本部

異端襲来

雪虫

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 6~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/03/05 21:25

掲示板

オープニング

●悪夢
 獣が啼いていた。
 その音は雄叫びのようでもあり、同時に苦痛に咽び喘ぐ犠牲獣のようでもあった。猿に似た獣は一匹、また一匹と増えていき、やがてその中心に一つの影が旗を掲げる。
「進軍せよ、滅せよ、旧き世界を。全ては■■■■■の名の下に!」
 まるで歴史上の救済者、と呼ぶには禍々しい様相のそれは、獣達を引き連れて夜の氷野を駆け降りる。異世界の者共。猿に似た従魔と、それを引き連れる愚神の行軍。蹂躙する群れの中で獣がまた大きく啼いた。その背に縫い留められていたのは、従魔に繋がれ咽び崩れる人の顔。
 あああああああ。

●予知を告げる者
「この集落の住人が、全員従魔に変えられる未来を予知しました。この集落にはリンカーが一組いるのですが、彼らは邪英化させられた後、愚神に……」
 プリセンサーはそう言って苦々しく瞼を閉じた。耳の奥に助けを求める人々の叫びが木霊する。あれを現実にしてはいけない。プリセンサーはぐっと奥歯を噛み締める。
「外れる事を願いますが、もし当たっているのなら……エージェント達を現地へ。悲劇を必ず食い止めて下さい」
 祈るように、プリセンサーは両手を組んだ。感知した未来を伝えた後、プリセンサーに出来る事は何もない。ただ託し、願うだけ。悲劇的な未来をではなく、光ある未来を掴む事を。

●招かれざる異端のモノ
「あんでまあ、こったら田舎さよく来たべ」
「まんずでっけえ車だなあ。おらこったの見た事ねえべよ」
「遠い所からごくろうさんだべ。ほら、あったけえ汁食いなあ」
 なんぞ。
 エージェント達はしばしの間呆然とした。プリセンサーの予知を受け、示された村にウラル08と共に訪れた彼らを待っていたのは、殺伐さとは一切無縁のほのぼのとした村だった。
 英雄と誓約を交わしたリンカーは、全く意識せずに他言語との「会話」が可能である。「異界の存在」である英雄の元へ発せられた言葉が、間に隔たる異界の壁を突破する際、その言語性を失って「意味」や話者の「意思」だけが純化されて届き……とかいう細かい事はさておいて、とにかく英雄と誓約を交わしたリンカーは問題なく他言語と意思疎通が出来る。出来るったら出来る。
 ただしその「会話」にも色々あれこれあるらしく、元々変な外国語交じりで喋る者の言葉はやはり変な外国語が混じったまま発せられる事もあるらしく……とりあえず何が言いたいかと言うと、この北欧の片隅の村はものすごい田舎という事である。そう思って下さいお願いします。
「ふんむ……この村がなあ」
 事情を聞かされた村長は顎に手を当て考え込んだ。ショックを与えないため「従魔に襲われる危険性がある」と簡単な説明に留めているが……
「わがった。んった所までわざわざ来て下すったんだ、ただ事じゃねえべよ。童とおなごは先に行け。男共は後から村を離れるべよ」
「おらはエージェントの人達と一緒にこの村ば守るべよ。化け物が来たってへっちゃらだべ! ちょちょいのちょいでのしてやるべよ」
 そう言ってマルタと名乗った少女……この村唯一のリンカーはぐっと拳を握り締めた。まだ幼い少女の頬は林檎のように赤らんでいる。
「んだばさっそくお願いすんべ。みんなぁ、あんま慌てんでねえど。どったに急いでも財布と家の鍵さきちんと持って慌てず騒がずこのでっけえ車さ……ん?」
 村長の言葉が唐突に止まり、エージェント達の遥か向こうにしょぼしょぼとした眼を向けた。そこに、人影が立っていた。人形のように整った、同時に何の感情も見えない容貌を向ける青年と、その背後に立ち並ぶのは白い翼を負う女達。あまりに不審な一団に、マルタが声を張り上げる。
「あんちゃん、一体何処から来たんだべ? そっちは崖のはずだど。まさかあんちゃん達が村ば襲おうっていう化け物か?」
「私の名はフレイ。ラグナロクの幹部をしております。本日はエインヘリャルにお力添えを願いたく参上させて頂きました」
 青年は、まっすぐ前を向いたまま通る声でそう述べた。その瞳はただまっすぐだけを見つめていた。背筋を伸ばし、首を曲げず、誰も見ず、ただまっすぐを。
「ラグナロク? 一体何の事だ!?」
「エインヘリャル。ご同行願います。ご了承願えるなら悪いようには致しません」
 フレイと名乗る青年は述べた。マルタの問いなどまるで聞こえていないように。フレイはまっすぐを、あくまでまっすぐだけを見つめたまま淡々と口を動かし続ける。
「ご同行頂けないようであれば……無理矢理さらってこいよ。聞かねえヤツは力で屈服させるしかねえじゃねえか。それはあまりに失礼だ。礼を尽くしてご同行願うんだよ、フレイ。……はい、了解しました。私の名はフレイ。ラグナロクの幹部をしております。本日はエインヘリャルにお力添えを願いたく参上させて頂きました」
 テープを入れられた人形のように、人形のように美しい青年は口を動かし続けていた。その場にいる全員の背に悪寒が走り、エージェント達は武器を取る。フレイは手に金色の板……否、スノーボードのようなものを出現させると、やはりエージェント達を見ないままスノボーに右の足をかける。
「ご同行願いますエインヘリャル。ご同行頂き、頂けないようであれば……無理矢理さらってこいよ。聞かねえヤツは力で屈服させるしかねえじゃねえか」

●ウラル08
 積載力約2トン。乗員は運転席2名+25名。最大時速35km/h。車体は小型バス並みの大きさ。大人数を運ぶことができるが小回りは効かない。

●ラグナロク
 ラグナロクの掲げるものは一種の終末思想である。
 彼らは、人間による世界の支配を悪しきものとして断罪する。異次元の接触はこの世界に終末の日が訪れた証であると定義し、能力者となって異世界とひとつとなり、古き神々の世界、すなわち旧き人類が支配する世界と戦う時が来たのだと説く。
 異世界との親和性を持たない人々は動物以下であるとする考えまであり、能力者至上主義からくる選民思想と自然優越主義、テロリズムが同居した危険な集団である。
 南米アマゾン奥地を拠点に活動していたヴィランズだったが、現在消息不明。(ラグナロクに関する報告書より)

解説

●目標
 村人とマルタを守りきる

●場所 
 北欧の片隅の小さな集落。天候は晴れ。足元は雪。東側にある崖との距離は結構ある。PCの位置は敵から10sq以上西方側にいれば自由に設定可。ウラル08は敵から20sq西方に位置
 
●敵情報【PL情報】
 フレイ
 マルタを攫おうと優先的に狙う。移動が極めて高い。ヴァルキュリアβが全滅するか、一定ダメージを受けると撤退
・グリンブルスティ
 パッシブ。地上から10cm地点を浮遊するスノボーに乗って移動、足場の制約を受けない。スノボーを盾のように使い防御を行う。スノボーを破壊された場合物防・移動・回避が大幅に減少。スノボーを修復するのに2ターン要する
・ブローズグホーヴェイ
 アクティブ。赤い馬の幻影を召喚し、前方に横3×縦8sqの無差別攻撃
・アルフヘイム
 妖精型のライヴスを周囲に舞わせ惑わす無差別攻撃。1d6で判定を行い、勝利した場合対象に【減退(2)】【封印】【劣化(防御)】【狼狽】付与
(例:フレイが4を出した場合、3以下を出した者にBS付与)

 ヴァルキュリアβ×3
 フレイの援護を優先的に行う。翼で地上から50cm地点を浮遊し移動、足場の制約を受けない。射程1~20sqの銃を使って攻撃
・援護射撃? 
 フレイがピンチに陥ると銃に振り回されるように不規則に移動しながら無差別に銃を乱射

●NPC情報
 マルタ
 ブレイブナイト。AGWを持っておらず拳での戦闘となる。従魔と戦った事はない。敵から15sq西方に共鳴状態で位置 

 村人
 老若男女合わせ30人。敵から20sq~35sq西方にいる/全員外に出ている。住居は敵から25sq~50sq西方に散在

●その他
・住居及びウラル08は攻撃を受けると破損する恐れあり
・使用可能物品は装備・携帯品のみ
・PCが知っているラグナロクに関する情報はOPに明示しているもののみ(ラグナロクについて全く知らないというのは可能)

リプレイ

●守勢
「……なんか、変なの来た」
 耳をピコピコ動かしながらユフォアリーヤ(aa0452hero001)は呟いた。麻生 遊夜(aa0452)は首を傾げ敵の言葉を反芻する。
「ラグナロクにエインヘリャルと来たか……しかし、なんだコイツ?」
 スノボーに足を掛けたまま、やはりまっすぐ前を見つめる青年に遊夜は再び首を傾げた。まるで洗脳、又はプログラムされた人形のような言動は不信感しか覚えないが……いずれにしろ情報が必要と、遊夜はベルトに取り付けたハンディカメラを起動させ、救命救急バッグを取り出し村長にずいと突き出す。
「村長さん、これを持って村人への指示出しや統率を行ってくれ。皆に下がるように伝え一番西の家を目指すんだ。家やウラルを壁に、射線に入らないよう気を付けてくれ」
 気になる事は多々あるが、今の所はそれら以外は後回しだ。今は兎に角このほのぼのとした村を、村人を守らねば!

「エインヘリャルか、良い冗談じゃないか。それに」
 海神 藍(aa2518)は青紫の瞳に僅かに皮肉を滲ませた。どういう意味合いかはともあれ『それ』は死んでいるものだ。
「古き神々の世界を否定するラグナロクの幹部が“フレイ”とは、何の冗談だ?」
 「ラグナロク」については報告書の内容を少し知っている程度だが、その幹部を名乗る青年の口にした名は古き神の名ではないか。
 酷くきな臭い。
「あるいはこの幹部と称するものも“殺されて”いるのかもしれませんね」
 藍の糾弾にも似た疑問に禮(aa2518hero001)が推測を口にした。魂か。意思か。定かではないが何か、あの青年はすでに殺されているのかもしれない。
「ともあれ、あれは私たちの敵だね? 禮」
「ええ、護りましょう。無辜の民を、その日常を」
 二人は誓いと決意を声に乗せて共鳴し、長く伸びた黒髪に日の光を反射させた。ウラル08の付近に立ち、車に乗るべきか否かに惑う住民達へ声を上げる。
「戦闘になる、ここも危険だ。車に乗るのは止めて村長の指示に従ってお逃げなさい。西へ!」

『なんです、この相手は……』
 共鳴した志賀谷 京子(aa0150)の内でアリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)は戸惑いと怖気を口にした。フレイと名乗った青年は何故か正面を見据えたまま、動かず今も何事かをブツブツ呟き続けている。
「……人格が二人、いや三人? 壊れているのか、壊されたのか。いずれにせよ、真っ当に話が通じる相手とは思えない」
『……人ではなく、埒外の愚神と思って相手をしましょうか』
 アリッサの提案に小さく頷き京子は情報を整理した。エインヘリャルとは勇者のこと。プリセンサーはリンカーが邪英化させられると言っていた。とすれば狙いは
「マルタ、かな」
 さらに京子はフレイの背後の女達へも視線を向けた。銃を持った女が三人。交戦し流れ弾が村人に当たる事態は避けたい。戦闘の軸を村人脱出方向からずらす必要がありそうだ。
 方針を決めた京子はマルタの傍へと近寄った。緊張に強張る少女の前に、しゃがみ込んで京子は小さな肩に手を掛ける。
「マルタ、エインヘリャルと呼ばれるような相手はあなたしかいない。敵の狙いはあなたなんだ」
「お、おらが?」
「何かを守ろうと思ったら、まずは自分自身を守ることが必要なの。まして、いまはマルタが狙われている状態。どうやったら自分自身を守れるか、それを考えるのがマルタの戦いなんだと思う。――戦える?」
 京子の言葉にマルタは不安げな顔をした。リンカーとは言え戦闘経験もない幼い少女。その上敵の狙いが自分だなどと言われたら……京子はマルタをまっすぐ見つめ勇気付けるように言い聞かす。
「守ることは難しいことだけれど、わたしも、みんなもいるから、だいじょうぶ」
 そして京子は月弓「アルテミス」を出現させた。マルタのすぐ近くに立ち、少女を異端から守るべく矢じりの先を敵へ定める。
「真っ向からやりあうのは趣味じゃないんだけど……」
『格好つけたのですから責任は取りませんと』
 生真面目かつ容赦のないアリッサに京子はわずかに苦笑を浮かべ、淡く輝く洋弓をフレイのスノボへ射放った。マルタ本人の護衛は仲間に任せ、自分は少女を狙うだろう敵の妨害に専念する。何を置いても守り抜いてみせるから。京子は胸中で誓いを立てる。

「申し訳ありません、村人達が避難する間、このウラルを流れ弾等の遮蔽物にして頂いてもよろしいですか?」
 「とはいえご自身の安全も優先していただければ」と添え、構築の魔女(aa0281hero001)はウラル08の運転手へと依頼した。自分達が駆け付けられなかった場合に備え、敵の射程、村人の避難状況、車体の被害等の切り上げ目安も同時に伝える。
 そしてすぐさま辺是 落児(aa0281)と共鳴し、今正に避難している村人達へと駆け寄った。三十人程度とは言え、村長一人が村人全員に目を配るのは難しい。村人達の避難を促す村長の援護をし、五人程度に固まるよう、若い人は老人や子供の補助をしながら動くよう、ウラルやリンカーの陰になるよう移動をと適宜指示を出す。
「可能な限り西や西南側にある遠い家に移動を。慌てなくても大丈夫です。マルタさんは他のものが守りますのでご協力よろしくお願いいたします」
 戦闘音に意識を奪われ混乱をきたさぬよう、村人に指針と目的をしっかりと提示するべく、構築の魔女は柔らかな声を今は出来る限りに張り上げた。真壁 久朗(aa0032)も避難の障害を取り除くべく、可能な限り多くの村人を範囲に入れフットガードを展開する。

「マルタ、だったか。ちょいと無理をさせるかもしれねぇが、仲間の言う事をきっちり聞いて動いてくれると助かるぜ」
「村人の方々に被害を出さないようにするためにも、宜しくお願いしますわ」
 赤城 龍哉(aa0090)とヴァルトラウテ(aa0090hero001)はマルタにそう言伝ると、改めてラグナロクを語る者達へと視線を向けた。常になく厳しい顔のヴァルトラウテより先に龍哉が口を開く。
「とりあえず今のところは自称ラグナロクってとこだが」
「終焉を嘯き、エインヘリアルの在り方も知らず、戦乙女の紛い物をこれ見よがしに繰り出す。度し難いですわね」
 ヴァルトラウテは戦乙女の矜持故の憤りを滲ませた。凛々しさと勇ましさ、そして慈愛をも持ち合わせる彼女の瞳が今は感情に僅かに揺らぐ。
「さて、それじゃ化けの皮を剥ぎに行くとするか」
 ヴァルトラウテの憤りを仕方ないと思いつつ、龍哉はこうも思っていた。わざわざ正面から名乗りを上げてくるテロリストの言う事を真正面から受け取る必要はないだろう。少なくとも今は。
 ただ、それでも敢えて考察するなら、フレイについては愚神に憑かれた能力者の線が濃いと予想した。
 予測されたマルタの邪英化、そして愚神化があり得た未来だとしたら、それは如何にして実現されるものだったのか。
 別件で関わっているテロ組織“ドミネーター”も似たような事を匂わせていた。
 故に
「何か尻尾を掴みたいとこだな」
 龍哉はヴァルトラウテと共鳴するや、“ヒルドールヴ(戦の狼)”の名を与えられた魔導書を手に開いた。まずは敵襲撃部隊の陽動と、威厳と峻烈の言の葉を異端者へと差し向ける。

 出来すぎじゃない?
 敵の視界を遮るようにマルタの前へ立ちながら、ナイチンゲール(aa4840)は共鳴状態でそんな言葉を呟いた。
 『フレイ』が『エインヘリャル』を『ラグナロク』に導くなんて。
 ギャラルホルンを鳴らす予定が? 相手は愚神という名の巨人族かな。
 それとも……
(この世の全て?)
 なんだろう、とプリセンサーの予知を受けて来てみればこれだもの。
 やたらな連中に女の子を預けられると思う?
「させないよ」
 持ち前の優しさと厳しさと、共鳴する事によって得る揺るぎない支えを以て、ナイチンゲールはブラックファルクスを盾のように携える。

「や、ヤバい、ヤバいぞ弟者、アレはイッてる目だった」
 阪須賀 槇(aa4862)は開戦と同時にマルタや他の仲間達と一先ず共に後退しながら、「弟者」と呼ぶ阪須賀 誄(aa4862hero001)に敵のヤバさを訴えた。ラグナロクの事は殆ど知らない。知らないがフレイと名乗る青年の目付きのヤバさはよく分かる。
「完全に電波系だったな……しかし、もしここで……」
 槇の訴えを受けながらは誄はふむと思案した。自分達の重要情報はプリセンサーの予測に拠る。マルタや住人が敵に捕まればあの未来が現実になる。一先ず優先すべきは彼等の避難か。だが、
「……OK、状況が後手後手だ」
「ど、どうする弟者……」
「うむ……時に奴等を引っ掻き回す手があれば……」
 考え込む冷静沈着で思慮深い弟者の横で、誄と違い(以下省略)の槇はマルタの顔をジーッと見た。奴等の狙いの一つはマルタでもあるはず。
 「ならば試しに?」、槇の頭上で閃きがぺかりと光る。

●攻勢
「あの金の板、便利だよね。わたしもほしい!」
 フレイのスノボを狙いながら京子は無邪気な声を上げた。その可愛らしい「猫被り」を知るアリッサは淡々と相槌を打つ。
『はいはい、壊しますよ』
「ん、アイツだけあんなの乗ってるのずるいものね」
 言って京子は月光を纏う銀の矢をスノボ目掛けて射ち放った。まずは移動手段と思しきスノーボードを破壊する。狙い通りに命中した、戦友にして親友である京子の矢を目で追いながら、構築の魔女は戦場の推移を観察し安全経路を考察していた。家屋や車体で敵の視野に入らぬ経路、自身がカバーを行える経路を選び村人達を誘導する。
(「敵がこちらに向かう素振りを見せた場合は牽制しますが、避難が完了するまでは気を引かないよう注意しなければ……)」

『ラグナロク、と言いましたよね』
「……一気にきな臭くなってきたな」
 セラフィナ(aa0032hero001)の問い掛けに久朗は静かに声を返した。消息不明のはずのヴィラン組織が同行を求めている事、プリセンサーの予知内容から他の仲間と同じように狙いはマルタと結論付ける。
 状況の伝達不足から、村人達を戦闘に巻き込んでしまう恐れがある。後方で戦闘を展開するのは極めて危険だ。
 判断を下し、久朗はマルタを小脇にひょいと抱え上げた。見知らぬ男に抱えられ驚きじたばたするマルタに、渋られる前に先手を打とうとナイチンゲールが声を掛ける。
「奴らの狙いは貴女。皆を巻き込みたくないよね? だから私達に守らせてくれないかしら」
 ナイチンゲールの名に違わぬ美しい声の説得に、マルタは暴れるのを止めナイチンゲールをじっと見た。さらに畳み掛けるようにシルミルテ(aa0340hero001)が声を挟む。
『朴ネーんじーン! 女のコに対しテ雑!! ごめンネ、後デこノ朴念仁チャンと叱っておクネ』
 「朴念仁」と呼ばれ久朗は苦い顔をした。そんな久朗に一切構わず『でもアナタが必要なノ!』とシルミルテはさらにマルタに話し掛ける。
「それでみんなが助かるなら……お願いするだ」
 リンカー達の説得にマルタはこくりと頷いた。ナイチンゲールはブラックファルクスを構えながら、前後の様子、村人の避難幇助をする仲間達を確認・把握するべく瞳を向けた。仲間達と足並みを揃え、マルタを囲むポジションを維持し村人達から離れた北側へと移動したい。
 久朗も同じ考えで視線を移動……した所で、何か見覚えのあるものが立っている事に気が付いた。久朗はそれを見、小脇に抱えた少女を見、また「それ」に視線を向ける。

 槇にはこの世界の記憶が無かった。「ゲームをしていて、気が付いたら異世界に居た」というのが槇の主張だが、とにかくそれが原因で槇はイメージプロジェクターなる代物を神のアイテムだと思っていた。
 槇が自身に纏わせたのは「マルタの格好の幻影」だった。ちなみにマルタには「雪国って事で真っ白な服装を三つセットしてきた」内の一つを貸し与え、一緒にバリソンも貸そうとしたが「使った事ない」と武器の方は断られた。とりあえず何が言いたいかと言うと176cm68kg、ネコ耳付きの幼女が白き大地に降臨した。
『しっかし、正気の沙汰じゃあないよなぁコレ』
「こんなドタバタの状況、ちょっと体格違ったってバレないって弟者、うっひょー俺が幼女だ!」
 誄のまともな呟きをでかい幼女は一蹴した。変装した槇の姿に藍が遠目でぽつりと呟く。
「……さすがだよな、彼ら」
『……? さかすがさんですよね?』
 禮の天然な一言に藍はしばし沈黙した。一瞬だけ考え込み、結局こう返答する。
「いや……何でもない」

 槇の変装を視認直後、遊夜は目くらましと時間稼ぎを兼ねフラッシュバンを炸裂させた。閃光が敵の目を焼いたと同時に誄が仲間に声を掛ける。
『……とにかく。俺らが引っ掻き回してる内に他の事は《頼んだ》よ、英雄さん』
 そして槇はスマホに録音したマルタの台詞を爆音再生で駆け出した。フレイは光に眩んだ目を、しかし一層大きく開き、聞こえるマルタの声を頼りにスノボで槇の後を追う。
 京子と遊夜、二人の狙撃手はタイミングを交互にズラし、フレイの進行を阻害するべくテレポートショットをそれぞれ放った。攻撃は軌道上から敵の死角へ瞬間転移し、スノーボードをぐらつかせフレイの意識を翻弄する。
『……ん、どこにいても……当ててあげる』
「射程外への離脱を確認、あとはあいつらを潰すだけだな」
『……ボク達が、いる所に来たのが……運の尽き、だよ?』
「頼もしいメンバー揃いだからな」
 ユフォアリーヤと笑みを交わし、しかしと遊夜は思考を巡らす。
 敵はどうやってマルタを知り狙ったのか。
 自分達がいると知ってなお襲撃を実行した理由。
 プログラムされたような言動。
 ヴァルキュリアやラグナロクに関して。
 色々とおかしい点が多くある。
 思想的には異世界との親和性による選民だ、消息不明からの活動再開……何か内部変化があったはず。
 南米拠点のヴィランズがなぜここに来たか。
 邪英・愚神化の手段。
 愚神の影や乗っ取りの可能性。
 いずれにしろ皆と情報を共有、推察し合いながら、今後の為に少しでも多く情報を集めねば。

 龍哉はヴァルキュリアβの行動パターンを探りながら、同時に彼女達の隙を突き魔法攻撃を叩き込んだ。つかず離れず、そして逃がさず、敵の射程ぎりぎりを維持し機動力を最大限に生かしたヒット&アウェイを仕掛ける。
「戦乙女の紛い物……その身、狼の咢で食い破ってくれよう!」
 王の如き威厳と峻烈を“ヒルドールヴ”の力と放ち、ついに一体目の「紛い物」は撃破されて雪に沈んだ。村人の避難を概ね終えた構築の魔女も近くに駆け付け、37mmAGC「メルカバ」でヴァルキュリアβの銃を狙う。
 三十人の村人に対し襲撃者の数が少ない、それが構築の魔女に警戒の糸を張らせていた。ラグナロクの情報がHOPEの情報網にかからなくなっていた、その事実もまた「糸」をさらに強化する。
「ふむ、こう違和感がありますね。見過ごしている何かがあるかも知れません」
 とは言え今はこちらの方をと、120cmの砲身を敵の銃へと定め放った。砲弾は銃に撃ち当たり、構築の魔女は柔く笑む。
「こちらにまで銃弾が来ないように頑張りましょう」

 フレイの機動力の高さを認め久朗はザイルを取り出した。万一に備えザイルでマルタと自身の胴を片手もやい結びで繋ぐ。
「窮屈だったらすまん」
「おら、羊とかじゃねんだけど」
 流石にむくれるマルタにしかし上手いフォローも出来ず、朴念仁は代わりと言うように飛盾「陰陽玉」を展開させた。自身の後ろにいるマルタを覆い隠す様に盾を浮かべ、少しずつ北上しながら視線を女の一人に向ける。
 原因がラグナロクなら、ヴィラン組織なのに邪英化させる手段を持っている事になる。
 愚神に連なる存在ではないかと久朗が疑惑を抱いた所で、女の一人が顔を向け手中の銃身の狙いを定めた。その攻撃を妨害するため、同時に正体を知るために、久朗はパニッシュメントを先手を打って差し向ける。
 鋭い光が女を焼き、同時に久朗に正体を告げる。
 この女達は従魔だと。

『何でしょう、あの板。厄介ですね……速い』
 禮は槇を追い回すフレイを見ながら呟いた。藍もその様子を視界に映し眉間に推測の皺を寄せる。
「オーパーツか何かか? 村人に被害が及ばないようにしないと……」
『大丈夫です、麻生さん達がいます』
 禮が述べたと同時にフレイの身体がわずかに傾いだ。狙撃姿勢に入る遊夜や京子を遠目に認め、凄まじい狙撃の腕を藍がオペラの一つに例える。
「魔弾の射手か。心強いな、私達も前に出よう」

「ひ、ひぃいい」
 槇は悲鳴を上げながら全速力で雪を蹴散らした。後ろからフレイが迫る気配がしてくるが、振り向くとバレる為雪景色をとにかく走る。
『どうも、敵はマルタお嬢のストーカーしてる様ですよっと』
 誄が敵の様子を生実況した直後、遊夜と京子のテレポートショットが交互にスノボに被弾した。フレイは速度を落としふらつきつつも「マルタ」の追跡を止める事なく、やがて追い付き回り込み……ほとんど変わらない表情ででかい幼女をじっと見つめる。
「OK弟者、釣れたぞ」
『《一回掛かれば俺らの勝ち》だ』
 槇と誄は声を合わせフラッシュバンを叩きつけた。目が眩んだらしく着雪するフレイをここぞとばかりに口撃する。
『時にオタク等アレだな。やる事が支離滅裂だし、バカ乙だな』
「どうせ教祖様(笑)は金目当のド低脳クズなんだろ」
『そもアンタが電波だし。なに、二重人格なん? きんもーっ!』
「後でネットにラグナロク(笑)ってカキコするわ」
 これで怒って注意が逸れれば、何か情報を落としてくれれば……そんな思惑で阪須賀兄弟は超口撃で畳み掛けた。フレイが槇に顔を向け、しかし焦点は合っておらず、何の感情も見られない微かな声でぼそりと呟く。
「エインヘリャル。今回お連れしたいのはあなた方ではありません」
 そしてフレイは赤く巨大な影を槇目掛けて繰り出した。閃光の衝撃故か狙いは大きく外れたが、その隙にフレイはスノボに乗り全速力で踵を返す。槇は通信機で仲間に連絡を入れ、合流するべく再び雪原を駆け出した。

●攻守
「彼の足を止められればそれが援護となるでしょうか」
 槇からの通信を受け、こちらに戻ってくるフレイに構築の魔女は銃口を合わせた。「防御に使う面を避け」「味方に合わせ挟むように」「先端に衝撃」を狙いテレポートショットを撃ち放つ。遊夜と京子も同時に狙撃し、三人の狙撃手の攻撃は全てスノボに命中したが、ぐらつかせるだけに留まり未だ壊れる様子はない。
「この足場でこれだけ動けるってのは悪くねぇな」
 翼の恩恵だけは称え、龍哉は偽りの戦女神に魔法攻撃を打ちつけた。フレイの援護に向かいたいのか、龍哉を突破しようとする女達を抑え続ける。
 と、龍哉の背後から、羽根を生やした小さなものが舞うように周囲に出現した。危険を感じ振り払ったと同時に従魔が龍哉の脇を抜け、北へとスノボで駆けていくフレイの後を追っていく。
『来たキタ!』
「来たね」
 シルミルテの機械音声に佐倉 樹(aa0340)は淡々と声を返した。今回は何故かシルミルテの主張がやや強く、いつもの魔女姿の上に白うさ耳が生えている。
 マルタ目指して迫るフレイに樹は童話「ワンダーランド」を構え走った。接敵し重厚なハードカバーの角をフレイの頭に振り下ろ……さず、物理攻撃を装った流れでサンダーランスを撃ち放つ。
 頭を狙った雷に、フレイはスノボを縦に持ち上げ衝撃を和らげた。敵の後ろを追って来た藍の内で禮が呟く。
『あの板、盾にもなるんですね、やっぱり厄介です。……でも盾は一方向しか護れません』
 禮の言葉に頷いて、藍はフレイの背後を基点にライヴスの炎を花と咲かせた。フレイがボードに乗る前にと、出来るだけ接近してから久朗が毒々しい髪染めを投げ、フレイの髪一房が毒々しい色に染まる。
 遠距離の射撃時に視認しやすいようマーキング、かつ異常な言動から鑑みて、外部からの刺激に対する反応も見ようと投げたのだが、フレイは何の反応もせずまっすぐ前だけを見ていた。ナイチンゲールはブラックファルクスにライヴスブローをまとわせて、視線の合わぬ青年へ美しい声で問い掛ける。
「出来すぎと言えばさ、こんなへんぴな田舎にいる彼女のことをどうやって知ったの? 預言者でもいるのかな……ああ、ラグナロクなら『巫女』って言った方がいい?」
 振り下ろされた曲剣を、しかしフレイはスノボをターンさせて躱し、周囲に羽根の生えた小さいものを踊らせた。ライヴスで出来た妖精がリンカー達に牙を剥く――瞬前、京子がスノボに、遊夜がフレイの目を狙ってテレポートショットで意識を逸らし、目測のズレたアルフヘイムはそのまま宙に立ち消える。
『妖精ハチョッと苦手……』
 距離を取った樹の内でシルミルテが声を漏らし、しかし気を取り直すようにすぐさまブルームフレアを放った。炎に巻かれるフレイを見つめ背後の女達に指を差す。
「あれもエインヘリャル? 『成り損ナイ?』
「……」 
「貴方、愚神なの?」
「……」
「聖女と同じ名前の娘が欲しいだなんて『タラスクでモ起こシチャった?』
「……」
「フレイって神様の名前使っているのにスノボはちょっと……『エスコートのひとツモできなイノもダサいヨネ……』
「……」
『コンな若イ娘を欲しイダナんて、オジサんってロリコンなのネ?!』
 自分の体(共鳴中)をきゅっと抱きしめシルミルテは声を掛けたが、いずれの問いにもフレイは無反応を貫いた。そんなフレイの背後から従魔達が銃口を構え……次の瞬間、まるで武器に振り回されるように銃を乱射し始めた。狙いなど全く定められない銃弾は一つはフレイの横を掠め、一つはなんとマルタ目掛けて飛んでいく―― 
「させない!」
 ナイチンゲールはマルタの前に立ち塞がり、クロスガードと守るべき誓いで強化した漆黒の刀身で弾を弾いた。藍がゴーストウィンドで雪を巻き上げ地吹雪で敵の視界を遮り、その隙に京子と遊夜がダブルトリオを披露する。同時に駆け付けた龍哉が二体目の従魔に魔法攻撃を加え撃破し、構築の魔女の「メルカバ」 の弾がスノーボードを破壊した。
「……」
 フレイはわずかに目を見張り、破損箇所に直接右手を押し当てた。すると壊れたスノーボードがじわじわとだが確実にその姿を戻していく。
 久朗は敵の姿を見ながら再び前方へ手をかざした。異常な言動。幹部なのに組織を省みない行為。AGWでは無さそうな武器を使っている事。フレイもただのヴィランではないと結論付けてパニッシュメントを打ち当てる。結果は、愚神。その答えに藍が戸惑い気味に声を漏らす。
「愚神の出現は想定していたが……あれは愚神なのか……?」
 しかし、ならば手加減する必要もないと、藍は愚神と従魔を巻き込み幻影蝶を放ち舞わせた。光の蝶に巻かれる愚神に樹とシルミルテが声を掛ける。
「へぇ『やっパリ!』
「愚なる神なんて『アナタにピッタリ』
 樹はヘカテーの杖に持ち替えライヴスを喉に集中させた。久朗の持つ救国の聖旗「ジャンヌ」の恩恵を受けながら支配者の言葉を愚神にぶつける。
『何処ノ拠点かラ来たノ?』
 シルミルテの声に、愚神は焦点の合わぬ瞳を樹より遥か遠くへ向けた。薄い唇を素早く動かし一つの単語を繰り返す。
「ラグナロク。ラグナロク、ラグナロク、ラグナロク」
 効果があったのか、はぐらかされたのか、素直に答えてくれたのかも分からない応えに樹はわずかに目を細め武器を本に持ち替えた。京子がスノボ修復を妨害するべくフレイの腕を矢で射抜き、藍は流れ弾の被害を避けるためケイローンの書で援護を行う。

 フレイが捨て駒の様に見える。従魔の不可解な動きから遊夜はそう考えた。β自身や装備等も確保出来れば重要な情報源になりそうだ。
 故にβを捉えるべく、遊夜は注意を引くようにβのすぐ傍へ弾を撃ち、同時に構築の魔女が砲弾で銃を弾き落とした。龍哉がハングドマンで従魔の足を雪に縫い留め、久朗がノーブルレイを舞わせヴァルキュリアβを絡め取る。
「……悪いな」
 そしてβを立たせようとした……瞬間、赤い馬の幻影が久朗と従魔へ襲い掛かった。逃れる隙もなかったそれは久朗と従魔を踏み潰し、久朗が目を開けた時にはβは事切れ銃は塵と消えていた。
 その攻撃がどういう意図で放たれたかは分からない。しかしフレイは無表情で直ったスノボに飛び乗ると、そのまま背を向け東の方へと走り出した。咄嗟に藍がスマートフォンを、樹が吸盤を付けたライヴス通信機を接近しつつ放ったが、どちらも愚神には届かず雪の上に落ちてしまう。
 久朗が追撃を助けるためフットガードを展開し、樹がせめて腕の一本、京子が確実な撤退を狙って魔銃と月弓をそれぞれ撃った。ようやく合流した槇も火力支援に加わったが、残骸一つ残す事なくフレイの姿は消え失せた。

●収束
「何とか一段落ってとこか」
「だといいのですが」 
 龍哉の言葉にヴァルトラウテは息を吐いた。懸念はあるが一先ずマルタにも村人達にも被害はなく、京子はマルタの前にしゃがみ込み「おつかれさま」と笑顔を向ける。
 村人達が無事を喜ぶ中久朗は難しい顔をした。ヴァルキュリアβもその武器も、残念ながら全て塵と消えてしまった。パニッシュメントの結果もあるし、彼女達は従魔、フレイは愚神と判断していいだろう。だが、パニッシュメントを放った時、奇妙な違和感を感じた。あれはどういう意味だろう。
「プリセンサーの予知の内容から、彼女達が元人間の可能性はあると思いますが……」
「ただの人間を従魔化させる事が彼等の能力者至上主義と繋がる可能性もあるが……いずれにしろ、今回だけでははっきりしないな」
 構築の魔女に返答し、久朗はマルタに近寄った。未だ幼い少女に今後の方針を言伝る。
「君は今後も彼らに狙われる恐れがある。原因を突き止めなければ集落に再び危険が迫る可能性もある。だから最寄の支部で保護を受けてくれないだろうか。それと、能力者になった時期や自身の英雄等、狙われた心当たりがないか教えて欲しい」
「能力者になったのは結構前だけど、心当たりは、ない。何も」
 マルタは答え、伺うように久朗を見た。支部に保護される事に戸惑いを覚えているようだ。懸念に心当たりのあるナイチンゲールが声を掛ける。
「もし家族の事が心配なら、家族も一緒に保護を受けるとか、どうかな。HOPEと万来不動産ならそのくらいの懐はあるでしょ。実は私もマルタと一緒なんだ。つまり新米ってこと。だからさ、競争しよう。どっちが先に強くなるか、誰かを守る為に」
 言ってナイチンゲールはチョコレートをマルタに差し出し、シルミルテも一緒に板チョコ……の形のシールドを渡す。
「ありがトー! おカゲですっゴク助かっチャッた! コレ、ワタシかラノお礼!」
 マルタはお菓子と盾を受け取り、二つをぎゅっと抱き締めた。元の性質そのままに元気に声を張り上げる。
「二人ともありがとう。んだな、おら、もっと強くなんねえと。保護を受けるって、村の人全員でも大丈夫か? 村の人みんながおらの家族だから!」
 その回答にナイチンゲールはさすがに少し考え込み、シルミルテは笑みを漏らした。樹の成長過程を見守った視点でマルタの姿をじっと見つめる。

「フレイの伝承にはスキーズブラズニルなる魔法の船がある、それで離脱するつもりだったんだろうか。得体のしれない組織だし、少しでも情報が掴めれば良かったんだが……」
 藍は回収したスマートフォンを見つめわずかながらに肩を落とした。樹もまた回収した通信機に視線を向ける。マガツヒ上級構成員、エネミーとの大まかな戦力差や戦闘パターンもあまり多くは取れなかったし……
 いずれにしろ、エインヘリャルの呼び名から同じような事件が多発する恐れがある。帰ったら警戒や対策を依頼しなければ。

 貸し出し物品を回収する仲間達の姿を見ながらナイチンゲールは考えていた。先程使った守るべき誓いは範囲内にいる敵の意識を引いて攻撃を誘導するスキル。にも関わらずマルタに弾が飛んだのは、スキルが効いていなかった? それとも
「あの攻撃は従魔の意志で行われたものじゃない……?」


 帰ってきた結果に少年は嘆息した。まさかこれ程不具合が出てしまうとは。今回の事をフレイは気にはしないだろうが、
「もっと改良しないといけないね。色々と」

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 告解の聴罪者
    セラフィナaa0032hero001
    英雄|14才|?|バト
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 深淵を見る者
    佐倉 樹aa0340
    人間|19才|女性|命中
  • 深淵を識る者
    シルミルテaa0340hero001
    英雄|9才|?|ソフィ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 密やかな意味を
    波月 ラルフaa4220
    人間|26才|男性|生命
  • 巡り合う者
    ファラン・ステラaa4220hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 明日に希望を
    ナイチンゲールaa4840
    機械|20才|女性|攻撃



  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862
    獣人|21才|男性|命中
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 誄aa4862hero001
    英雄|19才|男性|ジャ
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