本部

【白花】連動シナリオ

【白花】音の波に、花は揺れ

高庭ぺん銀

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/03/29 16:58

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-

掲示板

オープニング

 とある異界接続点から、大量の白い花が噴き出した!

 空高く舞い上がった花々は、地球のあちらこちらに散らばり、降り積もる。
 敷き詰められた白い花は、なんとも美しく、なんとも幻想的な光景を作り出した。

 調査によれば、花自体は無害であり、従魔でもないという。
 そう、ただただ世界のあちこちに白い不思議な花が散らばった……という状況、ではあるが。
 なにせ、場所によってはそれこそ大雪のようにたんまりと積もっていたりもする。
 おかげで、空港では飛行機の離着陸ができないなど交通機能が麻痺したり。農作業や観光業に影響が出たり。世界各地の町としても、積もった花は美しいけれども、そのままにしておくこともできなかった。
 というわけで。「異界による事件」という理由もあって、H.O.P.E.の出番となったのである。

●ロッケンボーイ、音楽の町へ
『小夜霧町(さよぎりまち)?』
 ティアラの気だるげな声が幻想蝶内から響いた。また夜更かししてゲームをしていたのだろうか。それとも美しいと評判の歌や舞を、ネット越しに披露していたのだろうか。
「もう電車に乗っちまったからな。ついてきてもらうぜ」
 興奮した様子で椿康広は言う。
『随分熱心じゃないの』
「小夜霧駅って言ったらストリート演奏の聖地だからな。あそこで歌ってたミュージシャンたちには、今じゃメジャーになってる奴らも多いんだぜ」
 康広が挙げる名には、ティアラも聞き覚えがあった。
『でも、HOPEの依頼なのよね? 本題は何?』
 康広は世界中で起きている、ロマンチックな変事について語った。
「仕事しながら聖地巡礼できるとはな。花でも何でも拾ってやるぜ!」

●波打ち際のミュージシャン
 3月半ばの雪かき。東京育ちの康広には珍しい光景に他ならなかった。彼が宛がわれたのは公園の敷地内だ。
『綺麗な花ね。これはジャスミンって花に似てる。こっちは花びらが大きくて……そう、ツバキだわ!』
 ティアラはクスクスと笑う。――相変わらず、幻想蝶の中で。一度外に出て来たかと思ったら、花だけ一抱え持って帰ってしまったのだ。
 さく、さく。スコップを動かす。小夜霧は海沿いの温暖な土地だ。積雪対策はほとんどなされていない。雪ほどの重量はないが、町の様子を見て『雪かき』は必須だと思った。
 例えば縦型の信号機にこんもり積もっている様は、ぽっきりと折れそうで心臓に悪い。屋根から花が雪崩のように落ちて来れば、下に居た者が生き埋めになるかもしれない。
 さく、さく、ざっ、ざっ。さく、さく、ずずず。ひとり奏でるのは、スコップのパーカッション。
「あー! 歌いてぇ!」
 康広は「一曲だけ!」と言い訳して、ギターを取り出す。
――ぶっ壊せ
「いや、さすがにこの歌は合わねぇな」
 白一面の景色に捧げるのは、ロックバラード。


音の波に、花は揺れ

作詞:ティアラ・プリンシパル 作曲:椿康広

今はひとりきりだから良いだろう
言葉が溢れるままに歌うんだ
何があった訳じゃない 何もない
空から降ってきたのは白い花

0ミリメートルの温度に充たされてるのに
何処かへ消えたい日がふと訪れたりして
センチメンタルの氷室は時に心地良い
いつかは治るのかな そういうものだろう?

風花症候群 僕は空に舞う頼りないひとひら
根拠のない自信 ハレときどき極端な自己否定
風花症候群 僕は何処へ行き、何へと変化する?
答えはないはずだ 白む彼方の未来は不確定

降り続くならば 深く もっと深く
塗り潰してくれ 白く 心の地表を
僕はまだ迷ってたい


 気づけば目の前には客がいた。同じ任務に就いていた赤須 まことと呉 亮次だ。
「すごい! すごいよ、椿君!」
 手放しでほめられ、いい気分になるが。
「見てよ、椿君の周り!」
「え?」
 白い海の波打ち際に立っているようだと思った。花たちは押し寄せる波のように、彼の周囲に集まってきていた。代わりに遠くの芝生は、積もった花の下から緑の芝が露出しまだら模様になっている。
「俺の歌に反応したってことですか?」
「きっとそうだよ! このお花、音楽が好きなんじゃない?」
 そうとわかれば、とまことは駆け出していく。
「おい、まこと! ……しゃーねぇな、追うか。お前はどうする?」
「そりゃ、ライブに決まってますよ! 音楽でこいつらを引き寄せれば一網打尽っす! 場所はどうするかな……?」
「そうね。この町はそういうことに適しているみたいだし」
 聞き慣れた艶やかな声が、クリアに耳に届いた。
「ティアラ! どうして?」
「『そりゃ、踊るために決まってる』でしょう?」
「全くお前は、こんなときだけ……」
 呆れた様子の康広の声には、嬉しげな響きがにじんでいた。

●条件
「俺は力仕事専門でな。なんか手伝えることあったら呼んでくれ」
 口笛を吹きながら相棒を追う亮次を、一輪の綿毛のタンポポが追いかける。根は存在せず、茎まで真っ白なのが不思議だ。
 康広たちと別れたまことは、公園のすぐ隣――小夜霧音楽大学へと来ていた。この辺は特に雪が多い。HOPEの登録証を片手に事情を説明して大学内に入った。
 彼女自身は音楽にはあまり自信がない。それならばと練習中の札がかかった個室を回り、楽器を練習中の学生やら声楽科の学生やらに声をかけたのだ。学生たちは、以前にHOPEの世話になったからと快く引き受けてくれた。
 結果はハズレ。白い花は康広が歌った時のような反応は見せなかった。
「綺麗な歌だったな。たしか――」
 まことは今聞いたばかりの歌を口ずさむ。白い花が一輪ふわりと舞い上がり、少女の鼻先にキスをした。

解説

【花】
 特に小夜霧音大の周辺に多い。リンカーや英雄の歌声や楽器の演奏に反応する。音の聞こえる方へに集まって来るほか、フラワーがロックする某おもちゃのように揺れたり、宙を舞ったりもする。

【場所】
小夜霧町
 都心へは電車で1時間強。歌手や演奏家を目指して上京し、ここに住む若者も多い。レンガ造りの建物や石畳など、異国めいた景色が楽しめるのも魅力の一つ。(今回は花で埋まっているが)
 楽器店やレコーディングスタジオ、コンサートホールなど音楽関係の施設が多いのは言わずもがな、公園やショッピングモールなどでもしばしばミニライブが行われる。駅前のストリートミュージシャンたちは皆ハイレベルであると評判。

【小夜霧音大】
 かつて愚神の被害に遭ったことがある。現在は春休みだが熱心な学生が多く、登校してから白い花の降下に出くわした者も多い。敷地内には、コンサート用の大きなホールや野外ステージがある。練習用の楽器もたくさんの種類が揃っている。

【その他補足】
・歌や演奏に専念、または花集めに専念するなど、作戦は自由。単独行動も可。
・住民たちは念のため、建物内に避難している。指示があるまでは出てこない。
・住民の厚意で、スコップとビニール袋(40リットルサイズ)が提供されている。その他の道具は各自で調達を。
・既存の歌詞の使用はお控えください。もし希望があればMSが書き下ろします。
→曲のテーマ、入れたいワード、歌の設定(自分の持ち歌、若者に人気のアイドルソングなど)があればお書きください。

【NPC】
康広&ティアラ→ライブをする予定。詳細は未定。
まこと&亮次→適当な歌でも口ずさみつつ、町を散策予定。要請があればライブに合流して花集め係など。

リプレイ

●出演交渉は迅速に
 赤須 まことと呉 亮次は、小夜霧音楽大学の構内に残っていた。椿康広とティアラ・プリンシパルがやってきたためだ。
「ここの中庭ってよく学生のライブに使われてるらしいんす」
「大学付近は特に花が多いって話だから、花を呼び込むにはおあつらえ向きの場所じゃないかしら」
「賛成! 私たちも何か手伝うよ!」
 彼女が請け負ったのはエージェントたちへの出演交渉だ。
「えーと、まずは知ってる人から……」
 まことからの連絡が入る少し前、賢木 守凪(aa2548)はため息交じりに呟いていた。
「これはまた……」
 何かに呆れたのではない。幻想的な風景への感嘆がうまく言葉にならないのだ。片づけてしまうのは少し勿体ないが、仕事はきちんと行わなくては。
「キレイだなぁ♪」
 上機嫌な笹山平介(aa0342)とは対照的に、ゼム ロバート(aa0342hero002)は足をとられそうな白い大地に苦い顔を浮かべる。
「……冷たくないだけ雪よりはマシか……」
「一面花の海、ですねぇ。少しずつでも集めましょうか」
 同じ景色を眺めているのに、イコイ(aa2548hero002)は『海』にいるらしい。ゼムは興味深そうに整った横顔を見た。
「自分たちも、貴公らの誘いをお受けしよう」
 墓場鳥(aa4840hero001)が電話越しに言う。
「危険ではない程度に花を片づけた後は、集まった客に協力を促せば良いと思うのだが」
 もともと、町の住人たちにも花集めに助力を願えないか尋ねるつもりだったのだ。
「町を回りながら、家の中にいる者に声をかけるとしよう。何、礼には及ばん」
 通話を切るとナイチンゲール(aa4840)は青ざめた顔で首を振る。知らない人の家を訪ねるなんて、彼女には天地がひっくり返ってもできないことなのである。
「そちらは私の仕事だ。代わりに、別の仕事を請け負ってもらおうか」
 コンビの渉外担当はにやりと口の端を上げた。
「赤須さんたちはもう会場なんですね? では、私たちもすぐに」
 二つ返事で出演を承諾したのは海神 藍(aa2518)と禮(aa2518hero001)だ。記憶と地図を照らし合わせて大学への道を辿りながら、藍は白く染まった町を見渡す。
「小夜霧町か……」
 この町を訪れるのは昨年の事件以来。美しい歌声と哀しい物語は、今も藍の記憶に新しかった。あの日、悼むように重く垂れこめていた空が、今日はすっきりと晴れている。
「”黒い海のセイレーン”の歌は継がれました。でも……もう一度、死せるセイレーンに手向けの歌を」
 禮は、藍に楽譜を渡す。彼の口笛が正確に音符をたどる。こめられた禮の想いをもなぞるように。
「……うん、綺麗な旋律だね、やってみようか」
 決然と頷いた禮は、次の瞬間ふっと噴き出した。
「兄さん、少し屈んでください」
 今の『演奏』に惹かれた花が、藍の髪に絡まったらしい。彼は照れ笑いする。
「この花……リンカーの、ライヴスの混じった音に引き寄せられてるのかな?」
「不思議ですね……きれい」
 ライブの誘いを一旦保留して、平介は仲間たちへと状況を説明する。
「音楽に反応……って……花のくせに耳でもあるのか?」
「あるかもしれませんよ♪」
 平介が答えると、無言で一歩下がるゼム。彼の発言をジョークとみて、乗っかったつもりだったのだが。守凪に至っては「花に耳……か」と真剣な顔で呟いている。
「冗談です♪ さ、はじめましょうか♪」
「……あ、あぁ」
 袋を握りしめ、歩き出すゼム。イコイがころころと笑っている。
「しかし能力者や英雄の歌に反応というなら、ライヴス的な何かか……?」
「その可能性が高い、かな?」
 守凪は平介の横に並ぶ。
「まぁ、いいか。とにかく、少しでも集めなければな!」

――ぶっ壊せ 傷だらけの心にまた破片が刺さるけど
振り下ろせ 誰もが持ってるんだ、道拓くための剣を

 康広はアコースティックギター一本と、己の声のみで激しいロックを歌う。迫力こそ本来のバンドバージョンに負けるが、むきだしの声を媒介に聴く者の心へと突進するような歌だ。
「何やってんだまこと! お前の頭の上、通過してったぞ!」
「私じゃ届かないって! 亮次さんがこっち来てよー!」
 歌に合わせて激しいダンスを踊る花たちを、まことと亮次が追い回していた。
「お待たせしました。私たちも参加……というか少しお手伝いをさせてください♪」
 平介の申し出に、康広は首を傾げた。
「本当にリハーサルだけでいいんですか?」
「俺たちは本職ではないからな。本題は花を集めることだし、客がいなくても問題ないだろう」
 守凪が答える。
「それもそうですね。なんか、俺の思い付きに付き合ってもらっちゃってすいません」
「任務が達成できて、町の人も楽しいなら最高でしょう♪ けれどうちの『バンド』は照れ屋が多くて♪」
 守凪とゼムがそれぞれ「自分のことか」と体を固くする。
「花のお掃除が終わったら、町の人たちも呼んでみんなで盛り上がりましょう♪」
「そうっすね! まずは高いとこからやってるんす。安全を確保したら、ライブと花集めを同時進行して……」
 話し合いの途中、4人を順に見た椿はバンド編成を問う。ピアノ、ヴァイオリン、それから――。
「ああ、ゼムさんは指揮者を……」
 その瞳がわずかに揺れた。恐らく動揺のために。
「あ、いいえ、『舞台監督』をお願いしてもよろしいですか? 音楽も大事ですが、花の様子を見ている人は必須ですから♪」
 構わん、とゼムは胸を張る。
「感想なども言ってさしあげたらいかがですか? 『監督』ですからねぇ」
「ああ、頼むぞ」
 守凪と康広は言葉通りに受けとってくれたようだが、イコイの眼はゼムの見栄を見逃さない。揶揄を忍ばせるソプラノボイスに平介は心中で苦笑した。
「ドール、お歌歌うと良いらしいのよ」
「ぜってぇ歌わねぇかんな」
 中庭の片隅では静かな戦いが始まっていた。
 ライブの準備は順調に進んでいる。花を集めた後は学生たちも呼んでコンサートだ。楽器のできる出演者には事欠かないから、さぞや盛り上がることだろう。「早く踊りたいなら手伝え」という説得を受け入れたティアラは、満タンになった袋を手に行ったり来たりしていた。
「ふたりとも、どうかしたの?」
 頬を膨らませ、まばたきすら惜しんでじっと相手を見つめるフィアナ(aa4210)。そして鬱陶しそうに彼女を見下ろすドール(aa4210hero002)。
「お歌歌うと良いらしい、から、ドールに歌ってもらうの。ドール、とってもお歌上手なのよ」
 フィアナはティアラを味方に引き入れた。
「絶対絶対歌ってもらうから」
「あら、楽しみね」
 フィアナの視線はドールへと固定されたまま。
(歌えと言われて歌う様に見えんのかっつー)
 彼は心の内で毒づくが。
(………視線がうぜぇ、諦める気配がねぇ。こいつほんっと頑固!)
 形勢不利。フィアナ本人には自覚がないだろうが、ティアラからすれば一目瞭然だった。
「ああくそっ! 分かった分かった! ちっとだけな!」
 花が開くようにぱぁっと笑うフィアナ。
「よかったわね」
 ティアラはくすりと笑みをこぼして、その場を去った。
「花の回収とかは知らねぇぞ。お前が何とかしろ」
「する!」
 力いっぱい宣言されてしまっては、もうぐうの音も出なかった。

●Play!
「いいか、平介?」
「はい、いつでも♪」
 リハーサルが開始される。守凪はレパートリーの中から、弾き慣れた小品を奏でる。伴奏は平介だ。ピアノとバイオリンの二重奏が、安らかな音色で寄り添っていた。ぶっつけ本番に近いのにここまで安心感があるのは、信頼関係のなせる業だろう。
「一般の客が入ってきたか?」
「安全を確認した後、役場経由で宣伝したそうですよ。この曲が終わるころにはもっと増えるでしょう」
 ナイチンゲールたち――主に墓場鳥――の尽力も忘れてはいけない。
「このままライブが始まってしまいそうですねぇ」
「問題はないだろう。お前はステージに立たずじまいか?」
 惜しいような、なんだか安心するような。歌声を聞かれたくらいで、イコイを奪われたと思うほど狭量ではないつもりだが。
「そうですねぇ、せっかく報酬を頂きましたし……」
 イコイは音もなく、空気を吸い込んだ。謳うのは言語ではない何か。舌と口蓋を打ちつけ何かを『喋って』いながらも、言葉よりは鼻歌に近いモノに思える。英雄の耳を以てしても翻訳は行われず、メロディに溶けた意味は誰にも分からない。
 ――けれど本人としては、『恋』を謡っているつもりだ。ゼムは口をつぐんで聴き入っている。
「何でも出来ると仰るのなら、合わせて謡ってくれてもいいのに」
「俺は歌は歌わねぇんだ……人前ではな……」
 ふいと逸らされるゼムの顔。くすくす笑いを収めてから、イコイはもう一度歌いだす。彼女が歌う恋の歌を『指揮』する者がいるならば、それはゼム以外にあり得ない。これはふたりの歌。この歌を奏でているのはイコイであり、ゼムでもあるのだ。
 花を片づけて作ったスペースは、ステージと呼ぶにはあまりにも心もとない。最前列にはフィアナが座り込んでいる。白い花は文字通り絨毯となって、彼女のスカートの下にある。睨み付けると「休憩、もらったの」と口パクする。
(お前がサボってるかどうかなんて興味ねぇよ!)
 観客は期待を込めた目で彼を見ている。他のエージェントも作業こそ続けているが、付近にさえ居れば彼の歌を聞くことができるだろう。
「――」
 花が舞い上がる。ドールの声は天の祝福のように、白い海を渡る。口を開けば乱暴な言葉や皮肉ばかり発しているドール。彼がこれほどまでに澄んだ歌声を持っていることを誰が想像できただろう。
「すっごい……!」
 まことが取り落としたスコップを隣に居た亮次がキャッチした。金属質な雑音で、柔らかな歌声を掻き消したくなかったからだ。

(ふふ。説得、頑張ってよかったの。ドールのお歌、やっぱり大好きよ)
 歌に乗せられた言葉はドールの前の世界のものだ。おまけに本人には意味を伝える気が全く無いときている。だからここにいる誰も――誓約相手であるフィアナですらも正確な意味はわからない。
「……終わりだ。いつまでも不抜けた面ァしてんじゃねぇよ」
 吐き捨てるようにドールは言う。言われたフィアナがにこにことしているために、照れ隠しにしか見えないが。
「なっ……そこのおまえは、どうして泣いてんだよ」
「え?」
 フィアナの数歩後ろで、赤いパーカーの少女が涙を拭うことも忘れて立ち尽くしていた。――どうでもいい相手の名は覚えていない。
「えっと、なんでかな? 自然に涙が出てきちゃって。あ、悪い意味じゃないんだよ!」
 フィアナにハンカチを手渡されて、あわあわと言葉を紡ぐ。
「よくわかんねぇ理由で泣くとか……気持ち悪くねぇわけ、おまえ?」
 少女――まことは勢いよく首を横に振った。濡れた犬じゃあるまいし。
「むしろ子守歌っつーの? よく眠れそうな歌声だと思ったけどな」
 少女の相棒が大きな口であくびをした。このリアクションの方がいくらかましだ。
「わたしは、ほんわか幸せな気持ちになったのよ? 不思議ね?」
 同年代のフィアナに頭を撫でられて、赤い少女は恥ずかしそうに笑った。

●幕間――音楽劇の主人公たち
 ナイチンゲールもまた、ライブの出演者として名を連ねていたのだが――。
「人前で歌なんか無理だよぉ……」
「お前の意思だ」
「墓場鳥が乗せるから!」
「強いた心算は無い」
 強いたも何も、勝手に出演すると決めたのは墓場鳥。身を震わせて後退るナイチンゲールをなだめすかし、首を縦に振らせたのも墓場鳥である。
「うう……こうなったら共鳴して」
「断る」
「なんで!」
 応えはない。
「ふええ……」
 縮こまる彼女の耳に美しい演奏が覆いかぶさる。誰のものなのかは今の彼女にはわからない。誰だって関係ない。劣等感が刃となり、胸に穴を開けていく。
「ナイチンゲール!」
 ざっ、ざっという慌ただしい音が旋律を掻き消してくれた。自分を呼ぶ墓場鳥の声も、乱れていく己の息も。ナイチンゲールは逃亡を選んだ。彼女にとって音の波は美しい魔物だった。
(歌う人がいないなら僕も、って思ったけど……平気そうかな)

 興梠 葵(aa5001)は花集めに専念することにした。
「リハビリには、丁度いいか……。右足も、まだ馴染んでいないし……」
 別に歌いたい訳ではない。でも、あそこにずっと引き籠っていたくなかったのだ。

――ドレスの裾をつまんで 俺とダンスホール抜け出そう
手をとって森を抜けて 月の光降り注ぐ花畑
でたらめに踏むステップ 馬鹿にする奴はいないから
恋から始まったミュージカル! ラストは愛が全て解決さ!

 遠くから康広の声がした。葵の周りに散らばっていた花は軽やかに、可憐に、ステップを踏む。昔見た女児向けアニメのような光景だ。
(あれは歌ではなく、魔法だったかな)
 今見ているこれも、魔法のようなものかもしれないが。
「妹が、好きだったな」
 小さく落とされた声。ツンと痛む鼻。ぐいと、目元を拭う。

――楽しい歌は、嫌い
楽しかったことを、思い出させるから
涙はもう、枯れたのに
しめやかな心、湿った言葉
頬に片時雨、仰ぐ空は青藍

 心の中で、ひとりでに詞が生まれていく。天気雨のように花を振らせる空は、歌と同じ青い色。
「いけない、作業に集中しないと……」
 思いっきり歌ったら、気分も晴れるんだろうか。今にも喉の奥から溢れそうなそれを抑えながら、葵はスコップを振るい続けた。

「では僕達は町を散策しましょう」
「その狙いは何だ?」
 奈義 小菊(aa3350)と青霧 カナエ(aa3350hero001)は、もとよりステージへの誘いを辞退していた。
「道路沿いの側溝や排水溝です。花びらに覆われたり詰まったりすると、雨水が流れず大変なことになります」
 自分にはなかった視点に感心した小菊は、流れるように問いを重ねる。
「なるほど。方法は?」
「僕が歌います」
 小菊の目が見開かれ、素直な感想が零れ落ちた。
「意外だな。歌えたのか」
「ホワイトデーのお返し、まだでしたよね」
「私はチョコを渡していないし、結局おまえが作ったではないか」
 困惑し、赤面する小菊を、カナエは底の見えない青い瞳で見つめる。
「……まあ、歌うというのなら止めはしない」
 正直、興味はある。目線だけでちらりと窺うと、カナエは嬉しいのだか哀しいのだか判然としない笑みを浮かべていた。

――心に針を刺された日には、その背を闇が抱きしめるでしょう
身体を丸め痛みに耐えて、鼓動の音に耳をすませば
かすかで遠い光の足音、確かに聞こえて来ることでしょう
立ち上がること諦めなければ、再び朝は訪れるから

 静謐で、讃美歌のようにも聞こえる歌。
「良い歌だな。どこで覚えた」
「わかりません。歌と言われて、真っ先に思い浮かんだ曲です」
 続きは、と問うとカナエは首を振った。ただ、今歌ったのは恐らくサビに当たる部分だという。
「――」
 カナエが鼻歌で歌い出す。
「今、作りました。おかしくないでしょうか」
 知っているようで知らないその歌を、彼はその手で作るつもりらしい。
「おかしくない。今のが始まりだろう? それなら」
 小菊は続きを歌う。彼の作ったメロディに呼ばれてこの世へ迷い込んだ旋律を。
(元いた世界で覚えた歌だろうか)
 推測するが、解答はない。その間にもリレーのようにメロディーはつながり、合作が積みあがっていく。そしてふたりの思考は同じ場所に行きついた。
「共鳴してみるか」
「はい。この町のものに限らず、白い花はライヴスとの関わりが深いようですし」
 弱弱しい水の音が聞こえる。花が詰まったせいで、水の流れが悪くなっているのだ。
「あの溝からはじめましょうか」
「きっと汚れた水の中でも純白であるのだろう」
「袋を手にしてここへお入り、と歌で促せば入ってくれるでしょうか」
 冗談なのか本気なのか。
「スコップでざっくりでも良いと思うがな」
 小菊はやはり平坦に答えた。
 女が歌う。闇のように黒い髪と、深海の青を湛えた瞳。小菊であり、カナエである存在によって、ふたりの歌がこの世界に降り注ぐ。――と。
 突風だと思った。しかしその風は全て花で出来ていて。彼女は歌い続けながら、閃光のような白い風を抱擁した。
 
 花びらを集める。無心を己に命じ、しかし守ることはできずに、葵は進んでいく。花びらたちは決して葵を責めない。どこか慰めてくれているようにすら感じる。
「そうだな……。気持ちに引き摺られても、辛いだけだ」
 ステージの歌が途切れた。無音に促されて、葵の歌声が喉の奥から溢れ出た。

――思いは重い、ずっと引き摺り枷になる
でも、楽しかったこと、覚えてる

 花は踊っていた。ひとつまたひとつ、地面を離れて舞い上がる。手を振るようにくるりと周り、葵の眼前を通り過ぎる。

――今は重荷に感じても、いずれは慣れて糧になる
頬の雫は催花雨に、最高の歌を、届けるよ
悲しみ割る、この声で
きっと花を咲かせるよ
笑顔の花を咲かせるよ
だから届いてこの空に、あの子のいるあの空に

 拍手はない。それでいい。この歌を聞いて欲しい相手は、もう掌を持たないから。いつの間にかステージは再開されている。差し伸べた手に、小さな花が着地した。
「……そうか。きっと、これが魔法だったんだ」
 今日初めて葵の口元にかすかな笑みが浮かんだ。もう少しだけ可憐な花たちと踊るとしよう。

●彼方へと捧ぐ歌
 断続的に聞こえていたバイオリンの音が止まる。
「調律よし、と。いつでもどうぞ、黒い人魚さん」
「ありがとう、兄さん。それでは」
 愚神の依代となってこの世を去ったシンガーの遺作『黒い海のセイレーン』。そして、事件の後、禮が彼女に手向けた鎮魂歌。それらを合せ、アレンジして生まれたのは、母なる海のような優しい旋律。
「歌いましょう、消えゆく人魚の物語を」
 タイトルは、そう。

『白い渚のローレライ』

明るい海 陽をはらむ波
白い水面で あなたに手を伸ばす

けして報われぬ恋でした けれど私は愛してた
人魚姫が泡沫に 消えゆくまでの一片の夢

砂の階段を登って 潮騒を歌う 優しい風になるの
広い空 歌声は広がるのでしょう 遠い陸 あなたまで届くことでしょう

けして報われぬ恋でした 私は海の魔物だもの
けして届かぬ手を伸ばす 泡沫に消えゆくローレライ
私は魔法の歌声で あなたの滅びを滅ぼすの
私は最期の歌声で あなたのしあわせを願うの
彼女のキスを受け入れて あなたは海じゃ生きられない

けして報われぬ恋でした それでも私は愛してた
人魚姫が泡沫に 消えゆくまでの
一片の夢

 純粋な恋をしていた女性は黒い海へ沈み、人の命を喰らう魔物となった。魔物は希望を歌う勇者たちによって葬られ、眠りにつくことができた。そして今、禮の世界に伝わる物語と合わさることで、新たな物語として生まれ変わった。
「人魚の物語は、悲劇で終わるものです」
 その物語が心奪う歌たちに彩られているのは、彼女たちがいつか泡沫に消えるから。何も残らずとも、せめて生きた証が誰かの心に残るように。
「けれど泣かないで、たまに思い出して、口ずさんでもらえるだけで十分だから。……忘れないで」
「禮」
 兄が呼んでいる。
「兄さん? どうしたんです……?」
 禮の足元に藍がひざまずく。
「彼女も、聴いてくれたのかな?」
 足元に目を落とした禮は息を呑んだ。白い波はステージを昇るだけに留まらず、禮の身体を這いあがって腰のあたりまで達し、厚い層を成していた。今までにはなかった反応だ。
「禮ちゃん……!」
 呟いたのは花の回収係をしていたまことだった。ステージの前で花の詰まった袋を抱き締め、泣きそうになっている。
「……そ、そのままじゃ動けないよね! 私も剥がすの手伝うから!」
 一枚一枚の花弁はまるで鱗。禮は白い人魚と化していた。まるでかのシンガーが、魂の浄化を知らせているかのようだった。
 秋津信子(aa5063)は花に埋め尽くされた車道で、黙黙と作業をしていた。町のゴミ拾いにはよく参加しているからだろう。手慣れた様子だ。
「ご苦労様! お姉さんはライブ、見に行かないの?」
「いえ、私は……」
 壮年の婦人が人懐っこく話しかけてきたが、信子は眉を下げて首を振る。連れている女の子は孫だろうか。
「頑張ってね」
 ふたりは聞き慣れぬ旋律を歌いながら去って行く。婦人の声量は豊かで、歌詞はイタリア語だろうか。さすが『音楽の町』の住人だ。車こそ通らないが、先ほどから人の姿はちらほらと見られる。皆、HOPE主催のライブへと向かってくれているのだろう。
「音楽かあ……私ももうちょっと若い時は、何も考えずに楽しかったなあ……」
 ククク、と笑い声がした。信子が視線を巡らせると、少し先の塀の上に阿弥陀無量光(aa5063hero001)がいた。
「何も好き好んで老けることもなかろう? こういう時に楽しめばよいではないかや」
 信子は決して歌が苦手なわけではない。仏教音楽に慣れ親しんでいるおかげで音感は良い。
「どういった理屈かは知らぬが、こやつらは歌に寄り集まるというではないか」
「もしかして……面白がっていませんか?」
「そう思うか?」
 信子は言い淀む。
「ふむ。ぬしがそう思うたならば、阿弥陀無量光はそういった性質を持つ存在と成ろうのう」
 阿弥陀無量光の姿は神聖そのもので、威厳に満ちた態度もその名を名乗るに似つかわしい。しかし信子が契約したこの『神っぽいモノ』は、どうにも人格に難があるように思える。
 信子は瞳を閉じる。美しかった景色は一瞬にして死に絶え、彼女はひとりになる。

――花は白さを失うだろう それは理(ことわり) 抗えぬこと
触れる温度に、名を呼ぶ声は 刹那の命 燃やして果てる
嘆きはしない 恐れはしない 砂粒のように 何も望まない

 浮かぶのはまだ長いとは言えない人生の走馬燈。曲がりなりにも歌詞だったものは、だんだんと弥陀の姿を礼賛する言葉へと変わる。弥陀の別名を並べてみれば、英雄が笑っているのが手に取るように分かった。

――南無阿弥陀仏の思いがあるかや

 目を開くと、思い浮かべていた相手の姿はなく。
「なんだ。遠慮するから音痴なのかと思ったぜ」
 ゴミ袋を持って立っていたのは、呉 亮次だった。
「おーい、康広、ティアラー! 次の出演者見っけたぞー!」
 言い返せぬまま、出演が決まり。
「歌って参れ」
「いつの間に……」
 背後から声が聞こえた。
「今の歌は悪くなかった」
「……皆さんの前では歌いませんよ」
 そうだ、たまには流行歌でも歌おうか。
「曲は何にします?」
 気づけば、かつての恋人が好きだった曲をリクエストしていて。
「伴奏してもらうなんて、畏れ多いのですが……」
「いえいえ♪」
 ピアノの前に座った平介が笑う。守凪と藍のバイオリンに、康広のギター。まこととフィアナはタンバリンとカスタネットを手にしている。ティアラだけ何も持っていないのは彼女が踊り子だから。ゼムは正面の席で腕組みして座り、隣にはイコイが。ドールは客席の後方で柱にもたれている。
「その歌だったら私も知ってますよ。一緒に歌いましょう」
 禮が微笑み、手を差し伸べた。

――諦めない 世界の決まりを破ってでも、君の背中追いかけよう
知っているよ 明日が見えないのは当り前さ 急流をクロールし続けるの
どうしてだろう すごい力が湧いてくるんだよ だから戦い続けよう
待っていてね 負けそうな日は夢の力を借りよう 永遠だって信じられるよ

 示し合わせたように皆が黙る。最後のワンフレーズは信子のソロパートとなった。

――君と無限の輝きの中
笑い合うために 愛し合うために

●夕暮れ色に、町は暮れ
「綺、麗……」
 ナイチンゲールが行きついたのは公園だった。辺り一面を覆う純白の絨毯。その毛足のひとつひとつが純白の花だ。胸に詩情が灯る。
「手間をかけさせる」
 墓場鳥がわざとらしく息を吐くが、手慰みに端末をスワイプして余裕の表情。けれどナイチンゲールは怒らない。いや、怒れない。怒りの置き場がないくらい、彼女の中に歌が満ちていたから。
「歌え」
 見透かしたように墓場鳥が促す。

――一面は白 花の白
夜霧よぎって まだ積もる白
まるで誰かの為のよう
夜霧の街に住む茜色の君を訪ねて?

 切ない音色が、鈴のような声で紡がれる。

――掃いて捨てるほど溢れても
紳士なのかな 礼儀正しい
でも優しさだけでは足りないの
ほら手を取ってエスコートしてごらん

 滑らかに変調し、似ているようで印象の違う旋律が踊り出す。
「もっとだ。もっと歌えるだろう、ナイチンゲール!」
 言葉も首肯すらも、もどかしい。代わりに彼女は高らかに歌う。

――ひとりひとりの 恋を聞かせて
ひとひらのアリアよりフーガの輪
大切な人と 巡り合うまで
あなた達のセレナーデ歌ってあげる

 舞い上がる花とハイタッチを交わし、慈しむように掬い上げる。一度大きく様相を変えたメロディは再びふりだしへ。

――雪より嘘より白い白
小夜に染まらぬ 不可思議の白
夢より歌より美しい
小夜さえ染めて なお尽きぬ思慕

届け――

 けれどこれもまた初めて聞く旋律なのだ。はじめのメロディは後天的に三つ子となった。

――ひとりひとりの 愛の言葉は
どんなオラトリオより清らかね
でもちょっと妬けるくらい熱っぽい
あなた達に焦がれそうなファンタジア
胸に咲くの

 曲の盛り上がりが最高潮に達する!

――ポピーに高鳴りゼラニウムと出会い
自信家ローズと生真面目アイヴィーに目移りしてたら
うぶなアザレアが俯いた
椿がこっそり覗き込む中
藤に見惚れた瞬間
桃が口説いても花見月の真心にはかなわない

 今のは唯一無二、どれにも似ていない旋律。だから終わりを告げにやって来るのは、2組目の三つ子の末っ子。

――見知らぬ国の 不思議な花と
小夜霧の街でロンドを踊ろう
一夜限りよ あの子には内緒
あなた達にはほんのエチュード
ひとりひとりに 恋したけれど
セレナーデは私のものじゃない

でもクローバーと 約束したわ
重いけどお願いフォーゲットミーノット…

「見事」
「……意地悪」
 くすりと笑うと、英雄も珍しく微笑した。
「この曲はナイチンゲールさんの作品ですか?」
 彼女の視界に突然現れたのは、小菊とカナエだ。
「な、な……聴いて……」
「聴いていたも何も、先ほどからずっとここに居ただろう」
 呼んだのは墓場鳥だが。
 相棒の陰に隠れ、湯気を立てるナイチンゲール。歌姫の貫禄は霧散した。観客たちは膝まで覆う花の絨毯を眺めながら言葉を交わす。
「この花びらは一体どこからきたのだろうな」
 小菊は小ぶりな一枚を手のひらにのせ、何かを感じ取ろうとしてみる。
「向こうの世界では実を結び、種となったのでしょうか」
 カナエは遠い空の向こうへ思いを馳せる。
「……花びらは何かの素材にできるようですよ。少しもらって帰りましょう」
「そうだな」

●潮騒歌う町
 ライブが終わり、客たちは家路に就く。
「どうぞ♪」
「安全性についてはHOPEに確認済みだ。良かったら」
 平介の提案で、客たちに集めた花を一輪ずつ配ることになった。
「今日頑張った記念に♪ 1つ貰って帰りましょうか♪」
 平介は手伝ってくれていた守凪へも、一輪手渡す。
「部屋に飾っておくのもいい思い出になるかなと思いまして♪」
「……あぁ、記念だな」
 ライヴスによって永遠に生きる花。守凪が生きる限り、側にいてくれることだろう。
 フィアナは回収作業の合間に花冠をつくったらしく、ドールにさしだす。
「いらねぇ」
「まことも、ティアラさんも、よろこんでくれたのよー?」
 不思議そうに首を傾げるフィアナ。またあのまっすぐな目だ。ドールは舌打ちする。
「……そっちなら、もらってやらなくもない」
 ドールが指したのはとげとげとした花弁を持つ花。白い花をチャームに使ったお手製のネックレスだった。
「あー! 楽しかったぜー!」
 康広が濃紺色の空に向かって叫ぶ。別行動していた者たちも大学へと集合し、成果を報告し終えた所だ。
「たまには外で踊るのもいいわね」
 ツッコミが来ない。ティアラは怪訝そうに相棒を見る。
「この先、数えきれねぇくらいライブするんだろうけどさ、ここでみた景色は忘れられねぇよな」
「ええ。二度と立つことは叶わない、白い波打ち際のステージ、ね」
 思い出したように禮が呟く。
「この町には本物の海があるんでしたね」
 誰も言葉を返すことはせず、胸に潮の香りを吸い込んだ。――海は、きっと穏やかに凪いでいる。

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結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
  • 心頭滅却、人生平穏無事
    奈義 小菊aa3350
  • 光旗を掲げて
    フィアナaa4210

重体一覧

参加者

  • 分かち合う幸せ
    笹山平介aa0342
    人間|25才|男性|命中
  • どの世界にいようとも
    ゼム ロバートaa0342hero002
    英雄|26才|男性|カオ
  • Sound Holic
    レイaa0632
    人間|20才|男性|回避
  • 本領発揮
    カール シェーンハイドaa0632hero001
    英雄|23才|男性|ジャ
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • コードブレイカー
    賢木 守凪aa2548
    機械|19才|男性|生命
  • Survivor
    イコイaa2548hero002
    英雄|26才|?|ソフィ
  • 心頭滅却、人生平穏無事
    奈義 小菊aa3350
    人間|13才|女性|命中
  • 共に見つけてゆく
    青霧 カナエaa3350hero001
    英雄|25才|男性|ジャ
  • 光旗を掲げて
    フィアナaa4210
    人間|19才|女性|命中
  • 裏切りを識る者
    ドールaa4210hero002
    英雄|18才|男性|カオ
  • エージェント
    美咲 喜久子aa4759
    人間|22才|女性|生命
  • エージェント
    アキトaa4759hero001
    英雄|20才|男性|バト
  • 明日に希望を
    ナイチンゲールaa4840
    機械|20才|女性|攻撃
  • 【能】となる者
    墓場鳥aa4840hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • エージェント
    興梠 葵aa5001
    機械|10才|?|攻撃



  • エージェント
    秋津信子aa5063
    人間|30才|女性|防御
  • エージェント
    阿弥陀無量光aa5063hero001
    英雄|24才|女性|ソフィ
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