本部

薄紅に染まるのは……

橘樹玲

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2017/11/04 20:00

掲示板

オープニング

■頼み事
 複数人のエージェントたちが以来の報告するために、H.O.P.E本部へと訪れていた。報告も終わり、さあ、帰ろうかというところで一人の男性エージェントが一緒に任務を受けていた数人の仲間に声をかけた。
「すまないんだが……少し時間をくれないか」
 そう言われ、断る者は少ないのではないだろうか。帰宅しようとしていた足を止め、すぐ近くのベンチに腰を掛ける。
「こんなことを君たちに頼むのもなんだが、他に相談できる相手もいなくてな」
 どうしてもわからない事があって困っているんだと彼は続ける。
「実は、俺のパートナーと知り合って、もうちょうど10年になるんだ。何か変わったことをしてやりたいんだが……生憎、生まれてから今までそういったことをする機会がなかったものでな。そういうもんはどういったことをすれば良いのかわからないんだ」
 情けない話だなと苦笑を浮かべる。
 詳しく話を聞いてくれるなら、どこか違うところで話そうかと、彼らはH.O.P.Eを後にするのだった。


「あの……」
 依頼の報告を終え、他の任務をこなしていた数人の仲間より一足お先に本部の外に出ていたエージェントたちに、一人の女性の英雄が声をかける。
「えっと……すみません。少しお話を聞いていただけませんか」
 彼女はおどおどと聞いてきた。任務中は全くと言っていいほど話さなかった彼女がそんなことを言ってくるとは、だれも予想していなかったんじゃないだろうか。驚く者もいただろう。
「頼れるのは皆さんしかいなくて……」
 そういわれて断る者は少ないだろう。彼女の話を聞くために数人のエージェントたちは足を止め、彼女と一緒に近くにある喫茶店へと歩いて行った。

解説

目的
●知り合いから相談を受ける

相談内容
●幽世 真(az0093)からの相談
・大切なパートナーとの10年という節目にサプライズをしたい
・どこか普段いかないような場所へ出かけたり、プレゼントを贈りたい
・出かける場所には一緒に下調べをしたり、プレゼントもその時に一緒に選んでほしい
●常世 命(az0093hero001)からの相談
・大切なパートナーにプレゼントを贈りたいので一緒に選んでほしい
●二人の事
・彼らは出会ってちょうど10年
・二人は遊園地や水族館などに一緒に遊びに行ったり、プレゼントを贈りあうことは今までなかったそうだ
・二人とも恋心をお互いに抱いているが、年齢が10歳離れていることもあり互いに伝える気はないらしい
・二人の関係は保護者と娘に近い(と本人たちは思っている。しかし、周りから見れば夫婦やカップルに見えることもあるのではないだろうか)

リプレイ

■彼女が好きなものは? 常世side
 時刻は昼の12時過ぎ。家族連れ、カップルなど様々な人で賑わうショッピングモール内。その一角にあるフリルやリボンをあしらった、女性が好みそうな小物が売っているお店で、その場にそぐわない目つきの鋭い高身長の男が眉を顰め、あれじゃないこれじゃないと考え込んでいた。
 その男を囲むように数人の男女が周りを取り囲んでいる。
『プレゼントかぁ……こういう人形とか、いいんじゃないかなって思うんだけど』
 どうかなと眉を顰める彼にウィリディス(aa0873hero002)が手に取った人形を見せる。
「……こういうのを女性は好きなのか?」
 受け取った人形とすぐ隣にあった人形を持ち見比べながら周りにいる人に問うのは、幽世 真(az0093)である。
『なんだよ、情けねぇ奴だな。そんなの自分で決めることも出来ねえのかよ』
 やれやれといった感じで、カイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)が反応する。
「んー……確かにそういったの物を好む女性は多いとは思うけど、相手が好きかどうかわかるのはこの場だと幽世さんだけだよ? 彼女にどんなものを渡したいかって漠然でも良いから考えてるのはないのかな。お兄さん達が言った後だと、どうしてもそっちに流れちゃうじゃない? まずは自分の意見から、ね」
 真剣な顔つきでそう答えてくれたのは木霊・C・リュカ(aa0068)である。
「……そうか。難しいな」
 彼らの言葉にさらに幽世は眉を顰める。
「思いつくもので彼女が好きそうなものってないですか?」
 横から幽世の表情を伺いながら黄昏ひりょ(aa0118)が質問する。
「そうだな……こういった可愛らしい小物も嫌いではないだろうが、あまり買ってるのを見ることがないんだ。ただ、洋服だとか日常品を選ぶときはピンクよりも青い色が多い気がする」
 それならとガルー・A・A(aa0076hero001)が「こういったものなんてどうだ?」と近くにあったアクセサリーを手に取る。
『ブルーの石がはめ込んである物もあるし、小振りなものを選べばそんなに派手でもないからな。真ちゃんが似合うと思うやつを選べば彼女も喜んでくれるんじゃないか?』
「そうだろうか……」
 幽世は何とも自信なさげである。
「うーん……例えば友人相手ならハーバリウム、親しい人には香水……ってな感じで、関係性によってプレゼントは違ってくると思うんすよ。でもまぁ、一番は相手に何を上げたいかってのが大事だと思うっすけどね」
 悩む幽世に久兼 征人(aa1690)がアドバイスをくれる。
「なるほどな……ふむ」
 皆からアドバイスをもらうものの、一向に決まる気配はないらしい。
 それを見かねたリュカが一つ提案を出す。
「どうしても決まらないって感じなら、先にどこに行きたいかってのを決めるのも手じゃないかな」
 どうだろうかと他の皆に意見を伺う。
『うんうん、いいと思うよ! デートの下見をしてるうちにふと目に入ったものがいいなっておもうときもあるもんね!』
 リディスはリュカの意見にうんうんと頷く。
「歩きながら話していましたけど、任務以外でレージャー施設や観光スポットなどには行ったことないんでしたよね。遊園地や水族館とかどうでしょうか? 普段行った事がないのであれば、特別な思い出になるんじゃないかな? って思います」
 一緒に行けるならきっとどこでも思い出になると思いますよと、ひりょがにっこり笑う。
「確かに……水族館も意外と楽しいっすし、なんなら今から下見として行ってみるのもありっすよ!」
 全部見るのは当日に取っておいて、雰囲気だけを確認するとかどうっすかと征人も提案を出してくれる。
『取り敢えず相方とどっか行きたいってんならデートの定番スポットもいいけど……そうだな……俺ならシメに初めてあった場所に言って思い出話でもするかな……』
 カイの「初めてあった場所」という単語に、幽世が反応する。
「初めて会った場所……な……ここのすぐ近く海だったか……」
 彼は思い出したように小さく呟く。
「海かぁ……それなら、すぐ近くに水族館もあるし、ちょうどいいかもしれないねぇ」
 リュカの言葉にみんなにっこり笑う。どうやら皆も同じ考えらしい。
『もちろん、最終的には自分で決めなきゃだけど、どうなのかな?』
 リディスが幽世に意見を聞く。
「カイの言う通り、最後にあの場所へ行くのはいいと思う。だが……そうだな、正直出かけたいとは言ったが、本当に今までそういう機会がなかったからアドバイスをもらってもどこがいいか決められそうにない」
 申し訳なさそうに彼が言う。
『あんたがここなら気にいるんじゃないかってとこでいいと思うけどな』
 あれこれ考えて思いつかねえんならなとカイが言う。
「そうですよ。さっき言った通り、大切な人なら一緒に行けるならどこでも楽しいですから」
 幽世さんだってそうでしょうとひりょも続ける。
『ここの店で考えててもしょうがねぇしさ。決めるのは最終的に真ちゃんだとして、試しにその海の近くにある水族館にいってみるってどう?』
 ガルーが幽世に問う。
「そうだな。付き合わせて悪いが水族館へ行ってみるか」
 なんとか方向性は決まってきたのか、幽世たち7人はこの場を後にした。

■彼が好きなものは? 常世side
 商店街の一角である雑貨屋で六人の少女と一人の少年が商品片手に皆であれやこれやと悩んでいた。
『ごめんなさい……皆さんにご迷惑をおかけしてしまって……』
 六人をこの場に誘った常世 命(az0093hero001)が申し訳なさそうに軽く頭を下げた。
『いいのいいの! 今はそんなこと気にしないでプレゼント選び頑張ろう!』
 人見知りということもあり、まだ打ち解け切れていない常世の緊張を解そうとフローラ メルクリィ(aa0118hero001)が笑顔で答える。
『そうだ。そんなことを気にする暇があるなら選ぶ方に時間をかける方が良い』
 相手はどういうのが好みなんだとオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)が常世に尋ねる。
『えっと、普段日常品以外を一緒に買いに行くことがないから……』
 どういうものが好きかよくわからないと彼女が答える。
「形に残るものの方がいいですよね……普段身につけていられるようなもの……」
 うーんと御童 紗希(aa0339)も一緒になって頭を悩ませる。
「好きな色とかがわかるなら、そういった色をあしらったものをあげるのも良いと思うです。こういったのはどうでしょう? 『これからも同じ時を共に過ごしましょう』って感じ、するでしょう?」
 商品棚に並んでいた腕時計を手に取り、紫 征四郎(aa0076)が提案する。
『腕時計をお揃いにしてもいいんじゃない?』
 ペアのアクセサリーを渡しづらいっていうなら腕時計なら渡しやすいと思うけどと、ミーシャ(aa1690hero001)がアドバイスをくれる。
「たしかに、腕時計ならさり気なく渡せるのではないでしょうか?」
 月鏡 由利菜(aa0873)もミーシャのアドバイスには賛成のようだ。
『腕時計……男性はやっぱりこういったものの方が喜びますかね?』
 常世は皆のアドバイスを聞き入れ、並べられている腕時計を眺める。
『俺だったら、好きな奴だったり大切な奴からもらえればなんだって嬉しいけどな。あれはどうだ。男性への香水の贈り物は、親密な関係になりたい、の意思表示だそうだ』
 オリヴィエが店の一角にあるガラスケースを指さす。ケースの中には様々な香水が並べられていた。
「予算がどれくらいかわかりませんが、何も一つしか送っちゃ駄目ってことはないのです」
 何を送ってもきっと喜んでくれるのですと征四郎が笑顔で言ってくれる。
「そういえば……以前アートクレイシルバーの教室に参加して英雄とお揃いの指輪を作ったことがあるんです。石はダイヤ……あ、これは合成ダイヤですけど。石言葉は「変わらぬ愛」って意味なんですけど……パートナーはすごく喜んでくれてずっと着けててくれてます……」
 幽世さんだってきっと喜んでくれるはずですと御童はにっこり笑った。
『そうですよね……』
 御堂につられ常世も笑顔になる。
『どう? 今まで選んできて、何か方向性は決まった?』
 おずおずとミーシャが問う。
『そうですね……何を……はまだはっきりとは決まってはいませんが。思い切ってペアのものを送ってみようかと』
 ちょっと恥ずかしいですけどねと彼女は恥ずかしそうに言う。
「ぜひぜひ! そうすると良いのですよ!」
 彼女の反応に征四郎も笑顔を見せる。
『自分で選んだんだ。はっきりと決まったわけじゃないが、これで絞り込めるな』
 ペアだとさっき言ったように、アクセサリー、時計、マグカップなんてのもいいなとオリヴィエが例を出す。
『本当にさり気ないものだったら、ストラップなんてものいいよね』
 オリヴィエに続いて、フローラも思いついたものを口にする。
「確かにストラップなどは友達同士で送りあったりもしますから手軽ではありますね」
 うんうんと御童が頷く。
「あとは……そうですね。ほら、そこにあるようにペアのハンカチというものもありますよ」
 ペアというだけでも色々ありますねと月鏡は苦笑を浮かべる。
『ねえ……一つ提案なんだけど、まだ悩みそうなら一旦カフェで休憩を入れない?』
 かれこれ1、2時間は経っただろう。休憩をはさむのもいいんじゃないかとミーシャが提案をする。
 皆もその意見に反対する様子はなく、むしろ名案だとこの場を後にした。

■自分の気持ち 幽世side
 時刻は3時、あれからちょうど三時間が過ぎた頃一行は水族館へと歩みを進めていた。
『ずっと気になってたんだけど、幽世さんって彼女のことをどう思ってるの?』
 ほら、はっきり聞いたわけじゃないからと不意にリディスがそんなことを口にする。
 皆も気になっていたのか、六人の視線が一気に幽世に集中する。
「それはだな……うむ……」
 彼は何とも渋い顔をする。
『年を気にしてはっきり言わねえってのは無いと思うぜ。10歳差なんて特別おかしい関係でもないだろ』
 腕を頭の後ろで組みつつ、自分の気持ち次第だけどなーとカイが言う。
「確かにな……確かに俺は彼女に惚れている。だが彼女が俺を好きになることはないだろう。告白をして気まずく感じさせる方が俺としてはな……」
 何かを考えるように彼の視線は明後日の方を向く。
『彼女さんがどっかで彼氏作って来た時、応援できるかって話だよ。後悔しても良いから、前向ける方をちゃんと選べよな。何も言わずにいて後悔しないなら俺様に言えることはないんだが』
 そこのところはどうなんだとガルーがさらに問う。
「お兄さんは常世ちゃんが告白されてもし振ったとしても態度をかけるような子には見えないけどねぇ」
 振るなんてないだろうけどねぇと聞こえないぐらい小さな声で呟き、ふふとリュカが笑う。
「それは僕も思いました。たとえ叶わなかったとしても彼女は態度を変えると思うんですか?」
 リュカの呟きが聞こえたのか、僕も叶わないとは思いませんけどねとひりょも小さく返した。二人はアイコンタクトを取りにっこり笑う。
「その気があるなら、プレゼントには指輪をお薦めするっす。幽世さん次第でプレゼントだって幅が広がるんすよ」
 まだ決まってないプレゼントを視野に入れつつ、征人も彼の気持ちを確かめる。
『あんたが今以上の関係を築くことを望まないなら俺は何も言わないけど、相手はあんたの一言を待ってるかもしんないぞ?』
 俺が言っても説得力無いかもしんないけどなとカイは言葉を続ける。彼にも思うところはあるようだ。
「これまで10年を過ごして、これからも一緒に、を伝えたいなら今回のサプライズはちょうどいい機会だよねぇ」
「告白……をするかどうかは別として、思ってることを伝えるのもいいですよね」
『だよねー。もっと男子の方からイケイケで引っ張ってもいいんじゃない?』
 みんな思うところは同じようだ。
『プレゼントもさ、同居人へ贈るのか、レディへ贈るのかは考えて選べよ。何せ10年も一緒なんだ。はっきりしねぇと伝わらねぇよ』
 言葉を伝えるのもまた同じだとガルーが言う。
「っま、最終的には全部幽世さんが決める話っすからね」
 征人の言葉に幽世はそうだなとただ一言だけ返した。
 しばらくして、彼は一人静かに決断するのであった。

■自分の気持ち 常世side
『その…ちょっと聞いてみたいだけなのだけど。パートナーを恋愛対象として見たりする?』
 カフェにつくなりミーシャが常世の相手に対しての気持ちを聞く。
『実際、気持ちはあるんだろうな』
 誰に言うわけでもなくオリヴィエが呟く。
『……そう……ですね。好きです。大好きです』
 彼女は寂しげな笑顔を浮かべる。
『うーん……やっぱり年齢がきになるの?』
 フローラの言葉に彼女は静かに頷く。
「10歳差なんて、私からすれば気にすることではないと思いますが……」
 恋愛は難しいですよねと月鏡が苦笑いを浮かべる。
「仮に年齢は置いておくとして、伝える気はないんですよね」
 御童は確認を込めて彼女に問う。
『……そうですね。それに幽世さんは大人の男性ですし、私なんて釣り合いませんしね……』
 彼女はかなり後ろ向きのようだ。
「そんなことないのです! 似合わないなんて気にすることではないのですよ!」
 そんな彼女に征四郎は力強く答える。
『そうよ。釣り合う、釣り合わないなんて考えなくてもいいんじゃない? 重要なのは自分の気持ちじゃない』
 だなとオリヴィエが続く。
『小さいことを気にしすぎなんだ。プレゼントもそうだ。大事なのは気持ちだと思う』
『そうそう。自分の気持ちを大事にしてあげて!』
 ねっとフローラも笑顔で彼女に言う。
『自分の気持ち……』
 それだけ言うと、彼女は考え込んでしまった。
「ま、まあ……伝える、伝えないの話はさておき、まずはプレゼントですからね!」
「そ、そうですね! ちょっと休憩したら今度は何のペアを送るか考えないといけませんね!」
 俯いてしまった彼女に月鏡と御童がすかさずフォローを入れる。
『……そうですよね! まだ決まってないですから』
 フォローのかいもあってか、彼女は珍しく前向きな姿勢を見せた。
 それぞれ飲み物を注文し、つかの間の休息に足を休めるのだった。

■二人の行く末 尾行チーム
 記念日当日。最終的に幽世が彼女を連れて行くのに選んだ場所は、海の近くにある水族館だった。理由としては、出会った日に海を眺めていたこともあり好きなのではないかと思ったからだそうだ。
 日曜ということもあり、水族館は人であふれている。二人をパッと見てもただデートをしに来ているカップルにしか見えない。
「ふふ、やっぱり仲良しじゃないですか!」
 水族館の群衆に溶け込む二人を見て、征四郎は満面の笑みを浮かべる。
『……信じられるか、あれで付き合って無いんだぜ』
 待機組に報告の為、オリヴィエが携帯でそっと写真を撮る。
「……俺には両想いに見えるんだが。ミーシャから見てどうよ?」
『……同じくよ。あのお互いの視線見た? どうしてあれで気付かないのよ!』
 二人の様子を見て征人とミーシャの二人は顔を見合わせる。
 遠目で見ても二人がかなりいい雰囲気になってるのは知らない人でもわかるくらいだろう。
 テンションが上がっていて気づかなかったのか、不意に常世が人とぶつかりそうになってしまう。
「あ……」
 危ないと思った瞬間、幽世が自分の方へ彼女を引き寄せた。
「わぁっ!」
 恋愛ドラマのワンシーンを見るように、征四郎は二人のやり取りに釘付けになる。
『これのどこに告白を悩む必要があるんだか……』
 そういいつつオリヴィエはすかさず写真を撮った。
「あーもー見てらんねえ! はっきり言ってやりてえ!
『わかるけど我慢して……!』
 じれったいと言わんばかりに、みんなそれぞれ思ったことを口にする。
 いつまで抱き合ってんだと言いたくなるぐらいの二人は抱き合う形のまま止まっていた。はっとするように、急に離れお互いに顔を背ける。
「あー……」
『もうっ!』
 二人の様子に征人とミーシャはもどかしさを抑えられない。
「ふふふ……このまま告白も成功しそうですね」
『ここまでしたんだ。成功してもらわないとな……』
 何かを思うようにオリヴィエは言葉を止めた。

■二人の行く末 待機チーム
 水族館の近くのショッピングモール。そこの一角にあるカフェで八人の男女が「乗り掛かった舟だ最後まで見守ろう」と、二人の身を案じる会と称し集まっていた。お茶を飲みつつ、尾行組の連絡を待つ。
『てっきりついていくんだと思ってたんだけど……気にならないの? ひりょは』
「そんな事はないさ。でも、やるべき事は他にもある気がするからさ」
『ひりょってさ、意外と意地っ張りだよね』
 ひりょとフローラは行きたい気持ちを抑えつつ、待機組へと加わっていた。
「ねぇねぇ、付き合うかどうか賭けない? お兄さん付き合う方に1000G」
『1000Gシケてない? でもまぁ俺様も、決めて来るんじゃないかって思ってるからー』
 頬杖を突きつつ、リュカとガルーは二人の行く末を予想する。
『ぶっちゃけ、ここにいる全員が成功するって思ってるんじゃねぇか?』
 彼らの会話にカイが反応する。
「そうですね……成功するといいのですが……」
「きっと、成功しますよ。ね、リディス」
『うんうん、あんなにお似合いだもん。あとはお互いの気持ち次第ってね!』
 お互い惹かれあっているのは確信している。皆考えは同じなようだ。彼女の言葉にそれぞれ頷いたりと反応する。
 不意にピロンという音とともに携帯が震える。どうやらメールが届いたらしい。
 確認すると、尾行組からの報告だった。『……信じられるか、これで付き合って無いんだぜ』という本文とともに二人の仲睦まじい様子の写真が送られてくる。続けてまたメールが届き、今度は写真のみで二人の抱き合う姿が写っていた。
「あら……」
「これは……ねえ」
 内容を確認するなり、皆思わず口元がゆるむのを止められなかった。
(お互いの想いが伝わりますように……。そう願わずにはいられないな)
 ここにいる誰もが同じように思ったのではないだろうか。

■これからもずっと
 水族館を二人で楽しんだ後、二人はすぐ近く海で会話するわけでもなく浜辺に座り水平線を眺めていた。
 時刻は夕暮れ時、周りの人影は徐々に数を減らしていた。
「なぁ」
 しばらくして重い口を彼が開く。
『な、なんですか……?』
 彼女の声色から緊張するのが窺える。
 何も言わずに、彼は胸ポケットから小さな可愛くラッピングされた袋を取り出す。
『これ……』
 彼女の声は震えている。
「ほら、ちょうど10年だからな」
 彼の声も心なしか緊張感が見えるような気がした。
 わ、私もと彼女もおずおずと鞄から小さな紙袋を取り出す。
『なかなか決めれなくて……自分一人で選べたわけじゃないんだけど……』
 プレゼントを手にする彼女に彼は驚いた顔を見せた。自分がもらえるとは思ってもいなかったのだろう。
 二人はそれぞれプレゼントを受け取り開封する。選びに選んでお互いが送ったもの―幽世は水族館に下見をした際に見つけた、小さな貝殻をあしらったネックレスだった。貝殻のワンポイントにブルーの石が二つその真ん中にダイヤと貝殻の縁を彩るようにはめられていた。
 常世は、シンプルなシルバーの腕時計と香水を彼に送ったのだ。彼には伝えてないが、実はゴールドの腕時計とのペアである。
 プレゼントを受け取った二人に、しばらくの沈黙が流れる。
 突然彼はがばっと隣に座る彼女を抱きかかえる。そして耳元で何かを囁きすぐに離れた。
 数秒後彼女の目から大粒の涙が流れ落ちる。
「す、すまない……やっぱり、なかったことに」
『ち、ちがうの!』
 慌てる彼に彼女は言葉を遮る。
『私も大好きです……これからもずっと一緒にいたい……』
 涙を浮かべる彼女は満面の笑みで彼の囁きにそう返した。
 流れ落ちた一滴は夕日に当てられ綺麗に輝いていた。

■後日談
 デートの日はそのまま彼らと合流することなく、皆は解散を迎えた。
 数日後、各個人あてに一通の手紙が届いた。送り主は常世命であった。
『この間は本当にありがとうございました。皆様のおかげで、お付き合いをすることになりました。本当に感謝しております。よろしければ、プレゼントを買う際に見つけたペアのブレスレットを送らせていただきますので、使っていただけたら嬉しいです。お友達同士で送りあうようなシンプルなものですので、パートナーさんと付け合うのもいいのではないかと。また改めて後日お礼はさせていただきます。本当にありがとうございまいた』
 手紙にはそのようなことが書かれていた。封筒からチャリッと音がする。中を覗くと、手紙にも書いてあったブレスレットが二つ同封されていた。
 それを取り出し、彼らのあの日のやり取りを思い出し笑うものもいたのではないだろうか。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • ほつれた愛と絆の結び手
    黄昏ひりょaa0118
    人間|18才|男性|回避
  • 闇に光の道標を
    フローラ メルクリィaa0118hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 花の守護者
    ウィリディスaa0873hero002
    英雄|18才|女性|バト
  • 難局を覆す者
    久兼 征人aa1690
    人間|25才|男性|回避
  • 癒すための手
    ミーシャaa1690hero001
    英雄|19才|女性|バト
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