本部

レッド・アンド・ブルー

小名川真言

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
7人 / 4~8人
英雄
7人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/08/02 13:52

掲示板

オープニング

●夕暮れ時、路地裏にて
「何度もやられに来るとはよぉー、ほんとお前らも懲りねぇよなぁ?」
「偉そうな口聞くんじゃねぇよ、リンカーなんぞ引っ張り出してきやがって」
 ひとけの無い路地裏で、にらみ合うガラの悪い若者達。
 片方のチームは全体的に赤を基調とした服装。もう片方は青で統一しており、それぞれのチームのシンボルカラーの様だ。
「コイツはれっきとしたうちのメンバーだからよぉ。な?」
 赤いチームのリーダーと思しき少年が、隣に居た少年の肩を叩きつつ問う。
「う、うん」
 多少困惑気味に答える少年。どうやら、彼はリンカーらしい。
「まぁ悔しかったら、てめぇらも助っ人を呼んだらどうだぁ? ヒャハハ!」
「あぁ、そりゃ良い案だ。先生、お願いします!」
「な、なん……だと?!」
 子供のケンカに親が出て大事に発展する様なケースは枚挙に暇がないが、この二つの不良少年グループもまた、それぞれに能力者をチームに引き込む事で、戦いを優位に進めようとしたのである。
「うちの若いモンが世話になったらしいのぉ」
 青チームが助っ人として呼んだのは、明らかにかたぎとは思えない強面の大人。顔にはいくつかの古傷が刻まれている。
「うっ……な、なんだよそれ。そんなのアリかよ」
 その余りの威圧感に、気圧される赤チーム。
「ど、どうせ見かけ倒しだろ。翔、やっちまえよ!」
「いや、無理だって! ボクはケンカ自体得意じゃないし」
 片や赤チームのリンカーは、先述の通り普通の――もっと言えば、見るからに気の弱そうな少年だ。
「さぁて……それじゃ、初めるとするか。全員まとめて相手してやるぜ?」
「ひ、ひいっ」
 ゴキリ、ゴキリと指を鳴らしながら、ゆっくりと迫る青チームの大男。
 赤チームの命運は今や、風前の灯火であった。
 
●エージェント達へ
「っつーワケなんだよな」
 オペレーターは事件の概要を一通り説明した所で、一拍置いた。
「悪ガキ達のケンカにリンカー、そしてヴィランまで介入して、大事になりそうなんだ。このままだと、悪ガキ達はヴィランの手先にされちまう危険もあるしな。手間だけど、アンタ達の力でどうにか収めて貰えないだろうか?」
 京都府某所、ひとけの無い路地裏に彼らは集結しつつある。
 いずれ仁義無き戦いの戦端が切られる事になるだろう。

「少年グループはそれぞれ十名弱で、各チームにリンカー二名で計二十人程だ。この二名の確保が最重要だな。少なくともヴィランに関しては、大人しく指示に従うとは思えない。戦闘は避けられないと考えた方が良いかもな。……一般の子供達に関しては、家に帰る様に言って、大人しく従わなかったら……その辺は現場の判断に任せるよ」
 ヴィラン一名以外は、犯罪歴の無い未成年だ。可能な限り、重傷者や死亡者を出すこと無く、事態を収拾したい。
「それじゃ、暑い中ちょっと面倒な任務ではあるけど、宜しく頼むよ」

解説

●任務目標
・不良少年グループのケンカに介入し、仲裁または鎮圧する。
・ヴィランを含む能力者二名の確保。

●標的
・加藤 竜一(かとう・りゅういち)
とあるヴィランズの構成員。
ただ、今回の一件に関しては、彼独自の行動で組織とは無関係と思われる。(いずれにせよ本人もそう主張するだろう)
不良少年達の争いに介入し、彼らをまとめて手駒に加える目的で彼らに接近した様だ。
2m弱程の身長と筋骨隆々の肉体に違わず、腕っ節自慢で肉弾戦を得意とする。

・秋島 翔(あきしま・しょう)
能力者ではあるものの、ごく普通(?)の高校生。
赤チームのリーダーが幼馴染みの為、断り切れずに助っ人になった。

・その他の少年達
カラーギャングの真似事をしている様な、中高生達。
ガラが悪く喧嘩っ早い。HOPE含め、権力や体制派に対しては反抗心旺盛。
ただ、今のところ特に違法行為に手を染めている訳では無い。

●現場
ひとけの無い路地裏。
当該少年達以外の一般人は存在しない。

ケンカの場所に選ばれただけあり、視界や広さ、足場も良好。

リプレイ

●赤と青と介入者
「……ん、ああいうの、かっこいい……と思って、やってるのかな?」
『そうね、年頃の男の子は体制側に反抗的になったりするのをカッコいいと思うのよ』
 夏の夕暮れ時。人の滅多に立ち入らない路地裏で、ガンのくれ合い飛ばし合いをする少年達が居た。
 傍から見れば、こんな暑い中良くやるなぁと言う印象しか無いのだが、当人達にとってはこれこそ青春であり、これこそが「カッコいい」事なのだろう。
「……ん、厨二病?」
『そんなトコね』
「……超ダサい」
 アリス(aa0040hero001)との問答の結果、そんな少年らをバッサリと切り捨てた佐藤 咲雪(aa0040)。
 自らも中学二年生の彼女だが、無気力を絵に描いたような性格の彼女にとっては、尚更少年達の行動が全く無意味に思える様だ。
「何か学生の頃を思い出すぜ」
『こっそり不良退治していた思い出ですわね』
 一方、赤城 龍哉(aa0090)は力無き者を助ける為だったとは言え、ケンカとは無縁でない過去を持つ様子。
「……待て、何を知ってる」
『秘密、ですわ♪』
 そんな彼の問い掛けに、ヴァルトラウテ(aa0090hero001)はクスリと笑って答えをはぐらかす。
「オラオラぁ、どうしたガキ共が? ブルっちまってんのかぁ?」
「う……っせーんだよ!」
 ガンの飛ばし合いとは言ったものの、実際には片方のチーム(青をチームカラーとする一団)が強面の大人を先頭にジワジワと圧し、もう片方(赤をチームカラーとする一団)はジリジリと後ずさりしている。
「全員土下座して、二度と俺達のシマに近づきませんって誓うなら、許してやっても良いぜぇ?」
「黙りやがれ! て、テメェらの助っ人なんか、うちのエースが片手で片付けてやるよ!」
「ええっ?! む、無理だってば」
「リンカーに不可能はねぇだろ!?」
「いや、相手もリンカーだし!」
 それぞれのチームの先頭に立っている(或いは立たされている)のは、両者共にライヴスリンカー。即ちチームの切り札である。
「馬鹿々々しい事だな……」
 普段から寡黙な御神 恭也(aa0127)も、少年らのやり取りを聴いて思わずそう呟く。
『正に虎の威を借りる狐って感じだね~』
 うんうんと相槌を打つのは、伊邪那美(aa0127hero001)。
 自分達で始めたケンカにも関わらず、いつしか呼び込んだ助っ人達頼みになってしまっている。それはいかにも滑稽で、格好悪い事なのだが、当人達はその事実に気づけていない様だ。
「背伸びをする子供と、大きいお友達といったところですか」
 子供達には呆れつつも、どこか慈愛を含んだ眼差しを、そして彼らを食い物にしようと言うヴィランには冷徹な視線を向ける国塚 深散(aa4139)。
『子供っても、君と同じか少し下くらいなもんだけどね』
 と、そんなパートナーに冷静なツッコミを入れる九郎(aa4139hero001)。
「少なくとも私は、ごっこ遊びを卒業してるわ」
 世界を守る為の戦いに身を置くエージェント達からすれば、少年らのしている事はごっこ遊びに過ぎない。
 問題は、そこに超常の力を持つ人間が介入してしまった事だろう。
「真面目な話、いいですか。……秋島くんも被害者ですよね、これって」
『んー……大体同じ感想か。ニボシ』
 ヴィランの男――加藤 竜一(かとう・りゅういち)は自分の意思で介入したが、片方の少年はいわば巻き込まれ型。なし崩し的に渦中に身を置く羽目になってしまったと言える。
 そんな彼――秋島 翔(あきしま・しょう)に同情的な見方をする新星 魅流沙(aa2842)に、相棒の『破壊神?』シリウス(aa2842hero001)も同意を示す。
「せっかく全員同時でも良いって言ってんのに、来ねぇのか? じゃあ、こっちから行くしかねぇかぁ」
 一行に赤チームが戦端を切らない状況に焦れたのか、加藤はついに戦闘態勢。
 張り詰めていた緊張は、ついにピークに達する。
「うっはー今時まだこんな事してるのいるんだーウケるー」
 と思いきや、全く緊張感とは無縁のリアクションを示す虎噛 千颯(aa0123)。
『ウケてる場合でござるか!! 早く止めるでござるよ!』
 マイペースな相方に、慌てて促す白虎丸(aa0123hero001)。頭にホワイトタイガーの被り物という出で立ちだが、実際には硬派で生真面目である。
「歯ぁ食いしばりな!」
「ひえぇっ!?」
 加藤が秋島少年に殴りかかろうとした、まさにその時――
「ちょいと待ちな!」
「「!?」」
「おうおう、うちのシマが荒らされると聞きゃあ……黙っちゃ居らんねぇなぁ」
『ドースル姐サン? 処ス? 処ス?』
 謎のべらんめえ調で登場したのは、鴉守 暁(aa0306)。と、そのパートナーであるキャス・ライジングサン(aa0306hero001)。
「……」
「ガキ共は脅すまでもねぇ。ケガしたくなかったらママのところにでも帰るんだな」
 ポカンと口を開けて居る彼らに、ビシリと言い放つ。
「……なんだこの嬢ちゃんは? まさかテメェらの助っ人か?」
「そんなワケねぇだろ! 女に助太刀なんざ頼まねぇよ!」
 しかし哀しいかな、中学生にしか見えない(事実中学生である)暁の決め台詞は、迫力には欠けたようだ。
「ウチらが誰かって? 通りすがりの……ケーキ屋さんよぉ!」
「ケーキだぁ? 今俺達はこのシマを巡って戦争やってんだ。怪我しねぇうちにお家に帰りな」
「アンタがリーダーか、オンナ相手にびびってんのー? 男なら一人でかかってこいよー」
 良い所を邪魔をするなと言う青チームのリーダーに、暁はあからさまな挑発。
 彼らの様な人種は、異性や仲間の前では、特に格好を付けたがる習性が有る。
「……おいおい、あんまりおイタが過ぎると痛い目に遭うぜ? こんな風に!」
 寸止めで怖がらせようと言うのか、拳を振るう青リーダー。
「キャスー任せたー」
「何っ?!」
 だが、暁はそれをヒラリと避けてキャスに丸投げ。
『アイヨー』
「ぐっ?! は、離せこのデカ女ぁ!」
 キャスは軽い調子で応えると、彼の背後を取って(胸の谷間に)頭をガッチリと捕まえる。僅か数秒の事である。
「リ、リーダー!?」
「手ぇ出すな! コイツは俺が……」
 仲間の助けを拒むリーダーだが、女性(の胸の谷間)に制されて居ては格好もつかない。
「ほーら、恥ずかしかろー」
「おいやめろ! 何すんだ!」
「意外と可愛い下着履いてるなー?」
「いやぁぁぁー!」
 その上、暁は彼のズボンをずり降ろしに掛かる。無慈悲である。
「……」
 リーダーの哀れな姿を目の当たりにし、絶句し立ち尽くすしかない青チーム。
「誰なんだあれ……?」
「さぁ、でもあっちを攻撃してるって事は味方じゃね?」
「だよなぁ?」
 一方の赤チーム。
 困惑気味に顔を見合わせつつも、状況の変化に希望を見出している様子。
「何だって構わねぇ、だったら今のうちに……」
「はいはーい、そっちの皆も此処までよ」
『危険な事はやめて、大人しく解散するでござる!』
 そんな彼らに言い聞かせるのは、千颯と白虎丸。
 エージェントらはあくまで公平、喧嘩両成敗である。
「男っつーか、粋がるんなら他人の力なんか宛にしねぇで自分だけの力で粋がれよ!」
「くっ、うるせぇ! 他人を引き込んだのはあっちのチームだけだ! っていうか、誰だか知んねぇけどよ……これ以上邪魔すんなら、怪我する事になっぞ!」
 千颯の言葉に、図星を突かれたと感じたのか、激昂気味に声を荒げる赤チームの少年達。
「ガキんちょが欲求不満だってんなら、おにーさんが纏めて相手してやるぜ? かかってこいよ! クソガキ共」
『千颯……相手は子供でござる。ほどほどにしておくでござるよ……』
「まとめてやっちまえ!」「おらぁー!」
 一度戦端が切られてしまえば、これまで尻込みしていた少年達もままよとばかり、エージェント達へ襲い懸かる。
『え~不良の皆さん、本当に無駄な抵抗は止めてお家に帰って下さい』
 掴みかかる不良達の手を紙一重でかわしながら、余りやる気のなさそうな説得を続ける伊邪那美。
『はっきりと言うとね ボク達には君達の攻撃は一切通じないんだよ。だから、無駄な事に体力を使うんなら家で勉強とか運動をしていた方が有意義な事なんだから』
「……お前は説得しているのか、煽っているのかどっちなんだ?」
 恭也も事も無げに攻撃を回避し、逆に相手の鳩尾や首筋を打って無力化してゆく。
『ねえ、何か随分と手慣れてない?』
「……気のせいだな」
「きゃー恭也ちゃん格好良い~!」
『伊邪那美殿ほどほどにでござるよ』
 そんな二人に、声を掛ける余裕を見せる千颯と白虎丸。
 彼らは共鳴するまでもなく、少年等を次から次へと伸してゆく。
「く、くそっ……こんな眠そうな女子に、負ける……なんて」
「……ん、対等でボコボコにする」
 こちらでは、俊敏さや力強さとは無縁に思える咲雪の容姿に騙された数人の男子が、返り討ちにされて脆くも崩れ落ちる始末。
「え、えっとこれは……ボクも参加しないと、だよねぇ?」
 そんな状況で、所在なさげに立ち尽くしているのは秋島少年。
「秋島くん……わかります」
「えっ?」
「あなたの境遇、すごく覚えがあります……」
 シンパシーに満ちた瞳を向けつつ、話しかける魅流沙。
「あ、アナタは?」
「気が付くと助っ人! 幹事! クラス委員って!」
 彼女もまた、その場の空気に流されて不本意な状況に置かれる経験が多い、いわゆる損な役回りらしい。
「……コホン。キツいこと言います。戦う必要なんかないですよ。こんなことで」
「でも、友達が……」
「あなたの見せるべき強さは、そんなことじゃないです。立場や人間関係を盾に、あなたを利用したり戦いを強要したり……彼らのやってることは、汚い大人と同じじゃないですか!?」
「そ、それは……」
 魅流沙の正論に、口ごもる秋島。
『コイツらは喝入れがいるクチだな。あとはオレらに任せて、お前はそこに座ってな』
「……わ、解ったよ」
 シリウスが重ねて告げると、秋島は俯く様にして小さく頷いた。

●拳と拳
「……ちっ」
 少年達が次々に伸されていくのを目にして、男は舌打ちを一つ。
 自分の目論見が達成困難と判断したのか、密かにその場を立ち去ろうとする。
『さっきの話の続きだけど……ただし、大人の場合はビジネスになるわ。危ない橋は下っ端に渡らせて、自分は安全な場所から指示するだけで利益はがっぽり……っていうのが基本的な手口ね』
「……ん、あのオッサンは……使い捨てのコマ、の勧誘?」
「くっ!?」
 逃げようとしているのもお見通しとばかり、聞こえよがしに話す咲雪とアリス。 
『そうね、対抗グループを潰して恩を着せて、危ない仕事を手伝わせて弱みを作って逃げられないようにする、って感じじゃないかしら?』
「……おっさんも、使い捨て?」
『多分ね、上からトカゲの尻尾切りされるのは同じよ』
「……てめぇら、何者だ……ただのお人好しリンカーじゃねぇな」
 見透かしたように会話を続ける二人に、加藤は鋭い視線を向けつつ問う。
「どこの誰か、なんてつまらない事聞いてくれるなよ。それとも挑戦されて断る理由でも必要か?」
「な、何っ?!」
 いつの間にやら、塀の上に仁王立ちする龍哉。ヒーロー然とした(再)登場っぷりである。
「全員相手なんて景気のいい事言ってたんだ。丁度いい、なら俺の相手をしてくれよ」
「ガキがぁ……あんまり良い気になるんじゃねぇぞ。ぶっ潰してやるぜ!」
 彼もまた、余り理性的なタイプでは無いようだ。龍哉の挑発にあっさりと乗って、大股で歩み寄る。
「この拳骨でな! 散々偉そうな講釈垂れてたんだ、今更武器無しじゃ喧嘩も出来ねぇなんて言わないよなぁ!?」
 いや、理性的ではないながらも、一定の打算は有る様だ。
 共鳴しての戦いとなれば、外見に似つかわしくない実力を持つリンカーも存在する。しかし肉弾戦となれば、やはり体格は圧倒的なアドバンテージだ。
「良いぜ、真向勝負と行こう」
 加藤に誤算が有ったとすれば、それは龍哉が生身の状態でも格闘技の達人であったと言う事。
「一撃でオネンネさせてやるぜ!」
 唸りを上げて繰り出される加藤の拳。直撃すれば、タダでは済まないだろう。が――
「なるほどデカい図体は伊達じゃねぇらしい」
「なっ?!」
 最小限の動きで攻撃を受け流し、拳の軌道を逸らす。
「だが、それで全力か?」
「がっ! はっ……」
 大きな空振りでガラ空きになった相手の腹部へ、叩き込まれる掌打。
「ちょいと悪乗りしてる程度の青少年ズを、むざむざ犯罪者にさせる訳にもいかねぇんでな」
「この、ガキがっ……!」
 よろめきつつも、龍哉の身体に掴みかかろうとする加藤。
 しかし龍哉はスッと上体を沈ませると、流れる様な動作で足を刈る。
「ぐはっ!」
「……」
 派手に転倒する巨躯のリンカーを見て、少年達も信じられないとばかりに唖然とした表情。
「おまえの得意分野でやり合ったんだ。文句は無いだろ? もっとも、俺の得意分野でもあるがな」
「ぐうっ……そ、そうだな。確かにその通りだ……」
 見下ろしがら言う龍哉の言葉に、ギリリと歯軋りをした加藤。だが、すぐに肩を竦めて観念した様子でそう応える。
「――なんて言うと思ったかよ!!」
 しかし次の瞬間、上体を起こすなりラグビーのタックルよろしく龍哉へ掴みかかろうとする。
 純粋な力勝負となれば、まだ勝機は有ると考えたのだろう。
「がひゅっ!?」
 その不意打ちが功を奏する事は無かった。深散の肘が彼の後頭部に直撃し、そのまま加藤を昏倒させたのだ。
「見なさい。貴方達が恐れや憧れを抱いていた相手も、この程度だったと言う事です」
 数で勝る自分達もあっさりとあしらわれ、今また頼りにしていたリンカーが三下悪役よろしく叩き伏せられたとあっては、少年達の中にこれ以上の抵抗を試みる者は存在しなかった。

●飴と鞭
『まったく……別にね集団になる事は悪いとは言わないよ? 異なる集団があれば、対立するのも仕方ないと思うんだ。問題は、自分達の手で解決しないで外部の力を借りた事なんだよ!』
 地面に正座した少年達へ、説教する伊邪那美。
「……お前は何を言ってるんだ?」
 彼女の、若干ピントのずれた説教に対し恭也は呆れ気味に呟くけれど、頭ごなしに全否定する訳では無い分、少年達も受け入れやすい部分もあるのかも知れない。
「若いのはいいことだけど、まずは自分の身体はってけ! そこのニボシだって、(芸人的な意味で)身体はって動画ランカーとしてのぼりつめたんだぞ!」
「……私の事はともかく。今回は、大事になる前でしたし通報はしませんが、二度とこんな事をしてはダメですよ」
 加えて、ギター片手に熱く告げるシリウスと魅流沙。
「「はぁーい」」
 警察や学校に知らされる事も無いと聞けば、少年らもひとまず安堵の様子で、素直に頷く。
「まぁ、あれだけ暴れたんだ。鬱憤も晴れただろうよ。二度とチンピラに頼ったりすんなよ?」
『くれぐれも、危ない事はしてはいけないでござるよ。怪我をしたら大変でござる』
 最後にしっかりと釘を刺す千颯と白虎丸。
「……なぁアンタ、強ぇな。アンタみたいなメンバーが居たら、戦うまでもないんだけどなぁ」
 と、先ほど投げ飛ばされた少年の一人が、深散にそんな声を掛ける。
「お洒落を覚えてから出直してきてもらえますか?」
「がっ!? ま、まぁそう言うと思ったぜ……」
 しかし彼女の答えは当然ながら無慈悲なNO。もっとも、向こうも玉砕覚悟であったろう。
「もし一緒に歩くのに恥ずかしくない格好であれば、デートのお誘いは歓迎するけれど?」
「なん……だと?! そ、そうか……まぁ、考えてみるよ」
 微笑んで思わぬ返答を返す深散。少年は顔を赤くしてぼそぼそっと答えると、足早に仲間達の元へ帰っていく。
「……九郎、言われた通りに答えましたが、こんなことで本当に彼らを更生できるんですか?」
『効果抜群だったよ?』
 九郎の入れ知恵とは言え、中々に罪作りな女である。
「畜生、これを解きやがれ!」
 一方こちらは意識を取り戻した加藤。
「うるさいと顔面にケーキ見舞うよー?」
「ひっ?!」
 ジロリと睨む暁の言葉に、大人しく縮こまる加藤。
「秋島、おまえも断る時はきっちり断らねぇと後悔する事になるぜ?」
『あなたと英雄の力は正しく使えば、愚神や従魔から人々を救えるのですから、ね』
「は、はい。反省してます」
 そんな加藤を縛り上げつつ、秋島少年に声を掛ける龍哉とヴァルトラウテ。
 彼も深く反省した様子で、こくりと頷く。
「秋島さ、せっかく力あるんだー正義の味方になってみないー?」
「それって……」
「HOPEに入らないかってこと。ねぇキャス?」
『うん、グッドアイディアネー』
 暁の言葉に、サムズアップして賛同するキャス。
「ボクがHOPEに……入れたらいいな。うん、目指してみようかな」
 二人の言葉に、秋島少年も背中を押されたようだ。
「その他にも、リンカー絡みの問題等で困ったことがあれば、気軽に相談してくださいね」
「え、あ、はい。有難うございます」
 深散からこっそり手渡される携帯番号。秋島少年は、なんだか顔を赤くしつつそれを受け取って頭を下げる。
「……ん、護送車来た……あれに乗って帰ろう」
 いつも通り、鞄を袈裟懸けにして歩き出す咲雪。ただでさえ大きめの胸が強調され少年達をどぎまぎさせるが、当人は全く無意識である。
『では、私達はこれで失礼致します。皆様もお気を付けて』
 礼儀正しく少年らに一礼し、後に続くアリス。

 不良少年にリンカーが介入した複雑な抗争劇は、エージェント達の活躍によって幕引きとなった。
 加藤は逮捕され、秋島少年はチームを脱退しHOPEのエージェントを目指すと言う。不良達も真の強さを目の当たりにする事で、喧嘩の不毛さを実感した部分が有りそうだ。
 かくして、無事任務を完遂した一行は、本部へ帰還したのだった。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 魅惑のパイスラ
    佐藤 咲雪aa0040
    機械|15才|女性|回避
  • 貴腐人
    アリスaa0040hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • ようへいだもの
    鴉守 暁aa0306
    人間|14才|女性|命中
  • 無音の撹乱者
    キャス・ライジングサンaa0306hero001
    英雄|20才|女性|ジャ
  • 魅惑の踊り子
    新星 魅流沙aa2842
    人間|20才|女性|生命
  • 疾風迅雷
    『破壊神?』シリウスaa2842hero001
    英雄|21才|女性|ソフィ
  • 喪失を知る『風』
    国塚 深散aa4139
    機械|17才|女性|回避
  • 風を支える『影』
    九郎aa4139hero001
    英雄|16才|?|シャド
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