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リゾートプールで行こう!
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最終発言2016/08/02 00:25:58
オープニング
夏である。梅雨も明けて気持ちがいい。最近週末の天気が悪いことが多いが、そんなことに関係なく楽しめる場所もたくさんある。
「あ、それ、割引優待券をいただいたんですよ」
HOPE受付のカウンター脇に置かれていたチケット束を見ていると、受付の女性が説明してくれた。
市内に数年前からあるあるリゾート施設のチケットだ。様々なアトラクション型温水プールの他に、温泉、リラクゼーションも充実した人気スポットである。ビュッフェ形式のレストランも評判がいい。家族、カップル、友達同士、すべてのお客さんのニーズに対して死角なしといえよう。割引なしでも価格がリーズナブルなので、どの年齢層の人にも利用しやすいのが人気の理由の一つだが、プールだけでもウォータースライダー、流れるプール、波の起きるプールがあって、長時間いても飽きないのだ。
そして、温泉があるのも魅力的である。一通り遊んだあと、温泉でのんびり汗を流して帰れるし、大浴場は洗い場も広いのでそう混雑することもない。露天風呂もあり、サウナは普通のもの他にミストサウナが人気だ。
さらに、温泉に併設したリラクゼーションコーナーは女性はもちろん男性にもよく利用される。エステ、あかすり、岩盤浴の他に整体マッサージが受けられるのだ。休日の家族サービスに来たお父さん達が、ここぞとばかりに受けに行くのだという。フィットネスもあるので、プールに入らずこちらで汗を掻いた後に温泉に入る人も多いそうだ。
「夏休みに向けてのキャンペーンを張っているそうで。屋内プールなので、天候関係なく遊べますよ」
その他、レストランでは期間限定のメイン料理やスイーツも出るという。ビュッフェスタイルなのだが、キャンペーン中のメイン料理黒毛和牛ステーキは、実演で目の前で焼いてくれるのだそうだ。そしてデザートも、桃のアイスケーキという珍しいものが出る。
「そういえば、あそこの施設の流れるプールで、スタートからゴールまでずっと手を繋いでいられたカップルはずっとうまく行くっていうジンクスがあるらしいですね。だから告白に利用する人も多いんだとか。まあ、某公園のボート的なものだとは思いますけどね」
そっちは残念ながら別れてしまうジンクスだが。
「もし気になる人ともう少し進展したいっていう人がいたら、チャレンジしてみるといいかもしれませんね。まあ、せっかくの夏ですし、友達同士でわいわい遊ぶのも楽しいでしょうし。よかったら、チケットお持ちくださいね」
解説
●目的
温水プール&温泉&リラクゼーション施設のあるリゾート施設で遊びます。
●施設概要
プール
ウォータースライダー、流れるプール、波のプールなど、たくさんのプールがあります。流れるプールのスタート地点からゴールまで手を繋いでいられたカップルは、末永く幸せになれるというジンクスがあるようです。
温泉
電気風呂、大浴場、露天風呂、サウナがあります。人気はミストサウナです。
リラクゼーション
マッサージ、岩盤浴、エステ、あかすり、フィットネスがあります。
レストラン
ビュッフェ形式です。キャンペーン期間中限定の黒毛和牛ステーキと、桃のアイスケーキがおすすめです。
リプレイ
●リゾートプール
「夏休みにプールへ行くのは久しぶりだな。満喫して帰ろう」
多々良 灯(aa0054)はうきうきしていた。
「ひゃっはーーー! プール!!! いつぶりかな? わたまる連れて海ばっかり行ってるからこういう施設あんま来たことねぇんだよな」
水澤 渚(aa0288)は、うきうきどころじゃないくらい浮かれている。
「おニューの海パンも買ったし今日は目一杯楽しむぞー!」
ちなみに渚の海パンの柄は、白無地でサイドに青のラインだ。灯のは、黒字に暗い赤のラインが数本入ったサーフパンツ。
「灯、流れるプールで渚くんとスタートからゴールまで手を繋いでいて貰えればそれで今日のぶんクリアですから頑張ってくださいね! 楽しみにしてますからね!」
リーフ・モールド(aa0054hero001)は、当事者同士にしかわからない発破をかける。彼女もレトロ花柄のビスチェ型ビキニを持参しているが、その気合いは水着ではなく別な方向に全力で注がれていた。
「今日は水着頑張っちゃった! イチゴ柄のフリルが可愛いワンピースだよ!」
実は巨乳を誇るティア(aa0288hero001)だが、水着は悩殺系ではなく可愛い系だ。
「色んなプールがあって楽しそうだな、全制覇を目指そう」
施設の案内パンフレットを見ているうちに、彼らの乗るシャトルバスは目的地の門をくぐる。
楽しい一日の始まりだ。
「行くぞ、渚!」
バスが止まり扉が開くなり、四人は一目散に中へ駆け込んでいった。
更衣室は、広くて使いやすい。遊ぶためには、まず着替えないと始まらない。
「……なんじゃおぬし。自分から男を誘ったから勝負に出たかと思うたら、随分と色気の無いものを着ておるのう」
飯綱比売命(aa1855hero001)が、橘 由香里(aa1855)の水着を見て呆れた声を上げた。
「う、うるさいわね。今回はいつもお世話になってるお礼よ。そういうのじゃないの」
由香里は少し前に大怪我をして、その傷跡がまだ薄っすら残ってるのを気にして競泳用に近いワンピースを選んだのだ。飯綱はまったく正反対で、体形を誇示したビキニである。
今回由香里達は、公私共に世話になった黒金 蛍丸(aa2951)と詩乃(aa2951hero001)を誘って来場した。詩乃共々着替え終わり、集合場所の広場へ行くと、蛍丸が待っていた。
「はわわ……た、橘さん、水着姿、えっと……その……とても綺麗です」
奥手な彼にしては、精一杯の褒め言葉だ。
由香里は狼狽えたが、それを彼に気づかれる前にとプールを指さす。
「折角プール来たんだから泳ぎましょう。私、水泳は得意よ? 負けないからね!」
「なんというか……健康的過ぎぬか……? もっとこう、ないのかぇ? らぶろまんすみたいなものは?」
「いいから! 行くわよ!」
「は、はい!」
由香里の方が少し年上なので、リードを取ろうとするところがあるのだ。蛍丸も素直に従い、二人はプールに向かって走っていく。
「詩乃どの。あれは見習っては駄目なぱたーんじゃぞ。友人こーす一直線じゃ。全く、あやつら小学生か」
飯綱は呆れている。せっかく男の子とデートなのに、清々しいくらい健全すぎる。
詩乃はそんな飯綱を見て、取りなすように提案した。
「飯綱さま、一緒に泳ぎませんか?」
「うむ、そうじゃな」
せっかくリゾートプールに来たのだ。楽しまなければ損である。
「リゾートプールなぁ。俺とメリオルには無縁の場所なんだが……まあ、今回は子供がいるからな」
綺月 緋影(aa3163)はサーフパンツに着替えて、プールをぐるりと見回す。面白いくらい単身の成人男性を対象外にした華やかさだった。彼は単身で来ていないのが本当に救いだった。
「こいつらが楽しんでくれりゃいいや。協力頼むぜ、メリオル」
「分かっております。緋影様こそおかしなことをなさいませんように」
英雄のメリオル(aa3163hero001)は、リゾートプールなのになぜかいつも通りのぱりっとした英国風執事姿だった。暑そうだった。しかしいつも通り緋影に突っ込みを入れるためのハリセンも装備しているので、特に触れないことにした。
「プールって初めてなの……沢山のお水……ちょっと怖い……溺れたりしない?」
亜莉香(aa3665hero001)は、蒔司(aa3665)の腕を抱えて、恐る恐るその背後から顔を覗かせている。胸元に大きめのリボンをあしらった、クロスデザインのビキニ姿でとても可愛らしい。
「亜莉香、怖いがやったら無理しなや……? 仕方ないのう……ワシが一緒に入っちゃるきに……」
蒔司サーファーパンツ型の水着に、身体に刻まれた沢山の傷跡を隠す為に、ハイネックのラッシュガードを着ている。エージェントはいつも生傷が絶えないので、こういうときちょっと困る。
「おっ。亜莉香。水が怖いのか? よーしよし。おっさんが手取り足取り腰取り教えてやるぞー」
そんな二人の間に、緋影が入っていく。楽しそうだ。
「って、綺月……さん、が泳ぎ教えてくれるんか?」
蒔司はちょっと戸惑った顔をしたが、亜莉香は嬉しそうだ。
「ひーちゃん、泳ぎ教えてくれるの? ……うん、手を離しちゃ、いやだよ……?」
「まあ、亜莉香がええと言うんじゃったら」
そんなこんなで、割と浅いプールに入っていく三人。足が着くという安心感があって、亜莉香も少しずつ水に慣れて笑顔になっていく。それを蒔司は眺めていたが。
「どうだ、楽しいか?」
「うん、お水気持ち良いね♪ 亜莉香もひーちゃんみたいに、いっぱい泳げるようになりたいな!」
足が着くという安心感があって、亜莉香も少しずつ水に慣れて笑顔になっていく。それを蒔司は眺めていたが。
「……しかしちょっと亜莉香に近過ぎ……触り過ぎじゃないかの……」
緋影と亜莉香が楽しそうなので、むむぅと唸る。それを緋影はめざとく見つけた。
「んー? 何だよ、蒔司。さてはお前妬いてんのか?」
「こら! どさくさで何処触りゆうんじゃ!」
亜莉香を支える緋影の手の位置にぎょっとして、思わずざばざばと水を割って駆けつける蒔司。それが、実は緋影の真の狙い(?)だった。
「そうかそうか。可愛いやつだなー。よし、抱っこしてやるぞー。はっはっはっは」
養い子とのスキンシップである。蒔司はじたばた暴れた。
「っていうか何故ワシまで抱えるんじゃ、ワシは一人で泳げると言うやろ! 妬いてなぞおらん!」
「あ? いい? 相変わらず照れ屋だな、お前。疲れたらいつでも抱っこしてやるからなー」
抵抗していると、亜莉香がちょんちょんと蒔司の腕をつついた。
「蒔司ちゃん、どうしてぷんぷんしてるの? 楽しーよ?」
首をかしげる可愛らしい仕草に、蒔司も大人しくせざるを得なかった。
「ね、あの滑り台でびゅーーんってするのやりたいの!」
そんな彼女が指さしたのは、ウォータースライダー。人気なので、かなり列ができている。
「ぬ、亜莉香、まだ水に慣れたばかりで滑り台は早かろうに」
走り出す亜莉香を、はらはらしながら蒔司は追いかける。
「手を振るからね、見ててね!」
緋影はそんな二人を見送り、ウォータースライダーがよく見える位置で待機する。やがて亜莉香の番になり、乗り口で手を振る彼女にひらひらと手を振り返してやった。
チューブ状の滑り台は途中で旋回しながら、かなりスピードが出る。さぶーんと景気のいい水しぶきを上げて、亜莉香が出口から飛び出してきた。すでに緋影は待ち構えていて、次の人が来ても危なくないようすかさず彼女を脇へどけてやる。
次に出てきたのは、蒔司。同じようにプール脇へ連れて行ってやる。
「蛍丸様! 私もウォータースライダーというのをやってみたいです」
蛍丸と由香里が仲良くしているのを見てほっぺたがぷくーとなっていた詩乃も、気を取り直して遊んでいる。向かったのは、ウォータースライダーの行列だ。プールに飛び出す頃には、機嫌も直っている。
「わー! ウォータースライダーとかあるじゃん!? よっしゃぁ! 滑るぜぇー!!」
ウォータースライダーでは、灯、渚、リーフ、ティアも遊んでいた。
灯は着水の際に鼻に水が入らないよう気をつけて、出口からプールに飛び込んだ。あれは地味に苦しいのだ。
「戦闘中とは違うスピード感が気持ちいいな」
何より、ただ楽しいだけというのがいい。
「やべえ、これ十回は楽しめそうだな。ケツ擦り切れないかちょい心配だけど滑っちまおー!」
渚は着水するのとほぼ同時くらいの勢いで、また最後尾に並びに行く。ティアも途中までは付き合っていたのだが、結局最後は渚がどぶんと飛び出してくるのを出口付近で見守っていた。十回はさすがに多すぎる。
「……ふぅ。さすがに十回はキツかったかな」
何かを悟ったような表情で、渚はみんなのところへ戻ってきた。
「まあ……滑りすぎた渚くんったら薄い本が分厚くなる感じじゃないですか……今日は盛り沢山ですね?」
リーフの謎の満足感は、渚にはよくわからない。
「全く、楽しいからって痛めるまで滑るとか……少し休むか? 大丈夫か?」
心配する灯に、渚は元気よく首を振った。
「よし、次! 流れるプール!! 灯ー! 流れるプール行こうぜ」
渚のテンションは下降することを知らないようだった。
●流れるプールのジンクス
流れるプールという言葉を聞いて、亜莉香がはしゃいだ声を上げた。
「流れるプールで手を繋いだまま最後までいられたら、幸せになれるんだって!」
カップル対応のジンクスだが、広く解釈すれば様々な関係性へのおまじないともとれる。そもそも「縁結び」の「縁」は別に結婚に関することだけではないのに、いつの間にか意味が狭まってしまっただけだ。だから緋影は、にこにこと彼女の言葉を聞いていた。
「皆で手を繋いで泳ご♪ めーちゃんの分は、身に付けてるもの貸してもらって一緒にいる代わりにすればいいと思うの」
蒔司はちょっと気後れした顔をしていたが、張り切る亜莉香を止めることはしない。亜莉香はメリオルからカフスボタンを借りて、大切に握りしめて持ってきた。
「ぎゅーってしとくからね」
三人は貸し浮きを借りて、ぷかぷかと手を繋いで流れ始めた。
流れるプールは、一部が施設の外周に作られている。かなり長いし速度もゆっくりなので、手を繋いだままゴールまで流れ続けるのは確かに大変だ。達成感もあるだろう。
「みんな手繋いで入ってるけどもしかして流れ早いのかな?」
並んでいる間にプールの中を見て、渚は首をかしげた。
「流れるプールで手を繋いでゴールしたらずっと幸せ……! ……渚、一緒に繋いでくれるかな」
ティアはそわそわしていた。だが、事態は斜め上の展開を見せる。
「灯、俺らも手握ったほうがいいのかな?」
「……」
「わかんねーけど、手繋ぐか」
「ああ……繋ごうか」
渚は浮き浮きしていて、灯の微妙な表情とリーフの嬉しそうな顔、そして周囲からのもやもやした空気には気づかない。
ティアの様子にも、気づかない。
「ん? ティア、モジモジしてどうした? トイレか? トイレならそこ曲がって右にあったぞ」
そして、ナチュラルにとどめを刺す。
「渚の馬鹿!」
「わっ?! なんだよ急に怒ったりしておっかねえなあ」
「知らない!」
ティアは列を抜けて走っていってしまう。
「あー……どっか行っちまった」
「私、行ってくるわ」
リーフが、すかさず追いかけていった。すぐに、とぼとぼ歩いているティアを見つける。
「ティア、水に事故は付き物」
その肩に後ろからぽんと手を置いて、リーフは優しく語りかけた。
「私達はいつでも助けに入れるよう、近くで見守っていましょう?」
英雄と契約者は、一心同体と言ってもいい。互いに支え支えられる存在だ。
ティアは、泣き顔のまま振り向いて、無言で頷いた。リーフはそんな彼女を支えるようにして、列に戻るため歩き出した。
「あの……! 流れるプールに行ってみませんか? その……橘さんとは、ずっと仲良くいれたらと思って……」
一通りいろいろなプールで泳いだあと、蛍丸は思い切って由香里を誘っていた。由香里はその時はジンクスを知らなかったので気軽にOKしたのだが、近くにいた飯綱が獲物を捕まえたような良い笑顔でジンクスについて伝えてきたため、表面はゆったり流れつつも激しく動揺していた。
蛍丸は、しっかりと手を繋いでいてくれている。それが嬉しくもあり、恥ずかしくもあり。二人とも運動神経がいいので、無意識に接近する他の人をうまいことかわしたりしているので、離されることもほぼなさそうな勢いだった。
しかし、そんな中で距離が近くなることがあり、その度ときめいてしまう。もっと近くに、と思ってしまう。そして、そんな気持ちが卑しいと自己嫌悪に陥ってしまうのが由香里の性分だった。奥手と言ってしまえばそれまでだが、必ずしもそれは悪いことではない。
そんな由香里を、蛍丸はしっかりと支えている。流れが速くなっているところでは、守っている。
由香里もいつしか、繋がる手に力を込めていた。
ゴールが近づく。華々しい歓声などない、ゴールテープすらない終着点。傍から見れば、それはただの水の流れだ。
しかし由香里にとっては、やはり一つのゴールだったのだ。
『いくら誤魔化したって……無駄よね。好きになってしまったんだもの……』
肌に心地よい水の中、繋いだ手がどこまでも温かい。
「手を繋いだままゴール出来ましたね。と、とても嬉しいです!」
顔を赤くし、にっこり笑って言う蛍丸に、由香里はこっくりと無言で頷き返した。
小さく微笑んで。
一方、灯と渚も貸し浮きで流れていたのだが。
「しっかし周りカップルだらけだな……?! てかほぼカップルばっかじゃねーの? なんか俺ら浮いてねえか???」
流れによって移り変わる人々は、右を見ても左を見てもたいてい若い男女の二人連れである。
「これじゃまるでホm……いやいやいや!!!」
焦りながらも、渚は手を離せない。これで手を離したら、ジンクスの内容的に人間関係にひびが入りそうな気がしてしまうからだ。
「……渚、受付の人から話聞いてなかったか?」
どこか遠い眼差しで、灯はジンクスを説明してやった。
「は……?」
「……リーフがさっきからガン見してるのはまあ、そういう事だ」
いつの間にか合流したリーフを目で示して、灯は力なく笑った。ティアはほっぺをぷくーと膨らませている。
「とりあえず、もうすぐ着くからこのまま行こう……」
しっかりと手を繋ぎ、ぷかぷかと流れていく二人。
いろいろありつつも、親しい人と仲良くありたいという彼らの願いは叶いそうだった。
●まったり
プール施設には、波の起きるプールもある。そこでまったりと過ごしている人々もいた。薄桃色のビキニでそのスタイルを惜しげも無さすぎるくらい披露しているのは、マリアンヌ・マリエール(aa3895)。ルフェ・ロジェレフ(aa3895hero001)は一見ごく大人しいワンピースタイプ水着だが、背面はけっこうきわどい。
「こういう施設に来るのは初めてなので楽しみですわぁ♪ ねぇ、マホちゃん♪」
というわけで幻・A・ファビアン(aa3896)とクュルプ=メァ=ナルファ(aa3896hero001)を誘ってやってきたのだが、スタイルもいい彼女達は衆目を集めまくっている。
「……ん……クュルプ……抱っこ……」
「このような娯楽は私も初めての体験ですね……ふふ、愉しませて頂きますわよ♪」
黒のスリングショット着用、髪の間や腰回りから触手を覗かせているクュルプは、ルフェをだっこして支えて優雅に波に漂っている。
「ほらほら、マホちゃん。えぇーい、ですわぁっ♪」
マリアンヌは波打ち際で、幻と戯れている。幻は腰周りがスカート状になった子供用ワンピース水着で、可愛らしさ全開だ。小柄なマリアンヌと愛らしい幻の水のかけっこ、追いかけ合ったりという光景は楽しげで微笑ましい。自然に人目を惹いてしまうので、幻は時々不満になる。
「マリィママは、今はボクだけのモノなんだからっ♪」
今日はせっかく一緒に遊びに来たのだから、視線だけでも割って入ってほしくないのだ。
「うふふふ、捕まえましたわぁっ♪ ……あらぁ?」
プールや海では、こういうお約束がある。
遊んでいるうちに、ビキニの紐がほどけてしまうと言うお約束が。
「マリィママっ!」
緊急事態に、幻は咄嗟に動いていた。一生懸命両腕を伸ばしてマリアンヌに抱きつき、露わになってしまった胸を隠す。この機転の利いた鉄壁ガードにより、窮地を脱したマリアンヌは、さりげなく且つ素早く水着を着け直した。
周りから落胆の溜息がしたとかしなかったとか。
「……んっ……そのまま、支えてて……そうそう……」
そんなちょっとした出来事にも構わず、ルフェはクュルプにだっこされて完全に脱力していた。波はゆらゆら気持ちがいいし、クュルプの体温もほどよく心地よい。これでリラックスするなと言う方が無理だ。
「ふふ、ルフェ様気持ち良さそうですわ……♪」
ルフェが沈まないようしっかり支えつつ、つい悪戯心からこしょこしょと彼女の身体を撫でるクュルプ。
「……これ、凄く良い……はふぅ……んっ……♪」
適温の水。ほんのり温かい手と触手の感触。それが絶妙な力加減で図らずもリンパの流れに沿って身体を優しく撫でていくのだ。気持ちよくないわけがあるだろうか。いや、ない。
クュルプに抱きつき、完全にくてっと力を抜いてしまうルフェであった。
そろそろプールに来て数時間、疲れも出てくる頃である。
「ほんまにこんなんで……大丈夫かのう」
無事流れるプールをクリアしたが、蒔司は何となく微妙な心持ちだった。そもそもジンクスなのだから、艱難辛苦を乗り越える系のイベントが起きるわけもないのだが、人とはそういうものである。緋影と亜莉香は、特に何の屈託も感じていない様子でまだまだ元気に泳いでいる。
「蒔司様、緋影様。お楽しみのところ水を差すようですが、あまり泳いでいると体力を消耗します。休憩しましょう。お茶を手配しておきましたよ」
三人で普通のプールで泳いでいるところへ、メリオルがやってきた。
「おっ。さすがメリオル気が利くねえ。また後で遊べるから蒔司も亜莉香もちょっと休め。な?」
「うん」
亜莉香は素直に頷いて、プールから上がる。蒔司も続いて上がり、メリオルが確保しておいてくれたスペースでゆったりと飲み物を堪能した。
特に顕著な自覚はなくとも、泳ぐのは全身運動なのだ。いつの間にかふんわりと眠気に包まれて、蒔司と亜莉香はすやすやと眠ってしまう。
「おや。蒔司様も亜莉香様も眠ってしまわれましたね。身体が冷えぬようタオルをおかけしましょう」
「あれだけ泳げばそりゃ疲れたんだろ。ちょっと寝かせておいてやろうぜ」
緋影は長いすに身体を預け、眠る二人を眺めた。
「しかしまあ、うちに来たばっかりの時は部屋の隅で固まってた二人がこんなに生き生きと遊んでるとはなぁ。いいことだ」
何となく、言葉が口に出る。メリオルは返事をしないが、それでいい。
「別に親になろうなんて思っちゃいない。俺だって親知らないしなー。……ただこいつらに、他人もそんなに悪かないって知って貰いたくてな」
メリオルは、やはり無言だった。黙ったまま、温かいお茶が差し出されただけだった。
「うにゃ……いつの間にか眠っちゃった」
しばらくして目を覚ました二人に、緋影はいつもの調子で話しかける。
「……おう。起きたか? 腹減ったろ。これからレストランでもどうよ。おっさんがご馳走してやるぜー。俺がっつり肉食いたいわ。お前たち何食いたい?」
●一日の終わり
この施設には、風呂もある。たくさん遊んだ身体を休めるためにも、プールのあとゆっくり入っていく人も多い。
「き、気を取り直して露天風呂ー!! ひゃー!最高だなっ!!!」
流れるプールで微妙な空気になってしまったのを掻き消すかのように、渚はことさら元気に振る舞う。
「温泉は入ったことあるけど露天風呂って初めてかも。空気が気持ちいいな」
「風情があっていいな。今日は寝落ちしないぞ」
灯は謎の決意表明をする。
リーフとティアは、風呂もだがリラクゼーション関係の方も気になっていた。
「ミストサウナが気になります。お肌がしっとり柔らかになるそうですよ」
普通のサウナよりも入りやすい感じもする。機嫌の悪いティアも誘い、入ってみる。リラックス効果もあるので、少しでも心穏やかになればと思ったのだ。彼女の不機嫌の半分に、責任を感じないでもなかったから。
「ボクはお邪魔虫なのかな……?」
怒りを通り越して、ティアはちょっと落ち込んでいる。乙女心は些細なことでも容易に変わるのだ。
リーフはことさら慰めることはせず、「エステもどうですか?」と誘った。沈黙が救いと癒やしになることも、人にはある。
ひとっ風呂浴びたあとは、ことさら空腹になる。その前にめいっぱい遊んだのだからなおさら。
レストランはビュッフェ形式。期間限定のステーキとデザートが特に人気を集めている。
「ごはん! 美味しいデザートもあるかなっ♪」
亜莉香ははしゃいでいる。デザートはケーキやアイスクリームなど各種あるが、やはり限定の桃のアイスケーキが目玉だろう。
「そういえば……レストランで桃のアイスケーキというのが出るらしいですよ。楽しみですね」
飯綱が肉ー肉ーと主張するので身体を流したあとレストランへやってきた蛍丸達一行も、メインの実演ステーキと桃のアイスケーキを楽しみにしていた。詩乃がこういう場所は初めてなので、蛍丸は優しくいろいろ教えつつ料理を取っていく。飯綱はとにかく肉を確保し、由香里はいろいろな料理を少しずつ味わう。
「今日は楽しかった?」
「はい!」
蛍丸の問いに、詩乃はにっこりと答える。和やかな食事だった。
近くのテーブルでは、緋影、メリオル、蒔司、亜莉香も食事を楽しんでいる。がっつり行く緋影と、デザート類に大喜びの亜莉香。そんな彼女を気遣う蒔司。メリオルはいつも通り、完璧に食事の補佐をしつつ自分も食べる。
「オススメなだけはありますわね。はい、マホちゃん。もう一口、あーんですわ♪」
マリアンヌは、幻に桃のアイスケーキをあーんと食べさせつつ愛でている。
「えへへ、美味しいね、マリィママ♪」
幻は嬉しそうにしていたが、食べさせてもらうばかりでもとマリアンヌにもあーんと料理を口元へ運ぶ。
「……んむんむ……いっぱい運動したから……食べない、と……」
「ええ、お腹一杯召し上がってください……♪」
ルフェはここでもクュルプの膝にだっこされ、ステーキを仲良く半分こして食べさせてもらっている。そこはかとなく和む光景だ。
穏やかに食事を楽しむ人々が大半だったが、ティアが機嫌を直してくれなくて渚は少し困っていた。
「機嫌直せよ、な??」
アイスケーキを取ってきて目の前に置いてみるも、効果がない。
「桃のアイスケーキなんかじゃ機嫌直さないんだからねっ!」
そんな二人を心配そうに見守りつつ、灯とリーフは食事していた。心配は心配だが、こういう踏み込んだ問題には口を入れるべきでないときもあるのだ。
「ビュッフェは色々食べれて楽しいよな」
「そうね」
せめて雰囲気をあまり暗くしないようにと、ステーキもアイスケーキもしっかり堪能する。周囲がいつも通り振る舞うことにも、ちゃんと効果はある。
実際そうしていると、完全にではなかったがティアも気を取り直して食事を始めた。お腹が膨らんだところで、彼らはレストランをあとにする。
「何だかんだで楽しかったけど……ティアが心配だなあ」
荷物を持って先にバスに乗ってしまったティアを、渚は追いかけた。灯とリーフは顔を見合わせ、ロビーで待つことにする。出発まではまだ時間があるのだし、ぎりぎりまでは大丈夫だろう。
「橘さん、今日はお誘い、ありがとうございました。一緒に過ごせて、とても楽しかったです」
レストランの外、不思議に人気のない一画で、蛍丸は改めて由香里に今日の礼を言っていた。
そして、切り出す。家まで送っていく、と。
由香里は、ずっと身につけていたハートのネックレスにそっと触れた。
蛍丸にもらったものだ。
ゆっくりと指先でなぞり、頷く。ありがとう、という言葉は、緊張しすぎて喉で絡まった。
それでも、蛍丸は笑ってくれた。はにかんで、嬉しそうに。
夏の楽しい一日は、それぞれの幸せで幕を閉じた。