン・李aa0076hero002
    英雄|28才|?|シャド
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 闇に光の道標を
    新城 霰aa4954
    獣人|26才|女性|回避
  • エージェント
    都呂々 鴇aa4954hero001
    英雄|16才|男性|シャド
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