本部

 【仮装騒】ハロウィン連動シナリオ

【仮装騒】白と黒の咎人

紅玉

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
5人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/11/21 19:41

掲示板

オープニング

●Guy Fawkes Night
 秋晴れの十月中旬、ここは大英図書館。そしてH.O.P.E.ロンドン支部でもある。
 長い廊下にコツコツと響く靴音。
 一人の職員が扉の前で立ち止まって大きく息を吸う。静かに吐いて気持ちを落ち着かせたところでノッカーを叩く。女性の返事が聞こえてきたので入室すると、そこは小部屋だ。テーブルの向こうで微笑む応対の秘書へと用件を伝える。
「お待ちくださいませ」
 秘書が内線で連絡した。
 職員はいつものように報告書を秘書に預ければすむと考えていた。しかし支部長が直接会うとの返答に何度も瞬きを繰り返す。
 秘書に導かれて館長室へ。奥の非常に広い机にはたくさんの書類や本が積まれていた。その向こう側で席についている支部長キュリス・F・アルトリルゼイン(az0056)に報告書を手渡す。
 一分にも満たないはずの、しかし長い時が経過する。
「プリセンサー能力者三名によれば緊急性はないようですね。それにしても十月末から十一月初旬にかけて、多数の従魔、もしくはH.O.P.E.に仇なす者が出没ですか」
「はい。警戒すべきはイギリス全土になります。他の地域に関しても注意が必要とのことです。ご存じの通り、その時期はヨーロッパ各地でハロウィンとガイ・フォークス・ナイトが催されます。仮装した人々の間に紛れられると大変ではないかと――」
 キュリスが片眼にかけたモノクルに触りながら、職員の前でもう一度報告書に目を通した。
「……リンカーのみなさんにはあらかじめ各地に潜入してもらいましょう。それと、せっかくのお祭りです。従魔などの敵さえ倒せたのなら、仕事一辺倒ではなく楽しんでもらって大いに結構。そのように計らってください」
 キュリスが話した内容を職員はメモに認める。仕事場に戻ると依頼文章を作成。リンカー達の目に触れるよう配信するのだった。

●仮面
 ガイ・フォークスは罪人であり祭りの名前になった、ただの人名である。
 白地の仮面に黒い模様は、まるで髭を生やした紳士が笑っているかの様に見える。
 ガイ・フォークス・ナイトの日、その仮面を付けただけの人達、仮装をした人達等が篝火を焚いたり花火を見るのだ。
「ワタシのお祝イ……」
 カタカタ、と仮面を揺らしながら少年と少女の間位の声で言う。
「ワタシ、ガイ……」
 仮面の口元が大きく吊り上がり、紳士の表情は一変して悪魔の様な不気味な笑みへと変わる。
「早すぎも良くない、か……」
 仮面を被った女は低く呟く。
「……しかし、何かする気配でもないので『アノ子』に監視させて我らは、祝福の夜を楽しみましょう」
 仮面を被った少女は抑揚の無い声で言う。
「そうだな。ここは、我が庭……つまらない事には首を突っ込まない主義だしな」
 2人は踵を返し人混みの中へと消えていった。
 ガイと名乗る人物を残して……。

●邪英
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。率直に言います。ガイ・フォークス・ナイトに邪英した能力者ハルを発見しました」
 ティリア・マーティスは端末を操作する。
「経緯は不明ですが、双子の弟であるアキさんの英雄に確認してもらった結果、邪英化したハルさんと判明しました」
「その時にハルには発信器を付けたから、居場所はコチラで丸分かりだよ」
 圓 冥人は指先でガイ・フォークスの仮面をくるくると回す。
「ハルさんに関してはアキさんから情報を得ています。ですが、アキさんは戦場に連れ出す事は出来ませんので、その情報を元にどうするかは皆さんにお任せします……」
 少し悲しげな表情でティリアは言うと、アナタ達の端末に情報が送られた。
「終わったら、ガイ・フォークス・ナイトのお祭りを楽しんでくれても良いです。宜しくお願いします」
 トリス・ファタ・モルガナは深々と頭を下げた。

解説

●NPC
頼めば手助けをしてくれます。
ただし、『アキ』は戦場には出されない代わりにお祭りには呼べます。

●目標
邪英化した『ハル』の『撃破』もしくは『救出』
※危険なヴィランの為、もしもの場合に備えて殺害の許可は降りております。

●場所
イギリスのとある町中、時間は朝

●敵(アキからの情報)
・邪英化『ハル』
ハルの種族/適性『ワイルドブラッド/回避適性』
・英雄『椿』
クラス『カオティックブレイド』
武器:ナイフ、ガトリング砲
現状:ガイ・フォークスの仮面を被り『ワタシはガイ』と名乗っている。

●お祭り
目標達成したら、花火を見たり、篝火を作ったり、ガイ・フォークスの人形を焼く等が出来ます。

●PL情報(PCは知りません)
・OP『●仮面』
※上記OP内容通り、今回はヴィラン組織「Clematis」は絶対に関与しません。
・お祭りが始まったら『ハル』は一般人を襲います。
・武器は3種持っています。

リプレイ

●咎人
 吐く吐息が白くなる程に寒いイギリスのとある町中で、エージェント達は冷えていく指先をポケットに入れる等をして温める。
「ハルちゃんを救えなければ、アキくんに私と同じ思いをさせることになる。ここで死力を尽くさずして、何のためにHOPEの門を叩いたというのか? 何よりも、私が後悔しないために……」
 国塚 深散(aa4139)は天色の瞳を細め空を仰ぐと黒い髪が冷たい風で靡く。
「深散の欲する終幕へ向けて全力を尽くそう。大丈夫、フォローは任せて? 君は君の思うがままに」
 と、隣で九郎(aa4139hero001)は深散を見上げ柴染色の瞳を細める。
「ありがとう。でも、あの姿は二度とさせたくない……」
 鷹の目を通して見る邪英『ハル』は、まるで子供が黒のクレヨンで落書きしたかの様な歪な風貌だった。
 ふと視線を一瞬逸らした瞬間、ガイ・フォークスの仮面がコチラを見ていた。
「っ!」
 バレた! と思い深散は鷹を木の中へと隠し息を殺して見守る。
 興味を無くしたのか、それとも何となく空を見上げていたのかもしれない、ハルは直ぐに顔を空から歩いている道の先へと向けた。

「ムダ、だというのに……」
 ハルの口からではなく、仮面の髭が上下に動き男性の声色が放たれた。
「じゃなきゃ、この娘を選んだ意味がないではないか」
 ハルの仮面を通して『観ている男』は小さくため息を吐いた。
「コレが『一部』だという事は気付いてないだけでも……上出来でしょう?」
 椿は口元を片手で押さえ小さく笑みを零す。
「そこら辺のヴィランより、よほど君の方が役に立ちそうだよ。椿」
「御冗談を、ただ人を殺すのにちょっと詳しいだけです」
 仮面の言葉に椿は抑揚の無い声で言う。
(やれやれ、邪魔者か)
 仮面を被ったハルは立ちはだかる影に視線を向けた。

 帰郷していたレイシー・カニングマン(aa4281)の端末に親しい仲間からメールが送られてきた。
「レイシー、ハルが見つかッタそうダな! ワガハイ達も早ク行くのダ!」
 『ハル』の弟である『アキ』の保護者として、家族として特にコル・レオニス(aa4281hero001)は直ぐに行きたそうに部屋をうろつく。
「ええ、こうしちゃいられないわ。でも邪英化だなんて、どうして……」
 レイシーは浅葱色の瞳を細め端末を握る手に力が自然と入る。
「今はソンナ事ドウでもイイのダ、レイシー。助ケに行クだけダ!」
 コルはレイシーの肩を掴み軽く揺さぶった。
「そうね、そうよね、行きましょう!」
 ハッとした表情になりレイシーは椅子から立ち上がり、壁に掛けていたコートを取り袖を通し現場へと向かった。

「追い込み、誘い込みをかけるなら、周辺の把握は最優先だろ?」
 シャーロット・シュヴァリエ(aa4469hero001)は町の地図を手にし、能力者のマリエッタ・デファン(aa4469)に視線を向ける。
「戦いは分からないから……シャルに任せるの」
 分からないのではなく、マリエッタは戦う事を好まないので全て英雄に任せている。
「広場とか公園とかに誘導すればいいんじゃない?」
 四童子 鳴海(aa4620)がシャーロットの持っている地図を見て言う。
「名案だな」
「あーそこ行くお前さんら! なんとガイ・フォークスが爆弾を仕掛けたってェ声明があってなァ。悪戯だとは思うが一応安全確認出来るまで立ち入らない様にしてくれんかね」
 太陽の頭が見える位の朝に鳴海の声が広場に響く。
「よろしくお願いいたしますわ。敵の増援が無いとは言い切れませんし……」
 と、レイシーは呼んでおいた圓 冥人とティリア・マーティスの2人にお願いをする。
「お任せください。レイシー様達はその分、ハル様を助けるために集中してくださいませ」
「はい、この広場から100m程の範囲に居る一般人の避難をお願いします」
 レイシーは地図を広げ範囲を指で示す。
「コルちゃん、レイシーちゃん、気を付けてください」
「無論ダ!」
 トリス・ファタ・モルガナの言葉にコルが力強く頷いた。
「お祭りの最中に現れなかったのが、不幸中の幸いでしょうか?」
 九字原 昂(aa0919)は人通りの少ない町中を歩きながら呟いた。
「この辺りに爆弾を仕掛けたという声明がありまして。この時期によくある悪戯とは思いますが、安全が確認できるまで避難いただけますか?」
 九郎は、出店や祭りの準備をしている人にエージェント登録証を見せながら避難するようお願いする。
「範囲100mって意外と広い」
 昴は町中を歩きながら低く呻く。
 民家は少ないが、古いアパートが多い町なので空室もあり住民を避難させるのに苦戦していた。
 避難を終えないと、最悪の結果が起こったらこの手で幼い命を奪う道しか残らない。寒い、広い、そんな言葉はエージェント達の口からは出ないのは『もし、親しい人が邪英化したら絶対に助けたい』という気持ちが心の隅にあるからだろう。

●接触
「ハルさん」
 昴がハルを呼ぶ。
「ワタシは……ガイ」
「では、ガイさん……何をしにここへ?」
 否定しては逆鱗に触れるかもしれない、と思い昴はハルの様子を見ながら言葉を掛ける。
「ワタシはシンでナイとショウメイするため……」
 仮面はカタカタと小さく震えた。
「証明してどうするのですか?」
「……マツリ」
『やめさせるだけです』
 ハルが小さく言うと、仮面の髭が上下に動き男性の声が割り込んできた。
「貴方は誰ですか?」
『もちろん、ガイですよ。楽しそうでつい口を出してしまいました』
 昴の問いに仮面は控えめな笑い声を出す。
「ややこしくしてどうする。お前の仕事は別にあろう」
 椿が不満げに鼻を鳴らすと、仮面はやれやれと言って髭の動きが止まった。
「今のは?」
「アレもガイ、私もガイ。同じモノよ。言いたい事、あるのなら言うがよい」
 昴の黒曜石の様な瞳から感情を感じ取った椿は、問いに答えるついでに聞く。
「お祭りで皆が集まっている場所があります」
「……で? それがとうしたのかえ?」
 昴の言葉に椿は問う。
「ガイ・フォークス・ナイトだからです」
「あぁ……行きましょう」
 椿は仮面をカタカタと音を鳴らし、納得した声色で言うと歩き出す。
「案内します」
「しってる……ガイだから……」
 と、言ってハルは昴の手を払いのけると広場へと足を運ぶ。

「いない……」
 広場に着いたハルは抑揚の無い声で呟く。
「それは、ハルを元に戻すためだからですわ!」
 ハルの前にレイシーが立ち声を上げる。
「罠、ですか……」
 仮面をカタカタと震わせるハルは囲まれている事に気が付く。
 昴はライヴスで作られたワイヤー「女郎蜘蛛」を投げようとするが――……
「何をしようと?」
 ハルの黒い手でガシッ、と手首を掴み低い声色で言いながら昴の手の中にある女郎蜘蛛に顔を向けた。
「殺害許可とは、深刻な事態ですわね」
 ファリン(aa3137)は駆け出そうとしたレイシーの肩に手を置き静止させた。
「でもっ!」
 レイシーは声を上げながらファリンに視線を向けた。
「さっさと終わらせて観光でもしたいところだな。血霧の殺人鬼ここにありってかァ?」
「私も邪英化すれば好きなだけ殺せるのかしら」
 鳴海の言葉に不満げに鼻を鳴らし、物陰から共鳴姿の緑青(aa4620hero001)は琥珀の様な瞳にハルの姿を映す。
「問う、そこの少女も同類なのでしょうか?」
 ハルは昴の手首を掴む手に力を入れ、ギシギシと骨が軋む音が強くなる。
「御機嫌よう」
 緑青は物陰から姿を現し、予めカオティックソウルで己を強化しストームエッジで刀剣系の武器を多数召喚する。
 チリィンと鈴の音が鳴ると、エージェント達は素早く距離を取ったり物陰に隠れたりした。
「楽しいパーティーしましょうっていうかこいつ殺していいの?」
 緑青はハルに指先を向けた。
「やむを得ず、ならね。まだ助かるかもしれねェだろ? 救出、頼むぜ嬢ちゃん」
「……やっぱ面倒ね」
 苦虫を噛んだような表情で緑青はため息を吐く。
「目には目を……」
 ハルもまた刀剣系の武器を多数召喚する。
「不本意だけど半殺しで我慢してやるわ」
 と、緑青が声を上げるとハルを刀剣の刃の嵐に包む。
「芸のない」
 ハルもまた緑青を刀剣の刃の嵐で包んだ。
「後ろが留守になっているな」
 ハルの背後からシャーロットはストームエッジを放ち退路を断つ。
「愚神に操られているのですね。憐れな」
 刃の嵐の中にいるハルを見てファリンは呟く。
「撃破し、幻想蝶で固定すれば、助けられる。行くぞ……」
 ヤン・シーズィ(aa3137hero001)の言葉にファリンはこくりと頷き、ブラッドオペレートで攻撃する機会を窺う。
 しかし、緑青とハルの間で爆風が起き風圧でお互いの刃は後ろの方に飛び民家の壁に刺さる。
「やはり、爆弾を使ったみたいですわね」
 ファリン達はハルが「ガイ・フォークス」と関係あるモノを使ってくると予想していた。
「爆弾? そんな下品なモノ、この椿、どの様な状態でもつかいませぬ」
 煙が風に運ばれ、再びハル姿を確認出来た時に彼女の手には以前戦ってた時に使っていたガトリング砲が握られていた。
「そんな大きなモノは近接攻撃にはむかいませんわね」
 ファリンは素早くハルに駆け寄り、ブラッドオペレートで攻撃をする。
「いたい……」
 ハルの黒い体に付いた傷口から鮮血が流れ出る。
「もっと楽しませてよ」
 緑青は迅狼を鞘から刀身を抜く。
「意味があるかはわかりませんが……その仮面を壊しますわ!」
 共鳴姿のレイシーはSHINGANN RODを握りしめ仮面に向かって振り下ろそうとする。
「そうダ! ハルはハルで、ガイ・フォークスなドではナイ! そんな可愛くナイ仮面なドはワガハイが壊シテくれるワ!」
 家族を助けたい、ただそれだけの思いを込めてコルは腹の底から声を出す。
 椿が思わず仮面を腕で庇おうとするが、深散が素早く手首を掴み阻止する。
「……っ!?」
 SHINGANN RODが仮面に当たると、縦に大きくヒビが入ると左右に割れると地面に落ち粉々に砕けた。
 その瞬間、ハルは人の喉から発せられているとは思えない方向を上げる。
「ごめんねっ!」
 昴が霊奪を使用し双極の拳『陰陽』でハルを全力で切り裂く。
「い、いたいよぉ……いたい……おとうさん、おかあさん……わるいこ、で……ごめんなさいっ!」
 揺らめくハルの青藍な瞳から赤い涙が頬を伝い地面にぽとりと落ちる。
「水差して悪いが殺すなよォ」
「……分かってる」
 緑青はハルの懐に素早く移動するが――……
「コイツ……ッ!」
「危ない、危ない」
 椿の手には槍、その矛先は緑青の脇腹に深々と刺さっていた。
「……雪直伝の槍術、か」
 冥人は槍を見て呟く。
「何故分かる?」
「ん~、槍捌きと槍の種類、ね」
 シャーロットの問いに冥人は何時もの調子で答える。
「弱点とか、何かありますでしょうか?」
 と、不安げな表情でマリエッタが冥人に視線を向ける。
「分かるけど、俺は人に向けて大太刀を抜かない事にしているんでね」
「それでは、教えて頂ければ私がします」
 と、一歩前に出たのは深散。
「動きさえ止めれば、良いと思いますわ」
 と、民家の窓を破壊し枠を掴み壁から剥がしながらファリンはハルに視線を向けた。
 枠をハルの体に通すが、ライヴスを纏ってないモノは紙を千切るのに等しい位に脆い。
「必ず連れて帰るノダ! アキに悲シイ思いは絶対ニさセン!」
 コルは守るべき誓いを使いながらハルに言う。
「なら、死ぬがよい」
 と、椿が言うと頭上に無数の武器が召喚される。
「ウェポンズレイン? 上等!」
 緑青が嬉々として声を上げると、再び頭上に刀剣類を召喚する。
「死にさらせよ」
「それは、コッチのセリフ」
 椿の無差別に攻撃してくる武器、緑青は狙った対象へ刃の嵐を浴びせる。
「はー……あんまり、こういうの苦手なんだよ、ね」
 武器や攻撃によって破壊された民家のレンガを大太刀で受け流しながら冥人は肩を竦めた。
「シャルロットちゃん!」
 武器の無差別攻撃を避けるので必死のシャルロットの頭上から植木鉢が落ちてくる。
「すまない」
 トリスが水の銛で植木鉢を破壊する。
「今は、生き残る事を第一です」
 と、トリスはシャルロットに言う。
「こうなったら……」
 ファリンは地を強く蹴りハルに向かって駆け出した。

●大切なモノ
 ファリンは、ハルの腕を掴み地面に叩きつけるのと同時に腕の関節を外す。
「メディックらしからぬ戦いだな」
「そうも言っていられませんから」
 ファリンはヤンの言葉に答える。
「ハルちゃん」
 深散はハルを強く抱き締めると名を呼ぶ。
「……ち、ちがっ……がっ!」
 ハルは泣きながら首を振る。
「人の倫を踏み外させはしませんわ」
 ファリンは椿の魂に言う。
「これが、我々の正義だ……」
 ファリンの言葉に同意する様にヤンはこくりと頷く。
「まだまだ、幼い子だからか」
 椿は舌打ちをするが、ハルの自我を抑えたりエージェント達の攻撃によりライヴスはかなり消耗されていた。
「観念してください。アキくんに家族を失う事はさせないです」
 深散は幻想蝶を用いてその状態を固定して回収した。
「アキも祭りに呼びつつハルも行ければいいんだがなァ……」
 鳴海はアンプルをハルに使い傷を少しでも癒す。
「とりあえず、応急手当はしましょう」
 トリスとティリアが傷付いたエージェント達に駆け寄った。
「お願いしますわ。ケアレイは傷が深い方へ使ったので……回復できるモノも、攻撃の最中に使ってしまいましたわ」
 ファリンは救命救急バッグを取り出した。
「ハルちゃんに関しては私たちが責任をもってHOPEへ連れて帰ります」
 トリスが冥人に目配せをするとハルを抱えた。
「この状態じゃぁね……鳴海の気持ちも分かるけど別の機会があれば、ね?」
「そうだね。その時は思い出を沢山作って欲しいんだね」
 冥人の言葉に鳴海は頷くと、傷だらけので意識が無いハルに向かって優しく声を掛けた。
「それでは、失礼しますわ。あと、お祭りにはアキ様を連れてまいりますわ」
 と、恭しく一礼するとティリアはエージェント達に微笑んだ。

 日が沈み、町のあちらこちらで篝火でオレンジ色に染まる頃。
「ところで緑青、それは?」
 住民達がかんしゃく玉を投げたり、仮装や仮面を付けて歩き回っている中で鳴海は緑青が燃やしているモノに視線を向ける。
「アンタの写真張った人形」
 抑揚のない声で緑青は炎に包まれていく人形を見つめる。
「黙々と燃やしてると思ったらお前……!」
 わなわなと震える拳を握りしめながら鳴海は声を上げた。
「……ほら、ガイ・フォークスに見立てて燃やすってお祭り」
「緑青にとっての悪は鳴海、と」
 緑青の言葉に冥人は納得した様子で頷いた。
「いやいや! 何か違うよな!」
 と、2人の間で声を上げる鳴海。
「かんしゃく玉、なげよ」
「早急に死ね」
 弩 静華は緑青にかんしゃく玉を渡すと、彼女は鳴海に向かって投げる。
「楽しそうね」
 マリエッタは賑わう広場を見て微笑む。
「あぁ、無事に邪英化を解いたしゆっくりとガイ・フォークス・ナイトを楽しむとしよう」
 と、口元を緩めながらシャーロットは頷いた。
「良かったね」
 九郎はお祭りで賑やかな人々を眺める。
「ええ、後でアキくんに報告しましょう。『家族は無事です』って……」
「きっと喜ぶだろうね」
 深散は九郎の言葉に頷いた。

「アキーッ!」
 冥人に手を引かれてアキはお祭りの会場に到着するや否や、コルが嬉しそうに抱き上げた。
「コルぱぱ、あの……ハルのこといいの?」
 アキは可愛く首を傾げた。
「アキはワガハイの家族ダ。ハルはアキの家族ダ。ならバ、当然ハルもワガハイの家族なのダ」
 と、胸を張りながらコルは答えた。
「もちろん、アキの姉弟はどんな経緯であれ家族ですわ」
 レイシーは笑顔で言う。
「だから、たった一人の姉弟を大切にしてください」
 深散は屈んでアキと目線を合わせると頭を優しく撫でる。
「うん! おにいちゃん、おねえちゃん、ハルおねえちゃんをたすけてれてありがとう!」
 アキが満面の笑みでエーシェント達にお礼の言葉を言う。
「可愛い」
 そんなアキを見て深散は思わず抱き締める。
「皆さん! もう直ぐ花火が始まるそうですよ。町の皆さんが特別に良い場所を用意してくれたそうです」
 と、昴がエージェント達に話す。
「折角だし、私も参加しますわ」
「あの……出店もあったので、花火見ながら食べませんか?」
 マリエッタとシャルトッロが両手に色々な食べ物を抱えている。
「いる、食べる」
 素早く手を上げたのは静華。
「まぁ、まて。花火が始まったら皆で、な?」
 シャルロットとマリエットは一足先に用意してもらった場所へと向かった。
 皆が集まるとBGMが流れ始め花火が打ち上がり、ドーンと音が鼓膜を震わせ瞳には鮮やかな花火が映し出される。
 全員無傷、とまではいかなかったがアキの双子の姉であるハルを助けることが出来た。
 今度は、この賑やかな祝いという名のお祭り、そして悪いモノを倒した祝福の花火をハルと見れる時が訪れるであろう。その時は、笑って話せる位に元気になっている事を祈る。

 某所、ガイ・フォークスの仮面を付けスーツを着込んだ男がふっと笑う。
「甘い、甘いですね。仮面を壊すとは、こちらにとってはありがたいことです。貴重な情報がエージェント達に渡らなくて助かりました」
 男はテーブルの上に置かれたガイ・フォークスの仮面を手にする。
「まぁ、良い。あの少女は戦力として仲間にしたかったのですが、また新しいのを見つけるまでです」
 悔しい、よりもエージェント達の情報を一番の収穫であり、彼は次の段階へと事を進み始めた。
 祭りを楽しむエージェント達は何も知らずに……。

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

  • 危急存亡を断つ女神
    ファリンaa3137
  • 喪失を知る『風』
    国塚 深散aa4139

重体一覧

参加者


  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避



  • 危急存亡を断つ女神
    ファリンaa3137
    獣人|18才|女性|回避
  • 君がそう望むなら
    ヤン・シーズィaa3137hero001
    英雄|25才|男性|バト
  • 喪失を知る『風』
    国塚 深散aa4139
    機械|17才|女性|回避
  • 風を支える『影』
    九郎aa4139hero001
    英雄|16才|?|シャド
  • アキとハルの母
    レイシー・カニングマンaa4281
    人間|17才|女性|生命
  • アキとハルの家族
    コル・レオニスaa4281hero001
    英雄|25才|男性|ブレ
  • エージェント
    マリエッタ・デファンaa4469
    人間|15才|女性|生命
  • エージェント
    シャーロット・シュヴァリエaa4469hero001
    英雄|16才|?|カオ
  • 慈愛の『盾』
    四童子 鳴海aa4620
    人間|26才|男性|防御
  • 無慈悲な『剣』
    緑青aa4620hero001
    英雄|23才|女性|カオ
前に戻る
ページトップへ戻る