本部

酔っ払いのためのRPG~ハロウィン編~

落花生

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2017/10/31 12:54

掲示板

オープニング

 日本で若者を中心に徐々に受け入れられつつある、ハロウィンという奇祭。
 それで町おこしにしようと企画する、さびれた町があった。
「今年もやってきな、この季節が」
 ぴかぴかの頭の村長が、真剣な眼差しで実行委員会を見つめた。実行委員会の面々は、それまた真剣な顔でうなずく。
 世代交代が上手くいかないシャッター街でがんばって営業を続ける店主を中心に組織された実行委員会の平均年齢は、かなり高めだ。最年少は五十歳で、最年長に至っては杖をついている八十代である。
 そんな渋い面々は、ド派手な仮装に身を包んでいた。
 最年少の五十代焼き鳥屋の主人は、サンバの衣装を。
 六十代の和菓子屋の女将さんは、今年大ヒットした子供向けアニメーション映画のお姫様の衣装を。
 七十歳の酒屋の主人は、目が死んでいるご当地キャラクターの着ぐるみを。
 八十歳の杖を突いたおじいちゃんは、白い着物の幽霊の姿を。
「仮装をしている客は全品十パーセントオフセールを商店街を上げてやっているというのに……毎年黒字になるほど客が来ない」
 村長は、こぶしを握る。
 ちなみに、村長のスーツは黒字に赤いタコが掛かれたものだった。頭にもタコの被り物。本人の頭髪のことも相まって、どのように扱えばいいのか非常に困る格好だ。
「都会ではハロウィンがメジャーでも、田舎ではまだまだ知名度が低いですからね」
 目が死んでいるご当地キャラクターの仮装をした居酒屋の店主はため息をつく。ちなみに、このキャラクターは一般公募で選ばれたものだ。十歳の男の子のデザインを忠実に再現してたうえに、魚は目が死んでいるという大人の知識が相まって非常に怖いご当地キャラクターとなった。苦情が来ないのは、知名度がないからだろう。
「でも、年々ちょっとずつ客は来てますよ」
「苦情も増えたけどな」
 実行委員間は去年の苦情の数々を思いだす。『町ぐるみのハロウィンだと聞いたのに、店員が仮装してない』『店が少ない』『何の仮装なのかよくわからない』といった数々の苦情のなかから、なんとか改善できそうなものだけはしてきた。まず、町の飲食店は全店が仮装を義務づけた。そして、メジャーなキャラクターの仮装を各々で制作した。若干一名仮装ではすまされない格好がいるが……。
「今年こそ、ハロウィンを盛り上げたい!」
「売り上げを黒字にしたい!!」
 ――ファイト!!!
 と商店街の店主たちは円陣を組んだ。
 

「この町全部がハロウィンなんやな」
 仕事で町を訪れていた正義は、小鳥と共に町を歩いていた。ハロウィンの本番は夜らしく、昼間の町は閑散としている。それでも仮装道具などを売る露店などはあって、普段よりは町は賑やかであった。
『仮装すれば、ご飯が十パーセントオフになるのです。正義、行くのです』
「行くって言っても、僕は仮装道具なんてもってないで」
『大丈夫です。スーツを着ればヤクザの仮装に、タンクトップに着替えればチンピラの仮装になるです』
「それ……店にいれてもらえへん」


「十パーセントオフ……」
 エステルは、その言葉にちょっと引かれた。アルメイヤとの二人暮らしで、彼女に負担をかけたくはない。そう考えていた折に、十パーセントオフの文字は魅力的に映った。
『仮装が義務か。エステルの仮装はさぞかし……』
 見応えがあるだろう、とアルメイヤは思う。
 実は、エステルに着てほしくてキュートでポップな小悪魔風のミニドレスを購入してしまっているのだ。ちょっと値は張ったが、絶対にエステルに似合う逸品だ。ぜひとも、来てほしい。
「今着ている服も……仮装っていえば仮装で通るかも」
 エステルの着ているものは民族衣装だから、日本人の目から見れば仮装にも思える。だが、アルメイヤは目が点になった。
『仮装……しないのか?』
「だって……仮装したらお金がかかるから」
 アルメイヤは悶絶しそうになった。
 お金をかけないようにして自分の負担を減らそうとするエステルのいじましさに感動したが、このままではひっそりと用意した衣装を着てもらえない!
『エステルちょっとぐらいなら……』
「アルメイヤの格好も仮装になるよね」
 エステルの純粋な瞳に、アルメイヤは何も言えなくなってしまった。


「いらっしゃーい」
 夜になると町はようやく活気づく。様々な仮装をした店員たちが露店を広げて、ビールや酎ハイといったお手頃な酒から紙コップに入ったカクテルまで、さまざまなものを売り出していた。
 食べ物も焼き鳥から焼きそばに始まって、餃子やコロッケ、から揚げといった商店街おなじみのお惣菜が並ぶ。ハロウィンとは名ばかりの酒とつまみの販売祭は、大人たちにはおおむね好評である。むろん、ケーキ屋や和菓子屋による本日限りのかぼちゃのケーキやかぼちゃのまんじゅうの販売なども行われていた。
「飲み食いは、西公園でお願いします!」
 怪獣の着ぐるみをきた誘導員が、観光客に向かって呼びかける。出店が出ているのは町の表通りたる西アーケード。その突き当りにあるのが、西公園だ。そこではライトアップされた紅葉とたくさんのテントが並んでいた。客たちは各々に買い込んできた酒やつまみ、時にはお菓子で乾杯する。
「……ハロウィン、名前だけじゃないか」
 ジャックランタンのコスプレの人ではなくて――ジャックランタンをかぶった姿の愚神は怒りに震えていた。彼はこんな頭をしているがゆえに、ハロウィンが大嫌いだ。普段はちゃんと愚神として人々は自分を恐れるのに。この季節だけは「カワイイ」なんていわれてしまう。
「この祭りをぶっ壊してやる!!」
 そう叫ぶ、愚神の左手には焼酎。
 実は、本人は全く気が付いていなかったがジャックランタンは酔っていた。

解説

・飲み会ハロウィンを楽しんでください。
※リンカーは本来は酔いませんが、このシナリオでは楽しいハロウィンの雰囲気に酔ってしまいます(なお未成年者の飲酒は出来ませんが、気分で酔っているだけなので酔っ払うこともあります)

・時間……18:00

・西アーケード……たくさんの露店が並ぶ、アーケード街。商店街にある飲食店はすべて露店を出しており、お惣菜やつまみ、お菓子などを買うことが可能。なお、露店のスタッフはほとんどが年齢層高め。なお、衣料品店ではハロウィングッツの購入と着替えが可能。

西公園……大きな公園だが遊具などはない。テントとベンチが並び、客はそこで飲み食いができる。公園内には露店がないが、西アーケードから近い。客は若者中心で、思い思いのハロウィンを楽しんでいる。

エステル組……西公園におり、アルメイヤは機会があればエステルを着替えさせたいと思っている。

正義組……アーケードのお店で、幽霊の仮装をしているのにチンピラに間違えられて出入り禁止を言い渡されている。

ジャックランタン……愚神。西公園にいるが、客と区別がつかない。自覚はないがベロンベロンに酔っており、「これは仮装じゃなーい!!」と言って暴れ出す。頭が大きくてアンバランスの見た目の割には俊敏であり、動きをとらえるのは難しい。
ナイフ――暴れ出すと取り出す、黒いナイフ。壊してもマジックのようにナイフはジャックの手のひらから現れる。
いたずら――客やリンカーたちが持っている酒の中身を操り、飲み物の持ち主の口に勝手に入っていくように操り酔いを加速させる。
おかし――巨大なキャンディを出現させる。キャンディは一定時間が経つと爆発し、大量のキャンディが公園中に降り注ぐ。それを一般客を食べるとライブスが愚神に吸収されてしまう。
二日酔い――ジャックランタンが一定時間動くと発動し、ジャックランタンが吐き続ける。

リプレイ

 地方都市の大通りに明かりが灯り、様々な仮装をした人々が行きかう。アニメのお姫様の姿に、ミイラ、ゾンビ、狼男、きっとこのなかにうっかり死者が一人混ざってしまっても誰も気がつかないであろう。

「……ええ?? 僕これなの!?」
 試着室の鏡を見て、セレン・シュナイド(aa1012)は仰天した。セレンが衣料品店で選んだ仮装は着ぐるみタイプの狼男のものだったが、店のおばさんに進められるままに牙まで装着してしまったら思ったよりも本格的な仮装になってしまった。
『セレンは、まだまだ可愛い格好が似合う年頃だね』 
 笑うAT(aa1012hero001)は白いシャツに真っ黒なマントを羽織り、セレンと同じく牙を付けた吸血鬼のスタイルである。クールな雰囲気な彼女がそんな格好をしていると、まるで俳優のような凛々しさであった。
 地元の女子高生たちが、頬を染めてATを見つめている。ハロウィンの夜は、恋のきっかけも十パーセントオフなのだろうかとセレンは思う。だが、女子高生が握り締めているのはメモ帳。今度の冬の漫画祭りには、吸血鬼と狼少年の話にしようかしらと彼女たちは話し合っていた。
 ――こんにちは、冬の漫画祭りのネタ。
「……今日は食べ放題と聞いたのじゃが……何やら着替えをせねばならぬのか。……ふむ、これは西洋の巫女……みたいなものかの……」
 黒い修道女の格好をしているのは、音無 桜狐(aa3177)である。いつもとは違った服装に、くるっと身を翻してみたりしていた。
『にゅふふ、ミイラ猫女にゃー♪』
 ご機嫌な猫柳 千佳(aa3177hero001)は、上機嫌で試着室から飛び出してきた。
『ちょっと際どい格好ではないかな?』
 全身を包帯で巻いた千佳に、ATは心配そうな視線を向ける。四人のなかでは一番年上に見えるせいもあって、ATは彼らの保護者のようになっていた。いや、保護者のような気持ちがなくとも今にも解けそうな包帯を心配したであろうが。
『心配無用です!!』
 元気よく親指を立てる千佳に、ATは何かしらの対策をしているのだろうと思った。
「食べ物を買い込んで西広場へ行こう。お菓子も良いけど、お腹が膨れそうなのも食べたいなぁ」
 お好み焼きとか売っているかな、と呟くセレンの裾を桜狐がそっと掴んだ。
「できれば……油揚げ入りのものが欲しいのじゃが」
 可愛くお願いしても、油揚げ入りのお好み焼きはないのではないだろうかとセレンは人知れず思った。
「ノエも、去年とは別人ぢゃの」
 入れ歯を入れて、仮装の準備を整えたヴァイオレット メタボリック(aa0584)はしみじみと鏡を見ながら呟く。鏡のなかにいるのは、豊満な肉体を車椅子に押し込める自分の姿である。
『引き返せぬほど老けたからのぉ、そちの特注の総入れ歯で出っ歯なおばばになったのぢゃよ』
 ノエル メタボリック(aa0584hero001)も老婆の姿で、ヴァイオレットの車椅子を押す。
「わらわは、随分怒りん坊になったぞよ」
 おかげで眉間の皺もふえてしまったような気がする。ヴァイオレットが店の姿見で眉間を揉み解していると、鏡のなかを白い影が横切った。
「なんと……」
『変身がばれず助かった……。わらわの声かのぉ』
 自身の後ろで、醜いオークの姿となったノエルにもヴァイオレットは気がつかない。
『ぶぅひゃっひゃっ、オーク声らしいぞえ、自慢が増えたぞよ。……ヴァ、なにをしているんじゃろか?』
 必死にスカートの埃を払おうとするヴァイオレットの姿に、ノエルはポンと手を叩く。
『おお、死霊のまねごとじゃな』
「違うのじゃ。急に胸が苦しくなって、自分の格好の自信がなくなってしまったのじゃ。どうして、わらわはこんなスカートをはいてきてしまったのじゃろうかと思うと……恥ずかしくて恥ずかしくて――あんなに素敵な人に出会えたというのにのう」
 直視することすら恥ずかしいらしいヴァイオレットは、頬を染めながら鏡を指差す。ノエルの目に写ったのは、杖を突きながら歩く老人の死者であった。
『ひっ――』
 八十代のよぼよぼおじいちゃんの幽霊のコスプレは、色々な意味で冗談ではすまされない。だが、本人は大変気に入っているらしく意気揚々と歩いている。試着をしていた子供が老人を見て「死んだおじいちゃんが蘇った!!」と恐怖で泣き出した。だが、ヴァイオレットはうっとりしていて泣き声にも気がつかない。 
「あの方が、わらわに声をかけてくれたら……どこまでも付いていってしまいそうじゃ」
『落ち着くのじゃ。あれは、幽霊じゃ――ついていったら、三途の川を渡ることになってしまうのじゃ』


「意外に多くの人が参加しているんだな」
『誰か居ないかな~』
 伊邪那美(aa0127hero001)はたこ焼きを食べながら、アーケードを歩く。巫女服に猫耳を付けた猫又の仮装はアーケードのおばちゃんおじちゃんに非常に受けがよく、さっきもフライドポテトをおまけでもらってしまった。
 遠くで、レミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001)と狒村 緋十郎(aa3678)が買い物をしているのを伊邪那美は見つける。吸血鬼と猿男の仮装の夫婦は、仲むつまじそうで『話しかけるのはお邪魔かな』と伊邪那美は考えた。
「数年前までは、ハロウィンなんて知る人の方が少なかったのにな」
 呟く御神 恭也(aa0127)の仮装は、お店の人々に不評だった。なにせ狐の面を着用しているだけなのである。親切な店の主人など「兄ちゃん、恥ずかしいのも分かるけど。せっかく、妹がおめかししてるんだから合わせてあげないと」と言われた。
 そして、危うく去年村長が着たという伝説の『頭髪が十パーセントオフになるタコの被り物』を譲り渡されそうになってしまった。伊邪那美が妹に間違われるのは良いとして、被り物だけは恭也は断固拒否した。
 ――さようなら、毛根……だけは回避したかったのである。
「ふと気になったんだが、お前の仮装や服なんかは市販品じゃないよな? いつもどこから入手しているんだ?」
 普通ハロウィンの仮装など、ぺらぺらの生地で作られる安物だ。だが、伊邪那美が着ている服は生地がしっかりしていて、日常生活での使用にだって耐えられるだろう。
『えっ? 恭也のおばあちゃんや叔母さん達が定期的に送ってくれてるよ』
「伊邪那美の体形に合わせて作ってくれてるのか。まぁ、袴や狩衣なんかは解るが、巫女服なんて作るか?」
 ふふふふっ……と伊邪那美は笑う。
『実は、ひっそりと恭子ちゃんの服も頼んでるんだよ』
 自分の親戚のそんな特殊な趣味はなかったはずだ、と恭也は思う。だが、もしも伊邪那美が「とっても大柄なお友達ができたんだ」とでも言って叔母たち作ってもらっていたとしたら――怖くなって恭也はごくごくと飲み物を喉に流し込んだ。勢いよく飲んだせいなのか、ちょっとフラフラした。
 ――こんにちは、酔っ払い。
「これとこれとこれ……うむ、こんなもんか」
 菓子店で、ワイルドな狼人間スタイルの麻生 遊夜(aa0452)は季節限定のかぼちゃの饅頭を子供たちの人数分購入する。美味しいと評判の店のものだから、きっと子供たちも喜んでくれるだろう。
『……ん、仮装……仮装?』
 遊夜とおそろいの狼人間姿のユフォアリーヤ(aa0452hero001)は和菓子屋の奥で、一服している村長をじっと見ていた。恐らくは何かしらの仕事をしてきた村長の額には、汗。それがタコの被り物から露出しているオデコをぴっかぴかに輝かせている。
 和菓子屋を通りかかった伊邪那美が『あっ、伝説の十パーセントオフの』と指差しかけて、恭也に叱られていた。ピカピカで伝説の十パーセントオフとは何なのだろうか、ユフォアリーヤはうずうずしながら、村長を見つめていた。
『……ん、十パーセントオフは……偉大。……そして……伝説の』
 触ったら、ものすごくご利益がありそうだ。
 だが、実際は汗をかきながらタコの被り物をしているから村長の頭髪はダメージを食らっているだけである。つまり、タコの被り物をしている限り村長の頭髪は来年も十パーセントオフである。
「リーヤ、俺たちの夕食を買いに行くぞ」
『ん……来年はオフにならないと……いいね』
 なにが、と遊夜は思った。
 ――さようなら、村長の毛根。
『……どうしたんです、その恰好』
 ヴァルトラウテ(aa0090hero001)は、正義の格好を見て目を丸くした。彼は白い着物に頭に三角巾をつけて、幽霊の仮装をしていた。ただし、サングラスはいつもどおり着用している。
「なんというか……抗争の果てに死んだ任侠物か喧嘩の果てに死んだチンピラにしか見えないよな」
 赤城 龍哉(aa0090)の言葉に、ヴァルトラウテは笑うのを我慢する。笑っては失礼である。
「そこの店のおっちゃんにも『三十年前に組の抗争で死んだ三郎じゃねぇか。蘇ってくるとはふてぇ野郎だ。もう一度、切ってやらぁ』と言われて出入り禁止なってしまったんや」
「それ、よく出入り禁止で収まったな! ……一応、疑いが晴れるように協力はするけど」
 龍哉は、ちらりと焼き鳥屋を見る。
 一体、この店の主人は三十年前になにをやったというのだろうか。もう、警察を呼んだほうがよいのではないだろう。
『あら、麻生さんたちですわ』
 ヴァルトラウテが指差す先には、お土産のお菓子をたっぷり買い込んだ狼カップルがいた。子供たちへのお土産なのだが、傍目には甘党の二人組みに見えて微笑ましい。
『……焼き鳥……孔雀の、お肉?』
 焼き鳥屋に羨望のまなざしを向ける、ユフォアリーヤ。
「おっ、赤城さんたちも着てたのか。いやぁ、俺たち男はみんなチンピラ風味の格好なったな」
 事情を知らない遊夜は、朗らかに笑った。
 だが、龍哉と正義は深いため息をつく。二人から話を聞いた遊夜は、チンピラ風味仮装同盟代表として立ち上がった。
「よし、誤解を解いてこよう」
『ん……がんばって』
 遊夜は一人焼き鳥屋に入って行き、数秒後には彼の悲鳴が聞こえてきた。
 ――とりあえず、警察。
「……ファル……暑くない?」
 死神の衣装をまとった染井 桜花(aa0386)は尋ねた。真っ黒な衣装に髑髏の仮面、手にした鎌も手伝って桜花の仮装は非常に禍々しかった。
『……問題ありません』
 ジャックランタンの着ぐるみを着た、ファルファース(aa0386hero001)は人知れずため息をついた。今日は堂々と仮装が許される日であり、出切ることならば普段は見られないような可愛らしい服装をした桜花を見てみたかった。
 ちょうど、前方を歩いてくる子供のような小悪魔風のドレスとか。
「みんな仮装、なのです! ステキなのです!!」
 紫 征四郎(aa0076)は、買ったばかりの魔法少女の衣装を着てご機嫌だった。ミニスカートのドレスはちょっとスースーするが、紫と黄色のデザインはハロウィンの魔女のイメージで華やかだ。髪型もドレスに合わせてちょっとアレンジして、彼女は満面の笑みでリュカのほうを振り返ろうとしていた。
 そして、征四郎は絶望した。
 ファルファースには、その気持ちがよく分かった。
「南瓜のワンポイントがお洒落でしょ★」
 木霊・C・リュカ(aa0068)は、なぜか征四郎と色違いのお揃いの格好だった。白地に黒いフリルが付いたミニドレス。胸元には、にっかりと笑うジャックランタンの刺繍。たしかに、お洒落で可愛らしいが明らかに女性向けのデザインである。
 いろんな意味で桜花と服を交換して欲しい、とファルファースは思った。
 強い風邪が吹き、無防備だったリュカのスカートもめくりあがる。「きゃっ!」というがんばって甲高くした悲鳴にぎょっとしたバイトが、店の売り上げを握っていた手を緩めてしまう。千円札が、祭りの夜の空に飛んでいった。
 ――さようなら、売り上げ。
「そうだ。せーちゃんにもお菓子をもってきたよ。ハロウィンだから、大人はお菓子をよい子に配らないとね」
 普段はできない交流がハロウィンの楽しみだね、と語るリュカの姿はミニドレス。もし、親が子連れで参加していたら、絶対に彼の側に子供を近づけないであろう。
「……どうかした?」
 桜花は、リュカにまだ気がついていない。
 別に気がつかなくてもいい。
『……いえ……何でもありません』
「……ふむ……まあ良い……行こうか」
 とりあえず、夕飯を購入しようと二人は足を進める。
『メジャーな仮装だから周囲にも馴染んでるな!』
 前方に、ガルー・A・A(aa0076hero001)が現れた。
 彼が着ているのは、黒地に白いフリルのミニドレス。胸元には笑うジャックランタンの刺繍だが、たくましい胸襟のおかげで若干表情がゆがんでいる。一言でいうならば、ピチピチだ。
『臨時収入があったからな、奢るぜ。遠慮するなよ。折角来たんだ、楽しまねぇとな』
『……』
 オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は、無言でガルーが差し出した仮装セット『猫耳ネネタンなりきりセット(女子高生バージョン)』を引きちぎった。ガルーが仮装セットを購入したときから、ずっと彼の跡をつけていたオタク親父が落胆する。絶対に可愛い女の子へお土産だと思ったのに、夢破れた挙句に大好きなネネタンの衣装は破られた。オタク親父は、お家へと走る。録画したネネタンのアニメで癒されるために。
 もう来るな――盗撮マニア。
『トリック、オア、デット?』
 地獄の底から響いてきそうな声で、オリヴィエはライターを取り出す。
 今回は祭りだから、と思って油断していたのが不味かった。まさか、征四郎が自分用に衣装を買っている隙に大人たち二人が「自分たち用のドレス」を購入しているとは思わなかったのだ。しかも、ばっちりタイツまで購入しているとは。
 数回にわたる女装でリュカもガルーも気がついてしまったのだ、スカートは寒い。だから、今回は黒いタイツを着用ずみ。これで、防寒とすね毛対策もばっちり。
『でも、これでも目立っちゃうならすね毛対策はしないとな』と語るガルー。
『……これまで得た記憶を全て失え』
 ――こんにちは、殺意と暴力。
『何だよ。さっき破いたのは、いつも着てる学ランと同じようなもんだろ』
 ガルーの言葉に『……同じではない』とファルファースは内心ツッコむ。
 女性用・男性用と用途が別れている時点で、そこには天と地ほどの違いがあるではないか。むろん、桜花が学ランを着たら凛々しくて素敵だとファルファースは思うが。
「……二人とも……トリックオアトリート」
 いつの間にか、桜花は誰かにお菓子をわたしていた。
 まさか、さっきの推定魔法少女たちではないかとファルファースは思ったが、相手はエステルとアルメイヤだった。クッキーを受け取ったエステルであったが、彼女はお菓子を持っていなかった。だからといって悪戯も思いつかず、途方にくれる桜花にアルメイヤはささやいた。
『どうか、これをエステルに着させてもらえないだろうか』
「ほう……面白そうだな」
 桜花が、アルメイヤから受け取ったのは小悪魔風のミニドレス。桜花は、ファルファースに「……化粧もだ」と声をかける。察したファルファースは、店で購入したコスメを桜花に手渡す。基礎化粧品などはさすがないが、十代の肌には必要ないだろう。
「あ……あの」
 戸惑うエステルの肩を、ファルファースは優しく叩いた。
『お菓子を渡さなければ……悪戯されてしまうのですよ』
 戸惑うエステルに、大人の女性たちは美しくなるとための手ほどきを始める。
 ――こんにちは、秘密の花園。


『外で頂くワインも、趣があっていいものよね』
 レミアは、優雅なしぐさでワインの御代わりを緋十郎に求める。
 緋十郎は恭しく紙コップにワインを注ぎ、チーズケーキを彼女のために取り分けた。完璧な給仕に、レミアは満足げに微笑んだ。
「綺麗だ……」
 どこかぼんやりとした目で、緋十郎は呟く。
『あら、わたしのこと? それとも紅葉のことかしら』
 ライトアップされた紅葉にハロウィンらしさはないが、日本人の緋十郎の感性をレミアは理解している。
「それに……良い匂い。芳しい」
 向かい座っていたはずの緋十郎が、レミアの髪に手を伸ばす。さらりとした髪に触れて、手に付いた残り香りを彼は胸いっぱいに吸い込んだ。甘い香りに、緋十郎の目がさらにぼんやりと溶けた。
『ちょっと、まさか酔ってるの。ビールぐらいで酔わないでよ』
 何杯飲んでいたっけ、とレミアはとっさに考える。
 思い出せないということは、それぐらい早いピッチで緋十郎はビールを空にしていたのだろう。
「愛している……俺の」
 緋十郎はいそいそとレミアの隣に座り、ぎゅっと彼女を抱きしめようとする。
『――すみません! お隣いいでしょうか!!』
 そんな二人に、元気いっぱいに話しかけたのは千佳であった。お祭りの空気にすっかり当てられて酔ってしまった彼女は、にこにこと微笑みながらラブラブ夫婦の隣にだって恐れずに直進する。
「猫柳さん、だめぇ!! ここはだめぇです」
 顔を真っ赤にして、セレンは千佳を止めようとしていた。
『うーん、久しぶりのお酒な気がするにゃ。美味しいにゃー♪』
 だが、すでに千佳の宴会は始まっていた。
「油揚げがないのじゃ……ないのじゃ」
 桜狐もしょんぼりとしながらも、飲み食いを始めている。この二人、自覚はないがすっかり出来上がっていた。特に、千佳は包帯が解けて行くことにも無関心である。
「猫柳さん、包帯が!! 包帯が!!」
 茹で上がったタコのような顔色になりながら、セレンは悲鳴を上げる。
「うにゃ、暑くなってきたし丁度いいにゃー♪ 自然のままのほうが楽でいいにゃ♪」
 緋十郎を含む、何人かの男たちがピクリと反応する。
 ――来い、シャッターチャンス!
『あら、わたし酔ったかしら?』
 レミアの声に、緋十郎の肩がびくりと反応する。
『わたし以外の女の子に緋十郎が興味を持ったみたいだったけど、気のせいかしら?』
 レミアのヒールが、さっきまで自分の髪をなでていた緋十郎の手の甲に突き刺さる。
『気のせいよね。気のせいよね。気のせいよね?』
 尋ねながらもぐりぐりとヒールを食い込ませるレミアを緋十郎は、恍惚として顔で見つめていた。そして、緋十郎の後ろには男性が列を作っていた。彼らは通称M男。理想の女王さまを追い求めて数十年――ついに彼らは理想の女王様を見つけた。
「俺たちの女王様! 私たちも縛って叩いて、むぎゅーっとしてください!!」
「俺たちの女王様だと」
 緋十郎は、酔ったまま顔を上げてM男たちを睨みつける。大柄な緋十郎にM男たちも怯えるが、理想の女王様を前にしたM男たちにはかつてない勇気があった。
「レミアは、俺だけの女王さまだ!」
『せめて、妻といいなさい!!』
 レミアは緋十郎の尻尾を掴みあげて、天高く放り投げた。
 ――こんにちは、M猿座。
『キラキラ輝くお星様がきれいだにゃ』
『おやおや、千佳ちゃんは大胆だね。私も酔いが回れば張り合っても良いんだけど』
 ATは、ばさりとマントを脱ぐとそれを千佳の肩にかけた。
『セレンはちゃんとエスコートしてあげなさい。男の子なのだから』
 ほら、こんなふうにするんだよ。
 ATは微笑みながら、セレンを抱きかかえる。いわゆる、お姫様抱っこという状態である。その光景を見た女性人たちが、無言でカメラを構える。
 ――来た、シャッターチャンス!
「えっええっえー!!」
 抱き上げられたセレンは、戸惑う。
 だが、ATは落ち着いた声で彼に語りかける。
『ほら、手は首に回してもらう。そうすると安定するだろう』
 どうやらATはお姫様抱っこの仕方をセレンに指南しているようなのだが、彼女の顔はほんのりと赤くて――自覚はないが酔っていた。
「ずるいのじゃ……。わしも抱っこされたい。…ここは、地面が少し硬いのじゃ……。……セレン、膝に乗せるのじゃー……」
 桜狐の我侭に、セレンははっとする。ここで桜狐の希望をかなえれば、自分はATから逃げつつも男らしく桜狐を抱き上げることができる。
『そうだよね。仲間はずれは寂しかったよね。ほら、背中が開いているからよじ登っていいよ』
 セレンを抱きかかえたまま、ATは腰を落とした。
 違う――なにか違うと思いながら、セレンは成すがままだ。桜狐も不満らしく「なにか違うのじゃ」と小さくもらす。
「パパー。ゆうくんとちいちゃんにもアレやって!」
 ATの行動を見ていた双子の園児が父親に、強請る。可愛い盛りの子供には逆らえず、父親ははすがままになって腰を痛めた。
 ――こんにちは、腰ベルト。
『出たのじゃ。出たのじゃ!』
 ノエルは、ヴァイオレットの車椅子を押しながら西公園へとやってきた。
『幽霊が出たのじゃ!』
「ノエ、あの方は幽霊ではないのじゃ。まさか、恋を知れとは主は試練をお与えなさる」
 ヴァイオレットは、赤い頬で語りだす。
「痩せて、やつれていてもなおも凛々しい横顔じゃった。杖を突きながらも気丈に歩く姿に、わらわの心は……心は」
 ヴァイオレットの言葉に、ビールを飲んでいた老人がはっとする。
「まさか、三郎の幽霊が現れたって噂は本当だったのか!」
「おい、親父の組から足抜けして焼き鳥屋を始めた奴がいただろ。そいつのところにも三郎の幽霊が出たらしいぞ!!」
 ビールを飲んでいた龍哉が、ぶはっとビールを噴出した。
 正義が焼き鳥屋でチンピラに間違われていた件を解決した恭也と遊夜も龍哉と似たような面持ちであった。
『まさか、この平和な街で三十年前にあんなことがあっただなんて思いもしませんでしたわ』
 ヴァルトラウテは、ほんのりと色づいた顔で息を吐く。自覚はないが、彼女も酔っているのである。
『いつでもトリートする準備は出来ておりましたのに……気がつけば、トリートする子供の姿はなく……』
 警察を呼んだからな、と龍哉は遠い目をする。
『せっかくの正義さんの仮装も無駄になり』
 三十年前に行方不明になったチンピラの生き写しらしいしな、と恭也も遠い目になる。
『私もエステルさんの着せ替え……お着替えに参加したかったのに参加できず、伊邪那美さんと正義さんのお着替えを手伝うことぐらいしかできませんでしたわ』
 ざんねん、とヴァルトラウテはため息をついた。
『いやー、まさか恭子ちゃんの洋服の見本がこんなところで役に立つなんて思わなかったよ』
 朗らかに笑う伊邪那美の背後には、真っ赤な口紅を塗りピンクのワンピースを着た正義の姿。その姿を見た遊夜は正義の肩をぽんと叩く。
「二丁目に店を開いても、手紙はいらないぞ」
「ひらかへん!!」
 わーん、と泣きながら正義はワンピース姿のままで夜の街を逃げ出した。
 ――さようなら、正義。
「何ぢゃ? あの若造からも目が離せぬぞよ」
 ヴァイオレットの言葉に「そりゃあ、ピンクのワンピースで全力疾走する野郎からは目が離せなくなるだろうよ」と龍哉は内心突っ込む。言葉にする気力はなかったが。
「だが、相手が若者であろうとも老人であろうとも恋焦がれることは許されぬ。わらわは、主の伴侶ですぢゃ。後ろ髪引かれるのぢゃけれど済まぬ」
『長い老いだからと言って恋は、できてしまうのじゃ……妹の初恋をつまみに飲むぞよ。なあに、どうせ相手が幽霊であってもわらわたちもいつかは同輩になる身じゃ』
 笑うノエルの後ろで「はくしゅん!」と大きなくしゃみが聞こえた。
 それは、白装束の仮装をした老人であり、ヴァイオレットが指差した鏡の中にいた人物でもあった。
 ――さようなら、現世……してなかったの?
 ノエルは己の間違いにようやく気がつきつつ『孤児院の子らに、土産話が出来るであろう。飲み直すのぢゃ』と杯を取った。
 そのとき
「これは、仮装じゃなーい!!」
 という声が響いた。
「どいつもこいつも仮装だ、仮装だって言いやがって。俺がどれほど恐ろしいかを見せ付けてやる!!」
 ジャックランタンの愚神は、ナイフを取り出す。
「あーっお客様! コスプレ会場での本物の刃物の取り扱いはおやめ下さいお客様アーッ」
 オリヴィエと共鳴したリュカが、愚神に向って突っ込んでいく。危機管理能力は酔っていても働いていたらしく、リュカは愚神のナイフを破壊する。
「危ないですよ、リュカ!」
「せーちゃんが「がんばえーぷいぷいー!!」って応援してくれたら頑張る」
 語尾にハートマークが付きそうになっているほど上機嫌なリュカであった。だが、彼の衣装は女児に大人気のアニメ「プリプリ」の衣装のままだ。共鳴していたオリヴィエは、このまま自分が主導権を握って焚き火のなかに突っ込み衣装を燃やしてしまいたいと一瞬考える。
「征四郎はそんな喋り方しないのです!」
 もしかして、こんなふうにリュカに思われていたのだろうか。
「ぷいぷいー!!」なんてやっちゃいそうな、女の子に思われていたのだろうか。
『ああん? お前さん酔ってるのか?』
 征四郎の嘆きをよそに、ガルーは従魔に絡んでいた。片手にはビールを持ち、明らかにガラの悪い酔っ払いである。だが、彼の衣装も魔法少女風の「プリプリ」の衣装だ。
「手を離せ、酔っ払い!」
『ふっ、俺様たちをただの酔っ払いだと思うなよ。リュカ、こいつに先週のプリプリのアニメに出てきたアイテムを使ってやるぞ』
「いい考えだね。ほら、どんな難病でも治る「奇跡の水」だよ」
 にっこり笑いながら、リュカは愚神に奇跡の水(一対一の焼酎の水割り)を飲ませた。よい子は絶対にやってはいけないし、お酒に弱い子は絶対に作ってはいけない奇跡の水である。
「おまえら、なめるなよ!!」
 愚神の手より、新たなナイフが生成された。
 それを見た恭也が、愚神に拍手を送っていた。
「ほぉ……随分と高度なマジックだな。まるで仕掛けが読めないな」
『いや、あれってどう見ても愚神でしょ? 急いで退治しないと……もしかして酔ってる?』
 気のせいか、いつもよりも若干恭也の顔の血色がよくなっているような気がしないでもない。
「さっきリュカくれたのは水だったぞ。奇跡の水というミネラルウォーターだ」
『それ……さっきの愚神にも飲ませてたやつだよね』
 大丈夫なのかな、と伊邪那美は心配になったが恭也は楽しそうにマジックと信じる愚神の攻撃を見ていた。
「ッチ、ナイフ生成とは面倒な。レミアさん、協力して隙をつこう」
 遊夜は、レミアを見たが彼女は残念そうに首を振った。
『わたしは、今回は動けないわ。緋十郎が、Mの星になってしまったの』
 どういうことだろうかと遊夜が首を傾げていると、ユフォアリーヤが『ん……あれ』と背の高い木を指差す。そこには緋十郎が引っかかっていた。木の下には、M男の集団が彼をあがめている。美少女を妻とし、その美少女の唯一の下僕となった緋十郎はまさしくMの希望の星――いや、Mの王であった。
「王よ、私たちにも出会いを!!」
「ドSな美少女を紹介してください、M王さま!!」
 野太い男たちの合唱に、遊夜は遠い目をするしかなかった。
「愚神の酔っ払いとか笑えねぇな」
『元々が迷惑な所が倍プッシュですわね』
 さて、どうやって戦うものかと龍哉は考える。
 愚神はナイフを落とし、両手で口を押さえた。
 嫌な……予感がした。
 それは彼が暴れる前に摂取していたアルコールのせいなのかもしれないし、リュカの奇跡の水のせいなのかもしれない。だが、とりあえずこれだけは確かだった。
 愚神は、嘔吐した。


「……ん……美人さんだ」
 遅れて西公園にやってきた桜花は、相手がうっかり惚れてしまいそうになるような笑顔をエステルに向ける。その様子がファルファースには微笑ましくて、思わず写真に収めた。後日、アルメイヤにプレゼントするのもいいかもしれない。
『それにしても……なにかあったのかな?」
 西公園は大いに盛り上がっていたが、耳を澄ますと「M王!」という謎のフレーズが聞こえてきたりする。なぜか、メインの会場であるはずの公園は想像とは違う盛り上がりを見せていた。見たことがある顔も混ざっているが、どうやら彼らは満足に飲み食いしたらしい。特に桜狐はうとうとしていて、セレンに背負われていた。
「……眠くて歩けぬしおぶって欲しいのぉ……。……そうすれば帰るのじゃー……」
 あどけない桜狐の顔を覗き込み、千佳は「寝たかにゃ?」と呟く。
『重くない? おんぶ紐使うにゃ?』と尋ねる千佳にセレンは顔を真っ赤にしながら、すごい勢いで首を横に振った。一体、彼はどんなおんぶ紐が登場すると思ったのだろうか。
 そんな光景のすぐ横で、エステルはアルメイヤが購入していたハロウィンの衣装の裾を握りしめる。
「アルメイヤ……こんなに高いの買わなくていいのに」
 ――エステルはあれで結構経済観念しっかりしてんなぁ、と龍哉は現実逃避した。愚神が、あんなタイミングで嘔吐するだなんて思いもしなかった。ヴァルトラウテもちょっと気持ち悪そうである。
『アルメイヤさん」
 ガルーが、微笑みながらアルメイヤに近づく。
『アルメイヤさんの仮装も大変麗しいものと思います。エステルちゃんと一緒に是非楽しむべきかと』
 後に、彼は語る。
 漂うのは吐しゃ物の香り、とどろくのは「M王万歳!」という野太い声。そして、自分は魔法少女風のミニスカドレス。

――どうして、俺様はあの状態で女を口説けると思ったんだろう。

 答えは、きっと酒しか知らない。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • ー桜乃戦姫ー
    染井 桜花aa0386
    人間|15才|女性|攻撃
  • エージェント
    ファルファースaa0386hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • LinkBrave
    ヴァイオレット メタボリックaa0584
    機械|65才|女性|命中
  • 鏡の司祭
    ノエル メタボリックaa0584hero001
    英雄|52才|女性|バト
  • マグロうまうま
    セレン・シュナイドaa1012
    人間|14才|男性|回避
  • エージェント
    ATaa1012hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • アステレオンレスキュー
    音無 桜狐aa3177
    獣人|14才|女性|回避
  • むしろ世界が私の服
    猫柳 千佳aa3177hero001
    英雄|16才|女性|シャド
  • 緋色の猿王
    狒村 緋十郎aa3678
    獣人|37才|男性|防御
  • 血華の吸血姫 
    レミア・ヴォルクシュタインaa3678hero001
    英雄|13才|女性|ドレ
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