本部

切り札D

鳴海

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
12人 / 4~12人
英雄
12人 / 0~12人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2017/09/28 13:48

掲示板

オープニング

●持ち帰った資料
 先日の操作でH.O.P.E.はとあるヴィラン集団の拠点を一つ落とした。
 そこに残されていたのは、少年一人と金庫が一つ。
「まずはどちらの報告が聞きたいかね」
 指令官アンドレイは腕を組むとそう告げる。
「では少年の方から、彼はグロリア社に名を連ねる、後援者の子息であったことが分かった。身代金目的だろうというのが濃厚だが、もしかするとグロリア社側にアプローチするための手段を欲していたのかもしれない」
 ただその可能性は低いらしい。後援者と言っても研究室に直接出入りできるわけではないし、研究内容や成果を直に受け取れるわけではない。
「それよりも面白いのが金庫の中味でな」
 広げたのは土地の権利書。および農耕機のカタログ、輸入ルート、船の手配に偽造したパスポート。
 土地はさすがに南アメリカの奥地、人目につかない場所だったが、やはり道具は性能のいいものをそろえたいのだろう『綺麗にされた』農耕機各種を引き取って現地に向かう手はずだったようだ。
「そして回収された薬品はペインキャンセラー……だ。一度H.O.P.E.側の奇襲で田畑は焼き払ったと聞く。それの再生計画のようだな」
 記載された日付を見れば、つい一か月前になっている。最近立ち上がった計画のようだった。
「ただこの計画を今から追ったところですでに逃げられている可能性が高いだろう」
 そう司令官アンドレイは言った。
 この文章自体が回収されもう一週間が過ぎている、諸々の手配をするには十分だろう。後始末をして尻尾を終えないようにしてしまっているに違いない。
「ただ、それは奴らが日本にいて撤収作業に力を注いでいればの話しだ。自分の足跡を消す作業というのは思いのほか時間を盗られる」
 だからアンドレイは推理した。奴らはまだ国外から逃亡していない。
「奴らの計画を挫いたのは一つの戦果だ、だがそれだけでは終わらない、奴らの国外逃亡を阻止し、今度こそ捕まえる」
 こうしてチームDの捕縛作戦が動き出した。

● そして突き止めた

 とある港から密航船がでるという情報をH.O.P.E.はキャッチした。
 同じような情報が複数ある上に、こればブラフだった場合も考えられるが、もしブラフ情報だとするならば、それを流さなければならないような状況に彼らがあるという事だ。
 だったならこの行動は無意味ではない。
 確実に食らいついているぞ。
 そうアピールし、圧迫をかけることは悪くない選択肢のはずだ。
 そしてその夜、獲物は。
 網にかかった。
 ナンバープレートのついてない車両を堂々と乗り付け、タキシードの男は車から降りる、ちいさな船が停泊した港の端の部分。
 そこで彼はにやりと笑うと小舟に歩み寄り懐から金をとりだした。
 その手をあなたは掴むだろう。
 その時点でその男はすべてを察した。
 夜を裂く銃声。
 車の中から現れる少女たち。右手を中に改造された少女たちはまるでロボットのような、軍隊のような動きで君たちに威嚇射撃。
 男は距離を取り、少女たちは海に浮かんだ。
「まさか、正解を引き当てるとはなぁ。H.O.P.E.」
 男はハットを投げ捨てた。記録にある男。自分をバイヤー・Dと名乗った男である。
「なるほど、侮っていた。仕方ないな、虎の子を切らせてもらう」
 告げると君たちの背後で少女たちが銃を撃つ。
「ぷらんより少し早いが実力を見よう。さぁかかってきたたえよ、H.O.P.E.」
 次いで彼の横顔を照らしだしたのは炎。 
 彼が両腕に宿した業火が港を赤々と照らし出す。


● 銃となった少女たち。

「商品を紹介しよう。英雄と契約した頼れる軍隊。EXガールズだ……。ほら少女の方がうれるだろ?」
 きかれてもいないことをつらつらと述べる男。
「君たち……彼らを血祭りに上げてくれ」
 そう命じられると彼女らはすさまじい速度で動き回りながら銃を乱射する。
 改造ALブーツ『グリンダ』を装備。なので海の上では途轍もない速度を誇っているのだ。
 そこからのジャックポットならではな精密射撃が加わり。遮蔽物が特にないこの港では彼女たちの独壇場である。
 君たちは男を振り返る、彼を抑えてしまった方が良いか。
 だが、彼は悠々と構えているだけで何もしてこない。
 何かあるのだろうか。
「何を恐れている? 私がここに棒立ちになっている理由はただ一つ」
 次いで彼が宿す炎、それが青く変わった。青色の炎はミサイルのような、大きいダーツのような形で収束していった。
「さぁ、踊るがいい」
 そう投げつけられたダーツは音速を超えコンクリートを吹き飛ばして燃え上がる。
 あたりはしなかったがものすごい威力であることはうかがい知れた。
「追い詰められたのはどちらだろうね」
 
● 戦闘力について

バイヤー・Dについて。
 今回彼は隙を見て逃亡しようとしているため、戦闘には積極的に絡んできません。
 ただ戦うとするならば、英雄の一人と共鳴し皆さんとの真っ向勝負に発展するでしょう。
 彼は火力極振りのカオティックブレイドです。
 武装は二つ。
 射程が0~3の物理武器 火焔武装『白夜』
 そして射程が9~30の魔法武器 火葬風『常夜』です
 白夜は両腕に炎を纏舞わせて攻撃するという単純なもので、0~3の射程にいる全員に同時に攻撃できる範囲武器です。火力は極めて高いので注意してください。
 また常夜は火力もさることながら、同時に二対まで攻撃できる青い炎のダーツのような形状をしています。ダーツと言っても極太で当たると痛そうです。
 この常夜にあたると体が発行し、回避のステータスが低下。さらにダメージ増加のバッドステータスを受けます。
 これはクリアレイなどで回復可能です。
  ダメージ増加は固定で、効果が重複します。一度受けると+5。二回目で+10です。
 そして彼は自分のレベルや英雄のレベルを隠匿するためにスキルを一切使いません。

 銃身の少女たち。
 ジャックポットで構成された戦闘部隊です、闇に溶けこむ黒い装備と暗視ゴーグルをつけていて、夜の戦いに特化しています。
 基本海の上から皆さんを狙いますので、ALブーツを装備していないと戦えないことでしょう。
 数は5。全員トリオをつかえることは確認していますが、それほどレベルが高いので上位スキルは使ってこないでしょう。
 火力はそれなり、なので、落ちついて対処しましょう。


解説


目標 
大成功目標 バイヤー・Dの撃破。

●逃走について
 皆さんの中でメンバーが一人でも倒れると包囲網に穴が開きます。
 その包囲網から脱出する目的のようで、Dは常に車のそばに待機しています。
 車が爆発しても何か逃走手段があるかもしれません。
 事前に港を捜索しておくといいでしょう。
 ヒントは少女たちにあって、彼が持ってないわけない。
 です。

リプレイ

第一章 決戦の口火

『志賀谷 京子(aa0150)』は港にターゲットが現れると、その姿を見せた。
『アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)』とは共鳴済み。
 D到着まで辛抱強く耐えた体を伸ばしてDの動きに待ったをかける。
「へえ、その派手な装備も売り物なの? よかったらHOPEにもデモに来てよ。予算は潤沢に用意して待っておくからさ」
――その前にまずは、少女たちを開放することをお勧めしますよ。
 アリッサが告げると威嚇射撃、矢を数本うち放った。
 Dは反射的にあとずさり車の付近まで押し戻される
 冷たい風が海から吹く、歯噛みするD。そのDへ銃口を向ける影が一つ『阪須賀 槇(aa4862)』がDへと武装解除を要求した。
「ペインキャンセラー…………。せっかく焼き尽くしたのに、再生なんてさせるわけにはいかないわね」
『鬼灯 佐千子(aa2526)』が告げる。
『リタ(aa2526hero001)』が同意し全ての武装を展開。
――む。ならばここで、確実に叩いておこう。
「待ち伏せか……やってくれたね、本当に」
 だがDも無防備ではない次のタイミングで取り囲むように展開した少女たち、槇はそれ流し見て。珍しく怒りを面にする。そんな彼は、夜の闇に負けないようにと声を絞り出して叫んだ。
「いたいけな少女を売り物にするとか! ふざけんなお! 何様のつもりだお!」
――そんな裏社会の事は知ったこっちゃねーよ。むしろ気に入らんわ、潰す。
『阪須賀 誄(aa4862hero001)』と槇が罵声を交互に浴びせた。
「何せ漏れたちゃ天下無敵の!」
「「《一般人》だぞっと」」
 二人が声を合わせて高らかに告げるとDはくつくつと腹を抱えて笑いだす。
「何がおかしいんです?」
『煤原 燃衣(aa2271)』はDを見据えると拳に炎を宿して問い掛ける、少しずつ距離を詰め、一足のうちにん殴り掛かれるような距離を確保した。
「いやね、甘いなと思っただけだよ、君たちリンカーは。少女だからなんだというんだ? 霊力を扱える機能を有するのは今のところ人間だけじゃないか、それを欲しがるものも大勢いる、なら…………」
――商品として成り立つ、だから売る? か?
『ネイ=カースド(aa2271hero001)』が淡々とその言葉の先を予測し、そう言葉を継ぐ。
――お前たちの思惑はわかった、まぁいいだろう、クズはクズなりに、クズなことを考えていることはわかった、おおむね想像通りだ。
 そうネイが鼻で笑うと燃衣が代わりに口を開いた。
「…………あの時、確かにボクは頭を潰した筈なんだ。でもお前は此処に居る。ならばと理由を考える」
「ほう、我らがDの秘術を暴こうというわけだ。面白いね、語って聞かせて見てくれよ」
「…………一つ、幻影。二つ、再生。 いや、違う。感触は確かだったし、死体は見ていた。なら……」
 燃衣は斧を取り出しその切っ先をDにつきつけて見せる
「……三つ、D……《Duplication》……つまり」
――……《複製》……槇に言わせれば、テメェは《コピペ》だ。
「どうだろうな」
「ま、捕えれば分かる事です」
「捕まえる? 君たちにできるとでも? 我らがDの技術も随分と甘く見られたものだね」
 Dは不敵に微笑みグローブを着装する。そのグローブから立ち上るのは炎、それを号令と受け取った少女たちが銃口をリンカーたちに向ける。
 黒い笑みが青い炎の向こうに浮かび上がる。
「さて、追い詰められたのはどちらだろう」 
 だがそんなDを容赦なく打ち抜く弾丸、音が半瞬遅れて到達し、Dの髪を揺らした。
「当然、そちらだ」
 次いでDの額から血を流させた弾丸、それを追いかけて無数の弾丸がDの背中から浴びせられる。
『麻生 遊夜(aa0452)』そして『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』の偏差射撃。
「……ん、踊るのは……貴方」
「いつの間に!」
 次いで遊夜は弾かれるように体をあげ、別の射撃ポイントへ移動する。闇をかけ次の闇へ潜伏する。
 それを暴こうとするD。
 それに合わせて灰色の戦士が動いた。
 『灰堂 焦一郎(aa0212)』は『ストレイド(aa0212hero001)』と共鳴。
「対象『D』を確認。警戒態勢に移行」
――戦闘システム・起動。システム・狙撃モード。
 灰堂はこめかみのインカムが接続されていることを確認。素早く体を物陰に滑り込ませるとすぐさま狙撃位置につく。
 Dとの接触地点より距離40程度の場所に狙撃ポイントを確保した。
 同じく潜伏している遊夜と死角を補い合える位置に陣取り敵の行動を見守る。
 そした放った弾丸がDの車、そのタンクへと突き刺さり。大爆発を引き起こす。
 夜に焚かれたかがり火のように周囲を照らす光。
 驚きの表情を見せるD、そんなD見て嘲笑うように『マルチナ・マンチコフ(aa5406)』が告げた。
「ペインキャンセラーな研究用に1個欲しいけれど…………だめなんはわかっとるは。冗談や冗談」
 そうマルチナはWアクス・ハンドガンに手をかけて討つ。
「にしても自身で売りものに手だしているなんて売人としては二流やで」
「ほう、ではその商人さんは我々に、商売のなんたるかを教えてくれるのかな?」
「二度と商売なんてできない体にするに決まってるだろうが!」
 遊夜が獰猛に猛り叫ぶ、撃ち込まれた弾丸は彼の怒りの表れだ。
 当然だろう。
 前回も逃げる時に子供を囮にした。今回もまた子供を使い捨てにしようとしている。
 前回は無関係な子供を監禁した。もう少しで死ぬところだった。
「俺の前でガキ共使った挙句に、うれる? ……良い度胸だ、ぶっ潰してやんよ!」
――……前回と、合わせて……オシオキ、してあげる……逃げれると、思わないで……ね?
 冷たいくすくす笑いと、威圧の怒声。
 それに背中を押されて、燃衣が動く。
 その斧をちらつかせながら圧力をかける。その背後でマズルフラッシュが瞬いた。槇による、少女たちへ威嚇射撃。
 そして。
 Dがその両腕に火焔を纏ったタイミングで。
「隊長!!」
『藤咲 仁菜(aa3237)』が躍り出た。そのコンクリートすら溶かしかねない熱量を包み、抑え込む。
――ニーナ、やっぱり、今回は危険だ!
「リオン、お願い」
『リオン クロフォード(aa3237hero001)』の言葉に仁菜は首を振り、炎を打ち払う。全力のガードでも全身にやけどを負ってしまったらしい、ピリピリと痛む。
「……今日は、私がいきたいの」
 その言葉にリオンは溜息をついた。こうなると仁菜が話を聞かないことはわかっている。
――怒るのは分かるけど、無茶するなよ。回復職は冷静に! 戦場での生命線って事を忘れるなー。
「うん、それに」
 今回は仲間が守ってくれる。
 そう仁菜の背中に温もりが伝わる。『無明 威月(aa3532)』がその盾にて仁菜の背後より襲う炎を食い止める。
「威月さん」
「あ…………私」
――威月はよ、こういいたいんだ。
 うまく言葉を口にできない威月に代わって『青槻 火伏静(aa3532hero001)』がその思いを代弁する。
――嬉しいんだよな、仁菜が怒ってくれてることが。
 その言葉に頷く威月。
 威月は思うのだ。ともすれば自分もあの少女らと同様になっていたのでは、と。
 この世界に蔓延る悪意は人も持つ、故に、許す事は出来ない。その思いが伝わったのか、仁菜は真っ直ぐDを見据えると高らかに言い放つ。
「貴方はディアナとメルローを覚えてる? 今回の少女達も無理やり改造したの?」
 ディアナも、メルローも『普通の女の子でいたかった』と言っていた。
「ああ、特注品だからね、覚えているよ!」
――また! 道具みたいに!
 リオンが怒りを噛みしめる。
「貴方はここで止めるよ。覚悟しといて」
――俺達を嘗めてた事、後悔させてやるよ!
 次いで打ち出されるDの火焔。それを防ぐ二枚の盾。
「隊長、阪須賀さま…………攻撃は私たち、暁女子会が……! 皆さんは、アイツをブッ飛ばしやがれです!」
 その盾の間から燃衣が真っ直ぐにDへとつっこんっでいく。その背に威月は言葉を乗せた。
――ハハ、口調変わってるぜ。俺もあぁ言う下衆は気にいらねぇ。攻撃は持つぜ!思いっきり行ってこい野郎ども!
 その動きを止めようと打ち出される炎。炎は手で操っているらしい、それを分析した阪須賀兄弟はDの腕を銃弾で打ち抜いた。
 次いで危険だという事覚ったD、バックステップで距離をとろうとするが、その足を京子に射抜かれて体制が崩れる。
「…………《鬼神招》…………ッ!」
 燃衣の低い声に反応するように斧に集まった霊力が膨大にふくれあがる、それは鬼の姿をかたどって再び斧へと収まった。そして。
「割いて砕いて潰すッ!《虐鬼王斧》ッ!」
 振り回される破壊の嵐は一撃たりとも外さずにDの体に叩き込まれる。
「おごっ」
 喀血するDだが、反撃とばかりに炎がはなたれ、たまらず燃衣は距離を取る。
「しまっ」
 だが大丈夫。仁菜と威月がすかさず前へ、
――お前のようなヤツは、八つ裂きにしたくて溜まらん……比喩ではなく、本当にな。
 ネイがそう担架を切った。次の瞬間眼前に現れた少女は御伽の国から飛び出してきそうな可愛らしい見た目をしていた。
 ただし、それは彼女の持つ愛読書を指でなぞるまでだ。
 本から炎が吐き出され、そして、それがDの炎とぶつかる。
『アリス(aa1651)』と『Alice(aa1651hero001)』の得意な魔術である。
「……へぇ」
 その目の前の煌きを眺めつつアリスは告げる。
「悪くないね」
――けれど。
 二人のアリスは真正面からDの炎へと対峙、それを食い破るべく本のページを薔薇理とめくった。
「少女のほうが売れるかどうかは私にはよく分からないし、どうでも良いけど……。何度もあなたと戦うのは、面倒」
 告げて地面をなめるように放たれたアリスの炎はDの炎にせき止められ、空をなめた。
「でもいいね、Dの“武器”がそれなら多少はやる気が出そうだよ」
 そう感情なくアリスは告げ、さらに攻めの姿勢を見せる。
「面白いでは、私はここら一帯を焦土と変えてやる。」
 Dはその腕の炎を青に変えて射出、狙撃主たちがいるであろう闇を穿った。
 だがそれも予想済み、服の左半分を炎で焦がしながら遊夜は笑う。
 無数にDへと殺到する弾丸。それを受けて動きを止めたDの眉間へ。遊夜は弾丸をうち放つ。
 だがそれは。
「甘いよ!」
 Dはそれを片手を犠牲にして防いだ。あたりに血が舞う。
「弾丸が一発だって、誰がいった?」
 遊夜がほくそ笑んだ瞬間。波のように鉄のつぶてが襲う。打ち上げるように下から、死角から
「車から離れなかったのが運の尽きだ」
 燃えたつ炎で明るく照らされたDへ弾丸を叩き込むなど歴戦のスナイパー達には造作もない。
――……ん、見えない、無音の弾丸……存分に、味わって?
 だがその遊夜たちの攻勢にDは全く焦りを見せない、それどころか。余裕すらうかがえる。
「これだけの血を流させるなんてね、君たちも同じめに合わせてやろう」
 射出される炎の槍はアリスと遊夜に突き刺さる。第二撃を構えるDの腕に的を絞って京子が矢を放つと。
 Dの腕が端から炎は空へと打ち出された。
「腕をねらって!」
 京子が叫ぶ。
 すると遊夜、京子、そして阪須賀の三人がかりでDの腕を集中攻撃。
 実際のところ、Dの腕には千切れ飛ぶほどの衝撃が伝わっているだろう。
 骨と皮と、肉とを歪み崩れぐちゃぐちゃになるほどの攻撃。だというのにそれでもDは微笑んで立っていた。
「だとしても、ね」
 雰囲気が変わった、Dは痛みなど感じないとでも言うようにそのまま蒼炎の槍を放つ。それは真っ直ぐ槇へと飛来して。
「後は頼んます、隊長、麻生さん」
 その胸に槍が突き刺さった。


第二章 事前計画A

 やっと手の届いたD。その腕をがっちり捕まえ今度こそ逃がさないためにリンカーたちは綿密な事前計画を立てていた。
 まず『ストゥルトゥス(aa1428hero001)』が港湾局に連絡を入れる。
「密航船が出始めた日から今までの間で出入りした、普段は見かけない怪しい車両や船は見なかったかな?」
 そう最初は穏やかに話をしていたストゥルトゥスだったが、唐突に受話器を置くと上着を羽織って立ち上がる。
「どうしたの?」
 そう問いかけたのは『ニウェウス・アーラ(aa1428)』
「様子がおかしい、マスター。ちょっと彼らを締め上げてくる必要がありそうだよ」
「あ、ちょっと待ってください」
 そんな二人に声をかけたのは燃衣。彼は前回のDのDNA検査の資料を読みながら作戦を考えていたのだが、ニウェウスたちの話が耳に入ったらしく燃衣とネイも装備を整え始めた。
「荒事には僕達が適任ですよ」
 そう燃衣が告げるとネイは頷き、単身倉庫で隠し事が大好きなお友達にお話をしに行った。
「こういう時に女の肉体は便利だな」
 そう、意気揚々と倉庫から姿を現したネイに燃衣は青ざめた表情を向ける。
 同時に京子とアリッサは港周辺の調査に乗り出していた。
「Dはさ、露悪趣味の碌でもない敵っぽいね」
 そう京子は何気なく港に足を運んだ少女を演じる。
「何も聞く必要はありません。ただ潰せば良いでしょう」
「わたしは相手の主張は尊重するよ? その上で相容れなきゃ、戦争だな」
「……結果的には同じでは」
「過程は大事だと思うなあ」
 確認すべきは岸壁付近、放置されていた荷物がないか、停泊している船に怪しいものがないか、監視機器がないかを確認していく。
「海だったら、万が一を想定した場合、あるはずだよんね」
「ALブーツが…………ですね」
 あとは狙撃位置を確認、戦闘の想定をくみ上げていく。
 マルチナは麻薬密輸現場に駆り出された科捜研の女のような扱いで現場に派遣される。
 めんどくさいし早く帰って研究を再開したいと顔には書いてあったが、これも仕事である。
 いろいろと先立つ物は必要なので、お仕事はきちんとこなさなければならない。
「にしても装備しょぼすぎやしーへんか?」
 そうマルチナは『マシーネンカバリエ(aa5406hero001)』へと問いかけた。
「鈍器ロケットアンカーに二丁拳銃斧付って……」
 しかし機械化歩兵は何も言っては紅、だから構わずマルチナは言葉を続けた。
「所属機関が貧乏屋とほんまみじめやわ。周囲の先輩リンカーらのきらびやかな装備を見るにつけ羨望しかわいてこんわ」
 そうあたりを捜索するリンカーに視線を向けるマルチナ。
「お上に陳情した結果やっとこさアサルトユニットが来たくらいでALブーツよりは上位互換だけれどまあなんやろ、泣いてもええか?」
 そうがっくり項垂れるマルチナの肩をとんとマシーネンカバリエが叩く。
 その時である。港の端で遊夜が動いた。
「俺の感だと、あそこにあるな」
 敵の思考を読む、追う。相手も人間だ、それなりの論理があり論理に従って動くなら読むのはたやすい。
「船の位置……追いつかれ、囲まれると仮定して……」
「……ん、この辺と、この辺? ……一つじゃない、かも?」
 そう岸壁に吊り下げてあったロープを確認、引き上げてみると違法改造を施したALブーツが皮の袋の中に入っていた。
「おーい、あったぞ煤原さん」
「あ、本当ですか?」
 そうALブーツを受け取る燃衣の影には二人の少女。
 威月と仁菜が調査から帰ってきて内容を報告してくれた。
「停泊している船の燃料を抜いておきました」
「意外と容赦ないですね」
 仁菜の言葉にそう燃衣が苦笑いを浮かべる
「じゃあ、あとは潜伏場所を決めるだけだな」
 遊夜はそう告げると続いて狙撃位置の確認に入る。
「上手く行きゃ奴さんの方から来てくれるって寸法だ」
「……ん、この子の出番も……近い」
 一通りの探索が終わると、潜伏するために京子はいったん港を後にする。
 それに習って撤収していくリンカーたち。
 そんなネイたちに隠れてこそこそ何やら仕込んでいる様子の阪須賀兄弟。
「何をしているんですか? 阪須賀さん」
 そう、燃衣が声をかけると阪須賀兄弟は不敵な笑みで振り返った。
「これで死んだふりでもしようかと思ってるお」
 そうパックのトマトジュースを幾つかポケットに入れる。
 イメージPで漆黒のスーツを纏い、そして動画カメラは腰ベルトに装着。
 これで準備は万端である。
「どういうことです?」
 いまいち何をしたいのか飲み込めない燃衣。そんな燃衣に槇は阪須賀流天才戦術《死んだフリ》の説明をするのであった。

   *   *

 というわけで、かなり重たい一撃を受けた魔記だったが生きてはいる。
「危なかったー」
 攻撃を受けた時に即座にトマトジュースを潰し、イメージプロジェクターも解除しうつ伏せに死んだフリをした槇である。
 一撃で体力の半分以上を持って行かれたがまだ大丈夫。
 そう横倒しになった槇ははるか遠くで少女たちとリンカーが戦うのを眺めていた。



第三章 血と涙

 仲間たちがDへ奇襲を仕掛けた際に、やはり真っ先に動いたのは銃身の少女たちだった。
 全員がDに群がる敵めがけて引き金を引き弾丸を放つが、それを遮って立つのが佐千子、その身を射線上に投げ出して壁として機能する。
――あの少女たちには、ジャックポットの戦い方と言うものを教える必要があるな。
 リタが告げると佐千子がダメージをものともせずに銃口を構える。
「私もご教授願いたいのだけれど。とりあえず質問」
 今回の任務にはリタの命で行動していたのだが、さすがにここまで来ると疑問も感じ始めるというもの。
 佐千子は先ほどから不思議に思っていたことをこのタイミングでぶつけることにした。
「コレ、結構、動き回らないといけないわよね…………!?」
――肯定だ。拓けた場所で戦う場合、遮蔽をとるために、そして狙いをつけられぬように動き続ける必要がある。
「その遮蔽がないのだけれどね…………!」
――否定だ。
 ん? っと首ひねる佐千子。
――遮蔽物(サチコ)なら、ここに居る。
 その言葉を肯定するかのごとく降り注ぐ弾丸。
「ちょっと!!」
 そう抗議の声を上げる佐千子だが、今余計なことに気を回している時間はない。速やかに敵を迎撃しなければ蜂の巣になってしまう。
――全員を守りきるのは至難の業だ、そして盾役も少ない、であればサチコが囮となり、射線上に挟まり、生きた盾となれば何も問題は…………。
「そのうち私が死んだ盾になりそうな気がするんだけど!!」
 それは味方が何とかしてくれるだろう。
 そうリタが示す先にはニウェウスがいた。
 ニウェウスは海上で瞬くマズルファイヤーを確認、霊力の動きをライヴスゴーグルで観測。
 魔術弾を放って敵を追いこんでいく。
 少女たちはその攻撃を寄り集まったり離れたりしながら避ける。
――マスター、こっちきてるよ。
「計算内。大丈夫、うまく行く」
 ニウェウスは会場の全力移動を始める。その後ろから弾丸が遅い、髪の毛が切れてとんでも速度は緩めなかった。
 攻撃はせず、小刻み且つランダムなジグザク軌道を行い、狙いを付け難くさせるつもりのようだ。
 また、直後反転してはあえて銃身の少女の脇をすり抜けるように移動する、少女の射線上に少女を置くことで射撃をためらわせる目的だ。
「Dへの援護射撃は、やらせない…………よ」
――ふははー! 引っ掻き回してやんよぉ!
 そんな高速化する戦場の中で灰堂は的確に隙を見つけ、少女たちの動きを妨害していく。
 基本的にブーツ狙い、暗闇に、しかも彼女たちの足は素早くなかなか捉えることができないが。
「確かあんたのスピードすごいわー。でもそれ両刃の剣って知ってた?」
 マルチナがそう微笑むと何人かの少女たちが足をとられて宙を舞う、そのまま水きりの石のように水面を跳ねて数名の少女が転がった。
「けどな、スピードは上がれば上がるほど精妙な操作がいるんや。高速でハンドル操作誤った車が偉いことになるみたいにな」
 そうアンカー砲のワイヤーを手元に回収して笑うマルチナ、そんな彼女へ一人の少女が銃を乱射しながら近づいてきた。
 それを真っ向から迎撃するマルチナ。狙いは手先や足首など身体の末端。
「高速移動しているときに末端が固定されることでバランスを崩させて。戦力を削いだるわ!」
 だが少女たちの動きは早く弾が当たらない。だから思考を変えることにした。
 マルチナが少女とすれ違いざまに引き抜いたのは金色の何か。
 それは翻り、鈍い音をたてると、少女はあわててマルチナから距離をとった。
 なんと取り出したるはジャスティン像。
「大体なぁ、兵器化された人形なんか役にたたへんで。あんたも強くなりたかったら自分のおつむで考えなあかん」
 そう告げるマルチナの眼前で空間が歪む。
 空間全体が押しつぶされるような威圧感。
 ニウェウスが作り出したその空間は重力を歪めその場に少女たちを縫いとめた。
――綺麗にはまったね、マスター。
「うん、だからあとは御願い」
 その言葉に『月影 飛翔(aa0224)』は頷くと、海上を一気に疾走した。
 眼前に少女たちが固まっている、まずはその一帯を混乱に陥れる。
 放たれたミサイル弾はそれぞれ空中で加速着弾すると海上を火の海に変えた。
 上がる水しぶき。爆炎、黒煙。視界は塞がれる。
 その濛々と煙立ち込める一体にニウェウスが追撃の爆撃を。
「あの少女たちは兵器として『作られた』ってことか」
――能力者も英雄も何かしらの処置を受けているのでしょうか。
 『ルビナス フローリア(aa0224hero001)』がそう問いかけると飛翔は首を振る。
「できれば彼女たちは保護したいところだが」
――できる限り無力化を狙いましょう。
 フリーガーを投げ捨てると愛刀へと持ち替え飛翔は黒煙の中に突撃。
 気配だけを頼り剣を振るう。ザンバーの軌跡が空気を切り裂いて。煙が周囲に散る、それと同時に少女たちが数人、弾き飛ばされた。
 とっさに銃で受けた者。直撃したもの。様々いたが戦闘不能までは追いこめなかったようだ。
「さすがに、ALブーツは狙えなかったか」
 飛翔はいったん戦域を離脱する。
――こんなことをするために彼女たちは出会ったわけではないはずです。能力者と英雄、どちらも助けたいです。
「こっちの声は聞こえてないか…………まずは武器、移動手段を破壊する」
 次いで手近な少女へと軌道をとる。左右に動き、エッジを効かせ水飛沫による視界を封殺。そのまま跳躍して頭上をとった。
 ザンバーをふり、銃身を制御。一撃を海面を割るような威力で叩きつけ。
 ひるんでいる少女のALブーツを切りつけた。
 足を刈り取られ空中で一回転した少女は水面に叩きつけられる。
 飛翔は駆け抜けた、振り返り少女たちがおぼれていないことを確認すると別の敵へと向かう。
「おそらく、彼女たちはアイツが逃げる為の捨て駒にされているな」
――向こうは任せましょう。今は目の前のことに集中を。
 ルビナスが噛みしめるように告げる。飛翔よりも気にしていそうだがそれをかみ殺しているのだ。
「さぁ、次は誰だ」
 飛翔はザンバーを振るうと水しぶきを巻き上げ少女たちを威嚇した。
「タイミング…………今!」
 その背後で爆炎が上がる。
 ニウェウスのブルームフレアである。
――たーまやー!
 海上に大きな炎の花が咲くと。Dは歯噛みした。
「あと、もうすこしもってくれればねぇ」
 その目の前で崩れ落ちる燃衣の体。
 そして熱を帯びて赤く光を放つコンクリート片がゴロゴロと転がっている。
「こちらのリンカーはあらかた片し終えたかな、次は君たちだ」
 まだ動ける少女二人が会場組へと銃口を向ける。


第四章 祝福と惨劇

――さて兄者。プランBの出番が近い。覚悟はOK? 俺は出来てる。
「う、ぐぐ……」
 槇は地面に横たわったままそれを見ていた。Dの実力は思っていたよりも上。であれば自分という切り札の存在は大きくなるはずだ。
 自分の値が最高まで高まる瞬間を槇は待っている。
「だ、だが弟者、漏れは《やってやる》とは言わないぞ。《やってやった》なら使うお!」
 だから、恐怖よりも怒りが強い。
――……GOOD、そろそろ来るぞ!
 Dが動いた。警戒心を解いて一歩一歩海面に歩み寄る。
 Dはごうごうと燃えたつ篝火を佐千子に向けた。
 彼女の装備も半壊。腕からは血が滴っている。最後の最後まで盾役として動いた結果である。
「ここで、倒れるわけには」
 佐千子は改めて銃身を握りしめる、失血がひどくて踏ん張っていられない。重火器がいつもより重い、それでも。
「ここで負けるわけには! いかないわ!」
 銃身を振り上げ再度狙いをつける。瞬くマズルフラッシュ、それをうっとおしそうにDは炎で溶かしていった。
「まず君から地獄に送ろう」
「やらせないっての!」
 京子は外れた関節を無理やりにはめると、立ち上がり弾き飛ばされた弓をとる。
 それに合わせてアリスが動く。
 その手の魔導書が火柱をあげる。口元滲む血を拭い去って。その火柱から無数の火の粉を発射する。
 それに対してDも自身の炎で対抗。周囲の気温が急激に上昇した。
「く! まだこれほどの力を」
 そう歯噛みするDへ銀色に輝く矢を放つ京子。
「まだお話は終わってないよ。最期まで付き合ってもらわないとね」
 第一射はDの頬を切り裂くにとどまったが、二射目が本命。
 意識をそらしたDへと更なる矢を放つ、跳弾したそれは顎の真下から打ち上げるように迫るが、Dはその矢を焼き尽くす。
「この、雑魚どもが!」
 Dの炎が青く染まる、そして放たれた炎の槍が京子に迫り爆発した。
 直後、夜に響く声。
「うそーん」
 あまりに場違いな、力が抜けてしまう声。
 だがそれにはじかれたように振り返ったDは驚くべきものを見た。死んだはずの槇が生きて立ってこちらを見つめている。
 そして二人の間に落下しようとするフラッシュバン。
 魔場約閃光が夜を焼く。
 直後動いたのは暁。
「口の中が切れちゃいましたよ」
 かみ砕いた賢者の欠片。それを吐き捨てて燃衣は斧を構える。そして。
「OK弟者、バカ乙だ」
――《うそーん》って言っただろっと。
 斧による切り上げ。血があたりにちらばる、それでもDは表情を崩さなかった。
「やはり、ペインキャンセラー」
 燃衣が眉をひそめて告げた。
「それにいまさら気が付いたところでどうするね?」
「それは僕の役目じゃない」
 距離をとるD、それに迫るのは威月、と仁菜。二人とも限界を超えて動いているのだろう。足に力がない。
「はは、何かするにしても遅すぎだね」
 その時、仁菜は自然な動作で前へ、意識は半分なくても、本能に、心に刻まれた仲間を守るという思いが体を突き動かす。
 直後豪炎が立ち上る。だがその炎に焼かれながら仁菜は。
 周囲に光の雨を降らせていた。
 癒しの雨、浄化の雨。それはDによるやけどを癒し、もう一度立ち上がる活力を与える。
――範囲攻撃やBSがあるから優位だと思った? 甘いよ!
 そして仁菜は、茫然と驚きに動きとめるDの腕をとった。
 炎を振り払って、仁菜は焼けた口を開く。
 乾いた唇から血が滴って、それがコンクリートの上で焼ける。
「逃げたいなら力づくでどうぞ?」
 逃げられない、逃げられないのだ、力が強いわけじゃない。 
 ただ少女の心が恐ろしかった、自分の理解できないものを見た。
 なぜ死の一瞬手前ですら、仲間のためにふるまえるのだろうか。
「……貴方の炎は全然違うね」
 そう告げる仁菜の背後で蒼い炎が立ち上る。
 いつだって前を進んでくれる右手に炎を宿した頼れる隊長。
 炎の尾を持ちいつだって最高の一撃を決めるガンナー。
 青い炎を纏い共に守り手として立つ親友
「仲間の炎は暗闇を照らしてくれる、安心できる暖かい炎だけど」
 Dの炎は未来を焼き尽くす残酷な炎。
「貴女の炎は私達の炎に勝てないよ」
「…………喰らえです……浄破炎!」
 直後はなたれる威月の拳、その炎は蝶の羽のように一瞬広報に広がるが、次いでDの喉奥から炎となって吹きだした。
 従魔を焼く炎として!
「対策を! してきたというのか!」
 直後、自分をまきこむのも構わずに爆炎を立ち上らせ、そしてその隙にかける。水辺に用意させていたブーツめがけて。
 しかし、それを許すリンカーたちではない、休息は十分に取った、であればどうするべきか。
 銃声が夜に響く。
 目を、足を、腕を撃ち抜かれて転がるD。その表情は苦悶に油断でいる。
「ピカピカ光って狙いやすいな、おい」
――……ん、良い目印……でも、要注意。
 遊夜が暗闇に紛れたまま、Dを狙い撃つ。
 立ち上がったDの肩を。転がったDの胴体を。
 立ち上がり炎を打ち出そうとした手は弓で射抜かれた。京子である。
「ぐああああ! このクソ野郎がああああああ」
 直後Dは怒りのままに走った、暗闇に輝くスコープを見た気がした。その先で遊夜は逃げもせずに待っていた。
「やぁ、いらっしゃい」
――……ん、待ってた。
 直後Dの足元を炎が舐める、円状にDの周囲をかこうとその炎は柱のように空に立ち上った。
 Dの悲鳴があがるが、やがてそれすら焼き尽くされる。
 アリスが本を閉じると。終りとばかりに踵を返す。晴れた頬が痛むがそれ以上のダメージを与えてやったからよしとする。
「チェックメイトだ」
 直後遊夜は俊敏な動きでDの背後に回ると、血が噴き出る腕を組みあげて動きを止める。
「「……さぁ、オシオキの時間だ!」」
「殺さない? 捕獲? まさかね、この我々が敗北を喫することになるなんて」
「おい、こっちは終わったぞ」
 そう遊夜はいつものように穏やかに微笑むと会場に視線を移す、そこでは全ての少女を捕縛したリンカーたちが手を振ってこちらを見ていた。

エピローグ
 
 水辺に泳ぎ着く少女たち、その装備はズタズタで戦えそうにない。そんな少女へ佐千子は手を差し伸べる。
 崩れそうな体に鞭打って少女を生みから引き揚げた。
「私たちを、助けてくれるのですか?」
「もちろんでしょ」
「でも私たちはあなたの敵で」
 そうぶつくさ告げる少女に佐千子はタオルを投げかけた。
「文句があるなら後で聞いてあげるわ。だから、今は助かりなさい」
「え?」
「大丈夫。あなたには希望がある」
 全員の救助を確認すると、飛翔は武装を解除しその場に腰を下ろす。
 彼女たちとの戦闘はなかなかに骨が折れた。
――彼女たちが無事に戻ってくれるといいのですが。
「この組織は気に入らないな、必ず潰す」
 そう飛翔は告げると背後に横たわる男を眺めた。
 彼は失血によって蒼くなった顔で空を見つめている。
 そんな彼の傷を手当てしているのが仁菜と威月。
「ははは、本当の地獄はここからという事だね」
「はい、楽には死なせません」
 そう仁菜が告げるとDは首を振る。
「いや、私を生かして捉えたという事はだ。来るよ、あいつが。Eの名を持つDがね」
「しかし、本当にただの人間か、怪しい事この上ねぇな」
 火伏静が燃衣に問いかける。
「ええ、ですが彼の口からきけることでわかっていくんじゃないですかね」
 D捕獲作戦はこれにて完了。やっと謎の組織の尻尾と掴むことができたと言えるだろ。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
  • 暁に染まる墓標へ、誓う
    無明 威月aa3532

重体一覧

参加者

  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 単眼の狙撃手
    灰堂 焦一郎aa0212
    機械|27才|男性|命中
  • 不射の射
    ストレイドaa0212hero001
    英雄|32才|?|ジャ
  • 『星』を追う者
    月影 飛翔aa0224
    人間|20才|男性|攻撃
  • 『星』を追う者
    ルビナス フローリアaa0224hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • 対ヴィラン兵器
    鬼灯 佐千子aa2526
    機械|21才|女性|防御
  • 危険物取扱責任者
    リタaa2526hero001
    英雄|22才|女性|ジャ
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • 暁に染まる墓標へ、誓う
    無明 威月aa3532
    人間|18才|女性|防御
  • 暗黒に挑む"暁"
    青槻 火伏静aa3532hero001
    英雄|22才|女性|バト
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862
    獣人|21才|男性|命中
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 誄aa4862hero001
    英雄|19才|男性|ジャ
  • 数多の手管
    マルチナ・マンチコフaa5406
    機械|15才|女性|生命
  • エージェント
    マシーネンカバリエaa5406hero001
    英雄|20才|?|ジャ
前に戻る
ページトップへ戻る