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お菓子くれても悪戯するぞ
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/10/01 20:42:13 -
パーティ警護相談
最終発言2017/10/05 08:50:50
オープニング
■
秋になり、町の木々が徐々に彩鮮やかになっている。ハロウィンが近づき、町もハロウィンモードで一色だ。都内にある一番大きい公園でも着々と準備が始まっていた。
ちょうどお昼御飯が食べ終わるころ、一人のエージェントがせっせと働いていた。
「よいしょっと……」
彼はプラスチック製の白い椅子を二つ一気に持ち、指定された場所へと運んだ。
「夜までには終わるかのう……」
運んでは並べ、運んでは並べとひたすらに同じ作業を繰り返す。
今日、この公園では夕方17時からハロウィンパーティーが開催される。その為、何住人という人が昼間から準備をしている。
木々の枝には、イルミネーション用の電飾や、ゴースト、コウモリなどがモチーフとなっている飾りが装飾されている。公園の至る所にはかぼちゃの置物が転がっていた。
「ふむ……こんなものかの」
広場に大きいテーブルがいくつも並べられ、その上にテーブルクロスがかけられている。隣り合う部分がテーブルクロスによって見えないため、一つの大きいテーブルが置かれているように見える。不思議の国のアリスの物語にでも出てきそうだ。
「あとは食べ物が届くのを待つだけじゃの」
綺麗にセッティングされたパーティー会場を見て、彼はにっこりと笑った。
■
「さてさて、君らには都内公園で開かれるパーティーの警備を行ってもらいたい。もちろん、パーティーを楽しんでくれても良いぞ。じゃが……仕事は忘れんようにな。
このイベントには、小さい子供がたくさん来ることじゃろう。あまり怖がるようなことはしてはいけんからな。トラウマになってしまいかねないからのう」
説明を終えたオペレーターは、手に持っていたクリップボードを机に置く。
「……わしも一緒に行きたかったのう」
彼は寂しそうに小さく呟いた。
解説
●目的
都内で行われるハロウィンパーティーの会場の警護。
●現状わかっていること
・今回は仮装パーティーとなっている。広場では様々な料理やお菓子が振舞われる
・小さい子供限定で、無料でお菓子が配られる。合言葉は「トリックオアトリート!」
・時間は夕方17時から21時まで
リプレイ
■Let’s party night!
怪しげなコミカルな音楽が、リズミカルに流れる夜。辺りは暗くなり、お化けが活動を始めるならこんな時間だろうか。
都内で一番大きい公園には、至る所に白いお化けやゾンビ、魔女、ドラキュラなどいろいろな怪物たちが集まっていた。それも、そのはずだろう。今日はこの公園でハロウィンパーティーが行われる。友達同士で来るものや、恋人同士、家族連れなど、様々なグループが仮装してこの公園にやってきていた。もちろん仮装していない人も中にはいる。ただ、それはごく一部で大半の人が仮装をしているのだ。
会場である公園内は、至る所に怪しげな紫のイルミネーションが灯り、木にはコウモリや白いお化けの飾りが吊るされている。本来、糸か何かで枝につるされているのだろうが、夜になっているせいで、宙に浮いているように見える。イルミネーションで怪しく紫に光る中、それが揺れるとなんとも不気味にも感じる。
「確かに……この人数は警備が必要かもしれませんね……」
公園の入り口付近にて見回りをしていた晴海 嘉久也(aa0780)が、すぐ近くにいるパートナーに話しかける。
流石に都内一大きい公園でパーティーとはいえ、一か所に人が集中しているのだろう。遊園地にでも来ているようだと感じるくらいに人が集まっている。
『そうですね。この人数を警備もなしにやるのはちょっと無防備ですわね』
パートナーであるエスティア ヘレスティス(aa0780hero001)も彼の言葉に同意する。
今回のパーティーは、大手製菓会社が新作のお菓子を振舞うために開かれたようなものだ。集客を得るために仮装パーティーとしているが、実際は広場で振舞われているお菓子やケーキなどがメインである。とはいっても、お客さんには仮装の方がメインになってしまっているが……。そんな大手会社が開いたパーティーで問題があっては、会社の信用にかかわることにもなるだろう。今回のイベントに警備は必須となるのである。
「とりっくおあとりいーとおー!」
2、3歳ぐらいのかぼちゃの帽子をかぶった子供が晴海に話しかける。洋服もオレンジでズボンはかぼちゃパンツで全体的に●っとしている。かぼちゃの仮装だろうか。
晴海はふっと笑い、腰につけていたポーチから飴を一つ取り出す。
「悪戯されるのは困っちゃいますね……これをあげるから許してください」
小さい子に目線を合わせ、にこにこしながらお菓子を渡す。
「あぃがとう!」
お菓子をもらった子は嬉しそうに公園内へ入っていく。後ろから子供の両親だろうか、会釈しつつ一緒に公園内へと入っていった。
「可愛いですね……」
『ふふふ、そうですね』
楽しそうな子供たちを見て、彼らはふっと頬を緩ませる。
「このまま、何事もなければよいのですが」
『そうですね……でも大丈夫ですよ。何かあったとしても、そういった場合を対処するためにも私たちがいるんですから』
晴海の不安そうな呟きに、ね、とエスティアが笑顔で返した。
***
広場から少し離れたところを二人のエージェントがキョロキョロとしていた。
『しかしまー。何か紛れ込ませるには、丁度いい状況だねぇ』
こんなに人がいるとちょいと悪いことしてもわからないもんだとストゥルトゥス(aa1428hero001)が言う。
「ん。きちんと、注意しないと……」
一緒にいる、ニウェウス・アーラ(aa1428)もこくんと頷いた。
彼女は頭に大きなリボン、服はピンクでフリフリのミニスカート―所謂、魔法少女の格好をしていた。見る人が見れば何のアニメの主人公か一目でわかるだろう。
『うんうん。あー、でもあれよ。固くなり過ぎないよーにね? レーダーはボクが見てあげるからぁ。ほら、そこの子供にお菓子あげて。笑顔でね』
「あ、うん……そうだね」
近くにいた小学1年生ぐらいの男の子がトリックオアトリートといろんな人に見境なしに声をかけている。彼はマントを付け、頭から二つのバネがぴょんぴょんと跳ねている。バネの先には小さなコウモリがついているが……一体何の仮装なのだろうか。
「とりいいいいっくおあああああ」
ギャーギャー騒いでる男の子にこんばんはと声をかける。
「ねぇ、このお菓子あげるからあんまりおっきなこえださないでね……? でないと他のお化けさん達もびっくりしちゃうよ……」
目線を合わせ、淡々と諭すように子供に言う。どうぞと小さいチョコレートクッキーの入ったお菓子を渡す。
「わーい! わかったぁ!!」
子どもはそれだけ言うと駆けて行ってしまった。
『あれま……お礼も言えないのかねぇ』
ストゥルトゥスは呆れ顔だ。
「仕方ないかも……テンション上がっちゃったんだよ……」
ニウェウスは子供が駆けていった方をしばらく見ていた。
***
『おねーちゃん。ハロウィンだよ! ごーほー的に悪戯してもいい日なんだよ!』
狼の仮装をしたルフェ(aa1461hero001)が、会場の盛り上がりを見てテンションを上げていた。たった今到着した公園内を見て瞳をキラキラと輝かしている。
「今日はお仕事ですからその辺りは忘れちゃダメですからね。後、やりすぎもです」
同じく猫の仮装をした想詞 結(aa1461)が、入り口にいた晴海に会釈をしつつ、羽目を外しそうになっているルフェに軽く注意をする。彼女たちの仮装はお手製だろうか、何とも可愛らしい。
『トリックアンドトリートなんてのもアリだよね!』
すでにテンションマックスなのか、想詞の言葉は右から左に流れてしまっているようだ。
「もぉ……」
小さくため息をつく。そんな彼女も、どこか楽しげである。
『すごいよ! 至る所にかぼちゃランタンがあるよ! あ……あの木の陰から飛び出たら、みんな驚くかなぁ……』
彼はどんな悪戯をしようか考えているようだ。実に楽しげである―がそんな彼を見て、想詞は少々あきれている様子だ。
「やっぱり、私がしっかり見張らないといけないみたいです……」
ルフェ君と会場と……と苦笑いを浮かべた。
『結お姉ちゃん! お菓子が食べれるとこ行ってみようよ!』
「いいですね。行きましょうです。あ、でも食べ物を使った悪戯は駄目です。食べ物を粗末にするのは悪い子なのです」
やりすぎは良くないので限度は考えてくださいですと念を押す。
『わかってるよー……早く早く!』
すでに彼は一歩先へと進んでいる。本当にわかっているのだろうか。
そんな彼にまた苦笑いを浮かべつつ、想詞もまた広場へと歩みを進めた。
***
広い公園内の散歩コースの道の端に、佇む者がいた。頭はジャック・オ・ランタンの被り物で、服装はマントにスーツを着用している。一見すると公園に飾られている人形にも見える。しばらく止まっているかと思えば、急に動き出し、またしばらく歩くと佇むといったことを繰り返していた。
カボチャ頭の正体は、他のエージェント同様ここの警備を任されたバルタサール・デル・レイ(aa4199)である。彼の妙な動きは、カボチャ頭の演出に合わせた周囲の見回りといったところだろう。立ち止まっているときに、モスケールで辺りに怪しいライヴスの動きがないか調べていたのだ。
「……か、かぼちゃさん……とりっくおあ……とりーと……?」
そんなカボチャ頭に恐る恐る近寄ってくる4人の少女たちがいた。
動いているのを見て飾りではないとわかっているのだろう。グループのうちの一人がおずおずと今回のパーティの合言葉を言う。会場内でトリックオアトリートと言えば、誰でもお菓子をもらうことができるのだ。もちろん、参加者同士の交流にもなるため、合言葉を言った相手がお菓子を持っていなかったら何もないのだが。
カボチャ頭は無言でもっていた袋詰めのクッキーを差し出す。
少女たちはきゃあと歓喜の声を上げた。そして、またおずおずと今度は携帯を取り出す。
「あ、あの……! 写真も撮ってもいいですか!? あ……、やっぱり、一緒に取っていただいてもいいですか!」
彼の仮装が彼女たちのツボに入ったのだろう。バルタサールを取り囲みきゃっきゃと小さく騒ぐ。
(『ほら……ちゃんと彼女たちの期待に応えないとダメじゃないかな』)
頭の中で声がする。声の主はバルタサールのパートナーの紫苑(aa4199hero001)である。
今回はリンクしている状態で警備に参加しているため、彼の姿が見えることはない。もちろん、紫苑の声がバルタサール意外に聞こえることもないのだ。
(「わかってる」)
紫苑と脳内で会話をする。そして彼は、少女の問いにこくんとただ頷き返した。
「あ、ありがとうございます!」
彼女たちは、二人組でバルタサールを挟むように立ち、自撮りをするための棒を使ってカボチャ頭との写真撮影を楽しんだ。バルタサールはお辞儀をするようなポーズをとり、撮影が終わるのを待つ。
数枚撮ったところで、撮影した写真を確認する。満足のいくものが撮れたようで、彼女たちは再びお礼を言うとその場を後にしたのだった。
(『まさか、怖がられるどころかカッコいいと言われるとはね~』)
もし共鳴状態でなければ、ニヤニヤした顔が見えただろう。紫苑が軽く冷やかしてくる。
(「たまたまだろ……しかしまぁ、カボチャ頭のなにがいいんだかな」)
紫苑の冷やかしをバルタサールは軽く流す。彼の表情はカボチャ頭で見えない。
(『あ、そうそう。オペレーターがここに来たそうにしてたから、現状報告がてらに写真を送ってあげようよ』)
ふと思い出したように紫苑が言う。
(「ああ……」)
そうだなとスマホを内ポケットから取りだして会場内の様子を撮影する。数枚の写真と、数分の動画を撮影しメールに添付して送る。すると間髪入れずにメールの返信が返ってきた。
内容を確認すると、なるほど、これはわしも行かねばならぬな。報告ありがとう。引き続き、警備を頼むと書かれていた。
「おい……あいつ仕事はいいのかよ……」
帰ってきた返事を見て、バルタサールが呆れたように小さく呟く。
(『行きたがってたからねぇ……』)
紫苑も彼、仕事は大丈夫なのかなと心配そうに呟いた。
***
「今のところ、異常なーし!」
『異常なーし!』
お揃いの小悪魔衣装を身に着けた、雪室 チルル(aa5177)とスネグラチカ(aa5177hero001)も風船片手に公園内を見回っていた。
彼女たちは、時々すれ違う任務をともにしている仲間たちに、合言葉を言いお菓子をねだったりと、警備をこなしつつ、今回のイベントを楽しんでいるようだ。
「このまま何事も起こらなければいいのにね!」
『そうだね。何かあってとしても大事にならないようにしっかり見回りしないとね!』
きょろきょろと辺りを見回しつつ、時々子供たちに持っている風船を配る。
「んー……とりあえず、分担して園内を一周はしてみたけど、問題なさそうだから、ちょっと広場に行ってみようよ!」
ワクワクした表情でチルルが一つ提案をする。
『いいね! 折角だからケーキを食べに行こう!』
スネグラチカも彼女の提案にノリノリなようだ。彼女も笑顔で提案に同意する。
「よーし、れっつごー!」
『れっつごー!』
お揃いの衣装を着ていることもあって、彼女たちのやり取りがいつにもまして可愛く思える。
「それにしても、公園内なのに別の場所にいるみたいね。こんなに広いのに全体的にイルミネーションがついてて、至る所にかぼちゃランタンが置いてある……」
『ねー。すごいよね! 確かオペレーターも準備を手伝ったんだよね』
「そうみたいだね。来れなくて残念だろうね」
会場内の装飾に関心しつつ、広場へと歩みを進める。
「今日は天気も良かったから、月も綺麗にみえるよ!」
ふと空を見ると、綺麗な満月が辺りを照らしている。
『すごーい! 本当だ、おっきい月だね!』
雪室の言葉に反応し、スネグラチカも空を眺める。
「今日は風が全然ないから、このままずっと月が見えそうだね」
『そうだね!』
たわいもない会話をしつつ、広場で披露されている料理を楽しみに彼女たちは歩いてゆく。
そんな二人が歩いていく傍ら、木に吊るされていた装飾が風もないのに不自然に揺れているのだった。
***
『ぐびぐび……』
晴海たちが警備している反対側の入り口で、椅子に座りお菓子とお茶を堪能している者がいた。
「ねぇ……すこし飲みすぎじゃないのかな」
すでに500ミリリットルのペットボトルを一本飲み干し、二本目に突入したのを見て乙橘 徹(aa5409)が苦笑いを浮かべる。
『この年になるとのう、甘い物を食べるには丼いっぱいのお茶が必要なんじゃよ……』
乙橘の言葉を気にせず、ハニー・ジュレ(aa5409hero001)はぐびぐびとお茶を飲む。
「ジュレは糖尿なんてないよね?」
少し飲みすぎじゃないかと、心配そうな顔をする。
『そ、そんなわけなかろう! ほら、あれじゃ……お菓子を食べると口の中がぱさつくじゃろう。甘いものを食べるときにお茶を飲むと、甘さを中和できるしのう』
ジュレは、それらしい言葉を並べる。
「そ、それならいいんだけどさ……」
彼は納得はしていない様子だったが、それ以上深く聞くことはなかった。
『徹も食べるか?』
先ほど、魔女の格好をしたおばあさんがくれた袋詰めクッキーを差し出してくれる。
「そうだね。せっかくだし、一ついただこうかな」
特に断る理由もなく、差し出された袋の中から一つをつまむ。
「……あ、美味しい」
おばあさんの手作りなのだろうが、市販で売られててもおかしくないような味だった。甘すぎずいくつ食べても飽きない素朴な味。どこか懐かしさを感じさせる。
『じゃろう? クッキーは口の中の水分をとってしまうが、やめられないのじゃ』
そういって、ジュレはまた一つクッキーを口に運ぶ。確かにこれはやみつきになるかもしれない。
「剣太さんも来れたらよかったんだけどね。オペレーターの仕事が抜け出せないようで、折角準備したのに可哀想だよなぁ」
『そう思うなら、ほれ……広場で食べれるお菓子やらなんやらを少し持ってってやればよかろう』
「そうだね。そうしようか」
そんな会話をしているときに、通信機から反応があった。
「異常発生! 応答求」
会場内の警護をしていた他の仲間からのようだ。
『ふむ……最後までまったりはできんかったようじゃの』
やれやれといった様子で、ジュレは立ちあがった。
■Monster party
広場の一角で、異様な光景が広がっていた。なんと飾りであるはずの白いお化けやコウモリの装飾が宙に浮いているのだ。そしてそれは、広場を飛び回っていた。幸いにも、広場の料理が振舞われてるところからは少し離れていた。
学校の校庭の半分ほどの広場に、不思議の国のアリスのティーパーティーのようなテーブルが置かれていた。そこにに、いくつも料理が並んでいる。お客さんたちはそこで会話をしつつ、料理を食べたりして楽しんでいたのだが、そこにとつぜん、ふわりと白い布らしきものが飛んできたかと思えば、それがいくつも空中を飛び回っているのだ。
「あっちゃー……これは従魔よね」
『だね。見た感じ、そこまで強くなさそう?』
従魔なのは明らかだが、お客さんに対し攻撃的なそぶりを見せる様子は今のところ見当たらない。
『もう……僕が驚かそうと思ったのに!』
「のんきなことを言ってる場合ではないのです」
一足先に広場に来ていた想詞、ルフェ、ニウェウス、ストゥルトゥスも丁度その場に居合わせていた。
「とりあえず……リンクしたほうがいいかな」
冷静に状況を見て、ニウェウスが呟く。
『ほらほら、なんのために魔法少女の衣装を着てきたの』
敵の動きを見つつ、ストゥルトゥスが彼女に小さい子を驚かさないように変身シーンを再現しなきゃと促す。
「え……えっ!?」
6人が状況を判断しているところに、他のエージェント達も丁度合流する。
「なるほど……従魔ですか」
『数は多くないようですね』
晴海とエスティアは到着してすぐ、状況を確認する。
「これなら、ショーとして対処できそうだな」
晴海たちに続いて到着したバルタサールも、現状を把握できたらしい。
「すみません。お待たせしました」
乙橘も息を切らせつつ、長い髪をなびかせ走ってきた。途中でリンクをしたのだろう。先ほどまでと、姿が変わっている。
「この数なら、全員がこの場にいる必要はなさそうですね。わたしたちは、念のため会場内を見回って他の場所にも出現していないか確認してまいります」
『この場は、よろしくお願いしますね』
状況を見て、この場に全員がいる必要がないと判断したのだろう。晴海とエスティア二人は、他の皆に広場を任せこの場を後にする。
「よし、自分がお客さん達を誘導します」
ちらりとバルタサールに目線を送る。
「おう。俺は誘導してるときの客の援護にまわる。客に近づきそうなやつだけに集中するから、他のは頼んだ」
二人はすぐさま行動に移る。
「サプライズのアトラクションです。お化けと戦うヒーローたちの活躍をお楽しみください。こちらの観覧スペースに移動願います。小さなお子様は手をつないではぐれないように」
乙橘が拡声器を使い誘導し、バルタサールが手招きをしそれを補佐する。
『それじゃ、変身だね』
ニウェウスは動揺しつつもゆっくりしている時間はないと少しやけ気味に決め台詞を言う。
「ゑっ!? へ、変身!!」
その言葉を聞いて、他の4人もアイコンをとり、彼女に続いた。
「へーんしん!!」
雪室はノリノリである。
「へ……変身なのです?」
想詞は少し恥ずかしそうだ。
■Fun night
今回のイベントは成功で終わった。
恐らくイマーゴ級だったのであろう従魔は、お客さんにけがさせることなくすべて討伐することに成功した。実際は、従魔が登場し危ない状況ではあったのだが、エージェントたちの粋な計らいにより、イベントで行われたショーということで何事もなく終わることができたのだ。晴海たちが会場内を確認したが、他に従魔は見当たらなく、広場に現れた従魔はヒーローたちがアニメに出てくるように倒すことができた。雪室たちが、従魔をひきつけそれを想詞、ニウェウスが倒す。うまく連携できたこともあり、お客さんからはショートして好評を得たようだ。
「そんなことがあったのか……お疲れさんじゃったのう」
あとから到着したオペレーターが、話を聞きエージェントたちに労いの言葉を述べる。
「……仕事は大丈夫だったんですか」
そんな言葉もお構いなしに、ばっちり狼の仮装をした彼はパーティーの終わりまでの時間を楽しんだそうだ。
エージェントたちも、お客さんから楽しいショーを見せてくれたお礼にと食べきれないぐらいのお菓子をもらい、苦笑しながらも受け取っていた。
この日の出来事も彼らにとっては日常の何もない依頼のうちの一つの出来事かもしれない。それでもその場に合わせた人々によってはいい思い出になるのだろう。まだまだ彼らの活躍はこれからも増えつつけるのではないだろうか。