本部
サメ殴り代行
掲示板
-
こちらサメ殴りセンター
最終発言2017/08/19 13:27:03 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/08/18 20:24:54
オープニング
●エマージェンシー
白い砂浜。
太陽がやけたように照り付ける、とある観光地の一日。
突如として、暗雲が立ち込める。
「雨か? こんなに急に……」
ぽたり。
小さな雨粒、と思しきそれは、それにしてはあまりにも不自然だった。
どさりと、何かが落ちてきた。
ぎょっとした一般市民たちは、突如として悲鳴を上げた。
「さ、サメだーーーー!」
化け物は牙をむき、雨のように降り注ぐ。
客が逃げまどっている間にも、ぐんぐんと雨が降り、海岸を波が侵食していく。
水を得たサメたちは、ゆるりと動き出す。
鋭い牙。
まだ人は食ってはいない。だが、いずれ食べるだろう。
幸いなるかな、居合わせた君たちはエージェントだった。
あなたたちは、サメを倒す。ひたすらにサメを倒す。
従魔に変異したサメを倒す。
起こりうる悲劇を、喜劇に変えることができる。
あなたたちは、サメを倒す。ひたすらにサメを倒す。
従魔に変異したサメを倒す。
――起こりうる悲劇を、喜劇に変えることができる。
解説
●目標
突如としてビーチに現れたサメを倒す。
●解説
トンデモB級映画風のシナリオです。
とはいえ、戦闘シナリオでもありますので、ご注意ください。
●登場
バイオシュモクザメ/群れ/10×5ユニット(ダメージ処理、判定はユニットごとに行います)
ハンマーのような頭部をもつサメ。比較的慎重で、群れで行動する。
バイオホオジロザメ×30
典型的なサメ。小柄ながらも素早く、ジャンプして獲物を食らう。
バイオイタチザメ×10
大型で体力の高いサメである。
なんでも捕食する。
いずれもミーレス級。
熟練したエージェントたちには脅威ではないだろう。
しかし、どういうわけか、彼らは遠距離からの攻撃に対して耐性を持つようである。
(遠くから攻撃すると、攻撃力に大幅なマイナス補正がかかります)
素手とは言わない。思い切り接射でぶっぱなされたし。
●場所
真夏のビーチ。
海中での戦闘は、水中戦闘ルールを適用します。
●備考
・一般市民の避難は済んでいます。
・突如として現れたという設定のため、大掛かりな準備などには時間がかかることが考えられます。
リプレイ
●夏、サメ、ビーチ
赤いアロハシャツを着たサングラスの男と、ビーチにおいてもスーツ姿の強面。
三傘 光司(aa0154)と戸村雅樹(aa0154hero002)だ。
砂浜へと猛りくるサメに、三傘は固くこぶしを握り締める。
『店長、なんでそこまで躍起になってるんですか……?』
「なんでってトムくんそりゃ君……」
三傘はサングラスごしに、まっすぐに戸村を見返した。
――サメは殴るものだろ?
心の底から、それを信じている者の目。水が上から下に流れるがごとく語られる、この世界の真理。
果たしてそうだっただろうか。疑問が頭をよぎったころには、すでに共鳴を果たしていた。
『あれだ、日本の夏といえば海水浴をしながらサメを殴る!』
ミツルギ サヤ(aa4381hero001)は神妙に頷いた。
「……いや、違」
ニノマエ(aa4381)は、どうにもミツルギが妙な常識を覚えているような気がする。
『殴り倒せばビーチは私のもの。初の海水浴を楽しむぞ!』
ぐ、とこぶしを握るミツルギ。
「……そう、英雄人生初のな……この夏一番のやる気を見た」
とりあえずはうんうんと、ミツルギのやる気に頷くばかりである。
「サメか……」
狒村 緋十郎(aa3678)は主(あるじ)にして最愛の妻たる第一英雄と一緒に夏のビーチへ遊びに来ていた。
幸か不幸か妻がほんの少し席を外した隙の一瞬の出来事である。
狒村は幻想蝶から漆黒の柄を持つ、両刃の大剣――英雄である妻の、かつての世界での愛剣である、魔剣「闇夜の血華」を召喚する。
「リーゼとの共鳴で敵と戦うのも久し振りだな。良い機会だ、今日は思う存分に暴れてくれ……!」
血の匂いに、サメたちは沸き立った。だがしかし群がってこないのは、ともすれば彼らの生存本能故か。
剣に宿るどす黒い怨嗟の魂が、そして、剣として使われる歓びが伝わる。狒村を捻じ伏せ押し倒し、リーゼロッテ・シュヴェルト(aa3678hero002)が現れた。
「あっちもこっちも……獲物がたくさんいるの!」
『……ユリナ、サメ型従魔の襲撃だ』
リーヴスラシル(aa0873hero001)の呼びかけにより、月鏡 由利菜(aa0873)の水に濡れた長いまつげが一瞬だけ伏せられ、それからしっかりと敵を見据えた。
「久々にバカンスを楽しめると思ったのですが……仕方ありません。出撃します!」
「夏も終わりかけだけど、やって来たぜビーチ!」
『サメさんがいっぱいいますよ?』
きょろきょろとあたりを見回すリディア・シュテーデル(aa0150hero002)に、志賀谷 京子(aa0150)はいたずらっぽく笑った。
「お片付けすれば問題ないよ。水着もある、ビーチパラソルもある、サーフボードもある。ちょっと敵の数は多いけど……」
まだ、夏を楽しむのには遅くない。リディアの目がきらりと輝いた。もとよりポジティブな性質なのだ。
『きっちり倒して、遊びましょー!』
「バカンスに来てた筈だが」
『筈よね』
荒木 拓海(aa1049)とメリッサ インガルズ(aa1049hero001)は、サメに埋め尽くされたビーチを眺める。まるで冗談みたいな光景ではあるが、放っておくわけにもいくまい。
「被害が出る前に倒そう」
荒木はきりとした表情で、どこからか手に入れたマグロを持ち上げる。
『当然ね、拓海ファイト』
メリッサは応援しつつも、心なしか距離を取った。
「打ち返せ、渚の剛速球……じゃなくて鮫」
「鮫型……ですか」
晴海 嘉久也(aa0780)とエスティア ヘレスティス(aa0780hero001)は、階上にひしめく従魔たちを眺める。一見しておっとりした見かけとは裏腹に、エスティアは高度な戦闘技術を持つ。
(それにしても、今回は数が多いですから……水中戦必至の上で、これがどう出るか)
久しぶりの海だ。
心してかかろうと、二人は目を見かわす。
「サメよ! サメを倒すのよ!」
びし、と海上を指し示す雪室 チルル(aa5177)の気迫に、スネグラチカ(aa5177hero001)は不思議そうな顔をする。
『いや、確かに今回の目的はサメだけど、何でそんなに気合が入っているの?』
「それはもちろんフカヒレよ! 知ってる? フカヒレってサメのヒレから取れるのよ!」
『うん』
「つまりここでフカヒレをたくさん集めればお金持ちになれるし、お金持ちになれば装備強化もやりたい放題でさいきょーになれるのよ!」
『それって取らぬ狸の皮算用じゃ……』
「ん? なんか言った?」
『い、いや、全然……』
とにかく、サメを倒すことは今回のミッションだ。
「平穏なビーチを恐怖のどん底に変えたことは許さん」
見るものが見れば、東江 刀護(aa3503)が相当な武術の使い手であることがわかるだろう。東江は琉球古武術を使いこなす。
『サメって食えるの?』
「種類によっては身肉をすりつぶせばカマボコやはんぺんとして食えるし、ヒレは中華料理の食材だ」
なによりも、フカヒレは高級食材だ。それを聞いた大和 那智(aa3503hero002)は目を輝かせる。
たくさんとれたら、チルルにも分けてやろうか。なんたって、サメは掃いて捨てるほどいるのだ――。
避難を呼びかける緊急放送の音声が、突如として止んだ。キイイン、というハウリングのあと、フィー(aa4205)の大音声が響き渡る。
「こちらサメ殴りセンター! 貴様ら軟骨野郎を殴りに来た!」
黒いもや――ヒルフェ(aa4205hero001)が面白そうに揺れ、フィーと共鳴を果たした。髪の毛は銀に染まり、目は赤くなる。
反撃開始だ。
言葉はわかっていないだろうが、サメは抗議するように歯を鳴らす。
●進撃
フィーの着たホルタ―ネックビキニに、波しぶきが散った。パァン、砕くような一撃が、サメの鼻面をたたきつける。
拳にメリケンサック。頭に麦わら帽子。首に下げたゴーグルといったフィーの格好は、かの凄女リスペクトである。
襲い来るシュモクザメに、フィーは思い切りパンチをお見舞いする。
「ハレルヤッ!」
ドゴォ。抉りこむ右拳が、サメの鼻面を捉えた。別にキリスト教徒ではなく何かの宗教の信者ですらない。
しかし、そんなものはなくても威力は十分だった。
(サメは鼻が弱点なのは常識である、イイネ?)
「いやー、やっぱ水辺で水着の戦闘つったらこれですよなあ」
フィーはぶらぶらと手首を振る。
『オ前今日フザケスギジャネ?』
「別に構わねえでしょーよ、敵も大した事ねえんですし」
『マァ数ダケハ居ルガナ、油断ハルスナヨ』
じり、じりと後退するバイオシュモクザメの一体が群れからはぐれたのをきっかけに、フィーはゴーグルを装備して水中へと飛び込んだ。獲物を狙い来るバイオシュモクザメの群れに向かって、怒涛乱舞を放つ。
シュモクザメの群れの半分と、おこぼれにあずかろうとしていたホオジロザメが海の藻屑と化した。かろうじて逃げるイタチザメをフィーは追わない。水中では敵の方に優位がある。狙いは、孤立したサメだ。
「はい右! 左! 右! と見せかけて左!」
一気呵成がサメを水中で”ひっくり返す”。サメは、じたばたとあがくほかはなかった。
『タノシソウダナー』
ヒルフェは棒読み気味に感想を述べた。
●Shark-Panching
(一般的にはサメは何種類も存在し、未だに見つかっていない種も存在する)
モノローグのごとく、三傘の言葉が戸村の脳裏にリフレインする。
(しかし、そんな事はどうでもいい)
共鳴を果たし剛腕と化したこぶしを、三傘は惜しげもなく振るう。
目の前のサメに、攻撃を定める。
バイオシュモクザメか? バイオホオジロザメか? それともイタチザメ?
いや。
(シャークパンチャーのサメの分け方は二種類……実質一種類である、すなわち……殴れるサメか殴れないサメか)
思い切りの殴打を食らって、サメは飛び散る。一匹のバイオホオジロザメが、牙を剥き方向を変える。
高く飛び上がったせいで、拳は空ぶったかに見えた。
(何? 殴れないサメが居る?)
ふ、と笑みがこぼれる。
(それは君の鍛錬が不足して居るからだ。つまりサメは分ける必要がない)
そう、なぜならば。
(サメには殴れるサメ一種類しかいないのだ)
殴れないなら、やりかたを変えればいい。憎きあんにゃろうの顔を思いながら、サメの進行方向に向かって拳を突き出す。勢いよく飛び込んできたサメの腹を捉える。
鋭い打撃音がした。
しん、と静まり返る海。
「こうして度重なる鍛錬を経て我々は強くなってきたんだ」
三傘は共鳴した相棒に呼びかける。
「そうだろう? トムくん?」
『普通にマナ貰って強くなってますけど……』
三傘はぐ、とこぶしを握り締め、再びのパンチに備えた。
「サ、サメパンマンだ……」
避難していた住民が、ぼそりとつぶやいた。
●浜を駆けるマグロ
荒木は、ロープを使って腰にマグロを括り付けていた。これでサメをおびき寄せる作戦だ。
「さぁ来い! っと、海辺は女性の方が絵になるぞ」
共鳴の主体が荒木からメリッサへと変わり、すらりとした女性の姿となる。
『えっ、マグロを引く時点でお断り!』
メリッサの姿は再び消え、荒木が現れる。
「いや、遠慮せず」
『ちょっ!』
再び、メリッサが現れる。
そんなことをしている間に、びたんびたんと跳ね回るマグロに向かってサメが猛然と追ってくる。陸地ぎりぎりで乗り上げるようなありさまだ。
「あ、危な……」
サメの一匹が、牙を剥きメリッサに飛びついた。
メリッサのすれすれを、サメの牙がかすめる。
『!』
とっさに避けるメリッサ。はらり、と水着が落ちた。
『……サービスショットとは聞いてないわ』
メリッサは、荒木のカラフルなサバイバルキットから包帯を取り出し、胸にサラシを巻いて雄々しく立ち上がった。
フリーガーファウストG3のロケット弾の連射が、サメを襲う。だが、サメへのダメージは小さい。
(……効かぬ?)
ならば、これはどうか。不要となったマグロを投げつけ、サメが口を開けたところで鮫の口に銃身をねじ込む。
暴力的な爆発が起こり、サメの破片がシャワーのように降り注ぐ。これなら、もうマグロは不要だろう。
「そこまで積極的に誘わなくても」
『なら交代して』
ふつふつと怒りが湧き上がってくる。その怒りの余波を食らって、もう一匹がロケット砲の犠牲となった。
●恐怖、バイオサメ!
(この音楽は聞くだけで怖い……)
(ホラー映画っぽくていいじゃん)
那智がホラー映画のテーマ曲を口ずさみながら、サメへと接近する。
東江はこの曲がおどろおどろしく聞こえるようだが、大和はどこ吹く風である。
夏の空に溶けるような青い髪をなびかせ、アサルトユニットを装着して海上を駆ける。標的は、数の多いバイオホオジロザメだ。
(数が多けりゃ減らすまで!)
ジャンプするホオジロザメが、牙を剥いて東江に襲い掛かる。しかし、サメの攻撃は当たらなかった。
牙はむなしく空を切り、ぼちゃりと海に落下する。
「……あれ」
その様子を見て、しばし沈黙する東江。無論、恐怖におののいているわけではなかった。
「ホオジロザメってデカくなかったっけ? こいつらちっこい!」
サメ映画で見たようなものとは違う。強い敵と戦えるかと思えば、あまりの期待外れだ。
(ムカつく!)
水上に出てきところを、八つ当たりのように攻撃する。
(恐怖音楽が聞こえるような……)
波間に見える奴の背ビレが近づけば、妙な旋律が聞こえるような気がする。果たしてその恐怖は、エージェントたちにとってのものなのか、サメにとってのものなのか。
敵陣で前衛を務める東江と対照的に、ミツルギはサメを浜辺に追い込むように移動する。
肩まで伸びた髪を後頭部でゆるくまとめたシニヨンが揺れる。今回の共鳴はミツルギが主体だ。ミツルギは膝上までの丈の紫の朝顔柄の甚平を小粋に着こなし、どこか涼し気に海を行く。
群れを離れたバイオホオジロザメが、リベンジとばかりに口を開けた。驚くべきことに、なんと、ミツルギはマグロを構えている。
いや、それはマグロではない。AGWの自由な発想が生み出した、双剣『カジキ/マグロ』だ。
『この日のために鍛えし双剣……イノセンスブレイドで私が真の性能を引き出す!』
「ここでかい!」
マグロの死んだ目に、生き生きとした光が宿る。
まるで生きているかのような、ずっしりとした重み。
カウンターで斬ると書いて殴るべく構える。鋭い歯の並ぶ大口を避けるよう、身の下に潜り込んで一撃。
固い打撃音がした。
マグロがサメに勝利した、歴史的瞬間だった。
「今から範囲攻撃するぞー」
東江の合図に、ミツルギが了承の意を示し、ぐるりと進路を変える。
「食らえ!」
サメの群れに身を躍らせて、東江は武器を召還する。現れた武器は、氷の塊。いや、違う。
ハイパークールタオル「町中商店街」だ。
「冷凍ザメにしてやんよ! その後、1匹残らず粉々に砕いてやる!」
東江の合図で、ハイパークールタオルがつららのごとくサメに降り注いだ。バイオホオジロザメと、はぐれたバイオシュモクザメを一度に屠った。
嵐が止んだ後、サメが海にぷかりと浮かぶ。
大量のサメをいなしながら、ミツルギは浜辺にも目を配る。これは果たして偶然か、それとも――。
気が付けば、サメに囲まれている。フラグメンツエスカッションで守りを固め、合図する。続けざまのウェポンズレイン。大量の武器の雨が、海をサメの血に染め上げた。
●アフロディーテ
エスティアと共鳴を果たした晴海は、ぎらつく夏の太陽のように鋭い眼光をしていた。圧倒的な存在感が、嫌が応にも衆目を集める。
アサルトユニットを装着した晴海はぐいと傾斜姿勢を取り、浜辺ぎりぎりを走行する。
ちらりと仲間を見れば、同じく月鏡が敵陣へ挑もうとしていた。
『……ユリナ、ヴァニル騎士戦技はあらゆる戦場の地形を想定している。今まで教えた技術、存分に発揮できるように私がサポートする』
「分かりました。アフロディーテの性能テストも兼ね、美しく躍動感のある動きを追及します」
ラシルがそこにいる。それだけで心は落ち着く。判断を見誤ろうはずもない。
「行くぞ!」
晴海は食らいつかんとジャンプするバイオホオジロザメに、返す刃で「NAGATO」を振るう。
巨大な剣は、高度なライヴスのコントロールにより片手に収まっていた。
続けて飛びついてきたサメもろともに両断する。
サメがおののき、攻撃をためらった一瞬をついて、ぐるりと向きを変え群れの先頭に回り込む。
すれ違いざまにフルスイングで振るわれるNAGATO。飛びつかんと向きを変えるサメが、真っ二つに両断された。
持ち返る拍子に一瞬だけ手を離れたNAGATOをストラップで引き寄せ、範囲内の敵に攻撃を叩き込む。
戦場に躍り出た月鏡はラシルと結びつくライヴスを強く意識し、リンクレートを上昇させる。アフロディーテのAI『カリテス』が、水しぶきすら計算して進路を導く。守るべき誓い――ライヴスの輝きが、敵の注意を集めた。
ひとたび共鳴すれば、揺れまくる大きな胸が強調される。はじける海水を浴び、キラキラと輝く。
「は、恥じらいまで駆動エネルギーにするなんて……グロリア社、余計なカスタマイズをっ!」
『マジカル♪ドレスと言い、社の技術者にその手を好む者がいるのは間違いないな……』
月鏡の装備するアフロディーテは、溢れる色香と恥じらいを駆動用ライヴスと変換する。月鏡の恥じらいを代弁するように、ライヴスの上昇が感じられる。
『陽動法陣、海域に展開!』
「接近戦で連携攻撃できるよう引き込みます!」
水上を駆り、晴海の逆からぐるぐると渦巻くように移動する。
「サーフボード先端にライヴスを集中、敵集団へ突撃します!」
『仇なす従魔を蹴散らせ、豊穣神の船! スキーズブラズニル!!』
襲い来る敵をサーフボードでいなし、その上に飛び乗る。
『ユリナ、波に乗り、一気に飛び出したサメに近づけ!』
「はい!」
月鏡は雷神槍「ユピテル」を握る。
「オリンピックのアイススケート選手を意識して……! 今の私ならできる!」
『今だ! トリプルアクセルから槍を突き出せ、ユリナ!』
カリテスの指示する軌道に導かれ、月鏡は華麗に舞った。見事な3回転、そして半。襲い来るサメを弾き飛ばす雷光が走った。ふわり、海の上に着地する。
●遊戯
サメのひしめく海をものともせず、赤と黒のドレスを翻したリーゼロッテが戦場を疾駆する。ゲシュペンストで足場を確保し、浜辺も海もなく、小柄で華奢で痩身細身な10歳少女には握ることすらできないだろう、本体たる魔剣を片手で軽々と振り回す。
倒錯的なまでに異様な光景。
どこか美しく、跪きたくもなる狂気。
敵の群れを駆け抜け、手当たり次第にサメを斬る。
シュモクザメの群れを一瞥すると、リーゼロッテは「闇夜の血華」を呼び出した。ウェポンズレイン。群れが一気に掻き消えた。
散った群れの残党が、破れかぶれに体当たりしてきた。刃を盾に防御する。
意識の底で狒村がうめいた、……かに思えたが、リーゼロッテの耳には届かなかった。痛覚や疲労感は狒村が引き受ける。
ホオジロザメは背後から飛び出した。ジャンプしてきた所に魔剣の振りを合わせ迎撃気味に斬り倒す。飛び散る血しぶきをいかにして派手にするか考え、攻撃をする。
無邪気で幼いリーゼにとっては、この戦闘はゲームのようなものだ。
やってきたバイオイタチザメに、リーゼロッテは狂気を感じさせる丸く大きな赤い瞳を輝かせた。
「ふふふふ、大きくて斬り応えがありそうなの……!」
魔剣の化身として肉を斬る感触や血のしたたる感覚はリーゼロッテにとって快感だ。
恍惚とした表情で、水中に銛の如く魔剣を突き刺す。インタラプトシールドが、別のサメからの攻撃の勢いを弱める。
サメの数が多くなってきた。リーゼロッテは思う。楽しそうだ。
構わず薙ぎ払う。タイミングに合わせ、襲い来るサメを貫き、斬り上げて別のサメにぶつけた。
ふと、砂浜の遠くに避難している人間の姿が見えた。リーゼロッテが思うのは、主たる第一英雄だ。
「始祖様が戻ってくるまでにサメ全部殺したら、リーゼ褒めて貰えるかな……?」
剣を振るう手に力がこもった。
●潜入作戦
「我々はここにジョーズのきぐるみを用意した」
『しましたー!』
志賀谷とリディアがじゃん、と取り出したるはジョーズのきぐるみ。上半身は完璧なサメ、下半身は人間といった代物だ。
少しでも違和感をぬぐうために、プロ仕様幽霊ブーツで明細を施す。
「これを用いてシュモクザメの群れにこっそり接近し撃破する」
『……ばれないですか?』
「さて、どうなるかやってみよう!」
リンクコントロールが、ぎゅんとリンクレートを高める。
「あんな手があったなんて……!」
雪室は歯噛みする。
「あたいたちも着ぐるみよ!」
『さすがに急には……』
それにしてもぴったりなものを持っていたものだ。
『で、あたしたちは具体的にどうやって取りに行くの?』
スネグラチカの問いに、雪室はびし、っと胸を張る。
「もちろん泳いで取りに行くのよ。決まってんじゃん」
あっけらかんとそう言ってのけるが、雪室も無策ではなかった。ビーチで手に入れたダイビング用の酸素ボンベを用意していたのだ。
「で、まずは海岸周辺のサメを掃討して、ある程度海岸の安全が確保できたら、アサルトユニットで海上を移動して、敵がいる位置を確認して水中に潜る形ね」
『何も考えていないと思ったけど、割りと考えているんだね……』
「失礼な! あたいだって考える時は考えるのよ!」
彼女たちの狙いはシュモクザメ。範囲攻撃、といきたいところではあるが、それではヒレが無事では済まないかもしれない。
ウルスラグナで、一体一体をおびき寄せて退治することにする。
しかし、なかなか群れから離れてくれない。ホオジロザメが邪魔だ。
と、その時。あの着ぐるみがひょこひょことサメの群れにやっていくではないか。サメは、こちらに向かってウィンクした……ような気がした。
攻撃に夢中になっていたホオジロザメ。突如として一体が海に浮かんだ。潜入していた志賀谷が、ナイフを振るったのだ。
いきり立つサメの攻撃をかわすように、深く深く潜ると、ライヴスブローで水上方向に追い立てるように攻撃し、水上で待ち構える仲間のほうに追い込んでいく。
『おお、やった』
「まだよ! もっとたくさん集めるの!」
雪室はヒレを切り取り、網に放りこむ。攻撃をしかけてくるサメをリフレックスではじき返しながら、後退しつつもヒレを狙う。
●サメ、サメ、そしてサメ
「ご案内でございますよっと」
フィーのメーレーブロウが、サメを乱戦に引きずり込み、猛然とたけりくるサメの牙を折る。
メリッサが装着するALBの調子がおかしい。海上で、ゆっくりと停止した。
『あ、あれ?』
ピンチがピンチを呼び寄せる。
右と左から、同時にサメが迫り来る。メリッサは、活路を上に見出した。
跳躍し、ぶつかり合うサメの鼻を蹴り上げ、見事にサメに乗った。サメを足場に、もう一方のサメへと飛び乗る。ロケット砲を発射し、反動で安全な海の上へ。
『ゲホッ、もーっ鬱陶しいっ!』
メリッサは、シンクロのごとく水上へ再び飛び出した。
激戦による激しい水柱と飛沫が視界を妨げる。
『見えないじゃない!』
がんばれー、と、荒木はメリッサに声援を送る。……共鳴の中から。
(ここは、そう、頼るのは視覚ではなく……)
メリッサは目を閉じ、水音と勘で距離を測る。サメの迫ってくる気配。音。
ここだ。
『射程2! 離れて!』
デストロイヤー。破壊者の名を持つ槍が、思い切りの大爆発を起こす。
アサルトユニットを使用した三傘が、水上でホオジロザメを狙う。とびかかるサメの勢いを利用してのカウンター。イタチザメには、迷わず毒刃を叩き込む。
(数が多すぎて避けられない……ならば)
ジェミニストライクで作り出した分身が、同時にサメを殴る。
パンチャーは回避より攻撃を優先するのだ。
『店長ってカメラマンでしたよね? パンチャーじゃないですよね?』
「サメパンマーン!」
「サメパンマンー! こっち向いてー!」
なぜか浜辺から声援が飛んでいる。
「期待裏切りやがって!」
東江の黒旋風鉄牛が、ホオジロザメを見る影もなくボコ殴りにする。
「恐怖映画みたいにババーン! と出てきて襲いやがれ!」
ババーン、とサメは海上に倒れた。
アサルトユニットを脱ぎ捨てたミツルギが、海へと飛び込み、アイスキャンディーナイフで『殴る』。冗談のような外見の武器は、冗談ではない威力を持っている。たまらず、イタチザメは水面に飛び出し、東江の攻撃の餌食となった。
エージェントたちの圧倒的な強さに、サメたちはじわじわと戦意をなくしていった。
後退するイタチザメに、晴海は冷静に浦島のつりざおを振りぬいた。それは釣りではなく、もはや引っかけて引き寄せるというような使用方法だ。海から引きはがされたサメを、晴海は切り裂いた。
一匹一匹ではらちが明かない。
「去年ラシルから教わった水泳技術、披露します!」
ユピテルを手に、月鏡が海へと飛び込む。
「潜るか……」
晴海は足ヒレに履き替え、ブラッディランスに持ち替えた。
サイバーパーツは比較的軽量で浸水の心配が無いもの、といっても消耗は激しくなるので短期決戦になる。
投げて使えば、威力が落ちる。サメの口内にめがけて突く。
優勢とはいえ、数が数だ。慎重に包囲網を狭めていく。
「ここまでです」
岩場に追い詰めたサメに、月鏡が一閃を構える。
『雷神槍の雷で纏めて焼き鮫にしてくれる!』
「力の違い、知りなさい! インディグネイト・アーク!」
焼き滅ぼすような大雷鳴。
●夏と言ったらBBQだよね
戻ってくる目当ての人物を見かけ、リーゼロッテが駆けていく。
「すまんな。サメ? ああ、持って行って構わない」
使い道があるのか、と不思議そうな顔をしていた。
サメを退治し終えると、天気がすっかり晴れ渡っていた。
「メンテナンスで日が暮れそうですね」
「きっとすぐに乾きますよ」
晴海とエスティアがシャワーで装備品の手入れをする。
着ぐるみを脱ぎ、共鳴を解いた志賀谷は、ビーチパラソルを浜辺に突き立てる。
「よし、これで遊べるね」
フラワービキニの花々が京子を品よく飾っている。一方でリディアのミズクラゲは、少しばかり大人びた印象も与える。
「せっかくサーフボード持ってるから、リディアやってみる?」
『はい! やったことはありませんけど、チャレンジしてみます!』
「リディアの運動能力なら楽勝かも!」
『と、とと、こうですか?』
「いい感じいい感じ!」
キャッキャとはしゃぐ二人を見て、ビーチの客が少しずつ戻ってきた。
両手に目いっぱいヒレを抱えて戻ってきた大和は、ホオジロザメのヒレは食用に向かないことを知り愕然とする。
『ヒレ、食えるんじゃなかったのかよー』
「食えない種類もあったようだ……すまん」
お詫びに中華料理店でフカヒレ食わせてやる、と那智を宥める。
『ってわけで、やろうと思ってたんだけど……』
雪室はニコニコ顔である。
「問題ないわ! フカヒレはフカヒレだもの! 工場とかに持っていけばきっと高く買い取ってくれるはずよ!」
大和の持ってきたヒレは、とても状態の良いものだ。ヒレを傷つけないように戦っていたのが分かる。
『……ところで思ったんだけど、愚神のフカヒレって食べられるの?』
「多分大丈夫じゃない? サメのヒレって言い張ればいけるいける」
「あの、すみませんが」
HOPEの職員が、二人を呼び止める。従魔の死体は、サンプルとして摂取するという。
「そ、そんな……!」
「はー暴れた暴れた。さて帰りますかいね」
踵を返すフィーを、ヒルフェが呼び止める。
『アレニ参加シナイノカ』
「ん? 別に興味ねえですし、やりたい奴等にやらせときゃいいでしょーよ」
知り合いがいる訳でもなし、交流会とやらには興味がない。
それに……わざわざサメ肉を食わなければならない程餓えている訳でもない。
「バーべキュー場、使っていいって!」
「鮫パーティ?」
『料理するんですか? わたしも手伝います!』
荒木の呼びかけに、リディアがすかさず名乗りを上げる。
「……どこから出てきたかわからない鮫を食べるのはちょっと気になるけど、まあいいか!」
そう、イタチザメとシュモクザメは食用にできるのだ。……たぶん。
どうせ、サンプルといってもすべてというわけでもないだろう。それを聞いて、雪村はすぐに回復した。
『おお、食べられるんだな』
大和は嬉しそうだ。荒木が鮮度を見分けて、てきぱきと手分け作業をするのを手伝う。
器用にマグロを解体するさなか、メリッサは材料を買出しに行く。
瞬く間にムニエル・アクアパッツァ・包み焼き、そして月鏡の作った照り焼きが並ぶ。
ちょーだい、と手を伸ばした雪村に、イタチザメを渡した。
雪室はヒレにぴょんぴょんと喜んで、それから少し行ってから引き返し、「ありがとう!」と、素早く料理も持って行った。
料理の味は野性味があふれているものだったが、それ以上に調理法が良かったのか、さしたる違和感もなく食べられた。通好みの味、というやつかもしれない。
「レモンのさわやかさがよく合いますね」
『悪くないな』
飯盒のご飯をよそい、照り焼きにみずみずしいレモンを添える。ティーセットを用意すれば、お茶会が始まる。
嬉しそうに交流会に参加する市民を、荒木は優し気な顔で見ている。
「怖い思い出を別の形に塗り替えて欲しいな」
『被害者は出てないから、大丈夫と思いたいわね』
「今の世界状況じゃ一般市民は慣れ生きてくしかないものな……」
脅威だったサメは、今や腹を満たしている。
「従魔と人って弱肉強食だな……」
『ええ……当然、人同士も同じよね……』
剣呑な雰囲気に、荒木はぎくりと身をすくませる。戦闘中のメリッサの怒りが頭をよぎる。
「いや、たまにリサも暴れた……イタ、タッ……グァッ」
『ね?』
「は、ハイソウデス……!」
とてもシアワセそうな光景だ。
『サメを殴っている時のほうが楽しかった……』
何もいなくなった海を眺め、ニノマエはどこか寂しそうにつぶやいた。ミツルギはぽんと肩をたたく。
「剣としてのナントカってのは忘れて、海水浴を楽しめばいっ」
『もっとサメを殴らせろ! 私にサメを!』
「俺を殴るなサメじゃねぇって!」
●そして……。
――皆さんにとってサメとは?
ポゥン。どこかで聞いたような、プロっぽいサウンドとBGMが流れる。
次に映し出されるのは、各々にインタビューして回る、三傘の姿。ジャーナリストとしての腕前なのか、なぜかやたらと出来がいい。
「フカヒレ」「期待外れ」「どうでもいい」といったような感想から、「殴るもの」とぐっとこぶしを持ち上げる者もいる。
それでいいのだ。
では、彼にとってのサメ殴りとは?
「生き甲斐……ですかね」
カメラに向かって、三傘は答えた。
「正直正義の為とかじゃないんですよ」
「定めと言うか体が勝手に……と言うか」
「勝手に体が動いて勝手に達成感を得るって言うか」
『なんなんですかこれ』
(店長の意図を)ずっと探していた (店長の)、理想の自分を。
報告書を視聴したHOPEの職員らは、神妙な気持ちでそっとテープを置いた。
「俺にも……できるのかな?」
1人がぼそりとつぶやいた。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
---|