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狂気の産物を滅せよ
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相談卓
最終発言2017/02/23 20:58:35 -
質問卓
最終発言2017/02/21 22:32:51 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/02/22 09:12:59
オープニング
●おぞましい実験
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12月10日
從魔にオーパーツを与えてみたところ面白い反応が見られた。与えたのは霧を出す程度の力しかないものだったが、従魔に与えた瞬間に特殊な反応が見られた。その結果、高いステルス性を持った霧を生み出す従魔が生まれた。
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12月12日
例の従魔を適当に森に放った後、HOPEに報せのような形で文を投げ込んだ。奴らがどのような反応をするかわからないが……さて、いいデータがとれるといいんだが。
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12月20日
どうやら奴ら、さんざん放置していたと思ったら能力者たちを派遣してきた。残念だがここが潮時か。例の従魔に関してはもう十分に実地データはとれた。霧に関しては以前ステルス性を持つと述べたが、どちらかというとチャフに近い性質のようだった。出す霧にライヴスの反射能力があり、それによって対象を判別しにくくしているらしい。
その能力を存分に駆使し、従魔は多くの実験材料を入手してくれた。
得られたデータを元に様々な施術をしていこう。どんな結果が得られるか、今から楽しみで仕方がない。
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12月21日
笑いをこらえることができない。なんと愉快なことか。
人間にオーパーツを埋め込んだときは想像を遙かに下回る結果で落胆したものだが、從魔と掛け合わせるとこうも変わるのか。従魔の性質が強かったのか、姿形こそ人間離れしたものになってしまったが、知性は有しているらしい。彼らの現状をあえて伝えず、目の前の敵を倒せば開放してやるとだけ述べ、互いに争わせたが――素晴らしい。
戦闘力は十分。特殊な能力はあまりないが……しかし、知性があるのはいいが無駄に賢いのはいただけないな。この思考能力の部分をもっと従魔に近づけて――む、
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●科学者の影
エージェントたちの調査によって回収された観察レポートを見た職員は思わず口を押さえた。
そこに書いてあるのはとても正気とは思えない実験内容と、その結果であり、しばしば執筆者――実験を行っていた者の考察と思われる内容も記載されていた。
「これはどうやらあの森で行っていた実験に関する物のようだな……」
布屋 秀仁(az0043)はあまり厚くはない紙束を手につぶやいた。
「中身は大して詳しくは書いていないか。まるで、読まれることを前提として書いているようだ」
わざと放置していたとみられる森の遺留品の存在を考えると、これも何かの意図をもって放置されていたように感じる。
秀仁は額に力が入るのを感じた。どう考えても放置するわけにはいかないが、罠という可能性もある。
「調査しようにも、所在が不明じゃあな……」
加えて、この研究を行っていたものが現在いる場所も不明である。
一応、残存していたライヴスほかの反応から捜索をしてもらっているが、めぼしい結果はない。
行き詰まりか、そう考えていると別室でデータ整理をしていた米屋 葵(az0043hero001)から連絡が届いた。
「どうした?」
「以前探索した森のそばから、類似のライヴス反応が確認されたんだって! 数は3。大きさから従魔の物だと思う」
「あまり多くはないが……放っておくわけにはいかないか」
すぐさまデータを送ってもらい確認する。
それらを簡単にまとめると、本部に回してエージェントの応援を要請した。
解説
●目的
現地へと向かい、出没したライヴス反応の原因を排除する。
●舞台
人里から離れた洞窟
入り口付近は狭いが中へ進むほどに広くなっていく
道中後半および最深部には明かりが用意されているようだ
//以下PL情報です
●出現敵
〇改造従魔(獣)
従魔にオーパーツを融合させた存在。
見た目や能力は元となった犬型の従魔とさほど変わりがないが、オーパーツと同じ能力を有する。
この従魔は霧を発生させることができるようだ。
〇改造従魔(??)
何らかの改造を施された従魔。
複数の改造が施されているようで元となったものが何であるかはうかがえない。
見た目は卵型の物から腕と羽が生えている。
主な攻撃手段はライヴスを用いた魔法攻撃と様々な状態異常を付与する波動。
リプレイ
●狂気の産物
エージェントたちは森を抜けて目的地とされる洞窟の前にたどり着いた。
洞窟は目に見えて異界化しているわけではないが、どこか不気味な雰囲気を漂わせている。
その前で彼らは自身の装備にペタペタとシールを張り付ける作業にいそしんでいた。
「一応全員に十分いきわたるくらい用意したつもりだったけど、大丈夫?」
『見た感じ問題なさそうだがな。あとは蓄光効果がどれだけもつかだが』
伴 日々輝(aa4591)は自身や周囲を見渡しながら言った。
それに対しグワルウェン(aa4591hero001)がぶっきらぼうに述べる。
それぞれの武器や防具――主に背面を重視し、前面にも少々貼っているのを見るに十分そうである。
「確認したいが、洞窟内の道中は、1列で進行。枝分かれしていた場合に、2班に分かれ進行する、のでよかったか」
「そうね。それに加えてそれぞれの班に1人ずつ回復役を配置すればいいかな」
アリス(aa4688)の確認に反応するように、庄司 奈津(aa4679)が返す。
「班はAとBで分けるとして、Aは奈津とポーフォート、俺とガウェ、沙樂とくくり、ソーニャとラスト。B班はアリスと葵、茨稀とファルク、早乙女と伯爵、楠葉とナインか」
日々輝は1度整理しなおしてその場で告げる。
聞いていた早乙女 真祐(aa4973)は頭を振った。
「はっ、めんどくせぇめんどくせぇ……考える気も起きねぇし適当に指示くれ」
『こらこら……すまないねみんな。マユちゃんは根はいい子だから気を悪くしないでほしい』
一瞬悪いほうに行きかけた空気をシルクハット伯爵(aa4973hero001)が元に戻す。
そうして確認が済むと、彼らは事前に決めていたように隊列を組んで洞窟内へと進んでいった。
それから少しの間は静かな行進が続いた。既に敵のテリトリーであり、油断することはできない。
道中、グワルウェンは手にしたシートに蛍光ペンでマークをつけながら進行していた。
そんな彼に対して声がかかる。
『……グワルウェン。薄暗いとアンタ見えにくいのよ、肌と景色が同化して』
「あ? なんだとこのオカマ野郎」
声をかけたのは周囲を警戒しながら進んでいた奈津の英雄、ボーフォート(aa4679hero001)である。
彼の言葉にグワルウェンは顔をしかめた。
(同化云々はともかくとして、暗くて狭いけど大丈夫? つっかえたりしない?)
「問題ねえ。どこぞのどんくさいオカマと違って俺は野育ちだからな」
『あら、どんくさいオカマってだれか知らねえ……』
小声で言葉を交わしながら、彼らは歩を進める。その間も警戒を解くことはない。
徐々に光が入らなくなり薄暗くなってきたころ、くくり(aa3693hero001)が首をかしげた。
『見たところ、罠らしきものはありませんし、何だか呼ばれている気がしますね。であればお相手はレポートを書かれた方でしょうか……』
「……さあ、どうでしょうね?」
沙樂 空(aa3693)はそれに対してくすくすと笑いをこぼす。
くくりの言うように、襲撃らしい襲撃もなく罠も確認できていない。それはまるで誘い込まれているかのようである。
――何かある。彼らは本能的に察知した。そしてそれはけして間違いではなかった。
「む……これは」
隊列の中央を歩いていたソーニャ・デグチャレフ(aa4829)が何かに気が付いたように足を止めた。
即座に自身の英雄であるラストシルバーバタリオン(aa4829hero002)と共鳴し視線を先へとやった。
「どうやら従魔のようであるな」
薄暗い洞窟内でもその姿ははっきりと目に映る。
卵のような白い楕円の球。そこから生えた天使を模したような羽毛つきの羽。そして卵型の本体から伸びた生身の人間の腕。
「あの腕は人間の? 孵る途中のようにも見えますが……」
空が何かに気が付いたように口を開く。しかしその場ですぐに頭をふるった。
彼の脳内には既にこの従魔についておおよそどのような状態であるかの予想はできている。
――そのうえで、討伐することには変わりがないのだと判断した。
「……運が悪かったですね、あなた」
『ソラ、救いの手はないのでしょうか……?』
「くくり、あそこまで堕ちては、もうどこにもいけませんよ」
くくりの言葉に冷静に返して、空は武器を構える。
他の面々も既に戦う用意を済ませて見せたが、困ったことに現状では満足に攻撃を行うことができない。
全員が武器をふるうには、その道はまだ狭かったのだ。
そこで真祐が行動を起こす。
「ったく、もう仕事かよ……いくぞ毒島さん。俺に力を貸してくれ」
『はいはい、初陣はカッコよく決めようか』
「あの敵をもう少し広いところまでおびき出す……いくぞ」
脚につけられた車輪が回転し、その体を進ませる。味方の横をすり抜けるように駆け抜け、それなりに速度が乗ったところで従魔に蹴りを叩き込んだ。
一撃は従魔から見て左斜め前から突き刺さり、その体躯を押し出して壁へとぶつける。
続けて共鳴したボーフォートが接近し、手にした剣で切り付けた。
それによって十分に距離を稼いだエージェントたちはそこが十分な広さであることを確認して攻勢に出た。
先手を打たれ立て続けに攻撃を受けた従魔はそのままあっさりと沈められた。
「……来た、これが例の霧……!」
浮遊していた従魔を倒し切ったか確認しようとしていた彼らを霧が包み込む。
「でも、わかっていれば対処はできます」
茨稀(aa4720)は手にした扇を大きく振るった。
それらの多くは全くの無意味であったが、起こった風によって自身の周辺の霧は追いやることができた。
そばにいたアリスもまた同様に武器を振るい、周辺の濃霧を吹き飛ばす。
「見えた……そこ、だ」
そしてカラーボールを投げつけたが手ごたえはなかった。
その後すぐに、徐々にだが霧が晴れていくとそこには敵がいなかった。
「逃げられたか」
楠葉 悠登(aa1592)はしばらく周囲を警戒するように見た後、小さく息を吐いた。
『みたいだけど……まだそんなに離れていないかもしれない』
「そうですね。予定通り、先行して確認してきます」
ファルク(aa4720hero001)の言葉に続けるようにして、茨稀は言った。
斥候については事前に話をしてあるため、暗視ゴーグルを使用しライヴスを纏うと無言で先へと進んでいった。
着々と進んでいく茨稀は、その道の様子などを確認していく。
しかしどれほど進んでも先ほど遭遇した敵は見受けられなかった。
「想像以上に足が速いですね……」
どれだけ進んでも分岐がない道を進みながら小さくつぶやく。
そしていくらかたったころ、またしても卵型をした異形の従魔を見つけた。
見つからないように消火器と蛍光インク代わりの染髪料でマーキングを施す。
「あの従魔、衝撃や匂いは感じていないのか……?」
マーキング後、従魔から大きく後方へと対比すると、茨稀は口を開く。
そしてその場から更に後退し、前進してきていた仲間たちと合流した。
●謎の声
先ほど茨稀がマーキングした相手を手早く片付けた彼らはそのまま進行を続けていた。
歩いてきた道は気が付けば相当に幅が広がっており、もう2人くらいが武器を振り回しても大丈夫そうなくらいになった。
入り口近くでの遭遇以来、霧を起こす従魔とは遭遇していない。
こちらを警戒しているのか、それともこちらが警戒を解いた瞬間を狙っているのか……どちらにせよ姿を見せないせいでそれなりに緊張を強いられる。
「もうだいぶ先に進んできたけど……まだ最奥には着かないのかな」
悠登が小さくぼやいた。
集中力を維持したまま、かれこれ3時間は歩いている。そろそろ奥に着いてもいいのではないかと考えてしまうのも無理はない。
なんせこの洞窟はあまり大きくないという情報があったのだから。
「そうだねー……いい加減――っと、着いたみたい」
歩いていた彼らの行く先から光が漏れてきた。
進んでいくと微妙に開いた扉がある。おそらく見えた光はこの扉の隙間から漏れていたのだろう。
一番前に立っていたボーフォートが扉を開いた。そして開ききったタイミングで警戒しながら中へと入っていく。
『明るい……』
「それに、結構、広い」
昼ほどとは言わないが、そこはじゅうぶんな光源が用意されているようで洞窟内とは違い非常に明るかった。
くくりとアリスは思わず感想を口にする。
「――ふふふ。ようこそHOPEのエージェント諸君。わざわざこんな洞窟の奥まで来るとは……私としても予想外だった。いやはや、まさかね。ふふふ、やはり考える頭があると変なことを起こす。従魔には、不要か」
少しの間周囲を見ていたエージェントたちに、どこからか声がかけられた。
「いやいや、探しても無駄だよ。先ほどそこを出たからね。見ての通りもぬけの殻さ。未完成の資料は放っておいているが……まあ所詮は未完成だ、見られても何も困らない」
完全に下に見ている発言だった。いやらしいしゃべり方が余計にそう感じさせる。
しかし言っている本人の言葉を信じるならば彼はここにはいないのでぶっ飛ばすこともできないだろう。
「さて、ここまで来て頂いたからにはおもてなしが必要だ。私はそこにいないからね……さて、どうしたものか。悩むな……――いや。そうだ、いい物があった」
思いついたような声音で、謎の声の主は言った。
「――せっかくだ。私のかわいい子供たちの力を味わっていきたまえ。道中にいた分ではまだまだ味わい足りなかろうからね」
「ぬ……! 各員散開!」
ソーニャの言葉で全員が飛び退った。直後、そこを駆け抜けるようにライヴスの炎が走る。
見れば天井から道中遭遇したものよりも一回りほど大きな従魔が降りてきていた。
それと同時に少しずつ室内に霧が充満していく。視線を下すと、壁際に犬のような従魔の姿が確認できる。
「さあ、見せてくれたまえ。君たちの可能性を――」
声が途切れるのを待っていたかのように、従魔が動き出す。
エージェントたちは霧によって少なからず視界を奪われた状態ではぐれぬように、蓄光テープを頼りにしながら一度集合する。
「厄介な状態だな……こんなにも広いのに何も見えねえ」
「相手もそれは同じのはず……ですが、何らかの対策を施してる可能性が高いでしょうね」
グワルウェンの言葉にボーフォートが返す。
「それに加えて空中の従魔もいる。見た感じ、犬型が攻撃兼かく乱で飛行型が射撃補助か?」
「めんどくせぇな……役割分担までばっちりってことかよ」
「消火器と染髪料、あるいはスキルでのマーキング……という手もありますがうまくいくかどうか」
周囲に気を配りながら話し合いをする。
その間にも従魔の物とみられる影が彼らのほうへと接近していた。
「例のレポートを信用するのであれば、奴らに対しては太古の昔から人間が頼りにしてきた聴覚、あるいは嗅覚を用いるのがよさそうであるな」
「戦ってる最中に、確認する方法がある?」
「難しいかもしれないな……ライヴスの流れで確認しようかと思ったけど、それも厳しそうだ」
ライヴスを乱反射させる性質上、ライヴスの流れも特殊すぎるため、ライヴスによる確認ができなかった。
「相手は犬……獣の本性が残ってるなら、試したい手が1つある」
「ふむ、それはどんな方法だ?」
「今ちょうどオイルを持ってきてるんだが、こいつに火をつけて相手の行動を阻害する。下手をするとこっちにも害があるけど――」
「それはこっちが気を付ければいい話か」
話し合いを済ませると、それぞれほんの少しだけ散らばる。
ソーニャと空は味方にあてないように気をつけながら移動と射撃を行う。その相手は主に空中にいる飛行型だ。それに加えて時折、威嚇のために地上への射撃などを挟んでいく。
相手の位置が正確に把握できないために、見当違いの方向へ放ってしまっているが味方へ容易に近づけていないのを見るに無駄ではなさそうだ。
その間にグワルウェンは地上に鈴をまいた。
「鳴子代わりってとこだな。これなら敵味方、どちらが来てもわかる」
「あら、考えたじゃない」
「見えないなら見えないなりにやり方があるからな」
ボーフォートの言葉に軽口を返しながら移動し、また鈴をまく。
そしてそれぞれが適度に散らばり始めたところで、1人高速で移動を開始する影があった。オイルを持った真祐だ。
「行くぞ!」
オイルをまき、車輪の回転によって生み出された摩擦熱で発火させる。炎のラインは直線的だが相手の行動制限には十分役立っているようだ。
鈴があるところを避けてまかれたオイルと炎は地面を移動する犬型の従魔の行動範囲を狭めていく。
やがて炎によって包囲された犬型従魔はまかれた鈴の1つを踏みしめて大きな音を鳴らした。
「そこか!」
真っ先に気が付いた悠登が接近し、刺突攻撃を行う。
すんでのところで避けられてしまうが、その先にはやはり鈴があり位置を特定したほかのメンバーによる攻撃が犬型の従魔を襲った。
グルルルル、と唸る従魔。一瞬足を止めることで霧による視覚妨害と併せて再び姿を隠すつもりのようだ。
しかしそれを許すはずもなく、おおよその位置を狙って放たれた攻撃が従魔を襲う。放ったのはボーフォートだ。
彼は発生させたライヴス空間内で発生して抵抗反応からおおよその位置を見極めて攻撃したのである。そしてそれは予想以上の効果を生み出した。
「グルァアアアアアアアアア――!」
攻撃を受けた犬型従魔は雄たけびを上げて後退する。よく見ると胸元を深く切られている。
そこにグワルウェンが追い打ちをかけた。ライヴスを集中させた一撃が上からたたきつけられ、従魔は地面に伏せる。
動けなくなったその瞬間に茨稀とアリスが攻撃を加えると完全に動きを停止した。
『さて、いかにも飛ぶためにありますと主張しているその翼、もがせていただきましょうか』
「届いたァ!」
そのころ、走っていた真祐はその勢いを利用して高く飛び上がり、飛行型従魔にとりつくことに成功していた。
手で翼をつかみ、脚を根元に添える。その状態で車輪を激しく回転させた。
「うるァ!」
そして脚を振り下ろして翼を切断すると、従魔を蹴り飛ばし自身は受け身を取ってきれいに着地する。
飛行型は翼を切り落とされ地面に激突していた。そこに向かって悠登が接近していく。
「もともと人間だったのかもしれないけど……すまない、放置はできないんだ。だからせめて、この一突きで終わらせる!」
黒いオーラを纏った一撃が球体に鋭く突き刺さり、痛みからなのか腕が暴れまわる。
そのまま刺し続けていると、その動きは完全に停止した。
「――素晴らしい。私としてはそれなりに面倒な布陣を敷いたつもりだったが、いともたやすく乗り越えるとは。能力者というものは素晴らしいな」
「厄介な敵ではあるが相手が悪かったな」
「なるほど、それは正しい感想かもしれない。今回の被検体たちでは能力者の相手は厳しかったようだ……」
ソーニャの言葉に肯定でもって言葉が返される。
声の主はどうやら一部始終をしっかりその目で見ていたようであった。
「……実験、か。興味深くはあるが……その目的が見えないな」
『より強い従魔の作成、というだけではなさそうですね』
アリスと葵(aa4688hero001)が声の主に問いかけた。
「ふむ、いや。より強い従魔の作成もまた、私の望むところではあるのだが……まあいい。ふふふ、私の見たいものは見れた。偶然のたまものではあるが、その点だけは感謝しておくとしようか」
声の主は大層ご機嫌なようで、うれしそうな様子を隠しもしない。
「さて、目的は達した。私は速やかに退散するとしよう。それでは諸君、ごきげんよう!」
最後に一言残すと、声は完全に聞こえなくなってしまった。
先ほどまでそこにあった、声の主のものであろうライヴスらしきものの残留すら感じることができない。
ここにいた従魔はすべて倒したが、実験を行っていたものには逃げられてしまった。その事実が彼らにはほんの少しばかり重かった。
●アフター
その後、少しの間惚けていた彼らは、気を取り直すと最奥の空間の調査を開始した。
真祐とシルクハット伯爵だけは調査に関して興味がないらしく、先に洞窟から出た。
『いいのかい? 行かなくても』
「はっ、興味ないね。……ただ、例え化けもんだろーとあんな風に命弄って喜んでるやろーってのは興味あるな。声からして胡散臭い感じだったが」
『ふっ……そうだな、では追いかけようか』
そうして話をしていると、他のエージェントたちも続々と洞窟から出てくる。
どうやらめぼしいものは回収し終えたようだった。
『……実験…………』
「どうしたの?」
洞窟から出てきてすぐにナイン(aa1592hero001)が口にした言葉に、悠登は首をかしげる。
『ふむ、なんだろうな。胸の奥が変な感じだ』
「俺はまた、お腹空いたって言い出すのかと思った」
『そうか……そうだな。早く帰ってご飯だ、悠登』
「はいはい。その前に報告しにいかないといけないけどな」
『それもそうだな』
ナインはどこか引っかかるような気がしたが、それを無視することにして流した。
それとは逆に茨稀はひどく鋭い目で資料をにらみつけていた。
「こんな実験……何を……」
『アレだろ、知識欲が旺盛過ぎる胸糞悪い御仁なんだろうさ』
「それだけではないような気がしますが……何の仕業であれ、不要で悪趣味な脅威は葬ります」
『茨稀。目が、怖い。ほら、スマイルスマイル』
「……阿呆ですか、ファルクは。行きますよ。これからこの資料を基に情報を集めなければいけません」
茨稀はそういうと、もう一度だけ資料に目をやる。
そこにあるのは、21日で途切れていた観察レポートの続きにあたるものだった。
得られた情報はそんなに多くはない。だが、資料を読んだ彼らのこのまま放置してはいけないという気持ちだけはより強くなった。