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上流にダムはいりません
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相談とか打合せとか
最終発言2016/07/21 14:04:03 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/07/19 23:45:02
オープニング
●安いからって買えばええってもんでもない
「さて、乙姫(つばき)君、言い訳くらいは聞くけど?」
「全くもって、ないッス」
定休日の喫茶店。その床に自主的に正座をした青年――乙姫。そんな彼の隣には山盛りに積まれたソーメンの箱。量は勿論問題なのだが、それ以外に大きな問題があった。
「箱入りなんだからそれなりの値段するもんやろ。それが安値で売っとるなら、普通疑うやろ」
「そうッスね。でも、そもそもはマスターがそうめん焼きをメニューに組み込むからってーー」
「それはええとしても、数がおかしいやろ、数が」
「そうッスね」
はぁ、と大きな溜息を落とす男――猪野(いよの)は箱を一箱手に取り、その賞味期限を見つめた。
「賞味期限一か月前」
「ホント、面目ねぇッス」
土下座まで披露した乙姫に猪野は今日一番の大きな溜息を落とす。
「一日三食そうめんかな?」
「勘弁してください」
●つまり、こういうことになった
流石に自分たちでは対処しきれないなと思いつつも用途が思いつかない。そのため、猪野はそれらをカウンターの中に積み上げ、平常通り、店を開けていた。
カランカランとベルが鳴って、入ってきたのはクマーーを思わせるような大男。その背には小さな可愛らしい女の子がくっついている。
「お、クマさん、久しぶりですね。山から下りてきた感じですか」
「おう、ついさっきな。っと、そうそう、マスターにこれをやろうと思ってな」
「さいきんのしゅうかくはいのししばっかりなのですよ。おかげでまいにちまいにちいのししばっかりなのです。もう、あちきはあきあきしてるの」
クマさんこと熊王森家(くもうもりや)はドンとカウンターに袋を置く。そして、その熊王に続いて少女――ビーがこのクマがこのクマがとバンバンとその背を叩きながら、文句を猪野に告げる。
「おや、こんなにええんですか? いやー、ありがとうございます」
「いいってことよ。ビーも言ってるが、最近は猪ばっかりでな。うめーもんを食いてーわけよ」
中に入っていたのは猪肉。猪野はそれをさっさと備え付けの冷凍庫にしまい込む。その間にも熊王はメニューを眺め、どれにしようか頭を悩ませていた。
「そーめんやき! おすすめとかいているのですよ」
「そうめんか。そういや、そういう時期だな」
背中から膝に移動したビーはバンバンとメニューを叩き、そうめんに気づいた熊王もふむと頷く。そして、カウンターの横にあるそうめんの山に気づいた。
「……ちょいと聞くが、なんだ、その量」
「ははは、どっかのアホが注文しすぎてですね。やり場がないんですよ。賞味期限まであと一か月ですし」
口では笑っているが目は笑ってない猪野の言葉に喫茶店の奥で清掃をしつつ、ビクリと肩を震わせた乙姫に熊王は苦笑いを零した。ビーは既に頼みたいものを決めたようで熊王にこれこれと彼の胸を叩いて訴える。
「あー、わかった、わかった。マスターこれらを頼む」
「はいよ」
食事も飲み物も満足いくまで摂り終り、ふぅと息を吐く熊王とビー。そして、熊王が猪野にこう提案をした。
「それでそうめん流しはどうだ? 竹ならうちの山で準備できる。水もいい湧水がある。きっとうめーぞ」
「そーめんながし! あちきもたべたい!」
「……それはいいですね。私の友人とかも誘ってみましょう」
「おう、構わねぇが、オレは食うぞ!」
「あちきもくうぞ!」
ぽんと二人揃って腹を叩く様子に猪野は「望むところです」と笑みを浮かべた。そして、清掃していた乙姫は「……休日出勤ッスね、分かってるッス」と呟いていた。
後日、H.O.P.Eに椿祭りの際はお世話になった旨が書かれたそうめん流しへの招待状が届く。
解説
そうめん流しという名の早食いを楽しみましょう!
●そうめん
手のべそうめんだが、賞味期限一か月前という。量は山のようにある。
種類は白玉、薄紅玉、薄紅玉2、緑玉、黄玉、茶玉。白玉は通常のそうめん。薄紅玉は梅を練り込んだもの。薄紅玉2は辛子を練り込んだもの。緑玉は抹茶。黄玉は伊予柑で茶玉はそばとなっている。
●添え物
薬味は勿論、添え物として、錦糸卵や千切りキュウリ、千切りハムもお好みで。持ち込みも可。
●そうめん流し台
天然の青竹を使用し、流す水は湧水を使用。浄水装置も利用し、循環させるようになっている。長さは10mと5m。また、つゆが入った青竹のカップも用意されている。
※長い方では下流にいるとそうめん難民になる可能性大です。
●猪野&乙姫
喫茶店のマスターとそのバイト。以前H.O.P.Eには椿祭りの騒動についての依頼(祭りを邪魔するのは誰だ!?)を出した。今回はその礼もかねて、H.O.P.Eの人を招待。流すのは猪野、準備するのは乙姫が行う。
●くまんばち
下流にそうめんを流さないくらい食べる。大食いの早食いなので二人に挑むのも可。そうめんの合間に猪肉の燻製や干し肉も食べる。
・熊王森家。
無所属の能力者。通称クマさん。クマのように体格がいい男性でクマに間違われることもあるけれど、れっきとした人間。たまに従魔を相手しているだけのただの猟師である。大喰らい。
・ビー
クマさんの相方の幼女。小さい体のくせに吸い込まれるようにその体に食べ物が収納されていく。問題なく大喰らい。たまに人の食べる邪魔をする。
●その他
くまんばち、猪野達以外には彼らの友人が数人短い方でソーメン流しを行っている。
近くには風穴もあり、涼しい風が吹いてる。また、山の上ということもあり、景色もいい。
また、前作に関しては参加してなくても問題ありませんので思いっきりそうめん流しを楽しんでください。
リプレイ
●そうめん流しの前に
愛媛の地へと降り立ったエージェントたちはまず猪野が経営している喫茶店へと向かった。
「あぁ、ようこそ、愛媛に、かな」
そんな彼らを笑顔で出迎える猪野。その後ろにはミニバスに色々と詰め込んでいる乙姫の姿。そして、ふぅと一息を吐いているところを見ると丁度、詰み終わったようだ。
「すみません、猪野さん、お願いしていた件なんですが」
そういって、猪野に声をかけたのは迫間 央(aa1445)である。彼はそうめんの箸休めにと天ぷらをと考え、猪野に相談していたのだ。それに猪野は「準備は頼んである」と答える。央の予定では喫茶店を借りようと思っていたのだが、そうではないらしい。
「ほら、天ぷらは揚げたてがいいだろう? それなら、向こうで作った方がいい」
まぁ、お店を開けるからっていうのもあるんだけどね。と朗らかに笑う。
「ところで、バスみたいだけど、距離があるの?」
「あぁ、一時間ちょっとあるッス」
央の隣を確保し、尋ねたのは氷月(aa3661)。否、正確には氷月とシアン(aa3661hero001)の共鳴した時に現れる彼女のもう一つの人格ジーヴルである。そんな彼女の質問に答えたのはやれ一仕事終えたとばかりに流れ落ちる汗を拭いていた乙姫だ。
「……ちょっと、長いですね」
「申し訳ないね。でも、その分、空気も水も美味しいから」
楽しみにしてもらえると嬉しいなと告げる猪野の言葉に央はどちらかというと恋人の氷月の食欲が心配なんですが、と心内で零した。
そんな彼らの一方ではーー。
「確か経験を積みたかったのよね? 世界的に大きな事件が起きてるこの時期に重体って……どこのおバカ?」
「あー、うん、リサ、今日は涼しく綺麗な空気を吸いつつ流し素麺にしよう! 折角、来たんだし」
上辺だけ見れば穏やかな雰囲気のメリッサ インガルズ(aa1049hero001)。しかし、その口から出る言葉はぐさぐさと荒木 拓海(aa1049)に突き刺さる。それに拓海は苦笑いを浮かべながらも、折角来たんだからと宥めるもメリッサから放たれる空気が冷たい。
「……マイヤさん、話聞いてくれませんか」
すすすっと央に近づいたメリッサは彼の幻想蝶へそう声をかける。そして、それに対し幻想蝶の中から彼の英雄であるマイヤ サーア(aa1445hero001)は「あら、私でよかったら、いいわよ」と答えていた。
「今日は一人だから、恋詠がしっかりしなきゃ。大丈夫、だよね」
来れなかった英雄のためにもお土産話を持って帰るんだと意気込む壽染司 恋詠(aa1470)。ただ、交流の少ない恋詠は自然と緊張していた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ッスよ。それにそんなに緊張してたら、美味しいものも美味しくないッス」
そう緊張する恋詠に乙姫は人懐っこい笑みを浮かべ、彼女の頭をポンポンと撫でる。そして、緊張を解せるようにとエージェントたちとは別の参加者について、面白可笑しく語った。
その後、喫茶店からミニバスに乗り込み、そうめん流しの会場へ向かった。勿論、席順では央の隣にジーヴルが座り、拓海の隣にはメリッサが座る。恋詠の隣には引き続き、参加者の話をする乙姫が座り、穏やかな道中となった。そして、会場に到着すると既に寸胴鍋やざる、流し台などが準備されていた。
青竹で作られた流し台は長いものと短いものに分けられているが、どちらとも綺麗な水が流れ落ちていた。
「おう、待っとったが」
「じゅんびはできているのですよ」
仁王立ちをする熊――もとい熊王と熊王の真似をして仁王立ちをする少女――ビー。
「ホントにクマさんだー」
そういって熊王を見つめる恋詠。それにちらりと熊王は恐らく元凶であろう青年を見るが、青年はスーッと目をそらすと「これからいっぱいそうめん茹でるッス。ワー、タノシミダナ」と言って、逃げ出した。
「嬢ちゃん、確かに最近はワイルドブラッドとかいう連中もいるが、オレは違うからな」
「これ、がいけんににあわず、にんげんなのですよ。ほんと、いまでもしんじられないのです」
苦笑いを浮かべ、頬を掻く熊王にやれやれと肩をすくませるビー。その間にも猪野はエージェントたちに熊王作成の竹の器を渡す。そして、めんつゆはこれでと説明をした。
●上流にダム建設?
その他の猪野の友人も揃うとそうめん流しがスタートした。エージェントたちは一先ずは長い方で箸を持ち、構える。
「そういえば、お隣が噂の彼女さん? 初めましてクールビューティさんだね」
いつ聞こうかと悩んでいた拓海は丁度、隣に央が来たことにより、声をかけた。そして、後半には「……羨ましいよ」と耳打ちする。それに「荒木さんにもきっといい人がいますよ」と告げた。しかし、フッと自分の隣から気配が消えたなと横を向けば、流し台の下流に座るジーヴル否、共鳴を解いた氷月が座っていた。そして、徐に竹に手を伸ばす。
「……氷月? 待って! 何、竹外そうとしてるの!? 下流で口開けて待ち構えないで! ずぶ濡れになるから! どんだけ水飲むつもりなの!?」
竹の先に口を付けようと大きな口を開けた氷月に央は慌てて、自分のカップを置き、氷月の許へと駆け寄った。
「水~……ん、ダメなの……央?」
「確かに、湧水だし美味しいと思うけど、今日食べに来たのはそうめんだろ」
数度、一緒に出掛けようと試みたが上手くいかずようやっとできたお出かけ。それもあってか、二人は意気込んでいた。そのため、氷月は央の言葉に素直に頷き、改めて、流し台の横に立つ。そして、央にそうめん流しとは、を習う。
「いいなぁ、ホント羨ましい」
央と氷月のやり取りを微笑ましくも羨ましそうに眺めていた拓海。それと同時に彼は素はああなんだなとうんうんと頷く。そんな拓海に気づいた央は「え、あ、いや」と慌てたかと思うと頬を掻き、苦笑いを零した。
「俺自身は、元々こういう……朝が弱くて毎朝、仕事辞めたいと思ってるような緩い性格でね。普段のは、公私の《公》で作ってるだけというか……あー、正直、マイヤや氷月以外には、出してなかった顔なんで、あまり他で話すのはカンベンって事で。代わりに今日からは拓海って呼ばせて貰おうかな。改めてよろしく」
「あぁ、改めてよろしく」
新たな一面が見れて良かったとばかりに笑顔を浮かべた拓海につられて央も笑み浮かべた。そして、「央?」という恋人の声に呼ばれ、一先ずこの話はこれくらいでとそれぞれの場所に戻った。
そして、ふと拓海の目にジーッと箸を片手に流し台を見つめる恋詠の姿が入った。
「恋詠ちゃんは一人で参加? ならオレ達と一緒しよ」
「拓海、ナンパはダメよ」
「ナンパじゃないよ。ちゃんとオレ“達”っていったよ」
恋詠に何かしそうだったら、わたしが止めなくちゃとしっかりと拓海の怪我の部分を頭に入れる。それを感じ取ったのかゾクッと背筋が冷えた拓海。
「さぁさぁ、流すよ~」
そういう猪野の声が聞こえたかと思うと流し台の上を次々とそうめんが流れ落ちる。
「こうやって、取るんだよ」
流れてきた一玉を綺麗に取り上げ、自分の持ってきた自家製のそうめん汁に浸し、口に運ぶ。それを見た恋詠はなるほどと頷くと流し台を真剣に見つめ、流れてくるタイミングで箸を突きさす。しかし、箸の間をするりとすり抜けていく。
「……あ」
下流にいったそれはどうなるのだろうと目で追えば、下流で食べていた氷月の口に流れるように入っていった。
「スッと入れてとるのが難しかったら、こうやって箸を先につけておけばいいですよ」
ほら、と言って彼女に手本を見せるメリッサ。それを手本に恋詠は再挑戦する。
そして、変わり種のそうめんも楽しんでいると一人一人の隣に小さな竹かごに盛り付けられた夏野菜の天ぷら。
「ほい、天ぷらいっちょ上がりってな」
エージェントたちが食べている間に央の持ってきてくれた夏野菜を天ぷらに揚げたのは熊王。その手伝いとして皆に配り歩いたのはビー。中々、いい出来だという彼の言葉にエージェントたちもだが、知人たちもそうめんを置き、天ぷらをつまむ。
「うん、美味しいですわ!」
「本当、美味しいわね」
共鳴を解いたシアンもそうめんを食べつつ、天ぷらを味わう。その隣では珍しく幻想蝶から出てきたマイヤも同じように舌鼓を打っていた。
「……水着とか欲しくなりますわね」
「水着……ね。今度見に行きましょうか」
こういう水着がいいですわというシアン。それにこういうのもあるわとマイヤ。そして、そこにメリッサも混ざり、雑談に花が咲く。
一方で上流には熊王とビーのくまんばちコンビが陣取ったため、下流にそうめんが流れなくなる。
「凄い食べっぷりだね。オレも負けてられない!」
そういって、熊王の隣に陣取り、挑む拓海。そして、一際赤い麺を口に放り込むとゴフッとえずき、鼻からプランと赤い麺がこんにちはする。
「……ぷぷ、何してるの……もぅ」
「傷が、傷が、疼くぅぅ」
「あれだけ、盛大にやればそうなるわよ」
ほら、さっさと鼻から出てるのを回収してとティッシュを渡し、替えの薬味も用意する。それに拓海は礼を言い、「いや、吃驚した」と感想を零した。その一方で「んー!!!」という声なき悲鳴も上がっていた。
それには女性陣が大変、大変とその声の持ち主の周りに集まった。
「お水ですわ」
「あら、大変ね。口直しにカボチャの天ぷらでもどう?」
「拓海、ほら、あーん」
「ちょっと待って、なんで、オレに」
「ほら、余らせるのも悪いでしょう。それに拓海、辛いの好きよね」
「ぁ、あーん」
さっき食べたんだけどなぁと思いつつ、今度はきちんと咀嚼する拓海。それを見ることなく、シアン、マイヤ、メリッサは恋詠を宥める。
「氷月、やるの?」
「ん、食べてくる」
そうめん流しの食べ方をマスターした氷月は上流でダムの如くそうめんをとどめるくまんばちに勝負を挑んだ。綺麗にせき止められているかと思えば、どういうことか悲劇しか生まない赤いそうめんは下流へと流れてくる。それをそっと猪野が回収すると「はい、乙姫くん、口開けて」「え、ちょ、いや」という会話が聞こえたかと思うとごほごほと噎せる声を風に乗って聞こえてきた。
「そういえば、マイヤ、ドレスはーー問題ないみたいだな」
「えぇ、汁一つ飛び散ってないわ」
純白のドレスだから、小さなものであっても目立つだろうと央が心配して声をかけるものの彼女のそのドレスは純白のままだった。
「どうやったら、そんなに綺麗に食べられるんですの?」
「どうって、普通に食べてるだけよ?」
そういって、ちゅるんとごく普通にそうめんを食べるマイヤにシアンは「凄いですわ」とただただ感想を零した。
●収まりは程よく
好き好きに食べ、一時経つと氷月は再び共鳴し、ジーヴルになっていた。そして、涼しい風を噴く風穴の傍に央と一緒に来ていた。
「さっきの流し素麺にも使ってた水だよ。山間だと水道の蛇口から天然の湧き水が出たりするんだ。冷たくて美味しいと思うよ」
「水、ね……確かに美味しいわ、氷月もずっとがぶ飲みしてたし」
スキットルに汲んできた湧水をジーヴルに手渡せば、彼女はそれを一口飲み、くすりと笑みを浮かべた。
「もう少し、こういう時間があるといいわね」
「あぁ、そうだな」
央の肩に頭を乗せ、穏やかな声でいうジーヴルに央も頷く。
そんな恋人たちの時間がある一方、そうめん流しの会場は未だそうめんを食べる人の姿もあった。
「では、恋詠、流します!」
「おう、来い、嬢ちゃん」
「つぎこそはあちきがとるのです」
「いやいや、オレも負けてらんないよ」
「もぅ、また無理をして」
おなか一杯になった恋詠がそうめんを流してみたいといいだし、まだまだ食べる気でいるくまんばちに拓海は挑んでいく。そんな拓海を見て、笑みを浮かべつつも心配するメリッサ。やはりというか大きく動くと傷に響くようで時折、そうめんを放ってぐぉおおと唸っていた。
「いきまーす」
「待ってました」
くまんばちたちのところにある程度流すと次に猪野の友人たちのところにも流しに行く。歓迎してくれる様子に恋詠はふふっと嬉しそうに笑いながら、次々とそうめんを流していった。
そうめんもなくなり、エージェントたちは食べさせてくれたお礼とばかりに片づけを手伝う。
「そういえば、この竹はどうするんですか?」
「あぁ、それは山の動物たちの水飲み場に再利用したり、あとは籠やおもちゃになったりだな」
さすがにこのままポイはねぇという熊王に猪野がすかさず、「クマさんは何も考えてなさそうに見えますからね」といって笑う。それに熊王は「マスターは結構ずばずば言うな」と苦笑いを浮かべた。そんな一方でビーは干し肉を食べながら、参加者たちと一緒に寸胴を洗ったりなどしていた。それを見た、乙姫に「どんだけ入るんスか」と正直、疑問に思った。
「ホント、ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ、参加ありがとうね」
片付けも終わり、再び一時間の道中を終え、喫茶店に戻ってきたエージェント達。改めてとばかりにメリッサがそう挨拶すれば、猪野も礼を告げてきた。そして、エージェント達は帰路へと着くのだった。
「……あ、私、怒ってないわよ」
「ああ、気づいてたが……リサが楽しそうだとオレも嬉しいからさ♪」
「また無理して……バカ」
そういって、傷口をそっとメリッサは小突く。それに拓海は眉を顰め、「痛い」と言うが、その口元には笑みが浮かんでいた。