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初夏の夜の足なし坊主
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/06/11 09:58:25 -
相談卓
最終発言2017/06/14 00:27:22
オープニング
●ああっ窓に! 窓に!
そろそろ梅雨も間近のその日、彼はふと家の窓から妙な視線を感じた気がした。
「なんだぁ……?」
気のせいだろうと思い無視していたが、その視線はやむ気配がない。
いい加減いらだってきた男はカーテンで閉め切られた窓へ近づいていく。
「なんなんだ、まった……く?」
カーテンを開くと、そこには白、白、白――。
窓を埋め尽くさんばかりに白い物体が鎮座していた。
「ひっ」
それはゆらゆらと揺れながら、窓に体をこすりつけているではないか!
それはまるで室内に侵入しようとしているかのよう。
男はたまらなくなってすぐさまカーテンを閉めた。
「な、なんだったんだ今のは……ッ!?」
どことなく見覚えのある形だったような気がするが、それどころではない。
「いったいなんだっていうんだ、あれは!!」
混乱もやまぬうちに、男はもう一度だけカーテンに手をかける。
男の手にじっとりと汗がにじみだす。気が付けば腕は小さく震えていた。
「大丈夫、大丈夫。どうせ見間違いさ!」
自分に言い聞かせるようにカーテンを開けると、そこには黒しかなかった。
やはり見間違いなんだ、と安心したところで男は違和感に気が付いた。
――今日は、きれいな満月ではなかったか……?
そしてその違和感はけして気のせいではなかった。
窓の外にいたそれは、男がカーテンを開けたことに気が付くと、窓から離れていった。
そこには大型の、白い足なしの姿。
「ひ、ひぃいいいいいいいいいいい!!」
男は悲鳴を上げて気を失った。
そしてそこにはにっこりと笑顔を浮かべたてるてるぼうずの姿がしばらくぼうっと残っていた。
●テルテルボウズ
あまりにもあんまりな内容なので、H.O.P.E.職員はこれが一瞬、酒に酔った男の口から出まかせの冗談ではないかと疑った。
だって、そうだろう。
――家の窓に、超巨大なてるてるぼうずが出現してこちらを覗いていたなど。どんな冗談だ。
とはいえ職員はそれが愚神や従魔に関係することである可能性を否定できない以上、調査せざるを得ない。
「と、いうわけで。皆さんにはその"テルテルボウズ"を調査していただきたいのです」
うんざりした顔で、職員は目の前にいるエージェントたちに事の経緯を話した。
どうやらその存在は非常に巨大であること。夜に窓付近に現れること。
頻度は連日ではなく、おおよそ2日に1回であること。サイズ的に厳しかったのか、2階の窓にしか現れないこと。
「どうやらこれらは間違いないようです。依頼主も、夢か何かを疑い調査したらしいですからね」
その結果わかったのがこれらしい。
情報がないよりはマシだが、せめて従魔かどうかだけでも判断したかったとは同僚の職員の言葉である。
「とにかく、皆さんには早急に対処をしていただきたい」
愚神絡みの事件であればチームを組んで対処を行わなければならない。
そのために必要なのは、何よりも情報だ。
「よろしくお願いしますね」
最後にそう締めくくって、職員は恭しく頭を下げるのだった。
解説
●目標
謎の存在"テルテルボウズ"の正体を突き詰める
●舞台
依頼主の家
2階建ての1軒屋。割と狭いので戦闘を想定してはいけない。
外には比較的広めの庭があり、家の玄関は道路に面している。
周囲にはあまり家がない。隣の家まで歩いて10分もかかるようだ。
▽以下PL情報
テルテルボウズからは微量のライヴス反応が確認されています。
リプレイ
●男性の家
「それじゃあ、出る場所はある程度決まってるんすね?」
「ええ。隣に家がない庭側と、道路側にしか出ませんね」
「出る場所が固定なら待ち伏せとかできるんっすけどね」
君島 耿太郎(aa4682)は困ったように頬をかくと、小さく息を吐いた。
「情報ありがとうっす」
「それでは、よろしくお願いします」
「はいはい、しっかり調べ上げるからさっさと避難しなさいな」
「は、はい……」
家主である男性をさっさと追い出すと、飛龍アリサ(aa4226)は大げさにため息を吐いた
「ったく仰々しいねぇ。十中八九愚神か従魔の仕業に決まってるだろうに」
『まったくですね~』
黄泉(aa4226hero001)が同意するように笑う。
「一般人だから対処できないんで仕方ないっすよ」
「ククッ、もしかしたら単なるビビりかもな~。なんてったってヨォ~てるてる坊主にゃこわーい逸話がたくさんあるからな~♪」
火蛾魅 塵(aa5095)が茶化すように楽しげな様子で笑いながら口を挟んだ。それに対して耿太郎は微妙な顔をし、アリサは小さくため息をつく。
『カメラなんかの設置が終わりましたよ、皆さん。こっちの準備は完了です』
「なあ……やっぱり風呂やトイレはダメ?」
『兄者、本格的に逝ってみるか?』
「OK、あきらめるから武器を漏れに向けるのはヤメロ」
微妙な空気になりかけた場に、わいわいと騒ぎながら阪須賀 槇(aa4862)と阪須賀 誄(aa4862hero001)が帰ってくる。
「お~お疲れ……クク、準備はできたみたいだし、それじゃあさっさと始めようぜェ~?」
塵がそう言うとその場であらかじめ決めていたメンバー同士で組んで調査を開始した。
「正体がわからないテルテル坊主かー。付喪神みたいなものの可能性もあるのかな? 捕まえたら飼っていい?」
家の1階を調査中の雨宮 葵(aa4783)が興味深そうに口に出す。
『……ん、目の前でふよふよされると……鬱陶しいから、捕まえても元のところに捨ててきて』
「デスヨネー! 知ってた!」
しかしそれを燐(aa4783hero001)に素気なく拒否されると、両手を挙げて叫んだ。
「元気だなあ……うぐぐ、しかしどうしてこんなチームに。漏れは幼女が幼女が幼女が……」
『OK、テルテル坊主よりも先にこのバカ兄者を捕まえた方が世のためになりそうだな』
槇と誄がノート型コンピュータで状況をモニタリングしながらふざける。どことなく本気のように感じるが気のせいだろう。
「獣人コンビでよろしくねー!」
「OK、漏れも獣人。雨宮さんも獣人で獣人コンビイエーイ!」
『元気になるのが早いな兄者』
『(猫とインコ……捕食者と被捕食者……)』
幼女がいいとぼやいていた槇も葵のテンションに引きずられて一気にテンションが上がっていく。
元々調子がいい2人だからか非常にウマが合うようだ。
「さーって、バリバリ調査ですよっと」
「おー!」
レーダーユニットを展開した葵と燐、コンピュータを手に持った槇と誄が廊下を歩いて行く。
しかし昼間から動く気はないのか、ライヴスの反応はない。
「人形でおびき寄せらるかもって話があったから、人形も用意したんだけどなー……」
葵がごそごそと荷物をあさり1つの人形を取り出す。
「じゃーん、藁人形! 効果を高めるために怨念も込めて釘打っておいた!」
「ヒエッ」
葵が自慢げな顔で胴体に釘の刺さった藁人形を掲げると、槇の顔は一瞬で青ざめる。
『……ちなみに、どんな怨念?』
「レア装備が出ない」
『ん。欲望が漏れすぎだから、出ないんじゃ……ないかな?』
「うるさいよ!」
一方その頃アリサと黄泉、白金 茶々子(aa5194)とシェオルドレッド(aa5194hero001)は2階の捜査を進めていた。
「結構大きい家ですけど、2階の部屋は少ないんですね」
『そうね……家族の個室くらいかしら』
「屋根裏部屋はないみたいだねえ。一番怪しいのはそういう見えないところなんだろうけど」
一通り見終わった彼女たちは階段の前で言葉を交わす。
「部屋の中はまだ見てないですけど、どうでしょう」
「怪しいところはまだまだあるからねぇ……」
『悪いテルテル坊主ちゃんはどこですかねぇ~。見つけたらボクがギロチンの刑に処してやるですよぉ~♪』
「それは逆効果だよ。……まったく、捜査中は静かにしてな」
『はーい』
黄泉をさくっと黙らせて、再び捜査を開始する。
行き先は主人の部屋だ。現状最も何かがある可能性が高い。
「うーん、窓から入る日差しがまぶしいですねー」
「おかげで明るくていいじゃないか。捜査がしやすいねぇ」
「部屋には怪しいところはないみたいです……あ、でもあの隙間とか怪しいかも……」
『こらこら、いくらなんでもあんなところに入ったら簡単には抜け出せないでしょ』
「むぅ」
部屋の隅に近づいて奥を調べようとした茶々子をシェオルドレッドが止める。
その間にアリサと黄泉は窓際へと近づいていった。
「ふむ、こっちが庭側の窓なのか」
『庭に座り込みながらタバコ吸ってる火蛾魅さんがよく見えますねぇ~』
「それは別にどうでもいいだろう」
アリサは首を振って再び視界を室内に戻した。
見れば隙間に入ることをあきらめた茶々子が英雄に止められたり止められなかったりしながら隙間を調査している。ソファーの裏やテレビの裏、ベッドの下など何か別なものを捜索しているようにも見えなくはないが、彼女はいたって真剣だ。
「うーん。やっぱりそれらしい姿は見えませんね」
『そんなところにいるんだったら依頼主も気がつくでしょ?』
「そうですねー……他の部屋を探した方がいいのかもしれません」
「別な部屋ね。何か手がかりがあればいいんだけどねぇ」
家主の部屋を出て、次の部屋へと向かっていく。
次の場所は主人の部屋に比べると狭い。どうやら子供部屋のようだ。窓は比較的高い位置に据え付けられている。
「人形とかはないんですねー……うーん、当てが外れましたね」
「まだ隙間とかはあるから調べるだけ調べようかね」
アリサはそう言うと、先ほどと同様に窓に近づく。そこからは道路が見えた。
向かいの家まではおおよそ3メートルほどだろうか。あまり道路は広くない。
「むむむ、これは……?」
茶々子たちも同じように隙間を覗いていくと、途中であるものを見つけた。
「おや、これは……テルテルボウズか?」
「首が引きちぎられてますね……まさか、これが原因でしょうか?」
『ないとは言えないわね』
ティッシュペーパーで作られた人形は頭と胴が分離しており、どこか乱雑に扱われているように感じる。
「お子さんが作ったものでしょうか……何にしろ、重要な証拠になり得るので確保です」
茶々子はそれを丁寧に拾い上げると、アリサに渡した。
アリサは受け取った人形をジッパーつきのビニール袋に入れてしまい込む。
「あとは特にないかな。潜んでいる場所らしきものはついぞ見つからなかったねえ」
「2階にはもういないんでしょうか」
「あとは屋根の陰か1階かだろうねぇ……そろそろ移動するかい?」
「そうしましょう」
今一度、発見時の状態を確認してメモと写真を撮ると彼女たちは階段を降りていった。
外では相変わらずタバコを吸いながらゆったりと歩く塵と人造天使壱拾壱号(aa5095hero001)、耿太郎とアークトゥルス(aa4682hero001)が近隣の住居を回りながら情報を集めていた。
「坊主は晴らすために今日を唱えたが~♪ ……そーれでも曇ってやがったらば、テメェの首をズンッ! ってな~♪」
「恐ろしい話っすね、ほんと」
「いくらか逸話はあるけどよォ~、どれも人死が関わってるんだぜェ~♪」
『テルテルボウズとは面白い名前だと思っていたが、僧侶……坊主が関わっているからそういう名なのか』
「そうなんだヨォ~。むかーし昔、雨の日が続いたんでお経を唱えると晴れるっつー坊さん読んだんだがよォ」
無線機を起動したまま、塵が話を始める。
「……晴れなかったんで、ソイツの首撥ねて布で包んで吊してやりましたところォ? なんと、よーく晴れましたとサ! クク……受けるだろ?」
『……』
「あらァ? トオイぃ~、まさか、ビビっちゃっいましたァ?」
無言でぷるぷると震える人造人間壱拾壱号に対して煽るような聞き方をする。
耿太郎とアークトゥルスはどことなく呆れた様子で話を聞き流していた。
「つーか最近、ちゃんと人形を供養しねー家が多いじゃねーかヨ?」
「唐突っすね」
「今回の件に関係するんだが、供養されてねェ人形がどうなるか……知ってっか? クク」
塵の言葉でその場の全員が足を止めた。顔は一斉に彼に向けられ、続きを話すように無言で催促されている。
「呪いの人形とかあるだろ? あーいうのはだいたい供養されてねェ人形が何らかの原因で化けたモンだろォ?」
『そう言われているな。恨みだとか、そういう感情を持つとか』
「今じゃそういうのは従魔の仕業だって言われてるけどよォ~……ま、可能性は高いっつー話だよナ」
肩をすくめて言う。ふざけた様子だが、彼なりに考えていることがあったようで聞いていた全員が感心したような表情をしていた。
「……フゥ~そーいうわけでェ? 相手はそういう呪いの人形みたいなモンじゃねーのって思ったンだけどよォ」
「何かあるんすか?」
「いんや? 何もねーよォ」
最後に小さくつぶやくと、塵はさっさと歩き始めた。
「ただ……怨念の匂いがするッスねえ~……クク」
●夜闇に踊る白い影
塵と耿太郎が依頼主の家の庭まで戻ってくると、他のメンバーも既に屋内の調査を終えていたのか庭に出てきていた。
その場でそれぞれの調査の結果を報告し合う。
1階を先に探索していた槇や葵たちはこれといった収穫は得られなかったようだが、アリサと茶々子は見つけたてるてる坊主について報告する。
それを聞いた塵は思わず笑う。
「ビンゴみたいだなァ~」
「通信で話してたことかい?」
「それが本体なのか、それともそれがあるから現れたのか……漏れには考えられないなー」
『兄者の場合は考えたくないの方が正しいんじゃないか』
「それで、どうするのです? この人形が鍵である可能性は高いみたいですけれど」
「人形でおびき寄せるんじゃないの?」
「クク、逸話の再現とかもいいんじゃねェの~? もしくはあえて乱暴に扱ってやるとかよォ~」
「なるほど……同じてるてる坊主ならそれで釣れるって魂胆か」
彼らはそれぞれ用意していた物やその場の物で状況を再現しようとする。
「雨……はちょうど水やり用のホースがあるからこれ使うといいかも!」
『……ん、いい感じ』
「あと何かありますかね……」
『探すのはいいけれど、そっちは危ないわよ』
「OK、新しいテルテルボウズ作ってきた!」
『兄者、妙にかわいらしい顔を描いてるけど、それあとでひどく扱うんだぞ』
『ボクが首を切り落としてやりますよぉ~』
「ほどほどにしなよ? 片付けが面倒になる」
「坊主役はどうするっすか?」
『いや……坊主役なんてやったら首斬られるじゃないか』
『甘酒と鈴はここでいいですか』
「クク、上出来だぜ~トオイぃ」
わいわいと騒ぎながら準備を整える。
おおよそすべてのセッティングが終わると、葵がホースを使って水をまき散らした。
雨のように見えるように口を上に向ける。
槇が用意したてるてる坊主を用意して、その状態でしばらく待つ。
「あーあァ、晴れねーなァ?」
『これは首を落とさないといけないですねぇ~』
塵と黄泉がわざとらしく笑いながら言う。
そしてつり下げたてるてる坊主を取ると、引きちぎって庭に投げ捨てた。
それと同時に放水をやめる。
「……クク、出たかよ」
「うわぁ……自分たちでやっといてなんすけど、頭おかしいっすよこれ」
『……それで本当に出てくるとはな』
「読みが正しかったことを喜べばいいのかどうか悩みますね」
すべての行程を終えると、彼らの前にふわりと布のような物が降りてくる。
相当な大きさから風が吹けば飛びそうなほど弱々しい気配がする。
「よく聞きな坊主! テメェが人間なら今すぐ出てきて喋れ。全員でセッキョーするだけでお終ェだぜ……だが、無言決め込むんなら従魔って判断してよォ――この場でテメェ、ぶっ殺すぜ?」
塵は脅しをかけるように告げると本気で殺すような目で見ながら30秒を数えた。
その間もゆらゆらとテルテルボウズは揺れ続ける。そして30数え終えると同時に微弱なライヴスを放出して姿を変えた。その姿はどことなく人型に似ているが、よく見るとミーレス級の従魔であることがわかる。
おそらくこれが依頼主の言っていたテルテルボウズの正体だろう。おそらくは微弱なライヴスの塊であった従魔が依り代として選んだテルテルボウズ、その逸話に引きずられていった成れの果て。
「なんだ、やっぱり従魔じゃないか」
確認したアリサがつまらなさそうな声音で言った。
「じゅ、従魔ですか……」
「あんまり強そうじゃないっすね……まあ、いたずらしかできない奴っすからね」
「も、ももももも漏れは漏れは漏れはワワワ」
『兄者、バグってないでいい加減復活してくれ。相手は幽霊とかじゃないんだぞ』
「さァて、首狩りといこうじゃねーか……ククク」
従魔であることがわかった以上、彼らが取る行動は1つだ。
――相手にどんな目的があるにしろ、討伐のみ。
「よっし、先手必勝!」
葵がクナイを用いて足止めを試みる。従魔はその場で慌てたように震えるとクナイを避けようとした。そこに意図せず放たれた閃光と魔法攻撃が襲いかかる。
「ぅあくりょー退散! 退散! くらえ陰陽ボール!」
「逃げないでくださいっ」
逃げ場を失った従魔は結局クナイで拘束され身動きがとれなくなる。
小さく震えるが、その程度では抜け出せそうにない。ライヴスでクナイやらを押し流そうとする。だが哀れ、ミーレス級のライヴスではそこまで大出力な流れを生み出すことすらできない。
「ちょっ、皆さんというか一部の方、周囲のことも考えてほしいっすよ!」
耿太郎は流れ弾が周辺の家などに当たらないようにカバーする。従魔の影響を緩和して、たまに変な方向に飛んでいきそうになる魔法攻撃を目で追って大丈夫なら放置する。たぶん彼が今一番忙しい。
「君はかくれんぼが得意だったみたいだけどねえ。しかしこのご時世幽霊ごっこなんかしてわざわざ正体をばらすようなセンスには感心しないねえ、お里が知れるよ」
「そもそも里なんかねえかもしれないけどなァ」
「さて、どうやってその身を隠していたのかデータだけでも回収させてもらうとするよ」
必死で逃げようとする従魔にアリサが近づいていく。
逃げようともがくたびに周囲に微弱なライヴスが流れ出していく。それは周囲のライヴスと比較しても非常に小さく、すぐさま同化していきわからなくなった。
「ふむふむ、なるほどねぇ。周辺のライヴス濃度と同化して隠れてたわけ」
『器用な奴ですねぇ~でもここでお終い、ギロチンですぅ♪』
観察してからくりを見抜いたアリサがすぐさま刃を薙ぎながら一回転させる。
それと同時に球が宙を舞った。それは落下して地面を転がると消失する。
「まあ、こんなもんかねぇ」
それを見届けると、装備をしまい片付けを始める。
「そういえば、結局のところなんで家の中に入ろうとしてたのかとかわからなかったっすね」
『軒下で揺れているのを再現しようとしたんじゃないのか?』
「そうすることで晴れにするおまじないでしたっけ?」
『ええ、この世界では晴れるように祈ってするみたいね』
「おや、それではまるで他の世界では違うみたいじゃないかい? 気になるねえ」
ホースやらなにやらを片付けながら話をする。
その輪から少し離れたところで塵と人造人間壱拾壱号は2体のてるてる坊主を丁寧に供養していた。
「お疲れ様ですよっと」
「ン-? いんやァ、疲れてないぜ~?」
供養を終えた塵に槇が近づいていき声をかけた。
「時に、それは供養だよね?」
「ま~供養しないと面倒なことになるからなァ」
「OK、火蛾魅さんの照れ隠しゲット?」
「……そういえばこんな話があるんだけどよォ~。本当に怖いてるてる坊主ってのは実際にありえたかもしれないんだぜェ~」
「ヒッ。漏れはそういうのは勘弁! それじゃあカメラとか回収するから!」
「クク、逃げたか」
からかってきた槇を撃退すると、塵は最後にその場でタバコを吹かした。
1本吸い終えるまでのんびりすると、片付けを終えたメンバーの方に向かっていく。
「さァて、一仕事終わったんだしこれから飲みに行こうぜェ~」
「この場にいるの、半分近くは未成年なんすけど!?」
『……まあいいんじゃないか? 急ぐ用事もないしな』
「そういう問題じゃないと思うけど……楽しそうだから行きまーす!」
依頼主には既に報告してるので、彼らはわいわいと騒ぎながら家を出る。
その背後ではちょっとした組木と添えられた花が小さく揺れる。ゆらゆらとゆれ、楽しそうに帰って行く彼らを見送る。
――空はきれいに晴れて満月が輝いていた。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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