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広告塔の少女~夢と終りのふぁんたじあ~
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/09/06 10:43:12
オープニング
● グロリア社主催、疲れを癒そうツアー
この夏皆さんはいかがお過ごしで下でしょうか、お盆はちゃんとお墓参りいきましたか?
夏休みはとれましたか?
だいたいの人がとれたでしょうか、でも取れなかった人もたくさんいるでしょう。
まぁ、例えば遙華とか、そうなんですけどね。
「やっと仕事終わった!」
山積みになっていた仕事に一区切りついたのが何と八月の27日の事。
減っては足され、足されては増えを繰り返していた書類の山がさらっと亡くなったところで遙華は目をグシグシこすって天井に両腕を突きつけた。
「私の夏休みが始まる」
「うちの会社のお盆休みは11から17までよ」
無情にそう告げたロクトはせんべえをかじりながら雑誌なぞ読み漁っていた。
「いつものことすぎてもう何も言う気が起きないけど、一応言っておくわね、知ってる」
「そして次のお仕事ももう決まってるのだけど」
「しってるわよ~」
へなへなとその場に崩れ落ちる遙華。さめざめと涙を流しながら、通り過ぎてしまった夏を思う。
「うう、次は何をやればいいのよ」
「謎解きゲームのテストプレイね」
そうロクトが差し出したパンフレット。それを眺めてすぐさま遙華は顔をあげた。
「ロクト……大好き」
「感動してないで準備に取り掛かって、まずは人数集め。いいわね?」
その言葉を聞くや否やダッシュでその場を後にする遙華。背中を見送ってロクトは一つため息をつく。
「あなた、一人でやっていけるんでしょうね」
●謎解きの島
H.O.P.E.の掲示板に張り出されたお手伝い募集。その中にこんな用紙が張られていた。
急募二泊三日、謎解きの旅。
南の島にて最後のサマーバケーション。
島全体を使った謎解きのたびに皆さんを招待します。
そして下にはマップが張られていた。
それは丸い、今では無人島となってしまった部屋で、家屋など残っていた物を改築、ひとつのアミューズメントパークにしてしまった。
そんな感じの島らしい。
島の中心が小高い山になっていて『火山』と名前が打たれている。
そのふもとには町がありそこが『村』
そして島に一つだけある『港』が一直線に繋がれていて、このエリアが冒険の舞台のようだ。
どうやら剣と魔法のファンタジーらしい。
まる三日を遊びに使うというぜいたく、大人になってしまえばもうできないが。
これは報酬が出るようである。
● 内容は以下の通り。
チェックポイントは『港』『村』『火山』でこの道中VBSの技術を転用したホログラフィックな敵が出てきます。
・エリアについて
このゲームは夜に出歩くことが禁止されています、魔王の時間だからです。なので、参加者は18時を超える前に最寄りの『港』『村』『火山』のどれかの拠点に戻る必要があります。
『港』よくある港、船が停泊していて、船の中で寝泊まりする。村までの道のりは平たんだが魔物がよくでる。
遠足気分で町まで歩きましょう、ただ五キロほどあるのでちょっと覚悟しないといけないかもですが
『村』
NPCが沢山いる村です、宿や酒場があります。ただしそれは中心街のみで、中心街から少し外れた住宅地などは人がおらず廃墟です。
猫が沢山いてひとなつっこいの、と遙華がはしゃいでいたので構ってあげるのもいいかもです。
『火山』
魔王上の近くです、ビジュアル的には普通の山ですが、火山という事にしといてください。
赤い山荘が立っており、そこで休憩します。
そして道中の魔物を倒しつつ火山まで上り魔王討伐を目指す。そんな剣と魔法のファンタジーが今回のゲーム趣旨です。
ただし今回はゲームなので皆さんは共鳴して参加することはできません。
二人から六人までの人数でグループとなって参加していただきます。
ジョブは六種類、リンカーのクラスに対応していて名前が一緒です。スキルも一緒ですが、スキル名を口にするだけで、初期装備の剣や杖、弓、からエフェクトが出て敵を倒してくれます。
実は戦闘は重要な要素ではないのでほとんど負けることはないのですが、普段自分がやれないクラスになりきって遊べるのでそれはそれで楽しいのではないでしょうか。
問題は謎解きです。謎解きは四つありますが。全てを解く必要はありません。
絶対とかなければならないのは四番。ですが。他のものに関してはとかなくても大丈夫です。
1 魔女の宿
町から離れた森の中に、小さな家があります。魔女の宿と呼ばれており、薬草を取ってくることでこの家に泊めてもらえるそうです。
この魔女の宿を拠点として利用できるようになります。
薬草は魔女の家から500メートルほど離れた青い泉のほとりに生えていて、ここからだと星がとても綺麗に見えます。
2妖怪牧場
変な角が装備された犬や猫や羊やヤギがいる牧場です。手作り感あふれるのは準備する時間がなかったためです。
ここでは全六問ある立体パズルに挑戦していただきますが、対象年齢が十二歳なので皆さんは時間がかかっても溶けることでしょう……とけない人もいるかもですが。
パズルを解き切った人は妖怪牧場を拠点として使うことができ、夜ご飯が焼肉にグレードアップします。
牛もいるのでしぼりたての牛乳とかいい感じです。
3 封印の灯台
灯台は港から歩いてテトラポットの群を超えるとひっそりそびえたっています、もう使われることはないようですが、灯りが灯り拠点として使えます、さみしいところですが、逆に秘密基地感があるでしょうか。
ココでは
1→2→3→?→8→13→?→34
この法則で正しき足場を選定し、灯台を登れという問題が出ます。
正解すると、魔王の正体という巻物がもらえ。
ただの遊んでほしい少女であることがわかります、剣で殴る以外にも頭をなでなですることによって倒せるという事がわかります。
4 旅の証を示す志錬、碑文が扉にかかれている、内容はこんな感じ。
―― 旅とは重荷を運ぶこと。重すぎては歩めなくなってしまい、軽すぎれば旅は意味のないものになってしまう。
ココが旅の執着点。重荷を下ろし、まっさらな自分になりなさい、
ココでは五つの宝玉が存在し。それが扉を守っています。その宝玉のうち四つには色が刻まれており、感じで喜怒哀楽と書かれています。
これはこの長旅の思い出を喜怒哀楽のお題で語りなさい、という問題で。
皆さんに旅の中での思い出を語っていただきます。
結果、夏休み楽しく過ごせた皆さんをねたむ、魔王遙華が登場し。
それを切り伏せたり、説き伏せたりするとゲーム終了です。
解説
目標 旅だと思って楽しむ。
今回は、旅の記憶が物語の鍵となっています。
このイベント自体ファミリー向けを想定されているので簡単ではあるとおもうのですが、そこは大人な感じで遙華につきあっていただけると嬉しいです。
三日もあることですし、異世界を冒険していると思って、町中探索しながらのんびりと過ごしてみてはいかがでしょうか。
あ、デートシナリオとしても機能すると思うのでぜひぜひご利用くださいませ。
リプレイ
プロローグ
フェリーの長旅、潮風を沿えて。
波の揺れを最低限に抑えられる新型の客船に乗って一行は魔王の住まう城に向かっていた。
陸の孤島、今や無人島と化したその島が地平線の向こうにちらほら見えるころ
『月鏡 由利菜(aa0873)』は『リーヴスラシル(aa0873hero001)』を連れ立って、甲板へ出た。
「ラシル、グロリア社の旅行ツアーの予約を入れてくれてありがとうございます」
「学園の修学旅行代わりだと思えばいい。気を楽にな」
潮風に麦わら帽子が飛ばされないように抑える由利菜、その視線の先には
『卸 蘿蔔(aa0405)』と『レオンハルト(aa0405hero001)』そしてロクトがいた。
二人ともすでに職業選択を済ませているのかおもちゃのような銃を背中に背負っている。
「今度いっぱいお手伝いしますからぁ。なんでもしますし、ちょっとの時間で良いです」
一体なんの御願いだろうか。
そして逆サイドには遙華と、そして『白雪 煉華(aa2206)』『メリュジーヌ(aa2206hero001)』が見えた。
二人は一緒に回ることができないか話をしているようだった。しかし。
「ごめんなさい、嬉しい申し出なのだけどこの役。私以外に落し込みがすんでないのよ」
そう遙華は語ると島を見た。
ひと夏の冒険が始まる。
●真実の場合
「波の音しか聞こえませんね」
『高野信実(aa4655)』は『ロゼ=ベルトラン(aa4655hero001)』を連れ立って真っ先に船から降りた。
真実の半袖ポロシャツが風になびく、ハーフパンツも軽やかだ。
「ホント、時間が止まったみたいねぇ……」
日差しは強いが風は少し冷たい。なので真実は腰に巻いていたパーカーをロゼに羽織らせると再び海を見る。
この快適な環境に身を置くだけで心が洗われていくようだった。
「では、さっそくいきましょう」
真実はロゼを先導して先を行く。彼はテストプレイのアルバイトのつもりで来ているようだがロゼは少し違う気持ちでここにいた。
それこそひと夏のアバンチュール。真実と楽しい休日を過ごすためにここにいる。
本人はまぁ『新婚旅行』だと嬉しそうに言うがどう見ても親子レクにしか見えないのは残念なところ。
「あ、まって」
そう踏み出した足は輝くように白く健康的、つば広帽子が一層エレガントに魅せる。
ただそんな余裕を保っていられるのも最初のうちだけで。最初の町までがなかなかに辛かった。
「暑い……」
港は海風で涼しくはあるのだが、さっきは日が低かったから涼しかったのか。
今では気温が上がりきり、数キロ歩くとロゼも疲れ果ててしまう。
「ダイジョブっすか?」
「大丈夫よ」
「幻想蝶に……」
「それはだめ!」
かたくなに首を振るロゼである。
仕方がないので真実は木陰にシートを引いて少し休憩することに。
「真実クンが私のために……」
手際よくレジャーシートを広げる真実の姿を激写していると、真実は苦笑いを浮かべながらロゼを見る。
「意外と元気そうっすね」
その視線の向こうにだ。突如電子的な光が走り、形作ったのは緑色のもちっとした生物、そうRPGで定番、スライムである。
「ロゼさん疲れてるんすよね、下がってください!」
ちなみに真実が選択したのはブレイブナイト。あてがわれたのは盾と剣。
慣れない武装だったが、盾で抑えて件で切りつけるという意識をさえ忘れなければ、遅れをとる相手ではなかった。
「俺に任せてください!」
そして何度か切り付けたのちにスライムを倒すとロゼは頬を染めながら拍手を送る。
そんな二人が真っ先にたどり着いたのは封印の灯台。
封印の灯台は知恵あるものにその宿を提供するという。
「左2つの数を足したものなんで……答えは左から5と21っすね!」
いともたやすく問題を解いてしまった真実。彼の姿に感動しロゼはその手を取った。
「信実クン……結婚しましょ……」
「なっ!? へっ、変な事言ってないで先行きますよ!」
そうそっけなく手を振りほどかれてしまうロゼ。
なぜだろう。なぜ彼は自分の想いを受け入れてくれないんだろう。
そんなことばかり考えて、ロゼは少し大人しくなってしまう。
その後二人の冒険は続く。主に真実がナイトとしてロゼを導く形になったが、最後までロゼは本当の意味で笑うことはなかった。
そして碑文の前で考え込む真実に向けてロゼは胸の内を語る。
悲しみを表す青い石に手を当てながら。
「真実クン、聞いて……私、信実クンの事、ずっと“カワイイ男の子”って思ってたの」
「可愛いって……」
苦笑いを浮かべながら頬をかく真実。
「でもね信実クン。ココでのアナタは強くて頼もしかった。ホントは“カッコいい男の人”だったのね」
その言葉に今度は顔を赤らめる真実。
「今まで近くに居たのに全然気付いてあげられなかったの、ゴメンなさい」
「謝る必要なんてないっす」
真実はふわりと微笑んで告げる。
「ロゼさんに誘ってもらった時、実はめちゃめちゃ嬉しかったんすよ」
思い出を反芻するように真実は遠くを眺めた。
「家族でこういう所に来た思い出、全然無くって……」
そしてロゼに向き直ると、成長したおとこのこの瞳でロゼを見る。
「何だかんだでロゼさんに甘えっきりなんです、強くなんかありません」
その時である。ぴこーんと軽快な音がして四つの意思に四つの明りが灯った。
ついに、ついに魔王が顕現する。
ゴゴゴと大層な音がして扉が開くと、なんとその向こうから現れたのはメガネをかけた少女である。
「はい、いらっしゃい」
しかし魔王遙華は気の抜けたあいさつで会話を始める。
「あなた達の思い出聞かせてもらったわ、とても楽しんだみたいね、でも私は……」
次の瞬間、遙華を思いっきり抱き留めたのはロゼ。
「え?」
「かわいいいいい!」
真実の言葉が嬉しかったのと、遙華がかわいかったので、ロゼのテンションはマックスである。
遙華の頭をこれでもかというくらいに撫でる。
「あ、あの私、もう、倒されたから、それでいいから、ねぇ、聞いてる?」
「アタシの騎士クン、カワイイ魔王ちゃん、いっぱい甘えてちょうだい」
止めに入った真実も巻き込んでモフモフモフモフするロゼ。
そんな光景がしばらく続いたのち二人は下山することになる。
● 優しさの姫
「ふああああ、猫です! 猫がいますよ」
煉華は村に着くなり装備を投げだし白い猫に駆け寄った。
「ねぇ、冒険の途中なのだけど」
困り果てるメリュジーヌ。
「でも、こんなに! こんなにかわいい」
意外と猫は人になれているようで、煉華が抱っこしても暴れない、むしろ落ち着くのか瞳を閉じてすり寄るくらいだ。
「はい、この子大人しいですよ」
そう煉華が猫を差し出すと猫はメリュジーヌも気に入ったのか腕から上ろうとした。
身長の高さからメリュジーヌは猫に登られて落ちないように四苦八苦するが、まんざらでもない表情をしながら猫を愛でる。
そんな猫に優しいメリュジーヌを眺めながら煉華は微笑む。
「あ! こら。まって」
ただ微笑ましかったのは猫が大人しかったときだけで、猫はメリュジーヌを上りきると突然暴れだしその胸の谷間に入りこもうとしたり首の周りに汲みつこうとしたり悶える。
それを受けて笑うメリュジーヌ。
「くすぐった……」
そんな和気あいあいと始まった二人の大冒険。
煉華たちは『村』を拠点として行動しするようだ。メリュジーヌと話し合い宿で部屋を取ってどのような行動にするか決めて、酒場へと向かって情報収集をする。
「目指すべきは魔女の宿かしら」
メリュジーヌが問いかけると煉華は地図を指さした。
「妖怪牧場も見ておきたいですね」
そして二日目。
妖怪牧場で宿泊権を得るにはパズルを解かねばならない。
煉華はメリュジーヌより先に解いてお姉ちゃんとしての威厳を見せてあげようと取り組むのだが……
「あら、まだできてないの?」
ハッと振り返る煉華。その背後ではあっという間にパズルを完成させてしまったメリュジーヌがいた。
「そんな……」
「得意なのよね、パズル」
ショックを受ける煉華である。
そんなショックで落ち込む煉華はしばらく草原の風に当てられていた。心が穏やかになりつつあったときに、頬に冷たい瓶が押し付けられる。
メリュジーヌが牧場で絞りたての牛乳を貰ってきたのだ、すっかり仲直りした二人は、夜には焼肉を食べて元気を取り戻し、次の日に備える。
そして三日目、煉華の旅も佳境である。
旅の証を示す最後の試練。
「嬉しかったのは」
メリュジーヌが問いかける。
「たくさんの猫を戯れたこと」
「腹が立ったのは」
「酒場で情報集してたら子ども扱いされるますし、メリュジーヌちゃんは男性に囲まれて対応が大変だった!」
声高に煉華が告げた。
「哀しかったのは?」
「牧場で問題を早く解いて威厳を見せようとしたらメリュジーヌちゃんに先を越された」
その言葉に思わず笑ってしまうメリュジーヌ。
「そして最後に、楽しかったのは?」
「メリュジーヌちゃんと一緒にツアーを回れてうれしかった 」
途端に扉が開き現れたのは遙華。
そして遙華は。
「西大寺さん久しぶり!」
そう煉華に迎え入れられた。
「あ、あの、私魔王」
「さぁ、私の胸に飛び込んできなさい」
そう目をキラキラさせながら腕を広げて迎え入れようとしている煉華。
そしてそんな煉華に言ってはならないだろうが、あの胸に飛び込んだらどうなるのだろう、そんな欲求が生まれる遙華。
ふらふらと光に導かれる蝶のように煉華の胸まで到達し、ギュッと抱きしめられていた。
● ジパングを目指すつもりで
「随分と大規模な催しだな」
『御神 恭也(aa0127)』は島に到着するなりあたりを見渡し感嘆のため息をもらす。『伊邪那美(aa0127hero001)』は楽しそうにあたりを駆けまわった。
「へ~、面白そうだね~」
そんな二人の背後から悲鳴のような声が上がる。
犯人は由利菜。
「ま、まじかおてぃっく☆ぶれいにゃをスキャンされた!?」
「姿まで魔法騎士ソウェイル・アルジスに近くなったな……確かに可愛いが……ユリナが似合うのは当然だが、私が着るには厳しいな」
「お、大人っぽさが足りないと……? ま、まあ、ブックレットでは10代がターゲットと書かれていて……」
「二人はカオティックブレイドなのか?」
奇抜な衣装に身を包んだ由利菜とリーヴスラシルを一別すると恭也はその手の苦無を眺める。
「恭也は何にしたの?」
伊邪那美がそう問いかけると、苦無をふってみせる。シャドウルーカーである。
「此方の方が俺本来の戦い方に近いからな」
そして伊邪那美はワンドを握っていた。
「お前はメディックか」
「って言うか、ボクがドレッドノートだ言うのが間違ってるんだよ」
そうワンドを振るって見せる伊邪那美。
「どう見ても、癒し系のボクはこっちの方が正しいんだから」
どうだろうな、そんなことを思いながら先を急ぐ恭也。
「まずは封印の灯台に……」
「それより先に目指す場所あるでしょ!」
そう恭也は引っ張られてとある場所を目指す。道中向かう場所が同じ様子の由利菜たちとチームを組む。
カオティックブレイドの二人が打ち漏らした敵を、恭也が倒していくという普段とは違うコンビネーション。
ただそれにもすぐになれて四人は妖怪牧場までたどり着いた。
青空の下パズルをとかされるのはなんだか不思議な感じがしたが程よくのんびりできていい気分転換になる。
「物体の形状を把握していないと混乱しそうですね……」
由利菜はふむと考え込む。ここで正解しなければ宿泊権は確保できない。
「私が立体を動かす。ユリナは形状を覚えてくれ」
そう二人で仲良くパズルを解いていく由利菜とリーヴスラシルに。
「どう考えても焼肉目当てだろう」
そう伊邪那美はとけないパズルを恭也へバトンタッチカシャカシャと軽快に解いていく。
「何言ってんのかな~ 食料の調達は基本だよ~」
その隣でヤギが一つ鳴いた。
二組は夜はそこで明かし、朝日が昇れば魔王を倒すための情報を求め灯台へと向かった。
すると灯台の足元には謎が書かれた看板が刺さっている。
「ひょっとして……法則とは『必ず前二つの数字を合わせた合計になる』でしょうか?」
由利菜はふむと考え込む。するとリーヴスラシルは気が付いたのだろう。
「ならば……欠けている数字は」
由利菜の手を取って階段を上っていく。
「ふむ……1→2→3→5→8→13→21→34と言った所か」
恭也もあっさり気が付いたのだろう。八段目の階段に取った状態で伊邪那美に手を貸して、十三段目にジャンプさせる。
「ん?? ボクにはさっぱりなんだけど」
「こう言った物は法則性が必ずある。今回は今の数と前の数を合わせた物が次の数になるようだな」
「……これで間違ってたら大恥だね」
「たぶん大丈夫なはずだ」
実際には大正解で目的の物を手に入れることができた、であれば向かうべきはラストステージ。
魔王の住まう小山である。
赤い肌をした悪魔を背後から一突きにすると恭也はそれを眺める。
「なるほど、今回のイベントの感想を語れと言う事か」
恭也は全ての文章を読み終えると一考にそう告げた。
「う~ん、皆に共通していそうだけど謎解きで正解した時は嬉しかったね。逆に嫌だったのは、折角の焼肉なのに恭也が野菜を多く食べさせようとした事かな」
「割合を考えろ、お前は肉9に対して野菜1だったか注意をしたんだろう」
『聞こえな~い で、楽しかったのはこんなゲームは初めてで面白かったよ。悲しいのはやっぱりもう終わりだって事だね」
「私たちは」
由利菜は自分の胸に手を当てて沸き立つ思いを言葉におきかえる。
「喜ばしいことは、学園の授業を思い出して楽しい謎解き……」
「怒りとしては、戦闘から離れて休暇を楽しもうと思ったのに、ここでも戦闘があったことか」
リーヴスラシルがそう告げた。
「哀しいのは少し涼風邸が恋しいこと」
「楽しかったのは……そうだな」
リーヴスラシルは少し考えると由利菜をみやる。すると二人は一斉に口を開いた。
「「頼れる人が、護るべき人が互いに側にいること」」
扉が開く。現れたのは魔王遙華。
「魔王よ……幸福に満ちた日々は、あなたにとって手が届かないものではないはずです」
「私とて依頼や教諭の仕事などで多忙だ。だが、主の……守るべき人の笑顔があれば苦になどならない。それが私という英雄だ」
「苦にはならないかもしれないけど、すり減るのよ、何かが」
そう遙華は体育座りを硬くして告げる。
「あ~……何と言うか、来年の夏にはきっと良い事があると思うぞ」
何かを察して肩を叩く恭也
「寂しかったんだね……後で、みんなと一緒に遊ぼうよ」
そう元気づける伊邪那美。
「魔王。お前とて、そのような大切な人がいないわけではあるまい」
「そうね、大切な人、大切な人には大切な人ができて、うー」
何か地雷を踏んでしまったようである。魔王遙華はこてんと横倒しになると勝利のファンファーレが鳴り響いた。
● 新婚旅行?
「相変わらず規模がすごいな……」
「……ん、遊んで、お金が貰える……良いお仕事」
『麻生 遊夜(aa0452)』は一直線にゴブリンへと突っ込む、普段は選択しないインファイト、今回遊夜は剣を持ちドレッドノートとしてゲームに参加していた。
刃を切りおろし、翻して切り抜ける。反撃に振り返ったゴブリンを動けないように『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』が縫いとめた。
ユフォアリーヤはシャドウルーカーである。そして遊夜が振り返りざまに切り上げて戦闘が終了する。
「まずは村目指すか?」
「……ん、冒険には、イベントが付き物……色々探す?」
「ふむ、ではロマンを求めるか」
告げて港町でうろうろしていた村人から釣竿を借りた。
多忙な麻生夫妻のたまの休日である。のんびり釣りをしたり、吊り上げた魚の所有権をめぐって追いかけっこしたりした。
疲れればユフォアリーヤは遊夜の膝の上で眠り、ゆったりたどり着いたのが例の灯台である
「おお、如何にもだな」
寂れた風貌を見あげてわくわくとした表情になる遊夜。
「……ん、何かありそう」
二人は謎解きも得意である。
「左二つを足すんだったか?」
「……ん、子供達の……頭の体操クイズに、あった」
巻物を手に入れると遊夜は秘密基地を探してそこに居を構えた。
チャルケセットもぐもぐ二人で自然を感じながら寝袋に潜り込む
「なるほど、良い情報を貰ったもんだ」
ランタンの明りで巻物に目を通す遊夜。
「……ん、必勝法、だね」
そうユフォアリーヤの笑い声が夜に響く。
翌日、日ごろの疲れも取れた二人は道中を疾走した。
その手の刃で敵を巻き上げ。空中で身動きの取れない敵をユフォアリーヤが跳躍、惨殺していく。
「ハッハァ! 良いな、前衛はこんな感じか!」
大剣で敵の攻撃を捌き、つば是りあう遊夜。その背後から躍り出たユフォアリーヤの苦無がゴーレムの心臓部を穿つ。
「……ふふ、ユーヤの邪魔は……させない、よ」
巨体が倒れるとその向こうに村が見えた。村についたなら二人がやることは決まっている。酒場に直行である。
「情報収集と言ったらここだよな」
「……ん、鉄板で、王道」
昼間から飲んだくれるというのはなぜこれほどまでに甘美なのか。
そうグラスを煽る二人である。まぁアルコールではないのだが。
そのままバーテンと情報交換をしたり地図を眺めてこれからの計画を立てる二人。
「魔女の宿も面白そうだが……」
「……妖怪牧場が良い!」
お腹撫でつつ尻尾をブンブンと振り回すユフォアリーヤ。その後パズルはちょっと苦戦したが、すぐに焼肉にありつくことができた。
最終試練は旅の想い出を語ること。
「喜は焼肉がランクインしそうだ」
そう遊夜が言うと、ユフォアリーヤの尻尾がぶんぶん揺れ光が灯る。
「怒は防虫が効かなかったことかね」
ユフォアリーヤが微妙な顔をして尻尾を伏せた。
「哀は……牧場の……楽はやはり他クラス成り切りだろうか、やはり爽快感はある」
遊夜がそう告げると、ごごごごと扉が開き、小さな魔王が登場した。
「本当、お疲れさんだな」
「……ん、良い子良い子」
遙華を抱き寄せて頭を撫でるユフォアリーヤ。
「あったかい」
そう遙華はなすがままとなっていた。
● デート(お付きのもの二名と、不穏な視線)
「がおー。 野生の蘿蔔があらわれた。蘿蔔は仲間になりたそうにこちらを見ている」
到着早々、『八朔 カゲリ(aa0098)』そして『ナラカ(aa0098hero001)』の目の前に躍り出たのは、モンスターではなく蘿蔔だった。
それを見て無言で剣を抜こうとするカゲリ。
「わわ、ちが、ちがうのです!」
「…………意味不明ですまないね。旅の雰囲気がどうとかで」
そうレオンハルトが茂みから現れ注釈をいれる。
「そんなことか」
そうカゲリはつぶやいて刃を収めるとついてくるように視線を投げる、その後ろを蘿蔔がトテテと追いかけた。
一行は五キロの道のりを悠々と歩く。カゲリは蘿蔔の歩幅に合わせ。その後ろにナラカとレオンハルトが微妙な空気を醸し出しながら並んで歩いていた。
「たまには、こういうのもいいかもしれないな」
思えばのんびりとした日々を過ごすのはいつ振りだろうか、そうカゲリが告げると、蘿蔔は目をキラキラさせて喜んだ。
「そうですね! 楽しいですよね! 私も楽しいです」
やがて村にたどり着くと、まずは猫が出迎えてくれた。
レオンハルトはその猫を掬い取ると慣れた手つきで愛でる。
「ここは、天国だろうか」
「わわっ…………猫さんいっぱい。あ、あのこ小さい…………まだ子猫なのかな」
そう小さな猫を掬い取ると蘿蔔はカゲリの頬に猫をくっつけた。
「ほら、可愛いですよ」
「ああ、そうだな」
「猫の鼻って冷たくて気持ち良いですよね」
そして町で情報を強いれる四人、何でも魔女の館が蘿蔔の目的をかなえてくれそうだ。
「いきましょう! すぐ行きましょう」
道中魔女の望む薬草を探しながら歩く、ついでに泉へのルートもチェックである。
そして尋ねた魔女の館にすんでいたのは。
「あ、ロクトさん」
ロクトである。彼女は蘿蔔の姿を見ると耳打ちした。
「子供はお互いが自立してからの方が良いわよ」
反射的にロクトをひっぱたく蘿蔔であった。
魔女の館の食事は思いのほか美味しく、疲れと満足感で眠りに入ってしまった英雄たち。
それを置いて二人は外に出た。
近くに泉があるという。その道のりは暗い、カゲリはふらつく蘿蔔の手を取って先を示す。
(そういえば)
こうやって手を繋いで歩くのははじめてなのだ、そう蘿蔔は気が付いた。
「これで、よいのだろうか」
カゲリはそう問いかける。
「よいとは?」
「恋愛事には疎い。だからどうすれば蘿蔔を喜ばせることができるか分からない」
そんな気遣いが嬉しくて思わず蘿蔔は笑ってしまう。
「大丈夫ですよ、私は一緒にいられるのが一番うれしいんです」
そして唐突に開けた場所に出た。そこは星が輝く希望の丘。
「ちょっと…………不思議な感じがしますね。カゲリさんと一緒にこうしていると…………」
「なぜだ?」
「あ、嫌とかはないですよ。むしろ嬉しいというか、また…………いえ、もっと一緒に色々なところに行きたいなーって、思いますし」
今まで戦いの場で会うことが多かったからだろうか、こうやって座り寄り添っていることがなんだか幻のように思えたのだ。
繋いだ手の温もりを感じながら、二人はただ星空を仰ぎ見る。
「あ、流れ星ですよ」
蘿蔔が指をさす先に見えた星、それに二人は何を願うのか。
それが気になって蘿蔔はカゲリを覗き込んだ。
「何を考えているんです?」
「俺は、そうだな……」
カゲリは思いを口にすることは言わなかった。
ただ彼女がこうして、自分を思い慕い一緒にいてくれることに感謝しようと思った。
未だ眠る妹が安心して目覚められる世界を……そう、カゲリは望み進むようにその果てに、蘿蔔には一体何を残せるだろうか。
それを強く願い思い考えている。
そのことを口にできるようになるのはもう少し先の事かもしれない。
そして最後にたどり着いたのは、やはり地獄の門。
石に手を触れ四人はこの旅の事を思い出す。
「カゲリさんはどうでした?」
蘿蔔がそう問いかける。
「蘿蔔と旅行が出来た事はたのしかったが。まぁ保護者の目が……」
カゲリは背後を振り返る、ナラカとレオンハルト二人の視線とがっちりかみ合った。
「だから、蘿蔔を楽しませることができなかったのではと、少し思う」
「た、楽しくなかったんじゃと思われるのは、ちょっと…………哀しいです。私はカゲリさんと一緒なら、それだけで嬉しいですし、楽しいですから…………そ、その」
「お前らお互いの事以外も言え、せっかく遙華が招待してくれたんだから! つーか俺たちもいるんだけど!?」
レオンハルトが突っ込む。
そんな様子を見て、カゲリは少し表情を緩めた。
「それでも、まあ悪くはなかったのではないかと言う」
その直後。ぱっかーんと扉が開いて遙華が飛び出してきた。
「そうよ、私もいるのよ!」
そのまま蘿蔔は遙華を抱き留め、よしよしと頭を撫でる。
「とても楽しかったです…………ありがとう、よく頑張りました、です。また今度一緒に遊びに行きましょう」
結果
シナリオ成功度 | 普通 |
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