本部

ホストで花魔成敗――イケメン?募集

若宮狐

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
0人 / 0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/05/16 12:42

掲示板

オープニング

 五月――青い空を背景に、花の女王たちが咲き誇る姿を楽しみに、バラ園を訪れる人は多いだろう。
 急ぎ足で青年が集会室に入り報告を始めた。
「中之島のバラ園へ向かってほしい。愚神に多くの客が襲われた。そいつは気に入った男性客三人を洗脳して近くにはべらせている。三人の救出と、愚神の討伐を頼む」
 それだけ言うと、もごもごと口を動かして言いよどんだ。意を決したようにきゅっと唇を噛んだ後、持ってきた袋を掴むと中身をテーブルにぶちまけた。
 ――パアァァァ!
 王子様さながらの煌びやかな衣装。実に……眩しい。
「その……愚神はイケメン男性にしか興味がない。……特に女性客は蔦攻撃で怪我を負っている。怪我人は救助班が動いていて、避難も誘導中だ。ただ、高齢者や赤ちゃん連れも多くて時間がかかっているんだ」
 豪華な衣装をちらりと見て言葉を続ける。
「そこで、だ。最初に、愚神を接待して、客の避難が終わるまで時間を稼いでくれ。
 愚神は、今、イケメン三人とベンチでご満悦だ。君たちを選出したのは、その三人にとってかわれる、それ以上の魅力があると判断したからだ」
 拒否権なしといったように、報告書を突き出す。その手の甲には、鞭で打たれたような線状の真新しい痣があった。

●バラの女王
「この赤いバラより私は美しい。あちらの黄色のバラよりも、向こうのバラ……ダイアナ・プリンセス・オブ・ウェールズよりも……どのバラよりも香しく美しい。そう、花の女王の中の女王、美の頂点に立つはこの私、バラダムよ! オーホホホッ!」
 真っ赤な、口紅、ハイヒール、スーツ……赤で全身統一した、熟女の貫禄が溢れ出ている金髪の愚神――バラダム。メタボリックな体つきがその堂々たるやを増している。スーツは今にも張り裂けそうだ。
 背のない石のベンチに足を組んで座っている。その両脇に二人の男性が座り、右手前にはロマンス・グレーの男性が片膝をついて佇んでいる。遠くにはレンガ造りの目立つ公会堂が見える。
 口元に手をやり、耳をつんざくような高い声で笑えば、豊満な胸が上下に揺れた。
「ねえ、あなたもそう思うでしょう?」
 猫なで声になると、スカートから除く生足をゆっくり組みかえてサービス。窮屈な身を器用によじって上目遣いで右側の青年に寄り掛かる。バラ園に来ていた茶髪の男性――二十歳前後か、ネックレスをしておしゃれに気を遣った若者だ。
「はい、バラダム様……」
 抑揚のない声、目は虚ろ、バラダムに洗脳されている。
「うふっ、あなたなら、そろそろ呼び捨ても……ゆ・る・し・ちゃ・う」
 肩に顎を乗せて顔を近付け、息を吹きかけながら囁いてから、赤い厚めのキスマークを青年の頬に残した。
 バラダムは身を離すと、今度は左手側の清潔感ある服装の男性を見つめる。そっとその太ももに赤いマニキュアの手を置けば、誘うように撫でる。
「喉乾いちゃったわ……」
 同様に洗脳されているため男性の反応は薄い。すると、バラダムは苛立ったように、パーマのかかった髪を乱暴にかき上げた。
「これじゃちっとも面白くないわ! こんなにも美しい私を目の前にして何も言わないなんて!」
 ふと真顔に戻ると、気が変わったといったように妖艶な笑みを浮かべ、下唇に舌を這わす。
「……そろそろ食べようかしら」

解説

目的:客の避難完了まで愚神に接待して時間稼ぎ、男性客3人の救出、愚神の討伐
時・天候:昼下がり・晴れ
場所:大阪市中之島公園バラ園
 中州にある屋外の年中開放されたバラ園。川に囲まれているので風が心地よい。
 戦闘場所は、愚神がいるベンチ前の芝生(もしくは、後ろの広場)
状況:怪我人多く、救助班が動いている。避難は、バラ園から東と西に分けて誘導中。
男性客(3人):洗脳されている。タイプは様々で愚神の好みの広さが伺える
 
愚神場所:
 三人がけの石のベンチ。背もたれはなく、ベンチというより石そのもの

 以下ベンチからの位置
 ・両脇:仕切るような鉄格子の壁があり蔦バラが絡んでいる。壁前、石のベンチと同じラインに、一般的な木のベンチがそれぞれある。
 ・前方:石ベンチ前、同幅程の芝生が続く(やや狭いが戦闘できる広さ)。芝生を中心に、左右対称の構造――低いバラが品種ごとに植えられた四角いエリアが2つ並び、その両端と間を仕切るように一人分の道がついている。
 ・後方:石タイルの開けた広場、その奥は芝生の広場

愚神バラダム:背中から二本の伸縮する蔦が生えている
・攻撃:
 蔦で打ちつけ:遠近、範囲可
 蔦で縛りつけ:遠近、一本の蔦で一人(単体)
 両手で引っ掻き:近、単体
 洗脳:BS。気に入った男性に抵抗した時のみ使用
・好き:イケメンに囲まれて、ちやほやされること
・嫌い:女性。特に若い者、美しい者。蔦で蹴散らして排除する

精神的攻撃:
 Lv.1悩殺級:見せつけ(視覚的・リップサービスやぶりっこ)
 Lv.2悶絶級:お触り(ソフトタッチ~抱きつき)
 Lv.3即死級:キス
 ※接待組に救助班は動きません

条件:接待組は、3人以上で王子様さながらの衣装を着ること(衣装とそのお代はH.O.P.E.持ち)
 ※衣装はある程度ご自由に設定ください

リプレイ

 雲一つない青い空、昼下がり。春風にバラの香りが混じる――中之島公園バラ園。
 ベンチに座る赤いスーツの愚神バラダム。男性三名が取り巻くが、洗脳のため反応が薄い。面白くないバラダムは、背に生えた蔦を一人の首に突き立てる。
「美しきレディ。そんなヤツらより、俺たちと遊ばないか?」
「!」
 数段高い所に四人の影。
 太陽を背に白い石段を下りてくる。
 バラダムの前に現れたのは、豪華な衣装をまとった王子たち――。
 縦フリルの付いた赤いシャツに白のスーツ、胸元には深紅のバラ。紳士的だが色気や情熱も感じる、甘いマスクのレーヴ(aa4965)。
 ガラスの中のバラの意味を知った『美女と野獣』の王子に似た衣装に、解かれたスカーフが色気漂う。自信にあふれた男らしい表情に顎髭、ワイルダーな紫ノ宮莉音(aa0764)
 バラが数々登場する『アラビアンナイト』、その英雄のような衣装。小麦色の肌に、柔和な微笑みが魅力的な木霊・C・リュカ(aa0068)
 おとぎの国の王子様そのままに。誠実さを示す白を基調とした王族衣装。中性的で美しく気品ある紫 征四郎(aa0076)
 ――夢の世界が目の前に展開される。
「あぁ……」
 バラダムは、手を頬に当て、腰か腹かをくねらせる。
 その精神的攻撃に、リュカはウインクする余裕ぶり。
「伊達に二十九年生きてないからね、えぐい物は見慣れてるよ」 
 夢見る当人には聞こえておらず、メンバーは笑いを堪える。緊張が緩和しペースを掴む。
 リュカをあまり愚神に近付かせたくない征四郎は複雑だが、まずは男性客の救出を図る。
「いつまでも麗しい君を独り占めですか? ええ、交代と致しましょう」
「あなたたち、どういうこと?!」
 金切り声にハッとする。
 急ぎすぎたか――。
 違う。バラダムは、耳のインカムを注視していた。ファッションチェックで見逃さなかった。さらに、一変して懸念される裏切りに怒り、発信源を探して足を踏み出す。
 ドン!
「っ!?」
 蔦バラが絡み咲く鉄格子に突き出された逞しい腕……開いた胸元、覗く鎖骨、首筋、さらに上へ視線を移せば、
「それで?」
 吐息まで届く距離で、悪戯な目で見下ろす莉音。口元に不敵な笑みを浮かべ、
「僕、小学生だけど。どうする?」
 そう言うとインカムを捨て、使い方が分からないと両肩を上げる。
「きゃあぁ」
 莉音は、出会って数分の熟女に抱きつかれた。

「あー、ダメだな。これは殴る」
 染井 桜花(aa0386)と救助組の赤城 龍哉(aa0090)は、莉音を遠目に他人事に呟く。
「……龍哉も、行って」
「はい?」
 桜花を思わず二度見。
「……インカム。バラダム……みんなも、……気にしてるはず」
 龍哉は行きたくなかった、耐えられる自信もない。
「救出は大の男ばかりだから俺が運ぶ……」
「――いってらっしゃい」
 武家の奥方のよう揺るがぬ口調で一蹴され、尻尾を巻いた。

「……ガラにもなく緊張しちまうな。クソ、調子狂うぜ」
 胸、腹、脚やらが押し当てられ密着。莉音は、実際に中身は小学生だ。初めての気持ち悪い感覚に不動となる。
 仲間が助け船を出そうとした時、龍哉が到着。180を超える長身は目を引いた。
「お取込み中すまない……。俺はここの関係者だ。美しい花の女王がいると聞いて、王子たちがどうしても会いたいと……」
「あら、イケメンじゃな~い!」
 ぎょっと後退るも、後ろから桜花の視線が突き刺さり、まくし立てる。
「出身もばらばらなもんで、ご、ご無礼がないよう、インカムを持たせた。気に召さず申し訳なああぁ……」
「よくってよ」
 筋を通す姿勢に納得し、半身を莉音に預けたまま、龍哉の脇腹辺りをつーと指で撫で誘う。龍哉は我慢するが半壊。莉音も続行中のショックにしょんぼりしている。
 レーヴが安定感ある助けの手を伸べる。胸元のバラを手に取ると片膝をつく。
「……アナタを目の前にすると」
 バラダムは莉音から離れると、告白されるお姫様のようにして言葉を待つ。
「花の女王たちですら、色を失くす……。まだ色のある薔薇の許へ行こうか、アナタに相応しい場所へ」
 バラダムが真紅のバラを受け取ると、その手を引き寄せ甲に恭しくキスする。
「私の王子様……」
 心を射止められ、誘われるままに。
「あっちにはお店もあるよ。紅茶とケーキを用意しよう」
 リュカが提案し移動を促す。ケーキのフレーズに莉音が俄然元気を取り戻す。解放された龍哉も意識を取り戻す。
 レーヴは流し目で合図し、バラダムをリードする。
 龍哉は小さく頷くと、インカムを回収しながら、他の仲間と打ち合わせる。
「被害者三人はここで受け取った。安全確認でき次第、桜花と向かうぜ」
「了解、向こうで時間稼ぐよ。お店使えそうだし」
「では私はリュカの手伝いを」
「僕はレーヴとハムを取り合うぜ! スイーツの前に食べとかないとな」
 莉音は純粋におやつを楽しみにしているらしい。その肩を、龍哉はむんずと掴み
「一応……アレもスイーツ扱いで」
 そこに、元は性別の違う征四郎が一言。
「あなたが言えた義理ではありませんが」
「正論」
「うっ」

 ばらぞのばしを渡り、向かい合わせに同構造の区間へ移動する。レーヴは、最奥まで進み、先程と同じベンチに誘導。
「隣に座っても?」
「もちろんよ」
 慣れた仕草に、バラダムは恥じ入るよう身をよじる。莉音は拗ねたような声で口を挟む。
「僕の席はー?」
「こっちに決まってるでしょん?」
 反対側を勧め、両手を伸ばして抱擁を所望。莉音に悪夢再来。レーヴはバラダムの片手を下ろさせ握ると
「俺だけの女王だ」
 阻止に莉音が感謝しさっと座る。
「このビーストキング様に敗北はねえぜ! 僕のもんだ」
「あら困っちゃう。私のために喧嘩しないで~」
 内心上機嫌で、いやいやと身体を揺らす。
「勝手に二人で取り合いにしないでくれる? 俺もいるよ」
 首に下ろしたターバンをなびかせ、リュカが紅茶とケーキを持って現れる。小麦色の肌に、白い歯を覗かせ笑む様は、まさに太陽神の国の王子。
「貴女を楽しませる為に呼ばれたランプの精ですよ……なんてね。まずはバラのアイスティーをどうぞ」
「まあ、丁度喉が渇いていたの! 私たち気が通じるのね」
 バラダムは、また違う魅力に奪われ顔を寄せる。
ガッ、ガコ
 後ろの征四郎が、音立ててテーブルと椅子を組み立てる。
「焼き菓子もお持ちします」
 静かに告げて店に戻る。バラダムは、紅茶を飲みながら一人ずつ眺める。容姿はさることながら……。
 ――甘いヴォイスで甘い言葉を歌う、女性の扱いに長けて安心して頼れる、華やかなレーヴ。
 ――S的な色気に反応せざるを得ない魅力、どこか動物のような可愛さのギャップもあり、甘え合いたくなる莉音。
 ――荒立てず割って入れて自己主張もでき、穏やかで協調性高く、気も利く優しいリュカ。
「……なんて素敵な方々なの」
 征四郎が戻り、焼き菓子をテーブルに置くと、莉音は香りに誘われるまま手を出す。バラの花束を手に、おずおずとバラダムに差し出す。
「あ、あなたの美しさを前には見劣りしてしまうでしょうが……その、とても美しかったので、きっと似合うかと」
 控えめさが好感、子悪魔心をくすぐられた。
「あら~ん、ありがとう」
 お礼に両手で征四郎の頬を包みキスを迫る。
(ぴゃあああ、破廉恥、ハレンチなのです!!)
 頭がぐるぐる。リュカがすぐに止めに入る。
「バラダム様、俺より先にこの子にしちゃうの? いいなーずるいなー!」
「え~、じゃあ、あなたからに、し・ちゃ・う!」
(ぬあんですってー!?)
 征四郎はあわあわ。莉音はモグモグ。こういう時に頼れるのはやはりレーヴ。
「キスは男性からするものだ」
 あなたの手を煩わせないと囁かれれば、ほろほろと彼に寄り掛かる。今度はレーヴが危ないが、別に注意を向けさせる。
「莉音もそう思うだろ?」
「?」
 聞いていなかった。だって焼き菓子が美味しくて。
「うふふ、口元に付いてるわよぉ。誘ちゃって、可愛いんだからぁ~ん!」
「ごふッ!? ごぼ……」

 騎士姿の龍哉がこちらに向かってくる。メンバーは戦闘を意識する。
 バラダムは厚い接待に有頂天。龍哉に気付くと、王子を選ぶ時かと勘違いする程に。
 ぶっ倒れた莉音を感極まったせいと誤魔化し、言葉巧みなレーヴに、バラダムは彼と離れたくないと見せつける。
 リュカに叩かれて莉音が起き、じゅるっと涎を手で拭う。
「危ねえ、完全にオトされるとこだったぜ」
「落ちてたよ、完全に」
 突っ込みの横で、征四郎は奥に視線を一瞬投げて知らせる。
 龍哉が目の前で止まる。
「周辺避難は完了だ。残るは後片付けだけだぜ」
 リュカ、征四郎、莉音はゆっくりと立ち上がると距離を取る。
「どうしたの?」
 バラダムは座ったまま見渡す。
「良い夢は見られたかな?」
 リュカが笑顔で尋ねる。まだ気付かない彼女。
「薔薇の美しさってのは、見た者がそう感じるからこそのもんだろが」
 龍哉が続く。首を振るバラダム。横に座るレーヴの手を握る。
「テメエの好きにできるのはここまでだぜ。僕は愚神ってヤツに怨みはねえが、テメエは許さねえバラダム!!」
 莉音の決定的な言葉で、蔦をもたげて立ち上がる。
「よくも騙したわね」
 四人は武器を構える。レーヴはバラダムを護る振りをして見せるが、
「はやく逃げて!」
 彼女はそれを阻止。弛んだ腕を突き出し、あなたは護ると呟く。
 戸惑う間もなく、潜んでいた桜花が飛びかかり先制攻撃。
「キャッ! 誰?!」
 連続攻撃を蔦で移動して一部かわす。
 桜花がスタッと中央に着地する。姫の周りを護るように王子たちが並ぶ。バラ魔女王vs桜花姫の構図が浮き上がる。

 リュカがファストショットで早打つ。後衛位置につく間に、龍哉が空を割いて飛び出し一気呵成。征四郎も魔剣で続く。
「……悪いが趣味じゃねぇ。遠慮でなく断固断らせて貰うぜ」
「リュカのこととか、リュカのこととか……許しません!」
 テーブルや椅子が派手に飛ぶ。
「許さないのはこっちの方よ!」
 バラダムは美しい女性が大嫌いだ。桜花を二本の蔦で連続打ち。
「食べ物を粗末にすんじゃねえ!」
 莉音が叫びながら双斧で吹っ飛ばす。大鎌が陽に光る――桜花はジャンプし、振り下ろしてバラダムを地に落とす。
 護られたレーヴは、クロスガードで防御を高めるに止める。
 着眼点良い龍哉は、厄介な蔦に攻撃を移すが、仲間と連携せねば危険。
 桜花が、落ちたバラダムの顔面を地面に押し当てて走りだすが、他が協力できない。固定された手首に蔦が巻き付き、もう片方は地を刺してストッパーになれば、反動で鉄格子に叩きつけられてしまう。蔦で張り付けになる。
「動くな! この女を絞め殺すわよ」
「ぐ……かはっ」
 能力者たちは動きを止める。バラダムは莉音を見ると、
「隣の奴を殺せ。それとも、この女を見捨てる?」
 隣に立つ人物――征四郎だ。無闇に動けない。蔦を切ろうものなら桜花の首が締まる。
「さあ、早く!」
 バラに囲まれた桜花はまるで棺で眠るようだ。莉音は答を出せないまま征四郎に近付く。向き合うも、相手どころか自分の考えさえ分からない。
 莉音が斧を持ち上げる。征四郎は唾を飲む。
「どうか、最年長の、俺の命と引き換えに」
 奥から申し出たのはリュカ。
 彼しか見られない大切なものを知っているような、意を決した眼差し。征四郎の横を通り過ぎ、迷いなく愚神へ進む。彼の残り香が届く。死に行く背を見れば、心が張り裂けそうだった。
「やめて!! お願い、行かないで!」
 悲痛な叫び。征四郎の声に、リュカがピタリと止まる。
 レーヴに金色の瞳を向ける。この男ならば、何か良策を打ち出してくれまいか。
 押して駄目なら引いてみよ――レーヴは賭けに出た。
「ぐはっ……」
 ハイカバーリングで、桜花の痛みを背負う。バラダムは驚いて振り返る。
「どうしたの? どうして?」
 桜花を解放し、なりふり構わずレーヴに走り寄る。征四郎にはこの気持ちが分かるだろうか。愚神は何なのか。愚神以前に……。しかし、愚神となった時点で、運命は決まっているのだ。
「どけ!」
 リュカはメンバーに注意を促すとフラッシュバンを打ち、閃光で眩ませる。龍哉は、桜花が前に倒れる所を、飛び込みざまにキャッチ。莉音は突進し一気呵成で転倒させる。
 征四郎はその場に崩れながらも桜花にケアレイン。桜花は復活し、すぐさま大鎌をもたげ、龍哉を壁にして蹴り、彼の悲鳴もお構いなしに、隙だらけのバラダムに飛びかかる。
「……円舞・乱れ桜」
 疾風怒濤から真上に飛ばし、落下を鎌で受けると、遠心力で鉄格子に投げつける。レーヴは態勢を立て直し、ライヴスブローを見舞う。
「すまないな」
 バラダムは倒れるが、二本の蔦が前方メンバーを打ち付ける。
「タダでやられるかよ!!」
 莉音がメーレーブロウで防御低下を付与。
「お前のは美しさを語るのもおこがましいってもんだ」
 龍哉はチャージラッシュと疾風怒濤で一気に拳を叩き込む。
 後衛位置へ戻るリュカに顔を笑われた征四郎は、
「わ、笑わないでください!」
 慌てて涙を拭いて攻撃に回る。
「その調子~!」
 リュカは安心させながらも、ストライクでヘッドショットを繰り出す。
「地獄で深夜アニメでも見てやがれ!!」
 ここぞと莉音が疾風怒濤でごり押し。
「花は散る間際が美しいと言う……アナタはどうかな、花の女王?」
 レーヴは死角を突いて隙を作り出す。それを受けて、トップギアと一気呵成で桜花がバラを刈りとった。
「……おやすみ、……永遠に」
 バラダムは飛んでドサリと落下。
「私は……美しくない……美しく……」
 顔をもたげ、王子を一目見ると消滅。後には真紅のバラが残された。


「穏やかなバラ園なのです」
 戦闘が嘘のよう。笑い合うカップルたちは幸せそうだ。
「私も、デート……」
 羨ましさを抑える。
「年配の女性は薔薇よりも清楚な椿とかが似合う女性の方が好みなん―あっ痛い痛い、せーちゃんどうしたの!?」
「リュカったら! いい加減懲りてください!」
 人の気も知らないでと頬を抓る。しかし、こんなやりとりができるのも、生きているから。
「あの……ところで。私を護って……本当に死ぬつもりだったのですか?」
 ふっと笑った彼はとても大人びて見えた。
「ランプの精は、三回願い事を叶えるんだよ。最後の願い、叶えよう」
「願い事……?」
 リュカは征四郎の手をとると他のカップルに交じる。
 元気よい二人を眺め、何だか色々と疲れた龍哉は、ふうと息を吐く。
「平和だな。あれ、莉音は?」
 桜花が、世話になった店、今は通常営業中のビアガーデンを指さす。
「……名物ローズソフトクリーム……食べてる」
 見ればテラスでピンク色のアイスを幸せそうに頬張っている莉音。
「あいつも懲りねーな」
 レーヴは苦笑すると、まだ蕾の紅いバラを眺めた。

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

  • タレンテッド・ゴールド
    レーヴaa4965

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • ー桜乃戦姫ー
    染井 桜花aa0386
    人間|15才|女性|攻撃
  • ダークヒーロー
    紫ノ宮莉音aa0764
    人間|12才|?|生命
  • タレンテッド・ゴールド
    レーヴaa4965
    人間|26才|男性|攻撃
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