本部

【卓戯】連動シナリオ

【卓戯】荒野のガンマン

一 一

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 6~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/10/22 19:38

掲示板

オープニング

●さぁ、ショータイムだ!
『お前ら、よく集まってくれたな!』
 酷く乾燥した風が通り抜け、黒毛の馬に乗った厳つい男が太い右腕を振り上げた。その手にはごついリボルバーが握られ、空中に一発の鉛玉が打ち上げられると視線が男へ集中する。
 男の前には奇妙な騎馬集団が集まっていた。赤毛の馬にはあくどい笑みを浮かべたチンピラ風の男たちがまたがり、茶色の馬には何故か張りぼてのカカシがくくりつけられている。その内、聴衆のほとんどがカカシなのだから、奇妙と言わざるを得ない。
『これから食料を奪いに近くの村を襲う! なぁに、戦いなんか知らねぇ平和ボケどもの集まりだ、余裕で暴れ回れるだろうよ!』
 男の声に従ってか、黒毛の騎馬も声を荒らげ頭を上下に揺する。その際、どうやったのかリーゼントのように固めてキメられたたてがみが、馬の動きにあわせてゆっさゆっさと荒ぶっていた。
『抵抗する奴は殺せ! 食料は奪えるだけ奪え! 特に、若い女は絶対に逃がすなよ!』
『ウオオオオッ!』
 男とチンピラが下品な笑みを浮かべ、野太い歓声が上がる。馬も興奮しているのか、ヘビメタの首振りパフォーマンスがごとく、ぐわんぐわん頭を振り乱す。
『行くぞぉ、野郎ども! 俺についてこい!』
『ウオオオオオオオオッ!!』
 興奮が最高潮に高まった時、男のかけ声で馬たちが一斉に蹄を大地に打ち付け走り出した。複数の馬の移動により大量の砂塵が舞い、その場を白い煙幕が包み込む。
 数分後。煙が晴れて誰もいなくなったその場所に、ぽつんと何かが放置されていた。
『カチッ…………お前ら、よく集まってくれたな!』
 それは古びたラジカセで、中に入ったカセットテープが反転し、同じ内容の音声が再生された。
 誰もいなくなった荒野のど真ん中で、録音されたうるさい男の声と銃声が、何回も何回も空しく響いていた。

●悪漢どもを蹴散らせ!
「今回皆さんには、荒野のど真ん中にある町の防衛をしてもらうことになるようです」
 ブリーフィングルームに集まったエージェントたちの前で、あるテーブルトークRPGのルールブックを片手に職員が説明をしていた。
「舞台は無法者がはびこる西部劇風の世界ですね。プレイヤーも世間から無法者と揶揄されるガンマンとなり、賞金がかけられた悪役を愛用の二丁拳銃で首を取って日銭を稼ぐ、といった殺伐とした背景のある設定です。……この世界を作った人は、アメリカではなくイタリア製のマカロニ・ウエスタンを参考に作ったようですね」
 パラパラとルールブックを読み進めつつ解説していた職員は、最後まで読み終えるとルールブックを閉じた。
「この設定から、おそらくドロップゾーン内部では、皆さんの装備がルールブックに従ったものへと変化するものと想定されます。剣を持ち込もうが盾を持ち込もうが、全部二丁拳銃を武器として戦うことになるでしょう」
 つまり、普段から銃を扱う者以外は、不慣れな武器で戦わなければいけない。ルールブックに支配されるドロップゾーンでの戦闘なのでやむを得ないが、銃の扱いに慣れていないエージェントには少々煩雑に思えることだろう。
「また、今回の『セッション』はたまたま通りかかったプレイヤーが賊の襲撃を知り、あわよくば金にしようと悪漢どもの前に立ちふさがる、というもののようです。時間的制約から町への周知は間に合わず、プレイヤーは戦闘後に敵の死体を持って町に金をせびりに行く、という流れのようですね」
 ということは、一般人の救出もかねているのか? という疑問が上がったが職員は首を横に振る。
「いえ、救助は難しいでしょう。何せ、『セッション』のフィールドが町まで広がっていません。また、ルールブックの設定に従うのであれば、皆さんは『セッション』内で町の住人との接触は一切ありません。たとえ成功しても、町での報酬交渉は別『セッション』として扱われているようで、町に入る前に終了してしまうと推測されます」
 防衛戦ではあるものの、町の人々と接触できなければ助け出すことは厳しい、ということだろう。今回は一般人への被害を最小限に食い止めるため、敵を倒すことに集中することになりそうだ。
「あと、注意点が1つ。今回の主な敵は『騎手』ではなく、『騎馬』の可能性が高いです」
 ん? と誰もが首を傾げ、職員は説明を補足する。
「『セッション』の内容によると、敵は馬に乗って集団で町を襲撃するようですが、2段階の戦闘が設けられています。敵を待ち構えたプレイヤーが、馬に乗った『騎手』を撃ち落とす場面と、『騎手』を失った『騎馬』が暴れるのを鎮静させる場面です。よって、本格的に暴れるのは『騎手』ではなく『騎馬』であることから、皆さんが主に戦うのは『騎馬』となる、と推測されるのです」
 なるほど、この『セッション』において『騎手』はただの飾りでしかないわけだ。そういうことなら、職員の推測も納得できる。
「こうした背景から、『騎馬』はNPC化させられた一般人ではなく、従魔が投入されていることでしょう。一部の方は普段扱わない武器で不自由するとは思いますが、皆さんは賞金稼ぎのガンマンです。罪もない人々を苦しめようとする悪役には、勝利の美酒の代わりに敗北の鉛玉をくれてやりましょう。ご武運を祈っています」
 そうして、ちょっと物騒な文句で締めくくり、職員はエージェントたちを満面の笑顔で送り出した。

解説

●ミッションタイプ
【敵撃破】
 このシナリオはクリアと成功度に応じて様々なボーナスが発生します。詳細は特設ページから「ミッションについて」をご確認ください。

●目標
 敵の狙撃→従魔討伐

●登場
 ブラウン…茶色の乱雑な毛並みの馬型ミーレス級従魔。背中には貧相なカカシが乗っかっている。全体的に身体能力がやや低く、数も一番多い。
 スキル
・嘶き…射程0・範囲3・強度2。特殊抵抗判定に成功→スキル使用従魔へ攻撃対象が固定。

 レッド…赤毛のサラサラヘアーな馬型デクリオ級従魔。背中には雰囲気重視の下っ端が乗っている。全体的に身体能力が平均的で、数はやや少なめ。
 スキル
・後ろ蹴り…射程1~2。強烈な後ろ蹴り。特殊抵抗判定に成功→衝撃BS(30)付与。

 ブラック…黒毛のガチギメリーゼントな馬型デクリオ級従魔。背中には親玉っぽいオヤジが乗っている。全体的に身体能力がやや高く、数も少ない。
 スキル
・飛矢突破空(ヒャッハー)!…射程1~20。リーゼントミサイル。命中+50補正。
・悪羅逐螺(オラオラ)!…射程1~5・範囲3。リーゼント散弾。特殊抵抗判定に成功→減退(1)付与。

●状況
 場所は障害物が何もない赤土の荒野。天気は快晴。PCは一定範囲内しか移動できない。近くにNPC化した一般人がいる村がある(村への移動不可)。前方から従魔が群れを成し、村を襲撃してくる。

●ゾーンルール
・服が西部劇風となり、武器が射程1~10の二丁拳銃に強制変換。ステータスは装備性能を反映。
・特殊ラウンド…戦闘前に命中対回避の【足止め】判定を行う。
 各PCは判定前に【手数宣言】を行う。片手→命中補正×1.0、対象1体。両手→命中補正×0.7、対象2体。判定勝利数=敵戦力。
 判定は全部で3回。1回目対象=参加PC数×0.5体、2回目対象=参加PC数×0.8体、3回目対象=参加PC数×1.2体。

リプレイ

●青空拳銃教室
 ドロップゾーンへ侵入すると、そこはいきなり荒野のど真ん中。また職員の予想通り、装備にも大きな変化が現れていた。
「西部劇縛りか」
「素手で戦う場合、どうなるのか興味はありますわね」
「多分、グリップで殴るとかじゃねぇか?」
 改めてガンマンスタイルの己を見下ろす赤城 龍哉(aa0090)とヴァルトラウテ(aa0090hero001)。確認のため武器を取り出すと、すべてが二挺拳銃へ変化することも確認した。
「ちょっ、二丁拳銃とか浪漫溢れ過ぎ!」
 一方、武器の変化で強い興奮を見せたのはカール シェーンハイド(aa0632hero001)だ。ただ、相方のレイ(aa0632)はさほど興味がないのか、カールを見る目にほとんど熱がともっていない。
「オレ、頑張っちゃいそー。なぁ、レイ?」
「……張り切るのは良い、が、浮かれて足元掬われるなよ」
「何言ってんの、当たり前じゃん」
「なら、良し。存分にタランテラを踊って貰う、か」
 一言だけ釘を刺したレイに、カールは口角を上げる。その様子に心配ないと判断し、レイはテンポの速い舞踏曲を引き合いに出し、敵との戦闘をシミュレーションしていく。
「ほほぉ~っ、本当に武器が二挺拳銃に変換されるんだねぇ……! テンション上がってきたぁー!」
「そいつはよかったな」
 こちらも、持ち込んだショットガンが二挺拳銃となって大興奮のアダム・ウィステリア(aa3881hero002)。ミリオタ魂がくすぐられる現象にテンションアゲアゲだが、相棒のChris McLain(aa3881)は常にリボルバーを着用しているため真新しさはなく、反応も薄い。
「なかなか雰囲気あるね」
「そうですね、似合っていますよ」
 西部劇風の衣装に志賀谷 京子(aa0150)は感嘆を上げ、アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)も賛辞を送る。大きなカウボーイハットとズタボロのマント、二挺のロングバレルリボルバーと、いかにもアウトローな出で立ちだ。
「荒野のガンマン、って所かね」
「やれやれ、仕方があるまいのう。ま、西部劇みたいじゃし、今回はわしは黙っててもよいじゃろう」
「で、これどう使うんだ……」
 自身の格好を確認した後、無音 彼方(aa4329)は見るのも触るのも初めてなリボルバーに途方に暮れる。英雄の那由多乃刃 除夜(aa4329hero001)は剣専門なので、今回ばかりは頼りにできず、本人も大人しくするようだ。
「はくガンマンになるの!? いいなー! かっこいい!」
「ありがとうございます。格好良くなるといいのですが……。しかしどうであれ、まいだ様の肌には傷なんてつけさせませんとも、ええ!」
「おー! はくかっこいい! えへへ、ありがと!」
 一方、ガンマンと言うより騎士のような発言の獅子道 薄(aa0122hero002)に、まいだ(aa0122)が純粋な笑顔を向けた。まいだの信頼に報いるため、薄は内心でより意気込みを強くする。
「ふむ、これはこれでロマンだな」
「……ん、似合ってる、よ?」
 こちらでは麻生 遊夜(aa0452)が変化した拳銃を手になじませるようにガンスピンを行い、ユフォアリーヤ(aa0452hero001)は尻尾を揺らしながら見守る。
「いつも使う銃はオートマチックだけど、今回はシングルアクションか」
「初めて使うので、少し不安ですね」
「大丈夫、すぐ慣れるさ」
 変化した両手仕様のSAAを手に取り、晴海 嘉久也(aa0780)はエスティア ヘレスティス(aa0780hero001)に扱いを教えていく。私立探偵という職業的に、使う機会があるのだろう。
「……。……? …………??」
「ええと、すみませーん! だれかエミヤ姉に手解きをっ、へるぷー!」
 ただこの中で、銃の扱いがもっとも不安視されるのが依雅 志錬(aa4364)だった。銃火器の知識が0であり、手にした銃をいろんな角度から眺めては首を傾げ、頭に「?」を量産している。ジャックポットであるS(aa4364hero002)は直感で扱っているため説明ができず、結果早々に誰かに頼ることにした。
「ん? どうかし、……ちょっときみ何してる!?」
 ソルの声を聞いて振り返ったArcard Flawless(aa1024)は度肝を抜き、反射的に声を荒らげた。
『え?』
 瞬間、志錬とソルがアークェイドを振り返り、直後1発の銃声が天を穿った。
「どうした!?」
 突如上がった発砲音に彼方も近づくが、志錬もソルも首を傾げるばかり。実は志錬が、銃を触る過程で偶然撃鉄を起こし、その状態で引き金に指を這わせたまま銃口を覗いていたのだが、それを知るのは強く注意できたアークェイドだけ。
 このアクシデントから、『セッション』開始まで銃器に詳しい遊夜・ユフォアリーヤ・アークェイド・アダムが、軽く拳銃のレクチャーをすることに。
「自分から銃口は決して覗かない。指は撃鉄やシリンダーの近くに置かない。これだけは絶対に守ること!」
 初っぱなから衝撃のシーンを目撃したアークェイドは、志錬と彼方へこれだけは忘れないように、と念を押す。実際に銃口を覗いて誤射をした志錬には、特に何度も言い聞かせていた。
「戦闘前に思わぬ伏兵でしたね」
「全くだよ……」
 詳しい扱い方は他の講師に譲った後、木目 隼(aa1024hero002)の楽しそうな声にアークェイドは嘆息をこぼした。
「銃は『こうして撃たなければならない』ってもんはなくてな、撃ちやすさは人によって千差万別だ」
「……ん、体格や体重、手の大きさ、銃の大きさでも、変わるの」
「詰まる所『安全かつ正確な射撃』が出来りゃ良いわけだ、本当なら撃ちまくって慣れるのが一番なんだが……」
「……ん、今は基本だけ、ね」
 遊夜とユフォアリーヤは握り方と射撃姿勢について説明。龍哉や彼方、志錬に適宜助言と修正を加え、基本のみを伝えた。
「ま、あとは基本押さえて好みの撃ち方を探ると良い」
「……ん、ロマンは大事」
 数分後、射撃姿勢が形になった面々に遊夜とユフォアリーヤはそう締めくくった。
「みんなー! 武器の使い方はわかるかな!?」
 遊夜の基本講座後、細かい点はアダムが担当。鍛冶師としての視点も含め、手に銃をなじませるためのアドバイスをしていく。
「すみません、ちょっといいっすか?」
「んん? グリップが握りにくい? なるほどなるほど?」
 たとえば、普段は刀剣類を扱う彼方がアダムに相談を持ち込むと。
「ちょっと手のひらを広げて見せて? ……よし分かった! クリス、ナイフ貸して!」
「ほら」
「さんきゅっ」
 アダムは彼方の両手と変化した銃を見比べ、クリスから投げ渡されたナイフでグリップを削った。
「これでどうだい?」
「……おぉ、すげぇ。さっきより断然手になじむ!」
 このように、簡易ながらすぐできるカスタマイズを施し、調整していった。
「で、こーやって、あーやって、こう、か」
 アダムに調整してもらったリボルバーで、彼方は遊夜に教えてもらったガンスピンで手への感触を確かめていく。
 こうして大方の準備が終えたところで、奴らは姿を現した。

●まずは小手調べ
「ヒャッハー!」
 最初に現れたのは、1体の赤馬を先頭に4体の茶馬。人が乗っているのは赤馬だけで、茶馬は何故かカカシが乗っている。
「用事は済んだか? さっさと共鳴するぞ」
「りょーかい!」
 一通りのレクチャーを終えたアダムは、クリスと共鳴。
「ふぅっ!! 敵も武器も叩くよ叩くよ~っ!」
 現れた男装の麗人はすでにテンションが高い。二挺拳銃を巧みに回し、迫る従魔へ狙いを固定する。
『落ち着いてやれば大丈夫だからね、エミヤ姉』
「……」
 ソルの声に小さく頷き、志錬は両手で握ったリボルバーを撃った。まだたどたどしい構えではあるものの、先頭にいた赤馬の騎手を見事撃ち抜くことに成功。この志錬の1発を皮切りに、エージェントたちは残りの騎手もすべて撃ち落とす。
「よし、暴れるか!」
 最初に動いたアークェイドは雑魚散らしを担当する。ハウンドドッグが変化した拳銃を両手に、積極的に敵の方へと飛び出した。
『将を射抜くとすればまず馬を射よ。即ち馬の脚を止めるが上策よ』
「わかってるっつーの!!」
 また、彼方は己の銃の錬度を理解し、積極的な射撃は行わない。待ち伏せや囮による要撃を主とし、近距離戦で敵の妨害を行うように行動する。
「『さて……、麗しいオレのビート、刻んで行くぜ? 聞き逃すなよ?』」
「ヒヒン!?」
 ロングバレルの二挺拳銃を手に、戦場全体が見える位置についたレイは続けざまに2発を発射。1発目の牽制で味方へ迫ろうとしていた足を鈍らせ、2発目に茶馬の足を撃ち抜き物理的にも止める。
「駄馬が、さっさとまいだ様の前から消えろ!」
 こちらは薄が、まいだの前とは異なる乱暴な口調で茶馬へと銃弾を浴びせている。特に、自身(まいだ)へ近づこうとする敵には脚部を集中狙いし、機動力を殺いで接近を阻む。
「では、賞金稼ぎとしての仕事を始めましょうか」
 嘉久也もまた、左手のSAAを構える。利き手はなく両手とも同じくらいに扱え、二挺拳銃も手慣れている嘉久也だが、今回は足止めと戦闘で銃を使い分ける。シングルアクションの欠点である弾数の少なさと、リロードの手間を省略するためだ。
 そうして、嘉久也はベテランの賞金稼ぎ「タイタン・エッジ」として、紅蓮の瞳を輝かせて従魔の殲滅に向かった。
「カカシはちょっと手抜きじゃないかなあ?」
『いっそ潔いモブなのでは?』
 両手で別々の従魔を撃ちつつ、近くを転がるカカシに視線を落とす京子。
「ヒヒーン!」
「一人のモブにも五分の魂、っていうじゃない?」
『言いませんし、むしろひどくないですか?』
 呆れた様子のアリッサと会話をしながらも、京子は赤馬の体当たりを難なく躱し、すれ違いざまに銃弾を返す。倒れた赤馬を捨て置き、残りの敵へ視線を向けた。
 最初の襲撃は数の優位もあり、あっという間に鎮圧できた。周囲には事切れた従魔と騎手が転がっている。
「気を抜くな! 敵は騎馬だったが、ただの人形飾りを乗せてるとは限らないからな!」
 全滅後、龍哉は地面へ倒れたままの下っ端やカカシを指して注意を促した。そこから従魔が消えても残る騎手への警戒を維持し続けると。
「いい気になるなよ。次は、ボスが、くる……がくっ」
「……って、本当にただの飾りだったのかよ!」
 そのまま消えましたとさ。残ったのは、乾いた風と龍哉の突っ込みだけだった。

●ボス登場
「行くぞ、野郎ども!」
 次に土煙を上げて現れたのは、黒いリーゼントが目立つ馬に乗った見るからに悪党を含めた8体。
「リーゼントとはまたレトロだな。……刈るか」
 そのやたら目に付く黒馬に、龍哉は狙いを定めようとしたが。
「ヒャハハ(パンッ!)……」
「……」
『いいよ、エミヤ姉。だんだん精度が上がってきた』
 両手グリップから片手グリップへ持ち替えた志錬の射撃が一歩早く、黒馬の騎手を貫いていた。
「……次は俺が」
『アレに何かこだわりがありますの?』
 妙な執着心にヴァルトラウテは疑問を呈すも、龍哉は答えず狙いを変えた。
「食らえ!」
 新たな龍哉の狙いは、黒馬の近くにいた赤馬と茶馬。
「ヒヒーン!?」
 すると、赤馬の騎手が手綱を持ったまま、騎馬と一緒に吹き飛んだ。何度も体を地面へ打ち付け、少なからずダメージを負ったようだ。
「懲りねぇ奴らだな!」
 次々と騎手が撃ち落とされる中、薄がさらに茶馬のカカシを撃ち抜く。
「茶色はこれで最後です!」
 仲間に続き5体目の茶馬をしとめた嘉久也は、右手の銃をおろして戦闘用の左手の銃を構えた。
『最初より数が多いですね。まだ増えるのでしょうか?』
「さてね。いずれにせよ、やることに変わりはないよ!」
 2度目の襲撃を前に隼が敵の出現傾向に懸念を覚えるも、アークェイドは怯まず赤馬1体の足止めを成功させ、暴れる従魔へ身を踊らせる。そうして騎手全員を落とすと、2度目の掃討戦が始まった。直後、1体の茶馬が突出する。
「ヒッヒーンッ!」
「何っ!?」
「これは、っ!?」
 抜きん出て接近すると、薄と彼方の近くで大きな『嘶き』を上げた。ライヴスの込められた鳴き声は意識を釘付けにし、警戒を外すことができない。
「ちっ! おい、そこの女! 手ぇ貸せ!」
「俺は彼方だ! 後、女じゃなくて男だからな、っと!」
 舌打ちをこぼし、薄は茶馬の始末に彼方へ協力を仰ぎ、また突進してきた茶馬を左右に回避した。
「後ろだ!」
「あ?」
「ヒヒーン!」
 彼方の注意に振り返ると、薄の背後に急接近した赤馬が『後ろ蹴り』を放つ姿が。
「っぐ!?」
 薄はとっさに銃を盾にし直撃は避けたが、衝撃で腕が痺れ、軽い体は地面を何度も転がる。
「っ!」
 すぐに彼方が薄の体を抱え、勢いを止めた。彼方は赤馬と距離を取りつつ、意識がそらせない茶馬にも威嚇射撃をばらまく。
「大丈夫か!?」
「……おい、てめえ」
 十分距離を取ってから、妙に大人しい薄へ声をかけた彼方だったが。
「……まいだ様の珠の肌に傷がついたろうがぁああああ!! ぶちごろして粉々にしてひき肉にしてやるこのくそっだらごらぁあああああ!!!!」
 その薄は彼方に応えず、赤馬へあらん限りの怒声をぶっ放した。
「えー……」
 腕の中の薄に視線を落とし、彼方は盛大に引く。薄についた傷は地面を転がってできた擦過傷のみ。正直、ここまでキレるほどの傷ではない。
「離せくそ女ぁ!! それともてめえから先にひき肉にしてやろうかぁ!!!!」
「はいっ!」
「ぶちころおぉす!!!!」
 ぐるんと向けられた憤怒の視線に、彼方はすぐさま薄を解放。そして、薄は一目散に赤馬へと駆けだしていった。
「……こわっ」
『能力者殿、まだ敵は残っているぞ?』
 修羅を背負った薄の背中を見送った彼方は、除夜の発言で我に返ると再び茶馬へ向き直った。
「させない……」
 そして、戦場を駆ける彼方の姿を追うように、志錬の銃口もまた移動する。囮と攪乱という危険度の高い役割の彼方を補助すべく、彼方に攻撃を仕掛けそうな従魔を狙撃し、行動を阻害する。
 数を増やした敵を前にしても、エージェントたちは怯まなかった。
「『数だけ多くても、仕方無いと思わないか?』」
『嘶き』を警戒して茶馬を中心に狙っていたレイは、時に敵の動きを妨害し、時に敵へダメージを与えて、正にタランテラのように従魔を浮き足立たせていた。
「『その多さ分、悲鳴はクレッシェンドになってくんだぜ?』」
「ヒヒーン!!」
 そして、動きが鈍くなった茶馬の眉間には風穴が空き、1体、2体と倒れていく。響く銃声はどんどん苛烈に、震える悲鳴はだんだん大きく。レイが作り出すコンサートは予定調和がごとく敵の勢力を削っていく。
『見事に囲まれてますね』
「そうなるように動いたからね!」
 複数の従魔の攻撃を捌いては反撃を繰り返しながら、アークェイドは隼の声に笑みを、敵の声には銃弾を返す。近くに味方がいてスキルは使えないが、『鉄壁の構え』でダメージを抑えており、包囲状態でも危機感はまだない。
「止まりなッ! 大人しく正義の鉛弾を食らいなッ! ヒーハー!」
 他方、若干襲撃者よりのテンションなクリスはサミング撃ちで連続発砲。茶馬を中心にアークェイドとともに敵の数を減らしていく。
「ヒヒーン!」
 乱戦のさなか、1撃が重い嘉久也に目を付けた茶馬が駆けだした。
「くっ、……倒れなさい!」
 攻撃手段とともに防御手段も銃しかないため、嘉久也は右手グリップの受け流しでダメージを多少分散させ、すぐさま左手の銃で迎撃。轟音とともに茶馬が倒れ、すぐに次の標的へ銃を構えた。
「……目立つ見た目の奴がいるな」
『……ん、要注意』
 龍哉ほどではないにせよ、リーゼントに目を付けた遊夜は即座に発砲。行動の妨害を狙った弾丸は顔へめり込み、黒馬から苦悶の声が上がる。
「ブルヒヒィン!」
『何かきますわ!』
「何!? ……なにぃ!?」
 直後、黒馬の鳴き声に危険を感じ取り、ヴァルトラウテが警戒を促す。すぐに視線を向けた龍哉は、思わず2度叫んだ。
 こちらへ迫るのは、黒い棒状の何か。その向こうには、凶悪なドヤ顔の頭がすっきりした黒馬が。なんと、黒馬が飛ばしたのは自慢のリーゼントだった!
 予想外の攻撃に龍哉の反応は一瞬遅れ、仕方なく防御に切り替えて二挺拳銃を交差させた。
「ぐっ!?」
 直後、爆発。予想を超えた威力に思わず喉を詰まらせ、龍哉は大きくのけぞった。
「ブルヒ……!」
 切り離したリーゼントを再び生やし、次の獲物を探す黒馬だったが。
「てっきりここを狙ってくれっていう的だと思ったよ」
 直後、京子から撃ち込まれた2発の弾丸により、破裂。生成中のライヴスの爆発は回避できず、黒馬の姿は黒煙の中に消えた。
「……お、俺を倒しても、また第2第3の俺が現れる。むだなことだ……」
 しばらくすると従魔たちは全滅し、エージェントたちが生き残った。だが、最後に黒馬の騎手が不吉な言葉を残して消え、警戒はまだ解けそうもない。
「死ね、死ね、死ねえっ!!!!」
 なお、薄は赤馬が消える最後まで、かの死体に銃弾を撃ち込み続けた。怖いわ。

●ラストバトル
「暴力、略奪上等だぁ!」
「容赦はいらねぇ、全員ぶち殺せぇ!」
『おおおっ!!』
 数分後、現れたのはさっき消えた黒馬騎手とうり二つの男が、12体を引き連れ現れた。第2第3ってそういう意味かよ。
『だいぶ慣れてきたみたいだね、エミヤ姉!』
「だいたい、わかってきた……」
 両手で一挺、片手で一挺と、段階的に銃の扱いを上げてきた志錬は、ここで二挺拳銃へシフト。迫る黒馬と赤馬の騎手へ素早く狙いを定め、即座に撃ち落としていた。もはや無防備に銃口を覗くくらいの素人だったとは、とても思えない。
「『まったく、芸のない!』」
 さらに数を増やして現れた敵へ呆れつつ、レイは両手で2体のカカシを撃ち抜く。それからも騎手を落としていくが数が多く、撃ち漏らした従魔の進撃を許すと思ったその時。
「行かせると!」
「思ったか?」
『狙撃師』による後詰めで、意識をギリギリまで集中させていた京子と遊夜が動いた。
「当てることには、ちょっとだけ自信あるんだよね!」
 先に京子が、ホルスター内のリボルバーの撃鉄を起こしてから、高速で抜き放つ。銃口がターゲットと重なった瞬間に射出された弾は、吸い込まれるように騎手へと命中。
「俺の事を忘れちゃ困るぜ?」
『……ん、よそ見しちゃ、嫌よ?』
 一拍遅れ、遊夜も同様に一瞬の抜き撃ちを披露。こちらを無視しようとした残る2体を見事に捉え、すべての騎手が撃ち落とされた。
「わたしの前にノコノコと顔を出すからさ……」
 結果を見送った京子は、銃口から上がる白煙を切るように拳銃を回し、つばの広いハットの縁を銃先で持ち上げ、ニヒルに笑う。
『変なこと言ってる間に従魔が来ますよ!』
「もー、忙しないなあっ!」
 が、アリッサが再び暴れ出した従魔を指し、格好をつける暇もなく京子は飛び出した。
「まずは数を減らさないとね!」
『ヒヒン!?』
 言うなり、京子は『トリオ』で比較的弱い茶馬を射抜いた。確実に急所へ当て、3体ともに大ダメージを与える。
「あ、厄介なきみは大人しくしててね?」
「ブルッ!?」
 続けて、京子は『テレポートショット』を黒馬の1体へ向けて放ち、背面からの奇襲で動揺を誘う。
『ほれほれ、数が来たぞ。弱らせ、隊列を崩させねばの』
「黙ってるって言っただろお前……」
 内から聞こえる除夜の楽しそうな声に、彼方はやや肩を落とす。が、事実多くの敵がいるのに変わりなく、彼方はすぐに気を取り直して片手グリップで銃を構えた。
『ヒヒーン!』
「『煩いだけの歌、だな。マンカンドで逝きな……』」
 悲鳴か気合いか、いずれにせよ乱雑で統一性のない馬の鳴き声は、レイにとっては耳障りなだけ。淡々とした口調に多少の苛立ちを乗せ、レイもまた『トリオ』で銃弾をばらまいた。一時的に強くなる悲鳴は、従魔の数が減るごとに、次第に消えていく。
「そんじゃま、本命の黒いのは任せたっ」
『攪乱ついでに敵の数を減らしてきます。くれぐれも巻き込まれませんよう』
 さらに敵の殲滅に際し、アークェイドと隼は仲間に軽く言い残して敵陣の真ん中へ駆けだした。
「今日は大雨の予報だったっけねえ。おアツい鉛玉のさ!」
 途中で武器をカラミティエンドに変え、従魔たちの中心に立つと血色のリボルバーを天に掲げたアークェイドは、凄絶に口角を引き上げた。
『ヒヒン!?』
 反射的に天を仰いだ赤馬や茶馬は瞠目して固まった。何故なら、周囲一帯を狙う無数の銃口と目が合ったからだ。
「二挺拳銃ならぬ、千挺拳銃っていうのはどうだい?」
 笑みをさらに深めたアークェイドは、天へ向けて1発の弾丸を撃ち上げた。同時、展開した『ウェポンズレイン』の銃口から一斉に予報通りの鉛雨が降り注ぎ、赤馬・茶馬を飲み込んだ。
『今更中二病でも患ったので?』
「やかましいわ」
 先手必勝と大ダメージを与えたアークェイドは、隼の小言に言い返しつつさらに二挺拳銃でとどめを刺していく。
「どうどう、暴れなさんな!」
 さらに、クリスもまた天に銃口を背負い、味方から離れて従魔の群れへ侵入。『ウェポンズレイン』によるオールレンジ攻撃を見舞い、さらなるダメージを重ねた。今回がラストと当たりをつけ、エージェントたちの攻勢はより激しさを増す。
「ヒヒーン!」
 直後、2人の鉛豪雨を抜けた1体の茶馬が、彼方へ突進。まともに攻撃を受けた彼方は大きく飛ばされた。
「う、っぐ! 志錬!」
「……っ!」
 が、彼方もただでは転ばない。インパクトの瞬間、茶馬に『縫止』を施し足を止め、後援の志錬へ声を張った。瞬時に志錬の二挺拳銃が火を噴き、ズタボロの茶馬へだめ押しの攻撃を浴びせ、倒してみせた。
「そこか!」
 確実に赤馬と茶馬が殲滅される一方、先の戦闘で見た目にそぐわない黒馬の脅威を確認した遊夜は、真っ先に黒馬を狙っていた。
「ブル!」
 対する黒馬は弾道を見極めたのか、直進する進路を横へずらした。
「ヒン!?」
 しかし、回避したと思った弾丸は、地面の小石に着弾と同時に跳弾。『ダンシングバレット』の軌道変化で、油断した黒馬の側頭部へ叩き込まれた。
「テメェは動くと厄介そうだ、そこで止まってろ」
『……ん、何処にいても、当ててあげる』
 痛みの混乱で動きの止まった黒馬へ意識を残しつつ、遊夜はさらに近くの赤馬へも『テレポートショット』で攪乱し、正確無比な射撃で敵に何もさせない立ち回りをしてみせる。
『わあっ、さすがです先生!』
「ソル、いま戦闘中……」
 地面の小石からの跳弾を命中させた遊夜の絶技に、ソルは完全に現状を忘れて感激した。そのしわ寄せか、若干集中力が乱れた志錬が小さく苦言を呈すも、それは果たして伝わったかどうか。
「……かずを、減らす」
 他の仲間がスキルで一気に敵を追いつめている様子を見て、志錬もまた『トリオ』を発動。直前の京子やレイの動作を模倣し、無駄のない最小限の動きで複数の従魔に追撃を加える。
「『お前らには葬送曲も勿体無いぜ』」
 遊夜・志錬に続き、レイも『テレポートショット』で黒馬や赤馬の動きを止め、仲間の攻撃をサポートしていく。
「モヒカンは問答無用で刈った。次はリーゼント、お前だ!」
『意味不明ですわ』
「考えるな! 感じろ!」
 その中を、龍哉はメンチを切ってきた別の黒馬へ駆け出し、ライヴスを両手へ集中させた。
「ブルヒン!」
「うおおっ!」
 黒馬の踏み潰しと龍哉の右グリップが激突し、わずかの間拮抗。しかし、すぐに力負けした黒馬は上体が持ち上がり、背中から倒れこんだ。
「ブルッ!?」
 慌てて頭を持ち上げた黒馬は、己の正面に突きつけられた銃口に声を震わせ、
「夜露死苦!」
 龍哉の『一気呵成』で放たれた左手の銃弾により、リーゼントごと頭を撃ち抜かれた。
「黒は脅威ですからね、早めに叩かせてもらいます!」
 達也に続き、嘉久也はしぶとく残る最後の黒馬を狙って近づいた。
「ブルヒィン!」
 受けて立つ、とでも言わんばかりに嘉久也に気づいた黒馬は鳴き声を上げ、リーゼントを向けた。すると、先端が爆発し細かな散弾が撃ち出される。
「芸が細かいタテガミですね!」
 ミサイルとは違ってさすがに撃ち落とすことはできず、嘉久也は両手を交差させてガード。腕の隙間から弾道を確認し、最低限のダメージに抑えて、なおも接近。
「ブルッ!?」
「お返しです!」
 散弾の雨を突破した嘉久也は、驚愕を浮かべる黒馬の胴へ、強烈な1射をぶち込む。シュナイデンが変化した銃の威力は正に重撃。拳銃とは思えない音と威力で、黒馬を大きく吹き飛ばした。
「ブ、ル……!」
 さんざん集中砲火を受け、満身創痍の黒馬はそれでも動き、遊夜へ接近して前足を振り上げた。
「っ!」
 体重を乗せた踏みつけを、遊夜はその場で体を回転。紙一重で黒馬の蹄を回避し、すかさず隙を見せた黒馬の眉間へ銃口を突きつけると、
「『さようなら、良い旅を」』
 ニヒルな笑みとともに、引き金を引いた。
『先生かっこいい~!』
「ソル……」
 黒馬へのとどめを見ていたソルは、さらに感動。同時にややブレる照準に志錬が文句を言いかけ、届かないと悟ってやめた。
 黒馬2体の討伐を皮切りに、従魔側の勢いが一気に落ち、エージェントたちは一気に攻撃密度を上げ、全滅させた。
「ぐ、くそ……」
「ま、いずれにしたところで、お前らが手に出来るのは鉛玉だけだ。その腐れた欲望と抱えて沈んでいくんだな」
『ニブルヘイムの底へと送って差し上げますわ』
 最後に、恨めしげな目をした黒馬の騎手を見下ろし、龍哉は消えるのを待たずに銃弾を放つ。乾いた発砲音は一瞬で消え、賊も、従魔も、戦いの残響も、乾燥した風に運ばれ、消えていった。

●正義の賞金稼ぎ
「なんだか1種だけ場違いなのがいましたけど、無事退治できてよかったですね」
「その黒いのが強力だったのは、ゾーンルーラーのジョークだったのかな?」
 共鳴を解いた嘉久也を労うエスティアに、嘉久也は肩をすくめた。騎手も騎馬も、黒だけやけに世紀末感が強かった。この世界の作者の趣味とは考えづらく、愚神の差し金だろうと嘉久也は当たりをつける。
「ふぅ~終わった終わったぁ~、村のサロンでも寄ってから帰ろっか!」
「ここはドロップゾーンなんだから無理だ、さっさと帰るぞ」
「ぶぅ~」
 撃ちまくって満足した様子のアダムは、このまま遠くに見える村で一休みを提案したが、すかさずクリスに止められてしまった。実際、戦闘が終わってもエージェントたちの移動範囲は制限されたままで、村へ行くことはできなかっただろうが。
「どう、アリッサ。わたし、かっこよかった?」
「ええ、格好良かったですよ。わたしだったらそうはいかないでしょう」
 こちらでは、京子とアリッサが今回の戦闘を振り返っていた。内容は戦果ではなく、ヴィジュアルについて。
「アリッサも似合うと思うけどなあ。堅物なシェリフって感じなら」
「つまり悪者の京子を検挙するのですね」
「あはは、簡単には捕まらないぞ」
 茶目っ気たっぷりにウィンクをした京子に、保安官と称されたアリッサの頬も自然と緩んだ。
「ま、こんなんでも何とか出来るもんだな」
「素人としては十分だったと思いますわ」
 龍哉もまた己の戦闘を思い出しつつ、双銃をホルスターへ収めた。不得手な武器ながら味方への誤射もなく、命中率もまずまずでヴァルトラウテも頷きを返す。
「すごかったです先生っ! 今回の華麗なる技の数々、私見ほれちゃいました!」
「あ~、……ありがとう?」
「…………ん、ユーヤは、渡さない」
 別の場所では興奮気味なソルが遊夜へ詰め寄り、対抗心を燃やしたユフォアリーヤが遊夜にべったり離れない。奇妙な板挟みにあった遊夜は、とりあえず愛想笑いを浮かべるだけで精一杯だった。
「従魔の妨害をしてくれて助かりました。おかげでとても動きやすかったですよ」
「そういう嘉久也こそ、なかなか腹にくる銃声を響かせてたじゃんか。それに、妨害だったら遊夜もしてただろ?」
 少し離れたところでは、積極的に敵へ向かっていった嘉久也がカールへ話しかけていた。
「今の彼には話しかけづらかったので」
「お! 両手に華ってのも男の浪漫だな! オレは見てるだけで十分だけど!」
 苦笑をこぼす嘉久也の視線をたどったカールは興奮気味な声を上げた。カールがこぼした本音に、嘉久也のさらなる苦笑を誘っていたが。
 一方で、エージェントたちも無傷とはいかなかった。大なり小なりダメージを負った者の中には、思うところがある人物もいる。
「……申し訳ありません、まいだ様」
「はくはまいだのためにおこってくれたんだから、いいよ!」
「まいだ様……っ!」
 戦闘後、ようやく落ち着きを見せた薄がまいだへ頭を下げると、まいだは笑って許した。己の誓約を今一度心に刻み、薄の忠誠はより一層強くなったのだった。
「カナタ、大丈夫……?」
「……あー、平気だよ。ったく面倒な」
「クク、で、あるからこそ。なのであるよ能力者殿」
 こちらではまともに攻撃を受けた彼方の怪我を、志錬が確かめるように尋ねていた。実際にはそれなりにダメージが残っていたが、心配をかけまいと強がる彼方に、除夜は面白そうに笑っていた。後で構ってやろうとたくらみながら。
 こうして、エージェントたちの手により荒野に降ってわいた人災は退けられ、束の間の平和をもたらしたのだった。
 めでたしめでたし。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 止水の申し子
    まいだaa0122
    機械|6才|女性|防御
  • 憤怒の体現者
    獅子道 薄aa0122hero002
    英雄|18才|?|カオ
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • Sound Holic
    レイaa0632
    人間|20才|男性|回避
  • 本領発揮
    カール シェーンハイドaa0632hero001
    英雄|23才|男性|ジャ
  • リベレーター
    晴海 嘉久也aa0780
    機械|25才|男性|命中
  • リベレーター
    エスティア ヘレスティスaa0780hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 神鳥射落す《狂気》
    Arcard Flawlessaa1024
    機械|22才|女性|防御
  • エージェント
    木目 隼aa1024hero002
    英雄|26才|男性|カオ
  • 指導教官
    Chris McLainaa3881
    人間|17才|男性|生命
  • 二挺拳銃の師
    アダム・ウィステリアaa3881hero002
    英雄|15才|?|カオ
  • ひとひらの想い
    無音 彼方aa4329
    人間|17才|?|回避
  • 鉄壁の仮面
    那由多乃刃 除夜aa4329hero001
    英雄|11才|女性|シャド
  • もっきゅ、もっきゅ
    依雅 志錬aa4364
    獣人|13才|女性|命中
  • 先生LOVE!
    aa4364hero002
    英雄|11才|女性|ジャ
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