本部

雨の植物園、採集企画

時鳥

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2016/06/21 18:37

掲示板

オープニング

●採集企画
 様々な戦線が繰り広げられる中、緊張を余儀なくされているエージェント諸君の息抜きを増やそうとH.O.P.Eでも日夜企画が色々と立てられている。
 その中の一環で、研究室から生物採集の依頼、という体で植物園で散策はどうか、という企画が持ち上がった。
 決められた数の生物の採集後、残りの時間は自由にしてもらう予定だ。
 今、その植物園では梅雨の季節に相応しい紫陽花が一面に咲き乱れているエリアが人気だ。他にも温室で季節に関係ない様々な花を見ることが出来る。
 興味がある方は、H.O.P.E研究室からの募集を参照の上、応募頂きたい。

●H.O.P.E研究室からの募集
 研究に必要な生物の採集へ協力のお願い。
 採集する生物は梅雨の時期によく出てくるカエルやカタツムリ、ミミズ。
 場所はH.O.P.Eと提携を結んでいる植物園。
 植物園には屋根のない区域もある為、雨具の貸し出しも行っている。個人での持ち込みも可。
 休園中での仕事となる為、一般人はいない。
 当日の天気は雨のち晴れの予定だ。
 
 必要な生物の数
 カタツムリ×30
 カエル×20
 ミミズ×50
 他にも好きに採集して構わない。全員で最低この数を揃えれば依頼完了となる。
 ただし、植物園の植物は傷つけないこと。

解説

●目的
・必要な生物の採集
 カタツムリ×30
 カエル×20
 ミミズ×50
上記の数を植物園入り口で待機しているH.O.P.Eの研究員へ手渡せば依頼完了となる。採集に必要な道具は全て貸し出し持ち込み可。
・散策でおしゃべりをしたり、雨を楽しんだり、昆虫採集をしたり、好きに過ごすこと。

●植物園について
 温室と外のエリアが存在する広い植物園。 
 たくさん咲き乱れる紫陽花のエリアがこの時期人気。
 池や雑木林などもある。
 ※OPに書かれていないエリアでも植物園にあるようなエリアであればプレイングに書いて頂いて構いません。

リプレイ


「蛙や何かを捕まえながらの植物園鑑賞か。ちょっとした息抜きだね♪」
 植物園の受付で研究員から説明を聞いた後、受付から繋がる温室へと足を踏み入れながらアンジェリカ・カノーヴァ(aa0121)はご機嫌な様子で隣にいるマルコ・マカーリオ(aa0121hero001)に話しかけた。
「一応仕事だぞ」
「解ってるよ。マルコさんはミミズの捕獲頼んだよ!」
 アンジェリカは普段のゴスロリではなく汚れてもいいようにジャージを着ており、その上にカッパを羽織って雨にぴったりの長靴を履いている。網を入れたバケツを手に彼女は温室から外のエリアへ飛び出した。その背中について行きながら、マルコはやれやれと苦笑する。
「先ずは蛙かな。やっぱり池の方にいるのかな?」
 案内看板に辿りついたアンジェリカが目的地を定めるようにゆっくりと視線を巡らせる。すぐ近くに池があるようだ。雨がボツボツ音を立てて降るのも気にせず目的地まで元気に走り出した。
「蛙や蝸牛は平気なのか?」
「イタリアでは蛙も蝸牛も食材の範疇だからね。特に苦手って事はないなぁ。日本の蛙や蝸牛は食べられるのかなぁ」
 すぐに池に到着し、辺りをきょろきょろ伺っているアンジェリカ。マルコが問いかけると、彼女は流暢に話しながら返した。だが、同時にカエルを見つけると「えいっ!」と声高々に素早く網を振り降ろして捕獲する。
 その俊敏な動きにマルコが感心しているうちに、アンジェリカは次のターゲットを追う。
 ゴツンッ!
 痛そうな音がしてアンジェリカがその場に尻もちをついた。カエルが次にどこへ逃げるか、回避予測を立てて先回りしようとした最中、同じくカエルを捕まえることに熱中していた十影夕(aa0890)とぶつかったのだ。お互い周りが見えてなかったらしい。マルコがアンジェリカを助け起こす。
 お互いに起き上がり、顔を合わすと慌てて謝る。
「一人なんだ?」
「シキとは別々だよ」
 アンジェリカはきょろきょろと辺りを見回し他に人影がないことを悟ると、夕に問いかけた。一つ頷き淡々と答える夕。
「雨の日に窓に張り付いてることはあったけど……ふつうはどこにいるんだろ?」
「カエルは、みずべのしょくぶつをさがしてみなさい」
 と、最初にシキ(aa0890hero001)に疑問を呈した時、シキは案内看板を指さしてそう言った。そこで夕はシキと別れて池までやってきたのだ。
 そもそも夕はシキが来たいというから来たものの彼は虫があまり得意ではない。ミミズは虫じゃないのかもしれないが、ミミズも苦手だ。だが、カエルはかわいいから好きなのだ。よって池まで一人でやってきた。
「ふーん、それならボクと一緒に捕まえていいよ!」
「え……うん」
 アンジェリカはふふんと鼻を鳴らして笑うと夕の手を取って一緒にカエルを網で捕獲し始めた。その様子をマルコは微笑ましげに見守っている。
「フリットにすると美味しいんだよね♪」
「え、食べるの?」
「日本でこういう事言うと引かれちゃうけどね」
 カエルを大量に捕獲したアンジェリカがほくほく顔で言うと夕は表情はほとんど変わらないものの少しばかり驚いた様子で問いかけた。それに彼女は笑って頷く。
 そんな三人の近く、同じく池のほとりに氷月(aa3661)とシアン(aa3661hero001)、迫間 央(aa1445)がやってきた。央の英雄、マイヤ サーア(aa1445hero001)は幻想蝶の中から三人を見守っている。先ほど、温室から傘を差し、外へ出る前――。
「ドレス姿のマイヤに土弄りとか流石にさせらんないもんな」
「雨も降ってるし……私は少し温室の中を見れればいいわ」
 ドレス姿のマイヤは流石に雨の中、出てくるわけにもいかない。そもそもマイヤは元からあまり幻想蝶から外へ出てくることはないのだ。
「シアン……ムリ、平気だっけ……?」
「……無理ですわ、ミミズを取りますわ!」
「その後……ゆっくりする」
「じゃあサクッと終わらせますわ、氷月♪」
 氷月とシアンも研究員の説明にお互い役割分担をしてやる気は満々だった。しかし、池に来る前にシアンがカタツムリ遭遇しびびる。そのカタツムリを氷月が掴み、篭の中に収めた。
「……氷月は全然平気なんだな。そして意外な事にシアンさんの方がダメなのか。カタツムリなら殻の方持てばミミズよりはマシな気もするんだけど……人それぞれか」
 シアンの様子にそんなことを零していた央だったが、いざミミズ採集となると、つい苦笑いが出てしまう。
「子供の頃は全然平気だったのにな……多少抵抗を感じるな……」
「カタツムリは少々無理ですけど、それ以外なら……よいしょーですわ~」
 央が草の根本を軽く掘ってミミズを探している横で、7~8匹をすぐに集めてケースに入れるシアン。その様子に央は改めて、人それぞれ、ということを噛み締めなおしていた。
 そんなちょっと前までのやり取りを思い出しながら央は猫じゃらしを揺らしていた。猫じゃらしをハエに見立て先端に僅かな毛を残して殆ど毟ってある。これでカエルを釣ろうというのだ。一匹のカエルがその猫じゃらしを目で追う。かと思うと密集している葉の間からいくつもの目が飛び出した。
「うわ――っ!?」
 次の瞬間、数匹の大きなカエルが央に跳びかかってきて、思わず後ろに転倒する。
「央……っ」
 その声に驚き、氷月が慌ててしゃがみこみ彼の様子を見る。央は自分の顔面に飛びついたカエルをどかすようにケースに入れてから顔を拭った。
「びっくりした、大量だったな」
 他のカエルも逃げる前に捕まえてからははっと笑う央に、氷月も小さく笑みを浮かべて笑い合った。
 氷月を植物園へデートとして誘ったものの誘うのに必死で中身をちゃんと確認しなかった為、後悔していた央だったが、それも杞憂のようだ。



「話には聞いてたけど、雨が多いね」
「そうだねぇ。それに、道具を使ってまで出歩く逞しさには関心さね」
 黄色いレインコートを着たランカ(aa3903)と茶色い雨傘をさしているハイドラ(aa3903hero001)は紫陽花エリアを歩いていた。ハイドラは、悠久を生きる地竜の思考から活動しづらい日はじっとしていればいいのにと思いつつも、傘をさしての外出や、植物園に物珍しさを感じて辺りを引っ切り無しに見回している。
「建物ばっかりで自然がありゃしないと思ったけど、人間も感じる事は一緒なのかね」
 植物園の数多くの植物を見回してハイドラは零した。研究目的もあるんだろうけれど、やはりここまで自然の植物達を保護しているのには感じるものがあるのだろう。
 二人ともそれぞれ採集したものを入れる篭を2つずつ借りて下げている。
「なんだか不思議な依頼だね。普通の人に頼んだ方が、お手軽なのにね」
「慰安企画みたいなもんらしいからねぇ」
 紫陽花エリアに差し掛かり、案内看板を見てそのまま雑木林の方角へ歩を進めながらランカが零した言葉にハイドラが答える。
「それならもっとガンバってる人達向けだったのかな。悪い事しちゃった?」
「その辺は偉い人が考える事さ。今は楽しみなよ」
 和やかに会話をしながらも紫陽花の葉の上によじ登っているカタツムリを「めっけ!」と捕まえ籠に入れるランカ。その二人が歩いている先に一人の子供。少年か少女かは分からない――シキが紫陽花を見入っていた。
「みごとな、あじさいだね」
「あれ、一人?」
 そんなシキにランカが声をかける。振り返るシキ。花につられつつ、シキは夕が苦手なミミズをとるのだ、とランカ達に話す。
「つちが、やわらかそうなところをさがせば、みつかるだろう」
 そう言ってシキは雑木林の方を指で示す。ランカ達も丁度このままカタツムリやカエルを軽く集めながら雑木林に向かいミミズを取る予定だった。せっかくだからと、三人で一緒に雑木林へと向かう。
 そんな雑木林へ別方向から向かっているのは散夏 日和(aa1453)とライン・ブルーローゼン(aa1453hero001)の二人だ。
「植物園……屋敷には無い花もあるだろうか」
「ラインが依頼を持ってくるなんて珍しいと思っていましたが成程、こういう事でしたのね」
 黒い雨傘を差し、一つの傘に入りながらは二人は歩いていた。
「あぁ……すまない」
「あら、謝る事はありませんわ。余り自主的ではない貴方が積極的に選んだ仕事ですもの。寧ろ喜ばしい事ですわ!」
「いや、戦う仕事ではないし日和には物足りないだろう」
「……ライン? それはどういう意味です?」
 にこにこと微笑まし気に言う日和に軽く頭を横に揺らすライン。その一言にすぐ日和はじと目になる。
「とにかく、採取はミミズ、カエル、カタツムリ……ミミズは私はちょっと」
 研究員から受けた説明を思い出しながらミミズ、に対してため息を逃がす日和。その様子にそわそわとして様々に咲く花を楽しんでいたラインが驚いたように振り向く。
「え……君は剛胆だから、虫くらい握り潰しますわ! とか言って平気だと思っーー痛っ!す、すまない」
 つい余計な一言を口にするラインを日和は引っ叩いた。
「全く貴方は相っ変わらず所々失礼ですわねっ。取り敢えず規定数採取出来たら渡しに行きましょうか」
 他愛無い会話をしながら最後のミミズを取った後のことを決め、雑木林へと二人は足を踏み入れた。
 雑木林の中、麻端 和頼(aa3646)と五十嵐 七海(aa3694)が、なぜかジェフ 立川(aa3694hero001)と華留 希(aa3646hero001)に遠くから見守れる形で採取を行っていた。いや正しくは見守っているのはジェフのみである。ジェフが忍者依頼から七海の様子が変なの察し、原因と思える和頼との蟠り解消を狙って二人にゆっくりと話させるべく希に「……希、向こうで話したい。来てくれるか」と声をかけ二人から引き離したのだ。
「喧嘩にならなきゃ良いが……」
「ヤーダーッ!! 七海はアタシのー! ずっと楽しみにしてたのにっ! 話ないなら戻るネ!」
 ちらちらと二人を確認し、一向に話そうとしないジェフに、希は七海の元に行こうとする。がジェフは希の腕を掴んで引き留めた。そして、真剣な表情で諭す。
「……このままだと常時別行動となるかもだぞ? 少し様子を見ろ」
「……う、うーん……ソレは……困るケド……でも……! 和頼とそんなに仲良くしなくてイイから!」
 うぅっと唸りながらもしぶしぶ承諾をしつつ希は自分の意見を主張した。そんな二人の不安を知ってか知らずか、和頼と七海は仲良く並んで採取をしている。和頼の昆虫雑学を感心しながら聞く七海。
 木の根を痛めぬよう腐葉土を手で掻分け捕ったミミズを和頼は見比べる。
「……太って喰いでがありそうだ……この三種じゃ、どれが食いてえんだ?」
「……食べることばっかり♪ ……強いて言うなら蛙か蝸牛かな?」
 七海は笑いながら、おもむろに瓶から蛙を取り出し、和頼の鼻にペタっとくっつける。そして自分の鼻にはカタツムリをくっつけた。
「私はこっち~……でも、どうしても食べなきゃダメかな?」
 いきなりの彼女の行動に和頼はキョトンとし、すぐ、ぷっと吹き出して笑うと、鼻にくっつけられたカエルを七海の頭の上へと返す。
「悪いな……食いもん確保する事考えちまう癖が、な。お前、舌肥えてそうだしな、なら好きなモンを、て……七海、似合ってるぜ、ソレ」
「……えと……似合う?♪」
 自分の顔見て微笑む和頼に、七海はトギマギとしながらカエルとカタツムリを手に持ち変えて顔の横にくっつけて笑って見せる。
「……ああ、七海は自然がよく似合うな……」
 何時になく優しい笑み浮かべ、和頼は思わず七海を見詰めた。
「ジェフ、ソコ! ちゃんとしてよネ! あーん! な~な~み~!」
「……後何匹かな? 集めたら戻るか……ぁぁぁ!」
 二人の様子に地団太を踏む希に対して冷静にミミズを集めていたジェフだったが、ぽとり、と篭を落とした。蓋が開きぶちまけられたミミズを慌てて回収しようとしたことろで、ぬっと黄色い影が目の前に現れる。
「よいしょ、よいしょ」
 一人の女性のようだが、手は鋭く長い爪の獣のような形になっており、落ちたミミズが捕獲されジェフの篭に戻されていく。どうぞ、と返された篭の中身が若干減っているようなもぐもぐという音が聞こえるような……。
 彼女の後ろに目をやると、ふいっと視線をそらすハイドラの姿があった。ジェフの目の前の獣は、両腕を獣人形態にさせたランカであった。葉や土をその爪で捲っては篭の中に大量のミミズを捕獲していく。そして聞こえる咀嚼音。
 次にランカは蟻の巣を見つけそこに飛びついていく。しかし、篭にいれる様子は一切なく、熱心に下の方まで掘り進んで行く。
 そんな様子を眺めていたのはジェフだけでなく、雑木林に来て人の採取を参考にしようとしていた日和とラインもがっつりと目撃していた。
「すみません、あれはいったい……」
「気にしてはいけないんだよ」
 状況の把握ができず、意を決してハイドラに話しかけたラインだったが、ハイドラは笑いながら豪快に力強く言い切った。それはある意味、全員の脳裏に浮かんだ答えを肯定しているようだった。
 植物園の捕食者。と彼女を見た全員、心の中で一致。
「ナツツバキか。きれいだね」
 ランカの様子を気にも留めずに、また花に気をとられているシキ以外は。
 一方、騒動はつゆ知らず、和頼の笑顔にトキメキながら焦る七海は話題をそらした。
「みんなでお昼に! えと、手を洗って……サンドイッチ作ってきたよ♪」
「……あ、ああ……そうだな……飯持参か、準備いいな」
 そして、英雄に声をかけようと表情が戻った和頼は振り返り、思わず一言。
「……何やってんだ?」
 その場の全員が説明できないでいた。


「殻ひっぱったら中身取れそう……」
 うぅっと呻いてなかなかカタツムリを取れない夕に、アンジェリカがほほいっと彼の篭にそれを入れていく。
「日本ではフランス料理のエスカルゴが有名だけど、エスカルゴって蝸牛って意味でそういう種類がいる訳じゃないんだよ」
 解説をしつつさらに見つけたカタツムリをそっと掴んで自分の入れ物へ入れていく。夕はまじまじとそれを見ていた。
「どんな料理が合うかなぁ」
「花より団子だな」
 アンジェリカのぽつりと零した呟きに、笑いながらマルコは言う。
「そんな事ないよ!」
 抗議しつつも、園の目玉と言われる紫陽花をスマホで写真に収めた。カタツムリもイイアングルで入っている。
「写真?」
「シスターや『兄弟』達にメールで送るんだ♪」
 夕の質問に嬉しそうに表情を緩めながら、他にも日本ならではの植物を写真に納めていくアンジェリカ。すると、足元にボトリと音がしたかと思うと、ミミズが。びっくりしてマルコの後ろに隠れる彼女。
「あ、ごめんね。ただいま、ユウ」
「おかえり」
 ミミズを落としたのはシキだった。謝ってからシキは夕に顔を向ける。
「さっきヒヨリたちにあって、おんしつのきゅうけいじょでおちゃかいをしようとさそわれたよ」
「そっか、それは楽しみだね」
 先ほど出会った顔見知りからの伝言を伝えると、シキは後ろでミミズをマルコに顔の目の前に持ってこられて、ぎゃいぎゃい騒いでいるアンジェリカを見た。
「あっちの子も一緒にどうだろう?」
「あ、うん。手伝ってもらったしね」
 篭いっぱいのカエルとカタツムリをシキに見せて夕は頷いた。そして、マルコのスキットルを没収して抗議をしているアンジェリカに話しかける。
「マルコさんの意地悪! 全く聖職者にあるまじき振舞だよ! 今日はお酒抜きだからね!」
「あの……この後、お茶会だって、一緒に行く……?」
 夕の誘いにアンジェリカは目を丸くしてからマルコにと視線を合わせ、すぐに笑顔で快諾した。
 採取したものを入り口に預けて、散策をしながら温室へと向かうと、温室には自前のティーセットでジャスミンティーを入れている日和と、備え付けのテーブルにペーパーナプキンをセットしてクッキーを置いているラインの姿があった。
「どの花も美しいな」
「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花なんて言いますし私も先ほど見た百合の様な女になりませんと」
「百合も華やかで良いが君は……ブーゲンビリアの方が明るく華やかでらしいと思う花言葉もピッタリだ」
「まぁ!じゃあラインは……そうですわねあのゼラニウムなんてどうです?」
「ゼラニウム……僕なんかには勿体無い気がするが」
 温室にある花を眺めながら、先ほど散策で見た美しい花々の話をしている二人。入ってきた四人に気がついたのは、ハイドラだった。ランカとハイドラも日和に声をかけられて座っていたのだ。四人に軽く手を上げて挨拶をする。
「ふふ、たくさんの人と素敵な場所でお話できるのはいいですね」
 合計八人がテーブルを囲むと、日和が楽しそうにおしゃべりをしだす。
「そういえば、今日は多めに渡しておくね」
 日和のクッキーを食べながら、はたっと思いだしたようにランカがハイドラにいつもより多めに金属味クッキーをハイドラへと渡す。慰安ならばと、多めに持ってきていたのだ。
「おお、うれしいねぇ!」
 人の食事も良いけれど、好きな味は忘れられない。と、とても喜んだ様子を見せるハイドラ。
「ユウ、そういえばナツツバキをみたよ。キレイだった」
「うん」
「このあいだかった、かわいいレインコートと、レインシューズのおかげでどこをあるいてもたのしかったよ」
「うん」
 楽しかったと感想をずっと話し続けているシキに、夕は相槌を打ちながら聞いていた。アンジェリカもクッキーとお茶、温室を写真に撮って楽しみ、みんなの会話へと加わった。マルコも微笑ましげにその様子をみている。
 温室では和やかなお茶会の雰囲気が流れた。
 外では雨が小雨になっていた。ほとんど傘をさしていなくても濡れないくらいだ。水溜りを見つけた七海がパシャンと飛び込んで水しぶきをあげた。
「小さい時、水溜りは異世界に通じてる? って見つける度に踏んだんだよ。通じてたら戻れなかったかも知れないのにね~。」
「分かる! 何か光って下見えないトコとかネ! 前はソレが苦手で……雨ダメだったナ。まだ海はムリ……変だネ! 猫だからかニャ?」
 希は戯け招き猫の真似をし、二人で水溜りに出たり入ったりしている。その様子をみながら、和頼は隣にいるジェフに話しかけた。
「大変だったろ……すまねえ……が、何で希と行動したんだ?」
「大変? むしろ楽しかったぞ。七海が前の事を気にしててね、他から言われ気にならない言葉も特別な奴に言われると何時までも引っかかるもんだからな」
 ジャフの顔を見ながら、彼が本当に楽しんでたことを知ると、和頼は不可解な表情をした。
「……ジェフ、お前……まさか希を……? ……趣味悪りいな」
 そう零したが、すぐに女子二人の声にそちらを向く。
「あ! 虹? 向こうは止んでるのカナ?」
「綺麗~もうすぐこっちも止むね」
 空を見上げれば虹がかかっている。太陽が徐々に顔を出していた。七海と希が笑顔で顔を見合わせる様子をみて、釣られ笑む男達。四人は以前の雰囲気取り戻し、そのあとも穏やかに園内散策を続けた。
 それよりも前、央達は採取を追えて入り口に提出へと向かっていた。雨はまだだいぶ強く止む気配は今はない。
「ヒーッ……」
「シアン~……カタツムリ~……」
 向かう途中で氷月が葉っぱの裏にカタツムリの大群を発見して、それをシアンにぺろっと捲って見せた。小さな悲鳴があがる。
「苦手だって言いましたわよね……近づけないでくださいましー!」
 そして、落ち着こうとカエル1匹を頭にのせながらシアンは早足になる。急いで室内に入り、受付に到着して採取したものを提出した。
 雨が降らない室内、採集もひと段落ついたことを察したマイヤが幻想蝶から姿を現す。
「ほら、ちゃんと彼女達をエスコートしてあげて。これからがデートの本番よ」
 央の後ろからそう言ってせっつくと、央はこくっ、と一つ頷いた。氷月が楽しんでくれればいいんだけど。と央は気合を入れなおす。マイヤとシアンはそれぞれ顔を合わせ幻想蝶の中に引っ込んだ。邪魔はしたくないが、離れたくはない。そんな二人の気持ち。
 央はまだ止まない雨に持参の大きめな傘を開き外への出入り口で氷月を見つめる。借りていた雨具は採取したものと共に返却した。
「傘……借りるの忘れた……。入って、いいかな……?」
 氷月は柔らかい嬉しそうな笑みを小さく浮かべて央の隣、彼が空けた場所へとそっと入る。そして、ゆっくりと二人は歩き出した。雨に濡れる花々は静かに美しさを湛えている。小ぶりになった雨の隙間から少しずつ太陽の光が顔を出し、水滴がきらりと光る。
「6月といえば紫陽花だけど、桔梗もいいよな……誠実、従順、永遠の愛。か」
 央はぴったり同じ身長を気にして彼女が濡れないようにそれとなく傘を傾ける
「そうね……濡れない?」
「それじゃあもう少し……」
 くっつこうかな。と笑って央は氷月の肩に腕を回し抱き寄せた。
「雨は好き……冷たくて。でも……」
 氷月は呟き、そこで言葉を留めると一時的に共鳴をする。そして彼へと視線を合わせて口端を柔らかく上げた。
「今は、暖かい方が好きよ……」
 肩を抱かれたまま、自分もまた央へとより添い、肩口に頭を預けた。
「虹……」
 そして傘から覗く光が織り成す七色のそれを見つめた。雨は、すでにあがっていた。それでも、傘から手を離さずに二人は虹を眺める。
「さながら、虹の麓の相合傘……ね。」
 その二人を見守りながら、微笑ましげにマイヤは呟いた。そのあとも雨の上がった園内を楽しげに会話を交えながら残りの時間を楽しんだ。

●最後に
 閉園のアナウンスがあり、同時に仕事の達成を伝えられた。そして、H.O.P.Eの研究員が参加者に一言ずつ言葉を残し、今日はお開きとなる。
「今日の思い出をぜひ、お持ち帰り下さい」
 と。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121

重体一覧

参加者

  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121
    人間|11才|女性|命中
  • コンメディア・デラルテ
    マルコ・マカーリオaa0121hero001
    英雄|38才|男性|ドレ
  • エージェント
    十影夕aa0890
    機械|19才|男性|命中
  • エージェント
    シキaa0890hero001
    英雄|7才|?|ジャ
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 自称・巴御前
    散夏 日和aa1453
    人間|24才|女性|命中
  • ブルームーン
    ライン・ブルーローゼンaa1453hero001
    英雄|25才|男性|ドレ
  • 絆を胸に
    麻端 和頼aa3646
    獣人|25才|男性|攻撃
  • 絆を胸に
    華留 希aa3646hero001
    英雄|18才|女性|バト

  • 氷月aa3661
    機械|18才|女性|攻撃
  • 巡り合う者
    シアンaa3661hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 絆を胸に
    五十嵐 七海aa3694
    獣人|18才|女性|命中
  • 絆を胸に
    ジェフ 立川aa3694hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 植物園の捕食者
    ランカaa3903
    獣人|15才|女性|防御
  • エージェント
    ハイドラaa3903hero001
    英雄|23才|女性|ソフィ
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