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お花見サバイバル!
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最終発言2017/04/18 01:31:02 -
桜並木死守作戦
最終発言2017/04/19 02:16:56
オープニング
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――今年も春がやって来た!
今宵はお花見。八重桜、ソメイヨシノ、枝垂桜が各地で花開く。
そしてエージェント達はやって来た。目的はもちろん……!?
●
森の中は閑散としていた。
森とは言っても都内にある森林公園での出来事だ。
既にこの公園の公共施設内の住人達は退去させられ、近隣に住む住民達もH.O.P.E.東京海上支部の役員達の先導により――近付くな――との勧告が通達され避難命令が出されている。
もちろん内部は立ち入り禁止。
そしてその中の奥地。人工的に造られた湖を取り囲む様にして出来た密林地帯から物騒な音が時折、パン! とか、バン! とか、鳴り響く。
先に現場に駆け付けたリンカーの容赦ない発砲音。
そんな中、何者かの声がまるで嘲る様にして大きく木霊する。
「フハハハハハ! 我はここにおるぞよ? エージェント諸君!」
近くにいた数羽の野鳥は囀り、先程の銃声に驚いて瞬く間に奇声を発して飛び立っていく。
この小さき森の支配者である愚神は嘲笑を浮かべ、逃げ惑う。自らの身体の色を変化させ、森の中に溶け込んでゆく……。
――擬態――
サバイバル訓練を受けた者なら誰もが一度は耳にしたあるいは身を持って知った事があるだろう。
暗闇や夜には黒いマントを羽織る様に。紺碧に茂った草原では緑色の迷彩服を着用する様に。
そして、ピンク色の桜が舞い散るこの不気味なほど明るい森の中では果たして愚神はどんな姿に化けるのか?
擬態、あるいはカモフラージュは何も人間だけに限られた事では無い。海、川、山、森、あらゆる生態系に属する弱肉強食の世界。
その世界の動植物達は己の生存本能を守る為に独自の進化をしてきた。カメレオン等が良い例だ。
だが、この桜が舞い散る森林公園の中で正直ドピンクの愚神を見る程気持ちの悪いものは無い。もっとはっきり言えば見たくはない。
しかし、春の風物詩。桜並木に罪は無い。
彼等、彼女等の尊厳を守る為にも、早々にこの愚神を殺さなければ森の精霊はシラケて春を終わらせてしまうだろう。
それにそれを楽しみにしていた観光客に申し訳が立たない。
更にその気持ちはエージェント達も同じだった。
「サッサと援軍を呼んで、チャッチャとお花見しようぜ! このままドロップゾーンでも形成されたら従魔やら何やらで台無しだ」
1人のリンカーがそう言った矢先――援軍はやって来た。
解説
まさかまさかのお花見サバイバル。戦い方は単純。相手を見つけてとっちめるだけです。しかし、シンプルなものほどやり辛い相手でもあります。
条件は次の通りです。
・相手はあくまで愚神なので、戦いが長引けばDZを形成されてしまうかもです。
・DZを形成されてしまったら、カモフラージュ従魔が現れるかもなのでより戦闘が長引く危険性を孕んでいます。
・ライヴスゴーグル等を使って相手の擬態を見破り、冷静に対処しましょう。
・因みに愚神は森林公園を根城にするらしいので、外部へと出る事は無いと思っていて下さい。
それでは、皆さんのプレイング。楽しみにしています。
リプレイ
●
このお花見サバイバルに新たな援軍が集った。その数計6名――英雄も含めると全部で12名の少数精鋭部隊だ。
都内にある自然公園と言う公共施設の中で己の身体を桜色に擬態させると言うこの時期にしてはかなりド迷惑なサバイバル愚神――
――果たしてその正体とは?
最優先はオーダークリア。つまり愚神の撃破だ。
それを目的とした1人の人間。そして英雄がいた。
アリス(aa1651)とAlice(aa1651hero001)だ。
2人は後にお花見が開かれる事に浮かれる事もせず、ただ黙々と敵の索敵に入る。
早速、共鳴。何時如何なる時でも油断はしない。
背負っていたバックパック型のレーダーユニット『モスケール』で広範囲索敵。
「敵がどんなに隠れるのが上手でも……見つけたなら逃がすつもりは、ない」
『マナチェイサー』を使ってそれと『ライヴスゴーグル』を駆使。特定する。
万一にも敵の位置が漏れない様に徹底的に探る。桜に擬態である以上視線はやや上向きに。
『アリス、あそこ』
――Aliceが何かを見つけた様だ。
Aliceが指で示した方角。前方20メートル四方のやや南西向きの高さ5メートル弱。
桜の枝分かれした部分が一瞬だけモゾッと動いた様な気がした。
アリスはそれに驚愕の色も見せずにただ視線だけ動かしてその目で追い……。
「もしもし? 敵発見。場所は公園森林内方角やや南向きの西方面。わたし達がいるポイントから前方20メートル弱。ただちに迎撃準備に移行」
『――了解』
早速、味方へとスマホでアクセス。他の仲間達にも伝える旨を淡々と話した後、情報伝達は2分も掛からない内に終了。
「……さて、このままだと交戦中に敵が擬態・逃亡する可能性もあるし、『マナチェイサー』は2、3回分は残しておこうか」
そう呟きつつも余裕の足取りで敵の桜に擬態しているポイントへと向かう。
――『ライヴスゴーグル』等で味方が敵の居場所を見破ってくれているならその情報は存分に使う。
ゴーグル使うにしろ、「このへん」とアタリを付けられるに越した事はないだろう――
その様な算段を持って挑んだ2人の人物。ヴェロニカ・デニーキン(aa4928)と藤山長次郎(aa4928hero001)はスマホを持っていた仲間から情報を共有し、既に現場へと駆け付けていた。
ヴェロニカはサーカス団員、藤山は江戸時代の手妻師。2人とも糸を使うのには慣れていた。
「本当にここで良いんだな?」
「そうと決まれば、藤山長次郎らにやる事は決まっている」
「今日のステージは日本と言えどやけに派手だな。いや、これこそが日本人の華やかさ……風情と言うヤツか?」
あらかじめ、桜を背景に立ち愚神本人が見えにくくなる場所のルートに糸を多数張り付ける。
それは後の戦いに重要な役目を果たすはずなので、自分自身で覚えておく。
手品などの「見えない糸」を使う場合、背景にスパンコールなど糸をカバーするものを用意し、見えにくくする。
桜と同色で溶け込むものも、輪郭や、桜が背景にならない瞬間など、見破るコツはこの2人にとっては朝飯前。見慣れたものだ。
そしてそれを見ると同時に……
「さて……と。準備は無事、整いましたね」
「後はピンクに擬態した愚神とやらがどう動くかだな」
「……敵は何も仕掛けて来ないが、何がしたいんだ?」
『うん、桜を独り占めしようとする悪漢は退治しないとね』
アリス達の情報を元に『ライヴスゴーグル』を装着して索敵しながら、そんな会話を交わす2人組。
他でもない御神 恭也(aa0127)と伊邪那美(aa0127hero001)だ。
「擬態も厄介だが、桜にも注意を払わないといけないのが更に厄介だな」
『まあ、ここが只の山とか草原だったら楽だったのにね』
ふと、そんな時、恭也が少し奇妙な行動に出た。木登りだ。伊邪那美は怪訝そうな顔で――
『恭也……いい歳して何やってんのかな? 今は、遊んでいる場合じゃないよね?』
「……俺が遊んでる様に見えるか? まあ、それも仕方ないか。目的はコレだ」
伊邪那美が自分も少し混ざりたそうな顔をしていた時、恭也が何かを桜の木の枝に取り付けていた物を発見する。
――リーン♪
『鈴?』
「……そうだ」
『分かった。ピンクカモフラージュ愚神に対する罠だね』
「その通り」
もし万が一、愚神と接触して逃げられた場合――その回避能力を買って出た愚神に敬意を表して恭也はこんなトラップを予め用意していたのだ。
つまり、敵が木に飛び移った振動で鳴る鈴の音をたよりに逃走方向を割り出して先回りをして退路を断つ。
「本来であればペイント弾でもばら撒けば、擬態を無効化出来るが……」
『やったら駄目だからね。アイツを討伐し終わったら御花見をするんだから』
こうして着々と愚神を追い詰める準備は整っていく――。
『ホープの花が咲き誇るー』
「え、歌? それはおいといてお仕事しようか。呼ばれたからにはしっかり援軍するよ」
『呼ばれなくてもお花見するよ』
やたらゆるい空気が抜け出ないのはこの少女達の特性か? 長所か?
そこには餅 望月(aa0843)と百薬(aa0843hero001)の姿があった。
現在の状況……それは――
「ピンクの愚神がカモフラージュ中、ということね」
『ちゃっちゃーん、『ライヴスゴーグル』』
「SE入ったかな。まあ、それは置いといて……。姿は隠せても気の流れは隠せないということね。見せてもらいましょうか」
『ライヴスゴーグル』を持っている味方と索敵方向を分散して効率的に探索していた2人。
しかし今、その距離はググッとある方向へと狭まっていた。他でもない愚神のいる例のポイントだ。
共鳴したアリスとAliceが発見し、その情報は手持ちのスマホでこの2人にも、もちろん伝達していた――と言う訳だ。
何やら嫌な予感がする――といった具合にそのゆるい空気を纏う餅と百薬にも不可視の影が静かに忍び寄っていた。
そんな中、友人として鉢合わせたリンカー達もいた。
雁屋 和(aa0035)とヴァン=デラー(aa0035hero001)そして十影夕(aa0890)と結羅織(aa0890hero002)だ。
『ノドカ、これが終わった後花見がしたい』
「はいはい、じゃあさっさと殴って終わらせましょ……あれ、十影さんじゃない」
少し離れた位置に十影と結羅織の姿を発見。向こうもこちらに気付いたらしく近付いてくる。
――戦う事への恐怖の裏返し――
その時、不意にそんな衝動が彼女――雁屋和の精神を揺るがした。
(友人に戦いで顔を合わせるなんて初めて)
そんな事を思いつつも彼女はただひたすらに祈る。
戦いが――怖い事が分からないように、虚勢が剥がれないように。
それをいち早く覚ったのか、ヴァンは――
『(戦いに巻き込んだから、何も言えねえ)』
「雁屋さんとヴァンさん。こんにちは。早く倒してお花見したいね」
――と、言いつつアイアンパンクの無口な少年。十影夕はこんな事も思っていた。
(知り合いと一緒になっちゃった。あんまり見られたくないな、共鳴。テンションヤバイから)
「素敵なデートスポットを荒らす変態は許せませんね! デートの相手はいませんけど! 和様たちはデートなのかしら!?」
「ホンットおまえ黙ってて。明るいのはいいけど、元気よく変な事言い過ぎなんだよ結羅織は」
「隠れてて見えませんけれど、愚神ってイケメンかしら!? 変態イケメン×血祭りって、ちょっとした特集組めそうですわね!」
結羅織がそんなベリーグッドな発言を追加発注した時――
――ピロリロリロ♪
和達の持っていたスマホが鳴り響く。受話ボタンを押した和は厳しい表情で周囲を探りながら――
「……ええ。分かりました。直ぐにそちらへと向かいます」
――ピ♪ 受話ボタンをもう一回押して切った。
「早速、仕事か」
ヴァンが固い口調でそう言うと――
「ええ。まあ、今回の作戦では私達の出番って訳ね」
――それを真摯に引き継ぐ和。
すると、友人の十影夕が割と明るい口調で――
「一緒に戦うの初めてだよね。俺もユエとはまだ二回目なの。あ、三回かも」
和は出来るだけ平静を装って答える。
「そうですね。これが初めて……お互い全力を尽くしましょう」
結羅織はその彼女の素振りに全く気付いていない。
いつものテンションで――
「イケイケじゃん。負けらんない」
●
森林公園内は異様な静けさを保っていた。
それ故に愚神本人も退屈していたのか? 一瞬の隙を見せた。
ヴェロニカと藤山が罠として張っていた「見えない糸」――そこに引っ掛かったのだ。
その瞬間、1秒にも満たない時間が命取りになった。他でもない愚神の動きが乱れる。
――それを合図として戦いは始まる。
「……いたぞ」
『愚神……なのかな?』
その一瞬の隙を見失う程、リンカー達もバカじゃない。
怪しいと思しき桜の空間がぐにゃりと歪んだ。
最初に発見した恭也と伊邪那美は共鳴すると、すぐさま攻撃を仕掛けるが狙った位置に敵の姿は無い。
恐らくまた桜に擬態し、そのまま逃走したのだろう。
「……逃げ足の速い奴だ」
攻撃を紛う際には桜を傷付けない様に注意を払ったのがいつもの寸分だけその判断力を鈍らせた。
「どこに逃げたのでしょうか?」
聞いたのは、こちらも既に共鳴した餅と百薬。
「恐らく……あっちだ」
そして他にも周囲に集っていた同行していた仲間達にその位置を割り出し、知らせる。
「……このまま逃げられたら厄介だな。追撃だ。同時に攻撃を仕掛けるぞ」
――リーン♪ リーン♪
愚神のその姿は見えずとも、先に準備していた鈴の音がその経路を如実に物語っていた。
そして、『ライヴスゴーグル』を再び掛け直した共鳴時の餅と百薬、共鳴を解かないまま『マナチェイサー』と『ライヴスゴーグル』で後追いするアリスとAlice、更にヴェロニカの姿主体で共鳴したヴェロニカと藤山の姿がそこにあり――
敵の逃げた方角へと一直線に進み、追撃を仕掛けにいく。
擬態し見失ったと判断した共鳴中のアリスとAliceは鈴の音と『マナチェイサー』そして『ライヴスゴーグル』を頼りに敵の位置を強引に割り出した。
「……逃げられると思わないでくれる。DZとか作られても面倒だし、何より取り逃がすなんて御免だよ。わざわざ二度も三度も戦いたいとは思わないね」
しかし、その共鳴時のアリスとAliceよりも先に動いた者がいた。
ライヴスを集める邪悪な気配の中心に『パニッシュメント』――!!
「そこです」
共鳴中の餅と百薬だ。
『パニッシュメント』による鋭いライヴスの光――その一撃は相手の懐を抉った! そしてお花見サバイバルなる今回の邪悪なる敵の姿が露わになる。
そいつはやはり愚神――他でもない知能を持った手足が6本ある巨大なクモを想起させる気味の悪い怪物。
「――グッ! フハハハハハ!! やるなあ!! やるではないか!! それでこそリンカー!」
あまりに唐突の出来事でそこにいた誰もがショックを受けていたが――全く動じない者もいた。
「(しーん)」
無関心かつ冷めた表情を崩さない。共鳴中のアリスとAlice。
そして誰もが虚を突かれた矢先にまた逃げようと擬態しかけた巨大な愚神を尻目に隙を見逃さずに呪符『氷牢』を敵を縫いとめる様に突き立てる!!
グシャグシャパリーン――!!!
氷の杭が敵の足目掛けて飛んでいき、お見事貫通! 少し嫌な音と共に敵の足止めに成功する。
それを機に他の仲間達も自我を取戻し、攻撃に参戦。
共鳴時のヴェロニカと藤山は【SW(ナイフ)】Red string of fateを投げナイフとして用い、SWの糸で見えにくく予測しにくい攻撃を加える。
「いくつかの手妻には糸を使うことがございます。自分にも見えにくい物を扱う事は、慣れたものです。保護色を使うのが自分だけだと思ったかい? 見破るコツはあるんだよね」
そして、共鳴している4人のリンカーと英雄が交戦している最中――残りの2人の援軍がそれぞれ自身の英雄を引き連れてやって来た。
「なるほどー、全然わかんないな!」
共鳴した十影夕と結羅織はそう言いながら自身の懐に隠し持っていたカラースプレーを取り出す。
擬態を見破るのは他の人に任せ、いったん見つけたら追跡しやすい様に派手な黄色のカラースプレーで愚神に目印を付けられないか画策する。
発見とか継続的な発見の方法とかはもう既に整っているので、後は自分達が殴るのみ――
そう決意を固めて十影夕達と共にやって来たのは目の前で繰り広げられている戦闘に乱入しようとしている和とヴァンだ。
「一つに集中できるってありがたいことよね」
『全くだ、後は殴ればいい得意だろう』
そして――共鳴。発見の声と場所に従い素早く移動し、全力で剣を振りぬく。
餅と百薬による『パニッシュメント』で一撃入れた後、その巨大な怪物なる愚神はそこから敵前逃亡を敢行しようとまた更に桜につまりはピンク色にカモフラージュ。
恐らくその巨大な身体を隠す為に擬態能力が備わったのだろう。しかし、今こいつを見逃してしまえば、DZを形成されて大量の従魔がこの公共施設を破壊してお花見どころではなくなる。
そう思ったのか、餅と百薬は速攻で幻想蝶――ライヴスメモリーから蒼炎槍『ノルディックオーデン』を取り出し、構え、そのまま槍で突きかかる。
だが、それは敢え無く回避され、愚神の姿は見る見るうちに桜色に変化していく。
――ヤバイ! 今、取り逃したら厄介な事になる!!――
誰もが不安と絶望に駆られたその時だった。
「俺はきみを見逃すつもりはないよ」
餅と百薬の攻撃に便乗したのは、十影夕と結羅織だ。片手に例のカラースプレーを携えて一気に噴射!
その距離およそ3メートル。十分とは言えないが、かろうじて相手に黄色の目印を付ける事に成功。
「クソォォォォオオオオ!!! 我の完全無欠なピンク迷彩にちゃちなオモチャで泥を塗りおってぇぇえええ!! 貴様等ぁあああ!!! 許さんぞぉおおおおお!!」
巨大愚神の雄叫び! だが、今度は誰もが怯まない。姿を現した時とは別に――もう、相手の擬態効果は無きに等しかったのだから。
そしてアリスとAliceは極獄法典『アルスマギカ・リ・チューン』に切り替え、『ウィザードセンス』による極上の炎でお出迎え。
そこから更に便乗し、相手が逃げるのか攻撃してくるのか、黄色いカラースプレーの跡と風景の揺らぎを見て予測しその動きを追跡。
「出てきなさい隠れて声を張り上げる事だけが取り柄の臆病者! 戦わないことは――事は、罪よ」
和とヴァンはそう言って戦闘の流れを継続。
<疾風怒濤>による連続攻撃を繰り出し、己のAGWに<一気呵成>でライヴスを集中させて攻撃。敵の重心が僅かに崩れ落ちた所を<ストレートブロウ>による衝撃波で畳み掛ける!
そして愚神に最も近い位置にいた十影夕と結羅織は相手の匂いを探るかのように接近。
「俺はすごく興味があるんだ、きみに。冷たい? 温かい? どんな味?」
AGW『≪白鷺≫/≪鳥羽≫』の漆黒の翼『≪鳥羽≫』を用いてライヴスを闇へと変換。
その持ち主に仇なす眼前に迫る桜色の愚神をその闇へと引きずり込む。
しかし、愚神はなおも悪足掻きを続ける。
その間、戦闘を長引かせないためにも戦力を減らしたくないので、最初に戦っていた愚神捜索組のリンカー達に『エマージェンシーケア』と『ケアレイ』で早めに回復支援。
「痛いと気が散るでしょ? すっごくイイときもあるけどさ」
そこにヴェロニカと藤山が張っていた糸を回避したり引っ掛かったりと、がんじがらめになった中途半端に見えない愚神に止めをさすかのように相手方が行くしかない場所を狙って攻撃。
「汚らしい桜は散ることで人を喜ばせ、美しい桜は咲くことで人を喜ばせます。ピンクの怪物はもう舞台を降りる時間だよ。その場所は、花見をする場所さ、さっさと消えな」
――そして今度こそ愚神は音もなく消え去った。
●
「和お姉様!! とっても素敵でした!! 鍛えられたお身体の美しいこと! 共鳴中のどさくさで触っておけばよかった!」
結羅織の反応に対して――和は少し困惑気味。
「え、え!? なに? 腹筋? 確かに割れてるけどどうしたのよ。よくわからないけど触りたければ触ればいいんじゃない?」
「キャー! 恥ずかしい!」
照れて十影夕の後ろに隠れる結羅織。
それに対し、先程の戦闘で外したカラースプレーをクリーナーで掃除して景観維持に努めていた十影夕はと言うと――
「お前の恥ずかしい基準、全然わかんない」
完全に呆れ顔だ。
『(これ少女漫画? とやらで読んだことがあるぞ、ろくな目に合わんヤツだ)』
傍目でそれを見ていたヴァンは静かにそう思い、だが決して口にはしなかった。
そんな中、無事愚神討伐完了後の花見をするために料理や飲み物を買い集めて皆と宴を楽しんでいた恭也と伊邪那美。
『恭也の料理が無い……手抜きじゃないの?』
「依頼内容は討伐であって、宴じゃないだろ……」
『え~。しょうがないから我慢するけど……お酒も見当たらないんだけど?』
「俺は未成年で、お前は例え英雄であっても見た目で却下だ」
『はあ……お神酒上がらぬ神はないって知らないの?』
「……何を言ってるんだお前は? 良いからこっちのジュースでも飲んでろ」
『炭酸飲料じゃないよね? 本当にボクはあれが苦手なんだから』
そんなやり取りをしている向かい側では、餅と百薬の姿があった。
『ちゃっちゃーん、何だか豪華なお弁当』
「『ライヴスゴーグル』と同じSEじゃないの。おせち料理もここで開けちゃうしかないね、めでたい席だしね。消費OK」
そしてその視界の片隅には、共鳴解除し、最初にここで苦戦を強いられていたリンカー達にオーダークリアの報告をしたアリスとAliceがいた。
二人は静かに桜を眺める。
「春だね、Alice」
『やっと冬が終わったね、アリス』
「長かったね」
『あいつ(絶零のヴァルリア)のせいでね』
そして最後の締めは餅の一言から始まった。
「先行してた皆さんもみんなお疲れ様、互いの無事に乾杯。さすがにお酒は無しで。でも、一般の方が入る前に、ちょっと役得しちゃおう。あたし達が食べ終わるまで何もなかったら安全確認できたってことで」
――かんぱーい♪――
こうしてスムーズにお花見会場は形成され、今回のお花見サバイバルなる騒動は大成功で幕を閉じた。(了)