本部

ハロウィンは終わってますけど

落合 陽子

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/03/16 18:53

掲示板

オープニング

●全てはここから
 イギリスの某アパレル店。
「ああ!」
 奥から店長の悲鳴が聞こえた。
「どうしました?」
「ディブ。見てよ。誤発注」
 店長は泣き出しそうな声を出す。見るとそこには30枚のカボチャパンツ。
「何と間違えたんですか?」
「普通のドロワーズですよ。新入荷のフレア・ワンピースを買ったお客に配るはずだったのに」
「これでもいい気がしますけど」
 店長はじろりとディブを見る。
「まあ、店頭に並べてみたらいかがですか? 案 外需要あるかも」
「3日以内に5枚売れたらディナーを奢るわ。ディブ」

●タチの悪いアパレル店員
「やあ、ディブ! 様子を見に来た」
 客足の途絶える平日の昼下がり。とんでもない客が現れた。スーツを着た渋い声の持ち主である。どうしてとんでもないのかと言えば頭がカボチャなところだ。比喩ではなく本当にカボチャに目鼻である。中の人もいなければよくできた人形でもない。愚神だ。
「久しぶりだな」
 だが、ディブは驚く様子もなく挨拶を返した。なぜディブはごく普通に愚神と話しているのか。それはディブもまた愚神だからである。正体を隠してここで働いているに過ぎない。
「その格好で町中を歩いてきたのか」
「まずかったかね?」
「通行人になにも言われなかったか」
「よくできてるなあと言われた。それからハロウィンは終わってるぜとか。なんのことかわからんが、お前の様子を見に来るという目的があるから殺さないでおいた」
「そうか」
 あまりに堂々としているせいでよくできたカラクリ人形かコスプレとでも思われたのだろう。まあ、都会にはもっとすごい格好をする人間や英雄もいる。
「人間といてどうだね?」
「楽しいな。面白いものがたくさん見られる」
「相変わらず理解できん。ところでこれはなにかね」
 カボチャ頭の愚神はカボチャパンツを摘み上げた。
「新しく入荷した帽子だ」
 平然と言うディブ。
「なるほど。これはなかなかいい」
 カボチャ頭の愚神はカボチャパンツを斜めに被ると鏡の前でポーズを取った。
「すごく似合う。まるでお前のためにあるような帽子だ。そのスーツによく合う」
 腐っても愚神でもアパレル店員である。
「そうか。そうか」
 カボチャ頭はご満悦だ。
「では1つ頂こう。いや、念のため5枚買おう。安心しろ。ちゃんと金は払う」
 店長、ディナー奢るの決定。

●気に入り過ぎだろ
「さて」
 カボチャ頭の愚神―カボ=チャンは高層ビルの上で笑みを浮かべた。
「ファッションが決まったら仕事兼食事だな」
 やたら気取った仕草である1点を指す。
 びー
 指先から放たれた光線はぱりっとスーツを着たサラリーマンを貫き―
「か、かぼちゃぱんつ」
 サラリーマンはスーツの上にはかされた(?)カボチャパンツを呆然と眺める。ソレを
皮切りに次々と光線が放たれ、街中にカボチャパンツを身に着けた人々が溢れた。

●事実なんですけど!
「今回の依頼は愚神殲滅とカボチャパンツの回収です」
『……』
 HOPE職員曰く「こんな引かれた目でエージェントに見られたの初めて」

解説

●目的
・愚神の殲滅
・カボチャパンツの回収(後述)

●敵情報
 カボ=チャン 愚神
・カボチャ頭にカボチャパンツを斜めに被っており(本人は小粋に被っているつもり)スーツを着用している。無駄にスタイルがよく、声は渋くて格好いい。攻撃(攻撃については後述)のタイミングはなかなか絶妙で丸腰ながら動きもなめらか。被っているかぼちゃぱんつを落とされると怒ってめちゃくちゃに攻撃しだす。高層ビルの屋上にいる。
  攻撃
・光線を発射する。当たるとその部分にかぼちゃぱんつができ、ライヴスを緩やかに奪われる。非常に緩やかなので慌てず取り去れば特に問題はない(見た目以外は)ちなみに何故かぼちゃぱんつがと言えば「見た目が気に入ったから」
 鏡状の物に当たると反射する。

 ディブ 愚神
・ロンドン近郊のアパレル店で正体を隠して勤務している。店長が間違えて発注したカボチャパンツをカボ=チャンに売った。戦いを見物に行くだけで参加はしない。エージェントたちの前にも姿を現さない。カボ=チャンとは知り合い。

●場所
 イギリスのショッピング街。軽いパニックになっている。逃げ惑う人々とそこら中に落ちたかぼちゃぱんつで動きづらい。鏡張りのビルが数戸あり、反射で思わぬ所から光線が飛んでくる。

リプレイ

●かぼちゃぱんつ・ぱにっくを解決せよ
「……何なんだ、この状況は?」
「何故このような状況に?」
 移動中。HOPEからエージェントたちへと現地の映像が送られてきた。冒頭の台詞は御神 恭也(aa0127)と映像を要請した構築の魔女(aa0281hero001)の感想である。監視カメラから撮ったのであろうその映像には逃げ惑う人々と。
「ねぇ、ストゥル。あれ……何?」
 ニウェウス・アーラ(aa1428)の問いにストゥルトゥス(aa1428hero001)が答える。
「ああ、あれはね。かぼちゃぱんつだヨ」
「かぼちゃ、ぱんつ……?」
 そう。大量のカボチャパンツ。
「穿いてみる?」
「絶対に、イヤ」
 ニウェウスとストゥルトゥスは同時に肩をすくめて共鳴。
「出落ちかな?]
 木霊・C・リュカ(aa0068)が言った。話の内容と周りの雰囲気で察しがつく。
「服の上から履かされたカボチャパンツは視覚的にもあれですが、脱がせるのも大変かもしれませんね」
 構築の魔女はもう落ち着いている。
「光線は鏡状の物に反射するようだな」
 オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)が言った。
「愚神どこ?」
 伊邪那美(aa0127hero001)が首を傾げると構築の魔女が言う。
「映っていませんね。光線の角度からして高いところにいる可能性が高いですが」
「愚神探査と避難誘導で分かれましょう」
 ファリン(aa3137)が提案する。
「俺達は避難誘導にまわる」
 ダイ・ゾン(aa3137hero002)の言葉を皮切りに一同は役割を決める。目指すはかぼちゃぱんつ・ぱにっくの解決。

●避難誘導も楽じゃない
 現地に着くと辺是 落児(aa0281)と構築の魔女は共鳴しないまま高層ビルの管理室へ。
「HOPEです。マイクとスピーカーを貸してください。窓を開けてスピーカーを外へ向けて設置を」
 詰めていた警備員にIDを見せ、指示を出す。マイクをオンにして音量を上げる。
「HOPEが到着しました。もう大丈夫です。指示に従って避難して下さい。繰り返します。HOPEが到着しました。もう大丈夫です。エージェントたちに指示に従って避難して下さい。避難が難しい方は入り口の大きい周囲のビルや店舗への移動し一時待機して下さい。繰り返します」
 落ち着いた声で何度もアナウンス。
「ロー」
 落児が窓を指す。見れば征四郎たちが拡声器でアナウンスを始め 、人々が列を作り出している。これ以上の放送は不要だろう。
「それでは私たちは怪我人の有無を」
 落児が構築の魔女をかがませた。光線が部屋へと次々侵入する。落児の機転で避けられたように見えたが、その場にあった鏡やら鏡状のものやらに光線が乱反射。部屋中光線が駆け巡る。
「……」
 無言でカボチャパンツを引き剥がしては捨て、引き剥がしては捨てを繰り返す落児。なかなかシュールな光景である。構築の魔女はカボチャパンツをはいたまま窓を閉じ、カーテンを閉めた。可愛い姿なのだがこの場でそれを指摘する命知らずはいない。
「この気持ちを的確に表現出来る言葉は存在しないのではないでしょうか?」
 カボチャパンツを脱ぎながら構築の魔女が言う。ちょっと可愛い 。カボチャパンツを幻想蝶に全て突 っ込むと構築の魔女は行きましょうと落児を促した。
「これ以上被害者を増やしてはいけないことはしっかりと理解しましたとも」
 2人が外へと走ろうとした瞬間。カーテンの隙間から入り込んだ光線が落児の左足と構築の魔女の足を貫いた。二人三脚のように2人の足へとカボチャパンツが出現し―

 べて

 転ぶ。
「これ以上、精神的・社会的に被害を受ける人がでないようにしないといけませんね。2度とこういうことのないように共鳴しましょう」
 その時の構築の魔女は若干殺気立っていたと落児は思った。

「光線はほぼ無害です、落ち着いて移動するのです。順々進んでください。危ない! 子供に気をつけるのです」
 ビル街の中心部。紫 征四郎(aa0076)が拡声器で人々に呼びかけつつ、押しつぶされそうな子供をかばう。人手を増やす為に共鳴はしていない。
「ビル街を抜けたところに避難所があるからそこまで慌てずに行ってね」
 リュカもビルの壁を背に拡声器を使って避難誘導。こちらも、リンクしていない。
「避難所付近にはHOPE及び救急車も待機させてある」
 ファリンとダイ・ゾンは共鳴で避難誘導。
「子供老人、女性、男性の順で避難してくれ。いいか。体力のないやつが優先だ。焦るな」
 人々を整列させ、ビル街へと誘導する。
「パンツに強い攻撃能力は無い。ビル街を抜ける前に外して逃げてくれればHOPE側で回収しておく」
 オリヴィエが淡々と言う。声を荒げれば余計パニックになる。
「はーい脱いだ パンツはこっち持ってきてくださーい」
 手を振って呼びかけるガルー・A・A(aa0076hero001)。
「ガルー……それは、なんか大丈夫ですか? 捕まりませんか?」
 征四郎が言った。言葉だけだと人々に履いているパンツ強請る変態である。

●仕事を増やすな頼むから
「どこだ。愚神は」
 恭也と伊邪那美は洗面所の鏡を外して盾代わりに使い、敵を探索。高層ビルの屋上などを中心に探しているが、光線のせいでいつものスピードで動けない。
「この前、読んだぎりしゃ神話の本に似た様な戦い方が載ってたね」
「向うは石化、此方は女性物の下着か……どっちがマシなんだろうな」
「ねえ」
 恭也たちと同じく愚神を探しているストゥルトゥスが遠方から声をかける。
「あそこのおじさんなんだけど」
 恭也の真後ろを指し示す。そちらを向いた瞬間、走った。目標は下着を収集している中年男。
「この忙しい中、余計な手間を増やさせるな!」

 めげ

 蹴りを入れ捕縛して近隣ビルの入口に放り込むと警察に通報。
「? あの人が履くのかな? それとも娘さんにあげるのかな?」
「何処の世界に拾った下着を娘に与える親がいる。どうせ碌でも無い理由で集めているんだろ」
「ナイスアシスト!」
 ストゥルトゥスの声に恭也はため息をついた。

「!」
 避難の列に光線が次々と降り注ぐ。ダイが一歩踏み出し、光線へと立ちはだかった。臆することなく光線を浴びる。彼らを守りながら背中で男の美学を語ろう(後ろにはちゃっかり美しいご婦人がいたりする)例えこの身がどのようなことになろうとも美学は朽ちることはない。ダイ・ゾンの美学は永久不滅―と、理念は立派なのだがその光線に当たるとカボチャパンツが生える(?)のである。
「やだあ前衛的なファッション……!」
 ガルーは笑いを堪えて言う。体中カボチャパンツなそのは姿まるでどこぞのタイヤメーカーの白いキャラクター。
「ひとのことを言えた格好か」
 オリヴィエが冷たく言う。ガルーにも光線は当たっており、見事にカボチャパンツ姿だ。カボチャパンツを履くにあるまじき脛毛+ガタイの良さでほとんど職質されるレベル。
「やだーセクシー? セクシー?」
 が、本人全然平気。げらげら笑いながらポーズ決めたりしてる。
「状況考えてください!」
 征四郎が叫ぶ。
「当たっちゃった。ふふーふ、見てみてオリヴィエ、お兄さん王子様みたいじゃない!?」
 どやぁあと効果音突きそうな顔でリュカが手を振る。
「そうだな」
 気のない返事をするオリヴィエ。
「いいか ら共鳴するぞ。ああなる前に」
 ”ああ”―ダイは白いキャラクターから雪だるまと進化を遂げていた。目は見えているらしく、光線を追いかけては身を挺して人々を守っているのだが、その姿はまるで情緒不安定な雪だるま。オリヴィエはリュカの方へと走るが、近くに来た恭也の鏡に反射した光線がオリヴィエに直撃。
「すまん」
 謝る恭也。
「リーヴィはそういうの新鮮ね。ほらもっと笑顔で! アルバムに貼るから!」
 満面の笑みでカメラを向けるガルーへと間合いを詰めるオリヴィエ。
「記憶が無くなるまで殴られるのと、一発撃ち込んで終わりにするのと、楽な方を、選んで良いぞ?」
「えっ何俺様には似合ってないって? まぁほら、ブルマよりマシだろ」
 地雷を踏むガルー。
「その話はするな」
 オリヴィエ、地を這うような声である。
「もーそんなに睨まないの。嫌なら脱いだらいいじゃないの」
 ぐいっとカボチャパンツをおろした。カボチャパンツを履いた男性が同じくカボチャパンツを履いた男性のそれを脱がす。なかなかな光景だ。脱がされたカボチャパンツをガルーにぶつけるとリュカへと走り、共鳴。
「せーちゃん似合う……」
 光線に当たった征四郎を見てきゅんとするリュカと「ブルマの次はかぼちゃパンツ、か……?」在りし日を再び思い出すオリヴィエ。
「似合わないのです! 似合わないのです! 征四郎だってもっと大人っぽいパンツがいいのです!」
 恥ずかしいのと子供っぽい(と思しき)パンツが似合うと言われご立腹。そんな姿も可愛いとその場にいた人々は思ったそうな。
「そりゃイザナミは、なにをきてもかわいいかもしれませんが……!」
「征四郎ちゃ~ん。お揃い」
 可愛いが増えた。伊邪那美の横で頭を抱える恭也。元々大してなかった緊迫感がゼロに近づく。
「イザナミは……過不足なく、似合うな。安心する着方だ」
 大人達を見つつオリヴィエが感想を漏らす。
「可愛いねー。お嬢さん方」
 ストゥルトゥスが遠くから呼びかける。
「誉められちゃった。お兄さんに似合わない服なんてそう無いんだよ!」
 しゃららっポーズをとるリュカ。
「お前はいつお嬢さんになったんだ」
 オリヴィエ声に力がない。
「オリヴェエも光線当たったんだよね。どうだった?」
「端的にいえ ば消えて無くなりたい」
 声が死んでいる。
「リュカ ちゃん。リーヴィの写真見せてあげ」
 ガルーの顔スレスレに弾丸が撃ち込まれる。もちろんオリヴィエからだ。
「いい加減それを脱げ」
 恭也が伊邪那美を見てため息をつく。
「でも脱ぎにくいんだよね」
 仕方なく恭也がカボチャパンツに手をかけると光線が恭也に当たった。
「恭也ちゃん」
 照れたような口調でリュカが言う。
「後で見たいから……その……カメラで撮っても……いい……? ぶふっ」
 返事代わりに顔面へカボチャパンツが飛んできて見事ヒット。
「恭ちゃん。照れないでー。はい。ちーず」
 従魔も後ずさりしたくなるような目つきでガルーを見る恭也。
「もー! ガルー! 共鳴しますよはやく!!」
 こ れ以上話をややこしくしたくない。征四郎がガルーへと走って共鳴。
「あ、そうだ。カボチャパンツは家に持ち帰らないことー」
 思い出したように呼びかけるリュカ。
「必要ですか? そのアナウンス」
「いや、さっき持ち帰ろうとした変態を通報した」
 征四郎の言葉に恭也がカボチャパンツを取りながら言う。征四郎は頭が痛くなってきた。

●走る変態
「皆楽しそうねー。マスター混ざりたかった?」
 避難誘導組+αを尻目に愚神を探しながらストゥルトゥスが言う。残念ながらまだ愚神は見つからない。逃げ遅れた人々やパニックに巻き込まれて怪我をした人を見つけ征四郎たちのところへ案内したり、簡易手当てしたりパンツ漁る変態を通報したり等、余計な仕事のお陰ではかどらない。
「楽しんでるの明らかに2人ぐらいなんだけど。後、あの飛び跳ねてる白い塊は何? あんなのいた?」
 体張った漢気が全然伝わっていない。がんばれ。ダイ。
「女の子可愛いいね。やっぱりマスター」
「はかないから」
 あんな格好断固拒否である。
「ええー、絶対似合うと思うよ」
「絶対に、イヤ」

「愚神はどこだ」
 恭也が眉をひそめた。もう伊邪那美のカボチャパンツにわずらわされたくないと共鳴済み。鏡で光線を防ぎ、防ぎきれなかったものは問答無用で斬り捨てる(時折、パンツ漁る変態を通報)
「待ってください」
 構築の魔女が姿を現した。彼女も逃げ遅れた人々やパニックに巻き込まれて怪我をした人を世話していたため今から探査に協力である。
「理由は不明ですがカボチャパンツに拘りがあるようですし、見える範囲で破いたり等はしない方が良いかもしれません」
「そうだな。まだ避難民もいるし」
 2人の気遣いは無駄に終わった。琴のような音と共に白い何かが大量に撒き散らされる。パンツ飽和した雪だるま―もといダイがリングワイヤーで体中のカボ チャパンツを切り裂き、除去。大半の人々は避難済みだったからいいようなものの、そうでなければ頭からカボチャパンツの残骸を被る羽目になっていただろう。エージェントたちはもちろん素早く避けた。
「何をする。許さんぞ」
 渋いいい声がする。エージェントたちは素早く視線を跳ね上げた。どこにいる。
「いた。あそこ……って」
 ニウェウスが高層ビルの1つを指して固まる。他のエージェントたちもそちらに目をやり―
「変態だー!!」
「へ、へんたいなのです!!!」
 伊邪那美と征四郎が声をあげる。スーツ着用、頭にカボチャパンツを斜めに被ったスタイルのいいカボチャ頭が高層ビルの屋上にいたら普通そう思う。
「やだあ前衛的なファッション……! その2」
 ガルー、笑いを堪えきれず。
「元々そういう愚神かもしれませんがカボチャパンツの違和感がすごいね、えぇ」
 どん引きする構築の魔女。
「本当に今日は碌でも無い日だな……」
 恭也がぼやく。
「え~っと、あれが敵で良いんだよね? 仮装している変態じゃ無いんだよね?」
 伊邪那美のもっともな質問へ答えるようにカボ=チャンは両手を掲げ、幾重にも光線を放つ。
「ヘイ、マスター! とりあえず、あのイかしたカボチャをぶっとばそうぜ!」
 唯一カボ=チャンを評価した(?)ストゥルトゥスは何故かハイテンション。
「イかしたっていうか、どう見ても変態なんだ けど」
 ニウェウスが言う。
「かぼちゃぱんつを頭に穿いたっていい。自由とはそういうものさ」
「そんな自由はいらないよ……」
 などと言いつつ、ライヴズジェットブーツの飛行能力を使用し、カボ=チャンのいる屋上へと一気に飛ぶ。着地と同時にカボ=チャンが光線を撃った。拒絶の風で、光線を回避、銀の魔弾を撃つ。カボ=チャンは優雅な身のこなしで隣のビルへと回避。
「ふふーふ、……なんやかんや言ったけど()基本的には女の子がはいた方が見栄えする服装だと思うよかぼちゃパンツは」
「それは、頭に被るものじゃないぞ。変態愚神」
 すぐ隣のビルの屋上からリュカがLSR-M110を撃つ。その弾丸はカボ=チャンの頭からカボチャパンツを叩き落した。
「何をする!」
 カボ=チャン怒った。
「これは春のスタイリッシュニューアイテムハットなのだぞ。それを叩き落すなど!」
 ディブそこまで言っていない。カボチャパンツを拾って被り、次々光線を放つ。その光線の1つはリュカの隣にいた征四郎へ。
「絶対許さないのです」
 カボチャパンツを引き裂くと魔剣「カラミティエンド」片手に隣のビルへと飛び移りカボ=チャンへと斬りつける。
「何を怒る。似合っていたぞ」
 余計なことを言うカボチャである。
「黙るのです!」
 征四郎のスピードが増す。
「だ、大体! こんなにパンツを量産したら、お洋服屋さんが商売上がったりなのです!」
 だから許すまじ!
「お前さんそれちょっと無理ない……?」
 ガルーのツッコミなど無視。攻撃の手を緩めない。屋上の端まで後退するカボ=チャン。構築の魔女がすかさず37mmAGC「メルカバ」を撃つ。シャープポジショニングを帯びた攻撃は紛うことなく、カボ=チャンの腕をかすめ、手すりを落した。落下するカボ=チャン。落ちながらカボチャパンツを被り、優雅に着地。待ち受けていた恭也のドラゴンスレイヤーをからくもかわし、走る走る。エージェントたちのあらゆる攻撃をゆるっと避けつつ、かぼちゃぱんつびーむ乱れ撃ち。
「ちょこまかと、うっとしい! それ以前に下着を頭に被るな!」
 恭也がストレートブロウを放つ。
「うわ~、恭也 すとれすが溜まって来てるね」
「下着ではない。スタイリッシュニューハットだ」
 カボ=チャンは吹っ飛ばされた(何故かカボチャンは取れず)
「待て」
 その前に立ちはだかるダンディ黒兎。

●さよならカボチャパンツ
「愚神の攻撃の最も恐ろしい点は見た目へのダメージ。ならば最初からパンツを被っていればそれ以上ダメージを受ける事は無い」
 高らかに宣言するダイ。レースインナーを取り出し頭に被る。
「それはわたくしの……!」
 ファリンは眩暈がした。
「黒レースのローライズ! おじさんこういうの大好きだよ!」
「……おじ様、あとでお仕置きですわ」
「ダンディズムとは心のありよう。たとえランジェリーを被っていようと、かぼちゃパンツをはかされていようと、心の中に真紅の椿を咲かせていれば揺らぐ事は無い!」
 キリングワイヤーがカボ=チャンへと伸びる。紙一重で避け、光線を足元へ放つカボ=チャン。だが、ダイも光線を避け、縫止で カボ=チャン動きを止める。リュカの弾丸がカボ=チャンのカボチャパンツを叩き落した。かぼちゃぱんつびーむが乱れ飛ぶ。
「あれが、ダンディズム?」
「心はそうかもしれません。心は」
 ニウェウスの疑問に「心」を強調する構築の魔女。
「こンのカボチャ野郎。こんがり焼いて、塩を振ってやる! ガーリックも添えてやらぁ!」
 カボ=チャンとの間合いが空いたところでストゥルトゥスの声と共に火の魔法が放たれる。炎に巻かれカボ=チャンがもがいた。
「あんなの、食べたくないんだけどっ」
 ニウェウスの言葉通り、あんなのが食卓に出た日にはトラウマになること請け合いである。あちこち焦げながらカボ=チャンが炎から飛び出した。すかさず構築の魔女とリュカが弾丸を撃ち込む。肩と足に傷を負いつつ走るカボ=チャン。カボチャパンツを被るのも忘れない。
「いい加減にしろ迷惑カボチャ」
 恭也が電光石火で斬りかかる。
「感謝されこそすれ、迷惑などと言われる筋合いはない。パーフェクトデザインハットでライヴスを私に捧げる! こんな名誉な死はない」
 敵味方以前に価値観が違いすぎて会話にならない。征四郎のブラッドオペレートが頭上のカボチャパンツを切り裂いた。怒り狂って光線を連打するも征四郎は剣と体術でそれを捌いた。その一部がニウェウスへと飛ぶ。場所的に避けられない。
「おおっとマスターあぶなぁぁあい!」
 ストゥルトゥスが主導権を握る。
「ちょっとストゥルー!?」
 身をひねってヒップでガード。きちんとスカートをめくるというオマケ付き。
「見てはダメなのです!」
「見てはいけません」
 征四郎がリュカの、構築の魔女がダイの視界をシャットアウト。
「お前も見るんじゃない!」
 恭也の蹴りがカボ=チャンに炸裂した。当の本人は自分のカボチャパンツ姿を眺めサムズアップ。可愛い。
「やったねマスター! カボチャパンツデビューだ!」
「全然、嬉しく無い……」
「えー、かわいいのにー」
 密かに同意する一同。
「いいから早く脱いで! びみょーにライヴスを吸われてるし!」
 カボチャパンツをいそいそと脱ぎ、極獄宝典に被せる。
「……なんで、被せてるの?」
「ふふふー」
 カボチャパンツを被せた極獄宝典を敵に向けリーサルダークを発射。リーサルダークinカボチャパンツ を敵目掛けてスッ飛ばす。きりっと決め台詞。
「食らえ、ロケットパンツッ!!」
「それが言いたかっただけでしょ!?」
 ロケットパンツそしてダイの鞭がカボ=チャンを袋小路へ吹っ飛ばした。征四郎が雷上動を打ち込み壁とカボ=チャンの服を縫いとめる。服を引き裂きながらなんとか壁から身を話すカボ=チャンへと恭也が踏み込む。肩を斬られ後退する。
「行かせないよ」
 逃げようとする方向へリュカと構築の魔女が弾丸を撃つ。征四郎がカボ=チャンのカボチャパンツをブラッドオペレートで切り裂いた。カボ=チャンが怒りで征四郎へと視線を移したその隙にダイがキリングワイヤーでズボンのベルトを切り裂く。カボ=チャンは気づかず一歩踏み出した。ズボンが足にからみバランスを崩したカボ=チャンをストゥルトゥスが銀の魔弾を撃ち込み転倒させる。
「さよならだ。カボチャパンツ」
 キリングワイヤーがカボ=チャンを捉えた。その体は悲鳴も上げられずに霧散し、地上へ落ちる前に消え去った。

「後はパンツの回収か」
 街中かなりの数である。地道にやるしかない。
「あ」
 リンクを解いてリュカが声を上げる。
「これ女子高生とかがはいた奴は希少価値g」
 肘打ちで黙らせるオリヴィエ。
「いつまで着けているつもりですの」
 リンクを解いたダイの頭からレースインナーをひったくるファリン。そこへ光線が飛んできてファリンに当たる。
「似合うぜ。ファリンちゃ」
 ファリンの顔を見てダイは言葉を切った。
「後でお仕置きと思っていましたが」
 一同、ダイに同意しつつもそ知らぬ顔でその場を離れカボチャパンツ回収開始。
「今がよろしいようですわね」
 どんな”お仕置き”が炸裂したかは皆さんのご想像にお任せする。

「ねえねえ、お買い物に行くからお小遣いちょうだい」
 回収を終え、恭也に強請る伊邪那美。
「……何を買うつもりだ?」
「う~ん、征四郎ちゃんを誘って衣類を買おうかなって……下着とか?」
「好きにしてくれ……俺は疲れたから帰って寝る」
「此処まで疲弊しきってる恭也は初めて見たよ」
「もう、精神的疲労が限界に来ているんだ 」
 うなずくエージェント常識人組。
「征四郎ちゃ~ん。買い物行こ」
「マスターも行かない?」
 ストゥルトゥスが言う。
「いや、でも」
「女の子皆で行く?」

「平和だねー」
 女性陣を見ながらリュカが言う。
「リーヴィ」
 写真をぴらぴらさせるガルー。写真にはカボチャパンツはいたオリヴィエが。武器を片手にガルーへと走るオリヴィエ。
「平和だねー」
 もう一度言うリュカに無言で首を振る落児だった。
 
●エピローグ
「まさか売れるなんて」
 ロンドンのレストラン。店長が言う。ディブとの賭けに負けた約束のディナーだ。
「世の中そんなものですよ」
 ディブが微笑む。戦闘を見物しただけですぐ帰ったディブは知らない。スーツは正しく着用しているのにパンツ被っている愚神を疑問に思い、構築の魔女が回収したパンツの調査を依頼したこと。それにより2人のロンドン警視庁刑事が動き出したことも。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 危急存亡を断つ女神
    ファリンaa3137

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 危急存亡を断つ女神
    ファリンaa3137
    獣人|18才|女性|回避
  • 我を超えてゆけ
    ダイ・ゾンaa3137hero002
    英雄|35才|男性|シャド
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