本部

秋の味覚を堪能しよう

saki

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/10/07 18:47

掲示板

オープニング

●とある果実園にて
 ここは、栗に梨、葡萄に柿の木のコーナーがあり、入園者はここから自由に生ったものを収穫できるシステムだ。
 収穫したものは、入園の際に渡される籠に好きなだけ詰めることができ、料金は一律。これは戦略が試されているのである。
 勿論家に持ち帰っても良いし、園内のベンチやテラスで食べるのも良し。そして、最も人気があるのはゴンドラで山頂まで移動し、秋の彩を堪能しながら食べることだ。他にも、山頂に出店していることで多少割高ではあるものの、タルトやコンポートにケーキを取り扱ったパティシエの洋菓子類の提供もあり、それも人気を博している理由の一つである。

 客の入りも上々で、なかなかの賑わいを見せる果実園であるが、今日は悲鳴で賑わっていた。
 毬に包まれた栗が飛び、梨が容赦なくぶつけられ、葡萄の果実が飛散し、猿蟹合戦でもあるまいのに柿が投げつけられる始末である。
 それらは全て人間がやっているのではない。従魔が依り代として憑りついた木々がやっているのだ。
 野球選手も真っ青な実が投げつけられるのだ。そんなのを喰らったら堪ったものではないと、客は遮蔽物に身を隠し、縮こまることで難を逃れている。
 流石に従魔化しているとはいえ、木々が動く訳がないと踏んだのだ。
 しかし、それは間違いであった。
 この園で、其々のブースにて最も古くからある木が一本――つまり栗、梨、葡萄、柿の木が一本ずつ動き回っているのである。
 ずしーん、ずしーんと音を立てながら、悠々と歩いているのだ。
 我が物顔で歩いている木を気にしながら、客はこちらに来るなとばかりに息を殺して身を潜めるのであった。

解説

●目的
→木の暴走を止め、客を助けること

●補足
→木にライヴスが宿り、それによって自身に生った実を投げつけて攻撃してきます。簡単に言うと、時速150kmの速さで投げつけられている感じです。
 通常の木はミーレス級、動き回れる方はデクリオ級です。
 どちらも行動は実を投げつけるだけ。しかし、デクリオ級は自身でまた実の生成ができるので、ミーレス級とは違って球数に制限がありませんので注意が必要です。
 歩き回れるとはいえ、ミーレス級の木の動きは遅いので地鳴りで場所は判断が付きやすいかと思います。しかし、枝を振るって攻撃を防御したり、または捕まえてこようとしたりという行動もするので気を付けましょう。
→倒す時は、ミーレス級もデクリオ級も木に宿ったライヴスを払えば元に戻ります。勿論破壊して倒すことも可能ですが、あまりそれをやってしまうと果実園の木々が無くなってしまう危険性がありますので、大きな破壊行為は控えましょう。
→客が彼方此方に隠れている状態――何人いるのかは不明の為、客に攻撃が当たらないように注意しましょう。
 特に、動き回る木がいることで危険度が上がっていますので、早目の対処が必要です。

リプレイ

●現地へ
 果実園の様子を見て、御神 恭也(aa0127)はある意味感心したかのように声を漏らす。
「擬態するには、うってつけな場所だな。まるで、見分けがつかん」
 その言葉には伊邪那美(aa0127hero001)も同様のようで、『取りあえずは、手当たり次第刺して見る?』と小首を傾げながら可愛らしく、しかし物騒な言葉で提案をした。

 月影 飛翔(aa0224)は「食べ物を粗末に扱うな。食い物の恨みは恐ろしいのにな」と呟き、ルビナス フローリア(aa0224hero001)も『そうですね』と頷く。
『まったく、従魔も馬鹿なことをするものですね』
 そう言うルピナスの表情はいつも通りであるが、それなのに何か感じ取れるものがあり、飛翔はその場から離れようと用意しておいた園内の地図をメンバーに配布するのであった。

『この時期の果物って熟れまくってるわよねぇ。ぶつけられたらたまったもんじゃないわぁ。むっちゃん、ちゃんと避けなさいよね』と鯨間 睦(aa0290)に話しかける蒲牢(aa0290hero001)は、外見こそ美しいのに口調の所為かおネエという印象を相手に与える。
 それに反し、外見同様坦々とした口調で睦は「特になし。従魔滅すべし」と頷いた。

 果実園の職員に向かい、常にない程真剣な表情で鋼野 明斗(aa0553)は「ご主人、ひとつ確認だが、仕事が終わった後、落ちてる果物は拾って持って帰ってもいいですか?」と尋ねた。その様を、固唾を呑んでドロシー ジャスティス(aa0553hero001)も見守っている。
 正直、従魔との戦闘ですら滅多に見せないような真剣さと気迫が二人にある。それに少したじろぎながら、職員から「栗はともかくとして、他の果物は落ちたら商品の価値が無くなってしまうので、かまいませんよ」という返答を受ける。
 そして「いくぞ、ドロシー」とやる気に満ちた掛け声を上げ、ドロシーはスケッチブックに『祝、脱、パンの耳に砂糖!』と歓喜の文字を躍らせる。その様はまるでこの世の何よりもの幸運でも訪れたかのような姿だ。
 それだけパンの耳+砂糖で過ごす生活にはうんざりしていたのだ。「ちゃっちゃと済ませて、ジャムを作る」と、美味しい食事の為に二人は闘志を漲らせるのであった。

 美味しく色づいた実を使って攻撃を仕掛けてくる従魔に、戀(aa1428hero002)は『美味しい実を粗末にする子はぁ、徹底的にお仕置きよぉ?』とおっとり、しかし有無を言わせぬ語調でそう言った。
 それにニウェウス・アーラ(aa1428)は「同感……。早くやっつけよう、戀」と同意を示し、戀「はぁい♪」と楽しそうに笑んだ。

 音無 桜狐(aa3177)は猫柳 千佳(aa3177hero001)を恨みがましい視線で睨んだ。効果音が付くとしたら、「じとー」である。
 秋の味覚が堪能できると聞いていた桜狐は、「わしは普通に堪能がしたかったのぉ…」とぼやく。その視線から逃れるように千佳は顔を背けると『あ、あはははは? ま、まあ終わったら堪能出来るから頑張ろうにゃ。きっと、多分』と曖昧な笑みを浮かべつつ共鳴した。

 フィアナ(aa4210)は口を真一文字に結び、むすっと不機嫌な態度を隠さない。それは、「折角の実が…」と残念に思っているからである。
 そんな風に「勿体ない」というのを隠そうとはしないフィアナを、ルー(aa4210hero001)は穏やかに見守っている。しかし、すぐに「一般客の安全を確保しないと」と気持ちを入れ替えたフィオナと共鳴すると、彼女の中から興味深く見るのであった。

 今回もと言うべきなのか、何 不謂(aa4312hero001)の『おい、岩磨』という声に急かされ、まさかとばかりに狒頭 岩磨(aa4312)は「なんじゃい。また勝手に依頼受けてきたんちゃうやろな」と疑り深い眼差しを向ける。
 しかし、『行くぞ』と促され、「せめて説明せえや!!」『観光客が柿をぶつけられてるそうだ。本来ぶつける側のお前が救うことで、猿蟹合戦の汚名を返上するのだ』「客は蟹かいな…」という経緯の元依頼を受けることになり、ここまで来てしまったら仕方ないとばかりに、岩磨はメンバーと連絡先を交換するのであった。

●園の中へ
 恭也はライヴスゴーグルを着用し、普通の木に擬態している従魔を探す。動き回っているデクリオ級に関しては耳を澄ませて音を感じ取ることによって、大体の方向と距離を割り出すつもりでいる。
 注意深く周囲を確認していると、木からライヴスが感じ取れた。あれが、件のミーレス級の従魔なのだろう。
 依頼主から木はなるべき傷つけないように……と言われていることもあり、一気に距離を詰めると、剣で斬るのではなく刺す戦法をとって従魔を攻撃する。
「依代兼人質みたいな物か……攻撃手段が限定されるな」
『あそこまで大きくなるには時間が掛かるからね。無暗に切り倒すなんて出来ないよ』
「実を付けるまでの時間が一番掛かる柿の木もやられたのか。他の樹木なら3年程度で実を付けてくれるが柿は8年と言うしな」
 従魔が投げつけてくる柿――恭也が嘆いたそれをかわし、気を使いながら攻撃を当てて木から従魔を離すと、従魔に止めを刺した。


 飛翔とルビナスはデクリオ級の足音を探しながら、そこに向かって移動を開始する。
「栗、梨、葡萄、柿だったか。栗が一番危険そうだが、柿も昔話の再現になりそうだな」『どれも投げられては痛んでしまいます。早めに消しましょう』「……実は怒ってるか?」『ああいう食べ物を粗末にする輩は消えるべきです』
 矢張り、園の入り口で感じたそれは気のせいではないようで飛翔は触らぬ神に祟りなしとばかりに肩を竦めた。
 移動中に隠れている客を発見すると、飛翔はメンバー全員にその旨を伝えて地図にマーキングした。見つけた客には隠れているように伝え、飛翔は従魔へと駆ける。途中、従魔から毬栗を飛ばされはしたが、それを弾きながら接近し、幹に触れて直接ライヴスを流し込んだ。
 それだけであっさりと従魔が出てくると、それをソニックベルジの霊力刃で斬り裂いた。
「相変らず魔法はうまく使えないな。手応えがなさすぎる」
『以前も言いましたが、精進あるのみです。身体の動きは基本同じなのですから』
 安全が確保できたことをメンバーに連絡を取ると、隠れていた客の元へ戻ると、この場所から動かないように伝え、「一応周囲の安全は確保したが、動いている奴もいる。全部片付くまで隠れていてくれ」『すぐに終わらせますから。終わり次第、秋の味覚を堪能しましょう』と次へと向かうのであった。


 共鳴した睦は各ブースの配置を確認した後、園内の捜索を始める。従魔化した木が何時攻撃を仕掛けてくるかは判断が付きにくいため、十分に注意して進んで行く。
 そして鶴齢輝客を発見すると、「しばらくそこにいろ。指示があるまで動くな」と注意を促した。
 そのまま進んでいると不意に、死角を突くかのような気配を感じ、首を傾けるとその横を葡萄が通り過ぎた。すると、避けるのと同時に投げられる方向から想定すると、当たらない位置に身を隠した。
『右よーし、左よーし。この辺りは大丈夫そうねぇ?』と、場違いなまでに明るい蒲牢が響き渡る。しかし、そんな蒲牢の言葉に微かに頷きを見せると睦は照準を定める。
 雨霰とばかりに葡萄の粒が襲い掛かってくるが、睦は冷静にA.R.E.S-SG550を構え対処する。
『的が大きいと当てやすくていいわねぇ。どんどんやっちゃいましょ』と、楽し気な声がする。
 木の幹に弾丸がヒットする。それは睦なりの配慮だ。果樹へ致命傷的なダメージを負わせない為、音と枝には当てないつもりなのである。
 そして木から離れた従魔を、周易経の放電にて止めを刺した。


 明斗は共鳴した後園内に入ると、まずは逃げ遅れた客の安全の確保に努める。
 何名が残っているのかも知りたい所であるが、従魔に襲われた際の混乱した状況の所為で定かではないものの、少なくとも数十名という単位で人が残されているそうだ。
 周囲を警戒しながら進んでいると、少し離れた所で従魔が梨を投げつけている姿が見える。あの某ゆるキャラではないが、正に梨汁ブシャーの状態だ。建物や地面にぶつかった梨が砕け、汁も中身も飛び散っている。
 飛んでくる柿を禁軍装甲で弾きながら、従魔が狙う先まで進むと、太い柱の陰に隠れる客の姿を見つけた。
 助けにきた旨を伝えると、安堵の表情を浮かべた客に「もうすぐだ、いま少し待っててくれ」と応えると、明斗は他のメンバーに客を発見したこと、そして戦いに巻き込まないように注意してほしいということを連絡する。
 明斗は盾で防御しながら従魔との距離を詰める。攻撃を弾くことに定評がある盾の面目躍如とばかりの心強さだ。そして接近して木に触れ、ライヴスを流し込むと従魔を払った。
 完全に動かないことを確認すると、明斗は客を入り口付近まで誘導するのであった。


 ニウェウスは真っ先にデクリオ級へと向かう。客の一番近くに居るデクリオ級を倒すつもりなのである。
 向かったのは梨のブースで途中、従魔から梨を投げつけられることもあったが、特に苦も無く避けてデクリオ級へと向かう。
 そして、見つけた。
 耳が捉えた地響きの音――それは従魔が移動する音である。その音のする方へ向かえば矢張りと言うべきか、目標を発見することができた。
 敵の近くに、息を殺して身を縮こまらせている客の姿があった。しかしまだ客に気がついていないようだ。
 客の安全の為にも移動しようと、デクリオ級の従魔の気を惹くため、折っても支障がなさそうな枝に目を付け、魔道銃で撃ち抜く。
 枝が宙を舞った。
「幹を壊すのはダメだけど……ふふ。ちょっとした枝くらいなら、いいわよね?」と、賦役に笑む。
 枝を撃ち抜かれ、ニウェウスに気が付いた従魔が次々に梨を飛ばしてくる。
 従魔の猛攻を避けながら、隙を突いて次から次へと銃弾を当てる。
 そして当てながら背中を向けて走り出せば、大きな音を立てながら従魔も後を追ってくる。速いとは言い難い速度だが、従魔は確実についてきていた。
 それから先程の客から十分だと思われる距離を取った所で、従魔と向き合う。

 動き、位置を変えることによって敵から断続的に続く梨の集中砲火を避ける。
「あら、私ってば大歓迎されてる? 興奮しちゃう♪」と軽口を叩きながらも従魔との距離を詰めると、「ライヴスを流し込んで払うのって、やった事は無いのよねぇ。上手くいくかしら?」と枝に斬り、隙を突いて手からライヴスを流し込んで従魔を木から追い払う。
「ほーら。おねーさんが一撫でしてあげるから、出ておいで?」
 強制的に従魔を木から剥がすと、カオティックソウルで攻撃力を高め、ストームエッジで追撃、そして「うふふ……膾切りにしちゃうわよぉ? そーれ!」と従魔を切り刻み、撃破した。


『早めに助け出さないといけないだろうしにゃ。魔法少女、出陣にゃ♪』
「秋の味覚は食らいたいが、そういう意味で食らいたくはないのぉ…。面倒じゃしさっさと終わらせてしまいたい所なのじゃ…。…って、魔法少女ではないのじゃ…」
 そんな少し面を喰らうような、気が抜けるようなやり取りをしながら共鳴すると園内に踏み入れた桜狐と千佳はデクリオ級の従魔を発見し、同じブース内にいた飛翔と合流する。
「流石にここで払ってそのままじゃ、この後の邪魔になるしな」
『終わった後のことも考えないといけませんね』
 という飛翔とルビナスの意見を採用し、従魔との戦闘場所を変え、木の状態に戻っても何ら問題のない場所へと誘導する。
 石を投げて当てると、従魔はこちらに気が付いたようで攻撃を仕掛けてくる。投げつけられる毬栗であるが、それを避け、そして適度な距離を保つことで挑発して相手を誘い出す。
 阿呆だろう従魔、とでも言いたくなるが、毬栗を避け、ときたま石礫を当てて適度な距離を取ればあっさりと後をついてきた。
 そして少し開けた場所にやってくると従魔と向かい合った。

 先手必勝とばかりに、千佳がナックルで殴りつける。
 多々良を踏むかのように従魔のバランスが崩れ、よろけた。
 一応大きな傷をつけないようにと注意は払っているものの、それでも容赦なく殴りつけていく。相手がバランスを崩しているのだから尚更のことだ。これでもかとばかりにラッシュが入る。
『ねこねこナックル、シュートにゃー♪』と笑顔で殴りつけるのは、ある意味踏み込み難い光景である。主に声をかけ辛いとかそういう類のものだ。
 そんな楽しそうな千佳に、桜狐は内心で汗を掻きながら「その名前、なんとかならぬのかのぉ…。武器に可愛い名前付けてものぉ…」と言うが、千佳はどこ吹く風だ。『うに、何か変かにゃ?可愛くていいと思うんだけどにゃー?』と攻撃を続けている。
 距離が近い為に流石に毬栗を投げつけてはこない。あれは遠距離には有効だが、近距離的には攻撃し難いデメリットがある。その為、枝をしならせて振るい千佳を薙ぎ払おうとするが、身軽に幹を蹴って宙に浮かんで身を翻して避けた。

 注意が完全に千佳に向いている為、本来なら襲い来る無限の弾幕に苦戦するところであろうが、千佳が良い具合注意を惹いていた為に飛翔は難なく従魔と距離を詰める。
 これまでの従魔の動きから推測するに、基本的に攻撃手段は上からの撃ち下し、そして枝を腕のように振るっての攻撃である。
 前進と急停止を織り交ぜることでフェイント効果も出しながら、電光石火で一気に接近したのだ。そして、ソニックベルジの霊力刃で攻撃を仕掛ける。
「流石にでかいし、根で歩くのは気持ち悪いな」
『枝だけでなく根の攻撃もあるかもしれません。気を付けましょう』
 従魔からの他なる攻撃手段を警戒しながらも、次々に攻撃を当てる。
 木を傷つけることなく、従魔にダメージを与えられる効果的な攻撃だ。そして、自身が与えたものと、千佳が与えたダメージが蓄積し、弱ったところでライヴスを流し込んで従魔を払った。
 出てきたところを、斬り裂けば難なく倒すことに成功した。


 フィアナは耳を澄ませてデクリオ級の位置を探る。まずは、固定されて基本的に定位置から動くことのできないミーレス級は置いておいて、動き回ることができるデクリオ級から倒すつもりである。
 そして従魔の元へ向かう前に、戦力の片寄の危惧からメンバーに向かう場所を伝える。すると、同じブース内に居るという睦もすぐに合流するとのことだ。
 デクリオ級の元へ向かいながらも、隠れている客の位置や人数、ミーレス級の従魔も見かけたのならなるべく把握しながら進む。途中、「大丈夫よ、そこで待ってて!」とウィンクをして相手のフォローも忘れない。
 従魔の姿が見える位置まで来ると、同じ頃に睦もやって来た。彼も彼で、周囲の客の位置の把握などもしていたようである。
 揃った所で、従魔へと接近する。

 場所が場所なだけに、フィアナは守るべき誓いを発動する。これによって、従魔の意識はフィアナへと集中する。
 葡萄が石礫のようにフィアナへと向かう。それを睦がA.R.E.S-SG550での遠距離射撃で適度に撃ち落として援護する。
 フィアナは従魔の注意を惹いたまま走り出す。この場所で戦うのだとしたら、先程フィアナが見つけた人たちに当たる可能性も無きに非ずだからだ。
 走っていると、こちらの方を偵察したという睦から「左手方向、客がいる。寄せるな」と指示が飛び、それに従ってルートを変更する。ミーレス級の従魔が居る場合は、「後ろ! ミーレス級!」とすかさず警告が入る。
 そんな風にして客も他の従魔の姿も見えない場所まで移動すると、追って来たデクリオ級と対峙する。
 相変わらず球数が無尽蔵な為、絶えず葡萄が飛んできている。それを避けながらフィアナは距離を詰める。勿論睦からの的確な援護射撃もあり、一気に相手の懐へと入り込む。
 フィアナは機動を活かし、相手を攪乱する。
 接近したことによって、敵からの捕縛される事を避けるべく、正面だけではなく左右背後にも移動して攻撃する。なるべく同じ場所に長く留まらないようにし、攻撃を避けつつも自身の攻撃を当てる一石二鳥の作戦である。
 睦の援護射撃も堂に入ったもので、フィアナに隙ができないように攻撃の間隔を埋めている。勿論、木への配慮を忘れない素晴らしい狙撃だ。木の事を考えると、大事な部分にダメージを負わせるのはよろしくないのである。
 睦が、フィアナが攻撃していない間に銃で撃ち続けることにより、相手に反撃の隙を与えずに攻撃を繋ぐことができている。正に、ずっとオレのターン状態だ。相手の手番が回すことなく仕掛けているのである。
 そして従魔に十分のダメージを与えたところで、フィアナはライヴスリッパーで相手のライヴスを乱す。すると、従魔は弾かれるようにして木から離れた。
 出てきた従魔を、集中攻撃する。フィアナが剣で斬りつけ、睦が撃ち抜いて止めを刺した。


「おー、観光客の皆さーん。安全確保したら助けたるから、じっと息潜めてしっかり隠れとけやー」
『お前、警官ならもう少しマトモな勧告をだな』
「こんな化け物みたいなオマワリおってたまるかいな。今の俺は岩猿様やぞ」
『一理ある』
 そんなやり取りをしながら柿の木が植えてあるブースを練り歩く。
 不謂が言うように勧告の仕方は少しあれかもしれないが、助けが来たということが重要なのである。その証拠に、彼方此方から息を吐き出す音がする。
「ほら、間違いないやんけ」と勝ち誇る岩磨に、不謂は『緊急事態だからに決まっているだろうが』と溜め息を吐く。
 そんな感じで進んで行くと、同ブースに居る恭也からデクリオ級の位置が判明したとの連絡を受けて急行する。
 それ程離れていない位置に居た為、すぐに恭也とは合流できた。そして、従魔を迎え撃つ。

 岩磨は囮を買って出ると、ライヴスフィールドを展開。そしてリジェネーションをかけて敵からの攻撃に備える。
 岩磨は拳を打ち合わせ、青春のグローブで臨む。
 飛んでくる柿を避け、そして時たまグローブの効果でキャッチしては従魔へと投げ返した。
『猿が柿を投げつけられるとはな』と、依頼を受ける際に猿蟹合戦と称した不謂は何処か含むように言う。それに「喧しいんやけど」と喚くように返しながらも、囮としての仕事は全うする。

 岩磨が従魔の攻撃を受けている間に、恭也が前に出る。囮にはなってくれているが、それでもときたま飛んでくる柿を武器で防ぎ、振り払う。
『勿体無いな……折角の実りなのに』
「あれは流石に食えないだろ。未成熟な硬い実を撃って来ている様だぞ」
 その言葉の通り、不謂の言葉を借りるとしたら猿蟹合戦で猿が蟹に投げつけたかのような柿を投げつけてきているのである。
 その攻撃を掻い潜って接近すれば、岩磨に注意が行っていた従魔から恭也へも注意が向かい、枝を鞭のようにしならせて捕まえようともする。しかし、太い部分を傷つけないように注意しつつも、細い枝葉を切り落として難を逃れる。
『ちょ、ちょっと木を傷付けたら駄目だってば!』
「大丈夫だ。果実の品質を高める為に枝を落として果実の数を調整する事は良くある」
 伊邪那美にそう返した恭也は、襲い掛かる枝を次々に落としていく。
 今度は従魔の注意が近距離に居る恭也に向かったところで、岩磨は白鳳の羽扇を振るう。
 白い矢が飛び、従魔を射抜く。
 出来る限り威力は抑えてあるものの、不意を打つような形で従魔に攻撃が入った為に、木からライヴスが払われる。
 出てきた従魔を恭也の疾風怒濤が炸裂し、文字通り息もつかせぬ連続攻撃を繰り出して屠った。


 他の面々がデクリオ級と戦闘している頃、明斗も奮闘していた。
 ミーレス級の攻撃を盾で防御し、接近して従魔を払う。それが危なげないというか、その一連の流れが手慣れていて、いっそ流れ作業的なまでにスムーズだ。
 それもそうであろう。客を見つけ、作り出した安全地帯に連れて行き、そしてまた従魔を倒して安全地帯を作り上げて……ということを繰り返しているのである。それによって確実にミーレス級の従魔を減らし、そして客の安全の確保をしているのだ。
 手近の所から攻めていって範囲を広げていき、途中、客を発見した面々から連絡が入る為、自分一人で捜して救出して……というのよりは大分時間の短縮に成功している。
『あっち、客発見』とドロシーも明斗のサポートをする。見つけた客に向かって明斗は笑みを浮かべて「もう大丈夫ですよ」と安心させると、客を狙う従魔に向かって盾を構えて突っ込む。そしてライヴスを直接流し込んで払った。
 こうして、また一人、また一人と明斗は客を救出していくのであった。

●そして
 睦はデクリオ級を討伐した後、ローラー作戦とばかりに撃ち漏らしたミーレス級の従魔を討伐、そして明斗のように客を救出しては安全確保が出来次第避難誘導をする。

 ニウェウスは先方こそデクリオ級と同様に、積極的に前に出て従魔を即座に撃破する。
 蝶のように舞い蜂のように刺すという言葉があるが、その動きはその言葉のようである。
 相手の攻撃をかわして懐に入り込み、そして鋭い動きで従魔を確実に払っていった。
 そして次から次へと、従魔から狙われている客たちを救出するのであった。

 千佳はデクリオ級との奮闘で活躍を見せたように、次から次へとミーレス級の従魔にナックルを撃ち込んで木から従魔を払い、倒す。
 そしてミーレス級たちも殲滅した後に上機嫌のまま『これでおしまいかにゃ? ふふん、魔法少女の勝利にゃ♪』と勝利のポーズを決めようとするが、『…って、言う前に解除されたにゃ!?』と驚いた声を上げる。それに対し、桜狐は視線を逸らしたまま「や、わしは特に魔法少女のポーズは取りたくないわけじゃし…?」と拒否するのであった。

 フィアナは投げつけられる実を払いながら、「勿体ない…」と嘆きの声を上げた。それに『ああ、全くだね。豊穣の女神もきっとお怒りだ』とルーも頷く。
 そんな風にこの状況を憂いながらも、フィアナは木へのダメージを最小限に留められるように注意しながら木から次々に従魔を払い、殲滅するのであった。

 デクリオ級を討伐した後、岩磨は客の安全の為に奔走する。従魔を払い、安全なルートを確保して誘導する。客の誘導を終えたら虱潰しに払って殲滅だ。
『漸く警察らしい姿を見せれたな』と揶揄するような不謂に「五月蠅ぇ」と不機嫌に答えながらも、誘導を続けるのであった。


 そんなこんなで、無事に従魔の殲滅と客の避難も終わって依頼は終了である。終わった後はここぞとばかりに楽しむ姿があった。

 伊邪那美は今後のことを心配し、恭也に声をかける。
『ねえ、無尽蔵に実を作らされた木は平気かな? 実を着けさせるのって、結構負担になるって聞いたよ』
「俺達は素人だからな……まあ、懸念の一つとして園の人に話しておくか。栄養剤を多目にしておけば今年は無理でも来年には回復しているだろ」

 折角の行楽が台無しになっては勿体ないと、ルビナスは『それでは皆様、大いに満喫しましょう』と給仕に回る。

 睦と蒲牢は『こんな山奥くんだりまで来たのに、美味しいものがあるなら買って帰らないと損じゃない?』と、件の人気スイーツを購入することに決めた。

 明斗とドロシーは、持ってきたビニール袋に葡萄と梨を嬉々として詰めていく。勿論、味見と称してその場でも堪能する。
「袋にも胃袋にも詰められるだけ詰めるぞ」『合点!』
 今日もまた、「食うために闘う」という切実な問題の為に、戦闘後も戦う二人であった。

『ねー、ますたぁ。お土産に果物ぉ』と甘えた声を出す戀であるが、ニウェウスもそのつもりであったようで「はいはい……事後処理が済んだら、ね?」と宥めるのであった。

 桜狐は頑張ったのだからと「食べさせてくれねばいじけるのじゃ…」と果物を強請り、千佳は『が、頑張ったしもちろん上げるのにゃっ。だからいじけちゃだめにゃっ』と食べさせてあげた。

 山頂の店が気になっていたフィアナの姿を見て、ルーは彼女をその店まで連れて行き、「秋の味覚、美味しい、ねー。次はお芋、ねっ」と満足そうなフィアナにルーは笑いながら『そうだね、今度スイートポテトでも作ろうか』と相槌を打つ。

 柿を食べ、「っはー、旬のモンは美味いのう! こら童話の猿が独り占めする気持ちもわかるわ」と堪能している岩磨に『独り占めは許さんぞ、我にもよこせ阿呆』と不謂は食って掛かるが、「言葉の綾やろが、ホレ」とアッサリ柿を渡すのであった。


 秋の味覚も本当の意味で堪能し、これにて依頼完了である。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
  • 『星』を追う者
    月影 飛翔aa0224
  • 沈着の判断者
    鋼野 明斗aa0553

重体一覧

参加者

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 『星』を追う者
    月影 飛翔aa0224
    人間|20才|男性|攻撃
  • 『星』を追う者
    ルビナス フローリアaa0224hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • エージェント
    鯨間 睦aa0290
    人間|20才|男性|命中
  • エージェント
    蒲牢aa0290hero001
    英雄|26才|?|ジャ
  • 沈着の判断者
    鋼野 明斗aa0553
    人間|19才|男性|防御
  • 見えた希望を守りし者
    ドロシー ジャスティスaa0553hero001
    英雄|7才|女性|バト
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • 花弁の様な『剣』
    aa1428hero002
    英雄|22才|女性|カオ
  • アステレオンレスキュー
    音無 桜狐aa3177
    獣人|14才|女性|回避
  • むしろ世界が私の服
    猫柳 千佳aa3177hero001
    英雄|16才|女性|シャド
  • 光旗を掲げて
    フィアナaa4210
    人間|19才|女性|命中
  • 翡翠
    ルーaa4210hero001
    英雄|20才|男性|ブレ
  • The Caver
    狒頭 岩磨aa4312
    獣人|32才|男性|防御
  • 猛獣ハンター
    何 不謂aa4312hero001
    英雄|20才|男性|バト
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