本部

偽物の空

鳴海

形態
ショートEX
難易度
普通
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
13人 / 4~15人
英雄
13人 / 0~15人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/07/30 21:53

掲示板

オープニング

●まどろみ夢見るあの日の空を。

「私、死ぬんだね」
 そんな風に思ってみても実感が全くわかなかった。
 ああ、なんで、なんでこんなことになってしまったのだろう。
 私は何か間違ったことをしただろうか、ただ他の人と同じように生きていただけなのに。私は、私は……
「ああ、神様……」
 どうか、まだ、声が届くなら。
 最後に恨み言を言わせてください。
「どうせなら、もっと、行きやすい世界がよかったな」

 しかし地面は遠く、遠ざかる、空も遠ざかる。
 私はいったい、どこにむかって落ちてるの?

 その時梓は目を覚ました。
 バクバクと音を立てる心臓を押さえつけるように、うすい胸に手を当てる。
 頬に手を当てると汗。油のようにぬめるそれをシャツで拭うと、やっと冷静さを取り戻すことができた。
 あれは、いったい。あの光景は、いったい。
「私は、アネットと契約して。それで、アーネアを倒したはず」
 そうだ、あの時梓は死を決意しながらもドロップゾーンの中でアネットと出会い、また生きる決意をして。
「……私はあの時なんて言われて、契約を……」
 バラバラな記憶、当然だろう、あの時は生き残るだけで必死だった。記憶なんて残ってるはずがない。
「生きる? 私は確か死にたかったんじゃ……」
 覚えているのは温かい手。自分を落ち続ける空から救ってくれた。
「ちがう、落ちて行ったのは女の子で、私は助けられてそれを見ていて」
 梓は頭を抱えた、冷蔵庫の唸る音が妙にはっきりと聞こえる、深夜二時、現実が遠い。

「私はいったい、何を」

「私はどうやってあの後……いきてたの」

「私は、どうしてこんなところに、あいどるなんてやって」

 分からない、分からない、自分の人生のはずなのに、振り返ってみれば記憶が全く存在しない。
 断片的なものばかりで説得力が全くない。
 自分は自分の意思で生きていたのだろうか。
 それとも、それとも。

「君は永久の夢の中にある」

 部屋の端の暗闇が唐突に声をあげた。
 その男は銀色のローブをまとい、片手に本を抱えていた。
 梓はその存在を知っている。夢を司る愚神。まどろみ。
「愚神! 戦わないと、私は愚神と戦わないと。アネット……共鳴を」
 その時まどろみの抱えた本が光り輝く。
「そんな、どうして」
「いったろう? ここは、お前は夢の中。夢の中で私との共鳴を望めばそうなるのは必然」
「違う! 私が本当に共鳴したいのは、私の英雄。アネットで……」
 梓の脳裏によみがえる彼女。流れるような黒髪と、冷たいようで温かい微笑み。
 姉のような彼女。いつもそばにいてくれた。
 けれど、今は近くにその存在が感じられない。
「私はお前の記憶を漁らせてもらう、代わりに君には真実をあげよう。これは等価な交換だろう? お互いに抗える。強大な手のひら。その支配から」
「アネット……」
 突如、梓の寝室が爆ぜた。窓の向こうから白い強い光が降り注ぎ。気が付けば、梓は空を飛んでいた。
 落ちることはない、当然だろう、その背中には翼が生えているのだから。
「ああ、私そうか」
 梓はここで気が付いた。自分は、飛ばされていただけなんだと。
 背中に翼があるのなら、どこかに飛んで行けただろうけど。
 愚かな自分はただただ空を一方方向に漂うだけで。
「お願い。だれか、私を……」
 助けて。

 その言葉は風にかき消されて、君たちの耳に届くことはなかった。

● 討伐指令

「今回の討伐目標は愚神四体。そして邪英化してしまった梓の救出よ」
 そうブリーフィングルームに終結した君たちを前に遙華は告げる。
「今回展開されたドロップゾーンは複雑みたい、四つの空間がまとまって一つのゾーンになっているみたいで、しかもその空間を行き来する方法は、扉とか物理的なものじゃなくてイメージっていう……」
 よくわからない構造よね。そう遙華は溜息をついた。
「幸い。ゾーンについての情報はかなり割れてるから、改めてみんなには作戦を立ててほしいわ」
 ちなみに、ゾーンに関しての情報がもたらされた理由について遙華はこう語った。
「それが、組織された討伐部隊は全員がやられてしまったの。空を飛んでいるということがうまくイメージできなくて」
 遙華は苦々しげに言葉を続ける。
「科学の通用しない、創造力だけで回る夢の世界。ちょっと私には向いてない世界ね。でもここにいるみんななら、創造力だけで空を飛べるんじゃないかしら」
 そして遙華は皆に資料を配ると、言葉を締めくくる。
「梓を頼んだわよ。彼女を助けた後、身柄はH.O.P.E.で抑えましょう。変な胸騒ぎがするの、梓を放っておくと取り返しのつかない事態になりかねないような」




● 翼を広げ。
 今回の戦いはまた空であるために皆さんに飛行装置を貸し出します。ただその飛行装置はまどろみの管理するドロップゾーンでは満足に機能しません。
 当然でしょう、まどろみの真骨頂は、意思の力で物理法則を欺くこと。
 それは皆さん側にもいえます。グロリア社の翼は機能を無効化されますが。
 皆さんの意思の力で空を飛ぶことができます。
 空を飛ぶと言ってもこの場合翼の形である必要はありません。
 ただし、空を飛び続けるためにはそれを強く意識しないといけません。
 ダメージや強い心理的ショックで飛べなくなる可能性はありますが、心が強い皆さんにとってはあまり関係ない話でしょうか。
 

●イメージ補足
 今回は全体的にイメージする。というアクションが重要になります。
 イメージとはその言葉通りで、想像することですが、ただその場面を思い描こうとしても難しいでしょう。
 なので、空にまつわるエピソードなどを介して光景を思い描くようにしてみるといいでしょう。
 誰かと一緒に見あげた空、その色。
 誰かと飛んだ空。その時の思い出。
 空とはしばしば未来の象徴として描かれます。
 その果てに進むためには片羽ではいけないのです。
 
● 愚神『アーネア』
 アーネアは鷹のような翼をもつ女性型の愚神です。かぎづめによる近接攻撃と。暴風による遠距離攻撃を行います。
 暴風を受けると強制的に遠くまで移動させられてしまうので気を付けてください。
 また、その戦闘力は下がってしまっているようです。

解説


目標 愚神四体を討伐し、梓を救出する。


●スフィアについて
 梓を覆うスフィアは音と攻撃を遮断します。
 この中に梓はずっとこもっており、このスフィアを弱めるためには攻撃を加えるか、アーネアを倒すか、彼女を目覚めさせないといけません。
 彼女を目覚めさせるのは彼女の記憶に訴えかければよいのです。
 彼女は今、自分を構成する記憶をぐちゃぐちゃにかき回されてしまっています。なので自分が自分である証明として、他人との記憶の共有を求めているのです。
 


● 四つの空。愚神。

 アーネアは四つある空の一つ一つに配置されていて空を跨ぐことはないようです。
 さらに四つの空はそれぞれ。それぞれの空間をイメージすることで瞬間移動することができます。
 この瞬間移動の機能を利用して攻撃できるとカッコいいかもですね。

《朝焼け》
 太陽が昇りつつある世界です。水気に満ちた空気や、白い光。とても平均的な世界と言えるでしょう
 またここに梓が存在しています。
 アーネアはスフィアを積極的に狙っていくようです。


《夕暮れ》
 黄昏時の赤い光はひどく対象を見づらくします。明るいのに目の前にいる人の顔も見えない。誰ぞ彼時。
 この世界では、味方を誤射しやすいので注意です、特に交友関係のない味方だったり、面識の薄い人は間違えて攻撃しやすいです。

《宵闇》
 星がわずかに浮かぶだけの空で、とても暗いです。そもそも命中力が高いか、暗闇対策ができないリンカーにとっては戦うのも辛いでしょう。

《双陽》
 太陽が上下に存在する世界です。能力的影響は受けないのですが、その太陽光は皆さんをじりじりと焼くでしょう。
 さらにこの空間では愚神が強化されるようです。
 継続ダメージと強い愚神を加味して……戦闘に自身のあるリンカーが担当するべきでしょうか。



リプレイ

プロローグ
 悲鳴が遠く尾を引いて、空に滲むように広がった。
 その光景は青く晴れ渡るこの空に対して似つかわしくなく。
 ただただ悲痛で、その響きを、杏子も、杏奈も見上げて聞いているしかなかったのだ。
 少なくとも、今はまだ。
「……クルシェちゃんが言っていた通りになってしまったね」
 杏子がそう一人心地に告げると、その手を握って杏奈は真っ直ぐ梓に視線を送る。
 空にいだかれた少女。空に捉えられた少女。このまま彼女は空に落ちて消えてしまうのだろうか。
 その光景を思うと、杏奈は耐え切れなかった。決してわがままを言わない少女だったが、今は素直に母の力を借りようと思った。
「お母さん。力を貸して」
 その言葉に小さく杏子は頷くともちろんだと告げた。
「梓ちゃんを邪英化させるなんて……。まどろみ、許すまじ!!」
 次いで杏奈の体が空に舞い上がる。その手に霊力で編んだ箒を召喚。愚神を見据える。
――杏奈、いつに無く燃えてるわね。
 その圧に押されて『ルナ(aa3447hero001)』は茫然とつぶやいた。
――杏子は行けるの?
 ルナがそう『杏子(aa4344)』に問いかけると、それに頷いたのは杏子ではなく『テトラ(aa4344hero001)』。
――空を飛ぶイメージなど、私にとっては造作もないな。今回は私が出るぞ。
「いいだろう、ちゃんと役目を果たすんだよ」
 そう杏子は意識を落すと、次いで杏子の体を闇より暗い黒が包む。
 それは卵のように杏子を包み、次いで、その殻を引き裂くように伸び上がったのは異形の翼。テトラが勢いに任せて空へと飛び立つ。
 それに習うようにリンカーたちが次々と飛び去った。
 空をかけるリンカーたちは十人十色の翼を伴っている。一つとして同じものはない。それこそ未来へとたどり着くべき翼。
 これから未来を奪い去ろうとする愚神をこの翼で引き裂く予定だ。
「飛ぶイメージですか…………」
 まだ空飛べぬ『卸 蘿蔔(aa0405)』は不安げに頷いた、突如機能を停止してしまった翼。それをパージして空に抱かれる。
――頭に竹とんぼ刺すか?
 悪戯っぽく告げたのは『レオンハルト(aa0405hero001)』。
「ややっ、絶対痛いですし取れたら落ちそうです! 一応イメージはあるのです…………私も、ああなりたいって」
 突如蘿蔔の体が落下を止める。
 その隣を『イリス・レイバルド(aa0124)』が駆け抜けていった。
 いつもはイミテーションに過ぎない翼それが今は、力強く羽ばたきそして、天に金色の軌跡を残す。
「梓さん。アネットさんのパートナーの……」
 イリスは噛みしめるように告げる。
――記憶の混濁……人間関係も合わせてどうにもまどろみの関与を想像してしまうね。
 『アイリス(aa0124hero001)』がいつもと変わらず、あっけらかんと答えた。
「難しいというか、ややこしいというか……それでも助けてあげたい」
――では頑張りたまえ。私はそのために力を貸そう。
 イリスは迫るアーネアを真っ向に捉えて高らかに叫んだ。
「今までが突然崩れたって、未来の希望がすべて崩れるわけじゃない」
 イリスの加速はすさまじく、夜を朝を、夕暮れを超えて世界に光を振りまいた。
「過去のことは分からないけど、これからの道しるべくらいなら、きっとできるから」
 イリスは手を伸ばす。空に抱かれた少女、梓に。
「だから、まずは今を守り抜く! これからのために、これまでのために」
 そのイリスを叩き落とそうとアーネアがその翼から烈風を放った。
 イリスはそれを空間跳躍にて回避。力強く夜の闇を飛ぶ。
 それとは対照的に『海神 藍(aa2518)』は優美に空を舞っていた。
「……飛ぶと考えると私たちには厳しいだろうね、人魚に翼はない」
――え!? ど、どうするんですか、兄さん!
 思わず『禮(aa2518hero001)』が声をあげた。それをなだめるように藍が告げる。
「大丈夫、禮なら飛ぶ必要はない、君は人魚だろう?」
 そう頭上の王冠が誇らしげに輝いた。記憶を辿る。
 夢やまどろみのドロップゾーンで幾度か垣間見た、禮の世界を。
 水面に揺れる空。黒い人魚の姿を。
「意思で飛べるんだ、物理法則なんて関係ないさ。この空を……”泳ぐ”!」
 その瞬間、藍は身を翻した。足をそろえて風を蹴る。身を翻して空に手を伸ばした。
 そうして飛び込んだのは別の空。リンカーたちは各々、自分の担当の空に散っていく。
 それは『麻生 遊夜(aa0452)』も同じで。
――……我ら、地を這い……空に憧れる、獣なれど……。
 遊夜はその背に鋼の翼を掲げ、梓のオーブの周りを旋回した。
 夢見る少女、その表情は苦悶に彩られている。
「文明の利器にて空を飛ぶこと幾星霜、我らに墜ちる空はなし!」
 そして遊夜は叫ぶ。
「今、悪夢を終わらせてやる、止処さん」
 スコープ越しに見つめた元凶は笑っていた。
 少女を苦しめ、ただただ笑っていた。


第一章 囚われの。

 空を引き裂く轟音。飛行機雲を連れて空を走るのは両だった。
「彼女の過去と未来の絆を繋ぎに行こうか…………メテオ1、エンゲージ!」
 それとは別に音圧を振りまいて、『天城 稜(aa0314)』の翼が熱を持つ。エンジンなんてないはずなのに、その翼はごうごうと音をたて、鳥人アーネアへと真っ直ぐ突っ込んでいった。
 突撃を警戒するアーネア、だが殺気を感じて身を翻す。今までアーネアの頭があった場所を、一派血の弾丸が通過していた。
「あー、外したか」
――ん、鳥……なかなか警戒心強い。
 『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』がお肉を前にした時のように浮ついた吐息を漏らしつつ、遊夜にそう告げる。
 遊夜は素早くロール。場所を変えた。
「……あのGを忘れるのは難しいだろう、おのれカグヤさんめ」 
 遊夜は覚えている、あの時の胃の中味さえ叩きだされそうな円運動。あの後ご飯が喉を通らなくなる程度に振り回してくれた戦闘機……その後部座席。
 だが、その経験が生きて、空を飛ぶイメージには困らない。
「このヴァイシュ・シュバルツは初だが……」
――……ん、補助ブースターや……アサルトユニットの、浮遊感に似てる……問題ない。
 その隣を並走するのは『世良 杏奈(aa3447)』。
 彼女は霊力で編んだ箒をまるでスケボーのようにのりこなし、アーネアの放つ風を避けた。
 そしてまた体制を立て直して逆さま状態からの爆撃。
 ここ朝焼けでは、敵をかいくぐりながら梓を助けなければならない。
 常に敵の動きには気をはっていないといけないのだ。
 杏奈は気合一発。さらに加速した。
「梓ちゃんに何の用よ! それにアーネア、貴方はとっくの昔に倒されてるじゃない! どうしてここに居るのよ!」
 杏奈は叫ぶ。その言葉に頷いたのは蘿蔔。
「確かにあの時倒したはずです。でも目の前にいるなら……」
 蘿蔔は首を振って雑念を振りほどいた。
「会うのは二度目だけど…………直接相手するのは初めてかな?」
 今でも忘れない。抜けるような空を自由に羽ばたいていたその姿。
 そしてアーネアなど振り切って一直線にオーブの元へ。
「今でもあの時の気持ち覚えてます…………私も梓さんと同じだったから、助けたくて」
 蘿蔔はオーブにふれる。少女の周囲は固い膜でおおわれている。あの時のような柔らかな体温は一切伝わってこない。
「助けにきたよ」
 助けてと、呼ぶ声が聞えた気がして蘿蔔はそうつぶやいた。
 その時である。回避に専念していたアーネアが怒り狂った声をあげる。
 オーブに触れられたことが好ましくなかったらしい。
 蘿蔔はそんな威嚇を繰り返すアーネアに銃口を向けた。
「梓ちゃんを」
「返してもらうよ!」
 そうアーネアにむけて上空から重量を利用し奇襲したのは『シエロ レミプリク(aa0575)』。
 重力加速度を味方につけて弾丸をその翼にめり込ませた。
――ほう、ああいう飛び方もあるのだね。
 対して下から迫ったのはイリス。
 盾によるタックル。弾き飛ばされたアーネアをさらにシエロが銃弾で射抜く。 
 たまらずアーネアは視線を持ち上げた。その横っ面を遊夜が銃弾で射抜いた。
「梓ちゃん! 助けに来たよ梓ちゃん!」
 勢いをうまく殺し切れず、手足をぶんぶんまわしながらシエロがオーブまでたどり着いた。
 やっとの思いで手をかけて梓の顔をシエロは覗き込む。
「あずさちゃああああああああ!」
 何の反応もない梓を見てパニックに陥るシエロ。そんなシエロを大丈夫ですよと蘿蔔がなだめる。
「息はしてます、眠らせられているだけだと思います。大丈夫です、まどろみは、眠っているリンカーに直接何かをしてきたことはありませんから」
 その言葉を受けて安堵のため息を漏らすシエロ。次いでシエロはキッとアーネアを睨んで高らかに告げる。
「今度は絶対墜ちない、だから!」
 その瞬間、シエロの背中に生えている翼が大きく成長した。骨格がさらに太く。肩に速射砲を装備し。腕にはシールド。
「うち、あの時より強くなったよ。今度は落ちないで守って見せるよ」
 シエロはずっと心残りだった。
 初めて梓に逢った時、梓を守って落ちてしまった。
 だがあれは、梓が悪いわけではない。
 自分が弱かっただけなのだ。
「今度は絶対墜ちねえ」
――大きい……これは…………!
 『ジスプ トゥルーパー(aa0575hero002)』は息を飲む。
 翼の骨格がぎらついた。その翼は梓の前身を覆うほどに大きく、力強い。
 彼女を救うため、護るために、もう落ちない。 
 これはあの日のリベンジ戦なのだ。
「止処さん、すぐに助けてやる、待ってろよ……」
 そして、彼女とつながりを持つ者はシエロ、蘿蔔だけではない。遊夜もアーネアを押しのけオーブに触れる。
「……むー!」
 遊夜は思い出していた。彼女の真っ赤に染まる頬だとか。戸惑いだとか、瞳の色だとか。
 一日、それもゲームの企画でデートしただけだったが。あれはあれでよい思い出だった。
「可愛かったぞ」
 そう遊夜が告げると、心なしか梓の頬が赤らんだ。
 ひょっとしたらデートの記憶が呼びさまされたのだろうか。甘味を頬張り、顔を赤くしたり、あの時の恥かしさや、夢のような心地を思い出したのかもしれない。
――……ん! 持ち場ここじゃない!
 浮気は許さない、そう直ちにユフォアリーヤに怒られた遊夜である。
 その表情に蘿蔔は、まだ梓がここにいることを確信した。
 早く愚神を倒して梓を救わなければ。そう胸に胸に刻んで蘿蔔は仲間たちを見あげた。
 杏奈と稜はつかず離れずアーネアと踊っている。
 その戦列にシエロも蘿蔔も加わった。
「だから、早く帰ってきて…………帰ってきてよう梓ちゃん!」
 そう全武装を展開。16式60mm携行型速射砲で狙い撃つ。
「とばすよ、ジスプくん!」
 その言葉にジスプは頷く。敬愛する主がこれほどまでに力強い意思を見せている。
 自分が手を貸さないわけにはいかなかった。
――はい! 任せてください、みんなで彼女を救いましょう。
 
 
   *   *


 空は四つある、朝焼け、夕暮れ、宵闇、双陽。
 戦いの場は無数であり、条件は複雑。
 そんな空のどこに相棒が向かうのか、それが気になってスネグラチカは『雪室 チルル(aa5177)』に問いかけた。
――で、今回は4ヶ所行き先があるみたいだけど、方針としては?
「簡単に言えば4ヶ所にそれぞれの人員が行く形ね。各エリアの担当が敵を排除、排除後に他の増援に向かう形ね」
 そうチルルは指をふりながらフフンと答えた。
――シンプルだけどそれが確実かな。で、あたし達はどこに行くの?
 ふむふむと状況を飲み込みながら『スネグラチカ(aa5177hero001)』は問いかけた。
「《双陽》に行くつもりよ。腕が鳴るわね!」
 そう飛んでみた空は異様な熱気に満ちていた。
「場所が場所だけに長期戦は無茶よ!ということで開幕からスキルをどんどん使って敵を攻撃するよ。当然前衛として行動する形でね」
 状況を的確に認識したチルルは視界にアーネアを見つける。
――時間がかかればかかるほどこっちが不利だしね。ただ、今回は空を飛んでの空中戦だし、勝手が違うことには気をつけたほうが良いね。
 そう告げて飛んだ二つの太陽ある世界は想像を絶する暑さに包まれている。
 アイスクリームもコーンから即座に滑り落ち、床に到着する前に蒸発してしまいそうな熱さ、熱波がチルルを襲う。
 オーブンレンジでやかれるパンの気持ちを理解したチルルだったが。
 もう、文句を言っていられる段階ではなかった。
 ワープしたはいいのだが、当然この世界にも足場はない。
 落下を始めるチルルの体。
 先ずは、そう、この落下をどうやって止めるかから考えなければならない。
「きゃあああああああああああ」
 喉よ避けよ! とばかりに悲鳴を上げるチルルだったが、そんな彼女にスネグラチカがあっけらかんと問いかけた。
――空を飛ぶってどういう感じか知ってる?
「唐突に何よ…………まあ、空を飛ぶっていうのはあれよ、凄いのよ!」
――具体的じゃないなあ…………。
 あきれ果てるスネグラチカである。
――あたしがいた世界には飛行機なんて無かったし、チルルとかは乗ったことあるんでしょ?
「そりゃそうだけど。でも自分で空を飛ぶのと飛行機で空に行くのは結構違わない?」
――そんなもんなの?
「そんなもんなの!」
「大丈夫でしょうか、あの人達」
 そんなチルルを遠目で見ながら『構築の魔女(aa0281hero001)』は空を『駆けていた』
 彼女はすでに相棒である『辺是 落児(aa0281)』と共鳴済み。そのままの加速度を維持、アーネアと並走し。その銃口をアーネアに向ける。
 突如吹き荒れる強風。
 それを足を大きく広げて飛んで回避しつつ。弾丸をアーネアの額にお見舞いし、自身で作り出した氷の足場へと着地。斥力を操ってはじかれたように上に飛んだ。
 さらに追撃、霊力を込めた弾丸がアーネアの翼を穿ちその体を吹き飛ばす。
 そして着地……ならぬ着空。
 舞い上がったスカートを手で押さえて再度照準を敵に合わせる。
「……あぁ、懐かしい感覚ですね」
 恍惚とした表情でトリガを引く構築の魔女。
 そんな彼女は飛行ではなく、跳躍によって空中戦闘を可能としていた。足場を大気中の水分、それを凝結させて作りだし、加速度にまかせて空を飛びまわる。
 それが構築の魔女が行う飛行だった。
「どちらにも太陽があるのは面白い感覚ですね……直視しないよう気を付けましょう」
 同じく空を飛びまわる藍。とは少し趣が違うが立派な飛行である。
「創造力……意思と想いで世界が変容するというのなら。魔術師と呼ばれた私たちの一端をお見せしましょう」
――大変です、兄さん。構築の魔女さんの方が、魔法使いっぽいです。
「あー、本来であれば私達が魔法使いポジションなんだけどな」
 そう藍は銃弾でのけぞったアーネアへと直上からサンダーランスを浴びせた。
――雷槍よ、穿て!
 その閃光の柱、その中からアーネアは方法の体で脱出する、痺れる羽を羽ばたかせて急上昇。反撃の前に体勢の立て直しを図りたい。そんな狙いが透けて見える。
 しかし。それを許すリンカーではない。
――翼のあるモノには、こんな動きは想像できないでしょう?
 アーネアの行く手を藍がふさいだ。
 先ずで水を蹴るようなドルフィンターン。そしてトリアイナを構えて刺突。
 それをアーネアはカギヅメで器用にそらしたが、それが二度も三度も通用するわけがない。
 藍はさらにターン。
 刺突。動きが止まればその背を構築の魔女が射抜く。
――寄せては返す、波の音を。
 いったん藍は距離を取りトリアイナから潮騒響く水の塊を射出。
 それに構築の魔女も合わせた。
「障害物のない空で逃れられるとは思わないでくださいね」
 その言葉に含められた意味の通り、構築の魔女は機動力を削ぐため翼を中心に狙っている。
 二人の攻撃が翼に命中、バキリと骨が折れる音が聞えた。
 たまらずアーネアは痛んだ翼を羽ばたかせ。チルルを狙って飛び立つ。
 その光景を見つめながら、スネグラチカは呆れつつも問いかけた。
――で、最初に戻るんだけど、空をどうやって飛ぶの?
「普通に考えたら人間が飛べるわけ無いじゃん。どうしよう?」
 やっぱりか、そうスネグラチカは溜息をつく。
――あ、何も考えてなかったのね…………って空飛べないとどうしようもないじゃん。どうするの?
「…………そうだ! そもそも空を飛べないあたい達が空を飛ぶって発想が難しいのよ!」
――おまえは何を言っているんだ。参考までに聞くけどどうするの?
「要は空を歩ければいいのよ! あたいの足元には常に足場がある! だから空にだって足場あるのは当然よね! 夢の中なんだし!」
――お、おう…………。
 それ、ついさっき見たなぁと思いながらスネグラチカは、とりあえず頷いておいた。
「ほら、冬の寒空の中でもあたい達って元気に雪遊びしてたじゃん? どんな雪の積もった足元が悪いところでも関係なかったでしょ? だから今更空の上の見えない足場なんて問題にならないはず!」
――言っていることは乱暴だけど、まあ、それでなんとかなる…………のかなあ?
 次の瞬間チルルは空中に作り出した氷の足場に着地、立ち上がる動きそのままに、最小限の動きでアーネアを見送った。
 服がカギヅメで切り裂かれるが、ダメージはない。そのままチルルは振り返って。霊力の塊をその翼へと射出、大爆発がアーネアを包んだ。
「やった!」
 チルルは飛び上がって喜び、そのままスキルを連発する。
 その隙に藍と構築の魔女が攻めた。
 藍はリーサルダークでアーネアを闇に包む。
 その隙を逃すことなく構築の魔女はスナイプ。翼、その骨めがけ弾丸を叩き込み。
 そして、悲鳴を上げたアーネアは無茶苦茶な体勢でくるくる回り闇の中から飛び出していく。
 その闇が晴れてしまえばアーネアは光の世界に戻されることになる。
 しかし、ひとたび闇になれた瞳には二つの太陽は眩しすぎた。
 動きが止まる。
「残念だったね」
 そう藍はアーネアの背中を切りつけて。
 その顔面を砕くように突如弾丸が現れた。
「夜が明け、朝が過ぎ、黄昏を迎える……流転と共に貫きましょう」
 違う世界を跨いで飛来した弾丸が、アーネアの頭蓋を撃ち砕く。
 次の瞬間、その体は大きくひろがると、風に説けて分解されていった。
 その姿を眺めながら藍は告げる。
「まどろみ、何が狙いかはよくわからないが……英雄に戻ろうとしてるなんてふざけたことを言うんじゃないだろうね?」
 まどろみははアネット……同じ名の英雄を持つ梓さんを代わりにしようとしているのか、そう藍は思い眉をひそめる。
――もしそうなら、それは冒涜でしかないですが……兄さん、まずは。
「ああ、奴らを倒さないと……終わったら、英雄の方のアネットさんを探さないとね」
 頭上に指針を、右手に旗印を。
――偽りの空に、偽りなき誓いを。
「黒鱗の人魚を、甘く見ないことだ」
 告げた藍は崩壊し行く空に背を向け。朝焼けに向かった。

第二章 黄昏時

――ちょっとエステル?
「お……落ちる! どうしても最悪の事に意識が向いて……せめてディタの言う無に、何も考えない様にしないと……」
 エステルもまた、この空に戸惑っていた。
 落下を続ける体、飛ぶイメージが重要とかんたんに言われても、そんなもの生まれてこの方抱いたことがないのだ。
 すぐにパッとイメージできるわけがない。
――それは無理ね。無想は何も考えない事じゃないもの。
「え?」
――それに何も考えない様にしても悪念は消えないわ。
「そんな! ……じゃあどうすれば?」
――落ちなさい。
「え……あ……」
――早く!
「ああ! もう!」
 その瞬間、無駄な抵抗が消えたからか、思考の補助によるものなのか。落下する速度が上がった。
――私たちは下に向かって落ちてる。
「そうですけど……」
――目を瞑って。
「……」
――……本当に下?
『泥眼(aa1165hero001)』は不意に、エステルへとそう問いかける。
「当たりま……た、確かにこの世界じゃ……」
――……どうして下に向かうのが最悪なの?
「……分かりました!どうせアーネアに向かって落ちろって言うんですよね」
――それもいいわね。本当に下に落ちる世界じゃ使えないけど……良かったわ。
 その時、夕闇を裂いて三人のリンカーがその空に送られてきた。
 リンカーたちは三者一様に落ちていくばかりだったが。それを見送るアーネアではない。接近する。
 その姿を見て本能的な恐怖が呼び起された『島 恵奈(aa5125)』。
「くっ」
 そう島は歯噛みして武器を抜く。
 島はシマエナガのワイルドブラッドである。 
 鳥であろうともワイルドブラッドで人間であれば飛べないだろう。だがその血にはDNAには大空を自由に羽ばたいていた頃の記憶が眠っているはずだ。
 島はそんな自分の中の眠れる力を意識した。
 空を飛ぶイメージはシマエナガの羽ばたきのように精密に具体的に。
 自分の筋肉と光の翼がつながっているように空気を叩いて飛び立つ。
 その時、島の体が風を掴んで舞い上がった。
「飛んだ……」
 島は感嘆のため息を漏らす。だがその感動に浸っている暇はない敵がいるのだ。
「我、幾度も無く空を駆けたり」
 そう『晴海 嘉久也(aa0780)』つぶやいた瞬間には、三人とも見事に空を駆けていた。
 島は背中に透明な翼を持ち。晴海は今ままで空を飛んだ感覚から、死んでしまった機械の翼を再起動。
 そして『エステル バルヴィノヴァ(aa1165)』は真っ向から。愚神めがけて落ちていく。
「あ~」
 エステルはか細い悲鳴をあげながら槍を構えて愚神に向けて『落ちて』いった。
 アーネアはたまらず回避。その瞬間を狙ってエステルはアーネアを蜻蛉切で切りつける。
 赤い赤い空に三つのシルエットが舞い上がる。
「武器の形を見てください。そうすればお互いを見間違えることはないと思います」
 特に晴海のNAGATOや16式と蜻蛉切は明らかにシルエットが違う、それにあらかじめ気を配ってもらえればきっと誤射されない、そう思った。
 後は近接戦闘メインのエステルを自分が見分ければいいだけ。
 そう晴海は考えたのだが、次の瞬間、エステルの背から何かが生えた。夕暮れの色。その色の補色となる緑の長い幡を想像で生み出し纏ったのだ。
そう速射砲を構える晴海。その弾丸の雨でアーネアを追撃する。
「この愚神、見た目も能力も同一なのよね。だったらこの愚神、彼女にとってすごく思い入れがあるものってことになりそうだけど」
 そう島は一人ごちる。
 倒してしまっても彼女の精神面に異常は出ないだろうか。
 だが攻撃しても朝焼け班から何の連絡もない。
 であれば。攻撃を続行すべきなのだろう。
 島は翼を折りたたみ弾丸のようにアーネアへと迫る。側面からの一撃。
 それにエステルが合わせた。
 エステルはまたも愚神めがけ落下する。
 マイナス思考だと想像力を発揮するエステルの性向を逆用し、一撃離脱を繰り返していた。
 蜻蛉切をランスのように構え、重力加速度も乗せた斬撃をみまう。
 直後である。朝焼けに一瞬飛んだ晴海が瞬時に戻ってきて、その刃の腹でアーネアを吹き飛ばした。
 そのまま落ちるようにロール。アーネアの先を予測して斬撃。
 はじかれたアーネアへはエステルと島が迫るが。
 大きく広げられた翼、吹き荒れる突風で二人は体制を崩した。
 だがここでひるむ晴海ではない。
 肉薄する晴海吹き飛ばされながらも島は体制を立て直して追撃を仕掛けた。
 回転しながら二人の攻撃を捌くアーネア。
 NAGATOでの近接戦闘。それに対してエステルが刃をさしはさむ。
――エステル!
「だいじょうぶ! パニッシュメントだから」
 衝撃でアーネアが弾き飛ばされて落下が始まった。それを追うのは島。一度別の空へと身を隠し。瞬時にアーネアへと距離と詰めた。
 そんな落ちていくアーネアを眺めながらエステルは過去に思いをはせる。
「悪夢を思い出せば良いのだから簡単ですね」
――……そうなの?
 ……また不味い方に? そう泥眼は一瞬身構えた。
「内臓がほとんどダメだって先生に言われた時は朝だったし……あの時病院の窓から眺めた空は青かったな。あの時は床の底が抜けて奈落に落ちてしまえと思ったですね……道連れにしてやります」
 再度浮上した島が二人にぶれる。斬撃は左翼を切り落とすように。そして晴海がアーネアの心臓に刃を突き立てた。
「囚われなければどんな想念でも役に立つと言うことかな?」
 エステルが短く告げる。
――その通りね。この世の思いは全部冗談見たいなもの……それも囚われになるのが難しいところだけどね。
 晴海はその背を振りかざし、アーネアから距離を取る、その姿が霊力に戻ると同時に世界が崩れ始めた。

第三章 宵闇の記憶

 その世界は闇に包まれている、僅かな星明りの世界。
 だが人は通常、星明り程度では十分な視界の確保などできない。
 そんな闇を切り裂くように流れ星のような少女が走った。
 その少女が纏うのは『翼の妖精郷ジャンヌ』『光の奏結界エイジス』『鎧の結界ティタン』の三重結界
 防御とは盾で行うばかりではなく、相手の攻撃できる隙を潰すための行動すべてをさす。
 少女は鳥類のカギヅメを盾で叩き落とし、その手の刃を突き入れた。
 決して離れてやらない。そう殺気立った視線をアーネアに送るイリス。
 振り下ろされるカギヅメ、それを盾ではじいて、反動殺し切れない鳥獣の翼を刺した。
「煌翼刃・螺旋槍!」
 回転を加えたその斬撃をアーネアに見舞うと、アーネアは風を纏って直撃避けた。これ幸いと翼を翻し距離を取る。
 そんな風にイリスが衝突するたびに、夢の雫のような煌きが周囲に散ってアーネアの姿を照らしだす。
 そんなイリスへさっきの入り混じった声が飛ぶ。
「コイツから離れろ、巻き込まれても知らんぞ?」
 禍々しき双剣は重たい威圧感を振りまいて複製されるテトラの刃。
 まるで正気度が減りそうな双剣。【魑魅】にはヒキガエルに似た怪物が、【魍魎】にはコウモリの羽が付いたタコの様な怪物の装飾がされている。
 二つの剣は声を入り混じらせ時々謳うが。歌う双剣、イリスの保有するバルムンク兄弟とは似ても似つかず、イリスは表情に陰りを浮かべた。
「ど、どうぞ」
 そのままポジションを譲るとテトラぎらついた笑みを浮かべ背後からアーネアの背に手を添えた。
「いくら空を飛べるお前でも、この量の刃は避けきれないだろう!」
 降り注ぐ斬撃は無慈悲にアーネアの翼を引き裂いていく。
 その攻撃が苛烈になればなるほど。剣は異形の神々を賛美する歌。呪文を強めた。
 墜落していくアーネア。その姿を、ノクトヴィジョン越しの視界で捕える。
 だが途中で落下は停止。アーネアは傷ついた翼を羽ばたかせ。遊夜に襲いかかる。
「私に出来ない事は無い」
 禍々しい翼をさらに大きく震わせて、テトラはその影を追った。
 遊夜に迫る風きり音。
 遊夜は瞳を閉じる。
 余談だが、優れた野球選手は音だけで、どこにボールが落ちるか分かるという。
 であれば優れた狩人は、音だけで鳥がどこを飛ぶのかわかるのだ。
――……ん、晩御飯は焼き鳥。
「鳥の部分少ないと思うんだが……」
 遊夜はトリガーを引いた。暗闇に灯るマズルフラッシュ。
 その弾丸はアーネアの小脇を通過したかと思うと空間転移でその顔面にワープしてきた。
 悲鳴と共に鮮血がほとばしる。
 その弾丸は目をえぐった。
 ひるんでいる隙にテトラとイリスが肉薄。
 遊夜も武装をSVLに換装した。完全にアーネアを囲う形となる。
 それを逃れるためにアーネアは翼をはためかせて突風を送るが、いまいち効き目が薄い。単眼で狙いがうまく定まらないのもあるが、三方向から攻められると誰を攻撃していいかもわからない。
 結果風はテトラの作り出した冒涜的障壁に阻まれて威力をなくす、その背からイリスが切りつけると。
 イリスは剣を握り直した。
「いくよ」
 次の瞬間、イリスは金色の残滓を残して消えた。
「空と空って別の世界だよね?」
――ああ、そうだね。
 イリスは何もない場所にいた。世界のはざま、空の狭間。どこでもない場所。
 そこを落ちるように羽ばたいていて、その指先が何か冷たいものをなぞる。
 目に見えないもの、大きく広がるもの、それは壁。
「だったら、そのあいだには壁があるんじゃないかと思うんだ」
 そう呟いて、イリスは瞳を閉じる。
 胸にわき上がるのは。緑色の草原と、友達と一緒に見あげた大きな空。
 イリスの幸福な時間。もう戻らない空。
 次の瞬間、イリスの指先がガリッと何かをひっかいた。
 それを足場にイリスは飛ぶ。そしてアーネアの眼前にイリスが躍り出た。
 次いで斬撃。
 イリスに対して反撃を仕掛けようとしても、遊夜が爪を弾いてそれを許さない。
 イリスはまた別の世界に飛んだ。
 夕闇の世界を足場にして、また暗い夜の世界へと舞い戻る。
 次は翼だ。
 そして朝焼けの世界へ。
 また夜へと戻る。
――結界使いだからね。空間同士の境界の把握なんて楽なものだよ。
 アイリスはご満悦な様子でそう唱えると。
 イリスが高く吠えた。
 その刺突がアーネアの腹部に突き刺さり。
 次いで響いたのはアイリスの歌。アタックブレイブだ。
「あまねく世界にこの歌声を響かせる!」
「なるほどな、そういうことか」
 そんなイリスを見て、頷く遊夜。
――あれなら、できる。たぶん。
 ユフォアリーヤが頷いた矢先。
 遊夜の姿が消えた。
 次に襲ってきたのは弾丸の嵐だ。
 どこから放たれているかもわからない弾丸が右から、左から。アーネアを襲う。
 空間を飛び越えて飛来する斬撃と、弾丸。
 アーネアは混乱の渦中に陥った。
 次いでアーネアの眼前に放られるのは円筒上の何か。
 それは宵闇の暗さをひきちぎってアーネアの視界を光でやいた。
 アーネアの体が、落ちていく。落ちていく。
 その先にはイリスが立っていて。
「煌翼刃・次元斬!」
 その墜落する体をイリスが撃ち砕いた。
 キラキラと舞い散る霊力が星屑のように少女を祝福する。
 その様子を見てテトラは小さく微笑むと、ゆらりと、背中を空に預けるように後ろへと倒れた。
 そのきらめきを眺めながら、テトラは杏奈に語りかける。
――もし私が邪英化したら、お前はどうする? 
 唐突なその言葉に最初杏奈は驚いたが、すぐに一つ笑って言葉を返した。
「それはもちろん、全力でボコりにいくわよ。貴方と本気で殺りあえる機会なんて滅多に無いもの」
――……お前に目が向かないかもしれないが?
「私が天敵の炎の邪神っぽい格好していけば良いでしょ?」
――そうか、それなら嫌でもお前が標的になるな。
 次に笑うのはテトラの番だった。これほど恐れ知らずの人間は生まれてこの方であったことがない。
――しかし、やけにあっさりと殴れるんだな。体はお前の肉親なんだぞ?
「意識は貴方だし、どっちみち倒さないとお母さんを取り戻せないからね」
――……変わった奴
「貴方が言えた事じゃないわよ、ニャル様♪」
 そう告げると杏奈は通信を切る、あちらもクライマックスが近いようだ。

   *   *

――たとえば、星の世界の彼方まで。
  この手がこの言葉が届いたのなら。
  私の想いに誰か気付いたら。
  世界の端まで輝かせてみせる。

 幻想歌劇団ディスペアは鮮烈なデビューを飾り。瞬く間に世界に浸透した。
 その歌い手として思い描かれるのは常に、アネットや瑠音と言ったツートップだが、最古参として彼女の活躍もあったことは否定できない。
 梓。止処 梓。
 アイドルにふさわしくない少女、普通の少女。
 自分がどうしてここにいるんだろうと思ったことは多々ある。
 だけど、その道から外れようと思わなかった。
 逃げようと思えなかった。
 だって、またすべてを投げ出してしまったのなら、それは。
 助けてくれた人への冒涜になるから。
「助けてくれた人? だれ? アネット?」
 違う。心の中で誰かが告げる。
 それは違う。
 助けてくれたのはきっと。
 梓と同じように、いつかどこかで、自分の無力さに鳴いた誰か。
「梓さんがHOPEのお手伝いをしてるのを見た時、そしてリンカーアイドルになったって知った時すごく嬉しかったのです」
 声が聞える。歌も聞こえる。
 綺麗な声、澄み切った声。それが遠くから呼びかけてくる。
 まどろんでる場合ではない。だれ? だれ? 私は誰?

―― 共に、駆け抜けたこと。共に笑いあったこと。
   全てを胸に、飛び続けるだけ。

 トップスタンダードが聞える。
 梓にとって思い出深い曲。
 見上げた二人の背中と、苦悩を噛みしめた日々。
 膝を折りたくなかった。みんなに笑顔で会いに行けるまで、助けてくれた人にあいに行けるようになるまで。

 みんなが助けてくれたおかげで。こんなに幸せになれた。ありがとう。

 ただただそう伝えたかった。

「梓さんはどんなに辛くても、怖くても…………私たちとのことを忘れても、それでも誰かの笑顔のために立ち上がれる人です」
 怖かった、自分を顧みること。わかってた、それがなるべくしてそうなった。自分でなくても、だれであろうともよかったってこと。
「記憶も大事だけど…………あなたがあなたであることはもっと大事」
 その時梓の脳裏にうつりこむ光景があった。
 戦っている、稜が、蘿蔔が、そしてシエロが。
 それはあの日の記憶、自分を助けてくれた。その背中。
「確かにきっかけは違うかもしれない…………でも梓さんは自分の意志であそこにいた、と…………私は思ってます。ディスペアにいたのも、まぎれもないあなたでした」
「本当にそうかな?」
 か細く鳴くように問いかけられた梓の言葉、その言葉に蘿蔔は笑顔を返す。
「大丈夫、私はちゃんと知ってますよ」
 突如突風が吹き荒れた。
「この!」
 稜はエンジンを吹かせてロール。高度をあげつつ背面飛行でアーネアをスコープに捉えた。
 そのままトリガーを引く。
 その弾丸をアーネアは器用に回避していくのだが。
 それは飛ぶ進路をコントロールされていることに他ならない。
 覆いかぶさるように後ろから追いついてきた杏奈が、アーネアの眼前をふさぐ。
 そのまま斜め下方。つまりアーネアの射る方角へ魔法弾をばらまいた。
「さあ、弾幕遊戯はまだまだここからよ!」
 速度を失ったアーネアは弾丸の海の中に飛び込んだ。蘿蔔、そしてシエロが実現させた飽和射撃。
「今度は取り巻きなしか鳥女ぁ!」
 翼も体も軋み悲鳴を上げる。
 だがその弾丸すらもアーネアは突風で吹き飛ばしてしまった。
 次の瞬間翼を翻して、アーネアはオーブを真正面に捉える。その暴風をシエロ、蘿蔔も巻き込む形でオーブに放った。
 その攻撃をシエロは身を挺して庇う。
 吹き飛ばされる蘿蔔。
「えーい!」
 そんなアーネアを背中から襲う影。
 杏奈のショルダータックルである。
 相変わらず無茶をする。
 だが考え無しではない。自分の霊力の残滓。それをアーネアの体に残しつつ。
「天城さん!」
「まかせて!」
 両手に槍を握る稜は《白鷺》を突き出して全速前身。その切っ先は白い輝きを帯び。
 よけきれないアーネアの肩口をざっくり切り裂いた。パニッシュメントを纏わせた斬撃は愚神の霊力を大幅に削る。
 悲鳴を上げるアーネア。
「まだまだ!」
 自分が、メルトシャドウなら、できるはずだ。
 この動き。
 空気抵抗による急減速。体を起こすことによって銃口、もとい槍の切っ先は敵へ向けたまま。張り付くようにターンしての追撃。
 だがやすやすとアーネアも追撃を許しはしない。アーネアは鋭くとがったカギヅメを稜へと伸ばすが。それは撃ち飛ばされる。
 いつの間にか蘿蔔が近くにいた。
 別空間へ移動。さらに戻ることによって、大幅に距離を縮めたのだ。 
 愚神の真後ろ、完全なる死角からのほぼゼロ距離射撃。
 それにアーネアが対応できるわけもなかった。
「この機会、無駄にはしない!」
 稜が動く。その《烏羽》は真紅の輝きを帯びている。その切っ先はまるでメスのように鋭く。アーネアの翼その付け根をざっくりと切り裂いた。
 そして稜と蘿蔔はアーネアから離れる。
 杏奈のサンダーランスが追撃として放たれる。
 アーネアの翼から力が失せた。
 そう思ったのもつかの間。アーネアの翼が燃え立った、その体が何倍にも膨れ上がり、禍々しい炎の鳥をかたどる。
「まどろみ……」
 蘿蔔は見た。その背中にローブの男がまとわりついているのを。
 真っ直ぐ梓を見据えて。その不死鳥をけしかけるのを。
「これでは困るのだよ!」
 その行く手を阻むのはシエロしかいない。
「勘違いすんな! ウチは梓ちゃん抱っこしてる時の方が強いぞ!」
 迎撃態勢。全弾撃ち尽くす勢いで体制を取り。梓の前に立ち続ける。
 その光景に、梓は悲鳴を上げた。
「私のために、もう傷つかないで!」
 二人直後炎に飲み込まれることになる。

 その炎の中で、シエロは梓を抱き留めていた。

 梓はその温もりを覚えていた。
「私、全部、偽物なんだ」
 梓はシエロに告げる。
「あの時からなんにも変わってない。梓って人物はやっぱりあの日の空で死んだんだ」
 その言葉にシエロは強く首を振って、再度梓をだきしめる。
「そんなことないよ、アイドル活動までが誰かの意志だったとしても。その成果は間違いなく梓ちゃんのものだよ」
「それは、そう仕組まれてたもので」
「ファンを笑顔にしているのは梓ちゃんだ! ウチはもう梓ちゃんのファンだから! 頑張ったね、梓ちゃん」
 その言葉に、梓は一つ涙をながす。
「本当? 嬉しい。誰かに頑張ったねって言ってほしかった」
 次いで押し寄せる焔はドーム状に二人を避ける。そしてシエロはこの向こうにいる誰かを見据えて、こう告げた。
「でもね。強く大きくなったのは、梓ちゃんだけじゃないんだよ」
 シエロは爪を伸ばす。
 そしてその爪が、大きく広げた翼が、鋭く、禍々しく炎の鳥を捉えると。
 シエロはその鳥を空中で八つ裂きにした。
 炎は四方に散り。熱いという感覚すら、梓は受けることがなかった。
「何度でも助けに来るよ」
 業火が晴れればそこには青空が広がっている。
 抜けるような青空を。今度は梓とシエロ二人で並んでみていた。
「…………梓ちゃんが大好きだからね!」
 そう、二ヒヒと笑って見せたシエロ、直後二人は重力に引かれて落ちていく。
 目の前の空が焼き払われ本物の空が見える。
 二人は夢の世界から投げ出されて、背中から叩きつけられて、痛くて笑った。
 そんな二人を覗き込むように。全員が集まっている。
 一人じゃない。そして、自分もこの輪の中に入ってもいいんだ。
 梓はそう思って。蘿蔔に手を伸ばす。


 エピローグ
「迎えに来たぞ、お姫様?」
 だがその手を代わりに取ったのは遊夜だった。
 梓の顔面温度が急上昇、ぼんっと爆発音さえ聞こえそうだ。
 そんな風に梓がフリーズしているのをいいことに、遊夜は梓の体をすくい上げた。お姫様抱っこである。
「ふむ……ではご褒美にデート、とかでどうだろう?」
「……むー!……早く、帰るの!」
 ユフォアリーヤが嵐のように、遊夜の背を押して早々にご帰宅されてしまう。
 今のはなんだったんだろう。そう梓は思いながら遊夜を見送った。
 そんな呆ける梓を、まだ意識が混濁しているのではないか。そう思った稜。
「梓さん! 大丈夫! 意識ある?」
 そう指を左右に動かして見せる稜。
「この光をよく見てね…………」
「大丈夫だよ、心配し過ぎ。」
「久しぶりだね? 梓さん。僕のこと覚えてる? 君が空に落ち続けるのをシエロさんや蘿蔔さん達と一緒に助けたんだけど…………」
「あの、オペレーターやってた人でしょ? 覚えてるよ」
 そう梓が微笑みかけると、シエロと蘿蔔は目を見開いた。
 記憶が戻ってる、しかも完全な形で。
「う……うちのこと。覚えてるの?」
 シエロは恐る恐る尋ねた。すると、シエロは告げる。
「あの時、助けてくれてありがとう、お礼もいえなくてごめんなさい。シエロ」
 そして梓は蘿蔔に向き直ると、蘿蔔の手を取った。
「失礼な態度たくさんとっちゃったね。ごめんなさい、蘿蔔ちゃん」
 あっけにとられる二人、その代りに稜が皆が聞きたかったことを問いかけた。
「梓さんは、あの後どんな事が有ったの? 早くこんな所から出て、色々君のあの後の話を聞かせて欲しいな?」
『リリア フォーゲル(aa0314hero001)』が共鳴を解いて稜の隣に現れた。リリアは全員に向けて頷きを返す、指先に灯した光、それはパニッシュメントで。その影響が何もないなら今の梓にはまどろみも、アネットもついていないということになる。
「あのあと、私はH.O.P.E.の職員の人に連れられて、いろいろあったの。手続きとか、両親がいないから親権は誰が持つのかとか。その時アネットが現れて」
 今思えばアネットとはその時初めてであったのだという。記憶を改ざんされて、愚神アーネアから助けてくれたのはアネット。
 そう思い込んでいたから違和感がなかったのだが。そのまま梓はアネットに引き取られて一緒に生活を始めたという。
「そのあと、あれよあれよという間にアイドルに」
「そんなことってあるの?」
 シエロが首をひねる、すると蘿蔔が悲しそうに頷いた。
「あります。あるのです……」
「ねぇ、愚神はもういないって話だったじゃない?」
 その時杏奈が手を挙げた。
「このドロップゾーンの主、まどろみは一体どこに居るの?」
 最初は梓の中にいると思っていた。梓を邪英化させようとしていたのもまどろみだ。
 だがいなかった。
「ウチが倒しちゃったかな?」
 シエロが照れ臭そうに告げる。
 確かに最後の一撃はまどろみの意思によるものだった。だがその一撃はシエロによって防がれてしまった。
「……もしくは、非常に当たって欲しくない推測だけれど、アネット自身がまどろみなのではないの?」
 杏奈の言葉を蘿蔔は否定する。
「それはないですよ。むしろまどろみが、アネットさんなんです」
 その言葉に全員が首をひねった。
「詳しい話はあとから。あの梓さん。御願いがあります」
 そう蘿蔔は梓に向き直ると告げる。
「今度は私たちを、ううん…………ディスペアの皆のことも助けてほしいのです…………だから私と一緒に来てください」
 その言葉に梓は首を振った。
「それは、できない」
 そして梓は手に握ったディスプレイを皆に見えるように差し出す。
 そのディスプレイにうつっていたのは本日のニュースのスクショ。
 ディスペアのメンバーアネット、姿を消す。
 という見出しだった。
「いかないと、たぶんアネットはもう帰ってこない気がする」
 蘿蔔は沢山、聞きたいことがあった。
 けれど話している暇はなさそうだ。時は一刻を争う。
「梓さんはアネットさんのところに行くつもりなんですね」
 その言葉に梓は頷く。そして告げた。
「全ての始まったあの町へ、まどろみとアネットの物語を終えるために」
 優しい夢から始まったこの騒動の終端が見えた。蘿蔔は視線を落とす。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518

重体一覧

参加者

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
    人間|20才|男性|防御
  • 癒やしの翠
    リリア フォーゲルaa0314hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
    機械|17才|女性|生命
  • 解放の日
    ジスプ トゥルーパーaa0575hero002
    英雄|13才|男性|バト
  • リベレーター
    晴海 嘉久也aa0780
    機械|25才|男性|命中
  • リベレーター
    エスティア ヘレスティスaa0780hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 悠久を探究する会相談役
    エステル バルヴィノヴァaa1165
    機械|17才|女性|防御
  • 鉄壁のブロッカー
    泥眼aa1165hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • Be the Hope
    杏子aa4344
    人間|64才|女性|生命
  • トラペゾヘドロン
    テトラaa4344hero001
    英雄|10才|?|カオ
  • エージェント
    島 恵奈aa5125
    獣人|14才|女性|回避
  • エージェント
    アサシンaa5125hero002
    英雄|16才|女性|シャド
  • さいきょーガール
    雪室 チルルaa5177
    人間|12才|女性|攻撃
  • 冬になれ!
    スネグラチカaa5177hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
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