本部

苦情来てますよ

落合 陽子

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/02/26 19:53

掲示板

オープニング

●これでも休暇中
 海上。
「武器はオートマチックか。なら、ハンデをやろう」
 ビキニアーマー、ALB「セイレーン」、黒漆太刀 をのぞく全てのアイテムが取り外される。
「随分、気前がいいな」
 ジェンナ・ユキ・タカネはリボルバーを構えながら淡々と言った。リンクしているせいで言葉遣いがいつもと違う。
「気前がいい? みくびっているの間違いだろう」
「挑発か?」
「事実だ。来い」
 ユキは地を蹴った。間合いに入り、オートマチックを撃つ。黒漆太刀でそれを弾くと海へと飛び退く。ユキはそれを追って間合いに入った。すぐに黒漆太刀の一撃がユキを襲う。ユキは寸ででそれをかわすと一発撃った。だが、それはあっさりと避けられる。わずかに体勢を崩した途端、とんでもないスピードで斬りつけられる。慌てて身を引いたが、剣先はローブに引っかかり、引き裂いた。それにより剣のスピードが落ちる。チャンスとばかりに オートマチックを撃つが。
「!」
 弾を弾かれたばかりかオートマチックまで宙を飛ぶ。ユキは後ろへ高くジャンプするとオートマチックをキャッチ。そのまま引き金を引いた。だが、それも避けられ、信じられないようなスピードで追いつかれる。刀が振りかぶられた。
「狙いが正確なのが仇になっているぞ」
「だろうな」
 からくもそれを避け、オートマチックから手を離す。そして―
「!」
 猫騙しで一瞬だけ動きを止める。一瞬遅れて来た剣撃をかわし、その剣を踏みつけ固定。その時既に銃を構えている。だが、後退したのはユキ。踏みつけられた剣を軸にした凄まじい蹴りがユキの腕を直撃した。
「まだ勝負はこれから、だろう?」
 相手はにやりと笑った。ユキは改めて悟る。

 本気で やらなきゃ殺される。

●帰ったら始末書かな
 時遡って戦闘前。
「1つ聞いていい?」
 青い空。白い雲。輝く太陽。そしてきらめく海。これぞ地上の楽園たる景色の中、クリーム色のビキニを着たレター・インレットがパートナーのユキに問う。
「なんでリンクした袖乃とほさぬがいるの」
 レターの目の前には狼の耳と尻尾を生やした妙齢の女性がビキニアーマーを着て立っている。
「サプライズ。嫌だった?」
「ううん。実は友達呼んでましたーってサプライズ、嫌いじゃないわ。大歓迎よ。でも、どうしてリンクして武装までしてるのかは気になるの」
「特訓しようと思って」
「何の?」
「水上戦」
「はい!?」
「言っておかなかったのか」
 妙齢の女性―朽名袖乃が呆れ顔 で言う。
「駄々こねると思って」
「正当な抗議でしょーが!」
 レターが叫ぶ。
「何が悲しくて休暇中に白刃振り回さなきゃならないのよ」
「前に水上戦でてこずったから」
「何ヶ月前の話よ。この負けず嫌い」
 レターは脱力した。シュミレーションだってあるのに実戦でやろうとするのがユキらしい。
「やるのか。やらないのか」
 袖乃が急かす。レターは溜息をつくと顔を上げた。その時は既に不敵な笑みを浮かべている。
「やりますよ。じゃなきゃ、遊べそうもないしね!」
 そして最初に戻る。
 
 1時間後、騒音と高波でHOPEに通報されることを4人は知る由もない。

解説

●目的
・リンカー同士の戦い(特訓)を止める。
 *近隣の迷惑に なっているため(現地の長老に話を通したのだが、長老が住民に伝達を忘れた)

●場所
・アフリカ連邦領の島。平均気温27℃。海が綺麗で浅瀬でも魚が取れる(場所によってはつかみ取りも可能)環境保全のため、車より馬車や牛車が使われている。
 戦いは海上。

●登場人物
 ジェンナ・ユキ・タカネ
・休暇中のロンドン警視庁刑事。リンカー。水上戦の特訓の為、朽名に稽古をつけてもらう。武器はリボルバーとオートマチック、竜の小太刀。ぼろぼろのローブにゴーグル姿でぱっと見誰かはわからない。
 かなり本気で戦っている為、周りを見る余裕はない。片腕は打ち身、全身に軽い切り傷。

 レター・インレット
・休暇中のロンドン警視庁刑事。英雄でパートナーはユキ。何も知らされずに現地入り。早く終わらせて遊びたい為、ユキに協力的。

 朽名 袖乃(くちな そでの)
・95歳、女性。リンカーで剣士。ユキとレターの友人。水上戦の特訓に付き合うため、現地入り。ユキたちと違い余裕があるものの、止まる気はない。武器は黒漆太刀。リンクするとビキニアーマーを着た狼の耳と尻尾が生えた妙齢の女性の姿になる。現在無傷。

 ほさぬ
・朽名の英雄。浴衣を着た250cmの大柄な人狼少女。どことなく愛嬌のある顔立ちで喜怒哀楽がはっきりしている。よく食べ、よく遊ぶ子。魚捕りが上手。ユキとレターの友人。

●戦いの後(どちらかと言えばこっちがメイン)
・ユキたちが海近くのコテージで料理を振舞う予定。その間、自由行動可(海遊びや散策など。小一時間ぐらい馬車に揺られれば市場にも行ける。海の幸、山の幸、南洋フルーツ盛りだくさん。お洒落な服や小物、お菓子も売っている)
 お詫びも兼ねて現地の人たちも呼ぶ。

リプレイ

●ほうれんそうは食べられない
「話聞いたけど、被害はそこまですごくないよ。でも、突然でびっくりして通報したんだってー」
 まず情報を精査しようと住民へ話を聞きに行った鴉守 暁(aa0306)とキャス・ライジングサン(aa0306hero001)。長老宅へ向かいながらエージェントたちへ連絡を入れる。
「長老、マダ帰って来ナイネ?」
「まだー」
 長老宅で外出中の長老を待っている百薬(aa0843hero001)が言えば隣にいる餅 望月(aa0843)が「こんな時に」とこぼす。
「もうすぐ、そっちに着くよー」
「長老ヨリ早く着キソウネ」
 予想当たって2人は長老より早く長老宅入り。タッチの差で長老が戻ってきた。
「海で戦っているリンカーの件で通報がありました」
 各々挨拶を済ませた後、皆月 若葉(aa0778)が言う。
「通報? あそこで暴れたとて大したことにはなるまいて」
「ンー? 長老、リンカーの事知ってるネ?」
 キャスが聞く。
「ああ。海の上で戦わせて欲しいから話を通しておいてくれと異国のひとが。名前は袖乃と……忘れた」
 これはまさか。
「長老、リンカーの話皆に伝えたのかな?」
 暁が言う。
「あ」
「ハーイ、皆集まるネー長老の話ヨー」
 キャスは立ち上がると外へ出て呼びかけ。長老も立ち上がり「皆落ち着け」なんて言いながら外へ。
「伝え……わすれ?んと……戦ってる 人、悪くないの?」
 ピピ・ストレッロ(aa0778hero002 )は首を傾げた。
「うん、できれば継続させてあげたいね」
 若葉は苦笑するとその場にいないエージェントたちに現状を無線で伝える。
「ほうれんそうは重要だな」
 柳生 正義(aa4856)がため息をついた。
「何いきなり野菜の話をしているんです? 時差ボケならぬ季節ボケですか?」
 ボリス アンダーヒル(aa4856hero001)が真顔で言う。
「ちがう、報・連・相だ!」
 報告・連絡・相談。
「分かってるに決まってるじゃないですか」
「こいつ……!」
「まあお爺ちゃんだし人間忘れることもあるよね。許すべき。キャスー、現場確認しよー」
 暁は外へ。
「ちゃんと筋を通して模擬線をしている相手に対してあまりけちをつけたくはない」
 ボリスへの突っ込みを諦め正義が言う。
「ん、ワタシに、良い考えがある……」
 戸を開け放ちエミル・ハイドレンジア(aa0425)が登場。隣には(また始まったか)という顔のギール・ガングリフ(aa0425hero001)
「ん、逆に考えるんだ、別に止めなくても、いいさ、と……」
「また突拍子もない事を……」
 ギールの言葉は無視してエージェントたちを手招き。カクカクシカジカマルマルウマウマ。

●カクカクシカジカマルマルウマウマ
 時遡り、"カクカクシカジカマルマルウマウマ"の少し前、戦場近くの海に2つの人影。
「おおやってるやってる……激しいですねぇ、苦情が出るのもわかるわこりゃ」
「うーん、事前に申請はしてあったらしいけれど、それにしたってこれほどとはね……実力者リンカーの訓練ってこんなものなのかしら?」
 亜(aa4690hero001)とフレイミィ・アリオス(aa4690)だ。
「まあどっちにしろ近接戦闘ほっとんど考えてない私達にとっては縁遠い世界なんじゃないかと思いますねー」
「確かにあんな動きはできそうにないわ。見ている分には面白いけれどね」
 感心しているのかいないのか亜の感想に淡々と返すフレイミィ。
「どもー。あー、思い出した。袖乃さんって朽名袖乃さんかー、止めるの無理だわ。近づきゃ斬られる」
 様子を見に来た暁とキャスが言う。
「知っているの?」
「前に依頼された事件で会ったよー。剣の師匠さん」
「リンク前と全然違ウネ」
 95歳のおばあちゃんから狼耳の妙齢女性だ。
「いっそ見世物にしようぜー」
「見世物?」
 亜の問いに暁が答える前に無線が入る。ギールだ。
「そちらの様子はどうだ?」
「被害は出てないけど、止めるの無理って話してたとこー」
「主から提案だ。この特訓による迷惑案件をエンターテイメントとして祭り騒ぎにすり替え乗り切るのはどうか、と」
 ”カクカクシカジカマルマルウマウマ”の中身である。
「こっちも似たよう なこと考えてたとこー」
 暁が言えばキャスも賛同する。
「お祭りイイネー」
「いいんじゃないですか? 被害は出ているのだし、何もしないわけにはいかないわ」
 フレイミィが言う。
「じゃあ、役割分担しよう」

 南国お祭り実行委員会発足である。

●実行委員活動中
「長老さん戻ってきた」
 まずは長老に話を通すことが先決だ。担当は若葉とピピ。
「話は通したが止めて欲しいという声が大きい。通報したのがまた大袈裟な奴でな。すぐ大騒ぎする。それがあちこち伝染しておる。全く最近の若いもんはすぐ騒ぐ」
 長老は渋い顔で言った。 
「周知されていれば本来問題なかった訳……ですよね?」
 若葉の言葉などどこ吹く風。しれっと言う。
「なんにしろ止めねばなるまいて」
「無理に止めたら危ないよ。リンカーさんたち戦っていいって言われて戦ってるんだし」
 ピピが言う。若葉は再び口を開いた。
「提案があります」

「キャスー仕事だー」
「アイヨー」
 暁とキャスの担当は困っている住民達の手伝い。こちらができるところの騒ぎのお詫びともいう。
「浅瀬の魚と果物を取ってくれる?」
 通報した住民の奥さんが言う。
「私魚取るー」
「こっちの浅瀬にいる魚を頼むわね」
「りょーかい」
 そろーり籠を魚の下に潜らせてとりゃーと上げる。んー、3匹かあ。難しいねー。
「ワタシはフルーツ取ルヨ」
 キャスが言う。
「じゃあ、これ」
 娘さんが籠とナイフを渡す。
「あ、キャス? 虫除け塗ってる?」
 暁が呼びかける。熱帯だから薄着である。虫刺されは怖い。
「バッチリヨースキンケア大事ネー」
 ひょいひょい木に登る。
「大キナ実ネー。ナンテ実デスカー?」
「甘い実」
「オイシソウナ名前ネー。コッチは?」
「赤い実」
 ツッコミ不在。
(現地住民になじんでおる。やっぱ露出か。や、キャス以上に住民露出してるけど)
 隠している面積が水着と変わらない。
「そう言えば聞いた。長老が伝え忘れたんだって?」
 娘さんがキャスに言う。
「なんかごめんね」
「良いのイイノー」
「でも」
 今度は奥さんが言う。暁は首を振った。
「HOPEの落ち度でもあるからねー。あ! 取れた。5匹」
「OK出ました」
 若葉から通信が入ったのはそんな最中だった。

「了解」
 長老の説得に成功したら次は会場設営や地域住民への周知・説明だ。担当は亜とフレイミィ。
「長老以下に地域組合のような者の長がいるなら、その人を説得して一般住民への周知を依頼したいのだけれど」
「長老に聞きます」
 若葉が答える。
「お願いします。さて、いつまでもこうしているわけにもいかないし、お仕事にかかりましょうか」 
 2人はその場を後に人里へ向かう。若葉教えてくれた話をすべき人物を訪ね、誠意を以て、謝罪とお願いの気持ちを第一に話をする。
「いいよいいよ」
「祭りはいつでもいいもんだ」
「そりゃ、盛大にやらなきゃな」
 最初はかたくなだったが、長老の名前と2人の気持が通じたのか皆最後は人懐っこく笑って了承した。
「役場に話通しときな。出張所あっから」
「役に立たねえだろうが連絡しとく」
「ありがとうございます」
 2人は役場へ。
「どうもー連絡って来てます? 色々お願いしたくて参りました」
「あー」
 職員が眠たげに言う。
「椅子や調理道具、食材等貸し出して貰えるか、貰えるならどこに頼めばいいかうかがいたいのですが」
「そういう取りまとめはしてないんです。椅子はありますからお貸ししますよ。その他はちょっとねー」
 これは自分で手配に回った方がいい。さっきのひとたちにもう一度話をしよう。他のエージェントたちにも協力を頼んで……。
「ではその件はこちらでなんとかしてみます。椅子の貸し出しですが」

「おうどんの、ためなら、えんやこらー♪」
 模擬戦が見える海付近。歌っているのは突貫波除け設置担当のエミル(共鳴中)。リンカーパワーを駆使し、ビニル・木材・土壁etc……使えるものは何でも使って作業を進める。
「観客席はどこがいいかな」
 望月と百薬は観客席担当。
「小高い場所とかあれば高波対策しやすそうだね」
 模擬戦の様子を見に向かっている若葉が無線から言う。
「今、色々見繕ってる」
 見張り台、コテージ前の桟橋、釣り場などに目星をつけ精査中。
「お疲れ様!」
 若葉とピピが到着。
「ここなんかどうかな」
「うん、いいと思う」
「じゃあ、ここに決定!」
 役所から借りたイスやベンチを設置したりビニールシートを敷いたり。正義とボリスはエミルたちと望月たちとの間で、ベンチやイスの設置を手伝ったかと思えば、エミルたちのところに木材を運んだりと力仕事。説得などには向かないだろうと考え、準備に回ったのである。ボリスには「女性でも自分から力仕事を手伝っているのなら余計な手出しは失礼」などと言っているが実際は女性に負担をかけないように動いている。
「正義はもう少しアピールしてもいいと思いますよ?」
「何をだ」
「女性に興味があって当たり前な年齢でしょうに」
「興味がないとは言わん。だがそんな一時の感情に流されてやる気もない」
『できた!』
 波除け・客席完成だ。
「たくさん手伝ってくれてありがとう」
 望月たちが正義に言う。アピールしなくたって見ているひとは見ているのである。
「買出しに行ってくる」
「行ってらっしゃい。おーい! そこだと危ないよー」
 百薬が海辺にいる人々に呼びかける。
「地元の方ですね、危ないからちょっと離れて観戦しましょう。この辺なら安全ですよ」
 望月は海辺近くまでやってきて住民達を誘導。
「あれが共鳴状態ね。ああなってもちゃんと話せばわかるから安心してね。勝手にやったりはしないからね」
 見学者相手に解説を始める。それを見ながらギールがエミル言う。
「して、我等は何をするのだ」
「ん、宣伝、かな……? テキトウな協賛者集める」
 お祭り騒ぎには現地民の協力が必須。

 さて、市場では正義とボリスが無線で頼まれたものを買出し中。
「どこへ行く」
 ふらっと遊びに行こうとするボリスの耳を引っ張ってぐいぐい進む。
「まったく、お前はこういう場面でも」
「いいじゃないですか。すでにリンカーが必要な場面ではありません」
「人手が必要な場面ではあるぞ! これを2つ」
「毎度あり」
「海のほうで何かイベントをやっているらしい」
 品物を受け取りつつ、義理堅く最低限の宣伝はする。
「無駄に口が回るお前がやればいいだろうにな」
 店を後にしてため息をつく正義にボリスは首を振る。
「いえいえ、騎士足るもの主の顔を立てませんと」
「始めて聞いたぞ。俺は主だったのか?」
「いえ、全然。あ」
「どうした?」
 見ればビラを配布するエミルとギール。
「ん、よろしく、よろしく」
「いつ作ったんだ。あれ」
 正義は呆然と呟いた。

●遊べ楽しめ腹をすかせろ
 ユキと袖乃は止まることなく戦っている。
「!」
 情報が行き届かなかったのかユキと袖乃のすぐそばに漁船が通る。タイミング悪くユキがジャンプしたため高波が漁船へと迫った。若葉とピピは素早くリンク。波の前に回り込み、高波と逆方向からALBで波を発生させ相殺。タイミングを見計らい、白鷺を2人の間に投擲する。すぐに間合いを詰めようとしたせいかユキはバランスを崩して横転するもすぐに立ち上がった
「とりあえず、一時中断だ」
 袖乃の言葉で3人は海を後にした。

「そういうことか」
 若葉の説明を聞き、袖乃は苦笑した。
「助かった。あのままでは漁船は転覆していた」
 若葉に手当てしてもらいながらユキが言う。
「皆月さんに助けられるのは3度目だな」
 名乗っただろうかと不思議に思っているとユキが「タカネだ」と微笑んだ。
「ジェンナさん!? でも声」
「意識して変えているからな」
「知り合いか」
「以前事件で」
 袖乃の問いにユキが言う。
「模擬戦続けますか? NGなら俺たちで模擬戦します」
 若葉は手当てを終えて言った。ユキは迷う。目立つのを気にしているのだ。
「今更。それにお前の場合顔どころか性別だってどうせばれておらん。目立つ内に入らんわ」
 袖乃が言う。
「つかみかけてきたんだろう? 水上戦」
「行こう」
 ユキが立つ。
「模擬戦再開です」
 若葉の通信を受けて望月の解説が再開。
「2人とも回復したからここからがすごいよ。気をつけて」
 運営準備を終えた水着姿のフレイミィと亜が空砲を撃つ。それを合図にユキと袖乃が地を蹴った。
「あら、思いつきだったけれど結構それっぽいかしら!」
「たーまやー……てのはまた違うけども、まあとにかく始まり始まりー」

 袖乃へとユキが銃を撃つ。よける袖乃。
「銃スタイルと刀剣スタイル、単純に射程のある方が有利でもないのよ」
 望月が解説。袖乃がユキへと間合いを詰め、刀を振り下ろす。速い。ユキは自ら距離を詰め刀の柄の所を銃で受け止め足払いをかける。素早く跳んでしてそれかわす袖乃。ユキは刀が銃から離れた瞬間、引き金を引く。
「動きがスムーズになってるねー。銃の方」
 住民の手伝いを終えた暁とキャスが会場入り。
「きっとコツ掴ンダヨー」
 キャスが亜の隣に座って言う。
「しかし朽名さんがおしているのに変わりないですね」
「そうね……!??」
 フレイミィが固まる。無理もない。戦場近くに出現したのは。
「ん、ワタシはサメ、ワタシはサメ……」
 サメの着ぐるみを着たエミル(共鳴中)。飛ぶわ(比喩じゃなく)跳ねるわ、潜るわ(これも比喩じゃなく)果ては輪くぐり等の曲芸したりと全力移動でパフォーマンス。サメが空を飛ぶのは当たり前、いいね?
「なんだこれは」
「シュールですね」
 買出しを終え戻ってきた正義が唖然とする。その横でボリスは真顔。
「えーっと。あれも能力者ね」
 望月もどう解説していいわからない。
「あ、なかなかの大技が出たよ、ぬれる程度だけど、波が来るから気をつけて」
 望月が言うと同時に観客席へ高波がせまる。エミルはファルシャを構えた。
「あの武器で波を裂いて波を小さくしようとしてると思う」
 望月が解説するが。
「余計にひどくなるんじゃないですか?」
 ボリスの言う通りファルシャの一撃は高波の規模を大きくしてユキと袖乃を飲み込んだ。
「ん、必殺……、モーゼの奇跡……」
 ま、エミルもわかっているというかパフォーマンス目的でやったのだが。波が引いた時、2人は変わらず戦っていた。タフである。跳んだり跳ねたりしつつエミルは特訓に乱入。
「よい子は真似しちゃダメだよ」
 百薬が言う。悪い子も無理である。袖乃が軽くジャンプ。エミルを跳び越えユキへと斬りかかる。ユキが銃を撃つ。袖乃の刀が飛んだ。エミルが起こした波が再び2人を飲み込む。波が引いたとき、ユキの手には竜の小太刀。袖乃は丸腰。ユキは既に袖乃へと間合いを詰めている。
「!」
 共鳴し銃を構えるフレイミィを暁が止めた。
「大丈夫」
 袖乃が体を僅かに揺らす。刃の軌道が変わった。袖乃は既にユキの懐へ入っている。袖乃の細い指がユキの喉をなぞる。ユキは目を見開いたが、ふっと力を抜くと刀を仕舞った。戦は終わりだ。
「手違いがあったようだが騒がせたことには変わりない」
 袖乃はリンクしたまま皆に呼びかけた。
「お詫びに料理を振舞う。その間祭りを楽しんでくれ」
 ユキが無言で頭を下げる。拍手の中、暁はHOPEへ連絡。依頼自体は解決。詳細は追って報告書で。

「無茶しましたね。気休め程度ですけど、手当するので見せてくださいな」
 フレイミィがユキに声をかけた。
「お願いします」
 ユキは満足そうに微笑んでいる。何か掴んだのだろう。
「模擬戦は成功のようですね。はいできました」
 傷は大したものではない。絆創膏と包帯で充分。
「ありがとうございます。では、楽しんでいってください。あそこまでしろとは言いませんが」
「天地ひれ伏せ、老若男女崇拝せよ! 神から与えられしこの抜群のプロポーション! 海で遊ばずしてなんとする!」
 これがその”あそこまで”である。クリーム色のビキニを着て叫ぶレターの隣で拍手するは袖乃の英雄ほさぬ。
「海だー!」
「やっほー」
 早速海に入る望月と百薬。
「んー、気持いい」
 浮き輪で海に浮かぶ暁。
「海キレイネー。お魚見エルヨー」
 隣でキャスが素もぐり。
「日焼け止めは?」
 フレイミィが亜に聞く。
「バッグに入っているはずですが」
 女性陣がわいいわいきゃあきゃあ言いながら海を満喫。浅瀬ではピピと若葉が魚採りに挑戦。
「お魚いっぱい! 捕まえられるかな?」
「つかみ取りできるって地元の人が言ってたよ」
「やってみる!」
 そうっと手を海に入れて―
「逃げられたー」
「俺が追い込むからもう1回やってみようよ」
「うん! あー、やっぱり難しい」
「あのね。あのね。こうやるのよ」
 ほさぬが来てお手本。
「手を海水で冷やすでしょ。魚が来るのを待って」
 ぱしっと魚を捕まえる。
「こことここ掴むと逃げられないの」
「わかった。手を冷やしてー。えい!」
「すごいじゃんピピ」
「上手上手」
「えへへ。よーし」
 ピピは腕まくりしてもう一度挑戦。

「おうどんー」
 いつの間に作っていたのか巨大な鍋を持ったギールとお玉を持ったエミル。
「今どこ?。うどん食べよ」
 祭りにはトラブルがつき物と会場巡回中の正義とボリスに無線で連絡。皆揃っていただきます。おうどん教にしておうどん狂のエミル監修のおうどんである(作ギール)が美味しくない訳がない。
「ん、今日は、せっかくなので、海鮮仕立て。うまうま」
「おいしー!」
「海鮮出汁がきいてる」
 舌鼓を打つエージェントたち。
「レターさんは?」
「呼ばれてコテージに戻った」
 若葉の問いに暁が答える。
「まだある?」
 ピピの言葉に若葉は目を見開く。
「まだ食べるの?」
「ジェンナたちの」
 ギールがお盆にうどんを載せてやる。
「ありがとう。行ってきまーす」
「走らないで!」
 若葉とともにジェンナたちの元へ。
「ジェンナー。うどんー」
「ありがとうございます」
 お盆を受け取るユキ。
「美味しそうねえ。誰が作ったんですか?」
 袖乃が言う。
「ギールさん」
「ってことは絶対美味しいわ。ではでは」
 レターが音頭をとってー
『いただきます』
「ん、美味しい」
「塩加減が絶妙」
「これ、手打ち麺ね。久々に食べました。おいしい」
「伝えておくね。僕達遊びに行ってくる」
「待ってください。もういい頃です」
 ユキは冷蔵庫を開けた。
「チョコレート・トライフルにするつもりでしたが、とけやすいので」
 ガトーショコラを取り出す。
「皆でどうぞ」

 ガトーショコラを持ってピピと若葉が帰ってきた。
「おおっ」
「早速食べましょ」
「いっただきまーす」 
 皆に配られる。
「お腹一杯」
 フレイミィが言う。
「うー、せっかく色々作ってくれてるのに入るかな」
 望月もお腹をさすっている。
「運動すれば大丈夫ヨー」
「ビーチバレーやろう!」
 饗宴までお腹をすかせておかないと。

●食べろ! 歌え! 踊れ!
「お待たせー」
 パーカッションが鳴り響く中、料理が運び込まれる。浜焼き等シンプルなものから海の幸山の幸をふんだんに使ったご馳走まで千差万別。ユキや袖乃が作っただけでなく、地元の人たちも料理を持ち寄ったのだ。
 模擬戦用の会場はダンスや音楽、歌のそれへ様変わり。パフォーマンスを行うは飛び入り参加の人々。
「念のため、これまた従魔で作ってるとかじゃないよね」
 望月が料理を見る。
「とれたてぴちぴちの焼きたてお魚だよ」
 百薬が早くも魚の浜焼きを豪快にかぶりつく。目を輝かせる望月。
「安全な浜焼き、こういうのを待ってたのよ」
「果物もオイシー」
「あれもこれもみんなおいしい!」
 ピピが鳥肉を口に運ぶ。
「うん、ほんとだね」
 若葉も肯く。
「町の人もみんな幸せそうでボクもうれしいな♪」

 向かいのテーブルでは暁が書き物。
「何書いテルネ?」
「HOPEの報告書ー」
 経緯だけでなく被害はないし補填もしたし危険はないこと。これであの4人の処分についていくらか軽くなるだろう。恩は売れる時に売っておくのだ。
「ワオ、ビジネスライク」
 ユキとレターはロンドン警視庁の刑事である。そちらにもHOPEから連絡行くだろうか。
「まあ、行くでしょうね」
 レターに聞けば平然と肯く。
「担当が真っ青だろうなー御愁傷様ー」
「いつものことよん」

「ユキー、踊ろ」
 ギールとエミルから先程食べたうどんのレシピを聞きいているユキを捕まえてほさぬが舞台を指す。
「いいわよ。ちょっと待って」
「一緒に踊って欲しい」
「!?」
 ギールに迫るくまの着ぐるみ(リンクしたユキとレター)この姿なら正体はバレないし、ギールがいれば目立たない(多分)
「いいよー」
 エミルが承諾。人狼少女に悪魔に女の子にくまの着ぐるみ。ピピも加わって、舞台上はカオス。
「妙にうまいあのクマ誰だろう」
 若葉が首を傾げる。一方キャスは酒瓶片手に周りの住民とダンス。
「キャスー飲み過ぎるなよー」
「飲みスギはコノ人達ネ」
 キャスが潰した人々死屍累々。
「潰れる方が悪イヨー。マイペースに楽しむネー」
「マイペースなら仕方ないかー」
 酒は楽しくほどほどに。
 
「混ざって遊べばいいでしょうに。それが許される年齢だと思いますよ?」
 こちらは会場巡回する正義とボリス。
「いや構わん。皆が無駄なトラブルなく楽しい思い出で終わるならそれで満足だ」
「お堅いですねぇ」
「おーい」
 望月と百薬が駆け寄ってジュースを渡す。
「はいこれ」
 今度は亜とフレイミィ。魚のスパイシーフライだ。
「これどうぞ」
 若葉とピピからマンゴー。
「主からだ」
「オイシイデスヨー」
「これも」
「お疲れ様。どうぞ」
 エミルとギール、暁にキャス、ほさぬや袖乃、レター、ユキ。その他地元の人々。祭りに引っ張り込んだりせず、正義たちが近くに来ると何か渡したり労ったり。
「楽しい思い出で終わりそうではありますね」
「ああ、そうだな」 
 正義は頷いた。

 祭りはエミルが「ん、片付ける、までが、お遊び……。皆の浜辺、マナーを守って……きれーに」と言うまで続いた。ちなみに袖乃とほさぬはお咎めなし。刑事2人は上席からの注意で済んだ。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 死を否定する者
    エミル・ハイドレンジアaa0425
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778

重体一覧

参加者

  • ようへいだもの
    鴉守 暁aa0306
    人間|14才|女性|命中
  • 無音の撹乱者
    キャス・ライジングサンaa0306hero001
    英雄|20才|女性|ジャ
  • 死を否定する者
    エミル・ハイドレンジアaa0425
    人間|10才|女性|攻撃
  • 殿軍の雄
    ギール・ガングリフaa0425hero001
    英雄|48才|男性|ドレ
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 大切がいっぱい
    ピピ・ストレッロaa0778hero002
    英雄|10才|?|バト
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 高潔の狙撃手
    フレイミィ・アリオスaa4690
    獣人|12才|女性|命中
  • 宵闇からの援護者
    aa4690hero001
    英雄|12才|女性|ジャ
  • エージェント
    柳生 正義aa4856
    人間|18才|男性|攻撃
  • エージェント
    ボリス アンダーヒルaa4856hero001
    英雄|22才|男性|ドレ
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