本部

咲き散る花

紅玉

形態
ショート
難易度
不明
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2016/10/06 19:57

掲示板

オープニング

●人工花
 時間を掛けすぎた、と女は呟いた。
 コンクリートが剥き出しの壁に、大理石敷かれた部屋にぽつんと置かれたデスクに女は座っていた。
「“月下美人が目を覚ましつるの女王を探してる”と、珍しく監視者が我らに伝えてきた」
 褐色の肌、黒と赤の髪、幼さが残る顔の少女は奇妙な形をした器を掌に乗せていた。
「ほう、他には?」
 女は口元を吊り上げ、傍らに居る少女に視線を向けた。
「他と、申すと?」
「監視者は梅側に行くのか、と」
「行くであろう。これが監視者として最後の情報、と言葉最後に付け加えた」
 少女は抑揚の無い声色で言う。
「なるほど……な。なら、使わせてもらおう月下美人の純粋な心を」
 女は目を細め奇妙な形をした器に手をかざす。
「良いのか? 奪われるのでは?」
 少女は訝しげな表情で女を見る。
「大丈夫。最終手段があるからな」
 女は長い濡れ鴉の様な髪を手の甲で撫でる。
「死体でも良いから手に入れろ」
「任せて、この器があれば余裕だ」
 女の言葉に少女は無邪気に微笑んだ。

●あぁ、会える。
 ふわっ、と白いワンピースの裾を翻しアルビノの少女『月下美人』は、ビルのジャングルに降り立った。
「監視者の報告によると、アノ人が……に居る。ならば、女王の計画を早く進めないと」
 ひらり、と白い花弁が無機質なコンクリートの地面に音も立てずに足を着ける。
 突如表れた少女を見て、行き交う人々は目を丸くする。
「糧になっていただきます」
 月下美人は白いワンピースの裾を掴み、くるりと回ると甘い香りと共に黄色いモノが舞う。
「何、これ……体が……っ!」
 戸惑いと、恐怖が入り乱れた声が周囲から上がる。
「痺れ……っ!」
 黄色いモノに触れた人々は力なく地面に倒れた。
「ライヴスを沢山持ち帰るのです」
 月下美人の命令に従い、空から舞い降りるは巨大な蝙蝠達。
 倒れている一般人の首に容赦無く牙を立てた。

●再び
「プリセンサーに愚神『月下美人』の反応を捉えました。内容はフランスのC市に現れ、一般人からライヴスを奪う……今から1時間後です」
 ティリア・マーティスは震える手で端末を操作する。
「ヴィランの動きはありませんが、嫌な予感はしますので注意してください」
 と、アナタに注意しているトリス・ファタ・モルガナの傍らに、弩 静華が体を震わせていた。
「愚神『月下美人』は鉄壁を誇る敵です。H.O.P.Eからは一般人の救助を優先し可能であれば撃破、と指示が出ております。皆さんの健闘を祈ります」
 と、トリスはアナタ達に言った。

解説

※注意※
このシナリオは重傷する可能性があります。

月下美人関連シナリオ
年1度の想い『http://www.wtrpg0.com/scenario/replay/1255』

●人物
ティリア・マーティス
圓 冥人
プレイングに助力して欲しい等を書いて下されば参戦します。

つるの女王:真田・雪(23歳)
ヴィラン組織「Clematis」の社長の娘。
今は動きが無い。

●目標
一般人の避難、救助

●場所
昼過ぎのビル街

●敵情報
愚神 月下美人
ケントゥリオ級。金の目以外は全て白のアルビノの少女。
白いワンピースを着てる。
今回は手には鈴が付いた大きな盾を持っています。
・女王の花粉
広範囲にBS麻痺を付与する攻撃。
・女王の盾
白い花弁で360度に盾を展開する。

従魔 天鼠(てんそ)20匹
ミーレス級。全長2mもあるコウモリ。
吸血して回復したり、滑空して攻撃を繰り出します。
知性はケモノ並。

●以下PL情報
オープニングの『●人工花』の内容はPC側は一切知りません。

・NPC
圓 冥人を戦闘に参加させる場合は注意してください。
ヴィラン組織「Clematis」が動き出し、実験体の投下と精鋭を率いて冥人を殺しに来ます。

・双子のヴィラン(実験体)
ハル(女)とアキ(男)
エージェントを倒す為に教育を受けた子供。
年齢は6歳

リプレイ

●舞い降りる前触れ
「人を愛したり憎んだりって難しいですね。わたしもバルトさんに複雑な思いを抱いています」
 真田 雪との戦闘資料を読んだセレティア(aa1695)はぎゅっと胸元を握りしめた。
「なんだそりゃ」
 そんな彼女の言葉を聞いてバルトロメイ(aa1695hero001)は、後頭部をガシガシとかきながら視線を向ける。
「バルトさんには一生分からないです!」
 その言葉を聞いてセエレティアはキッと一瞬だけ睨み、手元に視線を向け更に強く拳を握りしめる。
 歳が離れており、そしてタイプではない英雄と記憶が無い間に契約した彼女は、それでもバルトロメイという英雄を心の底から信頼している。
「貴女を危険な目には遭わせたくないが、エージェントの仕事は人を守る事です。ともに戦っていただけますか?」
 そんな彼女を尻目にバルトロメイはティリア・マーティスに言う。
「私の様な非力な者がお役に立てるのでしたら……頑張りますわ」
 バルトロメイの言葉にティリアは力強く頷いた。
「冥人さん、よろしければ私たちと一緒に行きませんか?」
 レイシー・カニングマン(aa4281)は真剣な眼差しを圓 冥人に向け頭を下げる。
「まぁ、君の様なお嬢ちゃんに言われちゃ手を貸すしかないね」
 と、言いながら冥人はレイシーに視線を向けた。
「ありがとうございますわ」
 冥人の言葉を聞いてレイシーは微笑んだ。
「……雪は、仲間に尊敬されてて自分の身を挺して愚神と戦う能力者だったよ。でもね、一体の愚神が起こした事件により変わってしまった」
「どうして、変わってしまったのですの?」
 レイシーが見上げると、冥人が悲しいそうな微笑みを浮かべていた。
「彼女を更生させてそれを聞くしかない、ね」
 冥人はレイシーの頭を優しく撫でた。
 もし、生きていたのなら彼女位の歳で将来の夢を考えているのだろう、と冥人はレシーを見て思った。

「蝙蝠退治なら磁石だよなぁ」
 沖 一真(aa3591)は屠剣「神斬」にマグネットを貼り付けながら呟く。
「……あまり、乗り気ではないが、その方が効率が良いのならばいいだろう」
 そんな能力者を見て灰燼鬼(aa3591hero002)は小さくため息を吐いた。
「あ、トリスさん。手錠の支給お願いできますでしょうか?」
「良いですけど、壊さないで下さい」
 一真の言葉に頷きトリスは手錠を取りに向かった。
「……随分ときな臭ぇ内容だな? オイ?」
 一ノ瀬 春翔(aa3715)は眉間にしわを寄せた。
「そんなことより早く壊そ? おにぃちゃん」
 そんな春翔の見てもエディス・ホワイトクイーン(aa3715hero002)は何時もの様に微笑んだ。
 初めての共鳴、彼女の頭はその事でいっぱいどころか溢れていた。
「あ、あぁ……先ずは現地の地図と避難の打ち合わせをしないとな」
 春翔は他のエージェント達を呼び寄せた。

●10分前
 エージェント達が現場に着いたのは、プリセンサーが言っていた時間の10分前の数字を長針が指していた。
「こうも白昼から堂々と動かれると、目立って困るなぁ」
 九字原 昂(aa0919)が人通りの少ない歩道に視線を向ける。
「以前はこれに乗じてきた輩が居たが、さて……」
  ベルフ(aa0919hero001)はハットのつばを摘まみくいっと下げた。
「三つ巴の状況。君の正義は?」
 ヤン・シーズィ(aa3137hero001)がじっと冥人を見る。
「冥人様は愚神やヴィランの弱点をご存じで、ヴィランが愚神を追う理由は確証がなく話せないとの事。ならば、冥人様の推測を確信に変えるため、情報を集めるのが最上でございましょう。たとえここで数名の犠牲者が出ても……結果的に大勢の命を救う事になりましょう」
 ファリン(aa3137)は凛とした声で言う。
「俺らにだって月下美人と同じようなことは出来る……ん、どうした、ジン」
 マグネットだらけの屠剣「神斬」を肩に担いだ一真は空を見上げた。
「いや、全く以てお前というやつは面白いと思ってな」
 そんな彼を見て灰燼鬼はくっくっと喉で笑う。

「さぁ、先ずは一般人の避難をしましょう」
 セレティアはH.O.P.E.制式コートの裾を翻し道行く一般人に声を掛ける。
「エージェントとして活動するのはこれが初めて……ちゃんとやれるかしら、私」
 レイシーは初めての依頼に不安で胸がぎゅーと締め付けられる。
「兄様……?」
 その時、ふわっと白い花弁が渦を巻きながらビル街に舞う。
「月下美人っ!」
 エージェント達は彼女の姿を確認すると少女の名を呟いた。
「返して、兄様を……そして、糧になって」
 花の花弁が地面に落ちる様に愚神『月下美人』はコンクリートの上に立つ。
 そして、大きな羽ばたき音と共に巨大な蝙蝠『天鼠』がエージェント達や一般人に向かって滑空する
「コル、あの人たちにも家族がいるの。助けるために力を貸して」
「家族! 家族をキズつけるヤツは許サん! ワガハイ達で守るのダなレイシー!」
 レイシーの言葉にコル・レオニス(aa4281hero001)は怒りに満ちた声色で声を上げた。
「レイシー、上から来ルぞ! 気を付ケるのダ!」
「もうちょっと早く言って!」
 と、レイシーはコルに言う。
「同ジ方向を向イテいルかラ無理ダ!」
 コルは滑空してくる天鼠を見上げ直ぐに共鳴をする。
「させん!」
 バルトロメイが孤月を居合切りの要領で天鼠の羽を切り落とす。
「レイシー大丈夫か?」
「え、ええ……他の一般人の方達は!?」
 レイシーとコルは周囲を見渡す。
「凄い……」
 冥人が一般人を守るように前に出て、一般人を護衛しながらトリスが銛の形をした水を天鼠に打ち込む。
「ワガハイ達もアノ蝙蝠を倒すのダ!」
「分かっていますわ。誰も……死なせませんわ!」
 前衛にはバルトロメイ、その後ろからレイシーはブレイジングソウルを構え援護射撃を開始した。

「物理的対策で済むなら微塵の怖さもないんだが……」
 Arcard Flawless(aa1024)は血の様に赤い瞳で月下美人を見据える。
 白銀の大型の盾に見たことがある鈴が、携帯やスマホに付けられたストラップの様に付けられていた。
 甘い香りが風に運ばれ鼻腔をくすぐる。
「すんすん」
 Iria Hunter(aa1024hero001)は犬が物を匂う仕草する。
「アイリ、嗅覚に頼り切るな。そっちの体質じゃモロに食らいかねん」
 と、Arcardは叱責するとIriaの鼻をぎゅっと摘まんだ。
「あう!」
 耳と尻尾をピーンと真っ直ぐに立て、Iriaは驚きの声を上げる。
 花粉もそうだが、花は匂いで虫を魅了したかのように誘うので慎重に行動をしなければならないのだ。
 だが、月下美人は動く気配がない。
「おーにさーんこーちら、てーのなーるほーうへ……うふふ……」
 共鳴したエディスはあらかじめ【SW(斧)】アックスチャージャーでライヴス蓄え、空で羽ばたく天鼠に向かって手を叩く。
 月下美人の出した命令に従う天鼠。獣の思考で一般人より多いライヴスを集めれば良い、と思い彼らはエディスに向かって滑空した。
「ほーら、おいでー…うふふ……」
 周囲に何も無い場所に着くとエディスはくるり、と振り返り彼女の頭上に多数の武装が召喚される。
「ぜーんぶ……ぜんぶ壊れちゃえ……あははっ」
 エディスは無邪気に微笑みながら無差別に攻撃をする。
 宙に舞う鮮血、悲痛な天鼠達の鳴き声、コンクリートの破片が粉塵を上げながら飛び散る。
「……そこら辺にしておけよ」
 その光景を見ていた春翔は低い声で言う。
「うふふ……はぁい……ごめんね……おにぃちゃん」
 少し残念そうな表情でエディスは答えると天鼠死骸を全て幻想蝶に入れる。
(ヴィランに奪われると面倒だからな……)
 春翔は過去の報告書に『ヴィランが従魔の死体を回収した』と、書かれていたので念の為に奪われない様に死体を回収したのだ。

「さて、随分と集まったな――覚悟しろ」
 天鼠に囲まれた一真は、磁石が付いた屠剣「神斬」を取り出し肩に担ぐ。
「『怒涛乱舞――天流乱星の構え!』」
 2人は同時に声を上げ、怒涛乱舞で周囲にいる天鼠達を怒涛の勢いで次々と切る。
「『神斬――重撃斬鉄!』」
 次々と現る天鼠をヘヴィアタックで一真は倒すが――……。
「ち、しつこい」
 一真は顔に付いた返り血を服の袖で拭う。
「集めたのはお前だ。責任を持て」
 と、師が弟子の無謀な行動を叱責するかの様に灰燼鬼は言った。
「一真さん、加勢しますわ」
 と、その時、避難の護衛を終えたレイシーが駆け付けた。
「助かる。飛んでヤツを頼む!」
「はいっ!」
 一真は駆け出し、その後方からレイシーはブレイジングソウルの銃口を素早く向けた。

●咲き乱れ
「返して……」
 Arcardを見つめながら月下美人は幼い声で言う。
「何を返して欲しいですの?」
 ファリンはArcardにリジェネーションをかけ、月下美人の金色の瞳を見つめる。
「器を、返して……アノ人を返して……」
「そんなモノ知らないっ!」
 Arcardは天叢雲剣を鞘から抜き月下美人を切ろうとする、が。
 美しい白銀の盾で斬撃を弾いた瞬間、ファリンがグレイプニールで捕縛しようと試みる。
「……でしたら……カリステギア、貴女を振るいましょう」
 月下美人が盾を地面に突き刺すと、ひび割れた部分から細長いツタがArcardとファリンに向かって伸びる。
「全く、恐ろしく硬い愚神も居るものですね」
 東城 栄二(aa2852)がブルームフレアの青い炎でツタを焼き払う。
「まったくだ」
 バルトロメイは孤月を鞘から抜き素早く月下美人の方に駆け出す。

「最近のエージェント様は察しがよろしいことだな」
 ヴィラン組織「Clematis」のリーダー真田 雪はビル街に不釣り合いの姿で昂達を見据える。
「月下美人に執着を持つヴィランズ……報告書通りではあるが、出くわすとはな」
「蝙蝠しか相手にいなくて退屈してたとこだぜ」
 一真は仲間に「Clematis」が現れた事を伝え、灰燼鬼の言葉を聞いて口元を吊り上げた。
「まぁ、良い。お前らで実践して経験を積ませてもらおう」
 雪は朱色の唇を吊り上げ、白衣を脱ぎ捨てるとファイティングポーズを取った。
「アキでばんだよ」
「ハル、きょうそうだね」
 幼い双子の子供が無邪気な笑みで物騒なモノを手にしていた。
「この子たちは何なんですの!?」
「コンな子ドモを殺シの道具にスるとは許セん! ワガハイは怒ッタぞ!」
 双子の子供を見て驚き戸惑うレイシーとは反対にコルは怒りに満ちていた。
「おねーさん、あーそぼっ♪」
 アキは自身より大きな大剣を引きずりながらレイシーに駆け寄る。
「ばらばらにしてあげるねっ♪」
 アキが細い腕で大剣を軽々と振り上げる、が春翔はインタラプトシールドを展開し仲間の周囲にディフェンダーの盾が浮かぶ。
 火花を散らし、アキの大剣は盾を破壊する。
「まさか……っ!」
 盾を破壊したアキを見て春翔はハッとした表情でハルに視線を向けた。
「危険ダ!」
 コルがハルの挙動を察してレイシーに叫んだ。
「っ!」
「おそいよ?」
 レイシーが視線を向けた時には、ハルが両手で持っているガトリング砲を放つ。
「Clematis! 従魔コレクターの悪趣味ヴィランズ! 英国の恥さらしめ!」
 レイシーは怒りに満ちた言葉を雪にぶつけながら禁軍装甲で銃弾を受けながら射程外へ。
「何とでも言うが良い! 獅子の子は獅子でなければならぬ運命を、モノとして見られない闇を知らぬから言える言葉だ!」
 ハルを梓弓で狙撃しようと一真の矢を雪は叩き落す。

「ふん!」
 バルトロメイが近接攻撃をし、栄二は後方から魔砲銃で射撃するが全て盾で防御される。
「花粉を出さないのが幸いですわね」
 ただ、甘すぎる匂いが気になる様子でファリンは呻く。
 視線が痛い、と冥人は思いながらも見慣れた顔をした月下美人を見据えた。
「こっちは無傷で敵の手札を見られるんだろう? 上等だ。アレの命一つ程度くれてやればいい」
 と、ヴィランの報告を聞いたArcardは冥人の背中に言葉を投げる。
「この場限りで言えば、冥人様おひとりの犠牲でヴィランの動きを縛れ、その結果この場の一般人が助かる。それもまた……次善と言えましょう」
 Arcardの言葉に同意する様に頷くファリン。
「なぁ、知っているかな?」
 月下美人を見つめたまま冥人は口を開く。
「何をですの?」
 不愉快、と感じつつArcardは口を閉ざし、ファリンは急に大人しくなった月下美人を警戒しつつ問う。
「遠い昔に、とある女王様は友達の心に触れてしまった……そして、知ってしまったんだよ。恋愛感情を」
「……馬鹿馬鹿しい。そんな話より身を挺して弱点を教えてほしいんだよね」
 Arcardは天叢雲剣の剣先を冥人の背中に向けた。
「あうなう(静華はトモダチだから生きててほしいの)」
 そんなArcardの言葉を聞いたIriaは静華の手を握り締めながら言う。
「……言うと思った」
 呆れた声色で言いながらArcardは額に手を当てる。
「あいり、ありがとう」
 静華が小さく微笑むとIriaは微笑み返しぎゅっと抱きしめた。
「こりゃ大吹雪かな?」
 と、言うと冥人は月下美人の元へと足を向けた。
「ですが……犠牲はゼロである事が望ましい……言わずもがなですけれど」
 ファリンは小さく微笑むと重籐の弓に矢を番えた。
「ううっ……イヤな音がするよ……」
 カノン(aa2852hero001)が声を震わせながら栄二に言う。
「ヴィランの攻撃がかなり……」
「後ろ、危ない!」
 栄二はカノンが言う方向を見ると、ガトリング砲を携えた幼い少女と雪そして部下1名。
「私は細かな事情は知りませんが、同業者が目の前で死ぬのは気分が悪いのでね、守らせてもらいますよ?」、
 真っ直ぐに冥人の方へ向かう雪の前に栄二が立ちはだかる。
「邪魔するな」
「いいえ、邪魔しますよ」
 雪が低い声で言うが、栄二は怯んだ様子を見せず拒絶の風を身に纏う。
「……ならば、全力で相手をするのみだ」
 雪は槍を取り出し剣先を栄二の方に向けた。
「圓 冥人。何事か目的があるようだな。彼もまた興味深い」
 と、楽し気な口調でヤンは呟いた。
「お気持ちはわかりますけれど、余計な犠牲は出せませんわ、お兄様。人命は何より優先しなければ」
 ファリンは落ち着いた声色でヤンに言う。

●失うモノ、得るモノ
「はじめてだから、いたくしたらごめんね」
 アキが無邪気に微笑みながら言う。
「こんな事したらダメですわ……人を殺しては戻れなくなりますわ」
 レイシーはアキの隙を見つけようと動きを見つめる。
「レイシー、ワガハイはコノ子らを連レ帰り家族にスルぞ!」
「今ちょっと悠長なこと言ってる場合じゃないんだけど……助けたい気持ちは一緒よ!」
 コルは興奮した様子で叫ぶが、レイシーはアキの攻撃をアンサラで受け流すのが精いっぱいだ。
「たすける……? おねーさんもおとーさんとおかーさんとおなじことをいうんだね? ひどいや」
 アキの目から大粒の涙が頬を伝い地面に落ちる。
「いえを、たすける、うる……ああああっ!」
 頭を抱え激しく左右に振るアキ。
「大丈夫っ、大丈夫!」
 レイシーはアキの手から武器を離し強く抱きしめた。
「うわぁぁぁぁん!」
「能力者とはいえ子供ですわね……」
 泣きじゃくるアキを腕の中で感じながらレイシーは呟くと、大剣が腹部を貫き口から血が溢れ出た。
「かはっ!」
「ち、ちが……っ! 『悪いが、仲間を逃がすのが優先でのう……』」
 アキの英雄がそう言ってレイシーから離れ駆け出した。
「悪いが、貴様らのお遊びに付き合ってる暇はないのでな」
 雪が残した精鋭のヴィランを見つめながら灰燼鬼は睨む。
「『鬼神解放――紅炎発破』」
 灰燼鬼が屠剣「神斬」のヘヴィアタックで精鋭に斬撃を浴びせる。
「くっ!」
 精鋭は地面に膝を着くと灰燼鬼に捕縛される、が。
「後片付けする身にもなってくれるかのう」
 アキの英雄が捕縛された精鋭を担ぎ放り投げると、建物の陰からバイクに乗った仲間が現れ連れ去った。
「ち、なんなんだ、あいつは。ここは逃げるが勝ちってな」
「戦略的撤退というやつだな」
 一真の言葉に灰燼鬼は頷くと、倒れているレイシーを担ぎティリアが一般人と避難しているビルに駆け込んだ。

「あぁ、兄様!」
 月下美人は近付いてきた冥人に抱き着く。
「やっぱりアイツ……っ!」
「もう少し様子を見よう」
 その光景を見たArcardは天叢雲剣の柄に手を添えるが、バルトロメイはその手首を掴み止める。
「何故っ!」
「静華様を置いて行ってるからですわ」
 Arcardの問いにファリンが答える。
「減らさない、と……」
「無理、駄目」
 傷だらけの昂を静華は手当てをしていた。
「クラト、信じよう?」
「でも……」
 それでも昂はビルに止まっている天鼠達を見上げた。
「後は器があれば幸せ……コ、コッ、コロスッ!」
 突如、月下美人の口から発せられたとは思えない声がビル街に響く。
 それは殺意、全てのエージェント達に向けられているのが感じ取れる程の……。
「あははははっ! 邪魔をするからだ!」
「がはっ!」
 嫌な音と共に雪の狂気じみた声と、鮮血に塗れた栄二がエージェント達の前に放り投げられた。
「姫騎士様との誓約履行のため致し方なくだよ。尤も、裏切ってくれるならその限りではないが」
 Arcardは地を蹴り雪の元へと駆け出す。
「そんな攻撃が通ると思うか?」
「どうだかな!」
 雪は槍でArcardの斬撃を受け止めるが、後方からファリンがブラッドオペレートで作られたメスの様な刃物で切り掛かる。
「じゃま」
「いつの間にっ!?」
 ファリンの背後にハルが素早く駆け寄りナイフを五本投げつけ、それを回避するために体を捻るが二本も刺さってしまった。
「主様、アキがダメになりました。後は……保険を使いましょう」
「そうしましょう。雪が熱くなっているよう……月下、後は分かるだろう?」
 と、雪の英雄が言うと月下美人が咆哮を上げた。
「規模が分からないですから、ヴィランを深追いはせずに月下美人だけを狙いましょう」
 雪達を追いかけようとしている仲間にセレティアは素早く指示を出す。
 大怪我をしている栄二をほっといてまで追うと、死ぬ可能性や一真からの情報によるとまだヴィランが潜んでいる可能性があるからだ。
「……そうだな」
 春翔はぎりぃと歯を噛み締めながら月下美人に視線を向けた。
「カリステギア!」
 月下美人が姉妹の名を叫ぶと盾からツタがエージェント達に向かって伸びる。
「うふふ……これを、全て切り落とせばいいのね」
 エディスは海神の斧を振るいツタを切り裂く。
 守るべき誓いの効果で大きなツタがArcardに向かって伸びる。
「燃やせば早いモノがっ!」
 Arcardは天叢雲剣を鞘から抜刀してツタを切り裂く。
「ティリアさん、燃やせますか?」
『はい、燃やすことは可能ですわ』
 バルトロメイは通信機でティリアに問うと、共鳴しトリスが杖を手にして窓を開けた。
「燃やします」
 トリスは月下美人の周囲にブルームフレアを起こしツタを焼き払う。
「冥人様、月下美人の弱点は何処ですの?」
 ファリンは重籐の弓の弦を引き月下美人に抱き締められている冥人に問う。
「首を……ぐっ……落とせ! 妹よ……止めてくれよ……」
「お兄様……?」
 冥人の言葉に気がそれた瞬間、ファリンは月下美人の首をグレイプニールで締め上げる。
「ご……めん……な……」
 喉から声を絞り出す月下美人の首は宙へと舞い、体は力なく地面に倒れた。
「直ぐにソレを確保しなければ……」
 昴が立ち上がるより先に春翔が駆け出すも、生き残っていた天鼠達が回収し飛び立って行った。

●幸せに散った花
 一般人に軽い怪我人は居たものの、ほぼ負傷者はナシ。
 愚神との戦いには勝てたものの、ヴィラン組織「Clematis」との戦いでは重傷者2名という結果で支部に帰還した。
「アキが望むなら……」
「うん、ひさぎ(楸)ちゃんありがとうね」
 ある意味成果があったとすれば、実験体であるアキがコルの希望によりレイシーが保護者となる事だ。
「そういえば、冥人様。弱点の確証は持てましたですの?」
 ファリンは冥人に問う。
「持てた、けど……姉妹によって弱点がまばら、という結果だね」
「まばら?」
「うん。能力を使う時に体の一部に薄っすらと模様が出るみたいだね」
 と、ファリンの問いに冥人は答えた。
「コル様、アキ様はヴィランにいた身なので一時的にHOPEで預からせていただきますわ」
 ティリアはアキの手を取り、レイシーとコルに今後の事に関して説明をする。
「レイシーまま、コルぱぱ、ぼくだいじょーぶだよ?」
「アキはワガハイの家族だから待ってオルぞ!」
 暫しの別れを惜しむかのようにコルはアキに抱き着きながら声を上げる。
「ちょ、ちょっと……こんな所でしないの」
 レイシーはアキからコルを離そうと引っ張る。
 場所は支部のロビーで子供に抱き着いて無く人形の姿は、通りすがりのHOPEの社員達やエージェント達の目を引く。
「アーキー」
 ティリアに手を引かれながらアキは、コルとレイシーに手を振りながら支部の奥へと消えていった。
 いつになるかは分からないが、幼い少年が仲間入りする時は歓迎するかはその場に居合わせるアナタ達次第。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715
  • アキとハルの母
    レイシー・カニングマンaa4281

重体一覧

  • 守護する魔導士・
    東城 栄二aa2852
  • アキとハルの母・
    レイシー・カニングマンaa4281

参加者


  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 神鳥射落す《狂気》
    Arcard Flawlessaa1024
    機械|22才|女性|防御
  • 赤い瞳のハンター
    Iria Hunteraa1024hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • 守護する魔導士
    東城 栄二aa2852
    人間|21才|男性|命中
  • 引き籠りマスター
    カノンaa2852hero001
    英雄|10才|女性|ソフィ
  • 危急存亡を断つ女神
    ファリンaa3137
    獣人|18才|女性|回避
  • 君がそう望むなら
    ヤン・シーズィaa3137hero001
    英雄|25才|男性|バト
  • 御屋形様
    沖 一真aa3591
    人間|17才|男性|命中
  • Foe
    灰燼鬼aa3591hero002
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715
    人間|25才|男性|攻撃
  • 希望の意義を守る者
    エディス・ホワイトクイーンaa3715hero002
    英雄|25才|女性|カオ
  • アキとハルの母
    レイシー・カニングマンaa4281
    人間|17才|女性|生命
  • アキとハルの家族
    コル・レオニスaa4281hero001
    英雄|25才|男性|ブレ
前に戻る
ページトップへ戻る