本部

【絶零】連動シナリオ

【絶零】hide-and-seek E

電気石八生

形態
イベント
難易度
難しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
25人 / 1~25人
英雄
24人 / 0~25人
報酬
普通
相談期間
6日
完成日
2016/12/03 15:27

掲示板

オープニング

●アヒル
 ザッ、シャカン。
 ザッ、シャカン。
 土を突き、掻き出すシャベル。
 わずかにも崩すことなく刻み続けられるリズム。
「まだ掘っているのか」
 色褪せ、ところどころがねじれ、よれたロングコートを着込んだ男がぽつり。
 ザッ。
「同じ闘争にのぞみ、死んでいった奴には、生き残った奴から敬意を払われるべき権利があるものと考えます」
 シャカン。
 髪も肌も新雪のごとくに白い――アルビノの少女はシャベルを振るうペースを落として男へ答えた。
「埋めるべきものはもう、欠片も残ってはおらんぞ」
「だとしても。生き延びた小官に払える敬意はこれだけですので」
 固く、生真面目で、音のか細いメゾソプラノ。
 彼女が穿っているのは、先の雪原の闘争でエージェントに倒された20の従魔の墓穴だ。
「……死んだ後に残るものは空の骸だけであろう。もっとも、我ら愚神と従魔はたいがい骸すら残さぬものだが」
 男のしゃがれたバリトン、そして薄灰の面には、死への畏怖も嫌悪もない。あるものは達観。ただそれだけだ。
「闘争に身を置く以上、結末は生きるか死ぬかだ。そうして生き続けた今、自分はここにいる」
 少女は凍土に突き立てたシャベルの柄を握り締め、低く語る。
「小官は遠くない未来、闘争の中で死にます。そのときには隊長、貴官が――」
 男は左手で少女の防寒コートの胸ぐらをつかみ、引き寄せた。
「リュミドラ・パヴリヴィチ」
「はい」
 胸ぐらをつかみ上げられ、宙づりにされながら、少女――リュミドラは応える。
「貴様の任はなんだ?」
「敵を撃つことであります」
「貴様の敵はなんだ?」
「群れを脅かすものであります」
「貴様は灰色狼ではなく、白アヒルだ。アヒルに狼の真似ができるか?」
 リュミドラは赤瞳をまっすぐ男の薄青い瞳へ向けた。
「努めます。命尽きるそのときまで」
 それは男が期待した言葉ではなかったが――男はリュミドラを放し、苦い笑みを浮かべる。
「鳴かん程度の覚悟はあるか。せいぜい努め、任を果たせ」
 リュミドラに生き抜けとは言えなかった。
 彼が言ってしまえば、彼女はただのアヒルに成り下がる。せめて狼の振りをさせてやり続けるのが上官としての情であろうし、それに――
 彼の葛藤を知ってか知らずか、リュミドラは無表情を保ったままうなずいた。
「群れの一端として務め、お与えいただいた任を完遂します」

●5時48分
 ノリリスク郊外に経つ最新鋭のライヴス発電所。
 火力発電所の老朽化を理由に建設が決まったこの施設は当初、多数の住民が詰め寄せ、反建設活動を繰り広げたものだ。曰く、得体の知れないエネルギーの安全性を信じることなどできやしない。
 しかし、稼働した発電所が造り出したエネルギーはノリリスク全域を十全以上に満たし、今や都市の生活すべてを支える存在となっている。なくてはならない存在――あって当然の恩恵として。

 シベリアの夜は長い。もっと南であれば、夜はとっくに白んでいるはずのこの時刻にあって、ノリリスクはなお夜闇の内にあった。
 発電所から100メートルの距離を置いた高台で、伏射姿勢をとったリュミドラがスコープを巡らせる。
 拡大されて映し出されたものは、各10体の人狼が成す3分隊がそれぞれ配置につき、合図を待ち受けている様だ。
 彼女はスコープを発電所の正門脇にしつらえられた警備員詰め所へ向けなおし、息を止め、鼓動を鎮め――引き金を静かに引き絞った。
 ズグン! ほぼ2メートルに達する銃身の内、刻まれたライフリングで超回転を加えられた12・7mm弾が夜気を力任せに引き裂き、自らの発した爆音と衝撃とを置き去り、飛ぶ。
 ラスコヴィーチェ――スラヴ神話に語られる森の守護霊にして狼の友――の銘を刻んだアンチマテリアルライフルの一撃が、詰め所の壁ごと内にいた警備員たちをまとめてぶち抜き、タルタルステーキに変えた。
 それを見た人狼どもが一斉に散じて駆ける。
 第1分隊は駆けながら敵を撃ち、ひと息にのど笛に喰らいつき、迷わずに心臓を引き裂いた。
 第2分隊は第1分隊の支援を行いつつ、仕込みを終えていた爆薬で送電線を切断する。
 すぐさま高台を駆け下りたリュミドラは、第3分隊とともに第1分隊がこじ開けた門から内へ。対テロリストを想定し、細い通路が複雑に絡み合う通路へと踏み込んだ。
 甲高い警報が鳴り響く中、警備の一団――警戒体制下にあるノリリスクの各所にHOPEから派遣されたエージェントたちがリュミドラの行く手を塞ぐ。
 横路へ彼女が跳び込んだ次の瞬間、銃弾が通路を埋め尽くした。上も下も余さず掃射して逃げ道を封じてくるあたり、さすがに練度が高い。
 そして、これだけの弾を当てられていて穴が空くどころか傷ひとつ残さないとは、さすが重要施設の建材は頑丈だ。
 リュミドラは弾倉を差し替え、薬室へ新たな弾を送り込む。
 通路を押し包む発射音に紛れて、こちらへ歩み寄ってくるリンカーの足音が届く。あと3歩。2歩。1歩――ここだ。
 リュミドラが銃口だけを通路に突きだして撃ったのは弱装弾。
 通常の弾よりも火薬量を減らしたその弾は、当然破壊力を大きく減じるものではあったが……
 壁に到達した弾が、それを貫くことなく弾け、通路を跳ね回る。
 跳弾。
 それこそがこの発電所で争うため、リュミドラの選んだ戦術であった。

 仲間の死骸を盾になお抵抗を続けようとするエージェントが、人狼の手榴弾で吹き飛んだ。
「制圧後、分隊は一時解散。作戦どおりの配置につけ。工作班3名は速やかに発電炉の回収を」
 指示を飛ばしながらリュミドラは胸中でカウントする。
 今日を生き延びた後、掘らなければならない墓の数を。

●緊急出動
 ノリリスク警戒の支援を目的に派遣されたHOPE東京海上支部所属エージェントたちの部屋へ、彼らと同じ支援要員である礼元堂深澪(az0016)のアナウンスが襲い来た。
『ライヴス発電所が従魔群に襲撃受けてジャックされたよ! 従魔の指揮をとってるのは、シベリアのドロップゾーンで遭遇が報告されたヴィランの“リュミドラ”!! 出動できる人はすぐ発電所に向かって! ライヴス発電炉を壊されたり盗まれたりしちゃったら、大変なことになっちゃう!!』

解説

●依頼
 30体の従魔群を殲滅し、制圧された発電所を奪回してください。

●状況
・敵の目的はライヴス発電炉の奪取です。
・発電所は外部への送電線が切断されていますが稼働中。発電炉が停止しないうちは灯の心配はありません。

〈発電所簡易地図〉
 アイウエオカキクケコサシスセソ
A□□■□■リ□□□□□■□炉□
B□□□□■□□■■■□扉□3□
C■■■□■□□□□■□■■■■
D■□□6□□■■□4□□□□□
E□□■□■□■■■□■■■■□
F□■■□■□□■□□6■□□□
G□□□□4■□□□■□□4□■
H□■■□■■□■■■■□■■■
I□□■□□□□□□□□□□□□
J■侵■■■■■■■□■■■■■

□=通路(幅・高さ2m、長さ10m) ■=壁(破壊不能) リ=リュミドラ 炉=ライヴス発電炉 侵=発電所入口 扉=発電炉室の出入口 3・4・6=人狼の位置と数

●リュミドラ
・武装はアンチマテリアルライフルとメギンギョルズ。
・アクティブスキルで判明しているのはテレポートショット×5。
・移動力は10。
・彼女の跳弾攻撃(射程5マス/通常射撃は11マス)は1~4回跳ね、複数人に複数回当たる可能性があります。

●人狼
・デクリオ級従魔。
・武装はアサルトライフル、手榴弾、爪牙。
・移動力は15。
・統率がとれており、互いに連携します。
・簡易地図に記された人狼は基本的に、エージェントが発電炉室へ到達するまでは1マス以上移動しません。また、数字はそこにいることが判明している従魔の数(計27体)となります。

●備考
・移動力は五捨六入で計算。移動力の一の位が1~5なら1マス、6~10は2マスとなります。
・タグ分けはしませんが、チーム戦を推奨。
・成功条件はあくまでも従魔30体の殲滅となります。
・従魔の配置には意味があります。

リプレイ

●疑問
 開け放されたままの扉をくぐり、エージェントたちがライヴス発電所へ踏み込んでいく。
「みんな、施設の簡易地図を持って行ってくれ」
 セレティア(aa1695)と共鳴したバルトロメイ(aa1695hero001)が、エージェントたちへヘッドライトと共に地図を手渡した。

〈発電所簡易地図〉
 アイウエオカキクケコサシスセソ
A□□■□■リ□□□□□■□炉□
B□□□□■□□■■■□扉□3□
C■■■□■□□□□■□■■■■
D■□□6□□■■□4□□□□□
E□□■□■□■■■□■■■■□
F□■■□■□□■□□6■□□□
G□□□□4■□□□■□□4□■
H□■■□■■□■■■■□■■■
I□□■□□□□□□□□□□□□
J■侵■■■■■■■□■■■■■

□=通路(幅・高さ2m、長さ10m) ■=壁(破壊不能) リ=リュミドラ 炉=ライヴス発電炉 侵=発電所入口 扉=発電炉室の出入口 3・4・6=判明している人狼の位置と数

「判明している従魔やリュミドラの配置、かならず互いが互いを支援する――十字砲火の形になっているようですね」
 地図を見ながらエリヤ・ソーン(aa3892)が語る。
「……にしてもよ、伏兵ってのはどこにいるんだ?」
 首を傾げる金獅(aa0086hero001)に、共鳴体の主導を彼に預けた宇津木 明珠(aa0086)が低く応えた。
『個人的には発電炉室の扉付近かと。挟撃を考えるならここでしょう』
「でしょう? めずらしくあいまいだな」
 明珠はまた低い声で。
『その位置が判明しないからこその伏兵です』
『……伏兵ねぇ。いきなり出てきて喜ばれるのはサプライズゲストだけよ』
 一方で、アル(aa1730)の内に在る雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)がため息をつく。
「27体の敵を発見してくれたプリセンサーでも視えなかった敵……怖いね」
 アルは壁に水回り補修用の耐水アルミテープ――本来使いたかった蓄光テープは見当たらなかったため、弱い光でも反射してくれそうなものを選んだ――を貼りつけていた手を止め、意志を込めたテクノボイスを響かせた。
「でも、ぜったい見つけてみせるよ」
 決意し、潜伏を発動させたアルの背後。獅子ヶ谷 七海(aa1568)との共鳴体を主導する五々六(aa1568hero001)が少女の顔をぎちりと笑ませ、四神「玄武の籠手」で固めた両の拳を打ち鳴らした。
「雌犬さんよぉ、おまえがその気なら比べ合おうぜ。抜けてきた戦場の濃さってのをな」
『……』
 内に在る七海は、その思いを語るぬいぐるみを持たぬがゆえ、無言。
「【戦狼】は直接、西北に陣取る6体へ向かう」
 団体行動を取るには路が狭すぎる。そのため、施設の西側を南北にはしる通路への進軍を決めた【戦狼】リーダー・八朔 カゲリ(aa0098)がメンバーと他のエージェントたちに告げた。
『その先にリュミドラが在るか』
 彼の内で独り言ちるナラカ(aa0098hero001)。
「俺たちは右折して向かい側で待つ4体をスルー、北上して【戦狼】に合流だ」
 灰燼鬼(aa3591hero002)と共鳴した沖 一真(aa3591)が、共に発電炉室へ向かう【炉】小隊の3組に声をかける。
 先陣を切る者たちを最後尾につき、扉の外を警戒するのは辺是 落児(aa0281)と共鳴した構築の魔女(aa0281hero001)だ。
「ここで後ろから強襲できれば効率よくダメージが与えられますが……」
 その魔女へ、内から落児が声をかける。
『ロ――ロロ、ロ』
 それはないと思う。落児の言葉に魔女が「そう思う根拠は?」と問うた。
「ロロ、ロロロ……?」
 敵の目的、こちらの殲滅ではないのだろう……?
 確かに。敵は連携こそしているがばらけているし、なにより最大火力を誇るリュミドラの位置取りが中途半端すぎる。
「私たちを殲滅させようという意図が薄いようですね」
 これを聞いた梶木 千尋(aa4353)が、内の高野 香菜(aa4353hero001)に訊く。
「香菜の見立ては?」
『遅延戦術じゃないの? 少なくとも人狼たち、生きようとはしてないね』
 体を逸らして豊かな胸を張り、千尋が鼻を鳴らした。
「――死にたがりは嫌いだわ」
『ボクは死兵を使う指揮官がゆるせなくてね』
 だとすれば、成すべきことはひとつ。
 進み始めた魔女と千尋に従うHeinrich Ulrich(aa4704)はアイアンシールドにその老いた体を隠し、つぶやいた。
「やれやれ……我が鉄の盾、跳ね回る弾をどれほど弾いてくれますか」
『悲観は悲劇を招きますよ。今は対するものが竜の炎でなかったことを喜びましょう』
 内のベオウルフ(aa4704hero001)の言葉にHeinrichは苦笑する。
 元は研究者であった彼が題材としていたデンマーク古典、そのうちのひとつであるベオウルフの物語では、英雄ベオウルフは竜の炎に鉄の盾で対し、命を落とすのだ。

 ……かくしてエージェントの先陣を行く【戦狼】が、北と東の分かれ道――簡易地図のGアへ差しかかった。
 東側からの銃撃がエージェントを叩き、他の小隊に先んじて東へ折れた【炉】がまずはこれを迎え討つ。
 その様を横目で見やりながら【戦狼】と共に北を目ざすArcard Flawless(aa1024)が、ぽつり。
「このあたりでテレポートショットが来るかと思ったんだが」
 パラディオンシールドを構えたまま肩をすくめるArcardに、内から木目 隼(aa1024hero002)が応えた。
『温存しているのでは?』
「コウチクくんが言っていたじゃないか。入口で固まっているボクらに後ろから強襲できたら効率的だと」
 Arcardは眉根を寄せ。
「従魔はともかく、リュミドラがそれをしないことで保てる効率――なにがある?」

●衝突
「俺たちは続く隊が来るまでの繋ぎだ!」
 守護刀「小烏丸」で弾を斬り弾きながら先頭を駆ける一真。
「……しかし、侵入を防ぐための通路を侵入者に使われてちゃ世話ないな」
 一真のぼやきに灰燼鬼が低く、
『奴らが突破できたのであれば、我々にも同じことができるはずだ』
「そ、そうです! 御屋形様にあだなす者は全て我が魂、童子切のさびにして参ります! そして全身全霊でお守りいたします御屋形様!! 粉骨砕身木っ端微塵のこころで――」
 一真のすぐ後ろ、童子切をぶんぶん、鼻息をふんすふんす、鎧をガッシャガッシャする、自称・一真の家臣こと三木 弥生(aa4687)。
『せいぜい吹っ飛んどけ。俺の骨を砕いてくれなきゃ存分に砕け散れ』
 契約英雄、三木 龍澤山 禅昌(aa4687hero001)が気のない声を垂れ流した。
「俺は月夜に煌めく赤色巨星! 爆炎竜装ゴーガイン! これ以上、貴様らの好きにはさせん!」
 紅の輝きを湛えたメタルボディから炎がごときライヴスを噴き上げ、【炉】の最後尾を行く飛岡 豪(aa4056)がフリーガーファウストG3“ドラゴンハウル”を構えた。
『照準セット! いつでも行けるぜ!』
 内のガイ・フィールグッド(aa4056hero001)がサムズアップ。
「竜の怒りを受けてみろ! 爆炎逆鱗ドラゴンスケイル!!」
 ロケット弾と化したライヴスが飛び、狭間からエージェントを撃ち続ける人狼のただ中で爆炎をあげた。
 かくして一瞬、銃撃が鳴りを潜めたかに見えたが。
『手榴弾が来ます。状況からして、打ち返すのは不可能かと』
 内のルビナス フローリア(aa0224hero001)からのナビゲーションを受けた月影 飛翔(aa0224)がななめに寝かせたライオットシールドの裏側へかがみ込んだ。
 ドムン! 通路に爆裂音が弾け、シールドの上っ面を衝撃がなめていく。
「爆発直前まで待つ程度の頭はあるか……祐二、無事か?」
 飛翔の後ろで首に巻いた紫のストールをひらひら振って応えたのは、プロセルピナ ゲイシャ(aa1192hero001)と共鳴した谷崎 祐二(aa1192)。
「無事無事。こっちは気にせず行ってくれ。全力でついてくからさ」
 西よりに固まった人狼に当たる【Fサ】小隊の飛翔と祐二だが、まずはあの4体を退けなければどうにもできない。
「とにかくやれることをしなくちゃな」
『にゃ!』
 プロセルピナの元気な返事を受け、祐二は飛翔の脇からA.R.E.S-SG550の銃口を突きだし、引き金を引いた。
「――抑えます!」
 狭間の4体へ向かうエージェントたちの後方で、エリヤが気合一閃、聖盾「アンキレー」を床に突き立て、手榴弾の爆発を跳ね返した。
 彼女の瞳の色を映した青装束が、巻き起こる風に激しくはためく。
「ありがとう」
 その背後でアムブロシア(aa0801hero001)と共鳴した水瀬 雨月(aa0801)がネクロノミコン――アル・アジフの写本の一冊をAGW化した書――を開き、青白の魔力を迸らせる。
『灯が消えても、敵に不自由はないのでしょうか? だとすれば不公平この上なしですが』
 発電炉が奪われた瞬間、この施設内の灯はすべて消える。そのことを指し、エリヤの内で哭涼(aa3892hero001)が言った。
 盾を構えなおしたエリヤは向こうの敵をにらみつけ。
「狼の眼は暗闇でも見えると聞いてます。視覚以外で私たちの動きを捕捉できるのかもしれませんが……それは灯が落ちたときに考えましょう」
“鍵”と称される銀の栞――アルス・ペンタクルで補強したネクロノミコンで援護射撃に務める雨月は、先陣が向かう4体の銃撃に加え、北からの銃撃を受ける様を見、ため息をついた。
「敵が眼前にいるだけではない、というのはストレスね」
『確かにおもしろくない状況ではあるが。北へ向かった者たちが戦いを始めれば挟撃は止まるだろう』
 アムブロシアの返答に、雨月は小さくかぶりを振る。
「――もう始まっているはずなのよ。なのに、挟撃が止まらない」

『さて、と……a dirittura な奪還と行こうぜ?』
 レイ(aa0632)の内、カール シェーンハイド(aa0632hero001)が声音を弾ませた。
 ボルトアクションを高く鳴らし、火竜の薬室に散弾を送り込んだレイが、余韻を楽しむ様子もなくぶっ放す。カウントも前奏もない。3発の弾丸を重ね撃ちするいきなりのトリオ。
『にしても、あいつら。こっち向かねーのな』
【戦狼】を中心とした一団は、横合いから北西部に固まった人狼6体に攻撃をかけているが。
 6体のほとんどが南への銃撃に終始しており、こちらを向いているのはわずか1体に過ぎない。
「piacevoleな戦いになりそうだ――とは言い難いな」
 レイはトライバルタトゥーに飾られた左目を不機嫌にしかめた。2マンライブで客全員を対バンに持って行かれるようなもやもや感。
『ま、そんでも楽しめるように楽しみますか、ってね』
 カールがあえて軽く言い放った声の先、一団の先陣を切るのは【戦狼】の前衛を張る加賀谷 亮馬(aa0026)だ。
「こっちを向かない気なら、横から好きにやらせてもらうだけだ」
『冷静を保て。熱くなれば足元をすくわれることになるぞ』
 彼の内からEbony Knight(aa0026hero001)が警告する。
 そして亮馬に続く【戦狼】のアタッカー、東海林聖(aa0203)もまた。
「っし、行くぜルゥ!!」
『足が速いのはいいけど……出過ぎて馬鹿しないでよ、ね』
 Le..(aa0203hero001)にお小言をもらっていた。
『……夫とその相方はやる気のようだが。さて、妻はどうする?』
 内に在るシド(aa0651hero001)のどこか投げ槍な問いに、【戦狼】の後衛にして契約主である加賀谷 ゆら(aa0651)は長い黒髪を指で梳き払いながら淡々と。
「三歩下がってついて行く。時には三歩先に出て連れて行く。それが妻の務めだろう」
『……夫を諫める気がないのはわかった』
 同僚である亮馬と聖の前に出、守るべき誓いを発動させた柳生 楓(aa3403)がレーヴァテインを閃かせ、人狼群へと斬りつけた。
『あのときのケリをつけるよ、楓』
 氷室 詩乃(aa3403hero001)の言葉を受けた楓は薄くうなずき、バトルドレスの裾を大きく翻して人狼の目を奪いにかかる。
「はい。あの雪原に散った人たちの無念を晴らすためにも」
 仲間たちの突撃を魔導銃50AEで援護するカゲリが、【炉】小隊がいるはずの通路を透かし見るように壁へ目線を投げ。
「どこまでも挟撃にこだわるのか」
『そのように命じられているのだよ。リュミドラの背後にいる愚神に』
 ナラカが言い切った。
 先の戦場でリュミドラと対した亮馬たちから、彼女が従魔へ慈悲の止めを刺したことは聞いている。その甘さがわずかひと月でぬぐいきれるとは到底思えない。
「確かにな……。しかし、それでは各個撃破されるしかなかろうが。人狼の頭はなにを意図してやがる?」
 戦場の後方に詰め、情報の取りまとめと共有を担うバルトロメイが唸った。
『死にたくないから殺すんだよ。生きたい人がほかの誰かに死ねって言う。その誰かは自分が役に立ったって思って死ぬ。win-winだよね、トラ』
 共鳴体の奥底で丸めた膝に語りかける七海。
 それをうるさげに聞いていた五々六だったが、こちらへ向かうただ1匹の人狼の鼻面を横からつかんで振り回しながら通信機へ。
「前のときといっしょで、今も訓練なんだろうよ。部隊運用ってやつのよ。なにかましてくる気か知らねぇが、指くわえて見逃がしてやる気はねぇからな」
 ダメージは一切無視。敵の連携を崩すことだけを考えた、無茶で合理的な戦いぶりを見せる。
 この通信に「だな」と返した金獅は明珠に内なる声で語りかけた。
『手下はさくっとぶっ殺す。で、アルビノのお嬢さんに逢いに行く。ごちゃごちゃ考えんの面倒だからよ』
『……クリスマス直前、独り身が辛くてナンパですか。元気ですね』
『アルビノなんざおまえで見飽きてんだ、誰が口説くか』

●誤算
「スイッチすんぜ! 一真たちは行けぇ!」
【炉】小隊を北へ離脱させ、狭間の人狼群の正面を塞いだ天野 心乃(aa4317)が逆鱗の戦拳で固めた拳を突っ込ませた。
 床をこすりながら伸ばしたスマッシュが先頭の人狼の顎先を突き上げ、跳び上がった後の重力を乗せた打ち下ろし、そして床を踏みしめた反動を利したアッパーで畳みかける。
『このまま押し込みますわよ!』
 疾風怒濤を決めた心乃の内から麗(aa4317hero001)が声音をあげた。
 遊撃を担う彼女たちの役割は、攻撃的サポート。その拳で路を斬り拓くことだ。
「杏樹は時間、稼ぐの。亮ちゃんとゆららんが、リュミドラさんに、逢えるまで」
 先陣を担った【炉】の内で受けたダメージがもっとも深い弥生をケアレイで回復し、今は後方から心乃の支援に回る【Gオ】小隊の泉 杏樹(aa0045)が口元をひきしめた。
『この位置取りなら傷つくことはないでしょうが……最後まで貫いてくださるおつもりもないのでしょうね』
 苦笑するのは、内で彼女を支える榊 守(aa0045hero001)だ。
 杏樹の執事という役どころを自らに任じる彼は、主が誰かを守るためにどれだけのことをしてのけるかを思い知っている。
 杏樹の巫女衣装を鎧う装甲は、守るばかりのものではない。彼女が死地へ踏み込むための刃であり、標なのだ。
「この通路の長さでは、一方的に撃つというわけにはいかんか」
 足裏を壁に押しつけて反動を殺しつつ、スナイパーライフル「アルコンDC7」を伏射するM・gottfried(aa4446)。戦車を思わせる装甲で固めた体は伏射の際、かなり窮屈そうだ。
「しかし!」
 英雄の身体をそのまま使用した共鳴体、その頬の3ミリ横を人狼のアサルト弾が飛び過ぎるが。
「それでも退かん! 同じ戦場に友が在る限り!」
 父から受けたドイツ軍人としての薫陶が、彼の心を奮い立たせ、指先に力を灯す。
 Michaelは同僚として同じ路を行く杏樹をサポートするため、引き金を引き続けた。

 銃弾に抗いながら、【炉】小隊がついに西側から6体の人狼を攻め立てる仲間との挟撃を成す。
『お疲れ様。まだ先は長いわ。無理はしないで……と言えないのが辛いところだけれど』
 通信機から榊原・沙耶(aa1188)の艶やかな声音が流れ出し。
『死ぬなら死んでもいいくらい働いてからにしてよね』
 小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)の尊大ながらもかわい気たっぷりの声音が続いて、【炉】の面々をケアレインで癒やした。
「沙羅たちの優しさ、この俺に染み渡ったぞ」
 豪の言葉に対する沙羅の返答は、『フン』。それだけだった。
 人狼群の銃弾の隙間へすべり込むようにその身を回転させた一真が、たなびく髪で金の軌跡を描きながら肉迫し、ライヴスたぎる額の角を先頭の人狼の鼻面へ打ちつけ、ひるませたところに守護刀の諸刃をこじ入れた。
「御屋形様! 先陣は私にお任せを!」
 禁軍装甲で弾雨を押し割り、弥生が一真の横から跳び込んできた。踏み込む足にあえて力を込めず、そのつま先を軸に、刀を大きく振り回して人狼の目を奪う。
「豪さん、右!」
 潜伏の解除とともに声をあげておいて逆へと駆けたアルが、蛇腹剣をすくいあげるように放った。声につられた人狼の首筋に刃に引っかけ、一気に引き斬る。
「跳弾の真似はできないけど! これなら壁を気にしないで戦えるでしょ!」
『びしばしイくわよぉ! 人狼どものタマ(命)ぁヒュンヒュンさせちゃうんだからぁ!!』
 雅のテンションもだだ上がりである……。
 そして、アルの警告で左に体をかわした豪が「俺の心をアルに重ねる! 貫け、紅焔一閃! ドラゴンウイング!!」。自らに合わせて調整改良を行った九陽神弓“爆炎竜翼”を射放した。

 多勢をもって10匹の人狼を平らげたエージェントたちが、それぞれの目標に向かって散っていく。
 それを見送り、バルトロメイが深いため息をついた。
「デクリオ10匹が連動するだけでこれか」
 時間にすれば数十秒という緒戦から、少なくないダメージを与えられた。それも従魔が方向を定め、命尽きるまで一点に十字砲火を加え続けた、ただそれだけのことで。
 人狼の配置の意味が見えない。その攻撃の意義が見えない。
『じゃ、俺らも解散だな。俺ぁもうちょい遊んでから入口まで戻る。いつリュミドラが来るかわかんねぇからよ』
 五々六からの通信がバルトロメイを思索の海から引き上げる。
「おお。危ねーことすんなよ五々六」
『こっちは大回りして伏兵捜し。いなけりゃアルビノのお嬢さんにごアイサツ――って感じ。なんかあったら教えてくれや』
 金獅からも通信が入った。
 無音に戻った通路のただ中、バルトロメイも移動を開始した。
 と、ここでひとつの疑問が沸き出した。
 リュミドラは従魔と同じように待ち受けるのか。あれだけの数のエージェントとすぐに出合うような場所で。
「――リュミドラが動かねぇなんて誰が言った!? あいつに東へ向かわれたら……対リュミドラのメンツ、確認頼む!」

「気をつけてな」
「りょーちゃんも」
 十字路の真ん中で手を握り合う亮馬とゆらを聖が急かす。
「ゆら、早くしねェと先行くぜ」
 その彼に返ってきたものは、Ebony、Le..、シドの集中砲火だ。
『貴殿、まったくもって情緒がわかっておらぬ』
『……ヒジリー、お子ちゃま』
『二世の契りを交わしたふたりの別れの重さ、理解できずとも感じてほしいところだな』
「え? え? ええッ?」
 うろたえる聖。
 カゲリは薄笑みを浮かべてその肩を叩き。
「そうしたものなんだろうさ」
『よい学びを得たな』
 ナラカの言葉で、ますます混乱する聖だったが、ともあれ。
「亮馬さん、北条さ――加賀谷さんは私がお守りしますから」
『なにもなければすぐ追いつくよ。そっちこそケガしないように気をつけてね』
 楓と詩乃が請け負い、聖とゆらを伴って施設の最北西のスペースへ向かった。
 なにもいなければそれでいい。しかし、なにかがいるならここ以外にありえない。そう踏んだ3組は探索を申し出て、カゲリと亮馬はそれを受け入れた。それゆえの別行動である。
 と。東に歩を進めた対リュミドラ担当の後方から、Arcardが言った。
「皆、通信は聞いただろう? 確かに可能性はあるんだ。南から回り込んでる仲間は到達までに時間がかかる。今現在いちばん怖いのは、リュミドラに北東のこのラインで待ち受けられることだ」
 HOPEから支給された簡易地図、そのAクからAサを指し、彼女はカゲリの表情をうかがう。
『彼女がAサにいるなら、発電炉室へ向かったみなさんの脅威にもなりますね』
 隼が言葉を添えた。
『攻め立てるよりあるまいよ。リュミドラに向こうを向く暇を与えぬほどにな』
 ナラカの言葉を受けたエージェントたちは得物を構え、壁の影から30メートル先の北端にいるはずのリュミドラと対峙し――その場の無人を確認した。

 ゆらが楓と先に立ち、慎重に辺りを探りながら、最北西の小スペースへ侵入し。
「あれは?」
 奥――地図で言えばBイの壁に縛り上げられ、磔にされていた男を発見した。
「私は発電所のものだ。捕まって、ここに」
 男は身をよじり、沈んだ声で訴える。
『まずは安全な場所へ連れて行こう』
「そうね。皆にも連絡を入れないと」
 人狼の潜伏を警戒しながら、シドと言葉を交わしたゆらが男へ近づき、縄を切った。
『体……冷えてるかな……あったかいもの食べると……いい』
「ってもオレ、なんにも持ってねェんだよな」
 妙なほど生真面目なLe..へ頭を掻いて言い返す聖。まさか、おこぼれとか狙ってねェだろうな?
「人質……なにかの策に使うつもりだったのでしょうか?」
『単純に置いてかれただけかも』
 聖とゆらが救助活動にあたっている間、後方の警戒を担当していた楓が詩乃と言い合う――
 突然。男が聖とゆらにしがみついた。
「!?」
 男の体に潜り込んだ弾丸。その弾は貫通することなく体内に留まり、破裂して。
 男に巻きつけられていた手榴弾ごと爆散させた。
「がッ!!」
「く、あっ!!」
 壁に叩きつけられ、床に落ちる聖とゆら。
 楓はすぐさま助けに駆けつけようとしたが、動けない。
「安心するといい。今死んだのは従魔だ。人狼は狼であり、人でもある。それを生かした一芸に過ぎん」
 男が磔にされていたわずか数メートルの北からしゃがれたバリトンが忍び出し、灰色の体毛に包まれた体によれた軍装をまとう人狼が現われたからだ。
「……貴様、ドロップゾーンにいた人間か。この姿では初めて会うな」
「あなたは――」
 あの日、楓がシベリアで遭遇したゾーンルーラー。あの装備と、声。まちがいない。
 楓はじりじりと立ち位置を変えながら、レアメタルシールドを掲げた。
『通信、通じないよ……!』
 詩乃の言うとおり、通信機は先ほどからぶつりと沈黙したまま。おそらくはジャミングされているのだろう。音を消すのはゾーンルールばかりでないようだが、さておき。
 リュミドラの上官たる愚神の出現。この場にいる3組はそれを最初から想定していた。
 想定していなかったのは人狼の《人化》。そのせいでこんなに簡単な罠へ落ちた。
「自分は数には入れなくともいい。29の従魔を殺せば諸君らの勝利だ」
 アサルトライフルを構えた愚神が牙を剥いて笑った。

●激突
 対リュミドラ担当のエージェントらと別れ、【炉】とともに東を目ざす【Dコ】小隊。Cクの曲がり角からいるはずの4体をうかがった千尋が、後ろについた魔女へハンドサインで合図した。『敵影はなし』。
「いるべき場所にいない。北側の4体が南へ、南側の6体が西へ動いて合流したのだとすれば……少々困ったことになりますね」
『ロロ、ロロロ』
 落児が魔女へ告げる。【炉】を、これ以上消耗させるわけにはいかない。
「だいじょぶ、なの。みなさんを癒やして、護る。それが杏樹の、誓いだから」
 殿についていた杏樹が前へ。
 それを見送ったHeinrichもまた盾を体に引き寄せ、立ち上がった。
『どうするつもりですか?』
 ベオウルフの問い。
 老いた研究者は応えず、幾度も息を吸い、吐く。
 手の震えが、止まった。
「盾と我が身を重ねれば、10秒ほどでしたら仲間を守る壁となれるでしょう」
『人狼の弾こそがHeinrich君にとっての竜の炎となるかもしれませんよ?』
「そうかもしれない。でも」
 深い皺の奥でHeinrichの瞳が強く輝く。
「もう逃げない」

 このとき、【Fサ】小隊の飛翔と祐二は目標位置、Gケで待機状態にあった。
『人狼どもが初期位置から移動しております』
『というか、目の前に来ているな』
 ルビナスに内なる声で応えた飛翔は、通路を映していた手鏡を戻した。
 その後ろにつく祐二もまた。
『曲がり角の向こうにいる敵……どうにも厄介だな』
『にゃ』
 プロセルピナの短い返事にも、苦渋の色が濃く滲んでいた。
 こちらはふたり。曲がり角のすぐ向こうに10体の敵がいる。
『それでも、あきらめたら試合終了ってな』
 祐二は考える。考える。考える。そして。
(――月影さん。人狼の向きはどっちだ?)
 宙に書きつけ、飛翔に問うた。
 飛翔もまた宙に返答を書きつけ。
(北)
『……よし。こっちからしかけるか』
『にゃに?』
 祐二の決断の意図がつかめず、首を傾げるプロセルピナ。10体の人狼にふたりで突っ込むつもり?
『さっきと同じなら自殺にはならんさ。やってダメならまた考えるしかない』
 またの機会まで生き延びられたらな。
 最後のひと言を飲み下し、祐二が飛翔に、先ほどと同じようにして説明した。
 敵が北側に攻撃を集中させようとしているなら、自分たちはフリーでその邪魔ができるはずだ。
『【炉】小隊の方々にお進みいただくためには、私どもの援護の仕上がりが重要になります』
 ルビナスの言葉を聞きながら飛翔が装備したものは、フリーガーファウストG3。
『お供します……飛翔様に、どこまでも』
 飛翔はルビナスの決意を握り込むように、フリーガーのグリップを握る手に力を込めた。

 南側の通路を回り込み、他の小隊から10秒遅れてHシにたどりついた雨月と心乃。北東にいる4体の人狼の手前でしばし思案する。
 敵に対してこちらの数が足りない。ひとりしかいない前衛に4体抑えてこいと言えるわけもない――
「私が突っ込む。ケツは任せたよ」
『お任せですわ』
 雨月の迷いを代わりに横からさらって引きちぎり、雨月が踏み出した。内の麗もまた、笑みを含んだひと言だけを残していく。
 あんな声を出しては気づかれるだろうに。案の定、心乃は集中砲火を食らうが、その足は鈍らず、止まらない。
 その中で、北側から激しい銃声が聞こえてきた。向こうでも始まったのだ。
「私たちも行くわ」
 続けて雨月が前へ。
『ふむ、前に出てなんとする?』
 アムブロシアの問いに雨月は薄く笑んでみせ。
「考えても無駄なら、考えるよりも先にしなければならないことをするのよ」

 降りかかる弾と手榴弾とをシルバーシールドで、そして己が身でカバーした杏樹が、紫と金のオッドアイに強い光を閃かせて言い放った。
「ここから先は、一歩も、いかせないの」
 その体に新たな弾痕が穿たれる。12345――その射撃を追い風に、先頭の人狼が身を固めて立つ杏樹の首筋へ食らいつき、振り回して投げ飛ばそうと力を込めたが。
「……言ったの。ここから先は、一歩も、いかせない」
 自らの首と狼の牙との間に差し入れた腕をねじって狼の口を強引にこじ開け、振り払う。
「スイッチします! あなたは回復を!」
 守るべき誓いを発動したエリヤが聖盾を押し立て、杏樹の前へ割り込んだ。
「杏樹は、護るの。でも、杏樹は弱くて、小さくて――護りきれなくて、こんなに、悔しくて」
 仲間を護り抜く代償は、己が血と命。
 今、杏樹は自らの流した血に濡れそぼり、その衣を赤く染め抜いていた。
 それほどに、彼女は自らに課した任を全うしている。
 それでもまだ、彼女は自らに課した任を果たせていないと悔いる。
 彼女の内に在る守は杏樹を慰めない。普段、和やかな人の輪の中心で笑んでいる杏樹が戦場でのみ見せる孤高の誇りを穢さない。だから彼はただ主を促すのだ。
『参りましょう。お嬢様の血が流れ尽くしたそのときは、わたくしの血をすべてお使いくださいますよう』
 人狼の正面に立ってその猛攻を止める杏樹、そしてエリヤを、他のエージェントたちが攻撃で支援する。
「私の姿を目に焼きつけて逝きなさい。それがせめてもの手向けよ」
 愚神に命奪われた父が千尋へ残した最後の言葉――生きろ。思うがままに、華々しく――を体現するかのごとく、彼女は伸びやかに、そして美しく戦い続ける。
「……こちら梶木。現在Eコ付近で集合した人狼と交戦中――」
 通信機からバルトロメイの声が飛び出してきて、彼女の言葉尻を噛みちぎった。
『こちらバルトロメイだ! リュミドラは初期位置から移動! 現在消息不明! あと北西に向かった【戦狼】の3組からの連絡が途絶えた! 誰か手が空いてたら行ってくれ!! 俺はFサにもうすぐ着く! 以上!!』
「北西――ゆららん!」
 血化粧の奥で表情を強ばらせた杏樹。
 千尋は新たな人狼へオネイロスハルバードを突き込んでひるませ、杏樹へ。
「こんなに混んでいたら得物が振り回しづらい。ちょっと下がってもらえる?」
 まわりのエージェントもうなずき、杏樹と、コンビであるMichaelが北西へと駆け出した。
『どうしてそこで強がるのかな。死にたがりは嫌いなんじゃなかった?』
 内から言う香菜。
 手数が減ればそれだけ戦いは厳しくなる。ましてや人狼群はスイッチと連携をもって、集中攻撃をこちらへ向け続けているのだ。
 しかし千尋は艶やかに笑み、この通路では使いづらいはずのハルバードを構えなおす。
「見栄と酔狂に命を張るのが伊達者の華よ」
 守るべき誓いでその身を浮き立たせた彼女は、威風堂々、敵陣へと向かう。
「――俺、邪魔にならんように小さくなってるから」
 杏樹たちとすれ違う形で応援に駆けつけたバルトロメイが、なにやら申し訳なさそうに恵体を縮めて言った……。
 一方、仲間の死角を補うように動いていた魔女が小さく息をついた。
「あれだけまっすぐ撃ってこられては、死角もなにもありませんね」
『ロロ、ロ……』
 この通路では、陣形もなにもないしな……。落児の言葉に「おかげで殲滅がはかどります」と答えた魔女が37mmAGC「メルカバ」から榴弾を撃ち、敵の手榴弾が作り出す爆炎をさらなる熱炎で焼き払う。
「それにしても、【炉】小隊が足止めを受けたのは痛いことでしたね」
 発電炉を奪おうという従魔へ向かうはずだった4組は2度の戦いに巻き込まれ、その進行を阻まれた。
 それでもそろそろ【炉】は発電炉室に着くころだろうが……。
『ロロ、ロロ……ロ』
 間に合わなかった場合、いつ電源が落ちるか……だな。
「そうですね。リュミドラさんがどこにいるのか、北西でなにが起きているのかも気になりますが」

「こうなったら攪乱も抑えも必要ない!」
 壁の影から転がり出た飛翔が横合から人狼の後陣へ、フリーガーのロケット弾を撃ち込んだ。
「一気に刈り取るぞ」
 通路を揺るがす爆音の影からすべり出した祐二が分身、もうひとりの自分と共に、グリムリーパーの刃を低い軌道で振り込んだ。
 脚を刈られ、よろめく人狼。案の定こちらを見ようとはしない。北側に意識と攻撃を集中させている。
「ここまでは予想どおり……と」
 壁に当たって跳ね返る大鎌の勢いを利して彼は床へ転がり、女郎蜘蛛の糸を投げつけた。
「月影さん!」
 その声に応えた飛翔が低くかがめた体を跳び込ませ、踏み止めた足を軸に魔剣「カラミティエンド」で円を描く。
『飛翔様、上が空いています』
 ルビナスの言葉で、壁へ足をかけて跳躍。銃撃中の人狼を上から叩きつけ、さらに着地と同時に跳ねて斬り上げ、怒濤乱舞を締めくくった。
『にゃみゃあなむうみゃ』
 祐二の内でプロセルピナがなにやら唸ったが……『うまくいったにゃ』というようなことなのだろう。
『右手後方より手榴弾が。着床より1秒後に爆発します』
 ルビナスの声が飛翔の体を半自動で機動させ、魔剣の腹で手榴弾を弾いた。
『無茶をお願いしたのではないのですが……飛翔様がご無事でなによりです』

●狼とアヒル
 施設の最北部を東西にはしる横路、その東寄りにリュミドラはいた。
「伏兵の気配は見当たらない。あそこにいるリュミドラだけだ」
 ライヴスゴーグルで辺りを探っていたレイが一同に告げた。
『北西からの通信が途絶えたって連絡あったな。戦闘にからまねーとこで待ち伏せか? 人狼、なに考えてんのかわかんねーな』
 カールのいぶかしげな声に、亮馬の肩がかすかに振れた。
 あそこには亮馬の妻――ゆらがいる。
 肩に触れかけたカゲリの手に、亮馬はかぶりを振り。
「信じてるよ」
 カゲリはただ「ああ」と応えた。
「たまには先陣を務めようか。20メートルまで詰めたらライヴスキャスターを撃ち込む。突撃は任せるよ」
 と、Arcardが一同の先に立つ。
 縦に並ぶしかない通路にあって、先頭に立つ危険度は計り知れない。しかもArcardは一度、リュミドラの狙撃で重傷を負わされているのだ。自らの命をチームの部品として割り切れるのは、彼女の傭兵としての経験と矜持によるものなのだろう。
『ケガくらいなら治してあげるわよ。ほんとに壊れて動かなくなるまで、何回でもね』
 沙羅に続き、沙耶もまたにこやかな笑顔で。
「ちょうどいい培養細胞が入ったのよ。アレンジもしてあるから試してみない?」
「断固拒否する」
 かくしてエージェントたちが通路へ駆け出した。
「来たか」
 か細いはずのメゾソプラノが、やけにくっきりとエージェントたちの耳を叩き。
 頬づけでリュミドラが撃った弾の、気の抜けたような音が続き。
 天井で跳ねた弱装弾が、パキンと乾いた音をあげてArcardへ襲いかかった。
『歯を食いしばってください』
 隼がArcardの内で力を込める。弾にえぐられた体を、さらに先へと進ませるために。
「あの子から鉄錆の気配がする。いったい何度、血のついたシャベルで凍土を掘り返したんだか。――もっと別の形で会えなかったのかと思わずにいられないよ」
 肩口から背中へ抜けていく弾。この前は感じることもできなかったけど、この熱さはたまらないな。思いながら彼女は走り続け、グラビティゼロの周囲に無数の水晶杭を召還。リュミドラへ向かわせた。
「突撃――!!」
 Arcardの意志を共連れ、ライヴスの変じた青き機械甲冑をまとった亮馬がリュミドラへ肉迫した。
「ようガキんちょ。この前は世話になったな。結構痛かったぜ?」
 フェイントもかけずに上段から最短距離で振り下ろしたアスカロンが、ガードを解けきれていなかったリュミドラの腕を削る。
「おまえはあたしの群れの奴を貶めた。おまえが収まる墓はない」
 腕の向こうから現われた白い顔のただ中に滾る赤い眼。
「それでいい。あんたが何者か知らないが、愚神と共にあるなら俺の敵だ」
 家族を奪った愚神への怒りが、憎しみが、亮馬に冷たい炎を灯す。
『過度に昂ぶれば機動が乱れる。自分を乗りこなせ、亮馬』
 内からのEbonyの言葉を聞いてか聞かずか、答えることなく亮馬は剣を振り上げた。
 対するリュミドラは無造作に銃を構え、迎え撃つ。
「――残念だけどな。俺たちは撃たれるのを待つ的じゃない」
 ライフル弾をレアメタルシールドで打ち落としたカゲリが薄笑みを浮かべた。
 心眼による射撃防御。そこへ挑発を重ねることでリュミドラに銃を手放させ、格闘戦に引き込むのがカゲリの狙いだ。もちろん、射手が銃を簡単に捨てるとは思っていないが。
 その間隙を縫い、レイの散弾が一斉にリュミドラへと噛みついた。
 顔面を腕でブロックし、為す術もなく後じさるリュミドラ。
 しかし。
「弾のリズムの返りがおかしい」
 眉根をしかめたレイにカールが応えた。
『当たりどこズラされてんだよ。多分、攻撃予測のディフェンス版?』
「……隙を探っていくしかないか」

 簡易地図Gス上に居座る4体の人狼を相手取る雨月と心乃は苦戦を強いられている。
 特に先陣を担う心乃の消耗は激しく、弾と手榴弾、爪牙の連携で確実に命を削り落とされつつあった。
 雨月の優先順位の筆頭は発電炉の安全確保。ここでスキルを使い果たすわけにはいかない。かといって時間を取られているわけにもいかない。
 焦りを意志の力で抑え込み、雨月は魔法で人狼を撃つ。やっと1体。あと、3体。
 その心の隙間を突くように、心乃の足元を抜けて転がり来る手榴弾。
「――っとぉ!」
 割り込んできた影が、ホッケーよろしく傘の柄で手榴弾を弾き返した。
「黒髪のお嬢さん、ちょっと下がって休んでな」
 ところどころに鈍金が散る白髪をなびかせ、躍り込んできたのは明珠と共鳴した金獅。心乃とスイッチし、傘状の仕込み銃スカーレットレインを人狼の鼻先に突きつけ、弾をぶち込んだ。
『思わぬ援軍を得たな。誠意には誠意を返しておくがよかろうよ』
 どこかおもしろげに言うアムブロシア。
 そこへ金獅が声をかけてきた。
「この後どうすんだ? クールなお嬢さん」
「発電炉室へ。あなたは?」
「アルビノのお嬢さんのとこだ」
「なら、お互い時間はかけられないわね。前をお願い。それから……ありがとう」
 雨月は2度めのブルームフレアを燃え立たせ、誠意をもって人狼どもを焼いた。
「すまん、もうすぐそっちに合流できる! 一気に平らげるぞ!」
 これはバルトロメイの声。
 どうやら北側の人狼はあらかた片づけられたらしい。あとはここをクリアして次の課題にかかるだけ。
 雨月は書を持つ手に力を込めて踏み出した。

「おおッ!!」
 トップギアで加速した聖のライオンハートが愚神を袈裟斬り、さらに床をえぐったが。
「――くそッ、手応えがねェ!」
『当たってる……でも、それだけ……だね』
 Le..の目をもってしても、愚神がどのような防御を行っているものはわからない。……体術? それとも、パッシブ……?
「まだ!」
 聖から愚神の眼を引き剥がすべく守るべき誓いを発動した楓。盾を押し立て、愚神に突っ込んだ。
「意気は買おうか」
 愚神が軍靴の踵を突きだし、楓をその守りごと打ち抜いた。
「――加賀谷さん!」
 宙に飛ばされながら叫んだ楓に応え、ゆらがブルームフレアを点火、愚神の足元を焼く。
「群れとして統率はとれている」
 焦げた毛先を払い落とし、愚神がアサルトライフルを掃射した。
「後ろへ!」
 楓は仲間ふたりをかばいながら、盾に弾ける固い金属音に負けじと叫ぶ。
「通信が途絶えたことで、異常は仲間に通じているはず!」
『援軍が来てくれるまで持ちこたえるぞー、おー!』
 続く詩乃の声に、聖が獰猛な笑みを口の端に刻んだ。
「だからって手ェ抜ける相手じゃねェけどな」
『生半可な戦術は……通じなさそうだし、ね』
 言いながら、Le..は愚神の隙を見極めようと意識を集中させる。
「守りに回れば撃たれるだけ。守るために攻める」
 ラジエルの書を指で繰って適切なページを探すゆら。
 その内でシドが疑問の声をあげた。
『こちらが時間稼ぎしたいことは奴も承知のはずだ。なのになぜオレたちにつきあう必要がある?』
 一同の顔に疑念が浮かんだそのとき。
「癒やしの音、届けるの。戦場に響いて――」
 駆けつけた杏樹のケアレインが3組を癒やし。
「射程を生かせる機会はなかったが……ならば正面から撃つ、それだけだ!」
 Michaelのライフルがマズルフラッシュを閃かせて。
 愚神が「想定外だったが結果は悪くない」、そうささやいて東を見やり。
「さて、そろそろだ」

●暗中
 2度の戦闘をくぐり抜けた【炉】小隊が、ついに発電炉室近くまでたどりついた。
『――Bサに敵影はなし。ただ、10メートル西でリュミドラが沙耶ちゃんたちと交戦中。騒いじゃったら駆けつけてくるかも』
 鷹を通して見た光景を仲間に告げる雅。
「引き寄せたくないね。それにボクのもういっこの予想が当たってたら、伏兵は扉のすぐ向こうにいる」
 アルの耳にとまる光の蝶が翅をはためかせる。
『うむ。扉を開けば身を隠す場所はなく、発電炉という危険物をそばに置いたままの戦いを強いられるか。覚悟はしておかねばな』
 灰燼鬼が一同に注意を促し、一真は一同の内でもっとも経験の浅い弥生へ声をかけた。
「弥生、行けるか?」
「はい! 粉骨砕身滅私奉公な戦働き、御屋形様にお見せいたしますよ!」
 スーパーバイタルバーをもぐもぐ。弥生が平たい胸をどんと叩き、ガシャガシャ骨鎧を鳴らした。
『うるせぇ。滅私奉公はいいけどよ、なんで隙あらば俺を砕いて粉にしようとすんだよ』
 禅昌は不満気だが、無理もない。一真をカバーすべく奮闘してきた弥生のダメージは深い。持ち込んだ回復アイテムもあらかた使い果たしてしまっている。
『弥生も禅昌も砕かせたりしない! オレたちがついてるぜ!』
 サムズアップを決めたガイに力強くうなずき、豪が現状報告を入れた。
 そして。開き始めたスライド扉、その隙間から鷹を飛び込ませて伏兵がいないことを確かめたアルがゴーサインを出した、そのとき。

 施設内の電源が落ちた。

「……ここで来やがった。ハナからこっちが発電炉室に着くまで待ってやがったか」
 リュミドラや炉を奪った人狼が向かってくるのに対処するべく、施設の入口を塞いでいた五々六が吐き捨てた。
「やべぇな。予想、外しちまったか……?」
『パチンコでもそうだよね。ぜんぜん当たらないのに来るはずだってお金使って、損するだけ』
 七海がぽそぽそと吐く毒へ苦々しく眉をひそめながら、五々六は考える。
 ――俺ぁこの騒ぎが雌犬の実戦訓練じゃねぇかって思ってた。犬ヤロウどもの配置見てもそいつは合ってるはずだ。で、犬ヤロウが全滅したら雌犬はトンズラこくんだろうよ。でもよ。
「ここしかねぇはずの入口無視してどっから逃げるってんだ? 犬ヤロウが全滅したら、発電炉はどうやって持ち出すよ?」
 しかし、答を弾き出すには情報が足りなさすぎた。

 暗闇の中、エリヤが藁人形を自分の踏み込みと逆の方向へ投げた。
 そこにはたっぷりと惚れ薬が染みこませてある。
『これで釣れてくれるといいのですが……』
 哭涼の願いは半ば果たされ、半ば果たされずに終わる。
 人狼は確かににおいへ反応はするが、すぐにエージェントへ攻撃を加えてきた。
「やっぱり狼の眼――タペータムはごまかしきれませんね。でも」
 エリヤは惚れ薬をぶちまけたタオルケットをあらぬ方へ放る。
 そして強いにおいに気を取られずにいられない人狼の隙を突き、聖盾を掲げてその射線を塞いだ。
「少しでも効果があるなら、無駄にはなりません!」

『――ら、【戦狼】の加賀谷! 現在私以下5名、待ち伏せていた敵愚神と交戦中! こちら【戦狼】の』
 空白になっていた北西部からの通信が突如回復。通信機からゆらの声が流れ出す。
「こちらバルトロメイ! 踏ん張れ、すぐ加勢に向かう!!」
『愚神は時間稼ぎに徹している! 理由は不明! こちらはかまわずリュミドラへ!』
 エリヤを始めとするエージェントの奮闘によって14体の従魔殲滅を終えた通路のただ中、バルトロメイは砕く勢いで奥歯を噛み締める。
 五々六と同じく、この事件はリュミドラのための軍事訓練であるものと考えていた。よって愚神が現われるなら、リュミドラの撤退時――最後の最後であるはずだと。
「生きてりゃ次がある! とにかく生き延びることだけ考えてくれ!」
 ゆらに叫び返したバルトロメイは、自分の頭を拳で叩きつけた。次は誰へどう指示を飛ばせばいい? どうするのが最善手だ? くそ、なにを、どうする?
「にゃー」
 ふと、足元からかわいらしい声がして。
 祐二と共鳴しているはずのプロセルピナが、バルトロメイに両手で差し出していた。
「……伊勢海老?」
「ケガ治すにも頭使うにも燃料がいるだろう? 次が始まる前に補給しといてくれ」
 壁にもたれかかって座る祐二が片手を挙げた。
 張り詰めた取りまとめ役を和ませようという祐二とプロセルピナの気づかい、その結晶である伊勢海老へ、バルトロメイは思いきりよくかぶりついた。
 ――最後まで考える。あきらめねぇ。全員生きて還す。海老うめぇ!

●解答
「リュミドラくんの跳弾に物理法則は働かないようだね」
 暗闇の中で亮馬とカゲリをAMR「アポローンFL」で支援しつつ、Arcardは舌を打った。
 自在に跳ね回る跳弾は幾度となくエージェントたちを叩き、確実にダメージを積み上げている。しかも。
「くっ!」
 左肩をえぐられた亮馬が大きく後方に弾かれた。
『視界を広く保て! 激情に心を捕らわれるな! 相手は狙撃手だぞ!? 見透かされているからこそたやすく食らうことになる!』
 Ebonyの苦言、まさに痛いほどわかってはいた。
 しかし、リュミドラが跳弾に織り交ぜてくる通常射撃はあまりに巧みで、かならずこちらの心の死角を突いて撃ち込まれてくるのだ。
「――やられっぱなしで終わるかよ!」
 亮馬は背中から倒れ込む間に、右腕一本でアスカロンをリュミドラへ投げつけた。
 その刃は確実にリュミドラの腹に突き立つが――自らの重さですぐに抜け落ち、床に転がる。
「……だめね。最小限のダメージで止めてる」
 グランガチシールドで亮馬をフォローした沙耶が言う。
 その内から沙羅が声を発した。
『前に出ましょ。電源は落とされた。後ろにいてもなんにも見えないし、今なら行けそうだしね』
 ここまで沙耶は後方で防御と仲間の回復に徹し、薄い前線を維持し続けてきた。
 それはリュミドラを苛立たせ、こちらへ敵愾心を向けさせるための策。
 ヘイトはたっぷり稼いだはずだ。ここで前に出れば、かなりの確率で攻撃を誘発し、あの手を試せる。
「……どうしたいんだ?」
 リュミドラに聞こえないよう、レイがささやいた。
「私を撃たせる」
「なら、リュミドラがまっすぐ撃ちたくなるよう場を整えてやるさ」
『リュミドラにこっちの音へ合わせてもらうって? マジかよ』
 あきれた声をあげるカールへ、レイは艶めかしい笑みを見せ。
「合わさせるんだよ。俺らのギグでな」
 そしてアイコンタクトをカゲリに飛ばす。
 リュミドラへまとわりつくように位置取りを変えていたカゲリは、つま先でアスカロンを亮馬のほうへ蹴りやり、内のナラカへ言う。
『きっかけを作る』
『彼奴を揺さぶるか。で、りんくばぁすとはどうする?』
『必要ない』
 カゲリは闇に浮かぶ白いリュミドラを見やり、小さくかぶりを振った。
『俺たちが死を賭けるだけの覚悟が、あいつには見えない』
 ナラカはふむとうなずき、『ならば』と内なる声を断ち切った。そしてリュミドラへ向かって音声を発する。
『汝が敵味方かまわす敬意を払う姿を賞賛するよ。しかしながら邪推もあるのだ。汝はなぜ墓を掘る? その胸に死者を刻む覚悟なきがゆえではないのか』
 ナラカの問いは揺さぶりであり、リュミドラの真意の吐露を図る呼び水だった。リュミドラよ、願わくば汝の“真”の輝きを魅せてくれ。
 果たして。
「あたしは確かめたいだけ。誰かの手で弔われた奴が最後に救われるのか」
 壁に跳ねたリュミドラの弾が、身をかわしたカゲリのこめかみをかすって闇の内へと消えた。
 アルビノの少女が求めるものは、この世を顧みる死者だけが知ることのできる答。
『汝は――』
 リュミドラは“ラスコヴィーチェ”に新たな弾倉を叩き込み、銃口をカゲリへ突きつけた。
「させるかよ!」
 駆け込んできた亮馬が過負荷にきしむ義手でカゲリの体を下へ引きずり落とす。
 レイはそれを待っていた。リズムを合わせ、カゲリが銃口から外れた瞬間、カウントストップ。
「行け!」
 レイの散弾を追って沙耶が駆ける。
 跳弾ではなく、リュミドラが通常射撃を放つ瞬間、その前に立つ。
『自分の弾で逝きなさい!』
 沙羅の声音にライヴスミラーが重なった。
 それは愚神でも従魔でもないリュミドラの弾を止めはしなかったが――沙耶の構えた盾が奇跡的に弾をリュミドラへと弾き返した。
「……」
 足元をえぐる弾から飛びすさったリュミドラはそのまま身を翻し、駆け出した。
 わずか20メートルの先にある発電炉室へ向けて。

 発電炉室へ突入しようとした【炉】小隊を、一歩先に前進してきていた人狼3体が押し止めた。
「九つの太陽さえ撃ち落とすこの俺を、月に狂う悪しき狼どもに止められるものか!」
 豪が抜き手も見せずに“ドラゴンウイング”を射放し、1体の人狼を射貫いたが。
『他の2体から手榴弾が来るぞ!』
 灰燼鬼の警告がはしる。
「弥生!」
「承知です!」
 一真と弥生が、手榴弾をキャッチしたヘルメットを床に伏せて蹴り返し。
 爆発で吹っ飛んだヘルメットの破片が人狼の体に突き刺さり、微量のダメージを与えた。
「寿命が縮むぜ……」
『無駄口を止めろ。手足は止めるな。今すぐ生涯を終えたくなければな』
 灰燼鬼の小言に一真は苦笑し、敵に集中する。
「刺さるのは破片だけじゃないよ?」
 豪の背後からすべり出したアルが、鷹を右から、自らは左から人狼へ迫り、縫止を放つ。
 体を巡るライヴスをかき乱され、脚を鈍らされた人狼が、連携を保てず足元をふらつかせた。
『今よォ! イッちゃってヤッちゃってとっちゃっテェー!!』
 雅の裏返る声音に催促された一真が、セイクリッドフィストを装着した左拳で人狼の膝を打ち、さらに振りかぶった右拳を打ち下ろしてその体を床に打ちつけた。
『うまくいったか。どのようなものであれ、工夫はしておくものだな』
 灰燼鬼は嘆息しながらヘッドライトに照らされた闇を透かし、発電炉を探す。
『あそこだぜ!』
 ガイが指したのは、簡易地図上でAスと帰されたブロックの北西端。そこに配線を綺麗に外された発電炉が立てかけられていた。
「少なくともすぐに運び出せる位置取りじゃないな。先に敵を殲滅する!」
 改造型強化鎖鎌「オロチ」――爆炎逆鱗「ドラゴンスケイル」に換装した豪が、鎌ならぬ円盾を鋭く回転させ、ライヴスの爆炎を燃え立たせた。
「竜の怒りを受けてみろ! 爆炎逆鱗「ドラゴンスケイル」!!」
『もう出し惜しみしてるときじゃないぜ! 最大出力で打つ! 撃つ! 討つ!』
「おお!」
 ガイの咆哮が疾風怒濤と化し、2体めが崩れ落ちる。
 残る1体がアルへ撃つ。
 アルの走り抜けた跡に、彼女を捕らえ損ねた弾が弾けていく。
「速さとうまさじゃボクのが上だよ!」
 蛇腹剣が確実に人狼を捕らえ、その毛皮を引き裂いた。
 順調だった。
 まったくもって過ぎるほどに。
 カチン。普通であれば聞き漏らしてしまうような、小さな固い音。
 それは今アルに斬られた人狼が、一真の足元で手榴弾のピンを抜く音。
「――御屋形様!」
 一真へ迫る危険のすべてを見抜かんと張り詰めていた弥生が、その身を人狼へかぶせ。
 爆発に打たれて弾け飛んだ。
「弥生!」
「一真!」
 一真と豪の声が重なる中、カチン。発電炉の影でまた音がして。
 潜伏していた最後の人狼の自爆により、発電炉が誘爆した。

「なんだ!?」
 逃げたリュミドラへ全力で向かっていた金獅が、轟音と地震に一瞬足を止める。
『どうやら間に合いませんでしたね。金獅の出逢いを優先するなら、伏兵を探さずに直接向かうべきでした』
 ため息とともに明珠が言った。
「どういうこったよ!?」
『見ていないのでわかりませんが――敵にここを守り抜こうという気がなかった。リュミドラさんに人狼たちを救おうという気がなかった。多分、それだけのことです』

 炉の運び出しの阻止を考え、停電が起こると同時に施設の入口へ駆け戻っていた雨月もまた不愉快な揺れと音とに顔を上げていた。
「……これは発電炉の」
『爆発音であろうな。しくみは知らぬが、これまで稼働させていたのは炉の内のライヴスを消費するためであったのだろうよ』
 アムブロシアが低く語った。
 都市ひとつを動かすほどの出力を担う炉がフルパワーで爆発すれば、半径数キロ単位は灰になるはずだ。
「私たちが踏み込む前に終幕の準備は整えられていた、ということね」

「今の音、発電炉室!?」
 こちらも停電と同時に取って返し、入口への路を塞ぐべくGエまで戻っていた千尋が、その銀瞳を闇に透かした。
『……僕は考えちがいをしていたようだね。奪取した炉は運び出さなければならない。そう思い込んでいたんだ』
 悔恨を含めて香菜が言う。
『奪ったものをその場で使うなら、運び出す算段をする必要はないんだよ』

 発電炉を入口から運び出す際使うはずの通路上で待ち受けていた飛翔。
 彼にルビナスが告げた。
『飛翔様、みなさまと合流いたしましょう。お茶はなにがよろしいでしょう?』
「今の爆発音と関係、あるのか?」
『AGWの出力ではけして壊せないはずの施設が揺るぎました。出口を開けられたと考えるよりありません』

「俺ら全員いっこずつ読みちがえてた。そいつが重なって、このザマだ!」
 施設を見渡せる雪原のただ中、五々六は発電所北東から噴き上げた爆煙を見、吐き捨てた。
『……』
 こんなときに限って、七海は毒を吐いてくれない。
 五々六は間に合わないことを知りながら、リュミドラの脱出口目ざして駆ける。

●Foe(敵)
 ライヴス反応炉の小爆発は、反応炉室の壁を崩壊させ、堅牢なはずの外壁に裂け目を穿った。
 たった今まで存在しなかった脱出口へ駆け込んでいこうとするリュミドラ。
『レイ、やべーぜ!?』
「わかってる」
 カールに応えながら、レイが跳ねてきた弾の頭に散弾をぶつけて落とす。
 その間にまた、リュミドラとの距離が開いた。
「だからといって行かせませんよ」
 南側から仲間と共に駆けつけた魔女が宣告した。
 わずかに振り向いたリュミドラの返答は、跳弾。
 対する魔女は、冷めた目でリュミドラを見据えてメルカバを撃ち返すが……榴弾はリュミドラに届かず、床に落ちたかに思われた。
「跳弾はリュミドラさんだけの技ではありません」
 ダンシングバレット。それは熟達したジャックポットのみが備えるアクティブスキルだ。
 跳ねた榴弾が、リュミドラの体に消せぬ炎を点火する――
「おまえらの殲滅は命じられていない」
 魔女へ向かっていたはずの跳弾がかき消え。
 榴弾を横から撃ち抜き、破裂させた。
『ロ! ロロ……』
 テレポートショット! 跳弾に使ってくるとは……。
 魔女の内で落児がつぶやいた。
 その脇をエージェントたちがすり抜け、リュミドラを追う。
「ぶっちめる、絶対!」
『お見舞いしますわよ!』
 拳を握り固めた心乃に闘志を添える麗。
『できることならば投降して欲しいところですが……』
 内で低く言う哭涼にうなずいたエリヤがゴルディアシスを構え。
「これ以上の争いに意味なんかありません、止まってください!」
 さらにその後方、ブラックファルクスを手にしたHeinrichが荒い息の下からかすれた声音を発した。
「この心臓を撃ち抜かれるとしても、Heinrichは逃げない」
『今は弱き身なれど、我が30人力をもって支えましょう』
 ベオウルフがライヴスを燃やし、Heinrichの覚悟と痩身を支えた。
『にゃが! みゃうがっ!!』
「言われなくてもやるさ。……さんざん迷わせてくれた借りは返す」
 プロセルピナに急かされた祐二が駆けながら分身し、跳ぶ。
 しかし、たった2歩で外への脱出口に足をかけたリュミドラには追いつけない。
 翻った少女の背へ亮馬が叫んだ。
「あんたが愚神について戦う理由はなんだ!?」
 リュミドラは一瞬顔を振り向け。
「白アヒルに狼の命をくれた。だからあたしは狼のふりをして群れを守る。――おまえらは群れの敵だ。あたしが撃つ」
 そして外へと身を躍らせ。
 待ち受けていた灰色狼どもの引く橇にさらわれ、姿を消した。
『追いつけませんでしたね』
 淡い後悔を込めて言う隼へ、Arcardはなんでもない顔で返す。
「追いかけていればそのうちに追いつくさ」

「発電炉が爆破! リュミドラは逃走! くっ、Michaelたちはなにをしにここに来た!?」
 通信機から伝えられてくる情報に歯がみしながら、Michaelはそれでも愚神にストライクを撃つ。
「互いの作戦は遂行された。勝利をつかんだ諸君の前から、敗者たる自分は逃げ出すとしよう」
 その一撃を受け流しながら愚神が言った。
「こんなもんのなにが勝ちだよ!? オレは――オレたちは――」
『ヒジリー』
 Le..の言葉を振り切り、攻撃を重ねようとした聖が足元をふらつかせ、膝をついた。
 その聖を背にかばった杏樹が、愚神へ凜と視線を飛ばし。
「みんなは、杏樹が、守るの」
「安心したまえ。もう争うつもりはない」
『……勝者の権利をもって愚神様にうかがいたいのですが。そちら様の作戦とは?』
 慎重に、守が愚神へ問う。
「従魔へ関わることを禁じたリュミドラに、従魔の全滅をもって戦場を離脱させることだ」
『え! それで従魔29体犠牲にしたわけ!?』
「リュミドラを指揮官として育てるためだけに――」
『愚神らしいと言えばそれだけのことだが、しかし』
 詩乃、ゆら、シドが愕然と唱える中、楓が鋭い声音を発した。
「リュミドラさんはただのライヴスリンカーのはず。愚神がどうしてそこまでこだわるんですか?」
 愚神は口元をかすかに歪め。
「借りがある」
 かくして愚神は巨大な灰色狼と化した。
「自分はヴルダラク・ネウロイ。鋼の縁あればまた戦場でまみえよう」
 現われたときと同じく、唐突に消え失せた。

「――そうか、わかった。全員無事ならそれでいい。合流して撤収しよう」
 バルトロメイがMichaelからの通信にうなずく一方、アルの先導と豪のバックアップで発電炉室からの脱出を果たしていた【炉】小隊は、綺麗に崩れた壁の向こうの裂け目を見やる。
「すぐそこにいたんだ、伏兵――!」
『あんなの見つけられるかってのよ! 悔しい悔しいクヤシイーッ!!』
 アルと共に憤る雅の横で、豪が苦い息をついた。
「一杯食わされたな」
『これで勝利って言われても、なんか煮え切らないぜ!』
 内のガイが幾度となく拳を自分の掌へ打ちつける。
『ま、俺が砕けてねぇんだから勝ちだ勝ち』
 飄々と言ってのける禅昌には構わず、弥生は青ざめた顔を一真へ向けた。
「……ご無事でしたか。よかったです、御屋形様」
「弥生のおかげだ。いいから今は休め」
 静かに声をかけた一真の内、灰燼鬼もまた無言でうなずいた。
 そして。
 すべてを見届けたナラカがぽつり。カゲリに言った。
『覚者(マスター)、リュミドラは救われずに死んだ生者だよ。ゆえに救われるところからやりなおし、死になおそうとしている』
 カゲリは目を閉ざし、ため息とともに言葉を紡いだ。
「そうあるべき生でも死でもいいけどな。求めるものが与えられることを祈るさ」

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • きみのとなり
    加賀谷 亮馬aa0026
    機械|24才|男性|命中
  • 守護の決意
    Ebony Knightaa0026hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • Black coat
    榊 守aa0045hero001
    英雄|38才|男性|バト
  • Analyst
    宇津木 明珠aa0086
    機械|20才|女性|防御
  • ワイルドファイター
    金獅aa0086hero001
    英雄|19才|男性|ドレ
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 『星』を追う者
    月影 飛翔aa0224
    人間|20才|男性|攻撃
  • 『星』を追う者
    ルビナス フローリアaa0224hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • Sound Holic
    レイaa0632
    人間|20才|男性|回避
  • 本領発揮
    カール シェーンハイドaa0632hero001
    英雄|23才|男性|ジャ
  • 乱狼
    加賀谷 ゆらaa0651
    人間|24才|女性|命中
  • 切れ者
    シド aa0651hero001
    英雄|25才|男性|ソフィ
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命
  • 難局を覆す者
    アムブロシアaa0801hero001
    英雄|34才|?|ソフィ
  • 神鳥射落す《狂気》
    Arcard Flawlessaa1024
    機械|22才|女性|防御
  • エージェント
    木目 隼aa1024hero002
    英雄|26才|男性|カオ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • Foe
    谷崎 祐二aa1192
    人間|32才|男性|回避
  • ドラ食え
    プロセルピナ ゲイシャaa1192hero001
    英雄|6才|女性|シャド
  • エージェント
    獅子ヶ谷 七海aa1568
    人間|9才|女性|防御
  • エージェント
    五々六aa1568hero001
    英雄|42才|男性|ドレ
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • プロカメラマン
    雅・マルシア・丹菊aa1730hero001
    英雄|28才|?|シャド
  • これからも、ずっと
    柳生 楓aa3403
    機械|20才|女性|生命
  • これからも、ずっと
    氷室 詩乃aa3403hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 御屋形様
    沖 一真aa3591
    人間|17才|男性|命中
  • Foe
    灰燼鬼aa3591hero002
    英雄|35才|男性|ドレ
  • アステレオンレスキュー
    エリヤ・ソーンaa3892
    人間|13才|女性|防御
  • エージェント
    哭涼aa3892hero001
    英雄|18才|男性|ブレ
  • 夜を取り戻す太陽黒点
    飛岡 豪aa4056
    人間|28才|男性|命中
  • 正義を語る背中
    ガイ・フィールグッドaa4056hero001
    英雄|20才|男性|ドレ
  • エージェント
    天野 心乃aa4317
    人間|16才|女性|攻撃
  • エージェント
    aa4317hero001
    英雄|15才|女性|ドレ
  • 崩れぬ者
    梶木 千尋aa4353
    機械|18才|女性|防御
  • 誇り高き者
    高野 香菜aa4353hero001
    英雄|17才|女性|ブレ
  • エージェント
    M・gottfriedaa4446
    人間|12才|男性|命中



  • 護りの巫女
    三木 弥生aa4687
    人間|16才|女性|生命
  • 守護骸骨
    三木 龍澤山 禅昌aa4687hero001
    英雄|58才|男性|シャド
  • エージェント
    Heinrich Ulrichaa4704
    人間|68才|男性|防御
  • エージェント
    ベオウルフaa4704hero001
    英雄|62才|男性|ブレ
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