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【甘想2】連動シナリオ

【甘想2】ショコラの祭典へご招待!

時鳥

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2017/02/20 20:41

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-

掲示板

オープニング

●ショコラの祭典
 フランス、パリ発のショコラの祭典。世界中の最新のチョコレートが集い、各国パティシエのデモンストレーションなど、様々な企画が盛りだくさんのイベントだ。
 バレンタインに相応しいハート型のカラフルなチョコレートやベルガモットの香りと気品を漂わせるビターなトリュフチョコレート。
 宝石のような艶やかな輝きを放つチョコレートボックス、ウィスキーの入った大人向けのドーム型チョコレート。
 見た目も味も千差万別。数々の風変わりな海外のチョコレートや日本企業がバレンタインデーの為に趣向を凝らしたチョコレートなど見て回るだけでも心躍る。
 現在行われている日本の東京会場には一部カフェスペースがあり、様々なパティシエ特製ショコラスイーツを味わうことが出来る。
 スパイシーホットチョコレート、有名チョコレート企業のタルトパフェ、チョコレートソフトクリーム、オーストリアを代表するザッハトルテ、などなどなど、メニューも豊富だ。
 バレンタイン間近というのも手伝って日々盛況の毎日だ。
 その祭典にH.O.P.E.でお料理教室の講師として時たま顔を出すショコラールもデモンストレーターの一人として参加していた。
 カフェではハート型のチョコレートムースケーキにグラサージショコラを掛け、黒く光り輝く「クール・ショコラ・ムース」というスイーツを提供している。
 息抜き企画部にそんな彼から祭典への招待状が数枚送られてきた。
「ショコラの祭典、チョコレートがいっぱいのあの!!!」
「あれ、毎年混んでて中々入れないんですよねぇ」
「是非、遊びに来てくサーイネ! ですか。枚数は多くはないですし、いつも通り貼り紙をしましょうかね」
「引率は是非私が!!!」
 一人チケットに大興奮の女性職員がテーブルをダンっと叩きながら主張する。
 引率が必要かどうかは分からないが、チョコレートのことで分からないことを彼女に聞けば色々と説明してくれるだろう。

●貼り紙
 ショコラことチョコレートの祭典へ足を運んでみませんか?
 世界中から様々なチョコレートが集い、各国パティシエのデモンストレーションも行われています!
 混雑しているイベントではありますが、集まっているチョコレートの種類は100を超えています。
 バレンタインもすぐそこ!
 珍しいチョコレートであの人の心を掴めるかも!?

 チョコレートに詳しくない。
 そういう会場は初めてでどうしたらいいか分からない。
 と言う方も大丈夫!
 息抜き企画部特性パンフレットでおすすめ商品も丸分かりです!
 当日は企画部職員も同行いたしますので、分からない事があれば聞いて頂くことも可能です。

 また、今回は招待者のショコラール氏より、カフェスペースにて「クール・ショコラ・ムース」を無料で頂けるチケットがついています。
 気になった方は息抜き企画部までどうぞお越しください!

解説

●目的
 チョコレートを食べたり買ったり楽しみましょう!

●場所
 日本の東京、某ビル、7階建て。
 5階と6階と7階の三フロアを貸し切ってのイベント企画。
 5階と6階が販売フロア、7階に実演とカフェスペースが設置されている。
 カフェスペースは窓が大きく、快晴の空と、東京の街を見渡せる。
 カフェスペースでは様々なメニューの他、下の階で買ったチョコレートを食べることも可能。
 カフェスペースにてショコラールが作る「クール・ショコラ・ムース」を無料で食べれる特典がついています。
※OPにないチョコスイーツでもメニューにあるとして注文して構いません。ドリンクはチョコ関連以外にもコーヒーや紅茶、オレンジジュースなど定番のものもあります。

●チョコレート
 有名企業の定番のものから、バレンタインに合わせたハート型や可愛らしい動物を模したもの、宝石のような色合い形のチョコなど様々なものがあります。
 各国から集められただけあり、お洒落で高価なものから、安価で綺麗なものやかわいらしいものもたくさんあります。
 チョコレート以外にもクッキーなどの焼き菓子も一緒に売っている店も存在します。
※OPに存在しない形や味、色のチョコレートを買って頂いても構いません。
※実在する商品名などが書かれていた場合はぼやかせてもらいます。
※普通の範囲内の買い物であれば通貨は減りません。

リプレイ


 日本の東京、某ビル。
「さて、来ましたよショコラの祭典!!」
 まだ開場前。シャロ(aa3881hero001)は大はしゃぎでChris McLain(aa3881)ことクリスの手を引いて列に並んだ。
「なぁ、チョコレートを買いに来ただけならわざわざ俺を連れてくる必要は無いじゃないのか?」
「何を言っているんですかクリスさん、クリスさんにも大々的に手伝ってもらうですよぉ!」
 シャロは取り出したA4サイズのメモをクリスへと手渡す。
「クリスさんはこの紙に書いてあるルートで、リストに載っているショコラを全部買って欲しいのですぅ」
「ああ、分かっ………!? これ……全部か?」
 クリスはメモの量に唖然とした表情を浮かべる。メモにはびっしりと店の名前とチョコレートの品名が記されていた。
「はい! 全店舗の全商品をコンプリートするのですぅ! 二人でやれば大丈夫なのです!」
「し、正気かシャロ!? 頭を冷やして考え直せ! 金も荷物も……」
 普段は少し気弱なシャロだったが、食べ物が絡むとこうも違うのか。
「頭を冷やすのはクリスさんのなのです! あっ、開きましたよ、ほら走るのですっ!」
「あっおい! ……Damn it!」
 開くと共に止める間もなく駆け出すシャロ。クリスは額を押さえながら渡されたメモを見下ろした。

「チョコレートの祭典だって!楽しみだよね♪」
 と興奮しつつ次に祭典へと足を運んできたのはアンジェリカ・カノーヴァ(aa0121)と八十島 文菜(aa0121hero002)だった。
「あ、今回はあくまでマルコさんへの義理チョコを買いに行くだけだから。本当だよ」
「そうどすか」
 アンジェリカの言葉に
(別にいい訳する必要もあらしませんのに)
 と心の中で呟く文菜。
 二人は連れ立って会場の中へと進んでいく。
 一方で、会場ビル前で待ち合わせている人影が二つ。
「しかし何だぁ、女っつーのはホント、甘いモンが好きだよな」
「………」
 青槻 火伏静(aa3532hero001)が無明 威月(aa3532)に話しかけている。
「……なにィ? 甘いモンは《特別》だぁ? どうでも良いが食いすぎて太んなよ」
「………」
「おう、照れると無表情決め込む癖やめろや」
 威月は喋らないが火伏静には彼女の意思が分かるようだった。
「さて、お仲間が来たぜ」
 二人を目指して大門寺 杏奈(aa4314)とレミ=ウィンズ(aa4314hero002)の姿を認める火伏静。
「お二人ともごきげんよう」
「威月さん、火伏静さん、お待たせしました。仁菜ちゃんはまだですか?」
 杏奈とレミが二人に挨拶をしてから待ち合わせをしているもう一組の姿がまだないことに気が付き、杏奈が首を傾ける。
「おまたせしましたー!」
「ごめん待ったー!?」
 そこへぱたぱたと駆けてくる藤咲 仁菜(aa3237)とリオン クロフォード(aa3237hero001)。
「リオン、この服似合ってる? 変じゃない?」
「大丈夫! ニーナは何を着ても可愛い!」
「もー! 全然参考にならない!」
 と、リンカーになってから、友達と出掛けるのが初めてなので凄く嬉しい仁菜が迷っていたりしたため、少しばかり遅れてしまったのだ。
 さて、待ち合わせメンバー6人が揃った。同じ小隊【暁】の仲間であり、能力者同士は歳も近く緊張せずに済む。
「さあ、始めよう――」
「ふふ……スイーツを目の前にした杏奈は、誰にも止められないのですわ!!」
「この時のためにお金を貯めてきた!!」
 びしっとレミと杏奈が言い切った。
 杏奈はスイーツが大好きな超甘党。甘いもの以外は食が進まない、という徹底ぶりだ。そんな彼女にとってこのイベントは正しく天国。
「若ェので女子会楽しんでこい」
 火伏静が威月の背中を叩いた。
 六人は連れ立って早速混雑するビルの中へ入って行った。

 わいわいと盛況で人がごった返している販売フロア。
「すごい人だな」
「そうだね。なんたって、バレンタインデーが近いからね」
 並んで歩くニクノイーサ(aa0476hero001)と大宮 朝霞(aa0476)の二人。
「ほぅ。そういえばきいたことがあるな。最近やたらとCMで目にする」
「えっと……普段の感謝を込めて、チョコレートを贈る日なんだよ」
 朝霞の話に成程と頷くニクノイーサ。ただ朝霞は敢えて的外れではないが少し一般的な認識とは違う説明をしていた。
「なるほど。それでこの混雑なのだな」
「あ、ちょっと待っててね」
 人混みを見つめるニクノイーサをその場に残し、そそくさとチョコを買いに走る朝霞。
 今回は朝霞がニクノイーサを誘い、彼が快諾してきたわけだが、実は朝霞には本当の目的があった。ニクノイーサはまだ気が付いていない。
 朝霞は目的のチョコを買い終わるとニクノイーサと共に七階へと向かった。

「たまには一緒にどこかに行きましょう」
 とベドウィル(aa4592hero001)に誘われ、今日は学校も休みだし、とついてきた龍堂 直弥(aa4592)。
 直弥は甘いものは嫌いではないが、バレンタインチョコには興味がない。
「よく分かりませんが甘いものがたくさんなのは良い事です」
 ベドウィルの方はそう言って詳しくないなりに場の空気を楽しんでいるようだった。
 そして、直弥と同じように英雄に連れられてイベント会場へ足を運んだのは夜城 黒塚(aa4625)だ。
 バレンタインの下見だとか何とか言うエクトル(aa4625hero001)と共に会場を並んで歩く。
「……まあ、俺も甘いものは嫌いじゃねぇしな」
 と言うが、寧ろ黒塚は甘いものが大好きだった。
 そんな黒塚の姿を直弥が見つける。一瞬少し嫌そうな顔をして視線を逸らすも、続いて気が付いたベドウィルが走り寄って行ってしまった。
 直弥は黒塚に対し、見た目ガラ悪いし幼馴染にちょっかいかけるし、あまり好きではない、が嫌いというほどでもない。と思い警戒している。
 エクトルが嬉しそうに駆け寄ってきたベドウィルに飛びつく。エクトルはベドウィルのこちらで出来た小さな友達だった。
「ナオヤの友達の知り合い、だったかな? 友達の友達は友達ですよね、仲良くしましょう!」
 エクトルと一緒に居た黒塚にベドウィルは笑顔を向ける。あぁ、と無愛想に答える黒塚だが嫌がっているわけではなさそうだ。
 実はエクトルと黒塚が行きたい場所が分かれている、と話すとベドウィルがエクトルの手を引いた。
「じゃあ二手に分かりましょうか」
 と、提案。
「パフェに、フォンダンショコラに、オランジェットもすき♪ おいしーのたっくさん食べようね! ベディお兄ちゃん♪」
「……食い過ぎて太っても知らねえぞ……って、英雄は関係ねぇか」
 エクトルがすぐに賛同を示し、黒塚もため息交じりにツッコミを入れるものの止める気配はないので、そのまま二人手を繋ぎ和気藹々とカフェへ向かった。
 直弥はベドウィルに置いて行かれて居心地悪そうに黒塚を見遣る。
 チョコの買い出しだな、と思いながら黒塚は視線に気が付き直弥を見た。
「龍堂、だっけ、お前どうすんだ?」
「だって向こう、一緒にいると思ってるでしょう」
 問いかけに直弥は警戒を解かないまま答えた。
「だから別にいいですよ、ついて行くくらい」
 不思議な空気で黒塚が黙ったままなので直弥はそう付け加える。黒塚は「そうか」と答えて直弥を少しばかり気にしながらチョコを選び始めた。

「おお、チョコレートが沢山じゃが、人も多いのう」
「そうじゃな。然しアヴニールの居た世界でもバレンタインにチョコレートを渡したりするのじゃな」
 アヴニール(aa4966hero001)と アクチュエル(aa4966)も会場に足を運んでいた。まるで双子のような彼女達は同じような口調で楽し気に話している。
「うむ。誰かに贈るのそうじゃが、我の家では皆でチョコレートのお菓子を食べたりしたのじゃ」
「では、行こうかのう」
 はぐれないようにアクチュエルの手を取るアヴニール。
 二人は連れ立って会場へと入る。
「アヴニールは誰かにチョコレートを渡した事はあるのかの?」
「勿論じゃ。我就きの執事とお父様には必ず贈っていたのじゃ」
 自分自身の生き映しであるアヴニール。しかし、似ていても異なる世界から訪れた彼女はアクチュエルと違うこともある。その話が、聞いてみたかった。
「家族以外には無いのかの?」
「うむ。そういうアクチュエルは如何なのかの? 好きなおのこでも居ったかの?」
「我は兄様に贈った事があるだけじゃのう」
 アヴニールからの問い返しにアクチュエルは素直に答える。
 二人とも何時か誰かに贈る日が来るか……。それはまだ分からない、先のお話。
 そんな風に各々が店を回っている中。
 一通りの買い物を終え、カフェスペースにやってきたリリィ(aa4924)とカノン(aa4924hero001)。
 購入したチョコとクール・ショコラ・ムースを食べる為だ。
「どう、リリィ。ショコラ・ムースのお味は」
「大人……な味、ですの。でもカノンねーさまのお歌のように、リリィの中に溶け込んでいく……」
 カノンの問いかけにまるで歌の歌詞のように感想を口にするリリィ。
「そんな感じですわ!」
「光栄ね、こんな素敵なスイーツがあたしの歌のようだなんて」
 嬉しそうに言うリリィの言葉にカノンは微笑みを浮かべた。
 二人は和やかにカフェスペースで時を過ごす。
 チョコのお供にカノンが珈琲を注文している最中、リリィが唐突に席を立った。
「あら、何処へ行くの?」
「あ、あの……その……さっき見たチョコレート達の中で買い忘れた物がありましたの」
 不思議そうに問いかけるカノンにリリィが焦りどもりながら答える。
「カノンねーさま、少しだけ、席を立つことをお許し下さると……」
「ええ、良いわ。好きなだけ好きなチョコレートを選んでらっしゃい。でも……迷子にならないように、ね」
 恐る恐るカノンの顔を見つめるリリィに、カノンはくすくすと笑いながら、優しく送り出した。


 販売フロアはまさに戦場だ。ましてや全店舗を回るとなれば混み入った中、駆け回らなければならない。
 手分けして各店舗を回るシャロとクリス。
 シャロは幻想蝶に買ったそばから収納している為、傍目にはそんなにたくさん買っているように見えないが、既に朝から10店舗は回っている。
「これくださいなのですぅ! よいしょよいしょ!」
 注文をして受け取ればすぐに幻想蝶の中へ。
 その繰り返しをしながらシャロはあっちこっちで買い物をしている。シャロに似合いそうなカワイイ動物の形のチョコや、大人っぽいシックなデザインのチョコレートなど、どんどんと買っていく。
 そんなシャロに負けず劣らず色々と店を回っているのは杏奈。
「これ全部ください。1種類ずつで」
「あ、杏奈ちゃん、そんなに買うの!?」
 杏奈が気に入ったチョコを指し示し購入する横で思わず驚いて声を上げる仁菜。
「もちろん! お金に糸目は付けないよ」
 ふふ、と普段クールな顔を可愛らしい少女のようにきらきらとさせて仁菜に応える杏奈に、仁菜はすごい、と言葉を失う。
(これも、とても美味しそうです)
 と、スマホを使いながら喋れない威月が隣のお店のチョコの話を振ると杏奈はすぐに隣へと目を光らせた。
「試食をどうぞ」
 店員が先に見ていたレミに新作の試食を手渡す。
「杏奈、これもなかなか上品な味わいですわよ」
「ん……これ?」
「はい。それでは……あーん」
「……みんなが見てる前で!? 恥ずかしいけど……あーん」
「お味はいかがでしょう?」
「……ほんとだ! 美味しい♪」
 レミが杏奈にあーんと食べさせる。恥じらいながらもスイーツの魔力には勝てない杏奈。美味しさに満面の笑顔を浮かべた。
 予算はかなり高額に設定してある。美味しいスイーツを味わえるのなら安いくらいだ、とは杏奈談。スイーツと言う大事なことのためには、財を犠牲にするということだ。
 値段を気にせず買う杏奈に対し仁菜は高いチョコは厳しいからとお手頃価格で美味しそうな物を選んでいた。
「仁菜ちゃん、このチョコ美味しいよ」
 と、杏奈も仁菜が買えそうな値段のウサギ型チョコをお勧めする。
 安くても美味しいもののチョイスもお手の物だ。スイーツへの情熱が杏奈を動かす。
(……コレは、可愛らしいですね)
 威月も杏奈が仁菜に勧めたチョコの感想をスマホで打ちながら伝える。
「威月さんはどんなチョコが好きなんですか?」
 お店を回りながら仁菜が威月に問いかける。生チョコやトリュフ、と答える威月。
 なら、これはどうでしょう? とフランス有名店に足を向けてみる仁菜。
 この店のトリュフチョコは有名であり、値段も手頃。甘すぎない優しい口解けが評判だ。
「リオンの分も買っとこうか? ほら、トリュフとか好きでしょ?」
「んー俺はニーナの手作りがいいなー」
「私が作るより、ここで買った方が美味しいよ?」
 有名だし、と勧めた仁菜だったがリオンの言葉に不思議そうに首を傾げる。
「でもニーナのがいい!」
「もう……しょうがないなぁ」
 はっきり言い切るリオンに仁菜は笑いながら頷いた。家族のような二人のやり取りはとても微笑ましい。
 ビターか甘さマシマシが好みの威月は次に日本神戸のお店に視線を向ける。
 どうぞ、と生チョコの試食が手渡される。
 ドンピシャだったのか威月の顔がいつになく輝いた。そして――
「……おい……ひぃ……」
 ボソッ、と喋らないはずの威月の口から言葉が零れた。
「……お、おい……威月……お前いま……喋ったか……!?」
「?」
 驚く火伏静。しかし当の威月はきょとん、としている。
 ショコラは無口をも動かすということか。
「威月さんは何かおすすめのチョコ、ありますか?」
 と、そんな威月に杏奈が声を掛ける。これ、と生チョコを示す威月。
「このチョコ可愛いですね。皆さんに渡すのにいいんじゃないでしょうか?」
 生チョコの次に正方形のチョコ板に花の形が書かれた一口サイズのチョコレートを見つけ仁菜が皆に声を掛ける。
 柚子が入っているらしい。
 そんな風に皆でわいわいとはしゃぎながら六人は買い物を続けた。
 同じように店を回っているアンジェリカと文菜。
「所でマルコはん、甘い物苦手なんやなかったどすか?」
「うん、だからあまり甘くないのを選ぶよ」
 首を傾げる文菜にアンジェリカは頷いて答える。
「あ!」
 アンジェリカが声を上げる。
 イタリア・トリノが生んだ名だたる世界のチョココンクールで金賞を受賞しているブランドや同じくトリノの老舗など、イタリア屈指のチョコメーカーが並んだエリアだった。
 イタリア出身のアンジェリカは思わず購入する。
(やっぱり故郷の味は外せないよね♪ まぁ孤児院に居た頃は滅多に食べられなかったけど)
 と、昔に思いを馳せるアンジェリカを見つめて文菜は小さく笑う。
「マルコはんに買うんやなかったんどすか?」
「これはほら、文菜さんへの友チョコだよ。イタリアの味を知って欲しいからね」
「それはおおきに」
 アンジェリカはの買ったチョコの中から様々な産地特有のカカオの風味が楽しめる六種類のチョコBOXを文菜に渡した。
「それにこのイタリア老舗の75%ダークチョコ。カカオニブも入ってるやつなんだけど、これならマルコさんも食べるよ、きっと」
「へぇ、色々あるんどすな」
 もう一人の英雄の為に、と買ったチョコの説明をするアンジェリカ。感心している文菜はアンジェリカとは別にいつの間にかウィスキーボンボンを買っていた。お酒好きのもう一人の英雄でもこれなら食べられるだろう。
 アンジェリカは日本の店舗に移動し抹茶チョコも買う。
 日本ぽいこれを孤児院の皆に贈ろうと思ってだ。
 買い物を済ませた二人はカフェスペースへと向かった。

 リリィがカフェから降りてきてうろうろとチョコレートを見て回る。
 大好きでたまらないカノンへの気持ちを届けたい。
 少しだけ驚いてくれたら嬉しい。そう思う。
 物色をしていると双子のような少女が二人、リリィの目を引いた。
 彼女達の会話が聞こえる。
「これが良いのう」
 少女の片割れ、アクチュエルが見つめる先はごく一般的なトリュフ。様々な味が楽しめるアソート。
 箱に趣向が凝らしてあり、中を開けるワクワク感が詰まって居る様にも見える。
「美味しそうじゃのう。紅茶とも相性が良さそうなのじゃ」
 自分の執事の淹れた世界一の紅茶を思い出しながらもう一人の少女の片割れアブニールは嬉しそうに笑う。
「そういうのもあるのですね」
 二人のとても楽しそうな会話に惹かれリリィは横から覗き込んで零した。
 少女たちは同時にリリィに振り返る。
「何かお探しかのう」
 どちらかと言えば活発な方のアブニールがリリィに声を掛けた。
 大好きな人へのチョコを探している、とリリィは答える。
 見た目的にも同い年くらいの二人にリリィは話しやすさを覚えた。
「では、我らと共に探してみるかのう?」
「はい! よろしくお願いしますわ」
 顔を見合わせてから今度はアクチュエルがリリィに何かの縁なのだから、と提案する。
 三人は連れ立って店を回って行く。
「おお、これは凄いのじゃ」
 アブニールが足を止めて目を輝かせた。
 綺麗な和風モチーフのチョコレートがその視線の先にある。
「綺麗ですわ」
「綺麗じゃのう。どれもそうじゃが、食べるのが勿体ないのじゃ」
 リリィもアクチュエルも頷く。そしてアクチュエルも気に入った様子でそのチョコを見つめた。
「そうじゃ、想い人はどのようなのが好きなのじゃ?」
 ふと、リリィの目的を思い出しアブニールが問いかける。
「カノンねーさま……ベルギーのチョコレートがお好きなのでしょうか」
 リリィは考えながらゆっくりと答えた。ならば、と今度はベルギーのお店が集うエリアへと三人は向かう。
「確か……これは買っていらっしゃらなかったハズ」
 ベルギーの有名店が並ぶ中でリリィが一瞬で目を奪われたのは、可憐な容器に収まった色々な色のハートのチョコレート。
 チョコレートの味もそれぞれ違う。
「カノンねーさま、喜んでくれるでしょうか……大好き、は、伝わりますでしょうか……」
 買ったチョコを大事そうに抱え、ノンの顔を思い浮かべつつ自然と笑顔になるリリィ。
 そんな様子についてきた二人も頷きお互いの顔を見て笑顔を浮かべた。
 そして、三人揃ってカフェへと向かった。
 一方、クリスはたくさんのチョコの入った箱を抱えながらも忙しなくメモに書かれた店を回っていた。25店舗は回っただろうか。
「よく見たらこれ制限時間も書いてあるな……急がないと。 済まない店主、これ全部」
 改めて見たメモの下の方に制限時間が書いてあることに気が付くクリス。
 まだまだメモの半分をちょっと過ぎたところだ。あれだけはしゃいでいたシャロの為、クリスは奔走する。
 買い物に勤しむ男性陣、と言えば黒塚と直弥だ。
「最近はダチや世話になった相手にも贈るようになったっつーから、バイト先と知り合いへの土産……と、自分用な」
 と黒塚が買い物をしている。直弥はただついて行っているだけだった。
「お前は買わねーのか」
「友達と盛り上がったりするためのもので、自分が買うって感じじゃないです」
「ふーん、つか、普通に学校とかで貰えんだろうなお前は。部活とかで人気あんだろ、あいつから聞いた」
「別に……」
 なるべく直弥に話しかけるも彼は打ち解ける様子がない。
(こいつも俺がガラ悪そうに見えて警戒してるのかな)
 と内心考える黒塚。まぁ、その通りなのだが。
「……別に、お前の幼馴染に害のある事はしやしねぇよ。お前にもな」
 安心させようとそう言ってみる黒塚。直弥は少し沈黙した後「はい」とだけ答えた。警戒してるせいか普段の人懐っこさは鳴りを潜めている。
 なんと言えない空気が漂っていたがそのまま買い物は続行された。
 途中、ふと直弥が一度足を止める。視線の先に黒塚は気が付いた。
 その頃、彼らエージェント達を招いたショコラールに挨拶に向かう朝霞。
「たしかショコラールさんが実演してるはずなんだけど……。時間は合ってるよね?」
「朝霞、アッチじゃないか?」
 時間を確認しながら朝霞が実演スペースをきょろきょろする。ニクノイーサが指さした方向にショコラールの姿はあった。
 クール・ショコラ・ムースの実演中だ。
 薄力粉が宙を舞う様子はダイヤモンドダストのようで、生クリームが踊り、コーティングのチョコが滑っていく。
「すごいねぇ。さすがショコラールさんだよ」
「ふむ。チョコレートには詳しくはないが、アレは熟練の業というヤツだろうな。俺にもなんとなく察せられる」
 ニクノイーサも感心したように実演を眺めていた。
 軽やかに実演が終了し、朝霞に気が付いたショコラールが実演室から顔を出す。
「マドモワゼル朝霞、ムッシュニクノイーサ! 来てくださったのデースネ!」
「ショコラールさん! こんにちは!! デモンストレーション、すごかったです!!」
 二人の顔を覚えていたショコラールは歓迎の意を示す。朝霞が元気いっぱいに返事をした。
 あまり相手は出来ないが、嬉しいこと、是非自分のスイーツを食べて行ってほしい旨をショコラールは告げる。
 頷いて二人は勧められるままカフェへと向かった。


 併設されているチョコの簡単手作り教室。
 わいわいと楽し気に作るのは仁菜、威月、レミだ。残りの三人は食べる専門で様子を見ている。
「杏奈、待っててくださいまし。必ず美味しいチョコをお届けいたしますわ」
「うん、レミも仁菜ちゃんも頑張って」
 レミがやる気を示すと杏奈が応援する。
 作っている最中、仁菜と威月は誰に渡すか女子トークで盛り上がっていた。
「威月さん、本命チョコ渡す相手いるんですか?」
(……いえ、これは……普段、お世話になっている【暁】の殿方に……)
「ほほぅ、誰にも言いませんから、こっそりこっそり……!」
 一瞬固まった威月の様子を見逃さず耳を動かしながら近寄る仁菜。
 一個だけ気合の入っている威月のチョコと威月を見比べながら催促する。
 追求され煙吹いて威月の動きが完全に止まった。
 流石に好きな人は気になるもののこれ以上の追及は止める仁菜。
 そんな騒動が合ったものの料理が得意な仁菜が一番に出来上がる。
 続いて威月が何か妙な(狼を模した)チョコレートを作り出した。
(……タイトルは……《男は狼》……です……)
「わぁー凄い、上手ですね!」
 と仁菜が手を叩いて褒める。
「いやぁ……ニーナが自分から出かけるって言う日がくるとはなぁ……」
(あんなに俺から離れなかったのに、友達が出来て前向きになってきたかな。友達には感謝しないとなー)
 仁菜の様子を見つめながらリオンしみじみとそう思っていた。
「……あー、アイツ……またヘンなモン作ってんな……。アイツ、美的センスがどうも穿ってんだよな……ストラップとか宇宙人系すげー多いんだよ」
 と、威月のチョコを眺めながら火伏静が零す。どちらの英雄も保護者寄りの感想だった。
「えっと、お店で売ってるのほど美味しくないと思うですけど…。」
 不安げな様子で仁菜は6人皆に自分の作ったチョコを配る。レミも威月も同じようにし、試食会のような形となった。
 料理が終わると6人はカフェへと向かう。
 休憩がてら買ったものを食べて、ホットチョコレートを飲んだりした。
 気に入ったチョコを威月は黙ってモグモグと沢山食べている。
「甘いものだらけ……幸せ……」
「これほど嬉しそうな杏奈を見るのは初めてですわ……」
 ホットチョコレートを飲みながら心底幸せそうな杏奈を見つめレミは幸せそうに零した。

 数時間前、カフェへと乗り込み全種類制覇を目指しシェアをしながら食べ始めたベドウィルとエクトル。
「色んなチョコ食べ比べだよ♪」
 とエクトルは意気揚々だった。
「このパフェ美味しい! ベディお兄ちゃんも、はいっv」
 とベドウィルにスプーンで掬って差し出したり、
「甘いものって幸せの味だよねv」
 などと言っていたのだが、現実は厳しかった。
「目指せ全種類制覇ー!って思ったけど、流石におなかいっぱいになっちゃったね……」
「……やっぱり、こういう物は沢山食べられないようにできてるんでしょうか」
 くったりしているエクトルには数時間前の元気はない。ベドウィルも残念そうに呟いた。
「バレンタインデーのお返しって三倍返しって聞いたけど、女の子はこれくらい食べるのかなー」
 残っているケーキをフォークで突きながらエクトルは零す。
「そうだ、この間トリュフの作り方習ったんだよ」
 お土産用に買おうと品を選び始めたベドウィルにエクトルは思い出して、「今度あげるね♪」と言った。
 素直に喜ぶベドウィル。
「それじゃあ私も何か用意しておきましょう。何がいいかな……」
 ふふ、と笑ってベドウィルはエクトルを見つめた。
 そんな彼らの近くのテーブルで、カノンはリリィに渡したいチョコを考えていた。
 手作りもいいかも、と思いながらリリィが買ったチョコを見る。
「フランスのチョコレートばかりね……。生クリームを多めに使った、優しくて甘い味が良さそう。リリィ……喜んでくれるかしら、ね」
 快晴の空を見上げ、まるでリリィのようだと思いながら
「そうだ……歌、チョコレートのように甘い歌を添えるのも良いわね。トリュフみたいに……2度美味しい、甘くてビターな歌を……」
 そう、一人呟くカノンの元に、知り合った二人を連れてリリィが戻ってきた。
 リリィとカノンと話しながらアクチュエルとアヴニールはお互いの家族の話も交える。
 大切な人、そんな話を。
「来年は兄様に。アヴニールは汝の執事にチョコレートを渡せると良いの」
「うむ。来年が楽しみなのじゃ」
 無邪気に笑い合う瓜二つのアクチュエルとアヴニール。思いが叶うその日まで。
 続いてカフェにやってきたのはアンジェリカ達だった。
 クール・ショコラ・ムースを前にご機嫌のアンジェリカ。これが楽しみだったのだ。
「うーん、流石ショコラールさん作だね!」
 と味を堪能。文菜もこれは中々どすな、とにこにこと笑う。
「聞いていい? 文菜さんも亡くなった旦那さんにチョコ贈ってたの?」
「うちの世界には無かった習慣どすな。その分て訳でもないけど、結婚記念日はこの世界以上に盛大な贈り物とかしましたで。ただあの人が何が好きやったか、覚えてないどすけど」
 遠慮がちに聞いたアンジェリカにそっと視線を伏せる文菜。その様子にアンジェリカは黙ってしまう。それに文菜はすぐ気が付く。
「ま、うちの事はよろし。アンジェリカはんも義理やのうて本命言うのを贈れる人見つけんとな」
 文菜は笑って見せた。


「私は紅茶。ニックは?」
「そうだな、同じもので」
 カフェに着いた朝霞達は飲み物を注文した。しかし、それ以上朝霞は注文する素振りを見せない。
「せっかく来たのに、チョコはなにか頼まなくてもいいのか?」
「……う~ん、ちょっと用事が済んでからね」
「なんだ、まだ何かあるのか?」
「あるというか、なんというか……」
 不思議そうに問いを続けるニクノイーサに珍しく朝霞の歯切れが悪い。
「なんだ、はっきりしないな。なんだか朝霞らしくないぞ」
「ニック、これ!!」
 眉間にニクノイーサが皺を寄せかけたのを見て意を決し朝霞はチョコを差し出した。
「あぁ……。さっき買っていたチョコだな」
 驚いた顔をしながらも受け取り、そういえば、と思い出すニクノイーサ。
「ありがとう。いまココで一緒に食べるか」
「そうだね、そうしよっか」
 素直に礼をし、折角だからと封を開ける。
「ふむ。甘過ぎず、なかなかイケるな」
「うん!」
 口に運んで朝霞が選んだチョコを堪能し、いつもと同じニヤリとした笑みをニクノイーサは浮かべた。だが、その顔は自信ではなく喜びが滲み出ている。朝霞もそれに嬉しそうに大きく頷いた。

「付き合ってくれた礼と土産代わりだ」
 買い物を済ませた黒塚が直弥にチョコを一つ差し出した。
 怪訝そうな顔をする直弥。少し迷ってから受け取る。
 それは先程直弥がなんとなく見つめていたチョコだった。
「お返し……ホワイトデーまで、待ってもらっていいですか」
 直弥からの予想外の申し出に黒塚は戸惑う。頭の後ろを掻きながら「あぁ」とだけ答えた。
「さて、買う物買ったし、そろそろ英雄共を迎えに行くか」
 そして、さっさと踵を返す。照れ隠しだろう。直弥はまたそんな黒塚の後ろに続いた。
 同じように買い物が終わったシャロとクリス。
「お、重い……! えーっとメモによると次はカフェスペースか……」
「クリスさんこっちなのですぅ~! ムース食べましょ!」
 あまりの量にため息交じりのクリスを見つけてシャロが駆け寄ってくる。
「ああ……どっこいしょぉ! ふぅ」
 二人でカフェへと向かい、荷物を下ろして一息ついた。
「お疲れ様なのですぅ!」
「本当にお疲れだよ全く……ああ疲れた身体に甘味が染み込む……」
 クール・ショコラ・ムースを食べながらほっ、とするクリス。
「ショコラールさんの実演、クリスさんも誘おうと思いましたが」
「生憎興味ない」
「言うと思ったのですぅ」
 等とやり取りしつつスイーツを堪能したのだった。そして、無事制覇することが出来たのだが……財布の中身には触れないでおこう。

 日が暮れた帰り道。
「あー食った食った」
 と、火伏静が腹部を摩る。その隣で威月が作ったチョコを大事に抱え歩いている。
「この調子で。来年もまた、こんなんが出来るといいな? 俺の代わりに男が隣に居てもいいんだがなぁ?」
 教室でのことを思い出しニヤニヤとする火伏静に威月は無表情を決め込んだ。

 来年もまた想いを込めたショコラに出会えますように。

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結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121
    人間|11才|女性|命中
  • ぼくの猟犬へ
    八十島 文菜aa0121hero002
    英雄|29才|女性|ジャ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • 暁に染まる墓標へ、誓う
    無明 威月aa3532
    人間|18才|女性|防御
  • 暗黒に挑む"暁"
    青槻 火伏静aa3532hero001
    英雄|22才|女性|バト
  • 指導教官
    Chris McLainaa3881
    人間|17才|男性|生命
  • チョコラ完全攻略!
    シャロaa3881hero001
    英雄|11才|女性|ジャ
  • 暗闇引き裂く閃光
    大門寺 杏奈aa4314
    機械|18才|女性|防御
  • 闇を裂く光輝
    レミ=ウィンズaa4314hero002
    英雄|16才|女性|ブレ
  • エージェント
    龍堂 直弥aa4592
    人間|17才|男性|命中
  • エージェント
    ベドウィルaa4592hero001
    英雄|24才|男性|カオ
  • LinkBrave
    夜城 黒塚aa4625
    人間|26才|男性|攻撃
  • 感謝と笑顔を
    エクトルaa4625hero001
    英雄|10才|男性|ドレ
  • Lily
    リリィaa4924
    獣人|11才|女性|攻撃
  • Rose
    カノンaa4924hero001
    英雄|21才|女性|カオ
  • 似て非なる二人の想い
    アクチュエルaa4966
    機械|10才|女性|攻撃
  • 似て非なる二人の想い
    アヴニールaa4966hero001
    英雄|10才|女性|ドレ
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