本部

アドベント・ストレンジア

鳴海

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/12/24 22:23

掲示板

オープニング

● 金張 透歌(かなはり とおか)の独白。

「愚神ストレンジャーは、私達の技術を『奪い』成長するのよ」
 そう無事にアイアンパンク手術を終えた透歌は、君たちを呼びつけて口を開いた。
「スキルや武器だけじゃない。戦い方、戦法。その全てを。だから」
 透歌は痛みに耐えるように目を瞑り、そして大きく瞼をあける。
「ストレンジャーは、強い敵が多ければ多いほど力を増すの」
 透歌は言った。
 自身のスキルを防ぐと同時に、同じスキルを使用されての反撃。
 ブレイブナイト盾を奪い、その技術ごとコピー。
 そして武器の複製。果てはウエポンズレインと、サンダーランスのスキル合成。
「あれは悪夢よ。警告するわ。討伐部隊には経験も薄いメンバーを向かわせた方がいい」
 こんな風に透歌が言い始めたのにはわけがあった。
 先日、とある亜熱帯の霊石鉱脈でその一帯をことごとく破壊して見せた愚神。
 それこそがストレンジャー。
 その映像を唯一のいきのこりである透歌に見せたところ、それがはっきりしたのだ。
 そして。
「あいつは何かを探している、それは私と戦っている時もそうだった」
 そしてその、探しているもの。それをH.O.P.E.は一足先に発見していた。
「ラジェルドーラ……」
 透歌は告げる。
「確かに、私達と戦っている時のストレンジャーもその名前を口にしていた」
 そう透歌は拳を強く握りしめると、涙ながらに君たちへと語った。

「どうかお願い。『デアトラテ』の仇をうって。そして、私と、彼のなしえなかった平和を、どうか、あなた達の手で」 

 その後、心拍が上がってしまった透歌から引きはがされるように病室を出た。
 術後でまだ隊長の安定しない彼女をこれ以上興奮させるのは危険だという判断だ。

● 状況整理。
 戦闘地域 亜熱帯 ジャングル奥地 霊石高山にて。 半径100SQの急斜面伴う森の中
 地域特性 霊石がところどころ露出しており、それはわずかでも霊力に触れると爆発する。この僅かというのは、共鳴したリンカーが触れる程度で爆発するということである。
 スタート地点 戦闘区域中心からスタート、ストレンジャーは東端から出現
 敵の目的 戦闘地域西端、石碑となった『ラジェルドーラ』との接触。

作戦目標 ストレンジャーの撃破。


● 武力王
「王よ!!」
 ストレンジャーと呼ばれる愚神に、名前はなかった。
 それも当然だろう、彼は自身が仰ぎ見る王の力の一部でしかない。
 すべての武力を吸収し、暴力を制する、世界の覇者。
 その主が命ずるままに、ストレンジャーはすべてを破壊してきた。
 たとえば目の前のリンカー
「少林寺拳法と言ったか、生ぬるい」
 そう彼は日本発祥の武術を中国深く根付く武術で打ち破り。
「軍隊格闘技、なかなか面白い」
 そうロシア軍が誇る殺傷技術をとある世界の龍人が好む飛行戦術で打ち破った。
「リンカー、面白い、面白いぞ」
 彼には武力というものがおおよそ通じなかった。
 彼は武術、武力を吸収するだけでなく瞬時に分析し、自分の中の技術、知識で対抗策を練り上げてしまう。
 それ故に築かれたのが。
 十五人の死体の山だった。
 
 山で遭難したリンカーたちを救助するために編成された愚神討伐部隊。
 彼らは、自分が狩るべき相手がストレンジャーだとは知らなかった。
 いや、知っていたとしても、彼の真の力を理解できるのは透歌だけ。
 結果は変わらなかったかもしれない。
 だとしても、仕方ないと片付けられる、死の数では。なかった。

「面白い、面白い!」

 そう笑う彼は死体の山、その頂上に腰を下ろした。血の滴る残骸の頂点。
 武力の支配者を気取る愚神は高らかに笑いを響かせる。
「さぁ、次のチャレンジャーがお待ちかねのようだな。殺そう、奴らの全てを奪って」

 そうして。はるか上空1500Mの地点から、ストレンジャーの檻が投下された。

● 補足
『ストレンジャー』 
《飛べぬなら、歌えぬなら》ヒロイン『金張 透歌(かなはり とおか)』を飛べなくしてしまった張本人。その任務では討伐しきれず、逃走したことがあかされている。

『ラジェルドーラ』
 ハードモードトライアルのチャレンジャー。しかし皆が知る個体はハードモードトライアルですでに撃破されているはず。
 ここにいる、ラジェルドーラとよく似た存在はラジェルドーラなのだろうか。
 そして石碑に刻まれた。
 グラノゼーテ、この言葉の意味とはいったい……

解説

目標 ストレンジャーの撃破。

-------------------------------------PL情報
《ストレンジャーについて》
 肌が黒曜石のように黒く、硬い、人間型の愚神。身長は二メートル程度。
 足と背中のスラスターから火を噴き空を飛ぶことができる。
 愚神から奪った能力のようだが…………
この愚神の戦闘力は最初は弱めのデクリオ級だが、最高で強めのケントゥリオ級まで育つ可能性がある。


〈スキル情報〉
・リーディング
 自身がその身で受けた戦闘技術を奪う。さらに武器まで影で再現し、その技術を模倣する。その身に受けたスキルも情報や知識として自身の内部に蓄積させる。
 ただし、24時間でその技術は忘れ去られてしまう。


・リビルディング
 受けたスキルを食らった時の性能から若干強化して放つことができる、しかも回数制限がないため考えなしにスキルを使うと、地獄のスキルコンボが待っているかもしれない
 
・アドバンスド
 スキルとスキルを合成して放つ。ビックボーナスステージ、ハードモードトライアル参加者であれば感覚がつかみやすいかもしれない。
 三回使用可能。 

・ソニックモード
 常時、ラウンド中三回行動を約束するスキル。ただし二回目の行動は自身のイニシアチブが半分、三回目の時はさらに半分になっているため。即座に三連撃は原則としてできないようだ

-----------------ここまでPL情報

リプレイ

プロローグ

「生存者は……なし……。ひどい……どうしてこんな」
 『御門 鈴音(aa0175)』急ごしらえのテントの中で黙とうをささげていた。
 眼前に並ぶのはまだ引き上げることのできないでいる、戦闘員の亡骸。
 だがこの目の前にある死体はあの『ストレンジャー』が出した犠牲の一部で書ないことを鈴音は知っている。
 鈴音は目を見開いた、遠くに響く不吉な声が聞こえた気がしたから。その肩を『月鏡 由利菜(aa0873)』が叩いた。
 そんな二人を心配そうに見守る『ウィリディス(aa0873hero002)』
 その三人をテントに残し『輝夜(aa0175hero001)』は表に出た。からりと晴れた青空、そのはるか先を輝夜は見つめる。
「相手は文字通り『化物』なのじゃろうな」
 今は眼前になきストレンジャー、その姿が、かつての自分と重なる。
 だからこそ、その危険性もわかっていた。
「……こういった手合いに話は通じぬ……鈴音。油断するでないぞ」
 テントから出た鈴音に背中でそう告げ、鈴音はその言葉に頷いた。0
 そして共鳴の光が、キャンプ地点のあちこちで散る。
「我面呉家祖上伝承着形意拳、為了打倒妖怪、需要更強大的力量」
 拳を打ち付けて気を練る『呉 淑華(aa4437)』彼女はいまだ見ぬ得意な敵とまみえることに喜びを感じていた。
――戦う相手の技術を奪う……? 面妖な相手です。
『アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)』がそう告げると、慣れない剣の感触に首をかしげる。
「うーん、まずは様子見が必要かな? まずはこっちの手の内を隠して戦わなきゃね。
『志賀谷 京子(aa0150)』
――ええ、普段とは違う戦い方が要求されますね。
「ラジェルドーラの名をも気になるし、やるだけやってみよう!」
 京子はそうレーヴァテインを構えて見せる、その姿は様になっていたが付け焼刃に過ぎない。この任務のために『ナラカ(aa0098hero001)』率いる『戦狼』の前衛面子に扱いを習ったのだ。
「ビッグボーナスステージ、関連の依頼ですか……私も少しだけ参加しましたね」
 ラジェルドーラの名前を由利菜は聞きかじっていた、塔に封印されていた機械龍、それが目覚め新たに立ちふさがったのがハードモードトライアル。
 自分には無関係ではない気がした。
「ユリナ、今回は支援と回復メインだね」
 そんな一行を樹の上から見下ろしているのはナラカ、
「どうした?」
 そんな少女然とした審判者に『八朔 カゲリ(aa0098)』は声をかけた、彼女が乗り気ではないような気がしたのだ。
 そんなカゲリの言外の思いを感じ取ると、ナラカは視線だけをカゲリに下ろした。
「いや、興味はある、それに面白くは思う、だがその面白さは道化それでしかないだろう?」
「師より型を倣いて守り、磨いてその型を破り、新たな型に目覚めて師から離れゆく」
「守破離の概念ですね?」
 淑華が答えた、それにナラカは満足そうに頷く。
「それには技術に対する先達への敬意が存在する」
 それは淑華には大いに理解できる概念だった、彼女も凄腕の武芸者、しかし道はさらに続いている、終りなど無い。それ故に、自分より少しでもすぐれた技術を持っている者は偉大だ。
 であれば淑華は敬意を払うし、その技術を共に護りたいとも思う、しかし。
「然し、この者にはそれがない。ただ出来るだけで、何と下らない」
 ただできるだけ、それはとても恐ろしいことのはずだ。だがナラカはそれをつまらないと吐いて捨てた。
 その程度では試練にはなれど脅威にはならなない、そう思ったからこそ、ナラカはカゲリを引っ張ってきたのだ。 
「戦いながら強くなる敵。皆は、そして覚者は如何抗う?」
「決まっています」
 由利菜は答えた。
「絆の力で」
 そう鈴音も答える、二人は視線を合わせると、はるか上空の禍々しい力に意識を向ける、青い空に黒い点。
 接敵まであと三分程度だろう。
 全員がテント地を背に歩き出した。


第一章 
『T.R.H.アイーシャ(aa4774)』は隠れて様子をうかがっていた。
『ギルガメッシュ(aa4774hero002)』はじっと動かない彼女に不安になって声をかける。
――撃つのか?
「手はず通り機会を待つわ、コピーされたらたまらないから」
 スナイパーの仕事の八割は待つことである。それをアイーシャはよくわかっていた。
「全部戦争と同じ、焦ったほうが負け」
 そうアンチマテリアルライフルの表面を指でなぞった、硬質な音が二人の耳に響く。

   *   *

 それは近づくほどにはっきりと形を成して見せた。スラスターを全力でふかせて空を舞うストレンジャー。
 それは二メートル程度の、陰に見えた、ただ背中や腕部にメタリックは出力口が備わっており、それがスラスターだと一目でわかった。
 そんな愚神の視界に入る位置を選んで由利菜は凛と立つ、そして真っ向からストレンジャーを挑発した。
「我が名は月鏡由利菜、HOPEの聖女。ストレンジャー……! 個の能力に限界があることを知りなさい!」
 にたりと歪むストレンジャーの口元。明らかに軌道が変わった、空に伸びるような上昇ではなく、姿勢を下に向けた下降。
 隕石のように由利菜へと襲来し、激突、周囲の地面を盛り上げて、木々をなぎ倒す、衝撃波が由利菜の髪を揺らして、次の瞬間周囲の霊石を爆破させた。
 立ち上がる炎の柱、そして半円状の爆炎。
 それを切り裂いて鈴音は進みストレンジャーの横っ面をなぐりつけた。
 あまりの筋力にストレンジャーは吹き飛ぶが、スラスターをふかせ空中で体制制御、樹に両足をつけ、ストレンジャーは飛んだ。
 それを迎え撃つのは背中合わせに立つ。鈴音と由利菜。
 まずは由利菜が前に出た、大盾を押し付けるように前へ、それをストレンジャーはスラスターをふかせて跳び箱のように手をかけ回避。そのまま鈴音に向かう。
 その行く手を遮るのは無数の弾丸、カゲリが木々の間を飛び回りながら狙いをつけているのだ。
 一瞬足が止まったところで鈴音の反撃。横なぎの一撃はスラスターによって止められる。だがこれでは終わらない。
 両腕で力いっぱい絵を握り、上下左右に動かないようにしたまま、前に駆けた。
 火花が散り、スラスターに傷がつく。
 まずいと思ったストレンジャー。しかしすでに次の手は用意してあった。
「がっ!」
――鈴音!
 そのストレンジャーの足元、その陰から鬼帝の剣と酷似したフォルムの大剣が射出されたのだ。それは深く鈴音の腹部に叩きつけられ、鈴音のつま先が地面から数センチ浮いた。
 その直後信じられない速度でストレンジャーが動く。
 その剣を抜き取り切り付けるというシンプルな動き、それが精錬された最短ルートで迫ったのだ。鈴音の剣技の模倣である。
 だがそれを由利菜が止める。
「私達が戦う皆さんをバックアップします、テラペイア!」
 直後鈴音の体内にみなぎる霊力、その大剣を地面につき刺し吹き飛ばないように体を固定、着地して由利菜の前に立った。
「……行くわよ、鈴音、輝夜さん!」
――依頼ではデスゲームでの対戦以来か~……。ユリナって、リンネちゃんは呼び捨てだったっけ?
「リディスと契約する以前から、長い付き合いですから……ね」
――なっ……!? あ、あたしもユリナの親友代表として負けないからね、リンネちゃん!
「ええ! えっと、何といったらいいか、私……その」
――照れておる場合かの!! くるぞ鈴音!!
 その瞬間はじかれたように前に出るストレンジャー。だがその刃を。
「そこまで! それ以上は進ませないよ」
  受け止めて見せたのは京子。
 そして一瞬止まった大剣の腹を『鬼子母神 焔織(aa2439)』がバグ・ナクで叩いた。
 衝撃を吸収するためにスラスターをめちゃくちゃにふかせ滞空するストレンジャー。
「この装備デハ、コノ程度のパワーしか出ナイんですね」
 焔織が確かめるように両手を握ったり開いたりする。
「うわ、手がびりびりする」
 そう京子が苦笑いを浮かべた。
《うわ? てがびり、びり》
 そう地に響くような低い声でストレンジャーが告げる。
「喋った!」
「愚神デス、喋リもスルでしょう」
 焔織はそう告げながら戦略を組み立てていく。
(……マズは、基礎。《打たせる》《崩す》《掴む》…………五行拳は……まダ……)
 直後ストレンジャーは大剣を投げ捨てて京子のレーヴァテインを模試、そして左手は拳を握る。
「……鶏はヒヨコでは無く、ハトを産んだ」
 焔織が告げた直後駆けだしたストレンジャー、上体をのけぞらせるように飛び、左手の拳を突き出した、それを京子は切り払う、その瞬間。
 ストレンジャーはスラスターをふかせた。左足がまるで砲弾のように射出される、それが京子の顔面をえぐらんと迫る。
 だがその足は『御神 恭也(aa0127)』の放った弾丸でそれる。
「直接攻撃では無いし、苦手な得物での攻撃だコピーされても問題はないはずだが……」
――いや、狙いは正しい。
 恭也のインカムにナラカの声が届いたと思うと。
 体勢が崩れたタイミングを狙ってカゲリはそのスラスターを集中攻撃する。
――此度の敵はわかりやすいな、技術を吸収しやすい敵に向かって行く本能があるらしい、だから我々は攻撃されない。
 ナラカが告げる我々とは銃を獲物とする恭也とカゲリのことだろう。そしてそのナラカの言葉に『伊邪那美(aa0127hero001)』が同意した。
――ボク達がしているのは補助的な行動だから単体で動いている彼奴には模倣しても意味がないから大丈夫だよ。けど。
 伊邪那美はストレンジャーを凝視しながら告げた。
――予想以上に強い。
 全員が事前情報にそって、手を抜いている、もしくは武装を弱いものに変えているのだが、それではストレンジャーの勢いを止めきれない。
 怒涛の三連続攻撃、それを鈴音は大剣一本で器用に捌く、その蹴りが脇腹をえぐる瞬間。由香里の槍がストレンジャーに突き刺さる。
「飛べ、神の槍!」
 その槍を無造作に抜き、捨て。両手の拳を握る、木々の隙間を跳躍し迫る少女が見えたからだ。淑華の姿である。
「劈拳!」
 上から下に拳を振り下ろす、それはストレンジャーをかすり地面を叩いて揺らした。
「鑚拳!」
 下から上に伸び上がる勢いものせた打撃、その打撃をストレンジャーはコピーした盾で防ぐ。
「崩拳!」
 その盾を真っ向から突き放つ衝撃で気に叩きつけられたストレンジャーのスラスターが軋む。
《鑚拳? 主、しってる》
「炮拳!」
 開くような動作で放たれる拳、それを予想していたように同じ動作で拳を放った、相殺。だがまだ淑華の連撃は終わっていない。
「横拳!!」
 だがその攻撃をストレンジャーは手首を叩き落とすことによって止める。淑華の体制が崩れた。
 まずい、そう感じ、カゲリと恭也の弾丸が飛ぶ、バックステップしそれを回避するストレンジャー、それに追撃するために焔織が動いた。
 蹴りをストレンジャーに放つ、だがそれは後ろに急加速したストレンジャーの動きで交わされてしまう。
「早イ!」
 直後つま先を地面にめり込ませて急ブレーキ、そのまま前に急加速。
 それに二人は素早く反応、体勢を立て直すも大剣の一薙で二人とも吹き飛ばされてしまう。
 さらにスラスターを左右交互に吹かせて、ステップをきかせる、鈴音へ肉薄。
 しかし、その攻撃に鈴音は反応しない。
「信じてる」
「させません!!」
 割って入った由利菜の盾が、完全にその大剣を防いだ。一瞬体制の崩れるストレンジャー、それを鈴音は見逃さない。
――やれ! 鈴音!
「これなら、あなたはコピーできないはず!!」
 前に出てただ全力で大剣を振り下ろすだけ。
 それは単純にして最大の威力を持つ。普段であればそんな攻撃は当たらないだろう。
 だがそれはストレンジャーの肩を切り裂き気負い余って地面を割った。
 それが当たったのは一重にコンビネーションの力。
 体勢が崩れたストレンジャーの背後から魔弾が迫る、しかしそれをストレンジャーは左腕スラスターを起動して回転、回避。
「あと、少しだったんだがな」
 恭也は歯噛みする、スラスターを狙って弾丸を放ってはいるが、まるで背中に目があるように直撃は避けられていたのだ。
「どうしました? やはり一人では私たちにかないませんか?」
 由利菜はそう、ストレンジャーを盾の向こうから眼光で威圧した。
 森から躍り出る京子、その刃がスラスターを切りつけた、爆音が鳴る。
「ラジェルドーラ、探してるの? あなたも武力王の配下なわけ?」
《武力王、主、わが、主》
「そうか、なら、いっそう負けられないな!」
 その時、ストレンジャーは足を踏み鳴らした、直後爆発、濛々とたちこめる煙の向こうにストレンジャーはいなかった。突如消えたストレンジャーは。
 だが一歩離れた場所から見つめている者であれば彼が超高速で戦域を突破したのがわかる、アイーシャ、恭也、そしてカゲリはあわててストレンジャーを追った。

第二章

 意外とそれは地表近くにあった。おそらく自信か地殻変動で上まで運ばれてきてしまったのだろう、完全に石化したラジェルドーラは何もしゃべらない。
『東海林聖(aa0203)』は見上げるほどの龍の石碑、それを唖然と見つめていた。石になっても感じられる覇気、そして高揚感。
 間違いなくあいつだ。しのぎを削り、命をとし、撃退した。
 紛れもないラジェルドーラだった。
 その石碑に『Le..(aa0203hero001)』は手を伸ばす。
「さわんな、ルー」
 聖の動物的直観が告げている、霊力を近づけさせてはならない。そんな予感。
「これは、スゲー状態で」
『フィー(aa4205)』が告げる
「……なんでこんなモンがコッチにあるんだ」
「さぁ、ただ……んー、流石にこれを壊すっつーのは不味いですよなあ」
 フィーが武装を構えてあっけらかんと言い放つ。
「他ニモ重要ナ事ガ書イテアルカモ知レナイシナ、丁重ニ扱エ」
『ヒルフェ(aa4205hero001)』がそうたしなめた。
 そんな石碑を、いやドーラの表面を調べていると文字が書かれているのがわかった。それは中国語で書かれていたが後に淑華に翻訳させるとこんな内容であることがわかる。
『其の物勇者たる資質をもって百鬼夜行と相対す。其の物千の力束ね、武力の王となった。その拳万の悪霊を撃ち滅ぼし。しかし傷つき億年の眠りにつく。しかし王はいつか読みがえり。染められた心にて●の世界を滅ぼすであろう』
 またこうもかかれていた。
『五機の龍、かの者を守護する、時きたらば、その身をとして、王の眠りを覚ます』
 直後背後で爆発音が聞こえた。
「意外に進行がはえーですね」
 フィーはそう告げ大剣を構える、普段使う研ぎ澄まされたそれに比べるとまるでなまくらのような代物。
「さて。そろそろ戦場に向かいましょーかね」
 その言葉に聖も頷き共鳴を始めた
「……さてさて、期待通りの奴ならいいんですがなあ」
――話ダケ聞クナラ中々面白ソウナ奴ダガナァ、実際ドウダカ」
「ま、”あいつ”と同じいい武人である事を期待しましょーかね」
 そう聖とフィーはインカム越しの非常事態に対抗するため武器を構えた。   
 
    *    *

「く、早い!」
 駆けるストレンジャーの背中、恭也はそれをスコープでとらえようとするが、細かに左右にぶれるので狙いがうまく定まらない。銃の技術をラーニングした結果、回避方法までも習得したようだった。
 そのストレンジャーの動きに対応するためアイーシャが追っていた。
 カゲリの銃弾を一跳躍でかわすストレンジャー、その目指す先には岩に閉じ込められたラジェルドーラが存在する。
「まかせろ! カゲリ、ナラカ!」
 だがまだ爪が甘い、そう森の中から飛び出してきた聖が、滞空していたストレンジャーを叩き落とす。
 その瞳は両手に握られたヴァルキュリア以上に鋭く、ぎらついていた。
「よくもやりやがったな、お前!」
――ムカ付くのは解るけど……感情的に成り過ぎないでね、ヒジリー……
 その言葉を振り切って跳躍する聖、それを迎え撃つのはストレンジャー、だが剣技は鈴音のもの。
「……テメー……モノマネが特技か……」
――マネだけならいいけどね……
 重たい大剣同士が何度もぶつかり合う。
「はあ!」
 瞬時に半歩下がる聖。
 次いで前へ斬撃を重ねX字に切りあげ、大剣を跳ねあげる。
 獲物をはじきあげた、通常であればその時点で勝負は決したと言える。
 実際聖はトドメをさそうとさらに踏み込むが次に襲ってきたのは拳だった。
 腰をひねり足を踏みだし肩を回す、バラバラのように思えるその動きは全て右の拳に加速度を集約させるための動きであり、極めて合理的かつ実用的、中国武術に代表される体術の動きだった。
 そして放たれたのは掌底。
 それが聖の腹部にめり込んだ。
 さらにストレンジャーは片手剣を召喚、今見たばかりの聖の動きを模倣し、二連撃を繰り出す。
 その斬撃をノーガードで受ければまずい。だが防ぐ手段は、ない。
(模倣して混ぜ合わせて強くなる……だと、それがあれだけの人間を……っざけんなッ!!)
 怒りを噛み殺し歯を食いしばる聖、その体を剣が貫く……はずだった、間に入ったのは京子。
 その剣がストレンジャーの太刀筋を妨害する。
「うわ~やっぱり手が痺れる」
「京子!」
――何がまかせろだ。窮地じゃないか。
 カゲリの銃撃が真上から降り注ぎストレンジャーをその場に縫止める。
 その間に体勢を立て直す二人。
「ついて来い!」
「ええ! どうするの?」
 聖が先に駆ける、軽く追撃。
 反撃を狙うストレンジャーの逆サイドに回り込んで京子は剣を叩きつける。
 その剣劇は正確にスラスターを捉え、腕部に損傷を与えた。
「見えるのか!」
「200M先から狙撃するのに比べたら朝飯前だよ!」
 三人はここにきて火がついたように猛攻に出る。聖が打ち合い、その懐に入り込んで京子が切りつける。
 それに対して反撃を繰り出そうとするストレンジャーの動きはカゲリが阻害する。
 二人は距離を取り、再度接近聖は三歩で背後にまわり、斬撃。
 反射的にふられた大剣の威力に吹き飛ばされそうになるも。聖の体を京子が支えて受け止める。
「なまぬりぃですな」
 そのつばぜりあう大剣めがけて、フィーがグレートソードを叩きつけた。
 衝撃で体の浮いたストレンジャー、それを撃ち貫くのは恭也の弾丸。さらに懐に潜り込んだ淑華。
 全員が追い付いてきた。
「こんどこそ、当てます!」
 掌底、それがストレンジャーを樹に叩きつけると焔織の膝蹴りが飛ぶ。即座に反転その拳を瞬間に三度叩きつける。
《うああああああああ!》
 叫んだストレンジャー、その声は聖の物に酷似していた。
 即座に屈み回避、陰に手を突っ込んで大剣を取り出す、その刃を振るうも軌跡を先読みし、由利菜が盾で大剣を抑える。
 鈴音が刃を突き出した。刺突だ。
 それを即座にバックステップしたストレンジャー。かする程度ですんだが、その後ろにはフィーが控えている。
「あ? あんたにはまだこれで十分なんで」
 ついに回避しきれず直撃を受けて転がるストレンジャー、それを見下ろしフィーは告げる。
「どうした? あんたはただ模倣するだけですかいね? どうせその模倣の能力もあんたの主とやらから貰った貰い物の力じゃねーんで?」
《うあ、そうだ、主がくれた、わがイノち、主のもの》
「……期待外れでやがりますか」
 その会話を遮ってアイーシャは弾丸を放った。
 その横たわった体制のままストレンジャーはスラスターをふかし、空へと浮かぶとまた立ち上がる。
―― 焔織ッ! あれ、キナ臭いぜよ……ッ!
 『青色鬼 蓮日(aa2439hero001)』が告げる。それに焔織は頷き、完全にスラスターを破壊しようと動いた。
 「門開き、八方が極遠まで届け……ッ」
 背後からの一撃、その拳は鋼鉄すら撃ち砕き、背部スラスターを粉々に粉砕した。だがそこで、その時ストレンジャーが進化を遂げた。
《我が糧、痛み入る》
 次いで、ストレンジャーの壊れたスラスターが爆ぜ、その残骸が焔織に当たった。素早く体制を立て直すも、その両肩を二本の刃が貫く。
《連携? 一人ではむり、ならば二人になればいい、我唯一。ゆえ。二人すら一人で……》
 見ればスラスターがはずれ背中から腕が生えていた、新たに増えた二本の腕。その手に握られているのは二本のレーヴァテイン。
「あいつ、私の剣を」
 にやりと笑うストレンジャー。
「だがわたしはあと二回の変身を残しているッ!」
 いい加減剣では無理だと即座に判断した京子はいったん後退する。
――ハァ。
 京子の言葉にため息をつくアリッサ。
「おもしれーです!!」
 フィーの鴇の声で全員が動いた。それに対応するためにストレンジャーは焔織から剣を引き抜き、真っ向から相対して見せた。
「セラピア!」
 由利菜が焔織を癒すと、焔織も戦闘に参加する。
「やられた分は倍返しする……行くぜ、ルゥ!」
 その攻撃を支援するように石が飛んだ、それは単なる投石ではない。
 それがストレンジャーに当たると爆発し、ストレンジャーは呻いた。小さな霊石である。
 それを投げているのは恭也。
「少しだけ手の内を見せてあげるね」
 京子は森の影に潜んでいた、その手になじむ長弓を軋ませ。銀の矢がストレンジャーの目を打ち抜いた。
《おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!》
 だが、ストレンジャーはその激痛に耐え聖に大剣を振り下ろす。
「……そっちが『そう』来るなら……こっちはその先を行くぜッ!」
 ストレンジャーの太刀筋は鏡で見た自分の太刀筋だ。だからわかる、それを超えられる、昨日の自分より今の自分が強くある、それが努力ということだから。
 その刃を踏み込んですれすれのところで回避。片部分の服を少し削って通過したそれを一瞥し聖はさらに一歩踏み込んだ。
 クロスカウンター。その刃を恐れず踏み出した先に勝利がある。
 その刃はついに、ストレンジャーの腹部を貫通した。
《あああああああああああああああああああ!》
 悲鳴と共に、全てのスラスターが吹き飛び、そして腕が六本になる。
 速度ではなく、手数。そう判断しストレンジャーは自分を進化させたのだ。

第三章

 焔織はだが、それまでのストレンジャーの進化を全て予想していた。
 透歌の報告にあったわけではないが、ストレンジャーが形を持たないものなのではないかという憶測が。透歌と話した時からあったのだ。
 焔織はこの作戦に参加する前に透歌の病室を訪れていた。
「最後、ニ……」
 病室を去る前に焔織は地面に頭をこすり付けた。
「前回は、申しワケなク……止める為、とは言エ、大切な方の名を挑発に使いマシた……」
「…………そんな、元はと言えば私が」
 その言葉を焔織は遮る。
「奪わレル、痛みは……ワタシも経験してオリまス。…………であ殿の名誉の為にモ、必ず、吉報を」
 そう顔をあげると、透歌は涙を流しながら微笑んでいた。


   *   *

 
 焔織の脳裏によぎる、あの時の光景。そしてここからが本番だという意識が全員にあった。
 ここで気を一瞬でも抜けば負ける、だが、進化の限界に達したストレンジャーにリンカーたちの奥の手は吸収できるだろうか。
「おいおい、おもしれーやつですね。集団戦にスピードで戦えないってわかった瞬間、腕でやがりますか? 気持ちわりぃですけど、面白れぇ」
 そうフィーは斧を取り出すと、それを振りおろす。
 その先ほどまでとはけた違いの質量と威力にストレンジャーは大剣二枚を重ねるようにしてガード、そして残りの手で。銃を生成構えて撃つ。
 迫りくるリンカーたちへの妨害だ。そしてストレンジャーは斧を弾き、逆に二本の大剣をフィーに叩きつける。
「がら空きです」
 だが淑華の接近を止めることができなかった、淑華から放たれた拳は流れるようにストレンジャーを打つ。
 あえて、ストレンジャーはすべての武装を投げ捨てた、拳の真っ向勝負、しかし、その腕の数は三倍。
《劈拳》《鑚拳》《崩拳》《炮拳》《横拳》
 五行の拳、それをまとめて放つストレンジャーしかし。
「木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生ず」
 その時淑華の体は限界の速度を超えた、突き出す拳を叩き落とし、上から下に撃つ拳を開く動きで無効化する。
「水は火に剋ち、火は金に勝ち、金は木に勝ち、木は土に勝ち、土は水に勝つ がむしゃらに放っても無駄です!」
 しかしその拳の全てを払うことはできない、なぜならば絶対的な筋力差そして手数の差があるからだ。だから崩拳までを捌くのがやっと。
「武の極致……ソレは……即ち《自然体》」
 だが、この面子に武芸者は一人ではない。焔織が躍り出た。
 そして敵の動きを拳でいなし、力を利用し止める。
 体制が崩れたストレンジャー。その背後から恭也とフィーが切りかかった。
 その渾身の双振り、それがストレンジャーの腕を切り落とす。悲鳴が上がった。
「あちらに大きな霊石がある」
 恭也が叫んだ。そこめがけて焔織はストレンジャーを投げ飛ばした。
 直後大爆発。あまりのエネルギー量に地面が割れ、木々が跳ね飛んだ。だがそれほどのダメージを受けてもストレンジャーが倒せているかどうかはわからない。
「バトンタッチだな」
 たちこめる煙の中に鈴音が突入する。
――鈴音よ、化け物は人間の手で倒されるべきじゃ。
「うん、終わらせよう」
 目の前にシルエットを見つけた鈴音、鈴音はそれに
「鬼帝招雷~天網恢恢~」
 渾身の一撃を叩き込んだ。だがその刃は軽々と受け止められた。
「え? ストレンジャーじゃない」
 唸るスラスター煙を振り払い、龍人が姿を現した。
「ラジェルドーラ……」
 京子は唖然とつぶやく、なぜ、どうして。
 状況が飲み込めなかった。だがそんな中でも動いていく聖。
(やるぜ、ルゥ!)
(……ん、遅れないでね、ヒジリー)
「全力で行くぜ……ッ! 千照翠騎流……破斥・千華ッ!!」
「待って! 東海林くん」

<Dスパーク>

 ラジェルドーラから放たれた電撃はあたり一帯にいるリンカーの神経を麻痺させる。
 その隙にドーラは空へ飛びあがると龍へと変形、その場から飛び立った。


 エピローグ
 一行はストレンジャーを見下ろしていた。干からびて紐のようになった手足を横たえるストレンジャー。
 結論から言うと、ストレンジャーの討伐はなった。
 だが、霊石の大爆発が地面をわり、ドーラの封印を解いてしまったみたいだ。
 ハードモードトライアルで見る封印の石、それと酷似したものが森の中で見つかった。
「あなたの目的はなんだったの?」
 京子はストレンジャーに尋ねる。
 だがストレンジャーは何も言わない。
 もう口をきけるだけの力がないのだ。そう判断した焔織はその愚神に引導を渡した。
「……お腹すいた」
 そんな一行から離れたところで、疲れ切った聖や由利菜が石に腰掛け座っていた。LEにウィリディスが話しかける
「……お腹空いたね。ルゥちゃん、みんな、打ち上げにユリナのバイトしてるベルカナでお食事会やらない?」
 はじかれたように立ち上がるLE
「皆さんも疲れているでしょう。いかがでしょうか?」
 由利菜が言うと一人を除いて全員がその提案に乗った。
「んじゃ、私は帰るんでね。食事なんぞに付き合ってる暇もねーんで」
 一人とはフィーのことである。
「イイジャネエカ、タダ飯食ッテコウゼタダ飯」
 ヒルフェがたしなめる。
「一人で行ってろ」
 まぁ、口は悪いが悪気があるわけでは無いのだろう、本当に食事をしている暇がないだけなのだ。きっと。
「ハイハイ、ンジャ帰ルカ」
 そうヒルフェは肩をすくめると、フィーの後ろをついて歩き出した。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
  • 武芸者
    呉 淑華aa4437

重体一覧

参加者

  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
    人間|15才|女性|生命
  • 守護の決意
    輝夜aa0175hero001
    英雄|9才|女性|ドレ
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 花の守護者
    ウィリディスaa0873hero002
    英雄|18才|女性|バト
  • 我ら、煉獄の炎として
    鬼子母 焔織aa2439
    人間|18才|男性|命中
  • 流血の慈母
    青色鬼 蓮日aa2439hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • Dirty
    フィーaa4205
    人間|20才|女性|攻撃
  • ボランティア亡霊
    ヒルフェaa4205hero001
    英雄|14才|?|ドレ
  • 武芸者
    呉 淑華aa4437
    機械|18才|女性|回避



  • エージェント
    T.R.H.アイーシャaa4774
    機械|16才|女性|攻撃
  • エージェント
    ギルガメッシュaa4774hero002
    英雄|23才|男性|ジャ
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