本部

クリスマス関連シナリオ

【聖夜】今夜のサンタは希望を偽る

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
7人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/12/28 17:50

掲示板

オープニング

●クリスマス・リンクス

 人々がそわそわし始める季節――クリスマス。

 街頭にはクリスマス・イルミネーションが輝き、商店のショウウィンドウには赤と緑と白の三色が飾られる。恋人や家庭人たちはその日を待ち望み、一部の者たちは自嘲的に当日の予定を語る。

 世界蝕以降、創造の二十年を経てなお変わらないもの。

 愚神が出現しても、大きな事件が起こっても。

 商業主義的だとか本来の意味が失われているとか、そんな批判も何のその。多くの人々が、以前と変わらずイベントを楽しんでいる。変わったことと言えば、「どこかの異世界にはサンタのような英雄がいる。だからサンタは実在する」とまことしやかに語られるようになったことくらい。

 これはそんなクリスマスの一角で起こった事件――。

● 今宵は聖夜

 そして駅前、ツリーの下で多数男女が相手を待つ中とある男性が、その群の中を闊歩し、苦も無く最愛の人を見つけて見せた。
「遅れてごめん、ハニー」
「ううん、待ってないわ。ダーリン」
 クリスマスにかこつけて甘々な雰囲気を醸し出す二人は寄り添い歩き、今日のデートコース、つまりは男が敷いたレールの上に足を踏み入れようとする。
 その時である。
「はいよー、通るよー」
「メリークリスマス!」
「あれ、ホープマンじゃない?」
 目の前をトナカイに雪ぞりを引かせた怪しい男が通りがかる。
「あれ絶対ホープマンだよ」
 その男たちはまるで一昔のヒーロのような恰好をしていて、ダーリンと呼ばれた男にプレゼントを投げ渡した。そして去っていった。
「なんだったのダーリン」
「わからないよ、ハニー、あけてみようか」 
 そう男がリボンを解いて包装紙をはがし、箱の蓋を取って見せると。
 なんとびっくり、箱の中身はピンク色の液体でいっぱいだった、そしてそこに圧縮されていた謎の液体が、勢いよく噴出したではないか。
「きゃあああああ」
「うわあああ。なんだこれ!」
 その液体は二メートル近く飛び上がり、周囲の人間へと降り注ぐ、そして。
 その液体衣服に付着するとそれを溶かし始めた。
「うわああああ、何だこれ!!」
 プレゼントを受け取った男だけではない。周囲の女性、サラリーマン。犬が身に纏う服まで、溶けていく。
「なにこれ! 最低!」
 怒ったハニー、パンツ一丁になってしまったダーリン、二人は泣き叫ぶ。。
「うわああああ、なんだこれ!!!」
 デート失敗を確信し、ダーリンは意気消沈、肩を落とす。
 もはや同じセリフしか言えず項垂れるしかなった。
 だが、そんな彼の胸の内にも一つの大きな感情が渦巻いている、それは尽きせぬ憎悪の炎。
 そうホープマン許すまじ。
 こんな風にホープマンの名前を貶めるような事件が、この町で多数引き起こされていた。

● グロリア社新規アイテム(いわくつき)
 その後の調査でばら撒かれた液体はアルター社の開発した『ピンク液』であることが判明した。
「これ、バラエティー番組用で一般流通はしないはずなんだけど」
 そう、相談を求められた遙華はモニター越しにリンカーに告げる。
「そろそろ業務に戻るわね」
 そう、そそくさと書類をまとめる遙華に一つだけ質問をぶつけてみた。本当にホープマンがこの事件の黒幕なのかと。
「あら、てれさぱ……。ホープマンがそんなことするわけないじゃない」
 遙華は言い切る。
「ぱちもんよ、ぱちもん」
 そして一瞬悩むとにやりと笑って君たちに告げた。
「癪ね……それに、そうだ。とってもいいことを思いついたわ。試作品の大盤振る舞いといきましょう。正直品質の保証はできない品ばかりだけど、きっと使ってて楽しいはずよ。ヒーローショーの気分でね」

 そして現場に送りつけられる大量のアイテム(ガラクタ)ただ、中には使えそうなものもあったので紹介しておこう。

・チェンジベルト 
 自身の外見を手軽に変更できるベルト。ルネの水晶技術が応用してあり、全身に水晶を纏ってそれを変質させるためかなり完成度が高く、いろんな人物に化けられる。
 今回はこれでホープマンになると、囮として機能しそうだが、どうだろうか。

・裁きの宝玉*
 杖装備時に選択可能。人の悪意によって攻撃力を増す魔術を放てるようになる。
 また、人の悪意に敏感になるので、偽ホープマンの場所を漠然と感知できるようになると思われる。
 装備すると性格が尊大になる。まるで自分がこの世界の王であるかのように振る舞うようになる。
 
・魔導トナカイ*
 トナカイの背中に乗って町を駆けることができます、移動力30が約束されますが。制御AIにアルスマギカを詰んでいるので、前頭葉の働きが鈍り、理性が利かなくなります。つまり、クリスマスに対するあれこれ、や日頃のストレス。普段からやりたかったことを積極的にやるようになる。

・ ディメンションクラウン
 霊力科学の理論を加え、新たに提唱された霊子力学論。その応用によって、ついに量子転送が可能になったかもしれない、アイテム。
 原理は詳しく明かせないが、ちょっとした距離をテレポートする。
 これを装備したものは、2SQ分の移動を1SQであるものとして計算できる。
 ただし、この効果を使用するたびに服が一枚、その場に置き去りにされる。
 なぜか強く祈ると置き去りにしたい服が選べる。靴下一枚とか、パンツだけとか可能。

注釈
 *がついているアイテムは強靭な精神があればこれを押さえつけることができます。


●戦域について

 今回は街中でヴィラン五人を迎撃していただきます。
 時刻は夕暮れ時、夜のクリスマスパーティーのころには事件を解決したいので、二時間程度でやっちゃってください。
 早く倒せれば倒せるほど、ボーナスがあります。遅くなってもペナルティはありません。
 ちなみに24日は土曜日です。
 一マス500M四方程度です。

□文□□□□
□□□□◆□
高□■■□□
□□□□□□
□□□▼▼□
□□□□□□

文…… 学校、この文字は小学校をさす。この時間帯子供たちが体育館に集まってレクリエーションをしているらしい。
高…… 閑散としている、この日は休み
■…… 駅。さらに周辺にはデパート、家電量販店、本屋、レストランと、人が生活するのに必要なものがだいたい残っている
▼…… 住宅地 
◆…… 飲み屋街、治安が悪い。


《ピンク液》
 これはAGWを溶かす能力はないが、付着するとなぜか透けさせるので注意が必要。洗うと元に戻るが、戦域からいったん離脱しないと、洗うということは難しいだろう。

解説

目標 偽ホープマン退治。

 偽ホープマンは町で五人確認されており、全員が霊力を操っていることからヴィランと認定。
 そして、直近で刑務所から釈放されたヴィランがちょうど五人いたのでこの者の仕業であることが有力。
 彼らは皆ホープマンに逮捕されているので、逆恨みかと。
 もし、そのほかの理由を疑う場合は直接聞いてみるしかない。
 
《武装について》
 彼らに潤沢な武装はない。一振りのナイフとリボルヴァー。そして移動力が上がるブーツだけ。
 装備は貧弱だが、三人がシャドウルーカーのため、逃げ足は速いと思われる。
 残る二人はドレッドノートである。
 ステータスはそんなに高くないが、潜伏している彼らを探し出すという今の状況は我々にとって不利、奇襲の警戒なども怠らないように

《余罪について》
 彼等五人はそれぞれ行動パターンがあるようだ。
 そして首に巻いているスカーフで大体識別可能。
赤 食い逃げや自販機荒らしをしているところが防犯カメラに映っている。気性が荒く、ホープマン失墜に積極的なので「ホープマンに何か文句でもあるんですかぁ」と周りを挑発する

蒼 他のメンバーのサポートがメイン、一番情報が少ないが一度だけ他のホープマンと一緒にいるところをカメラでとらえられている。
 駅前のカメラだった。
 一番ホープマン失墜に積極的

緑 クリスマスにイライラを募らせる。ピンク液をばらまく張本人。スカーフの色に合わせた女性物の下着をかぶっている。

紫 緑と一緒に行動、乗り物の操縦に長けている。割と消極的

黒 全員をたきつけたリーダー的な存在。女児誘拐で捕まっている。ホープマンに対してかなりの恨みを抱いている。

《作戦》
 おびき出すか、彼等がいそうな場所に行って探す。
 この二つが有力。
 行きそうな場所がある程度予測できれば、目立つのですぐ見つかるでしょう。
 詳しい方法は皆さんにまかせますし、他にいい方法があるならそれで構いません。

リプレイ

● プロローグ

 オフィス街とあるビルの地下駐車場。そこには寒さに身を震わせながら多くのリンカーが待機していた。
『リィェン・ユー(aa0208)』は柱に背を預けて特殊兵装の到着を待っている。
「…………。ホープマンに扮して悪さをする輩か…………」
「悪ふざけなようでうまい手ではあるな」
『零(aa0208hero002)』が答える。
「たしかにな。やってることは狡辛いがな」
「未来のお義父さんのためにもがんばろうではないか」
「いや、まだそういうんじゃないからな」
 その会話を聞いていて頷く『稲田藍(aa3140)』
「余罪もあるようだし、早く捕まえないと一般市民が安心して暮らせないよ」
「本当だ、往来の真っ只中で人様の服を溶かすなど言語道断。しかも冬空の下とか普通に死ねるぞ、こいつら俺よりも馬鹿だ」
 そう憤りを隠せない『彩咲 姫乃(aa0941)』は拳を握りしめる。
「そうか?スケスケピンク液とかイヤラシさ満点じゃね!?」
 そんな姫乃の横で『天狼心羽紗音流(aa3140hero001)』がそう言い放つ、その言葉に姫乃の頬が引くついた。
「考えたヤツ天才だわ! え? 開発アルター社なの? ドスケベ! 支給品に入れてくれねーかな!」
「俺、ハイキックしたい相手が一人増えたいかも」
 なぜか血気盛んなリンカーたち、何かストレスでも溜まっているのだろうか。そう思いつつ『禮(aa2518hero001)』は溜息をついた。
「クリスマスのケーキを楽しめなくするなんて……許せません」
 寒がる禮と一緒に毛布にくるまる『海神 藍(aa2518)』が問いかける。
「……ケーキ限定かい? 禮」
 その言葉に答えずに禮はふと視線をあげた。その先は駐車場の入口。
 そのあたりを照らすヘッドライト。今は封鎖中のこの駐車場なので入ってくるのはグロリア社のトラックしかありえない。
 そしてそのトラックはリンカーの前で停車し、直後後ろの扉が開いた。
「待たせたわね!」
 遙華の声が響いた、と言っても彼女がここにいるわけでもなく通信なのだが。
「ええ、まちました、寒いです」
『ルゥナスフィア(aa0124hero002)』を抱き留めながらも歯をがちがちと鳴らす『イリス・レイバルド(aa0124)』が答える。
「ご、ごめんなさい……」
 たじたじの遙華である。
「ほほう……こいつは面白そうなアイテムがあるじゃないか」
 そんな二人を尻目にさっそく大型トラック内をあさる零。
「先に中身を全部出したほうがはやいんじゃないかな?」
『シエロ レミプリク(aa0575)』は総う提案し、シエロの指示のもと『ジスプ トゥルーパー(aa0575hero002)』が積み荷を降ろしていく。
「主様」
 そんなシエロたちの脇をすり抜け『エリザ ビアンキ(aa2412hero002)』は少女に駆け寄る。
「ディメンションクラウンという優れものをお借りしてきましたの。これを使えば、なんでも短距離のテレポートを可能にするのだとか……コレを使わない手はなくってよ」
「ふーん、やけに便利な道具だね」
『東雲 マコト(aa2412)』はきらびやかな王冠を眺めると恐る恐るそれを手に取った。
「なにかデメリットがあるんじゃないの? エリザ」
「ご安心くださいまし主様、怪我の心配はご無用、ましてや転送時ハエを巻き込んで融合してしまうなんて事も起こりませんわ」
 この世界の映画でもそんな話あったなとマコトはその光景を思い出して身震いする。
「……なら安心だね!」
「この魔導トナカイと言うものを借りましょう……この足の速さなら敵を取り逃がすことは有りません」
 そうトラックから降ろされたやけにメタリックで角がカッコいいトナカイに目を輝かせる禮。
「スゲーな、あんなものもあるのか」
 リィェンはその手に握られた宝玉を空に放ってキャッチしてを繰り返している。
 それぞれ自分の持っていくアイテムを決めたようだった。
「嫌な予感がするんだけど……まあ良いか」
 だが、その予感に従わなかったことを彼らはあとで後悔することになるのである。
「おー、カッコいい、私はこういうのを待ってたんだよ!」
 そう言ってトナカイに触れたのは海神もシエロも同じタイミングだった。
「あばばばばばばばb 何かこれ久しぶりぃー!?」
 突如悲鳴を上げるシエロ。
 その時シエロの脳内に駆け巡ったのは。走馬灯ではなく失われたはずの記憶。
 アルスマギカとの戦闘。それはあの洗脳から解放されたときに全て忘れたはアズだった。けれど。
「ああ……よく覚えてないけどアレ楽しかったなあ……」
 そう言う印象としてはシエロの中に残っていて。
――主様ー!?
 その時、トナカイが鳴いた。
 シエロの目がひかり、どこからともなくプシューと蒸気を上げる、次いでシエロは高らかに叫びをあげる。

《フォーメーションZ!!》

 やけにエコーがかかったシエロの音声と共に空に飛びあがるトナカイ。それを追う形でシエロも飛び。
  そしてトナカイが変形した。頭部がはずれ。ベルトが巻き付き、そのあいた部分にシエロが収まった。
 その後、シエロとトナカイは裏返ったり開いたり変形しながら、各所のパーツを交換したり、がしょんがしょんがしょんと姿を変えていく。
 変形したり、各種のパーツが取れたり、曲がったりしながらトナカイと一体になっていく。さらにはトラックから飛び出したアイテムまでもが吸収され、そして。
 そして生み出されたのが人類の最終兵器。
 力強い足はシエロとトナカイを含めた六脚。胸には宝玉が融合され輝きを帯び。頭部のクラウン光る。
 その姿はまるで古に伝えられしケンタウロス。
「え? シエロちゃん?」
 マコトがそう恐る恐るシエロに手を触れようとした瞬間。シエロは吠えた 
「グハハハハハ! 出陣じゃあー!」
――えええええ!?
「えええええええ!」
 そう告げて天井を破壊し外に出たシエロは。ポケラルコォーと叫びながらメイスで天井を破壊。そして跳躍。
「ええええ! なにあれ、どういうこと!! 明らかにアイテムの副作用。みんな使用を注視して!!」
 その遙華の言葉には誰も耳を貸さなかった。
「ケーキ!」
 海神が告げる。
「ケーキ!」
 姫乃が言った。
 次の瞬間、シエロがあけた大穴から飛び出していくリンカーたち。
「な! 何が起こってるの!!」
 狂乱の夜が始まる。

● 心の癒しは女児だけ
女児誘拐犯がいるそうなのでこれは囮になるしかない、そう名乗りを上げたイリスは、トナカイではなくタクシーで現地に向かった。 
 今回イリスが探索するの小学校種変の地域。より狙われやすくするためにその小学校の制服を身に纏う。
 そんなイリスはやがて小学校を見つけた
――なんだか体育館のレクリエーションが気になるけど踏み込んで行けない子供を演じて。
 そう共鳴しつつルゥに語りかけるイリスだったが
――る必要もないかー
「イリスママ! イリスママ! あれなに、あれなに? なになになぁに?」
 体育館の窓ガラス越しに見える少年少女たち。
 同世代の子供たちがあんなに集まっている光景は見たことがなかったのだろう。ルゥは大興奮でその場で飛び上がる。
「ルゥもしたい! ルゥもしたい! 楽しいことしたいー! 楽しそうなこと探したいー!」
 そんなルゥに気が付き始めた子供たち。そんなルゥを止められずにため息をつくイリス。
 そんな囮役を買って出てくれて二人を遠くから眺めながら。
『町田紀子(aa4500)』は家の屋根をつたって哨戒任務についていた。
 彼女の頭には輝く王冠、敵を発見すればこの王冠の力で近づき捉える。そう言う作戦だったが。
「なんだか、ワープするたびに寒くなっているような?」 
 そう路上に降り立ちハテナマークをうかべる紀子。違和感の正体を探り自分の体をまさぐっていると、胸に手を当てた状態で紀子は固まった。
 直後みるみる顔が赤くなっていく。
「ああ、あああああ」
 なぜ、どこに。どうして。そんな考えが巡りながらも頭は冷静。
 とりあえずきたルートを戻ってみよう。そう踵を返すとそこには。
 全身タイツのヒーローが立っていた。
「なぁ、一つ聞いていいか」
 その男はホープマンと同じ姿をしており、黒いスカーフを首に巻いている。
 ヒーロー、ぱっと見ヒーロー。
 だが、不思議な物で、ヒーローショーの舞台とか、テレビ画面越しに見るとあんなにかっこよく見えるのに、街中の住宅地のど真ん中でその姿を見てしまうと、変態さんだとしか思えない。
「このあたりで」
 そんなコスプレ男が目的の自分だと悟り、構える紀子、そんな紀子にホープマン黒は告げる。
「幼女を見なかったか?」
 紀子は唖然と構えを解いた。そうだそう言えば女児誘拐の犯人が紛れ込んでいた。
 そう紀子は事前情報を思い出す。
「いや、はぐれた女児がいると聞いて飛んできたのだ。早く保護してやらなければな、そして温めてやらねば、そう、この私の肌でな」
 そんな独演会が聞き苦しくなってきた紀子はその手にパイルバンカーを召喚。
「だまれ!」
 直後轟音が町に響き渡る。

● 本日のカグヤ
『カグヤ・アトラクア(aa0535)』は煙突に腰掛けて町を見下ろしていた。
 その身に纏うのはサンタ服。短いスカートがとてもキュートだが下着は見えないようにがっちりガードされている。
 見る人が見れば、サンタが煙突に入るのをためらっているようにも見える、まぁ実のところはそうではないのだが。
 そう、物憂げに町を見下ろすカグヤ。
「人の多い駅の方が、嫌がらせに適してるんじゃないの?」
「街で色々楽しもうとも、クリスマスを一番楽しめるのは帰宅して家族やサンタのプレゼントと楽しむものじゃ。その家が火事なりで無くなるのはかなりの絶望じゃよ。それだけは止めねばならん」
「……カグヤの思考の方がヴィランよりひどいよね」
 その手には七色に輝くロッドが握られていた。
「よい、クリスマスに浮かれる民ども。許す」
「いつから、クリスマスに浮かれるのにカグヤの許可が必要になったのさ」
 その隣でコーンポタージュを飲んでいる『クー・ナンナ(aa0535hero001)』
「いや、尊大になるとはどのような物かとおもってのう。演じて見たんじゃ」
「それで性格変わらないってことは、尊大さが最高レベルなんじゃない?」
「カンストじゃな」
 そう告げるとカグヤは煙突の上に立つ。
 ちなみに、この煙突、戦闘のシンボルタワーのようなもので本来の煙突の用途はない。

「では、わらわはわらわで、町を練り歩くとしようかのう」
 そう告げるとサンタ帽子の中に納まっている王冠をチンと弾き、その場から消え去った。
 あとに残されていたのは。そのサンタ帽子だけ。

● 冬時、トナカイレーシング
『ヘルガ・ヌルミネン(aa4728)』は人々を見下ろしていた。
 トナカイの背中にまたがって手綱を引き絞るその表情は、郷愁感で柔らかくほどけている。
 しかし上から見下ろされる恐怖と、トナカイの眼光も相まって、まるで世紀末覇者が迷い出てきてしまったかのような違和感を放っている。
「トナカイ……」
 ため息交じりにつぶやいたその言葉に周囲の人間がびくりと反応する。
 その隣には海神、そして姫乃がいた。
 そう、クリスマスを謳歌する人々にとって大変不幸なことだが、町の中心に突如トナカイ軍団が出現してしまったのだ。
――……あ……れ?
「こ……れは……あるすまぎ……」
 トナカイに乗っていることによって徐々に理性を殺される海神たち。
 そんな光景を恐れずに近寄る一人の少女がいた。
「サンタさんなの?」
 ヘルガに小さい女の子が歩み寄る、そんな少女をヘルガはトナカイに命じ服の裾を口でつまませた。その少女はぶらりと子猫のようにトナカイにぶら下げられ。
 ヘルガの前、つまりトナカイの背中に乗せられた。
「そうだよ、フィンランドから来たんだ」
「サンタさんはフィンランド からくるの?」
「世界各地からくるよ」
「サンタさんっていっぱいいるの?」 
 そんな光景を遠巻きに眺めているのが緑のホープマンと紫のホープマンである。
「やべーよ」
「おい、あれ絶対H.O.P.E.だぜ」
「にしても早すぎるだろ、あとあのトナカイなんだ」
「お前たちを倒すことが町のプレゼントだーとか言い出すんじゃねぇか?」
「それはありうるな」
 そう路地裏に大きい体を詰め込んでひそひそと話をしている姿ははっきり言って浮いていた。だからのその背後から。
 本物が迫る。
「ふはははは、見つけたぞ。紛い物め!! 我が同胞の一人に扮して悪さをする輩は我がこの手でさばいてくれる」
 その高らかに響く名乗りを聞いて、二人は弾かれたように振り返る、すると背後の闇の中からホープマンが現れたではないか。
(……おい。なんでこいつを持ってきてるんだ)
――はっはっは。せっかくだから面白いと思ってな。
 そう内心の焦りを念話で片付けるリィェンと零。
 ちなみにリィェンの言っているこいつとはホープマンレプリカ(ガチ)のことである。
「さぁ、貴様の犯した罪の数を数えろ!!」
 彼はそれを身に纏い自らも囮となったのだ、だがそんなリィェンの姿を見て、緑と紫は固まっている。
 その両手をわなわなとふるわせ。
「て」
「てめぇ!」
「「ホープマン」」
 そして、親の仇でも見つけたかのように殴り掛かってくる偽ホープマン。
 その拳を軽くいなして肘を持ち上げる、すると緑は空中で円を描いて転び歩道に投げ出され。紫は膝を抑え顎に掌底をくらわすと仰向けに倒れた。
 リィェンには一目でわかっていた、こいつら弱い。
「いくら姿を真似て悪さを名を失墜させようとも、その性根が悪である限りが正義たる我に勝てるわけ無いだろう」
 そう二人を捕縛しようと歩み寄ったところ。リィェンの上に影が落ちた。
 三体のトナカイが突っ込んできたのだ。
 あわてて避けるリィェン
「……見つけたぞ」
 床に寝ころんだままのホープマン(偽)たちに逢いが言い放つ。
「貴様らはケーキを楽しめる時間を汚したのだ、生きて帰れると思うな?」
 それにうなづく姫乃。
「くそ、こんなところでやりあえるか!!」
 そう紫は空中にフラッシュバンをほおり、それで視界をつぶしている間に用意していたバイクに乗り込んだ。
 緑のホープマンは幻想蝶から召喚したピンク色の液体が注水されている水風船を抱え。リンカーたちを挑発する。
「アバヨ!」
「逃すか!」
 はしりだすホーペマン、そしてそれを追うトナカイに乗ったリンカー。
「遅い。ケーキ不足か?」
 海神がそう叫ぶと、トナカイが咆哮をあげスピードを上げる、襲いかかるピンク液は遠距離武器で払う。
 聖夜のカーチェイス(車が走るとはいってない)の火ぶたが切って落とされた。
 そんな騒がしい一行を遠巻きで見つめながらリィェンは途方に暮れている、そんな彼の耳に新たな情報が入った。
「こっちはホープマン赤を見つけた」
 唖然と一同を見送ったリィェンへそう通信を送ってきたのはマコト。リィェンは彼らを静かに見送り飲み屋街へと走る。


● 血祭りにあげよう

 飲み屋街はクリスマスのイベントのせいか氷像がいたるところに置いてあった。こうやってお店の宣伝をするのが習わしらしい。
 その中を闊歩するのは紗音流。
「 で!? 今日は誰がスケスケになんの!?」
 道行く女性に目移りしながら紗音流は意識だけとなった稲田に問いかける。
「珍しく遊びじゃない仕事取ってきたと思ったら、そんなことが目的だった……?」
「バカ! 勝利に犠牲はつきものだ!」
「黙って」
 そんな彼らもマコトからの通信を受けて現場に急行してきた口だったのだが、マコトとすら合流できずに紗音流は暇を持って甘し始めたのだった。
「ワシ思ったんだけどー!捜し回らなくても、誰か女の子とイチャついてればスケさしに来るんじゃねえの!?」
――いいから真面目に捜して。
「オッパイぽよんぽよんさせてくれる女の子いねーかな!?」
――黙って捜せつってんだろ!!
 まったく稲田の話を聞かない紗音流である、そんな彼らの背後から突如歓声が沸き立った。振り返ってみればちょうど。店の中から寒空の下へ、サラリーマンのおっさんが投げ出される瞬間を見た。
「酔っぱらいの怒号飛び交う飲み屋街に、ラビットシーカー参上!」
 そう告げてマコトが店の中から歩み出てきた。
「どうした、姉ちゃん、こいつがホープマン赤か?」
 そう話しかけてきた紗音流を観ずにマコトは告げる。
「違う、あいつを張っていたらたまたまセクハラおやじが目に入ったから、
捕まえただけだ」
 そんなマコトの肩に自らが放った鷹が止まる。
「またホープマンの姿で騒ぎを起こしたみたいだな、行くぞ」
 そう紗音流を先導して大股で進むマコト。その背中についていこうとして紗音流はマコトの違和感に気が付いた。
「おまえさん……」
 タイツが脱げている上に、温かそうなスウェットもない、全体的に露出度が増して寒そうである。それを訪ねようとした紗音流だったが。
「ホープマンに化ける偽物め、覚悟しろ!」
 本人があっけらかんとしているので別に言わなくてもいいかなと思い直す
(主様、服が脱げて行っていることに全然気づきませんわ……恥じらい慌てふためく可愛い主様を見たいのに!)
 そしてそんな後ろ姿を見ていて紗音流は思いついた
「あ!共鳴解除して、チェンジベルトで藍が女の子になって…………」
――は?
「ガチギレすんなよ」
――だいたいそんなことして、だれに特が!
 そう稲田が脳内で紗音流に詰め寄るその時、バイクのけたたましいエンジン音が聞こえた。
「あれだ!」
 マコトは告げる、見れば酔いつぶれたホープマン赤をバイクの男たちが回収するところだった。
「なんであんなにあわててるんだ?」
 そうマコトは首をかしげる、だがその理由はすぐにわかった。
 走り去るバイクその後ろを三体のトナカイが追っているのだ。姫乃、ヘルガ、そして海神のトナカイである。 
 だが恐怖の原因はそれではないらしい。
 直後商店街の氷像を粉砕して一回りおおきいトナカイが咆哮をあげた。
「ポケラルコォ!!」
 違う、あれはトナカイではない。
 シエロだ。
 六本の足を器用につかい、凍った道を駆けるシエロは徐々に徐々に距離を詰めていく。

● シエロの大冒険

 シエロが商店街に至るまでの物語を追おう、まずは小学校付近、ここではホープマン黒と紀子の戦いが繰り広げられていた。
 紀子はまずディメンションクラウンで頭上に移動。落下の勢いを利用しパイルバンカーを打ち込んだ。 
 吹き飛ぶホープマン。墜落するホープマン
「よ、幼女が見える」
「ついに頭がいかれたか」
 紀子はパイルバンカー片手に再度接近する、しかし確かに黒が手を伸ばす方には幼女がいたのだ。
「ルゥだよ!」
――あ、ルゥに主導権とられた
 焦るイリス。
――だいじょうぶ、ルゥ? ちゃんとできる?
「オッケー イリスママ! ルゥは体当たりでがんばるのです!」
――…………ルゥ?
「おお、幼女よ、こちらへ、ウェルカム!」
「いっくよー」
 そう黒へ走り寄るるぅ。それ向けて手を伸ばすホープマン黒。
――あ、これ声が微妙に届いてない。 
 そしてルゥはその拳をぺちりと、ホープマン黒の手のひらに叩きつけた。
「ルゥのレベルは1です! がんばります!」
「かわいいね、るうちゃん、叔父さんと楽しいことしようね!」
 その時である。ルゥの瞳が光った気がした。ルゥの右手に気を取られている間に、左手を腹部に当ててそして、吹き荒れる魔法エネルギー。
――たしかにルゥはレベル1のド素人だけど……ボクのレベルはねー
「ごはぁ!」
「ルゥパーンチ!」
 再び空を舞うホープマン。 
 そのホープマンに何らかのシルエットが重なった。
 その四本の足で両手足を。そして増設された三対めの足で腹部を固定、そのまま宙に浮かんだホープマンを地面に、叩きつける。
「デスバイツイストホーン!!」
 さすがのルゥもその光景を唖然と見送る。
「ぐは、なんだお前」
「言ったはずだぞホープマン……お前が悪に落ちた時、俺は必ずやってくると……!!」
「だれだー!!」
――主様!初対面ですよ!?
「あの時の約束通り! 貴様の首、貰い受ける!!」
――いつの話をしてるんですか主様ぁ!?
 それがシエロだった。
 悪しきを刈り取る兵器となってしまったシエロはその後、ホープマンを簀巻きにすると二人を乗せここまで走ってきたわけである。

● レッドホットクリスマス

「ああ……せっかくだ、冥土の土産に拝んでから逝け……!!」
 そうシエロは告げると加速し、ホープマンたちのバイクを追う。
 徐々に距離を詰める海神の脳裏に少女の声が響いた
(サンダーランスで騎馬突撃とか、格好良くないですか!?)
 それが誰の声だったのかはもう思い出せない。しかし
「……天啓は下った。今こそ裁きを……!」
 そうイカヅチを纏いさらに加速する海神。
「うわああああ、逃げろ!」
 叫ぶヴィラン、その目の前に立ちはだかるのは正義の使者。
「テメェホープマン!!」
 そうリィェンである、そんなリィェンをひき殺そうヴィランたちはエンジンをふかすが無意味である。
 霊力の通わないあらゆるものはリンカーにとって脅威にはならない。 
 リィェンは卓越した反射神経でバイクの前輪を捉えると、めくるようにタイヤを浮かせた、その結果。
 宙を舞う偽ホープマンたち。
 それに海神のサンダーランスが激突。さらに転がったホープマン紫の足首に姫乃のワイヤーが絡み突き。
「のろまが!ハングドマンで拘束して市中引きずり回しの刑だ!」
 そのまま引きずられどこかへ行ってしまった。
「あれ? 赤は?」
 逃走する赤を追うのは紀子とイリス。
 だが、そんな赤ホープマンの前にカグヤが立ちはだかる
「待っておったぞ」
「どけや!」
 そう武装を召喚し切りかかろうとする赤。だがその背後に瞬時に転移しカグヤは魔法攻撃を放った。
 さらに即座にノーブルレイに持ち替えグルグルと拘束する。
 手際よく敵を吊し上げたカグヤは雲が獲物を運ぶごとくずるずると路地裏にヴィランを引きずっていく。
――ところで、サンタ服脱げてるけど?
 クーが問いかけた。
「愛に恵まれない者へのプレゼントじゃな! 拾って持ち帰り感謝するがよい。
「うわー。…………裁きの宝玉に反応しないんだけど、悪意なくひどいこと言える人間って色々破綻してるよね?」

● 今日の姫乃

 この町にはドライブイン形式のケーキ屋さんがある。
 そこはクリスマスということもあり延長営業をしていたのだが。
 そのことを後悔した年は今年だけだろう。
「はは、あはは、アハハハハハハハハ」
 響く少女の笑い声、そして。
「ケーキくださーいの声」
 見ればトナカイ。その後ろにはもがき苦しむ全身タイツの男。あまりにショッキングな光景に、アルバイトの子は気絶したらしい。
 本人いわく
 緑を引き回す姫乃「孤児院のクリスマスパーティー用にケーキでも用意しよう」と考えたらしいのだが。
 見る人から見れば狂人であった。


● エピローグ

「はっはっは。久しぶりの戦闘で良い息抜きができたわ。たまにはこういった事もやってみるのもありだと思わないか
「……し……しにたい」
 零の言葉に頭を抱えるリィェン。
 そう彼らは正気に戻ったのだ、装備品をその身に外すと同時に正気に戻れた。よかった。
「やー、よく覚えてないけど妙にスッキリした気がするなあ!」 
 合体が解除されると何事もなかったかのように笑いだすシエロ。
(アレが……普段主様が抑圧しているもの……)
 ジプスはその事実に震えた
(……凶暴すぎる!)
「……なあ、禮……記憶が抜け落ちているんだが……」
「……ええ、わたしもです……怖いですね、兄さん」
 そう禮と海神はそろって頭をひねった。
「……!! なっ……あ……えっ!?」
 しかし冷静になってみればあられもない姿をしている者も多く、マコトにいったっては薄手のシャツとタイツにパンツという出で立ち。その異常さに気が付いたマコトはシエロに駆け寄った。
「うぁああっ! シエロちゃん! 助けてぇええっ」
 この時最後の反逆と言わんばかりにディメンションクラウンが発動。真の下着がふわりと空中に浮く。
 つまりそのシャツの下は……
「気づいたらなんでか知らないけど服が……服が!!」
 そんなマコトをシエロは爽やかな笑みでなだめるのだった。
 だが嬉々としてディメンションクラウンの実験を繰り返す者もいる。
 カグヤである。その手にはペットの雲をいれた虫かごが抱えられていた。
「さあ! 量子再構築の際に間違え、わらわを蜘蛛と一体にするのじゃ」
「遙華ー、遠隔の自爆スイッチってどこー?」
 そうこうしている間に、H.O.P.E.の護送車が見え、それを詰め込むとリンカーたちはやっと解放されたのであった。

● ちなみに蒼ホープマンは。
 なじみのネカフェでジュースを飲みながら、その光景を見つめていた。
「もう、ホープと関わらないようにしよう」
 そう構成することを決めたのだった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518

重体一覧

参加者

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • エージェント
    ルゥナスフィアaa0124hero002
    英雄|8才|女性|ソフィ
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • エージェント
    aa0208hero002
    英雄|50才|男性|カオ
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命
  • おうちかえる
    クー・ナンナaa0535hero001
    英雄|12才|男性|バト
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
    機械|17才|女性|生命
  • 解放の日
    ジスプ トゥルーパーaa0575hero002
    英雄|13才|男性|バト
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避



  • 血まみれにゃんこ突撃隊☆
    東雲 マコトaa2412
    人間|19才|女性|回避
  • クラッシュバーグ
    エリザ ビアンキaa2412hero002
    英雄|15才|女性|シャド
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • エージェント
    稲田藍aa3140
    獣人|35才|男性|回避
  • エージェント
    天狼心羽紗音流aa3140hero001
    英雄|45才|男性|シャド
  • エージェント
    町田紀子aa4500
    人間|24才|女性|攻撃



  • ヘラジカ大好き(意味深)
    ヘルガ・ヌルミネンaa4728
    人間|20才|女性|生命



前に戻る
ページトップへ戻る