本部

研究施設再調査依頼

渡橋 邸

形態
シリーズ(続編)
難易度
普通
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~8人
英雄
6人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/07/08 21:42

掲示板

オープニング

●洞窟の奥に広がる物
 む、よく来てくれたね。
 私は今回の事件を担当することになった……いや、自己紹介は後にしておこう。
 今回は君たちに依頼があって呼び出したんだ。
 君たちは以前向かってもらった洞窟のことを覚えているかな?
 ――ああ、そうだ。例の森から繋がっていた洞窟だ。
 君たちがあそこを調査してくれた後、興味深いことが分かってね。
 どうやらあの洞窟、隠し通路があったらしく地下通路が存在していたんだ。
 ただどうも、面倒なセキュリティがあるらしい。
 詳しくは不明なんだが、回収した図面からそれらしいものが確認されている。

 ああ、それで依頼内容なんだが、ここまで言えばわかると思うんだけれども。
 君たちにはその地下通路を調査してもらいたい。
 必要なのは存在する罠の全解除だ。可能であればマッピングもお願いしたい。

 私はその先に、洞窟調査の際に出没した愚神と思われる存在の基地があると考えている。
 それを探るためにも、あの地下通路の調査は必要不可欠だ。
 必要なものがあれば最低限融通しよう。遠慮なく言ってくれ。

 ――それでは君たちの健闘を祈る。

解説

●目標
 クリア条件:地下通路内の罠の解除(全10個)
 サブ目標:地下通路マッピング

●舞台
高さ5メートル、幅4メートルほど
通路には罠が存在し、どこかにある制御装置で制御している
制御装置からは微弱なライヴス反応が感知可能
▽以下PL情報
地下通路内には以前討伐した改造従魔と思しき反応が確認されている
制御装置から確認されたライヴス反応はこの従魔の物のようだ

リプレイ

●地下通路
 以前の殲滅戦を経てやや崩れている通路を進み、エージェントたちは依然訪れた洞窟の最奥に到達していた。そこにあるのは大型のエレベーターだ。見た感じ人が2桁人乗っても余裕がありそうなほど大きい。
 彼らは予め用意していた通信機を身に着けエレベーターに乗り込む。どうやら電源はまだ生きていたようで、エレベーターは小さな音を鳴らして稼働した。
 迫間 央(aa1445)がそれに対して苦笑気味に話す。
「でもまさか、この現代にダンジョン攻略が楽しめるとは」
『……在る所にはあるものね……』
 マイヤ サーア(aa1445hero001)は思わずうなった。
『調査してマッピングをするのか。ダンジョンを探索する冒険者のようでワクワクするな、悠登』
「いつも気楽でいいなあ、ナインは。俺はあまりそんな気分にはなれないよ」」
 楠葉 悠登(aa1592)はナイン(aa1592hero001)の言葉にげんなりしながら口を開く。
「人間の改造とかしてた施設なんだろうし……」
『ふむ。そういえばあの改造従魔も出るかもしれないんだな』
『従魔の改造ですか……なかなか面倒な相手のようですね。とてもではありませんが、人道的な対応は期待できなさそうです』
 話を聞いていた構築の魔女(aa0251hero001)が小さく呟いた。同意見を抱いていたようで、傍にいた辺是 落児(aa0281)もうなずく。
「そういえば、森の調査からのつながりがあったな……あいにくと洞窟調査の方には行ってないからいまいち事情は掴み切れてないんだが」
 赤城 龍哉(aa0090)は思い出したように言った。
 ヴァルトラウテ(aa0090hero001)はその言葉に対して付け加えるように言う。
『ですが今までの情報と犯人のたち振る舞いから、用意周到、むしろ狡猾と言ってもいい印象を感じますわ』
「ああ。仕掛けと置き土産から考えて眼があると思って間違いないだろうな」
「眼……監視、かな。確かにありそうだ。以前ここに来た時もどうやら一部始終を見ていたみたいだし」
『それに加えて、どうやら人間の思考について一定以上の理解があるように感じられますね』
 下へ下へと向かっていくエレベーターの中で言葉を交わす。
 預かっていた機器の確認と行動方針の確認は既に済んでいた。
 乗り始めて十数分ほどたち、エレベーターはようやくその動きを止める。
 開いた扉からすぐには出ずに、彼らはまず周囲を警戒した。
「……思ってたより、ちょっと、明るい」
「……ん。でも……念のためにつかうね~」
 通路は多少の光源があったため、薄暗いが見えなくもない程度に明るい。
 そのことに依雅 志錬(aa4364)は小さく驚きを示す。
 先ほどまで呆けていた藤岡 桜(aa4608)も同意し、しかし念のために周囲の全員に対してライトアイを使用した。
『思ったより広い通路ね……』
「何のために作られた場所なのか……それはこれから調べるしかないか」
 特に脅威らしい脅威がその場にないことを確認すると、彼らは道を進んでいく。
「こういう場所だと赤外線感知やら感圧式やらが使われることが多そうだが」
『もっと古典的な仕掛けがないとも限りませんわ』
「何か卓戯の頃を思い出すぜ」
 警戒しつつゆっくりと歩を進めていき、その最中に龍哉はふっと何かにつまずきかけた。
 それと同時にガコン、と何かが作動したような音が聞こえる。
「おっと。……ああ、これはまずいな……」
「遠くから、明らかにヤバいものが来てるね……」
 ゴロゴロと何かが転がるような音が響いてきた。静かすぎる環境だからか、その音は嫌になるほどはっきりと彼らの耳に届く。
 どうやらそれは落石のようであった。サイズはおおよそ3メートル程度。壁際によればギリギリ回避できそうではあるが、そうした場合どうなるかわからない。
「□□――」
『ええ、破壊しかないですね……あまり、壊さない方がいいのかもしれませんが』
 迫ってきた石を黙視すると落児が銃を構え発砲するが、回転する石は想像よりもいくらか硬いのか破壊するまで至らない。そのまま迫ってくる岩を攻撃できる余裕もあまりないので、彼らは壁際に退避した。
 岩はすさまじい速度で転がり、横を通り抜けていった。しばらく後に何かに当たった音と破砕音が聞こえる。どうやら避けた落石は彼らが乗ってきたエレベーターに激突したようだ。
「これはなかなか、よく見なければ見抜くことはできなさそうですね」
『床とほぼ同化していますね……音でおおよその位置を見ながらあとは足元をじっくりと見ることでしか見分けがつかなさそうです』
 罠を避け切った彼らはじっくりと罠を観察し、対策を試みる。
 どうやらそれは押しボタンのようになっているようでボタンとそれ以外の個所ではごくわずかな段差ないし隙間がある程度のようだ。
「とにかく、解除しよう」
 央の手によって床が取り外され、ボタンに細工が行われる。
『なかなかいやらしい物ね。幸いにしてスイッチのサイズはそこそこだから、注意していれば次からは避けられそうだけれど』
 気を取り直して彼らは再び道を進んでいく。
 1度罠にかかってしまってからは、警戒のために移動速度がさらに低下し調査は遅々として進まない。
 進むにつれて増えていくセンサー類に引っかからぬように道を行く。
 構築の魔女が予め想定していたようで、センサーの方は難なく無効化できた。
「ん? これは……」
 道なりに進んでいくと、先頭に立っていた央が途中で複数のボタンなどが設置された筐体を見つけた。
「制御装置、か?」
 キーボードが備え付けられているため、それを用いて操作する。
 特にカードキーやパスの入力などをする必要もなかったようで、電子音と共に赤外線センサーが停止したという通知が出た。
「案外あっさりと止められるんだな……」
「この通路の利用者ならすぐに止められるようになってるのかも」
「その線が濃厚ですね。この端末に与えられた権限はあくまでメインの通路にある赤外線センサーに関するものだけみたいです」
 しかしこれで進行速度は上がる。
 気を取り直して進もうとしたところで、周囲にうっすらと霧がかかってきた。
「来たか……出会わないで済めばよかったんだけど」
『出てきたなら倒すしかないか』
 霧が出てくると同時に悠登は前に出た。手に構えるのは大ぶりなシールドだ。以前戦った時の記憶から相手の基本先方は奇襲と割れている。そのため奇襲に対するアクションとしてあえて自分を狙わせるための行動だ。
「こいつが例の……身を隠して寄って来ようって手合いか」
「ライヴスが乱される……面倒だが、こちらにも手はある」
 弓を引き絞りながら隙なく周囲を伺う龍哉と、やや下がりつつも刀を手にいつでもとびかかれる準備を整えた央。
 落児と構築の魔女はその場で武器を構える。志錬とS(aa4364hero002)、桜とミルノ(aa4608hero001)もそれぞれ周囲を警戒しながら戦闘態勢に移っていく。
 じりじりと緊張感が高まっていく中で先手を取ったのは敵の方だった。
 嗅覚でもって位置を察知して爪で切り裂くように突撃してくる。攻撃を受けた悠登は完全にそれを受け流し、止められた従魔はまた霧の中に消えていく。
 攻防は何度か繰り返されるが双方ともに大きなダメージは与えられない。
「どこにいるか見えない……が、掛かってくる気配で丸見えだぜ」
 何度攻撃をかわしたかわからなくなってきたころ、龍哉の放った矢が従魔の中心をとらえた。攻撃を仕掛けようとしてきたところを射抜いたため、矢は頭頂部を正確に穿っている。
 いかに従魔であっても頭を飛ばされては致命傷であるのか、少しよろめくと倒れて消滅した。
 エージェントたちは霧が晴れても周囲を警戒する。しかしいくら待っても次が来ないことがわかると、再び探索を開始した。


●繋がるみち
 しばらく道を進んでいくが、いっこうに果てが見えず従魔もほとんど出てこないことにエージェントたちは小さな疑問を抱いた。
 道中何個かの制御装置を解除してきたが、従魔が出てきたのは最初の分を含めて3体程度だ。
 罠も見つからなくなってきており、今は地図を埋める作業中。あまりに順調すぎるその状態が逆に怪しく感じてしまう。
「っと、またエレベーターか?」
『そのようですわね』
 地下通路に入る時に使ったものと同じ大型エレベーターが通路の先に設置してある。龍哉が思わず口にしてしまったように、見つけたのは1度だけではない。
『これで4つ目ですか。サイズはどれも同じくらいみたいですね』
 周囲を見渡していると、落児が急に道のやや右側でしゃがみこんだ。
 訝しがって央もその地点に近づく。
「□□――? □□……」
「これは、タイヤの跡、ですかね」
「幅……20センチ、くらい?」
『そのくらいですと、思い浮かぶのは結構大型の車両になりますが』
 その場で写真を撮る。薄暗いのでうまく撮れるかどうかやや疑問を覚えたが、確認したところ問題はなかったようだ。
「上に出た後で調べてみようか」
『タイヤ痕に大型エレベーターだと、まあ用途は想像できるが』
「それを考えるのも後回しだ。とりあえず、探索の続きだな」
 志錬が書き込みを終えるのを待ち、再び先へ進む。
 地下通路に突入してから結構な時間が過ぎたが、まだ果ては見えてこない。
 1度地上に出ることも考えたが、彼らは残りのマッピングを優先することにした。
「ここの図面……かすれてて全体は見えないけど、残りの罠はあと1つくらいかな」
「犯人のことを考えたら図面に載ってる分よりも多そうだが……まあその時はその時か」
 残っている罠は何が残っているのか想像もつかなかった。
 思いつくような罠はほとんどが構築の魔女や央、桜の手によって物理的に対処ないし解除されている上、それらを制御していた装置もほとんどが既に機能していない。
 制御装置は筐体周辺から感じられる微弱なライヴス反応を基に探せるので問題はないが、他の罠はライヴスをまとっていないものが多いため視覚や聴覚に頼るしかない。
 薄暗い通路内ではそれも難しいのだが、彼らは能力者であるためスキルや装備でおぎないつつ、罠がないかを調べる。
「む……ライヴスの反応がありますね。この感じですと、制御装置でしょうか」
「お、これで最後か?」
「確定ではありませんがね」
 龍哉の言葉に央が肩をすくめながら答える。
 そうして警戒しながら反応があった方に進んでいけば何度か見かけ、操作した筐体が見えた。
「これを操作して無効化してやると終わりだけど、そう簡単にはいかないみたいだ」
[――ウ、ウ、ゥウウウウ……!]
 筐体の周辺から卵に翼と腕の生えた従魔が現れる。
 以前に出現がされたよくわからない――あるエージェントの推測では人間を改造したものとされている――従魔たちだ。しかしその姿は以前確認された状態よりも何かが進行しているように見える。
 それはどこかから声のようなものを発したことからわかる。
「……こいつは」
『単なる憑依……ではありませんわね。これも改造従魔ですか』
「胸糞すぎるな――気に入らねえ」
 最初から警戒状態だった全員が戦闘態勢をとった。
[ウ、ウゥ……]
[ウ、アァ……]
 従魔たちはその場で何もせずに唸っている。
 エージェントたちは陣形を改めて整え、攻撃態勢をとった。落児の放った攻撃は威嚇程度のものだが的確に敵体力を削り、その間に央と桜が接近してする。志錬はワイヤーによるトラップを設置して後衛と従魔との間の壁を設置していく。
 それでも変わらず従魔たちは動こうとしない。
「隙だらけだな」
 龍哉がロケットアンカーを使用して従魔の翼を掴み、地面へとたたきつけた。落ちた方に央が向かい即座に追撃する。忍刀で一閃すれば、抵抗もなく従魔は真っ二つに割れて霧散した。
「あっけないな」
『あと1体ですね』
 消滅した従魔を見て、小さく呟いた。
 残った方はそれを気にすることなく、翼を小さく羽ばたかせ滞空し続けていた。攻撃をする気配はない。
[ウウウァアアアァ]
 小さく羽ばたきながら唸り続ける。
 エージェントたちは困惑した。まるで敵意を感じられないためだ。
 しかし放っておくことはできない。従魔は放っておくとどんな脅威に発展するか想像できず、そうでなくてもこの従魔は終了させるべきだからだ。
 唸り続ける従魔に接近し、桜が鎌を振るうと従魔は翼を切られ墜落。そこを落児が撃ち抜くことで2体目もあっさりと倒された。
「これで全部ですね」
 非常に後味が悪かったが、仕方のないことだと割り切って央が言った。
 そのまま、まっすぐに制御装置へと向かうとこれまでと同じように操作して通路内の仕掛けを解除する。今度の物はどうやら通路の広範囲に仕掛けられていたようで、駆動音が一斉に消えた。
「……一気に静かになった」
「ありがたいかな……これで、より接近してくる従魔に気がつきやすくなるし」
『索敵や警戒がしやすいのは助かるからな』
 先ほどまでは耳を澄ますと駆動音が響き渡っていたが、現在は通路内は静まりかえっている。足音が相当遠くまで響くのが聞こえるほどだ。
 彼らは再び道を進み続けた。
 歩き続けていくと、途中から徐々に上り坂になっていく。その状態になってからおおよそ3時間が過ぎる。探索を開始してから合計半日ほどで、彼らはようやく最深部と思われるところに到着した。 
 通路よりもさらに開けた空間だ。奥の壁はどうやら隔壁のようである。隙間からは小さく光が漏れ、風も入り込んでいた。
「これは出口、でいいのか?」
『シャッターが降りていますわね』
「……壊すか?」
「□□」
『もうちょっと周辺を見て、どうしようもなかったらそうしましょう』
 見たところ出入り口兼ちょっとした倉庫として扱われているようで、いくらかの段ボールなどがスチールラックに積まれている。結構な量があるが、軽く中身を確認するとほとんど中身は入っていない。
「……段ボールを見る人と、周辺を、探索する人でわける?」
「その方がいいだろうなあ」
 ちらりと見ると、全員がうなずいた。
 スチールラック越しに見える壁は想像以上に遠い。さすがに何時間もかかるとは思えないが、全員で固まって調査しようものなら必要以上に時間がかかってしまうかもしれない。「一応半々で分かれたほうがいいでしょう」
『こんな狭いところでも従魔が潜んでないとは言えないものね……』
「特に敵はジャミング持ちだ。一応対策はしてあるとはいえ油断はできない」
『サポートタイプと戦闘のできるタイプで分かれるのがいいか』
 現在この場にいるのは龍哉とヴァルトラウテ、落児と構築の魔女、央とマイヤ、悠登とナイン、志錬とS、桜とミルノの6組12人。前衛として戦える人員と後衛として戦える人間、支援を行える人間が3人ずつになるように分けられるため、彼らは相談して2組に分かれた。「こちらは俺とヴァルトラウテ、迫間さんとサーアさん、依雅さんとSさんか」
『こちらは落児さんと私、楠葉さんとナインさん、藤岡さんとミルノさんですね』
「前衛、後衛、支援が1組ずつでちょうどいいですね」
「あとはどっちがどこを見るかだけど……」
 悠登はちらりと周囲を見る。
『どうしましょうか』
「隔壁から見て左側が俺たちであんたたちが右側でどうだ?」
『見た感じおおよそ半分ずつですわね』
 確認をとると、それぞれ別れて探索を開始した。
 通路ほど長くはないが、途中の段ボールを調べるとそれなりに時間がかかる。
「これは……うーむ」
「何かのアイテムとか、資料ばっかりだな」
「……レポート?」
『実験に関するものである可能性もありますから回収しておきましょう』
 内容を流し読みすると、彼らは書類群を幻想蝶に格納した。
 そのまま続けて歩いていると、通信機に反応があった。
「どうかしましたか?」
『こちらのほうで隔壁の操作端末を見つけました』
「操作端末を?」
『はい』
 央が問うと、通信をかけてきた構築の魔女が答える。
『私たちは入り口――隔壁沿いに探索を進めていたんですが、隔壁からいくらか離れた地点で操作端末を見つけたんです』
「どうやってそれがシャッターの開閉装置だってわかったんだ?」
『消去法ですね。操作してみても罠や仕掛けに関係するものではありませんでしたし、扉の傍に置かれるものであとは開閉装置くらいではと』
「なるほど……」
 央はうなずいた。聞いてみたところおかしなところはない。
 であれば操作してもいいかもしれない。
 とはいえ現在は捜索中であるため後回しにする方がいいかもしれないとその場では処理された。

●先にあるものは
 そして室内のほぼ全部を見終わった後で彼らは再び隔壁の前に集まる。
「これでほほ全部ですね」
「通路にあった罠は解除したんだよな。じゃああとはエレベーターとこのシャッターの先がどうなってるのかだけか」
『そうですね……それでは早速操作してみましょう』
 構築の魔女が端末を操作する。
「あ、開いたね」
「外は……森?」
「また森か……森が好きなのか? ……いや、冗談だが」
 隔壁が開いたので彼らは外に出た。
 外に広がっているのは森だ。
「道路は舗装されているみたいですね」
『こんな森の中の道が?』
「……なんでだろう?」
 木々は適度に間引かれ、道はコンクリートで舗装されている。
 今まで通ってきた道と同じかそれよりも少し狭いが、それなりに広い。
 じっと見てみると舗装されてからそれなりに時間が経過していることがわかる。
『特に襲撃とかはない……か?』
「でないならそのほうがいいかな……もう疲れたよ」
 周囲の警戒をしながら、写真などを撮っていく。
「それにしても大規模な施設だったね……ほんとうに、単独犯なのかな」
「どうでしょう。1人でこの施設を作ったりするのは難しいような気もしますが」
『協力者の存在は確定でしょう。全部1人でやっているのならばさらに厄介ですね』
 ただでさえ厄介なのに、と構築の魔女が言う。
「おーい、連絡ついたぞ。近くの支部から迎えの車を出してくれるらしい」
「……GPSが使えてよかった」
 少し離れていた龍哉たちが合流する。
 作成した地図の整理と連絡をしていたようだ。
 合流地点に向かって歩き始める。道中の話題は今まで歩いていた地下通路についてだ。
「罠はあったけれど、それらしい発見は少なかったな」
『地下通路にはないわね。他の施設につながってるエレベーターはあったけれども』
「□□□? ……□□」
『あの幅のタイヤは輸送車両のものらしいですね。先ほど調べてみたのですが』
「ということは、あの通路は輸送用のものですか。それならばあの広さも納得がいきますね……」
『私たちは本来車を使うようなところを歩いて探索したのね……』
 意見を交わしながら道を進んでいく。
 そのやや後方で悠登は小さく息をついた。
「この事件の先には、何があるんだろう?」
『もし改造従魔が試作品だとすれば、最後には……』
「最後にはどうなるの?」
『……?』
 悠登の言葉に、ナインは首をかしげた。
「いやいや、首をかしげてないで最後を言ってよ」
『続きなど何もないぞ。どうしたんだ?』
「もー……」
 ナインの言葉に調子を崩されたが、悠登は気を取り直して先に思いをはせる。
「従魔が改造できるなら、最悪愚神も……いやいや、それはないか」
 従魔だけならず愚神も改造する……どんな存在であれ、そのような力を持っているとは思いたくもない。ただでさえ強力な愚神をさらに強化するなど、そんなのはただの悪夢だろう。
 悠登は首を振るう。
「今はとりあえず資料と情報の整理かな」
『そうだな』
 気がつくと悠登たちは仲間たちからやや遅れていた。
 駆け足で近づくと、仲間たちと意見交換をし始める。
 先にあるものはまだ見えない。しかし、この調子で情報を手に入れ追い詰めていくことができれば、その先の真実も見えてくるはずだ。
 そう信じて彼らは道を行く。――空はどんよりと曇っていた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 薩摩芋を堪能する者
    楠葉 悠登aa1592
    人間|16才|男性|防御
  • もふりすたー
    ナインaa1592hero001
    英雄|25才|男性|バト
  • もっきゅ、もっきゅ
    依雅 志錬aa4364
    獣人|13才|女性|命中
  • 先生LOVE!
    aa4364hero002
    英雄|11才|女性|ジャ
  • 薄紅色の想いを携え
    藤岡 桜aa4608
    人間|13才|女性|生命
  • あなたと結ぶ未来を願う
    ミルノaa4608hero001
    英雄|20才|女性|バト
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