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【神月】連動シナリオ

【神月】TUTORIAL

ららら

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/08/20 19:50

掲示板

オープニング

 ライヴスの目覚めは唐突だ。
 ヒトは誰しも“英雄”に触れる可能性がある。その出会いは前触れなくもたらされ、否応なしに、そして劇的に運命を変化させられる。
 それは悲しい事かも知れないし、喜ばしい事かも知れない。“まだ誰にも分からない”。何故ならそれを決めるのはライヴスに目覚めた者達自身だからだ。彼らがこれから先、英雄と共に紡いでゆく物語を一文字たりとも読み逃さずにひも解いて行った先に、初めて得られる世界でただ一つの真実なのだ。

 “ある戦い”の影響で、今、世界各地で次々と新たな能力者が目覚めている。
 異世界より現れた超越的存在と接触し、大きく動き出す運命の下、戦いに身を投じる者が一人、また一人。
 今はまだ真っ白い、だが決して穏やかとは言えないだろう未踏の明日への第一歩を――
 彼らは今まさに、踏み出そうとしているのだ。



『聞こえますか、アーアー、聞こえますかー。もしもーし?』
 インカム型の無線機から雑音混じりの声が聞こえた。肯定の返事をすると、やや大袈裟にも思える安堵の吐息が返って来た。
『グッドです! そのインカム、私が設定したんですが、機械ってどうにも苦手でして! 声が聞こえないとか音を拾わないとか突然爆発するとかしないか、不安だったんですよね。どうですか、皆さん無事、現場に到着されましたか?』
 かなり聞き捨てならない発言があった気がするが、ひとまず到着した旨を告げた。
 エージェント達の姿は今、ある工場の敷地内にあった。工場と言っても、廃棄されて久しい為、稼働はとうに停止している。錆びた機材や腐った木製コンテナが疎らに点在し、遠くにはひび割れた窓ガラスを蔦がびっしりと覆った工場が、物言わず鎮座していた。
 そして、木々や建物が邪魔で見えないが、右手には東京湾が広がっている筈だ。エージェント達はこの東京湾の海上に存在する巨大なメガフロート、H.O.P.E.東京海上支部よりやって来た。
 つまるところこの廃工場は、H.O.P.E.の目と鼻の先にあるものだ。
『えー、それでは、状況を再度ご説明します! 現在、中東で“大きな戦い”が起きている事は、皆さんご存知ですか? これがわりと世界的危機な感じでして――低く見積もって世界までは行かずとも、中東は軽く滅べそうなので、H.O.P.E.の主要な戦力はそちらに出払っている状態です』
 語り口は何とも呑気なものだが、それは確かに事実だった。
 戦いについてはさて置き、今の東京海上支部は兎角、人が少ない。戦いの只中である為、騒がしさがないわけではないが、雑多な人々が入り混じっている独特の喧騒が、今の東京海上支部にはなかった。
『ですが、支部を空っぽにして、事件への対応能力を落とすわけにはいきません。そこで既存のエージェントの一部と、なりたてほやほやの新人エージェント――要するにあなた達に、待機戦力として支部に残って頂くようお願いしていたわけですね!』
 この説明を聞き、改めて仲間達の顔ぶれを見回してみる。成る程確かに、この場にいる者の全員が、全くと言って良いほどエージェントとしての経験を持たないようだ。
『そして、ビンゴ、です。案の定、愚神の出現が報告されたので、皆さんに討伐に出向いて頂いているというわけです。――と言ってもご安心下さい! 報告があったのは、ミーレス級の弱い従魔が二体だけなんです。あ、ミーレス級が分からないです? アレですよアレ、RPGで言えば序盤の街の外で、チュートリアルで戦うくらいの弱っちいやつです!』
 厳密にはミーレスと言っても玉石混交であり、強弱の差は存在するのだが、今回のミーレス級はこう言ってしまっても構わない程度には、弱い敵であるようだ。
 ――不意に、羽ばたくような音がした。
 皆が一斉に、左方を警戒した。視線の先、機材の裏から小さな影が姿を現す。
 それは言うなれば、“蝙蝠の翼を生やした黒いゴムボール”のようだった。バスケットボール大の球体の身体に、一対の翼が生えている。翼が羽ばたくたびに身体が揺れるので、スライム状なのだろうと知れた。
『あ、出ました? そちらが報告された――“スライムバット”と仮称しますが――ミーレス級の従魔です。では皆さん、サクッと殺っちゃって下さいな! その程度の従魔二体なら、皆さんでも余裕を持って――へっ?』
 オペレーターの声を制して、ある者が言った。“もっといる”。
 物陰から忙しなく翼を羽ばたかせながら現れたスライムバットは、見る限りで四体いた。
 それだけならば別段、問題ではなかっただろう。ミーレス級は弱く、この従魔に関してはミーレスの中でも更に弱い部類だ。二体が四体になったところで、さして苦労もなく倒せた筈だ。
 問題は――“五体目”だった。

「ゲッゲッゲ……馬鹿ガ! 馬鹿デ弱ッチクテ美味ソウナ人間ガ、コォォォォォンナニ釣レタゼェ!?」

 それは、複数の音声が重なったような、不快な声で人語を介した。
 スライムバットの後に続き、五体目の敵がその巨躯を現した。それはヒト型ながら脚が短く、対照的に隆々と発達した両腕が地につくほど長い。
 筋肉で膨れ上がった上半身は獣を思わせる猫背であり、ほぼ前向きに伸びた頭は不自然なまでに大きな二つの眼球と、鋭い歯の並ぶ口を持つ……。
 その口が唾液を滴り落としながら、愉悦の形に大きく、歪んでいた。
「分カッテンダヨォ……今ノテメェラハ手薄ダッテナァ……!? 従魔デテメェラ雑魚共ヲ釣ッテ、ミィィィンナ食ッテ強クナル……ソノ力デマタ人間ヲ食ッテ強クナル! 完璧ナ作戦ダロォォォ? ゲヒャヒャヒャヒャッ!」
『そんな……自我があるですって!?』
 インカムがオペレーターの焦燥した声を届けた。当然だ、従魔は自我を持たない。
 だが五体目の敵は明らかに自我を持っている。この事実が意味するところは、つまり――
『よ……よく聞いて下さい。その個体は恐らくミーレスの一段上であるデクリオ級か、それ以上の力を持つ愚神と思われます。悔しいですが……聞く限りまんまとハメられた形です。つきましては“戦闘を放棄して帰還して頂いても構いません”。すぐに代わりの、もっと戦いに慣れた部隊を編成し、改めて討伐に――あっ、ちょっと!?』
 その言葉を聞き終えぬうちに、前に出た者がいた。
 目の前の敵が気に喰わないという理由かも知れないし、倒せるという確固たる自信の表れかも知れない。
 或いはただのやせ我慢かも知れないし、深い考えはなかったのかも知れない。
 その一歩の理由は他人には知れぬ事だが、踏み出したという行為自体は何よりも価値を持つ。
 それを見た愚神が天を仰ぎ、唾液を撒き散らしながら醜く嗤った。
「イイゼェ、コイヨォ、俺様ニ美味シク頂カレニナァァァ? ゲヒャヒャ、ゲヒャヒャヒャヒャ!」
 彼らの“チュートリアル”が、始まる。

解説

このシナリオは新規プレイヤー優先シナリオです。
参加キャラクターには能力者にLv.20の上限が掛かっています。
初めてシナリオに参加されたプレイヤーは、本部ページから『シナリオとは』のページを開き、『シナリオを攻略しよう』の項目をご覧ください。

○状況
敵の罠にはめられ、複数の従魔、愚神と対面している。
時刻は昼。オペレーター曰く「撤退しても構わない」との事だが……。

○戦場
廃工場敷地内(工場内ではない)。
機材やコンテナの残骸など、障害物はあるものの基本的には戦闘の邪魔にはならない。

○敵戦力
ミーレス級従魔「スライムバット」×4
蝙蝠の翼で移動するスライム状の球体。自重の為高く飛び上がる事は不可能。
基本的には後述のワイルドアームをカバーリングで護衛する。
攻撃方法は体当たりのみであり、威力も極低だが、攻撃・防御の瞬間に身体を硬化させる為、見た目以上に打たれ強い。

デクリオ級愚神「ワイルドアーム」×1
長く逞しい腕を持つ人型の愚神。肉弾戦を好む。
PC達は知る由もないが、ケントゥリオ級と呼ばれる、デクリオ級の更に一段上のレベルに成長する一歩手前の状態。
放置をすれば遠からず力をつけ、被害を出すだろう。
物理攻撃↑↑ 物理防御↓ 魔法防御↓↓ 命中・回避・移動↓
・ワイルドスウィング
両腕を振るいながら回転する事で、自身を中心とする範囲(1)を攻撃する。
高威力だが、使用前に大きな予備動作がある。
・衝撃波
腕を勢いよく振るう事で衝撃波を起こして攻撃する。射程10。
高威力だが、速度は低い。

○他
白紙プレイングには注意をしましょう。
万一の為、仮プレイングを送っておく事を推奨します。

リプレイ

 気が付くと駆け出していた。
 身体は無意識に突き動かされ、一拍遅れて意識が追い付いた。自らの行為を不思議には思わなかったし、元より疑問を差し挟む暇などなかった。既に機械化された義肢は引き金を引き、銃口より弾幕が放たれている。
 想定外の状況、想定外の強敵。頭の片隅の冷静な部分が“撤退”こそが賢明な判断であると告げる。だが同時に己が手で火蓋を切る事に一切の後悔を感じていないのも事実だった。
 短い銃身から放たれる高速のフルオートに楪 アルト(aa4349)の気勢が重なる。
「はッ! ヒョコヒョコ釣られてんのはッ、てめーの方なんだよバーカ……!!」
『ちょっ、刺激しては……!? あわわわわ!』――オペレーターの慌てた声をインカムが届ける中、雨あられと放たれた弾幕は、然し、愚神の身に届かない。射線に割り込んだ従魔がその身を硬質に変化させ、銃弾の悉くを弾き返した。硬い――僅かに眉を顰めつつも疾走するアルト。
『アァアン!? 雑魚ガナァニ生意気抜カシチャッテンノォ? コレデモ喰ラッテナァ!』
 愚神は見下し切った表情で嘲笑うや、右の拳を猛然と振るい巨大な衝撃波を放った。
 前傾姿勢で駆けるアルトの顔面に衝撃が迫る。だがアルトは避けようともせず尚疾走った。
 全幅の信頼を置く友人が、既に行動を起こしているのを目の端で捉えていたから。
「私には、敵を倒す力はありません――」
 衝撃は瞬後、“何か”に阻まれて霧散する。立ち込める負のライヴスを切り裂いて凛とした声が戦場に響いた。何処か絶対的で、また支配的な声だ。
「ですが……皆様をお守りするぐらいの力ならあります」
 そこに立つのは杖を構えたルーフェルト・アリエル(aa4335)。浮遊するプロテクタを従えながら絹の様にたおやかに、されど岩のように毅然と愚神に対峙する。黄金のライヴスが燦然と輝き、その端麗な容姿と相まって強烈な存在感を発露した。
 それは正しく“君臨”とも言うべき佇まい。ルーフェルトは慈悲を与える聖女の如く微笑んだ。
「それにしても、口が達者ですね。弱さが引き立ちますよ」
『アァ? ……コノ俺様ガァ!? 弱イッツッタノカヨ、雑魚ノ分際デェッ!?』
「ええ……むしろ此方がお礼を言わなければなりませんね。良い“チュートリアル”です。私達の糧になってください」
 愚神の顔がみるみるうちに憤怒に染まる。顔面の表情筋を激しく痙攣させながら激情の雄叫びを天に叫び上げる。
『だっだから刺激しないようにー!?』――インカムがオペレーターの悲鳴のような声を届ける中、更にこの後方より銃声が弾けた。従魔が瞬時に愚神の前面に回り込み、防ぐ。
「またデクリオ級か……しかも従魔から愚神にランクアップとはな」
 大口径の魔導銃を連射しながら、壮年のリンカー天野 恭一(aa3836)が小さく独りごちる。辟易したような言葉と裏腹に、その声には感情らしいものが含まれていない。事実を淡々と見つめ現状を確認する、言うなれば軍人の如きそれだ。
 脳裏に浮かぶ三か月前の事件。あの時の敵は同様にデクリオ級でありながら飽く迄も従魔との戦いだった。横目でチームの顔ぶれを確認する。事前に確認したところ“初陣”が数名いた筈だ。戦力として心許ない事には間違いない――帰還を促すオペレーターの判断は間違いではない、然し。
『この世界の神は少々意地悪なようですね』
「何、問題ない」
 恭一は牽制の射撃を続けながら、相棒たるプリシラ イザード(aa3836hero001)の言葉を否定する。敵は確かに新人のエージェントが相手取るには強力な個体かも知れない。だが、此方は数で勝り、頭脳で勝り、そして何よりも。
「俺達には異世界の女神がついているからな」
 まあ、とプリシラが仄かに頬を染めた事に気付いたか否か。恭一は魔導銃を両手で構え、牽制の射撃を放ち続けた。
 そして、そんな恭一とは逆方向より走る蒼銀の影。
『おい、お嬢ちゃん。帰っていいって言ってるぜ。どうだ、此処は一つ素直に言う事聞いて、帰ってメシ食ってフロ入ってぐっすり八時間ほど寝るってのは?』
「味方を見捨てるわけにもいきませんわ。戦いますわよ」
 炎のようなアルトの疾走に対して、彼女の足運びは音を殺す術をよく心得えていた。高速の移動のさなか僅かにも姿勢を崩さずに小銃を構え鋭く射撃するレジーヌ・カザノヴァ(aa1097)。自らの提案をにべもなくはねのけられたニコラス フランクリン(aa1097hero001)は彼女の中でヤレと肩を竦めて呟く。
『ハ――だよ、な』
「ご納得頂けましたか? では力を貸しなさい。さっさと帰りたければさっさと殺す。それが――」
 小銃が吐き出す銃弾を従魔が庇う。恐らくはその役割のみに特化した従魔。単独では脅威足り得ない、だが守るべき対象を得た時にこうして厄介な存在に変貌するのだろう。
 だがレジーヌの表情は涼やかだ。彼女の脳裏には既に数多の攻め手が浮かんでいる。思考し、吟味し、遂行し、そして殺す――“嘗て”のように。
「――お仕事、ですわ」
 戦闘行為を続行しながらも英雄と軽口を交わし合うレジーヌ。その後方より快活とした声が、弾けた。
「いっくよーコロちゃんっ!」
『OK綾香』
「リンク・エ――レクトロンッ!!」
『Ver,ストライダー』
 溌剌と活力に満ちた声と抑揚のない電子的な音声。少女とその相棒たる小柄な機械人形が今まさに共鳴を果たさんとしていた。二人のライヴスがリンクすると同時に機械人形は無数の光の粒子となって弾け少女の肉体を覆った。脚部、椀部、胴、胸部と装甲が顕れ、無機質な半透明の翼が伸びると猛々しいポーズを取る。
 そうしてサイコロ(aa4051hero001)と共鳴した一色 綾香(aa4051)は、満面の笑みで拳を突き上げた。
「綾香機、出撃しまーすっ!」
 元気よく宣言し――その異色とも言える共鳴の様子に数組の仲間が呆気にとられた――綾香は身の丈を超える大剣を猛然と振るい愚神に衝撃を斬り放った。
 防御。またしても従魔に防がれるが、指を折って何かを数えた綾香は大剣をぶんぶんと振りながら後方の仲間達に告げる。
「いけるよっ、二人ともっ!」
 そう、これで行動した従魔は合計で四体。
 アルトが、恭一が、レジーヌが、そして綾香が猛攻を加え続ける。エージェント達の手数がこの時、愚神の防御を上回る。
「悪が何をしようとも――正義の前に滅ぼされるのみ」
 声と同時、愚神の周囲に無数の刀剣が滲むように出現した。カトラス、両手剣、日本刀。種々の刃が立体的に包囲し、その切っ先を中心――愚神に向けている。
 更に。
『ころす』
 別のしわがれたような声が重なると共に、刀剣の数が倍増した。夥しい数の刀剣に囲まれた愚神の怯んだ声が小さく漏れる。『ナン――』言葉は続かない。刃が閃き、暴れる。
 多量の刀剣が暴風の如く愚神達を襲い、無差別に、無慈悲に蹂躙した。鉄と鉄の衝突する硬質な音が連続し、愚神の雄叫びがそれを覆う。数えて二つのストームエッジ。刃の嵐に敵影が消える。
「ふうーん……あれがカオティックブレイドの……♪」
 そんな中幼い少女、C(aa1825)は機材の上に腰かけて足をぶらつかせながら、その様子を興味深そうに眺めていた。
 無邪気な瞳に何処か歪な輝きを灯しながら……。



 猛る咆哮。震える大気。
 愚神は剛腕を以て群がる刀剣を弾き飛ばした。その表皮には無数の裂傷が見受けられる。
 だがその表情には焦燥も尻込みもなく、ただマグマのような怒りと活力のみが表れている。防御は低い、だが生命力は高い。
「成る程、要するにゴキブリって事だね」
『恐れながらご主人様、ゴキブリに失礼かと』
「ああ、そうだね。ゴキブリはこんなにウスノロじゃないもんね」
『ええ……ですから、強いて言うなればやはり、こういう事で宜しいのではないかと』
 ――あれは、“悪”。
 カルカ(aa4363hero001)のその一言が脳に響いた瞬間、ユーガ・アストレア(aa4363)の瞳が深紅に輝いた。悪、それは討滅されるべき存在であり自身は正義の執行者であり即ちこの場に於いて勝利以外の結末を許されない、許さない。瞬きほどの時間も要さずそのように結論したユーガの身体は瞬後、跳躍し廃機材の上に降り立った。
 先程のストームエッジの一翼を担ったユーガであるが、既に乱戦となりつつある状況ではこの技は使えない。故に二挺拳銃をその手に顕現しフルオートで撃ち放った。一対の銃口から火薬が爆ぜ、無数の弾丸という形で今、ユーガの正義が絶叫する。
「正義は勝つ――勝たねばならないっ!」
 そして、同様にストームエッジを放った後、援護射撃に移行するエージェントが此処にもう一組。
『ウゥ……ウウゥゥ』
 リボルバーを構えた少女が走る。共鳴状態のCと比べてもなお一回り幼い小柄な彼女はダレン・クローバー(aa4365hero001)。灰色の髪を躍らせながら深紅の瞳で愚神を睨み、ユーガの攻撃とほぼ同時に弾丸を放つ。
「おやダレン、やる気だね」
『ウゥ』
「そうかそうか。では君の思うままに。ボクは君とならどんな悪環境でも着いていくさ」
 彼女の中でそのように優しく囁き掛けるのはエリカ・トリフォリウム(aa4365)、ダレンの誓約者であり能力者。
「手応えはどうだい? 勝てそうかい? “埋葬出来そうかい?” 楽しみだなあ、埋めたいなあ。ざくざく土を掘ってさ、それでそれで……」
『だまれ』
 陶酔するエリカを煩わしそうに制するダレン。肩を竦めるエリカを無視し、彼女の瞳は銃弾の行方を観察していた。やはり従魔に阻まれる――だが更にその先、従魔の“特性”に思考を巡らせた。
 防御の瞬間の、硬化。
 もしやとダレンは――別の世界の言語で――考えた。恒常的に防御力が高いのではなく、瞬間的に高めているのだとしたら、付け入る隙はそこにある?
 年端もいかない少女でありながら、ダレンは聡く、また戦いをよく理解していた。次の攻め手に高速思考を巡らせながら、疾走る。
 そして、別方向から更なる銃弾の雨が愚神の身に降り注いだ。
「ねーねー。アレ、すっごく手ごたえなさそー」
『あはは。ヒヨコちゃん、上海の海竜さんと比べちゃ失礼にあたるからダメだよー?』
 先程まで廃機材の上で様子を見ていたCが、二重のストームエッジを契機に前進、攻撃に加わっていた。短機関銃の絶え間ないマズル・フラッシュがその可憐な笑顔を彩る。一見して彼女を諫めているような英雄のl(aa1825hero001)だが、その言葉には少なからず嘲笑の色が混じる。「あはは」『あはは』「ふふ」『アハハ♪』弾幕を撒き散らしながら笑い嗤う二人の少女。
『雑ァァ魚ガ粋ガッテンジャネェエエエエエエエッ!!』
 その“挑発”に乗り大股でC達に接近せんとする愚神。だがCはこれに合わせて軽やかなステップで後退し距離を縮める事を許さない。戯れのように笑い、跳ね、そして撃つ。
「わーい、鬼ごっこだー♪」
『ここまで鈍足だとちーっとも張り合いないねえ』
 ユーガ、ダレンの攻撃同様に銃撃自体は従魔に弾かれてしまう。予想以上の耐久性を見せる従魔だが確かにダメージは蓄積されている筈だ。
「しかし、本当によく喋る奴だ」
 其処へ恭一が割って入る。怒りに身を任せCを追うばかりだった愚神の視線は、しかし、眼下の恭一に向いた――否、“強制的に向けられた”。恭一の身体から放たれるライヴスが愚神の意識を彼へ引き付け離さない。
 恭一が大口径の魔導銃を発砲。反動で銃口は煙の尾を引きながら大きく上を向く。薬莢が舞う。反動を利用して恭一が後方へ飛び退る。従魔が銃弾を防ぎ、愚神は恭一に接近せんと足を踏み出す。
『――ッ!?』
 踏み出せない。
 鋭い痛みを覚えて足元に視線を落とす。足の甲に剣が深々と突き刺さり地面に縫い付けられていた。
「テメェのリズムは単調なんだよ。客が帰っちまうぜ――ヘタクソ!」
 傍らから飛んで来た声に気付きそちらへ振り向いた愚神の瞳がアルトの不敵な笑みを映した。影のように接近していたアルトは英雄、‐FORTISSIMODE-(aa4349hero001)の力を借りて武器を複製。それを足に突き刺す事で愚神の動きを封じたのだ。
 愚神の顔面が怒りに染まり、ビキビキと筋肉が暴力的に痙攣する音が鳴る。だが次の瞬間、愚神は不可解な事実に思い至った。
 ――従魔の数が、足りない。
 攻撃を行ったのはユーガ、C、恭一の三人。あと一体の余裕がある。何故アルトの攻撃は防がれなかった?
 答えは、背後より放たれた声によって明らかとなった。
「――お探しのものは此方ですか?」
 意識外からの声。愚神は弾かれたように振り返り、そして驚愕を滲ませた。『テメェ……!?』そこには蒼銀の女――レジーヌが立ち炎を思わせる独特の形状をした刀を構えていた。足元には従魔が力なく横たわっている。死んだのではない、意識が朦朧としているのみだ。だが防壁という唯一の役割を果たせないのならば戦場に於いては死も同然。
 レジーヌはCや恭一が気を引く内に音もなく背後に回り込み、人知れず従魔に分身攻撃を与えていた。力も、疾さも、精密さも決して一流のエージェントには及ばないだろう。
 だがこの暗殺の技に於いて、彼女は幼少より磨き上げたものがある。
 そして。
「集え同志達よ――眼前の敵を屠る為、今汝らに――」
 黄金のライヴスの気配がチリチリと愚神を焼いた。正面を向き直った愚神の瞳に真っ先に飛び込んで来たのは、旗。希望の名を冠するそれが愚神の鼻先をはためきながら通り過ぎる。翻った布の向こうにルーフェルトの微笑みがあった。
「――力を!」
 決して声量のあるわけではない、けれど強い芯を感じさせる、それは戦場によく通る声。彼女の脳内に英雄の言葉が響く。
『やるぞ、ルー』
「ええ――私には私に出来る戦いを。敵を屠るのではなく、この身この剣、この盾は全て隣人が為に」
『それがルーの騎士道だと言うのなら、私はそれを護ろう、そして助けよう――!』
 ハーベスト(aa4335hero001)がそう宣言すると共に高く掲げられた旗より光の粒子が放たれる。これを受けて動き出すのは、綾香。
『抑えられているようだ。好機』
「来い――ブラストオンっ!」
 綾香の両手に二本の筒状の武器が顕現。ライヴスが迸り特有の音と共に光の刃を灯し、更にはルーフェルトの光を受けて紫電を纏った。『換装、完了』サイコロの報告が脳内に響く時既に綾香は踏み込んでいた。「纏めて、吹き飛べ――!!」振るわれる一対の光。幾重もの光の残像を描きながら嵐が如く振るわれる。彼女の間合いの内にいた愚神と数体の従魔を光刃が襲う。刃がその身を焼く瞬間火花が散りスパーク音が弾ける。苦悶の叫びを上げる愚神――。
 それでも、倒れない。
「ケッ、助長なだけの演奏はつまんねえってのによ」
「油断するなよ。反撃が来る」
 吐き捨てるように呟いたアルトに恭一が警戒を促すと同時。愚神が雄叫びを上げながら両の腕を広げた。地面に縫い付けられた足を強引に引き剥がして前へ出る。ぐるん。腕を振り絞り、そして猛然とその場で“回転した”。
 レジーヌはこの予備動作を見きわめ、後退。剛腕が鼻先を通り過ぎる。
 綾香はこれを武器で防ぐ。だが衝撃に身体が浮き後方へ吹き飛ばされる。重い――その表情に苦痛が滲む。
 後退する心算だったアルトだが一手間に合わない。舌を打ち回避を試みるが遅い。眼前には既に唸りを上げて筋肉の塊が迫っている。「やば――」見開かれる目、頬を伝う汗。
 だが、友人の危機をこの女が見逃す筈がない。
 硬質な音と共に黄金の背中がアルトの視界を覆った。「……ルー!?」そう、ルーフェルトが杖を構えてカバーに入ったのだ。背後に立つアルトからは見えないが微笑を浮かべる表情にありありと苦痛の色が滲んでいる。
「ッ――そのような攻撃では、私の防御は崩せませんよ?」
 虚勢であると、ルーフェルト自身も理解していた。彼女は駆け出しのエージェントとしては破格の防御性能を持つ。だが――愚神の破壊力はその上をゆく。
『“受け流す”んですっ!』
 唐突に、インカムがオペレーターの声を届けた。
『強力な攻撃は真正面から受けるのでなく、受け流すという方法での“防御”も時には有効となりますっ!』
 決して能力者ではないが、幾多の戦いを見て来た経験から彼女には助言が出来た。成る程と頷き旗を構えるルーフェルト。
 そう、これは初陣の者にとってはチュートリアル。
 敵と鎬を削る一挙一動、その全てが明日へ繋がる歩みの一つ。
『皆さん、どうか生きて帰って下さい……っ』
 祈るようなオペレーターの声を契機に愚神の周囲にいたエージェント達が一斉に跳び退った。
「当然だ。誰一人死なせはしないしこの敵を殺し損ねるつもりもない……!」
『そして恭一様は、私が死なせません』
 気勢と共に恭一がライヴスを纏う極大の弾丸を放つ。やはり従魔が防御する――だがライヴスは被弾の直後に弾け、周囲にいた愚神や従魔の身にも僅かなダメージを与える。
 其処へ更に重なる、刃の嵐。
「さあ悪賊よ! 正義の鉄槌、受けるが良い!」
 後方、廃機材の上に立つユーガもまた大技を放つ。範囲攻撃に次ぐ範囲攻撃。度重なるエージェント達の猛攻にこの時、とうとう一体の従魔が力なく落下し、霧散した。
 壁が、崩れた。
『……まだ』
 まだだ。この攻撃に乗じて逆方向より銃撃するエリカ。銃弾は鋭く従魔に着弾。従魔が落下、更に二体目が斃れる。
 その様を見て、やはり、とエリカは思った。攻撃を受ける瞬間に硬化して防いでいるのなら、それが解けた瞬間を狙えば驚く程にこの敵は脆い。それを先の一撃で見抜き、見事実践して見せていた。
「おおっ、なるほど!」
『綾香、我々も』
「ほい来たー!」
 これに倣い綾香も間を置かずして大剣から衝撃を放ち追撃。硬化が解けた瞬間を狙い澄ました一撃は容易く従魔を両断した。
 これで、三体。
『ナ、ン、ダ、トォォォ……ッ!?』
 その表情に焦燥の色を滲ませ始めた愚神。瞬後、弾かれたように振り向いた。
「あら、案外反応がよろしいのね?」
 くす、と笑みを漏らしたレジーヌが背後より刀を振るう瞬間だった。咄嗟に愚神は従魔を鷲掴みにし、前に突き出して刀を防いだ。この女の攻撃が従魔を行動不能にする事を理解していたからだ。
 一撃、二撃、三撃と高速の剣閃が閃く。この悉くを従魔で防ぎ切る愚神。反撃の拳を振り抜こうとした瞬間……従魔がその手の中でぼろりと崩れ去った。
『ナニ……!?』
「覚えておく事ですわね。乙女の微笑は、時に“毒がある”という事を……」
 レジーヌの微笑に艶やかなものが混じる。毒刃。この時、先程とは違い内部より確実に蝕む技に切り替えていたのだ。
 従魔――残り、ゼロ。
「丸裸だな。さあ、ボク達に倒される覚悟はいいか!」
『……ウルセェェエエエエアアアアアアッ!!』
 廃機材の上に立つユーガの声に愚神は激昂。振り向きざまに衝撃波を放った。ユーガが跳躍すると衝撃は機材に着弾。破片が舞い散りユーガの身を僅かに傷付ける。愚神が全身の筋肉と血管を蠢かせながら、叫んだ。
『テメェラ雑魚ナンカニッ! 俺様ガ負ケル訳ネェンダヨォッ!!』
「いいや負ける」
 着地、同時に双銃を構えたユーガが頬より一筋の朱を滴らせながら何処までも真っ直ぐに告げる。
「何故ならお前は悪でありボクは正義である。故にお前は負けるしボクは勝つ。“悪は負けなければならないし正義は勝たなければならないだからお前は此処で死ぬ”」
 細長い瞳孔が愚神を凝視しながら淡々と告げられる。
 そして――更に後方より響いた、声。
「いっくよー、みんなー! 当たったらごめんねーっ!」
 密かに後方に下がり詠唱を行っていたCの声。これを聞いた恭一が合図を出し、皆示し合わせたように退避した。生じた空白地帯の中心に一人立つ愚神。
「――今こそ」
 戦場に少女の声が響くと共に、愚神の周囲にライヴスが集い始める。何が起きようとしているのか。困惑の色を見せる愚神をよそに少女の詠唱は刻々と完成へ近付く。
「我ら、涜神の大火をここに掲げん!」
『打ち捨てられたる者は集うがよい。我らの叫びは天を衝き、怒りは必ずや御座にも届く』
「おお、愚かなる主よ。我らは糾弾を以て御身を称えよう!」
『傲岸なる神よ! 冷酷なる神よ! 我らは憎悪を以て奉る!』
「いざ、飲み干し給え――敵意の太陽を!」
 そして愚神の頭上に業火が顕れた。太陽が如き爆熱は落下し、爆ぜる。激烈な苦痛の叫びが戦場に響き渡る。
 だが……。
「何でぇっ!?」
 その結果にCは不満の声を上げた。彼女は自らが考案した“自称大魔法”という技を実践に移すつもりでいたのだが、発動したのは既存の魔法、“ブルームフレア”だったのだ。
『スキルは複雑な技術です。新たなスキルを生んだり、性能を変化させたりといった事は不可能です――』
 インカムより再びオペレーターの解説が届く。
『新たなスキルを考案するより、今あるスキルを“どう使うか”――それを考える事が、“大魔法”への近道ですよ!』
 それを聞き、拗ねたように唇を尖らせるC。彼女の攻撃は確かに思い描いた結果にはならなかった。
 だが――愚神の身を苛烈に焼いた、それもまた事実。
『……あいつ、魔法に、弱い』
「そうみたいだね、ダレン。ああダレン、そろそろ埋葬の時間かな?」
 炎を切り裂いて跳躍。愚神の頭上を取ったダレンはその手に肉厚の剣を複製。落下の勢いを借りて渾身の力で頭頂部へ叩き付ける。
『死ね……っ!』
 重い一撃を頭部に喰らい前後不覚に陥りながらも腕を振り乱す愚神。だが狙いの滅茶苦茶な攻撃を受けるレジーヌではない。接近――分身攻撃。狼狽し隙が生じる。
「こうなっては手玉、ですわね?」
「という事で、いい加減に終わりにしたいところだな」
「ああ、そろそろ悪は滅びる時間だ」
 射撃、射撃、射撃。恭一とユーガの援護射撃に乗じて前に出るのは、激情を宿したアルト。
「てめぇはあたし達を雑魚呼ばわりしやがった……あたしはどうだっていい。けどな、おまえ如きがルーに対してそんな事言うのは……!」
 許さねえ。
 銃口が弾け、弾丸という名の子守唄(ララバイ)が愚神の顔面へ降り注いだ。若いな、と恭一が小さく笑み、正義だね、とユーガが頷く。
 そしてこの攻撃に紛れ綾香が接近。迎撃の拳を唸らせる愚神だが、その一撃はまたしてもルーフェルトに防がれる。
「防御は私に任せて、全力で攻撃して下さい!」
 拳は、杖で“受け流された”。これにより大きくバランスを崩す愚神。刹那的に両者の瞳が交差する。ルーフェルトは笑い、愚神は笑わなかった。
 故に。
『ヒートモード解放』
 綾香は絶好の形で懐に踏み込み、好機を得た。極限まで練り上げられたライヴスが武器を赤熱させる。『上限圧力解除』サイコロの声が響く中、綾香は大剣を大きく振り被り、轟と一閃。
「オォォォガッ! ドライブ――――!!」
 それは、防御を捨てた一撃必殺。袈裟に断たれた愚神の肉体が斜めに滑り、二つの肉塊となって地に伏した。
 悲鳴も、怒号も、断末魔もなく。ただ苦悶と悔恨に塗れた表情がやがて光の粒子となり……消えた。



 ルーフェルトの身を案じるアルトはこの日一番の必死な顔をしていた。それを宥めるルーフェルトもまた、この日一番の穏やかな表情をしている。
 同様にプリシラも恭一の体を気遣うが、微笑む恭一にその頭を撫でられて仄かに頬を染めながら破顔した。
 エリカとダレンは愚神を埋葬し弔っていた。遺体は消えてしまったが形だけでもと執り行われている。CとIも気紛れでこれに参加。戦闘終了と同時に幻想蝶に引きこもってしまったニコラスに呆れつつ、レジーヌも加わった。
 ユーガと綾香はと言うと、必殺技はないのかとか、合体はしないのかとか、双方のスタイルに通じ合うものがあったようで話に華が咲いている。

 そして――そんな彼らの様子を遠巻きに眺める一人の人物。
「全く、まさか倒しちまうとはな」
『すみません、態々出張って頂いたのに……』
「いや、いいさ。俺の出番がないならそれに越した事はない」
 インカムを通じてオペレーターと言葉を交わす中年の男は、中東の作戦に参加せず東京海上支部に待機していた数少ない熟練のリンカー。この事件の報告を受けて増援として駆けつけていたのだ。
「ま……次からは一々俺を呼ばなくても良いだろうな」
 男は物陰から新人のエージェント達を、眩しく、また懐かしいものを見るように眺めながら告げた。
 確信と、僅かな喜びの滲んだ声。

「あいつらはもう、一人前の戦士だ」

 潮騒が、新たに生まれた八つの希望を静かに祝福していた。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • エージェント
    レジーヌ・カザノヴァaa1097
    人間|20才|女性|回避
  • エージェント
    ニコラス フランクリンaa1097hero001
    英雄|24才|男性|シャド
  • 饗炎
    aa1825
    人間|10才|?|攻撃
  • エージェント
    aa1825hero001
    英雄|15才|?|ソフィ
  • 朦朧を討ちし者
    天野 恭一aa3836
    人間|36才|男性|生命
  • エージェント
    プリシラ イザードaa3836hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 爆裂爆闘爆装少女
    一色 綾香aa4051
    機械|17才|女性|生命
  • エージェント
    サイコロaa4051hero001
    英雄|6才|?|ドレ
  • そっと咲く優しさの花
    ルーフェルト・アリエルaa4335
    機械|21才|女性|防御
  • エージェント
    ハーベストaa4335hero001
    英雄|27才|?|バト
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中
  • 反抗する音色
    ‐FORTISSIMODE-aa4349hero001
    英雄|99才|?|カオ
  • 絶狂正義
    ユーガ・アストレアaa4363
    獣人|16才|女性|攻撃
  • カタストロフィリア
    カルカaa4363hero001
    英雄|22才|女性|カオ
  • クラッシュバーグ
    エリカ・トリフォリウムaa4365
    機械|18才|男性|生命
  • クラッシュバーグ
    ダレン・クローバーaa4365hero001
    英雄|11才|女性|カオ
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