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幼夢は茜色に染まり
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そうだんたく
最終発言2017/03/15 23:41:19 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/03/15 23:25:02
オープニング
● まどろみは昼の日差しの中で
夢を見ていた、自分が少し大人になった時の夢。
悲しいことや楽しいこと、見えるものが多すぎて。
けれども空はいつまでも遠い、そんな日々の光景。
けれどそんなものは幻でしかなく、錯覚でしかなく、目覚めてしまえばまどろみの向こうに。
徐々に徐々に不鮮明になる、だってそれは。夏の昼間の白昼夢なんだから。
君は床に横たえた体を起こして身をよじった。
背骨がパキパキと音をたて、それと共に体全体にのしかかる重さが何となく薄れていく気がした。
蝉しぐれを子守唄に君は寝てしまっていたようだ。
そう理解したのは日が少し傾いてしまっていたから。
君は体を起こし、昼間の風をその身に受けて考える。
いったい夜まで何をしようかと。
やるべきことはないが、何もしないでいるにはこの数時間長すぎる。
そんな日々が幾度も続いた結果、ゲームもやり果たしたし、漫画は読み飽きた。
一人で時間をつぶすのに限界を感じていた君は。
一つあくびをうかべて再び寝転ぶ。
その時である。玄関先から響くチャイムの音。そして君を呼ぶ声。
君は起き上がる。はやる気持ちを抑えながら。しかし駆け足で玄関に向かう。
小夜子が来たんだ。そんな確信が君の中にはあった。
● 自然は子供にとって、最高の友だった。
君は平日日中の繁華街を自転車でぶっ飛ばしていた。
迷惑そうな買い物のおばちゃんをかわして、御山へと急ぐ。
「ほら、早くしないと」
そう小夜子は君の隣を並走して言葉でせかす。
ふと見れば彼女の黒髪は風に洗われ翼のように広がっていた。まるで空を覆う漆黒の空の様だ。
「最近見ないから心配してたよ?」
君は思う、小夜子が自分を誘うのを忘れていたせいなのにと。
なのに最近見ないなんて言われた日には、少しさみしい。
その気持ちを素直に伝えると彼女は平謝りした。
「ごめんごめん」
少し前までぱたりと連絡がやみ、全然会えなかったため、自分のことなどどうでもいいのだと、へそを曲げていた君だった。
次にあったら少し棘のある言葉でも吐いてみようか。そう思っていた君だった。
だが
年上なのに申し訳なさそうにする彼女の姿を見ると、なんだか許してしまえた。
何よりまたこの少女と遊べるというのが、とても嬉しくて。
「みんな揃ってるよ。今日は何する? 缶けり? かくれんぼとか」
君は首を振った、小夜子とかくれんぼをすれば、自分は見つけられないまま放置されかねない。
それくらい小夜子は忘れん坊なのだ。
「食料は買ったかな? 厳しい戦いになるよ」
そう自分と自転車で並走しながら小夜子はにやりと笑って見せる。
「楽しいね、夏休みなんて終わらなければいいのに」
その言葉に君は頷いて、でも意地悪したくなって言葉を返す。
宿題は済んでいるのか。
そう告げると小夜子はそっぽを向いて心底嫌そうな顔をする。
「いまから楽しもうって時にそんな話しないでよ」
その言葉に君は笑ってさらにスピードを上げた。
高速で空を切ると空に浮かんでいきそうな飛翔感に包まれる。
そして君は空に手を伸ばした。青く広がる天蓋には白い雲がポツラポツラと浮かんでいる。
幼いころ世界はとても大きく。空は高く見えた。
そのせいで自分に限界は無いように思えたし。
世界が優しく見えた。
けれど成長するうちに、自分の体が大きくなるうちに、世界は張りぼてで、肩がすぐにつっかえるような窮屈な世界だとわかってきて。
それが嫌で、いつの間にか世界を嫌っていた。
「ねぇ、戻りたくない?」
小夜子は告げる。
「友達の手を引いて歩く街。夕暮れを背にして帰る、熱が冷めていくような感覚」
突如君は燃えるような茜色に包まれる。
教室、夕暮れ、誰もいない校舎に響くの吹奏楽のバラバラの音色。
その窓を大きく開いて小夜子が立っていた。
「あたりを漂う夕飯の香りと」
「あわただしく帰路につく、人々の喧騒」
「色あせていくように世界は闇に包まれて」
そして暗転。暗闇の中に君の体は放りだされた。
「夜の涼やかな風を湯冷ましに」
「また明日何をしようかって枕の上に頭を乗せて考えたでしょう?」
「あのころの自分が、今の自分を見たらなんていうか、想像できる?」
「あの頃に戻りたくない? 子供で入れた、大人である必要はなかった、あのころに」
そして小夜子は告げる。
「ずっとここにいましょう?」
そう夜風に漆黒の髪をなびかせた彼女の背後には森が広がっている。
空には星。その輝きを寄り付けない彼女は、闇そのもののように見えて。
● こんかいのまどろみ
今回の舞台もまた、架空の町『十波町』です。
そろそろまどろみの存在も有名になってきたのでPL情報ではありません。
そしてここは架空の都市です。
山の方には神社と学校。海と隣接していて、小さな港があり。繁華街にはカラオケやコンビニといった最低限の施設がそろっています。
そしてここはケントュリオ級愚神まどろみの作ったドロップゾーンで。
具体的にここでは何が起きるかというと、記憶の改ざんと共鳴の阻止です。
まずこの世界に取り込まれたリンカーは英雄、能力者共に現実を忘れます。
ここであなた達は幼少期の夏休みを過ごすことになります。
今回は能力者、英雄ともども八歳から十二歳くらいの歳になります。
小学生にとっては膨大すぎる有り余った時間をみんなで仲良く過ごしてください。
今日は何をしましょう、缶けりですか? どっちボールですか?
家でたまった宿題を片付けるのもありです。
そんな中『円町 小夜子』という少女とも遊んでいただきます。
彼女は活発で、皆さんを頻繁に遊びに誘います。
よければ付き合ってあげてください。
また、夜には神社裏で花火をしようという話になっています。
花火は小夜子が沢山持ってくるそうですが、持参もありです。
そのあと夜の森で肝試ししようという話もしています。
また、英雄、もしくは能力者の一部は記憶の改ざんを拒否できます。
ただ、その場合この世界への干渉力を失い、幼児化している登場人物からその存在が忘れられます。
町人Aの扱いになるのです。
ただ、まどろみの思惑を探る上では、その立場は便利かもしれませんが。
解説
目標 夢からの脱出。
と言っても、小夜子についていって森の中で迷わない限り、夜に眠ればまどろみの夢から解放されます。
なので今回の シナリオの楽しみ方は二通り。
幼くなった状態で遊ぶか。
まどろみに関する情報を集めていくか。
片方に専念するもよし。両方やってみるもよしです。
●『円町 小夜子』について。
十三歳の少女、この町のガキ大将的存在。
黒髪に白い肌、一見病弱そうに見えますが意外と暴力的です。
白いワンピースが好きですが割と汚れることを気にしないので、いつもお母さんから怒られるそうです。
大人びた発言をするが。忘れ物が得意です。
かくれんぼで、誰かが隠れたまま次のゲームを開始したり。
集合に一人来てないのに勝手に出発したり、意外とエグイ忘れ物が多いです。
特技は走ることと、釣りです。
釣りをしたいと言えば彼女が一式道具を貸してくれるでしょう。
ちなみに彼女が皆さんとやりたがっているのは下記のこと。
・秘密基地作成。
場所はどうするか、どんな形にするのか。
壁の材質や、内装はどうするのか?
廃屋に忍び込んでそこを秘密基地と言いはるのもいいかもしれません。
・探偵ごっこ
町全体を使ったかくれんぼです。
建物の中に入るのは無しで。誰がどこに行ったか、そこらへんにいる人に聞いてもいいというルールです。
割とハードルが高いのでみんなに嫌がれます。
嫌がれると彼女はしょんぼりするでしょう。
・お菓子調達。
単に駄菓子屋、コンビニに行ってみんなでお菓子を食べながらお話ししたり、次何やろうかなんて悪だくみしたりします。
ここから先は記憶の改ざんを拒否したPC向けの情報です。
この小夜子という人物、事あるごとに幼児化したPCを神社裏手の森の奥に誘おうとします。
その森に入ると迷って出られなくなり、最悪の場合まどろみに取り込まれる恐れがあります。
リプレイ
プロローグ
「……うぅん、寝てたや」
そう『海神 藍(aa2518)』は気だるげに上半身を起こした。
カーテンの隙間から覗く太陽光は強烈で、時計を見ればまだ午後にもなっていない。
「なんで、こんな時間に……? ん? 僕はどうしてたんだっけ」
藍は記憶を手繰り始める。昨日夜更かしをしていて。朝いつもの時間に目覚めたはいいけど。
眠たくて……。
そう額に手を当て記憶を掘り返す藍。だがその脳裏に、黒い鱗の人魚が浮かんで。
あわてて考えるのをやめた。
「今のは?」
その鮮烈なイメージもすぐにぼやけて消える。まるで一昨日見た悪夢のように印象すらおぼろげで、けど脳裏に彼女の名前だけが浮かんで消えなくて。
「れい?」
藍は自室を見渡した。
散らかしほうだいのデスクの上、広げられた宿題。
そう、藍は宿題をしてて、それで……。
「れいは……?」
そう視線を下ろすと、自分のベットに突っ伏すように『禮(aa2518hero001)』が寝息を立てていた。
「すぅ……」
寝息を立てて、よだれで口元が光っている。
夢の中でケーキでも食べているのだろうか。彼女は甘い物に目が無い。
「んぅ……?」
そんな寝顔を眺めていると、禮がもぞもぞと蠢いた。
「にいさん?」
そして目をこすりながら藍の顔を見あげる。
「おはよう、寝ちゃってたね」
「兄さんが先に寝たんですよ。私は兄さんに宿題を教えてもらうつもりで。それで」
禮はもにゃもにゃと抗議を続ける、だが藍の耳には半分も聞き取れなかった。
「ははは、ごめんごめん。だったらお詫びにケーキでも買いに行こう?」
そのケーキの一ワードではじかれたように目覚めた禮。
「え! いいんですか?」
そのわかりやすい感情変化が愛おしい反面、それで少し遊んでみたくもなる藍。
「宿題ばかりじゃ根が詰まる。少し遊びに出掛けよう」
そう藍は禮の頭を撫でて、外に行く準備をするように告げた。
第一章 まどろみ
リンカーたちはまどろみを追い詰めたかのように、思えた。
極大のドロップゾーン、その異質な霊力を感じ取り、十分な対策を立てて戦いに臨んだつもりだった。しかし。
リンカーたちは術中にはまってしまったようだ。ドロップゾーンに突入すると同時に抗いがたい眠気が襲う。
「貴女はそっち、私はこっち。後は任せた」
そして夢を見た。大切な人が離れていく夢。
「待てよ! アリス」
『一ノ瀬 春翔(aa3715)』は背を向け去っていく『アリス・レッドクイーン(aa3715hero001)』へと手を伸ばす。しかしつかめたのは赤い袖ではなく。Tシャツの裾。
見上げれば黒髪の少女がこちらを見下ろしていた。
(この人がアリス?)
「どうしたの。春翔?」
「いや、なんでもない」
そう彼女の顔を見ているのが気恥ずかしくなって服から手を離す春翔。
そして思う。
(アリスって、誰だっけ?)
あのアリスではないのは確かだ。そう傍らの黒髪の『アリス(aa1651)』を見やる春翔。
「ねぇ春翔。あの子出てきてくれると思う?」
そう物思いにふける春翔へ、少女『円町 小夜子』は問いかける。
この時春翔はふと状況を理解した。今はいつものメンバーで秘密基地に向かう前。家に引きこもりがちの『木霊・C・リュカ(aa0068)』をひっ捕らえに来たところだった。
「りゅかーーーー。でておいでーーーー」
そう小夜子が住宅地の真ん中で叫び声をあげる。
その声にとうとう観念したのか二階の窓が開け放たれた。
「うるさいよ! 近所迷惑だってわからないのかよ!」
そう本を片手に同じくらいの音量で怒るリュカ。
そんな彼の声を聴いて。『ガルー・A・A(aa0076hero001)』は身をすくませた。
「だったらチャイム鳴らした時点で出てきなさいよ! リュカ。秘密基地行くわよ!」
「やだよ、日焼けしちゃうじゃん」
「焼けた方がかっこいいと思うよ?」
小夜子の隣でアイスをなめながら能天気に『伊邪那美(aa0127hero001)』が言った。
「俺は焼けても黒くならないんだよ! 赤くなって痛いの」
「秘密基地、つくるって。いかなくて、いいの?」
ガルーは告げる。
「仲間外れになっちゃうよ」
「いいよ! 別に!」
リュカは首を振った。そうやって小夜子の言葉をリュカが否定するたびに、小夜子の態度は頑なになっていく。
見かねてガルーは小夜子を止めに入る。
「だめだよ、小夜子。リュカは本当に太陽がだめなんだって」
そんな騒ぎを聞きつけて隣の家から少女が現れた。
「小夜子、パパやママの帰りを待つの退屈。何か楽しいことはない?」
『月鏡 由利菜(aa0873)』である。夏の風に洗われる髪は美しくなびき。お転婆そうな笑みから普段とまったく違う印象を受けた。
「って、もう楽しそうなことしてる最中ね」
「クレア。いいところに……これから秘密基地に行くんだけど……って、部屋に戻っちゃダメ!」
リュカが窓を閉めようとすると小夜子はそれを目ざとく見つけ指を突きつけ叫んだ。
「うっせーな! 俺が晴れの日外あんまでれないって知ってるだろ小夜子のぶーす!」
その時、小夜子の笑みが冷たい物に変化した。
直後小夜子は行動を開始。お邪魔しまーすと玄関から正面突破してあっという間にリュカの寝室へ。
そして雑誌で頭を叩くような、すぱんっと言ういい音が響き渡った。
「いったあああ殴ること無いだろ小夜子のばーか! あーほ!! 暴力女はもてないんだぞー!!!」
「アンタみたいなもやしっ子に何言われても悔しくないわよ! さっさと出る。これ以上にょきにょきしないようにね!」
「てめ! 人が気にしてることを!」
「わたしだってあほでもバカでもないわよ。ばかーーーー!!」
そう言いつつリュカを引きずって玄関まで引っ張る小夜子。
「いかねーっての!」
その時小夜子は意地悪げににやりと笑った。
「ふーん、じゃあしかたないねぇ。今日はガルーは私の子分だね」
リュカの表情が凍りついた。ガルーは人質にされた姫のように身をすくめていた。
その長い髪から覗く桃色の瞳がリュカをじっと見つめている。
「日傘、あるよ」
そう告げて小夜子の脇をすり抜け『レオンハルト(aa0405hero001)』が傘を広げて見せる。
「あー、もう。わかったよ。五分待ってろ」
「三十秒でしたくしな」
「そのセリフには、のらーねー」
リュカと小夜子が家の中で騒いでいる間、暇なので家先で一行はしゃがみこんで話をしていた。
「ねぇ、聞いていい? 最近変な人に付きまとわれてない?」
レオンハルトが告げるが、その言葉に反応してくれるものはいない。
その言葉の神意を考えながら春翔があたりに視線を巡らせていると。春翔は何かを見つけたようで手を振ると、兄妹がこちらに駆けてきた。
「藍と禮だね? こっちこっち」
「俺だけかなぁ」
きょろきょろあたりを見渡すレオンハルト。
「ここで何してるの?」
藍が尋ねる。その背に隠れる禮。
「これから秘密基地行くんだ、呼びに行こうと思ってたところだよ」
「うわ、小夜子か……逃げられなさそうだね」
藍は苦笑いを浮かべる。
その背に隠れた禮へと伊邪那美は手を伸ばして、一緒に行こうと微笑みかける。
その時、伊邪那美の背を強く押して小夜子が駆けだした。
「早く行くよ!」
「あ、ずるい!」
アリスはその背を追いかけ走る。
「まってよ、お姉ちゃん」
春翔も後を追う。
「今日は何して遊ぼっかおねーちゃん。珍しくみんなも揃ってるし、せっかくだから秘密基地作りやろうよ!」
「うん、そのつもり! 春翔もわかってきたねぇ」
「あ、その前にいつものとこで食料買い込んでからがいいなぁ」
「え? そんな時間ないよ。もったいない」
「だって、お腹空いちゃうよ。何でだろう、すごくそれが嫌なんだ」
「じゃあひと段落したら、買いに行こう……あれ?」
その時春翔は旗理と足を止める。
「……あれ? あそこの赤い女の人……何だろう……とっても、懐かしいような」
「誰もいないよ?」
その言葉に春翔は小夜子を振り返り、そしてまたその方向を見ると、誰もいなかった。
「なんだろう。なにか、大事なことを忘れている気がする」
「春翔行くよ!」
そう春翔の手を引く小夜子。
その背へ向けてため息を突き、靴を履くリュカに日傘をさすレオンハルト。
「じゃあじいちゃん、行ってきまーす!」
小夜子に脅された恐怖が抜けないのか、ガルーはリュカの半歩後ろを歩く。
「おれ、歩く時、手繋ぐ?」
「いいよ、こけそうだし」
ガルーはあっけらかんと言い放った。
「…………」
「わかった、繋いでいいから!」
リュカは無言からでもガルーの心証を把握できるらしい。
「何をしてるの? リディス早く行きましょう!」
そう由利菜は表札の前で固まっている『ウィリディス(aa0873hero002)』へ声をかけた。
由利菜の家とリュカの家は隣なのだ。
「篠宮……」
ウィリディスはそうつぶやいて、一行の後を追う。
* *
「ううんここは?」
『紫 征四郎(aa0076)』は民家の居間で目を覚ます。そのお腹の上では黒豹が丸まって寝息を立てていた。
「あれ? 黒豹」
その隣には赤い髪の少女。アリスが佇んでいる。
「ふーん……おねーちゃん、ね。すっかり私と入れ替わっちゃって。アレじゃあ何言われても従っちゃうじゃないの」
そう軽い口調を装いつつもイライラがダダ漏れである。
背中から不吉なオーラまで見えるようで征四郎は苦笑いを浮かべた。
「ここを調べるにしても干渉は出来ないみたいだし、見守るしかないかしら」
「あの、ここはいったい……」
「あら、私に気付くのね」
「ぎゃーう」
その時である、征四郎の上で黒豹が悶えた。
黒豹は大きく口をあけてあくびをして。そして真ん丸な瞳に征四郎をうつす。
「あなた、どこからきたです? お母さんは?」
「ぎゃう」
「征四郎はお母さんではないのです。迷子ですか?」
「ぎゃうぎゃう」
小さく鳴き声を上げる黒豹。誰かに飼われていたのだろうか一向に逃げる気配がない。
「うーん、困りました」
そう征四郎がつやつやの毛並みに手を当て、なぞると。
脳裏にフラッシュバックする記憶。それは全て。少年と笑い合ったあの日々で。
「まさか! オリヴィエです?」
『オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)』は返事なのかまた一つぎゃうと鳴いた。
「お。目が覚めたか」
その声に反応して征四郎の隣に腰を下ろすのは『御神 恭也(aa0127)』
「状況はわかるか?」
「確か、愚神と戦っていて……」
愚神の精神汚染と必死に戦って。
「その結果、この世界の理からはじき出されてしまったみたいです」
そう説明したのは『イリス・レイバルド(aa0124)』
「あえて術中にはまって調査の足がかりになることも考えたけど」
うーん、と唸りをあげて洗脳された自分を想像するイリス。直後非常にげんなりした表情で告げた。
「……愚神の手のひらで泳がされるのなんて絶対に嫌だという結論に達しました」
「流石に記憶への干渉に耐性はついているからねぇ」
『アイリス(aa0124hero001)』は頷く。
「今度こそ追い詰めるよ、お姉ちゃん」
「イリスがそれを望むなら」
「ふあああああ、ガルーさん。怯えてる! カワイイのです!」
「え?」
直後聞こえてきたワンフレーズ、それが気になって征四郎は視線をあたりにめぐらせた。
見れば狙撃中のスコープだけ取り出して何かを見つめている少女がいる。
『卸 蘿蔔(aa0405)』である。
「蘿蔔! 貸してください。征四郎も見たいです!」
そうスコープを譲ってもらう征四郎。その視線の先には。
「あれ誰ですか!」
「ガルーさんです」
「あの、見たこともない女の人に捕まってるのは!?」
「リュカさんです」
全身から力が抜ける征四郎。
代わりにスコープを受け取ってレオンハルトに視線をうつす蘿蔔。
「ふぁぁ…………ちっこいレオン、可愛いのです。ああ…………養いてぇ、私好みに育ててぇ」
そう身悶えている蘿蔔、そのお尻をバシンと叩いてアリスが告げた。
「ちょっと大きな声出さないでよ、見つかるでしょ!」
涙目になる蘿蔔。
「はい……」
しかししょんぼりしたのもつかの間。さらに望遠レンズを装着したカメラを幻想蝶から召喚する。
もはや隠しようもなく盗撮……を繰り返していく。
「ふふふ、楽しんでねアリス」
『Alice(aa1651hero001)』はそう微笑んでアリスへと背を向けた。
そして一行は小夜子たちの移動に合わせてその背後をつけていく。
「う~ん、何か忘れてる気がするな~?」
そう伊邪那美が後ろを振り返るが、全員旨い具合に隠れてやり過ごす。
そんな茶番のような行為を何回か繰り返した。
第二章 ここが僕らの秘密基地
(……まったく……馬鹿な姉様なら簡単に洗脳されるかもしれないけど)
『朔夜(aa0175hero002)』は朝方の青臭さが晴れた森の中を小さな手を握りしめて闊歩していた。
(……まさかこういうのに耐性強い鈴音がこうなるなんて……)
急に手が引っ張られる感覚、その手に握っていた御饅頭のような小さなてがすっぽ抜けて代わりにどてっと音がする『御門 鈴音(aa0175)』が顔面から土にダイブしていた。
やがてボリュームを徐々に上げるように泣き声が森に響くようになり。
朔夜は額を抑えてため息をついた。
「これだから子供は嫌いなのよ。本当に。ほら! 皆おいてかれるわよ!」
その半分怒りの混じった声音を敏感に感じ取り、鈴音は勢いを増して泣いた
「……あぅ……ふぇ……みんな……まってぇよぉ~!!」
「あ! 朔夜また鈴音を泣かせてる」
そう由利菜……改めクレアが戦闘から引き返してきた。運動神経はいいようで、でこぼこした斜面を器用に降りてくる。
(また? ああそう言う設定なのね、この日常は繰り返されえてきた、そう言いたいのね)
朔夜は黙ってクレアに道を譲ると、鈴音の手を取って頭を撫でてやる。
「どうしたの鈴音? 泣いてばかりいたら強くなれないわよ」
「つよくなんて、ならなくていいもん」
鈴音の反論。それが若干面白くて朔夜は視線を逸らした。
(なによこれ、ろれつが回ってないじゃないの、この頃からどうしようもなく哀れだったのね)
鈴音がきいたら本気で傷つきそうなセリフだったが、口にしないあたり成長したということである。
「クレアちゃん、小夜子が探してたよ?」
そんなクレアを追ってアリスが追いすがってきた。
「ああ、あの子は本当に気が短くて……。戻るわよ! アリス! 鈴音ちゃん」
「まってー」
楽しげに駆けていくクレアと鈴音。それを見送る朔夜はウィリディスに違和感を感じた。
「あ、あなたもしかして」
その朔夜の言葉に柔らかく微笑み返してウィリディスは二人の後を追った。
たどり着いてみれば皆森の開けた場所に何やら組み立てているようだった。
「それじゃあ今日は、一体何して遊ぼうかっ?」
そう輝くような笑顔を振りまくアリス。
彼女の周りではせっせと男連中が働いていた。
そこら辺の枯れて倒れた木を柱にしたり。布をかぶせて見たり、不格好にして一撃で崩れるほど脆そうではあったが、彼等からするとここが拠点、秘密基地なのである。
「伊邪那美さん、おれ、何か手伝うこと、ある?」
「ない」
ガルーの気遣いも、秘密基地の壁を布で覆うことに没頭する伊邪那美に一蹴される。
「これ、もっとましな材料はなかったのか? これじゃ秘密基地というより廃墟だ」
レオンハルトが遠目からそのあばら家を眺めて告げた。小夜子に頭をぶたれてた。
「でもこれ、危ないよ? 不安定で」
小夜子にべったりな春翔が告げる。
「うーん、柱を増やして天井を高くしましょうか。布がたわむのはどうにかならないの?」
その小夜子の独り言にクレアが反応する。
「そもそも設計図もなしに、行きあたりばったりで作り始めたのが無理があるって」
クレアはやれやれとつぶやいた。伊邪那美が頷く。
「だったらどうすればよかったのよ!」
「落ち着けって」
レオンハルトは溜息をついて地面に木の枝で設計図を描いていく。
その間、禮は少し離れた場所でアリスと一緒に花をつんだり、地面を掘って川を作ったりして遊んでいた。
子供とは自由気ままなのである。
「これ、俺がついてきた意味あるのかな」
そんな中リュカは秘密基地から少し離れた場所で。点字の本を指でなぞりながら日の当たらない岩に腰掛けていた。
「ジュース、飲む?」
そんなリュカにガルーは缶ジュースを差し出した。
「味は?」
「オレンジ」
「えー、炭酸がいい」
「持ってないよ」
ガルーは困ったのをごまかすように微笑んだ。
「買ってきてよ、確か下の方にあったろ?」
「え、結構遠いよ」
「待ってるから、ここで」
「何かあったら、誰か呼ぶんだよ」
そうガルーは麓めがけて走り出した。しかし。
「あれ? 迷った?」
ガルーは見たことのない場所に出た。
かなり広い泉があり、周りに動物がいない。
「こんなところにこんな場所が?」
しかも水は青い。染めたように青いのだ。不思議な光景だと目を奪われた。
その時である。背後で草の根をかき分ける音。ガルーが怯えて振り返れば。そこには黒い大きい、獣がいてこちらを見あげている。
「…………猫?」
少しずんぐりむっくりした骨格の良い黒猫。だけど近所の猫とは骨格からして違っているように見える。
太い足は成長する証拠。大きくなれば大型犬並の大きさにはなるんじゃないだろうか。
「こども……君。その大きさで子供なの?」
そう問いかけてみても黒猫は答えを返さない。空を飛ぶ蝶に夢中で視線をゆらゆらさせている。
ここへも、この蝶を追ってきたのかもしれない。
「なつっこいな。どこかで、逢ったことがあるのかな?」
オリヴィエなのだがガルーは気が付かないようで、何気なく顎の下を撫でる。気持ちよさそうに目を細める黒豹を見ていると、なんだか懐かしい思いが沸き上がってきた。
「おれ、君のこと、知ってるような気がするよ」
「オリヴィエ! 行ってはいけないと言ったのに。どこですか」
次いで森の奥から一人の少女が現れた。ガルーはその少女を見てこのネコの飼い主かなと思ったのだが。彼女の複雑な表情を見て動きを止めた。
「あなた、ガルーです?」
知らない相手に自分の名前を呼ばれるのは奇妙な感覚である。思わずガルーは問いかけた。
「……お姉ちゃん、だれ?」
その言葉に征四郎は首をかしげた。
おどおどした態度、自信なさ気な声音。そして何より、背が小さい。自分と同じくらいしかないではないか。
「あ、あなたこそ誰なのです……!?」
驚きの声を上げる征四郎。
だれ? というか、どこをどうしたらあのガルーとこのガルーが結びつくのか謎なレベルである。
征四郎はその現実を直視できなかった。
即座にオリヴィエを抱きかかえると森の中にダッシュ。
「あ! 危ないよ!」
しかし大丈夫、征四郎は冷静さを失っていながら奇跡のような運動能力を発揮。森の向こうに消えていった。
「なんだったのかな、あれ」
そんな彼女をの走り去った方向へとガルーも走り出す、すると秘密基地のある広場に出た。
狐につままれたような感覚。
その周辺には誰もいなかったが、布と板で仕切られたあばら家内部から話し声が聞こえてくるあたり、全員があの中にいるのだろう。
ガルーが中に入ってみると、どこから持ってきたのかランタンが真ん中に置いてあり、全員の顔がぽぅっと照らされている。
いつの間にかリュカもそこにいた。
「ジュースは?」
「あ、ごめん買いに行けなかった」
「なんで!」
心底驚いたようにリュカは言い放つ。そんな言葉を遮って小夜子は告げた。
「そう言えば、みんな宿題終わった?」
小夜子が告げると藍と禮は首を振る。
「ぜんぜん」
「宿題? ……なんだろう、知ってるのに実感がまるで無いや」
そう伊邪那美は首をひねる。
「さよちゃん、さよちゃん」
アリスが小夜子の袖を引いた。
「どうしたのアリス」
「秘密基地ってね、木の間に創るんじゃないの?」
「作ってるじゃない」
「そう言うことじゃないんじゃない?」
春翔が告げる。
「たぶん二本とか、三本とか、木を柱に利用して作る家のことだと思う」
「ツリーハウスみたいな? だったら釘とか板がいるなぁ、買ってくるか」
「買い出しですか?」
禮が飛びあがる。
実はケーキを買うより先に小夜子に捕まってしまったので禮は今日ケーキを食べられてなかった。
だから禮は作業のいったん中止を提言する。
「ここを野営地とします!」
全員の目が禮に向いた
「れい、今度はなんのアニメのまね?」
「さぁなんでしょうね……。それはともかく食料を確保しに行きましょう、にいさん!」
第三章 少年探偵団
「わーい、お菓子だ!」
春翔は食料を買い込むと聞きなぜかテンションが上がっている。
町の歩道を広がって闊歩する子供たち伊邪那美が向かい側から歩いてくる男性に気づき一同を嗜めた。
「ごめんなさい、いざなみお姉ちゃん」
春翔はぺこりと頭を下げる
「お菓子がそんなに嬉しいの? 子供ね」
小夜子がそうからかった。
「子供じゃない!」
「ちゃんとご飯も食べないとダメよ」
クレアがそう告げると、春翔はお菓子の方がおいしいもんと口をとがらせた。するとその時。
「あ、そうだ探偵ごっこをしよう」
何の脈絡もなく小夜子が唐突に告げた。
「いつものか……」
レオンハルトは溜息をつく。
「付き合うけど、代わりに英雄を一緒に探しなさい」
クレアは小夜子にそう言うと、小夜子は告げる。
「まだあきらめてなかったの?」
「私もいつかお父様とお母様みたいな、強くて優しいリンカーになるの、そのためには今から頑張っておかないと追いつけなくなっちゃう」
クレアは両親が大好きの様だった、いつも両親の話をしている、そういう時のクレアは決まって楽しそうに笑うのだ。
「別にいいけど、この町に英雄なんていないんじゃない?」
どきりと身をひそめる朔夜とウィリディス。
「まぁ、探しながら遊べばいいか」
そう告げると小夜子は朔夜とウィリディスの肩を叩いてこう告げた。
「君たちが探偵だ!」
そして小夜子が逃げろーっと叫ぶと、子供たちはいっせいに思い思いの方向に散って行く。
そのあっという間の出来事に対応できず、瞬きを繰り返すばかりの朔夜とウィリディス。
「記憶。あるんでしょ?」
その時唐突に朔夜が言い放つ、真面目なトーンだ、それにすべてを察したウィリディス。
「ええ、ある。かな……」
ウィリディスから帰ってきた言葉は想定内だったものの。口調が雰囲気があまりに普段と違う。
「どうしたの? 体調悪いとか」
「この愚神の影響で、不安定になってるみたいだね」
「何が?」
「私たちが」
そう見つめたウィリディスの瞳を見て朔夜は恐怖を感じた。
朔夜は暴力や殺戮と言った生命的な恐怖は薄い、しかし生物が持つ恐怖の根源はそれだけではない。
未知。朔夜は今未知なるものの深淵を覗いて、その底知れ無さに恐怖したのだ。
「ほんと、いろんな英雄がいるわね。ウィリディス」
「その名前も正しくないかもね」
それより、探そう。そうウィリディスは告げる。
「これはチャンスじゃないかしら。みんなを探すのに合わせて、この世界のことを探れる」
「そうね。私以外が人間の心を弄んで甘い汁啜ろうなんて気に入らないから今回は手伝ってあげるわ!!」
そう誰にでもなくそう宣言して朔夜はふんぞり返る。
町全体を使った探索が始まった。
ちなみに灯台下暗しを体現しようとばかりに藍と禮。レオンハルトは朔夜たちの背後に控えていた。
いざとなれば脚力で逃げ切れるだろうという計算だ。
「大体かくれんぼだよね? 小夜子、また誰か置いてけぼりにしちゃうんじゃ?」
藍が告げる。
「あれは寂しいです……にいさんが来なかったら泣いちゃってた……」
子犬のようにプルプル震える禮、その隣でブルリと震えるレオンハルト。
「どうしたの?」
「いや。探偵ごっこと言えばさ」
レオンハルトはまるで怪談話でもする時のように声をひそめた。
「なんか最近気づくと知らないお姉さんが僕の事見てるんだよね…………気味が悪いよ」
そうあたりを見渡すレオンハルト、しかしその視線の主を見つけることはできない。
「あ、にいさん。朔夜さん達が動きましたよ」
「じゃあ、あとをつけよう」
そう告げて三人は探偵役に対する探偵を始める。
第四章 調査開始。
「……伊邪那美を見かけた時、俺の存在にも気が付いて様だが無反応だったな」
「まどろみの記憶改ざんはすごいですからね」
恭也の言葉に何度もまどろみの毒牙にかかっている蘿蔔は告げた。
「その様ね、あの子があんなに無邪気に遊ぶなんて」
Aliceは少しさみしそうに告げた。彼女は自分で、自分は彼女であるはずなのに。この世界ではまるで、彼女と自分に隔たりがあるようで。
「ホント。記憶改ざんだか何だか知らないけど、あの子を連れていくなんて、いい度胸してるわね。ちょっと本気になっちゃいそう」
そう瞳孔が開くほどに興奮する、レッドクイーンの方のアリスさん。
「だったら二人ともあちらに混ざればよかったじゃないですか」
蘿蔔が告げると、二人のアリスは同じように首を振る。
「え? 子供に? ”私”が? 嫌よ あの時に戻るなんて、全員殺せとでも言うのかしら?」
「私は、あの子の笑顔を見ていられればそれでいいの。そしてその笑顔のためにしなければならないことがあるってわかってる。あの子の笑顔を眺めるのは、やるべきことを全て終えてから……」
三者三様思い。二人は柔らかなまどろみの中にいることではなく、硬く鋭い現実に立ち向かうことを選択した。
「まずは状況の把握から始めよう」
そんな一行の決意が固まったところを見て、恭也は話を切り出した。
どこからともなく手に入れたこの世界の地図を持っている。
それを熱いコンクリートの上に広げて全員で眺めた。
「ここは十波町間違いないな」
その言葉にイリスは頷いた。そして蘿蔔も。
「そして、記憶の干渉を受けたもの達は俺達の存在を忘れていると」
「それは自分の身を以て体験してきたんですよね。恭也」
征四郎が問いかけると恭也は頷く。
「悪戯や拒絶といった感じでは無く、完全に他人を見かけた反応だったな」
それは他の能力者、英雄たちも同様だった。
「小夜子について聞き込みもしてみた。ここで面白いことが分かった」
「どういうことですか?」
蘿蔔は目を細める。
「他の能力者や、英雄についてはある程度情報があるんだ。まるでこの町で昔から過ごしていたかのように。だが小夜子は違う。知っている者がいても、名前を知っている程度で、記憶はあやふやだった」
「町についても気になっていてね」
アイリスが言葉を続ける。
「同じ舞台を用意するということは。よほどのこだわりがあるのか。もしくはこだわりなどないのか」
「どちらにせよ、まどろみの手持ちの舞台なのは確かだよね」
イリスが告げた。
「そこに意味があるのかを探っていこう」
「まあ、どちらにせよ創作物というのは作り手の癖が現れるものさ」
そうアイリスは地図をなぞりながら語る。
「得意な箇所、苦手な箇所、無意識に熱をこめてクオリティを高めてしまう箇所」
「だとすれば神社……」
恭也が告げた。そして蘿蔔も口を開く。
「この商店街もすごく本物っぽいです」
「学校にも行ってきたけど、ぼろぼろだったわね、丁寧すぎるくらいにぼろぼろ」
Aliceは髪をかき上げて告げる。
「出るものだよ。性格というのは。というわけでそれを探りにいこうか」
そして手分けして町中を探索する方向で話が固まっていく。
「それに架空の町といっても一つ一つのオブジェにモデルがあるかもしれないしねぇ」
「だったら私は、港と神社が気になるわ、そして裏手の森……御山」
レッドクイーンの方のアリスがそう答える。
「この世界における出入口や境の様な場所はと考えるとここら辺なのかなって」
「神社は探索の人数を増やすべきかもしれないな」
そう恭也は告げる。
そうやって細かい調査予定が作られていった。
「さらに言うと、何かがおかしい。もし此処が奴の支配する場なら異物である俺の存在に気が付いた筈だ、気が付いてなぜ排除しようとしない。この夢の中で自由に動き回られては奴にとって都合が悪いはずだ」
「別の干渉者の存在」
アイリスの言葉に全員が振り返る。
「別にね、不思議なドロップゾーンがあって、それも二つの勢力がまるでお互いを押さえつけあうように水面下で争っていたんだ」
「私たちの意識が保てているのは、別の何者かの干渉であると?」
蘿蔔は口元に手をあてて考えを巡らせる。
「記憶の改ざん、私も少し心当たりがあります」
「心当たりです?」
征四郎は首をかしげる。
「友達の記憶から私の存在が消えていました」
「それは蘿蔔がなちゅらる? にその人から忘れられていたということではありませんか?」
征四郎の言葉にショックを受け、沈み込んでしまう蘿蔔。
「落ち込んでる暇はないぞ、方針は固まった。今から神社へ向かう」
そう神社探索班を率いるのは恭也、メンバーは蘿蔔と、アリス・レッドクイーン。
「店や家の一つ一つまで間違い探しができるとは思えないが……『円町 小夜子』が巡る場所に深い意味があるとすれば?」
最後に、そう締めくくりつつアイリスは告げる。
「それがこの世界のどこかにあるものと酷似しているとしたら? もしかしたらまどろみのルーツが探れるかもしれないね」
「そうだな他に、何かしらの反応があれば、奴の思惑も少しは見えるかも知れんな」
恭也はそう告げ腰を上げた、町のどこからか伊邪那美の普段聞けないようなはしゃぎ声が聞こえてきて、恭也は小さく微笑んだ。
第五章 夕暮れの駄弁り場。
探偵ごっこの時間は無制限である。
だから、この遊びに飽きたもの達はこの駄菓子屋の前に集まるのが暗黙の了解で、真っ先に飽きた伊邪那美が駄菓子屋に向かってみると、小夜子がいた。
「伊邪那美、いいところに来た。釣りに行きましょう?」
さすがに反対の声を上げる伊邪那美。
「も~! まだ来てない子がいるんだから、我儘言わないでよ!」
しょんぼりうつむく小夜子の隣に腰をおろし二人はみんなが集まるのを待った。
探偵ごっこ自体はあまりに無計画な遊び故。『あ、誰も探しにこないな』と覚った子供たちがポツラポツラと集まってきた。
その後どこに隠れていただとか、探偵ごっこの話を軽くして善人が買いものを済ませる。
結果。各々駄菓子屋で買った糧食片手に涼むことになった。
夕焼けが綺麗だった、町並みすべてが金色に包まれるようで。
そんな光が兄妹を照らしている。小さなケーキを買ってふたりで仲良く食べていた。
「おいしいですね、にいさん」
「れいは本当にケーキがすきだね」
「そう言えばさ」
リュカがアイスクリームの蓋をあけながらレオンハルトに尋ねた。
「今日なんでうちの前にいたんだ? 小夜子に連れてこられたのか?」
「まぁ、そんなところだな」
それは数時間前にさかのぼる。
「ピアノの稽古の帰りにさ、家に帰って今日はゲームでもやろうかなって考えてたんだ、そしたら後ろから小夜子が走ってきて」
「レオンハルトってやっぱりお坊ちゃん?」
ガルーがそう水を差すがレオンハルトは咳払いをして話を続けた。
「捕獲されて居間に至るんだ」
「捕まった?」
リュカが聞き返すと、ガルーが代わりに答える。
「うえから網を」
「網!」
「沖漁とかに使うあれだよ」
「わかってるけど。なんでそんなものが」
「それを僕が投げた」
「ガルーが!?」
その時、リュカが立ち小夜子に言い放つ。
「小夜子! 勝手にガルー使うなよ! 俺のパシリだって言ってるだろ」
「誰のパシリでもない!」
そう反応するガルーだったが、リュカにアイスのヘラが折れたことを告げられると店の中に取りに行かざるおえなかった。
「いい? 鈴音。あなたは私の家来なのよ」
そのパシリという言葉にピンときて朔夜は鈴音に刷り込み教育を行い始める。
「家に帰ったら、あの女のカステラをあげ豆腐にすり替えてしまいなさい。あと浮いた予算で私にもっとお菓子を買いなさい?」
「……うぇっ……このおばさんこわいよぉ~……! ……お母さぁ~ん!」
「クソガキが! ぶち殺すわよ!」
泣き出してしまう鈴音に目を吊り上げて大声を上げる朔夜。
「あ! またいじめてる」
仲裁に入るクレアである。
「まったく……いちいち泣くんじゃないわようっとおしい!」
そう告げていたチョコレートをかみ砕いた朔夜である。
(……あの恐ろしい鬼に拳骨ぶち込んで黙らせる鈴音も子供の頃はほんとガキなのね……今回も貧乏くじだわ!!)
「ねぇ、小夜子、これからどうする?」
そんな騒ぎを尻目に伊邪那美は小夜子の隣に座ってそう問いかけた。
「もううちに帰る時間じゃない?」
「えー! 伊邪那美つまらない。釣りがしたいって言ってたじゃない」
「それは今朝の話! もうそんな時間ないでしょ」
「夜の方が釣れるのに」
「……まだ遊ぶの?」
伊邪那美は苦笑いを浮かべた。
「良く判んないけど、誰かに怒られる気がするんだよ……」
「うーん、別に帰ってもいいけど、これができなくなるよ?」
そう小夜子がどこからともなく取り出したのは花火セットである。
「うわー。花火だ!」
アリスと春翔が歓声をあげた。
* *
そのころ。闇が満ちはじめた森の中。
アリスは周囲を見渡していた。
「さてこの森は、一人で入って平気なものかな」
「大丈夫じゃなさそうだから複数名で来たんだろう?」
一人で先にずんずん進んでいくアリスを嗜めて恭也は言った。
「鬼が出るか蛇が出るか……」
「みなさん!」
その時はじかれたように蘿蔔が声を上げた。その瞳が森の一点を凝視している。
その先の視線を追う。
そこには。
「まどろみか……」
いつか夢で見たローブ姿の男。まどろみがそこにいた。
だがこちらには近づいてこない。
「気づかれた以上早くしないと…………でもどうやって。レオンを危険にさらすわけにもいかない」
そう蘿蔔は懸命に思考を回すが、これから奴がどの様に動くか分からないため、思考が空回りする。
「あっち?」
アリスはつぶやいた。
まどろみが指を際しているのだ。
その先には人工物が見える。その場所めがけ恭也は駆ける。
すると、そこには古びて朽ち果てた表札、そしてコードのようなものが書かれていて……。
第六章 夜花火
再び一行は神社に戻ってきた。この境内にバケツで水を汲んで、一行は晩御飯の後に集まった。
懐中電灯を顔に当てる小夜子。鈴音が泣きわめきそれをクレアがあやす。
「みんな、集まってるね」
そう最後に神社の階段を上がってきたのはリュカ。そして彼の手を引くガルー。
「大丈夫?」
ガルーはそう小声で問いかけると、リュカは笑って見せた。
「夜は本当に真っ暗になるからさ、だから離さないで」
そして小夜子が蝋燭に火をともすと、春翔に花火を差し出した。
「わ…………きれい」
ガルーはその輝きに目を奪われた。爆ぜる鮮やかな色彩。夜の中でそれは際立って美しく見えた。
「楽しいね。お姉ちゃん」
そう春翔は静かにつぶやくき振り返ると小夜子は頷いてくれた。
「こんなの初めて見た」
ガルーが告げるとリュカはずるいと告げて手を差し出す。
「色はちょっとわかるし。俺も花火したい」
ガルーはその手に花火を握らせる。
「花火、まだまだたくさんあるから」
「たのしい?」
そんなリュカに小夜子は意地悪く問いかける、するとはしゃいでいた自分が恥ずかしいのかリュカは頬を赤らめてそっぽを向いた。
「悪いかよ、絵日記にかくネタが欲しいだけだって」
「照れなくてもいいよ。っていうかリュカ。肌が白いからすぐ顔に出るよね、顔真っ赤だ……」
「見て見て! 両手に4本! 危なくないよ! って、あちっ!」
危ないとクレアや伊邪那美に起こられても聞いていない春翔。
「お姉ちゃん見て!」
そう小夜子に最大の笑みを送る。けれど頭に引っかかる違和感と。森の向こうに見えた赤い姿が彼の顔から笑みを奪い去った。
「またあの赤い人だ。何か大切なものを、忘れている気がする」
「ねぇ、肝試しにいかない?」
小夜子は唐突に告げた。
「……え? 裏の森? 入っちゃダメって言われてなかったっけ……」
小夜子はリュカの手を取る。
「大丈夫だよ、ちょっとだけなら」
「だめよ、両親に怒られる」
クレアが告げるが、小夜子は聞く耳を持たない。
「林の向こうで英雄を見たわ」
「本当に?」
「だめだよ! 怒られるのはみんななんだからね」
伊邪那美がそう腰に手を当てて告げる。
「みんなで楽しい思い出、作りたいんだ……」
「小夜子、危ないよ」
ガルーは告げる。
「ガルーは怖い?」
「べ、べつに怖くなんてないから」
「じゃあ、私を守ってね、怖い物から」
小夜子が告げると、春翔は言った。
「うーん、おねーちゃんがそこまで言うなら……」
一同はだんだんと小夜子の言葉に流されていく。
それを遠巻きで見ていたアリス・レッドクイーン。
「……森? どうしてあんなに執拗に?」
彼女はすぐに他のリンカーへと連絡を試みる。
「やっぱり。鍵はそこ、かしら。引き止めないとマズそうね」
その不穏な空気を感じ取ったのか朔夜は森に入る鈴音の手を取り。待ったをかける。
「行ってはだめよ。帰れなくなるわ」
「え? なんで。だってみんな言っちゃうよ?」
「それでも、だめなものはダメ」
「やだ! おいてけぼりはやだ!」
「なんで、いつものあなたならこの程度の精神干渉振り切れたはずでしょう、なのに何で、そんなわがまま言って私を困らせるの?」
そうこうしている間に、一行は森の闇の中に消えてしまう。
「なぁ、……音、全然しねぇんだけど……どこ行くんだ?」
突如ふわりと風が吹いた。
髪を巻き上げるように、下から上に。
一同はいつの間にか開けた場所にいた。
苔の生えた石の神座。
これはいわゆるご神体を祭った社ではないか。
「あたりを漂う夕飯の香りと」
「あわただしく帰路につく、人々の喧騒」
「色あせていくように世界は闇に包まれて」
直後世界は塗り替えられる、金色の蜜を梳かしたような夕暮れに。
帰らなければいけない、そんな思いを呼び起こさせる夕暮れに。
「夜の涼やかな風を湯冷ましに」
「また明日何をしようかって枕の上に頭を乗せて考えたでしょう?」
「あのころの自分が、今の自分を見たらなんていうか、想像できる?」
「あの頃に戻りたくない? 子供でいれた、大人である必要はなかった、あのころに」
そして小夜子は告げる。
「ずっとここにいましょう?」
ここでなら幸せな夢を見ていられる、そう彼女が告げると。
皆、ぼうっと白昼夢でも見るような表情を浮かべて、そして社へと歩みを進めていく。
その時だった。背後から高速で走り寄る赤い影。
直後跳躍その小柄な少女は春翔を蹴り飛ばした。
「え?」
その場にいる全員がその光景にくぎ付けになる。
「貴方達、そこは入っちゃダメって言われなかった?」
アリス・レッドクイーンが悪夢を壊しに現れたのだ。
そのままアリスは春翔に手を差し伸べる。
「ごめんね、ちょっと気に入らなくて」
「君、だれ?」
「なんだろうね。ピーターパンの夢見ているのか……ネバーランド出身なのかな?」
次いで現れたのはアイリス。淡い翼の燐光が闇を幾分軽くする。
「変わりたくないか……あの頃に戻りたいだったら、だいぶ意味が違わない?」
イリスが告げた。
「前は過去のトラウマだったねぇ」
「ガデンツァみたいに何かの答え探しがしたくてこっちに質問ぶん投げてきてるのかな?」
「ガルーもリュカも、行ってはダメなのです! 夢から覚めなくなってしまうのです!」
そう小夜子のかわりに二人の手を取ったのは征四郎。
「お姉ちゃん、今日森にいた」
ガルーが告げると、オリヴィエは短く鳴いた。そして小夜子へ敵意をむき出しにする。
「まどろみ! あなたの見せる夢に、征四郎達は負けたりしない」
その言葉を、思いを、したったらずだけどはっきりした意思をリュカは知っている気がした。
その握る手に力を込める。
「苦しい夜も、穏やかな夜も、等しく朝を迎えてこそ」
そして征四郎は真っ向から小夜子へと向き直る。
「皆がいる明日を、征四郎は、守るのです!」
「どういうこと? 小夜子。英雄ってまさかこの人たち?」
クレアはそう小夜子に詰め寄る、その表情は険しかった。まるでゲーム終盤にすべてを逆転されたかのような表情。
「小夜子?」
「由利菜!」
ウィリディスが森の隅々に響かせるように金切り声混じりに叫んだ。
「英雄なんて探す必要はありませんのよ! 大事なこと忘れちゃってさ!」
「な、なによあなたは!? 話し方もキメラみたいで気持ち悪い……!」
「契約ならもうわたくしや、先生と済ませてるじゃん!」
「え……? そ、そうだったわ。もう私は英雄と契約していたじゃない!」
その言葉に全員が振り返る。
この世界に取り込まれた人間には由利菜が誰かと契約している記憶なんてなかったから。
「そうです、ガルーも。リュカも。征四郎たちと契約しているはずです、おもいだしてください。それとも思い出したくないくらい。僕達との思い出より、過去の方が大切ですか?」
「そんなことは、ないよ」
その時、リュカの声に落ち着きが戻った。
「ごめんね、せーちゃん。苦労を掛けたね」
同じ目線の、少年特有の甲高い声だったけど、そこに自分の知っているリュカが戻ってきたと、征四郎は実感する。
「させないわ、こうなったら力づくであなた達を」
そう小夜子が社の扉をあけ放とうとする。その手を、蘿蔔が取った。
「何をしようというのです? この中に何がいるんですか? それともこれがまどろみの本体ですか?」
その言葉の意味を察して小夜子は言葉を失った。
「違う、私がまどろ……」
「アネットさん……、梓ちゃんもこうやって取り込んだんですか? それともあの子と一緒に?」
その言葉に小夜子は目を見開いた。冷や汗が頬を伝う。直後小夜子はその手に拳銃を取り出して、蘿蔔を撃った。
だがその弾丸は間に入ったレオンハルトの肩へ突き刺さる。
「レオ!」
その小さな体は弾き飛ばされ蘿蔔を巻き込んで地面に倒れた。
呻くレオンハルト。
その体は信じられないくらいに軽くて。そして。
「無茶するなよ、俺と共鳴してない時は単なる腐女子なんだから」
「あれ? 今婦女子の『ふ』がイントネーションちがくありませんでした?」
そんな二人を興味なさ気に見下ろして、小夜子は言い放つ。
「そう、レオンハルトも。ガルーもリュカも現実を選ぶのね、戻っても残酷な未来しか待ち受けてないのに」
その言葉に首を振ったのは藍だった。
「この子は、この世界は選べないよ。そして私もね……確かにあの頃は、世界が優しく見えた」
そして禮は言葉を選ぶように紡ぐ。
「いらないの? 幸福だった頃が永遠に続く、そんな世界が!」
「そんなの……」
禮には理解できなかった、だって、今も昔も禮は世界を愛しているのだから。
「大丈夫だよ、れい……そうだね、小夜子……けど」
ただ、藍には小夜子の言っていることが痛いほどに解る。
時が満ちるほどに不幸になり、ひとつ、また一つと大切なものを失った。
世界はとても残酷で、憎く思えて。
けれど。
「違うよ」
その瞬間、藍も同じように大人の姿を取り戻した。
「世界が変わったんじゃなくて……私たちが変わってしまったんだ」
「何を?」
小夜子は困惑の表情を向ける。
「あなたならわかってくれると思ったのに」
世界は優しかった。世界を憎む私にも手を差し伸べてくれるほどに。
「大人になるってさ、”子供になりたい”と思うことなんだよ」
帰れないからこそ、忘れられないその夏は煌くものだから。目を閉じるだけで、十分なんだ。そう藍は笑った。
「帰ろう? お母さんが心配するよ?」
その言葉に頷いて、由利菜もウィリディスの手を取った。
「……もうパパとママも家に戻ってるはず。帰って寝なくちゃ。またね、小夜子」
「待って! 待ってよ!」
「お姉ちゃん」
そう慌てふためく小夜子に、黒いアリスは告げる。隣には赤いAliceが立っていた。
「…………戻れるものなら……」
けれどそれは決して叶わない事。失ったものはもう戻らない。
取り戻せるものもいくつかあるかもしれないけれど。
「でもそれは、成すべきことを為してから」
あの頃の笑みも感情も、今はもう要らない。
「そんな、楽しくなかった? 私はみんなと入れて楽しかった。あのころに戻れたみたいで楽しかった、だけどみんなはそれ以上に大切なものがあるんだね……」
そう打ちひしがれたように座り込む小夜子。
その頭を春翔が撫でた。
「だったら、私も連れて行ってほしかった。みんなと一緒にいたかった」
「それはどういうことですか、アネットさん」
「あなたはページをめくりすぎなのよ!」
そして地面が崩れ去る、一行は闇の中に落ちていき。そして。
「一つだけ、勘違いしているから教えておいてあげる!」
小夜子は蘿蔔に向けて告げた。
「ガデンツァはこの件には関わってないわ! まだね!」
エピローグ
蘿蔔が目を覚ますと、すでにまどろみに関する談義が始まっていた。
中心に断つのはアイリス、そしてイリス。
「記憶に干渉すれば強いけど逆にそれ以外はからっきし。敵に依存することで存在を保ってる?」
「さてね。しかし傍観者の立場というのは気楽なものだね」
「自由に共鳴できたらリンクバリアで干渉してやるのに」
「ドロップゾーンだからねぇ」
その会議の輪から外れるようにウィリディスは由利菜に膝を貸していた。彼女はまだ目覚めないのだ。
(あの夢の中、あたしの記憶が改竄された様子はなかった。なのに、あの話し方……)
夢の中では自分が自分ではないみたいだった、でも記憶は確かで。それが何を意味するのか考えが定まらない。
(あたしの魂って……キマエラ化してるのかな?)
後日、リンカーたちによって調査が行われた。
あの町を調査していたリンカーたちの目にはきっちり町の光景が焼き付いている。
その地形も、地図も。
そして多すぎるヒントの中その町を割り出すことは難しくなかった。
「あの町、おそらく実在します。ただそれは、過去に……」
征四郎は告げる。
これが全員の出した答え。そして物語の真実。
「愚神がこの世界に現れ始めたころ。真っ先に滅びた日本のとある町。そこが十波町のモデルです」
「そしてまどろみはかつて、英雄だった」
ガルーは告げた。あの小うるさくも、皆を愛してやまないそんな笑顔。
十波町を守るために出撃した英雄の中に同じ名前の者がいた。
間違いはないだろうと思われる。
「この世界を守ろうとして、敗北した英雄の、邪英化し果てた姿があれなのです」
そしてリンカーたちは最後に犠牲者名簿に小夜子の名前を見出した。
「彼女は、死んでます」
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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