本部

こっくりさんに潜むもの

saki

形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
7人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/06/22 19:12

掲示板

オープニング

●とある学校の放課後
 こっくりさん――それは昔からある降霊術の一種である。
 そう、こっくりさんとは狐狗狸からきているものであり、その名の通りそれに関わるのは化かすともいわれる動物達である。
 方法は至ってシンプルで、手順を踏みさえすれば何ら問題はない。そう、手順を踏んできちんとお帰りいただければ何でもないのだ。
 しかし、手順を守らなければその霊は帰ってくれない。それどころか、その霊に憑りつかれてしまうのである。その場合、多くは「狐憑き」とそう呼ばれている。


 小学校でも放課後の校舎ともなれば昼間の喧騒とは打って変わり、しんと静まり返っている。
 もう入日も近い。
 逢魔が時である。
 そんな時間帯であるというのに、四人の少女達は一枚の紙の上に十円玉を載せ、その上に其々人差し指を置いている。
 四人は頷き合うと声を揃えて「「「「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら「はい」へお進みください」」」」とそう言った。
 するとどうであろう。
 十円玉がすっと動き、そして「はい」で止まったのである。
 このことに少女達はわっと声を上げた。顔を見合わせて「すごい」と言葉を連呼している。
「それじゃあ、最初は私ね」と一人の少女が何かを言うと、十円玉はすっと動いた。
 それを見て少女たちは興奮したかのようにきゃらきゃらと楽しそうに笑い声をあげて、「じゃあ、次は私ね」とそう言って何事か口にすると指を置いた十円玉がすっと滑らかに移動した。それを見てよりいっそう楽しげに声を上げるのだ。
 女子小学生が仲良く楽し気にしているのだ。こういうシチュエーションでなければいっそ微笑ましいだろう。しかし、今やっているのは曲りにも降霊術なのである。つまりは、まったく安全なことではないのだ。

 質問が何順しただろうか。
 辺りはすっかりと暗くなっている。
「じゃあ、もうそろそろ終わりね」と誰かが口にし、十円玉を見つめていてはたと気が付いた。
 人差し指が五本あるのである。
 四人でやっているのだから、人差し指は四本なのだ。それなのに、五本あるのはあまりにも不自然であった。
 一人が蒼褪め、引きつった表情をした。そしてそれによって、他のメンバーも気が付いてしまったのだ。指が五本あるということに。
「きゃあ」と誰かが悲鳴を上げた。
 そして、指を放してしまったのである。
「馬鹿っ!」と慌てて声を上げるが、もう遅い。
 こっくりさんは「こっくりさん、こっくりさん、どうぞお戻りください」とお願いして、こっくりさんが「はい」と答えた後、鳥居まで10円玉がもどってきたら、「ありがとうございました」と礼を言って終了するのが通例であり、恒例なのだ。参加者達はそれをせず、途中で指を放してはいけないのである。そうしないと、降りてきた霊が還ってくれないのである。
 教室の窓ガラスが一斉に割れた。
 破片が教室内へと降り注ぐ。
 それに驚き、他の少女達も指を放してしまった。
 しまったと思ってももう遅い。
 少女たちは獣のように涎を撒き散らし、そして唸り声を上げ、四つん這いのまま駆けて行く。そして衝動のままに物を振り回し、投げ、壊し、校舎の物を破壊して廻った。
 警報が鳴り響く。
 校舎の異常を高らかに告げている。
 しかし、この校舎にはもうあの可愛らしい少女だったもの達はどこにもいないのだった。

解説

●目的
→四人の少女を正気に戻すこと

●補足
→少女達は狐の従魔に憑りつかれ、それによって暴れています。
 狐の従魔が身体を乗っ取った状態であり、それらを少女から引き離して倒しましょう。
→四人はこの校舎内の何処かに居ます。しかし、四人一緒にはいません。それぞれが思い思いのまま攻撃的な行動をとって暴れ回っています。
 また、獣のような行動をとっているので彼女たち自身には言葉は通じません。
→まだ小学生の女の子が相手なので、なるべく相手に怪我をさせない方向が望ましいです。なので、女の子を傷つけずに従魔を身体から出す方法が好ましいです。
 従魔を体内から出してしまえば、狐の従魔との戦闘になりますので、それを倒しましょう。
→彼女たちは従魔が体内に入ったことにより、衝撃派のようなものを放ったり、倫理的な考えもなく行動しているので、普通に物を投げたり壊したりしてきます。常識的に考えて……というのは難しい状態です。人間というよりは、獣を相手にしているという方が近いかと思われます。
 狐の従魔は自身が戦闘するというよりは、相手を乗っ取って攻撃するタイプなので、単体では強くありません。野生の狐を相手にしているような状態です。但し、女の子の身体を乗っ取ったように、一定のルールに則ってそれを違反したものを支配下に置くことができます。今回の場合媒体になっているのはこっくりさんなので、こちらがこっくりさんをしてルール違反をしなければ乗っ取られはしません。
 しかし、狐の従魔なので化けることができます。プレイヤーそっくりの姿になって攪乱してきますので注意が必要です。但し、姿が似ているだけで中身は狐の従魔なので矢張り戦闘自体は弱いです。

リプレイ

●校舎の前にて
 異様な空気が校舎を取り巻いている。しかしここは今日――もっと正確に言うのなら、今現在も進行形で現存する小学校である。


 そんな、リアル肝試しでもできそうな校舎を前に、月影 飛翔(aa0224)は「化けられてる場合もあるだろうし、とりあえず誰かとあったら横薙ぎを叩き込むから。本物ならわかってる攻撃なら避けられるだろうしな」と予め宣言した。それに続くように、ルビナス フローリア(aa0224hero001)は『皆様なら大丈夫でしょう』と言葉を重ねた。


「さて…」と晴海 嘉久也(aa0780)は口を開く。「学校の七不思議に当然のように、入り込んでしまった従魔ですね。これから先、寝坊一つをとっても「従魔のせい」にされそうで、頭の痛いことですが、今回は発見できたのが幸いなんで、何とか収めたいと思います」と言えば、エスティア ヘレスティス(aa0780hero001)はやる気満々に『はい、頑張りましょう』と頷いた。
「ただ…共鳴すると触れただけで大怪我をさせかねませんからね…今回はそれを注意して行動しましょう」


 九字原 昂(aa0919)は現状に対し、「やれやれ……これで学校の怪談が一つ増えなければいいんだけどね」と評する。
 学校の七不思議というのは不思議なもので、どんな学校だってあるものだ。しかし、オーソドックスなものもあれば、その学校によって違うものもある。その一つに加えられなければ良いのだがと昴は肩を竦めた。


「うっわあー、地獄絵図だね。校内ボロボロ…」と、穂村 御園(aa1362)は呆れた声を上げる。それに冷静な音声でST-00342(aa1362hero001)が『ST-00342は最大限の速度での四人の女生徒の保護を提案する』と告げる。
 しかし、御園は首を振り断言するかのように「…保護ってどうやるのよ? 動物化した小学生が走り回ってるって…いい、エスティ、小学生って走る凶器なのよ。物理じゃなくて法的な意味で…生涯給与の計算とか悪魔の守護が付いてるんだから」と言った。


 妙に落ち込んだかのような暗い雰囲気な古賀 菖蒲(旧姓:サキモリ(aa2336hero001)の気持ちを払しょくさせるかのように、防人 正護(aa2336)は「…相変わらず狐に縁があるな…、だがそれでもお前は関係ない。たとえこの前みたいなことでも、な」と言い聞かせるように話をし、菖蒲の頭をくしゃりと撫でた。その動きは少し乱雑さがあり、かき回すかのようになっていたが、その不器用な慰め方に、菖蒲は困ったかのような、泣き出しそうな表情のまま『う…うん』と頷いた。


『……なに、小学生が? 狐に憑かれた、だと…??』と、青色鬼 蓮日(aa2439hero001)の怒りの声に鬼子母神 焔織(aa2439)は内心で「…コレはダメなヤツですね」と思った。
 そしてその通り。怒りも露わな蓮日の背後には、轟くオーラが見えるようである。
『…子らに憑くなど………赦さんぞ、狐どもッ! 成敗など生ぬるいッ! 滅してくれるッ! 行くぞ焔織ぃッ! 少女らを救うのだッッ!』と、今にも飛び出しそうな蓮日を見て焔織は内心では「…顔は真面目デスが、邪念タップリですね…あと、鼻血でてマス」と面いつつも冷静に「…蓮日さマは、お下がリを…鼻血マミれの子らを親元へ返せマセんカラ」と進言した。


 今回の元凶を聞き、「こっくりさん? まだ流行ってたんだな」と沖 一真(aa3591)は感心したような声を上げ。
 こっくりさんの元はテーブル・ターニングというもので、これは1800年代から存在している。そして、それが日本に伝わったのは意外にも古く、1884年なのである。そこから日本風に改良され、流行したのだからこっくりさん事態は随分と昔からあるものなのだ。
『祓い方分かってるんだよね?』と尋ねる月夜(aa3591hero001)に、一真はあっさりと「誘い出し方は簡単だ。連中の望みそうなものを差し出すこと」と答えた。


 秘密兵器というか罠というか、取り敢えず相手を誘い出す為の準備を揃えたアガサ(aa3950)が手にした袋が小さく音を立てた。
 アガサの大学の理系学部から入手した材料に、その他必要なものを携え準備万端である。あとはこれを家庭科室で調理するだけだ。勿論、その許可は既にとってある。
 その横でカリオフィリア(aa3950hero001)は興味深そうに目を瞬かせている。
『さて、この作戦を成功させるのには腕の見せ所じゃぞ』と何処か楽しそうにしているカリオフィリアに対し、アガサはうんざりとした様子で「これを調理するのね」と呟いた。

●校舎に侵入
 飛翔とルビナスは上の階から捜索を始める。
 周囲を見回しながら足を進め、「結構派手に暴れているみたいだな」と思わずといった風に言葉を零す。
 その言葉の通り、結構な荒れ具合だ。それこそ、何の怨みがあるのかといった具合に。
『動かしているのは従魔でも身体は女の子のものです。このままの状態が長く続けば、追い出せたとしても身体に持たないかと。早めの救出が必要ですね』
 そんなことを話し合いながら教室一つ一つを確認していき、途中で何かに使えないかとカーテンを拝借して更に先へと進んでいく。


 嘉久也とエスティアは他の面々のように積極的に標的を捜しに行くのではなく、どちらかというと警備といったスタイルをとっている。もしもの時に備えているという方が正しいだろう。
 もし、憑依した従魔を取り出すのに失敗したら即座に対処できる様に、また、憑依を剥がすのに成功した場合は従魔が化ける前に倒そうという目論見である。
 二人で手分けして学校の戸締りをしていき、割られていない窓にはしっかりえ施錠をしていく。そして従魔が逃げ出すことのないように、念入りに塞いでいく。
 他にも、対策として犬笛と消火器も用意していく。決定的な攻撃にはならないかもしれないが、足止めなど使えるようにだ。
 そして共鳴はせず、目配せをすると鬼門・裏鬼門には当たらない出入口の脇に待機した。


 昴は周囲を警戒しながら、身を潜めて校舎内を進む。連絡をとれるようにと用意した無線も確認し、自分が見つけたらすぐに連絡を、連絡を受けたら即急行をといった風に備えているのである。
 女の子が相手ということもあり、タオルそして厚手の布を用意している。流石に捕縛するのに縄なんかで傷つけるわけにはいかないからだ。
「さて、この歳になって合言葉の用意をすることになるとは思わなかったけれど、これで化けられた時の対策も万全かな?」


 御園とST-00342は校舎を見回せる屋上、渡り廊下へと足を進める。これだけ派手にやっているのだ。今はすっかりと形を潜めているものの、いざ事が起これば破壊音や物が投げつけられるだとか、そういうことを想定して目標の位置の特定がしやすいだろうと考えてのことである。
 しかし、その前にと体育館の準備室へと向かう。そこからマットを持って来てなるべく女の子にダメージを与えないようにという配慮だ。小学生のことを走る共起と称し、更にはPTAだの法律だの色々と考えている御園らしいといえばそれらしい配慮である。
 その徹底した様を見て、ST-00342は『御園は余程小学生が恐ろしいのだな』と言えば「当たり前でしょう!」と御園は食いつき、力説した。
「あんな取扱い厳重注意の危険物を相手にするのよ。それが例え従魔に操られていようとも、怪我をさせようものなら後で何て叩かれるのかは分かったものじゃないわ」


 正護は共鳴状態で校舎内を歩いて行く。
 正護は基本的に捜索をメインとし、女の子達の安全を第一に考えて行動している。そいう所も姿に似合い、ヒーローらしいとしか言いようがない。
 落ち込んでいるというよりは、塞ぎ込んでいる菖蒲のことは気にしつつも、任務に手を抜くつもりのない正護は獣の習性や破壊の痕跡、音などを頼りに現在の場所を推測していく。今は動きがないようで派手な音はしないが、それでもこれだけ暴れ回っているのだったら痕跡を辿るのに苦労はしない。
 菖蒲に向かって「アイリス、頼りにしているからな」と言えば、逡巡した後小さな声で『…うん』という応えがあった。


 家庭科室に入ると、そこは荒らされてはいるものの幾つか無事な調理台があるようだ。
 その大丈夫な調理台に荷物を下ろす。ガスの元栓を開けてアガサとカリオフィリアは調理を開始する。
「狐は鼠の天ぷらに目が無くて、匂いを嗅げば術が解け、どんなことをしてでも欲しがると言うわ。油揚げはこれの代用品なのよ……、で、でもこんな可愛い鼠を生きたまま揚げるなんて!」と言ってアガサは衣をつける手を止めた。しかしその横で、カリオフィリアは『仕事じゃ、さくっと揚げるのじゃ』と迷いなく天ぷらにしていく。
「なんてことするのカリオ…! こんなことなら迷わずこっちを揚げておけばよかったわ」とレジ袋の中から南瓜、茄子、ちくわ、エビ、そしてタコなどといったオーソドックスな食材を取り出す。アガサは鼠の代用として、普通の天ぷらの支度を持って来ていたようだ。
 しかし、それはカリオフィリアのお気に召さないようで『我が眷属の落とし子を! 煮えた油で調理する気だったのかえ?! 外道、外道じゃ!』とタコ天を恐ろしいとばかりに見やった。


 強盗でも押し入ったのかという有様の教室の中、一真はお供え物として稲荷寿司皿四つ、紹興酒「仲謀」を徳利に四杯分机に並べる。これは机を祭壇に見立て、供物を奉納しているのである。
 そして机を適当に引っ張り出すと、こっくりさんの紙を用意して共鳴はせずに一真と月夜は椅子を向い合せにするとこっくりさんを開始する。
 そんな無防備な二人を守るため、陰に隠れるように潜伏し、緋織と蓮日は警護にあたる。
 そこにアガサから連絡があり、彼女たちも合流した。手には調理された天ぷらがはいった密閉されたタッパーがあり、合言葉を言う。そして本人確認をすると、共に二人を守るために身を隠しながら周囲を伺う。
 この合言葉だが、集まった面々も同じようなことを考えていたようで、勿論緋織も「…狐とハ、化けるモノですカラ…」とそれを推奨していた。
 そして、こっくりさんが始まる。
 十円玉に指を乗せ、例のテンプレートを口にする。
 すると十円玉が動き、月夜が『えっと、好きな人とか聞いていい?』とある意味定番の事を口にするが、一真は「また今度な……」と断り、代わりに「こっくりさんこっくりさん、あなたはここにいらっしゃいますか?」と尋ねた。すると、十円玉は「はい」まで動き、止まった。
 それを見て、隠れていた緋織とアガサも警戒を強める。
 しかし、一真は何も同じた姿を見せずに「こちらに美味しいお稲荷さんを用意させて頂きました。その童女の中から出てきて召し上がりませんか?」『謹んでお願い申し上げます』と続ければ、こっくりさんからは何の反応も無かった。それを訝し気に思うものの、二人は指を放すことはしない。それはルール違反だからだ。
 そして、それは起こった。

●遭遇
 明らかに変わった空気に緋織は共鳴して身構えた。アガサも共鳴して二人を守ろうと備える。しかし、様子を伺う為に二人はその場から動かない。
 一匹の狐である。呼びかけに応え、一匹ではあるが狐が現れたのだ。
 狐に向かい、「どうぞ、お納めください」『お召し上がりください』と一真と月夜が薦めれば、狐はぺろりとお供え物を口にした。
 それを見届けると、「すまんな……ただでくれてやるとは一言も言ってませんし」と共鳴する。そして「臨兵闘者皆陳烈在前 天地玄妙神辺変通力離!」と九字を切り、呪符「牡丹灯籠」を投げつけた。
 怒り狂った狐が襲い掛かるものの、それをアガサが守るべき誓いを発動して阻む。
 一真に続き、緋織も「サテ…消災呪は、効き目はアルか…」と考えながら、「…曩謨三滿多 母駄喃…ッ」と読経にて援護する。
 読経が効いているのか否か、唸り声を上げる狐の背後に緋織は回り込むと、踏み込んで一息に距離を詰める。
 急激な接近に驚いた狐が噛みつこうとするものの、それをかわすと一気呵成にてイニシアチブを取る。
 相手の重心を崩して転倒させると、首に攻撃を当てて短期決戦を狙う。
 急所にえぐい一撃が入ると、詰まったような息が漏れ出る音がする。そしてそのまま掴んで宙に投げると一真からの呪符、アガサからは追い打ちにとばかりにライヴスリッパーが炸裂し、まずは一匹退治に成功した。
「まずハ一匹ですネ」と緋織、「残りは三匹ですか」と一真、「そういえば、この狐が憑いていた女の子はどうなったのかな?」とアガサが話していると通信機に連絡が入った。


 一真がこっくりさんで狐を呼び出す少し前、昴は一人の女の子を発見した。そして戦いやすい場所へ誘導がてら、すぐさま連絡を入れると、近くに居た御園もすぐに合流した。
 女の子は獣のように唸り声を上げている。しかし、野生の獣のようであり警戒心は強いようである。威嚇はするものの近づいてはこない。
「うわあ、本当にケダモノだよね~ケダモノが許されるのは幼稚園までだよね~」と挑発するように馬鹿にした声を上げると、ST-00342は『?? そういう物か??』と首を傾げた。
 挑発が効いたのかは不明であるが、女の子は四つん這いのままとびかかってくる。それを御園は用意していたマットで抑え込む。そこから更に昴は「ひとまずはソフトにいかないとね」と女郎蜘蛛で動きを止めるとタオルで手を縛った。御園が女の子を抑え込んでいるのと、女郎蜘蛛もあって容易に縛ることができた。
「動きを抑え込むことはできたけれど、どうしようか?」と昴は尋ねる。
 女の子は依然と獣のようであり、口元から涎を垂らして唸り声を上げている。迂闊に近づこうものなら噛みつかれそうである。
 しかし御園は「じゃあ、これならどう?」とフラッシュバンを炸裂する。
 目が眩む眩い光の後、狐の姿が現れた。どうやら狐が女の子から離れたようだ。
 そこを狙い、御園は銃で攻撃を仕掛ける。ストライクも発動し、一気に攻める。その援護として昴はデスマークで念の為にマーキングを施した。
 昴のデスマークは効いたし、御園の攻撃も当たっている筈である。しかし、御園のストライクが当たり、更に追い打ちを与えようとした瞬間その姿が薄れ、そして消えた。
「何、今の?」という御園の問いに、昴は「移動したようだね」と答える。デスマークによってその居場所は丸わかりなのである。
 そしてその狐がこっくりさんで呼び出された、ということは連絡を取り合ったことで確認ができた。


 飛翔は癇癪を起したかのように投げつけられるものを躱し、飛び掛かってくるタイミングを計る。
『武器は使わない方がよさそうですね』
「動きを封じてからだな。あの動きじゃ自分で自分の身体を傷つけかねない」
 三角跳びのような要領で、窓や壁を蹴って近づく。
 しかし女の子は怯むことなく飛び掛かり、そこで待っていましたとばかりに武器を手離した。広げたカーテンに突っ込ませると、一時的に視界と動きを封じた。
 その状態で少女の頭に手を置き、「これで出てくれればいいが」とゆっくりと自分のライブスを流し込む。しかし、呻き声を上げるだけで出てくる様子はない。
 仕方が無しに、カーテンにくるんだまま担ぎ、一真の居る教室まで向かう。
 そこで一真が呪を唱えると、呻き声を上げて剥がれた。
 出てきた従魔が逃げる前に、一気に間合いを詰めメイスを叩き込んだ。
 ヘヴィアタックの威力も相まって、狐は引きつった悲鳴を上げ、更に一真が呪符でもって抑え込んだ。
 従魔を倒したことを確認すると、共鳴を解いてルビナスが女の子の怪我の確認を始めた。


 一真と別れた緋織は女の子を前に目が据わっていた。否、共鳴している為に血走った目をしているのは蓮日のものだろう。
『焔織ッ! 傷付けるなよ~ッ!』
 緋織は拳打ち込むがそれはフリだ。そこから爆拳による爆発猫騙しを炸裂する。あまりにも強烈な猫騙しである。寧ろ猫騙しの域を超えている。
 そしてその後蟹挟みで女の子を倒し、背後から押え込む形で無力化し読経を唱えようとするが、『うへへへ少女の玉の肌だぁぁ』「変質者はダマっててクダサい」というある意味気が抜けるような、切実なやり取りをしていると、女の子は器用に身を捩って拘束から脱出した。一瞬の気の緩みというより、気が削がれて注意がそれるやり取りの隙を突かれた。
 二人は「『あっ』」という声を上げた。


 息を殺して身を潜めていた嘉久也とエスティアであったが、待ち構えていた出入口から女の子が姿を現したのを確認すると消火器を噴射した。
 完全に死角外からの目眩ましである。不意を突かれる形となり、女の子の動きが止まった。
 その間に、サンタ捕獲用ネットで確保する。その中で、女の子が暴れている。
「女の子が気絶すれば、従魔は分離する筈です」と嘉久也は全力で犬笛を吹いた。
 人間には聞こえない音域の音が波紋のように広がり、響き渡る。
 女の子ははっと動きを止めた。しかし、犬笛で気絶まではいかないようで、素早く背後に回って、死なない様にいつも以上に丁寧に締め落とす。締め落とすというのは案外高度な技術であり、嘉久也は細心の注意を払ってそれを実行した。
 すると、目論見通り狐が女の子から出てきた。
 その狐が逃げ出そうとするのを共鳴し、追いかけると力の限りぶん殴った。
 疾風怒濤で相手を追い詰めるように連撃を繰り出し、そしてそのままマウントを取る勢いでヘヴィアタックを繰り出した。


 正護は女の子と対峙していた。
 何時もとは違い女の子が相手ということもあり、傷つけないようにと注意する。
 手近にあった石を、相手からは死角になる位置から指弾で弾く。
 石は女の子の後ろで音を立て、相手の視線がそちらに向いて一瞬注意が逸れた隙を狙って背後から拘束する。腕を絡めて締めるものの、従魔が憑依しているからか元々身体が柔らかいのか、関節を無視した動きでするりと拘束から逃れる。
 そしてそのまま、どこかへと走り出したのを追いかけた。
 女の子を追っていると、どうやら何か目標を持っているかのようだ。何というか、迷いがないのだ。行き先に躊躇いがない。
 そのまま追い続けていると、アガサの姿が見えた。その傍には鼠の天ぷらが置かれている。どうやらこの天ぷらに釣られて走っていたようである。元々アガサと合流するつもりであったから、ある意味好都合であった。
 正護はアガサに向かって合言葉を問い、その応えがあるのを確認すると走っている速度を上げて「すまん」という声とともに女の子の足を払った。
 途端に傾ぐ身体を、アガサが心得たとばかりにディシプリンウィップで拘束にかかる。
 アガサは女の子の身体の上に馬乗りになると、届きそうで届かない位置に鼠の天ぷらを置いた。
 女の子の注意は鼠の天ぷらに向かっている。寧ろ、他のものになど興味はないとばかりに、そちらばかりに集中している。
 じれったくなったのだろう。唸るような叫ぶような声とともに、女の子から狐が飛び出した。
 従魔だ。
 今だとばかりに、正護は跳躍する。そこから「防人流雷堕脚」と、跳び蹴りをかました。
 容赦のない攻撃が従魔に炸裂する。しかし、従魔も馬鹿ではない。否、野生に近いという方が正しいだろう。
 攻撃を受けると躊躇うことなく逃げ出したのだ。
 追いかけることは可能だろう。しかし、正護女の子の保護を優先してと考えている為に優先順位がはっきりしているのである。
 通信機を取り出すと、従魔が逃げた旨を伝えた。


 その後、女の子を一真に託し、別れた飛翔が廊下を歩いていると、足早に歩いている正護の姿を見かけた。
 その正護の姿に違和感を抱いて問いかけるが、返事はない。それを訝しがるのとほぼ同時に、「探索に出ていない者に化けても意味はないぞ」『所詮は狐ですね……』と横を薙ぐ一撃を入れる。そしてそれとほぼ同時に、追いかけて来ていたアガサが躊躇なく、幾何学的にある意味狂った角度で延髄にライヴスリッパーを叩きこんだ。
「リンカーなんてチョコレート食べておけば大概の傷は治るものよ……問題ないわ」と堂々と宣言するアガサに、『このチョコレート、何が入っておるのかのう…』とカリオフィリアが訝しげに眉根を寄せる。
 先程の戦闘でダメージを受け、更に容赦のない攻撃を受けて従魔は大分弱っていた。
 そこに銃声が響き渡る。
 御園である。アガサが走っている姿を追いかけていた御園が、威嚇射撃で行動を阻害した。正にスナイパーのような、狩りをしているかのような射撃術である。
 注意が完全に御園に向いた所で、昴が女郎蜘蛛で動きを抑える。にこやかに笑みながらも敵の痛いところを突くようなタイミングだ。
 これで従魔四匹の撃破並びに、女の子達の保護の完了である。
「4人共無事保護完了だな。心の方に傷が残ってないといいんだが」と飛翔は呟いた。

●保護完了
 四人の女の子達を校舎の外に連れ出すと、怪我の有無を確認していく。その際、蓮日が暴走した。
『さぁ…少女らの玉の肌に傷でも残ったら一大事ぞ! ボクが診てあげよぉ~うひ、うひ、うひひひ…』という変態じみた姿、緋織は自粛せよとばかりに頭を掴む。
「蓮日さマ…」と目の笑っていない笑みを浮かべると、『ひっ!?』と声を上げ、「…少女らノ、悲鳴でも聞こえタラ………容赦はシマせヌ…」と教育的指導をした。

 怪我の手当が終わった後、御園は女の子達を正座させると「あのね、HOPEが出動するのに幾ら掛かってると思う訳? 救急車とHOPEは唯だからなんて思ってないですよね??」と説教をし、『御園…お金の話ばかりと言うのも…』とST-00342が窘める。

 御園の話が終わった後、今度は一真が「狐憑きとは、狐が人の身体を乗っ取っとることを言う。その狐を使役する人たちが昔いたんだ。「狐筋」というんだけど、この狐、霊的ではあるけど動物でもあるから子どもも産む。だから、嫁に行った先に子どもの狐が憑いてくる。この狐、何をするかと言うと富をもたらしてくれる。その狐がもたらしてくれる富はどこからくるかというと、実は隣近所。持ち主が無意識のうちにうらやんだりしたものを持ってくる。更に持ち主が誰かを恨んだりしたらその相手は酷い目に遭う」と言って聞かせる。
「つまりな? 霊的な儀式には危険が伴うんだ。面白半分にやるなよ? もしも憑かれたら? そん時は動物愛護の精神でその動物に優しくし、何が欲しいか聞くといい。それでも駄目なら――俺を呼べ」
 そこまで言われ、女の子達は口を噤んだ。

 正護は助けた女の子に「怖かったか? …遊び半分でよくわからんものに手を出すなよ。それでも…無事戻ってきて良かった」と声をかけ、優しく肩を抱いた。
 その傍で『…』と俯いている菖蒲に「お前が悪い訳ないだろ」と言う。
『ジーチャン、…』と情けない声を出す菖蒲に、「狐が悪いわけじゃない、ましてやお前が何の関係があるって言うんだ」と諭す。
『…分かんない…でも、何で狐なのかな…?』「さあな…」『……』「だがな…それでお前と何の関係がある」『え?』「お前はお前だ。狐だろうと、妖怪だろうと、関係ない。…そうだろ」『…、…うん!』

 こうして、幕は下りて行く。
 こっくりさん騒動、無事に閉幕である。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 我ら、煉獄の炎として
    鬼子母 焔織aa2439
  • 御屋形様
    沖 一真aa3591
  • ツンデレお嬢様
    アガサaa3950

重体一覧

参加者

  • 『星』を追う者
    月影 飛翔aa0224
    人間|20才|男性|攻撃
  • 『星』を追う者
    ルビナス フローリアaa0224hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • リベレーター
    晴海 嘉久也aa0780
    機械|25才|男性|命中
  • リベレーター
    エスティア ヘレスティスaa0780hero001
    英雄|18才|女性|ドレ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避



  • 真実を見抜く者
    穂村 御園aa1362
    機械|23才|女性|命中
  • スナイパー
    ST-00342aa1362hero001
    英雄|18才|?|ジャ
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 我ら、煉獄の炎として
    鬼子母 焔織aa2439
    人間|18才|男性|命中
  • 流血の慈母
    青色鬼 蓮日aa2439hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 御屋形様
    沖 一真aa3591
    人間|17才|男性|命中
  • 凪に映る光
    月夜aa3591hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • ツンデレお嬢様
    アガサaa3950
    人間|21才|女性|防御
  • 星辰浮上
    カリオフィリアaa3950hero001
    英雄|32才|女性|ブレ
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