本部

急募! CM出演者! ~チャーハン編~

高庭ぺん銀

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/05/24 21:01

掲示板

オープニング

●募集要項
・依頼主:メモリィ社
・内容:CM(TV、WEB用)への出演、及びプロデュース
・条件:特になし。未経験者OK。
・制限時間:WEB版は自由。TV版は15秒。

1『とびきり炒飯』……チャーハンの素。乾燥タイプの具と調味液のセット。
 テーマは「今日は僕(私)が作る!」「人生最ウマ炒飯」。料理がほとんどできない人でも作れると評判なため、そういった人物とその友人、恋人などを登場させると良いかも。また母の日~父の日期間であるため、心温まるドラマ仕立てもGOOD。同居の家族、今は離れて暮らす家族、これから家族になる人など、ご自由に。

2『いきなり炒飯』……冷凍チャーハン
 テーマは「明日へのチカラ」or「気分は本格中華」。←は商品のキャッチフレーズでもある。お疲れの社会人や食欲旺盛な男子学生へ向けたアイドル路線、忙しい主婦を助けるイケメン路線などを想定。コメディ系も大歓迎。

3レシピコンテスト
 テーマは「私のとっておき、召し上がれ!」。5月末から、メモリィ社主催のオリジナルレシピコンテストの募集が始まる。テーマはチャーハン。オリジナルレシピを考えて、調理の様子をダイジェストにしてもよし、応募者の動機や奮闘にスポットを当てたドラマ仕立てにするもよし。その他のアイディアももちろんOK。

・イメージキャラクター:浜 綺羅子(子役・7歳)

・テーマ曲:『まほうのクッキング』(歌:浜 綺羅子)
 可愛らしいマーチ。演奏は吹奏楽風。

(一番の歌詞を抜粋)

きらきらお日様 かがやいてるよ
いつも笑顔のステキな友だち
きらきら星も 手を振ってるよ
握手をすれば みんな友だち

失敗した日やケンカをした日
涙の大波 飲まれそうだよ
そんなときには おいしいごはん!
元気もりもり湧いて来るんだよ

愛をありがとう いつもありがとう
どうしたら伝わるだろう、この気持ち
明日言おうよ 明後日言おうよ
それじゃダメダメ今すぐ伝えよう


●以下、プレイヤー情報
 椿康広(az0002)とティアラ・プリンシパル(az0002hero001)も参加者です。実際の完成時刻は皆さんと同じくらいですが、PLの皆さん向けのデモンストレーションとして公開します。テーマは3のレシピコンテストです。

――きらきらお日様 かがやいてるよ
 自室で綺羅子がテレビを見ている。聞こえてくるのは『まほうのクッキング』。康広が教育番組のお兄さんの如く朗々と歌う。
「私もレシピコンテストに参加したいなぁ。そうだ、この番組を見て研究しよう」
――いつも笑顔のステキな友だち
「ティアラの! ミュージック・クッキング!」
 エプロン姿のティアラと康広が登場する。
――きらきら星も 手を振ってるよ
 パステルカラーで統一された料理番組のセットである。
――握手をすれば みんな友だち
「本日のメニューは『ロックンロール・チャーハン』」
 ティアラが言うと、司会役の康広はフリップを胸の前に持つ。
――失敗した日やケンカをした日
「まずは、卵とネギとチャーシューを炒めるわ」
「ここまでは王道ですね」
 助手役の康広は手持無沙汰そうにしている。
「オレ、必要でしたかね?」
――涙の大波 飲まれそうだよ
「火力は強火よ。最大級に熱く燃やしなさい」
「これ、IHですけど」
「じゃあ、ハートを燃やすことね。それが助手の役目よ」
――そんなときには おいしいごはん!
「次はごはんをいれるの。当然、熱々の炊き立てよ」
「冷ごはんじゃなくて?」
――元気もりもり湧いて来るんだよ
「熱が足りないわね。椿くん、そこで歌いなさい」
「えっ、先生……隠し味とかは?」
「あなたの愛情よ。心を込めて歌いなさい」
 康広ははっとした顔をして、カウンターの下からギターを取り出す。『まほうのクッキング』が突如バンド演奏へと変化し、テンポも速くなる。
――愛をありがとう いつもありがとう
 ティアラはフライパンを画面の外へ追いやると、電子レンジの扉を開ける。
――どうしたら伝わるだろう、この気持ち
 ゴミ箱がアップになったかと思うと、そこには『いきなり炒飯』の袋が――。
――明日言おうよ 明後日言おうよ
 ティアラは『いきなり炒飯』をランチョンマットに置く。康広は気づかず熱唱している。
――それじゃダメダメ今すぐ伝えよう
 ティアラがパチパチと手を叩いた。
「これこそが『ロックンロール・チャーハン』よ」
「はい、先生! それでは試食に移りましょう!」
 一口頬張った康広が、固まる。
「美味い! やっぱり音楽の力ってすげぇぜ!」
 ティアラは頷くと、カメラ目線で言う。
「ミュージック・クッキング、今日はこの辺で」
「来週は軽い歯ごたえが楽しい『タンバリン・ピザ』をご紹介します」
 ピンポンパンポーン、とチャイムが鳴る。黒い画面に白文字で「このCMはジョークです。コンテストには正々堂々と参加しましょう」との注意書き。そして康広のナレーションが流れる。
「メモリィ社のオリジナルレシピコンテスト、まもなく募集開始。今年のテーマはチャーハンだ!」

解説

【補足】
・リプレイは作品をメインに描写しますが、撮影時の様子や完成品を見ての感想などをプレイングに入れても構いません。
・何組かで協力してもOK。また、一つのテーマに対して複数のCMが存在しても構いません。
・参加者は複数のCMに参加してもOK。また出演しない方がいても問題ありません。

【作品について】
・WEB版の作成を優先にお考え下さい。(15秒バージョンを作らない場合、WEB版のロングバージョンを切り取って15秒CMにした、という設定になります)
・撮影スタッフやセットはこちらで用意できます。
・特に言及がなければ、綺羅子の『まほうのクッキング』がBGMとなります。(字数調整のために、歌詞はある程度省略します)
・上以外の曲を使う設定でも構いませんが、使用できる曲はオリジナルソングのみとなります。希望があればMSが書き下ろします。その場合、入れて欲しい単語や大まかな内容を書いて頂けると助かります。

【NPC】
・綺羅子はマネージャーと共に見学に来ています。
・人数が足りない場合、以下のNPCに協力を依頼してもOK。

康広、ティアラ
 参加者。康広はアマチュアバンドのボーカル、ティアラは踊り子兼吟遊詩人という顔を持ち、演技力は一般より高め。「有名になった時の予行演習がしたい」と康広が依頼を受け、ティアラが付き添う形でやってきた。

浜 綺羅子(はま きらこ)
 小学1年生。ニックネームは「らっこ」。趣味は料理、特技は水泳。昨年、高校野球を題材とした青春ドラマで主人公の妹を演じ人気上昇中。『まほうのクッキング』で歌手デビュー。元気で人懐っこい。

メモリィ社の担当さん(林さん)
 50歳くらいの女性。CM制作一筋のベテラン。エキストラ経験あり。顔や背中だけの出演や、一言二言喋るくらいであれば喜んで手伝ってくれる。
 
綺羅子のマネージャー(浜さん)
 45歳くらい。綺羅子の実父。林さんと同じ条件で助っ人可能。

リプレイ

●出演者集合!
「もー、CM撮影の仕事なんて勝手に受けちゃってー」
 世良 霧人(aa3803)は小さく苦笑する。
「心配は無用です旦那様。案はちゃんと考えてきてありますので!」
「……そうなんだ」
 自信満々に言うのは英雄のクロードだ(aa3803hero001)。
(すごいノリノリだなあ)
 霧人は彼の考えた筋書きに耳を傾けることにした。
「いや、確かに急募だったのかもしれんが」
 リアクションに困っている赤城 龍哉(aa0090)を他所に、ヴァルトラウテ(aa0090hero001)は涼しい顔で言う。
「たまにはこういう依頼も面白いかと思いますわよ」
「お前は一体何を求めているんだ……」
 演技については自分も彼女も素人なのだ。彼は一抹の不安を覚えながらスタジオへと入った。
 おっとりとスタッフたちに挨拶をしながら現れたのは、清純派アイドルのあんじゅーこと泉 杏樹(aa0045)だ。
「ひさしぶりの、アイドルさんの、お仕事ですね。頑張ります、です」
「駆け出しアイドルにはまたとないチャンスでございます。お嬢様」
 執事であり、敏腕マネージャーの顔も持つ榊 守(aa0045hero001)が答えた。
「チャーハンはいいよね。食べるの楽だし一度にお米とーやさいとーおにくとー色々摂れるし」
 指折り数えながら振澤 望華(aa3689)が言う。
「お前はちと偏りすぎだ。何も食べんよりはマシだが……」
 深々と固め息を吐いたのは彼女の英雄、唐棣(aa3689hero001)である。彼女の不摂生に手を焼くのは日常茶飯事だ。いつも望華の家事を補佐しているだけあって、彼には料理の心得がある。オリジナルのレシピを携えて、依頼へとやってきていた。
「白虎ちゃん! テレビ出演だぜ!」
「何故俺でござるか……こういうのはもう一人の方がいいでござろう」
 白虎丸(aa0123hero001)の言葉に虎噛 千颯(aa0123)の笑顔がしぼんだ。
「あ……うん……今喧嘩中っつーか……なんつーか……怒らせちゃってね……?」
「はぁ……お前の頑固もどうしたものでござろうか……」
「う……白虎ちゃんには言われたくないんだぜ……」
 二人して難しい顔をしていると、打ち合わせの声がかかる。
「ゆるキャラ白虎ちゃんの宣伝と思えば、これもまた良しだぜ! な?」
 千颯は愛想よくスタッフに手を振り返し、康広を捕まえると肩を組む。
「虎噛さんたちはどんな話にするんです?」
 千颯が演じるのは会社員らしい。普段のファッションを見慣れている康広は少し驚いたようだ。マネージャーの浜にも協力を取り付け、無事に役者は揃ったのだった。

●いきなり炒飯『まほうの白虎ちゃん』
――失敗した日やケンカをした日
 書類を持って仁王立ちする上司。千颯はぺこぺこと頭を下げる。康広が心配そうな表情で彼を見ている。
 場面は切り替わり、顔を見合わせる千颯と康広。怒りの形相で何事か叫び合い、同時にぷいとそっぽを向く。
――涙の大波 飲まれそうだよ
「俺……もう疲れたんだぜ……」
 疲れ果てた表情でデスクに座る千颯。力なく背もたれに体を預け、目には涙がたまっている。終業時間は過ぎたらしく、まわりに人影はない。こうべを垂れ泣きそうになっていると、突然背中を叩かれる。
――そんなときには おいしいごはん!
 振り返ると、其処にはなんと! あのH.O.P.E非公認ゆるキャラの白虎ちゃんの姿が!
 白い虎の顔が慈愛の笑みを浮かべ、背からは後光が差している。隣にはレンジまで登場しているではないか。
「元気を出すでござる!」
 レンジからチンした炒飯を取り出すと、白虎ちゃんは言う。
「さぁ! 食べるでござる! 元気炒飯でござるよ!!」
――元気もりもり湧いて来るんだよ
 一口炒飯を食べると、千颯の表情がぱっと華やぐ。元気があふれ出てきた彼は一気に炒飯を掻き込む。あっという間に間食だ。
「うぉぉぉぉー!」
 掛け声と一緒にはじけ飛ぶジャケット、ネクタイ、シャツにスラックス。あわや全裸に……とお茶の間をヒヤヒヤさせたかと思うと、白虎ちゃんが画面いっぱいに登場した。ぎりぎりセーフ。
「さぁ!元気炒飯を皆も食べてもりもり元気になるでござるよ!」

●レシピコンテスト『あなたのための炒飯』
「特製きのこのあんかけチャーハン~」
 望華は力の抜けた笑顔を浮かべ、スタートを宣言する。隣には仏頂面の唐棣が姿勢良く立っている。
「まずは具材を切るのかな?」
「そうだな」
 しめじやしいたけ、万能ねぎを全てミックスベジタブル並の細切れに。
「味付けは塩こしょうだ」
「あっさりな感じだね」
「ああ、分量も通常の者に比べ控えめとなっている」
 唐棣の言葉に合わせ、あんかけの材料が画面に表示された。必要なことを簡潔に話す彼と、軽快な望華の進行は意外と噛み合っている。
「次に甘味が強めのものと、酸味が強めのもの、2種のあんを作成する」
「チャーハンがあっさりなのは、こっちとバランスをとるためってわけだよ~。はい、そしてできたものがこちらになりまーす」
 唐棣はとろりしたあんを炒飯にかけ、皿をカメラに向けながら言う。
「少しの手間でもかなり見栄えがするレシピだろう。以上だ」
 テロップに「おまけのアレンジレシピ」と表示される。
「『とびきり炒飯』『いきなり炒飯』をメインにしつつもかに玉をのせるだけ、あんをかけるだけでも十分なひと手間! おすすめだよ~」
 唐棣は別のフライパンで大きな卵焼きを作っている。
「こんな感じでかに玉を乗せてあんをかければ天津飯に~」
 実はこのレシピ、めんどくさがってご飯を積極的に食べたがらない対望華用だったりする。
「それでは試食とまいりましょ~」
 望華の前にチャーハンが置かれる。お子さまランチ並みの量なのはいつものことである。
「ベース単品でも美味しいけど、あんかけだと食べるのも少し楽しいねー」
 少しズレた感想もご愛敬。
「望華、そろそろ締めの時間だ」
 コンテストに興味を持った人々向けにもダメ押しの一言だ。
「あとは他のおうちでもやってるだろう……なーんて応募をやめちゃうのはもったいない! ちょっとした具材の切り方ひとつの小さな工夫でも立派なオリジナルだよ」
 唐棣は望華がまともなアドバイスをしていることに驚きつつ、一拍遅れて頷く。
「例えば、うちのこはどの野菜が苦手なのでーとか、逆にこの具材が好きなのでーとか、もしかしたら、アナタにとっての当たり前のレシピが他の人にとっては驚きのレシピかもしれない。だからどんどん応募してね~」
 最後もゆるーい笑顔で片手を振る望華。唐棣も倣って真顔のまま手を振った。

●レシピコンテスト『ハートを奪うおから炒飯』
 六畳一間。畳は色あせ、壁は所々剥がれ落ちたボロアパートの一室。
「お腹空いているの? メジェド様」
 天宮城 颯太(aa4794)が心配そうにカメラを覗き込む。ぐぅ、と画面外から切ない音。颯太はくすりと笑い、余りものを見繕うとチャーハンを作り始めた。メジェド(aa4794hero002)の視線を表すカメラは、半ズボンからはみ出た艶めかしい生足をじっとりと見上げ、エプロンの腰ひもを移した辺りで止まる。
 オシリ様鑑賞にいそしむ同居人を他所に、颯太は具材を炒めていく。
 画面の脇には可愛らしい字体で「颯太きゅんのおから炒飯☆」と表示され、材料や分量等のテロップが出ては入れ替わる。
 熱い視線に気づいた颯太が振り返る。
「ん? こんな小さな家庭用コンロじゃ、美味しいチャーハンは作れないって?」
 颯太はカメラに向かって小首を傾げる。
「確かに、美味しくパラっと仕上げるには強い火力が必要だけどね。でも、こうすれば……」
 炒める前のゴハンに投入したのはマヨネーズ。混ぜ合わせ、さっと炒めれば完成だ。
「コレ、オイシイ! そーた! オコメ、パラパラ! ナンデ!?」
 颯太は得意げに人差し指を立てた。
「マヨネーズを炒めると、乳化作用が壊れて原料の黄卵、油、酢に分離してね、これがご飯の一粒一粒をコーティングして、パラっと仕上がりコクが出るんだよ」
「excellent!! あいであヒトツ、ナンダナ!」
 もしゃもしゃと食べるメジェド様を背景に、颯太はカメラ目線を決める。
「はい! というわけで! 5月末から、メモリィ社主催のオリジナルレシピコンテストの募集が始まります!」
 画面下のテロップを笑顔で指さす颯太。
「今年のテーマはチャーハン、募集要項はコチラ! キミの参加を待ってるよ!」
 そして、半分ほどに減ったチャーハン。あまりの美味しさに痙攣するメジェド。
「ウ゛メェー! ウ゛メェー!」
「……ところでそれ、どうやって食べてるの、メジェド様」

 続いて、15秒版。とある高校の調理室が舞台だ。
 最初に映ったのは黒板。チョークの荒々しい筆跡で、課題「チャーハン」と書かれている。それを背景に対峙する颯太と康広にアングルが切り替わる。
「勝った方がめぐチャンに告白する……。イイな颯太」
「望むところだ! 僕のおからチャーハンが負けるものか!」
 そこで、勢いよく引き戸が開かれる。
「チョット待ッタ!!」
「メジェド様!?」
 驚く少年たち。
「ソノショーブ、めもりぃ社、おりじなるれしぴこんてすとデ、ツケテミナイカ!?」
「募集要項は……!」
 颯太が言うと、メジェドが布に描かれた両の目でカメラを射抜いた。
「めもりぃ社、ちゃーはん、デ、検索ダゾ!!」

●いきなり炒飯『いつも頑張ってる君だから』
 夕暮れに染まる街並み。流れるオルゴールの音色。よく聞けば『まほうのクッキング』と分かる程度にアレンジが加えられたインストゥルメンタルだ。ボーカル部分のメロディもオルゴールで奏でられ、テンポは少しスローになっている。
 点灯しはじめた街灯に照らされるのは、とぼとぼ歩く龍哉だ。
 次のシーン。階段を上りる頃には深い藍色が背景色となる。やや疲れた龍哉の表情が大写しになった。
「腹減ったなぁ……」
 俯きがちに歩を進めながら呟く。家の前まで来ると灯りが点いていないことに気づいた。彼は首を傾げる。
(出掛けるって言ってたか? いや、聞いてねぇよな)
 月明かりに照らされたリビングのソファー。かすかな寝息を立てているのはヴァルトラウテだった。
「お互いお疲れさん、だな」
 龍哉は部屋を見まわし、彼女を起こさぬよう鞄を置く。キッチンの明かりだけをつけ、冷凍庫からチャーハンを取り出す。
「腹が減っては何とやら」
 パッケージ裏の説明に軽く目を通すと、レンジに入れた。
 吸い物の椀を並べていると、チンとレンジが鳴る。良い匂いが漂っているらしく龍哉の表情が明るくなった。
「あれ? お帰りなさい。やだ、寝ちゃってたのね」
 ぼんやりとした声。ヴァルトラウテが身を起こしていた。音に反応して目を覚ましのだ。月明かりに銀の髪が映える。
「ただいま。ちょうど準備が出来たところだ。飯にしようぜ」
 湯気を立てるチャーハン。皿を片手にニッを笑みを浮かべる龍哉。
 場面は灯りの点いたリビングへ。一口頬張って「お前も」というように目線を送る龍哉。ヴァルトラウテはチャーハンを口に含むが、熱かったようで口を押える。龍哉は急いで水を差し出す。彼の慌てた表情にヴァルトラウテは思わず笑みをこぼし、龍哉もつられて笑う。
 二人はもう一度チャーハンを口に含むと、顔を見合わせて微笑み合った。
「今日は二人で『いきなり炒飯』」
 龍哉のナレーションが短い物語を締めくくった。

●いきなり炒飯『いきなり○○執事!?』
 スーツ姿の霧人が自宅のドアを開ける。
「ただいまー!」
 薄暗い廊下を進みながら、違和感に気づく。
「……あれ、誰もいないの?」
 電気をつけると、丸がついたカレンダーが目に入る。
「……あっそうだった! 今日は同窓会で出掛けてるんだ」
 霧人は困った顔をする。どうやら彼にキッチンに立つ習慣はないようすだ。
「ご飯はあるけどおかずがないなあ。夕ご飯はどうしよう?」
 うーんと首を傾げる霧人。
「お任せください!」
 そんな声がしたかと思うと、外から窓を開けて燕尾服姿の猫が入ってきた。
「えっ誰!? ……というか猫!?」
 二足歩行の黒猫は恭しくお辞儀する。下手な人間よりもよっぽど洗練された動きだ。
「私、猫執事のクロードと申します。何かお困りの様子でしたのでお手伝いに伺いました」
「そ、そうなんだ。じゃあ今日の夕ご飯なんだけど、今ご飯しかないんだ。どうすれば良い?」
「ふむ、なるほど。では少し拝見……。」
 冷蔵庫内のカメラがクロードを移す。数秒ののち、彼の目が何かを見つけて輝いた。
「良い物がありましたよ!」
 振り返ったクロードが気にしていたのは『とびきり炒飯』を取り出す。カメラが商品にズームする。
「あれ、こんなのあったんだ。でもそれ、冷凍のじゃないんでしょ? 難しいんじゃ……。」
「いえいえ、とても簡単に作れますよ」
 クロードが手際よくチャーハンを炒める。
「具材は?」
「かやく付きなので、ご安心ください。お好みで具材を足してもおいしく召し上がれますよ」
 白いナプキンを腕にかけたクロードが、食卓に座った霧人の前に皿を置く。
「本当に簡単だ、……しかも美味しい!」
 チャーハンを食べる霧人をバックにクロードは言う。
「簡単調理で最高の味、『とびきり炒飯』の素でございます」

●とびきり炒飯『どんな顔するかな?』
 電車の窓から夕暮れの光が差し込む。帰宅途中のアル(aa1730)は鞄から携帯を取り出す。画面に表示されたのは雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)から届いた『帰り、少し遅くなるわ』のメール。アルの頭にある考えが閃く。
 場面は自宅へ切り替わる。アルは戸棚と冷蔵庫を確認すると、制服の上からエプロンをつける。
――ただいま~
――あら、おかえりなさい
 向かいの家から声が届く。小学生の娘が帰宅したのだろう。庭にいたらしい母と何事か話している。アルはきゅっと紐を結び、呟く。
「よし」
 手元のアップ。『とびきり炒飯』のパッケージが開封された。びりり、という音と、窓から入り込んできたかすかな音が重なる。お隣さんがラジオをザッピングしているらしい。
――本日の「黄昏トーク」ゲストはこの方……
――明日の予報は晴れ。からりとした陽気で……
 がさ。とびきり炒飯の袋からかやくを取り出す。メモリィ社の『とびきりスープ』も調理台においてある。
 こつ、ぱきゃっ。卵を割る。しまった、という顔をしたかと思うと。たまごの殻を掬い取って一安心。
 ぱちぱち。油が跳ねる。じゅーう。広がる卵を箸でかき混ぜる。炒り卵ができたら、かやくを加えてゴミをぽい。ゴミ箱の蓋が軽い音を立てて閉まる。
――愛をありがとう
 お隣のラジオは音楽番組に落ち着いたらしい。アルはフライパンに米を入れて混ぜながら炒める。一気に重くなったフライ返しから手を離し、手首をぷらぷら。料理って大変だ。
――どうしたら伝わるだろう、この気持ち
 じゅわ、と良い音を立てて調味液を投入。香ばしい香りに包まれながら、米と馴染ませていく。
――……わらびぃ餅~……ぃ餅~
 少し音割れした呼び声を響かせ、軽トラが走っていく。つられるよう窓の外を数秒ぼんやり眺める。吹き込む強い風がアルの髪を揺らした。
 ふぅと息を吐くとアルはちゃぶ台に突っ伏し、そのまま目を閉じる。皿を置く音はしたが、炒飯は画面の外に存在している。昼の名残をわずかに残す空は、深海のような青だ。
 と、そこへ。からりと開く玄関。靴音。
「ただいまー!」
 ハスキーな女性の声が元気よく言った。アルは反射的に顔を上げる。疲れているはずなのに、明るく振舞ってくれるあの人へ、早く――。アルはキラキラと目を輝かせ、小走りで玄関へ向かう。達成感に満ちた疲労も、心地良い。
 画面内に残るのはホカホカと湯気を漂わせる『とびきり炒飯』と『とびきりスープ』。
「おかえり!」
 大切な者を出迎える声は、幸福感に満ちていた。

●いきなり炒飯「天使の微笑み」
――ちょっぴり寂しい夜 キミから電話きたの
 杏樹の歌声が流れ出す。ふらふらとソファに倒れこむのは、浜が演じる会社員。視聴者に主人公気分になってもらうため、顔は見切れるように演出されている
――その声聞いただけでふわり体浮いちゃう
「炒飯食べたい」
 突如、彗星のように尾を引くカラフルな光の軌跡。
――キミはまるで魔法使い ドキドキをくれる唯一の人
 異変に気づき、顔を上げた男が見たのは白い翼の天使。
「癒しの天使、あんじゅーに、お任せ!魔法で、チャーハンを、作っちゃうぞ」
――ボクは何になろうかな? 叶うなら、君の天使になりたい
 プシューケーの蝶を飛ばし、構えるは魔銃「らぶらぶ・ズッキュン」。
「らぶらぶずっきゅん、美味しい炒飯にな~れ」
 ハートエフェクトが舞う。しかし現れたのは、黒こげ炒飯。サビを目の前にして、曲は止まってしまう。
「ふぇ……美味しい炒飯、難しいの」
 涙目の杏樹を慰めるように、渋い男性の声がナレーションする。
『魔法がなくても大丈夫。レンジでチンする本格炒飯』
――背中の翼広げてキミと空を飛びたい
 レンジの音に振り向く杏樹。 白のふわもこスリッパをぱたぱたさせ、走っていく。
――涙は優しい雨になり 誰かの渇き満たすの
「こんなに簡単、とっても美味しいの! 魔法みたい!」
 驚きながら炒飯を一口食べると、ふわっと花開く満点笑顔。
――ふわりと翼くるまりキミと夢を見たいな
 主人公も美味そうに炒飯を完食し、すぐに疲れて寝てしまう。
――明日も頑張れるように 小さな声で歌うよ
「お疲れ様、なの。明日も、お仕事、頑張ってください、です」
 そっと男に毛布をかけて微笑む杏樹。それはまさに天使の笑顔なのだった。
――キミがだいすき

●レシピコンテスト『共鳴』
 家庭用のキッチンを模したセット。
「こんにちはっ、な、ナイチンゲールです」
「墓場鳥だ」
 対面式の調理台にはナイチンゲール(aa4840)と墓場鳥(aa4840hero001)が立っている。
「試食役は浜 綺羅子ちゃんとゆかいな仲間たちだぜ!」
 食卓には綺羅子と康広とティアラが座り、画面には彼らの名前が表示される。
 彼ら5名はテーマ曲の歌唱も担当している。パート分けのお陰で会話をしているようにも聞こえる仕上がりだ。
「おねえちゃんたち、今日はどんなご飯を作ってくれるの?」
 綺羅子に問われ、二人は冷蔵庫をのぞき込む。墓場鳥が何事か耳打ちすると、ナイチンゲールが頷く。
「今日のメニューは『共鳴(リンク)チャーハン』だ」
「え、えっと、チャーハンとケジャリーをくっつけて……ポーチドエッグを乗せたもの……ですっ」
「異質な文化の者同士が食の為に『共鳴』する……そんな料理だ」
 アシスタントと書かれた名札をつけた守が一礼する。
「ケジャリーを引き立たせる為に、あっさり和風味の炒飯もよろしいかと」
 というのが彼のアイディア。手順は墓場鳥がフリップをもって紹介する。
「1:じゃことコーンを炒める
2:卵、ご飯を入れて炒め、塩胡椒を少々
3:仕上げに鍋肌に醤油を垂らし、味を整える」
 流れるように作業が進んでいく。
「……すごい」
 その手際にすっかり気後れしたナイチンゲール。絹さやの筋を取ろうとするが、震える手が空回りしてしまう。
「綺羅子もお手伝いしたいな!」
「お、お願いします!」
――涙の大波 飲まれそうだよ
――そんな時にはおいしいごはん!
 タイミングよくナイチンゲールと綺羅子のパートが立て続けに流れる。
 半泣きで7歳児の助けを借り、サバの身をほぐしながら心を落ち着ける。彼女としては醜態だろうが、しっかりとした年下と頼りない年上というのは微笑ましい構図でもある。
「次は、ごはんにカレー粉と、隠し味に少量の味噌を混ぜ込みます」
「バターが溶けたよ!」
「じゃあ、ご飯を炒めましょうか」
 ごはんに火が通ったのをみて、きぬさやと生姜を加え、更に炒める。
「あれ、お魚は?」
「それも入れます! これを炒めたら完成です……!」
 緊張し通しの相棒とは対照的に、墓場鳥は第二アシスタントの雅と談笑中だ。
「見目は大切よ? はい、失礼しまーす♪」
 テーブルには橙のドット柄のクロスが敷かれる。
「華やかでいいわね」
 ティアラが微笑む。
「器はこれがいいんじゃないかしら?」
 卵から着想し、温かみのある木製皿を巣に見立てる。れんげも木製のもので合わせた。
「ふむ、見事だ」
 ここで墓場鳥は調理を引き継ぐ。解説役はナイチンゲールに交代だ。
「1:鍋にお湯を沸かして酢を加えます。
2:炒飯とケジャリーを半量ずつ、器に盛り付けましょう」
 盛り付けはどこか幻想蝶を模したHOPEのエンブレムにも似ている。
「3:沸騰したお湯をおたまでかき混ぜて、卵をそっと割り入れて
4:2分半ほどで卵をすくい、冷水に浸して冷まします」
「もうできあがり?」
 綺羅子が無邪気に問うと、墓場鳥は「あと少しだ」と頷く。
「5:てっぺんにポーチドエッグを乗せて、青海苔をちらせば完成!」
 おいしそうに試食している康広たちを見ながら墓場鳥が言う。
「共鳴どころの騒ぎでは済まなかったが」
「悪かったね!」
 言ってから皆の前であることに気づき、頬を赤らめるナイチンゲール。
「……あ、こうやって皆で作るのも、その、楽しい……ですよ」
 画面に募集要項が表示され、綺羅子がカメラ目線で言う。
「みんなのレシピ、お待ちしてまーす!」

●メイキング映像
 場面は撮影直後だ。
「千颯!! この痴れ者がぁ!! 貴様が脱ぎたいだけであろうが!」
 笑顔をひっこめた白虎丸が千颯に食って掛かる。
「ち……違うんだぜ! これも演出の一つなんだぜ!」
 千颯は首を振りながら後ずさる。上半身しか映っていないので安心してほしい。
「問答無用でござる! 今日という今日は徹底的に絞り上げるでござる! 覚悟するでござる!」
 情けない叫び声をあげながら、引きずられていく千颯。腹部には脱いだ上着がかけられていたのでご安心を。
「あれ、何かいい匂いが……?」
 霧人の疑問に答えたのは龍哉だ。
「賄いにチャーハン作ってみたぜ」
 ごま油が香るシンプルな黄金チャーハンを頂きつつ、上映会だ。守とクロードが盛り付けを手伝う。ナイチンゲールはみんなの作品を楽しみにそわそわとやってくる。
「猫執事さんのCMとってもかわいいの!」
 杏樹に褒められ、クロードは誇らしげだ。
「良かったね」
 慣れない演技に苦労した霧人も、ほっと一息。
「素人演技なんで、これ以上は勘弁な」
 照れ臭そうに完成品を見ていた龍哉は謙遜する。
「でも案外生活感出てた気がしますわ」
 二人の間の信頼感がうまく作用したのか、まるで若夫婦の日常を切り取ったようなCMはとても良い出来だった。
「望華はあらゆる意味で普段通りだったな」
「それって褒めてんの?ま、配信で慣れてるしねー」
 墓場鳥は望華たちをちらりと見る。
「やはり、慣れは大切なようだぞ」
 CMでの細かい失敗に恥じ入っている相棒も、少しずつ成長しているのは確かなのだから。
「アルのは、セリフがすげぇ少ないのに、伝わってくるものがあったというか……」
 康広は感想がうまく言葉にならない様子だ。
「朝、包丁のトントンが合図でお腹すいたりするでしょ? 音で空腹感じるアレ表現したかったんだ!」
「なるほどな! 効果音も良かったよな」
 雅がウィンクする。
「実は、この子が録音してきたものなの! ちなみにラジオのDJは榊さん、天気予報はティアラさんの声よ」
「マジすか!気づかなかった」
 向かいの家の親子は綺羅子とメモリィ社社員の林が演じたらしい。
「颯太たちのは一度見たら忘れられないわね。バレンタインのCMもテレビで見たわよ」
 ティアラに言われ、颯太は照れながら礼を言う。
「ところでメジェド様……なんで僕の料理シーン、お色気シーン風になってるの?」
 そこへ帰宅するらしい綺羅子が父と共に挨拶にやってきた。
「とっても楽しかったよ! また共演できたらいいね!」
 アルや杏樹はすぐに頷いたが、他の者たちは顔を見合わせて苦笑するのだった。
 彼らの戸惑いに反し、メモリィ社とH.O.P.E.のコラボCMはまたしても好評を博したそうである。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • Black coat
    榊 守aa0045hero001
    英雄|38才|男性|バト
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • プロカメラマン
    雅・マルシア・丹菊aa1730hero001
    英雄|28才|?|シャド
  • リンクブレイブ!
    振澤 望華aa3689
    人間|22才|女性|命中
  • リンクブレイブ!
    唐棣aa3689hero001
    英雄|42才|男性|ジャ
  • 心優しき教師
    世良 霧人aa3803
    人間|30才|男性|防御
  • 献身のテンペランス
    クロードaa3803hero001
    英雄|6才|男性|ブレ
  • エージェント
    天宮城 颯太aa4794
    人間|12才|?|命中
  • オシリサマはんたぁ
    メジェドaa4794hero002
    英雄|16才|?|ソフィ
  • 明日に希望を
    ナイチンゲールaa4840
    機械|20才|女性|攻撃
  • 【能】となる者
    墓場鳥aa4840hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
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